説明

葉面施養水方法

【課題】 従来の葉面施養水方法と比較し、手間をかけずに葉茎部全体に隈なく養水分を施すことができ、しかも施養水後葉茎部に水分の残留をほとんどなくして病気を予防することのできる葉面施養水方法を提供する。
【解決手段】 植物を、葉茎部を下に、根を上に向けた反転状態で、該葉茎部を養水分中に浸漬して葉面施養水を行い、
ついで、上記植物を、上記反転状態で、上記養水分中から上方へ引き上げて水切りする、
植物の葉面施養水方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、植物の葉面に施肥及び給水を行う葉面施養水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、植物の根の養水分吸収機能が低下したとき、又は根が健全であっても葉からの蒸散が激しいため、根からの吸収では足りないとき等に葉面施養水を行う必要がある。
【0003】
従来、土耕、水耕等において、葉茎部を上に向けた植物に葉面施養水を行う方法として、噴霧器により養水分を噴霧する方法が広く行われている。
【0004】
しかし、従来方法では、葉茎部全体に隈なく施養水するのに手間がかかる欠点があり、しかも実際の噴霧では、葉面に残った水滴が太陽光を集光する凸レンズの作用をして、葉面に焼痕をつくり、商品価値を害うこととなり、さらには、レタス、キャベツ等の巻き葉作物では水分が巻き葉の奥に入り込み、セロリ等では、葉柄の基部に水滴が残留し、これら水分が植物内部に浸みこんで、高温過湿状態になると、キンカク病、灰色カビ病、ナンプ病等の病気を発生させていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、手間をかけずに葉茎部全体に隈なく施養水することができ、しかも作業後、葉茎部に水分の残留をほとんどなくして病気を予防することのできる植物の葉面施養水方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する手段として、本願発明は、
植物を、葉茎部を下に、根を上に向けた反転状態で、該葉茎部を養水分中に浸漬して葉面施養水を行い、
ついで、上記植物を、上記反転状態で、上記養水分中から上方へ引き上げて水切りする、
植物の葉面施養水方法を提案する。
【発明の効果】
【0007】
本願発明の葉面施養水方法によれば、植物を反転状態で葉茎部を養水分中に浸漬すると、葉茎部全体に隈なく養水分を施すことができ、しかも浸漬後、植物を反転状態で養水分中から上方へ引き上げると作業時の振動と相まって葉茎部に付着する養水分を流し落して自動的に水切りを行うことができ、それによりキンカク病、灰色カビ病、ナンプ病等の病気を予防することができ、葉に焼痕をつくることもない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】(イ)、(ロ)、(ハ)本願発明の葉面施養水方法の工程を示す各略線断面図である。
【図2】(イ)、(ロ)、(ハ)他の実施例工程を示す各略線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本願発明における上記「水切り」には、作業時の振動に加えて、反転状態の植物に軽い振動を与えたり、葉茎部に送風を与える等の促進作用を付加することが望ましい。
【実施例1】
【0010】
本例は、栽培ボックスに植えつけた植物に葉面施養水を行う例である。
栽培ボックス(1)は、図1のように、断熱性材料からなるボックス内に根収納室(2)を設けると共に、上記ボックス上面から上記根収納室(2)に開通する複数の植えつけ孔(3)…を設け、該植えつけ孔(3)…に植えた植物の葉茎部(4)…をボックス(1)上面に、根(5)を上記根収納室(2)内にそれぞれ延長させ、培養液を外部から上記根収納室(2)内に注入する培養液注入管(6)及び培養液を上記根収納室(2)内から外部へ排出する培養液排出管(7)を備えたものである。(8)、(8)は栽培ボックス(1)の左右外側面に突設されたU字形ハンドルである。
【0011】
上記のような植物を植えた栽培ボックス(1)の多数個を同図(イ)のように山形材からなる2本の案内レール(9)、(9)上に、互に前後に隣接状態で、摺動自在に支持し、この状態で、培養液注入管(6)から培養液を外部から根収納室(2)内に注入し、培養液排出管(7)から根収納室(2)内の培養液を外部に排出して栽培を行う。
【0012】
苗を植えつけた当初は根からの養水分吸収が十分でないため、葉面施養水が必要であると判断した場合は、各栽培ボックス(1)…を案内レール(9)、(9)上に走行させて、同図(ロ)のように培養液(11)を入れた上面開口箱型の葉面施養水槽(10)の上に移動させ、そこで栽培ボックス(1)…を葉茎部を下にした状態に反転させると共に各葉茎部(4)…を培養液(11)中に浸漬して葉面施養水を行う。上記浸漬により葉茎部全体が隈なく培養液に接して有効な養水分吸収を行うことができる。
【0013】
所要時間葉面施養水を行ったら、同図(ハ)のように栽培ボックス(1)…を上方へ持ち上げ、その葉茎部(4)…を培養液(11)中から引き上げ、その状態で、各栽培ボックス(1)…のハンドル(8)、(8)を吊り具(12)、(12)に着脱自在に係止して、引き上げ状態に保持する。各葉茎部(4)…に付着した養水分は作業時の振動により流下し、水切りが行われる。なお、水分の気化により、特に夏期に葉茎部の冷却に役立つ。
【0014】
ここで、上記吊り具(12)、(12)に装着した小型バイブレーター(13)、(13)を始動し、その振動をハンドル(8)、(8)を経て葉茎部(4)…に伝達し、それにより上記水切りをさらに十分に促進する。
【0015】
水切り完了後、各栽培ボックス(1)…を正姿勢に戻して(イ)図の栽培位置に移す。
【0016】
他の実施例として、上記栽培ボックス(1)…を2本の案内レール(9)、(9)上に支持して、培養液を注入管(6)から注入し、排出管(7)から外部に排出しつつ行う栽培を、図1(ロ)の葉面施養水槽(10)の上で行い、そして必要により(ロ)図のように栽培ボックス(1)…を反転させて葉面施養水ついで水切りを行うようにしてもよい。
【実施例2】
【0017】
本例は、パネルに植えつけた植物に葉面施養水を行う例である。
パネル(1a)は、合成樹脂発泡体、木材等の長方形板に多数の植えつけ孔(3a)…を設け、該植えつけ孔(3a)…に植えつけた植物の葉茎部(4a)をパネル(1a)上に、根(5a)をパネル(1a)下にそれぞれ延出したもので、この植物植えつけパネル(1a)の多数枚を、培養液(11a)を入れた上面開口の箱型栽培兼葉面施養水槽(10a)液面近くに支持し、その根(5a)…を培養液(11a)に浸漬して栽培を行う。
【0018】
図2(イ)のように栽培を行っている植物が、夏期等に葉からの蒸散が激しいため、葉面施養水が必要になった場合は、同図(ロ)のように植物植設パネル(1a)…を反転すると共に、下向きになった葉茎部(4a)…を培養液(11a)中に浸漬して葉面施養水を行う。
【0019】
ここで、根(5a)…の乾燥を防ぐため、栽培槽(10a)の培養液(11a)をポンプ(14a)により散水管(15a)に送り、該散水管(15a)の各散水ノズルから各根(5a)…に散水するようにしてもよい。
【0020】
所要時間葉面施養水を行った後、反転状態のままパネル(1a)…を上方へ持ち上げ、葉茎部(4a)…を培養液(11a)から引き上げ、その状態で、ハンドル(8a)、(8a)を吊り具(12a)、(12a)に着脱自在に係止して、引き上げ状態に保持し、作業時の振動と相まって水切りを行う。それと共に水分の気化により葉茎部を冷却する。
【0021】
さらに、本例では、送風機(16a)、(16a)により葉茎部(4a)…に風を送り、上記水分の気化を促進し、又風圧による揺らし及び乾燥により上記水切り作用をさらに促進する。
【0022】
水切り後、各パネル(1a)…は正姿勢に戻し、元の栽培に移す。
【符号の説明】
【0023】
4、4a 葉茎部
5、5a 根
11、11a 培養液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を、葉茎部を下に、根を上に向けた反転状態で、該葉茎部を養水分中に浸漬して葉面施養水を行い、
ついで、上記植物を、上記反転状態で、上記養水分中から上方へ引き上げて水切りする、
植物の葉面施養水方法。

【図1】
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【図2】
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