説明

著しく狭い粒径分布の焼成カオリン

本発明は、著しく狭い粒径分布を有する焼成カオリンに関する。前記焼成カオリンは、式
【数21】


の粒径分布を有することができる。前記焼成カオリンは、式
【数22】


の粒径分布を有する含水カオリンから調製することができる。前記焼成カオリンは、紙または板紙の塗料およびコーティング組成物のような多くの応用に使用することができ、もっと一般的には、本発明の生成物は、焼成カオリンが使用されるところではどこでも使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、全体が参照により本明細書に組み込まれている2003年3月19日に出願された発明の名称「著しく狭い粒径分布の焼成カオリン」の米国仮出願第60/455,571号の特典を請求する。
【0002】
本発明は、狭い粒径分布を有する焼成カオリンを含む組成物に関する。この組成物は、例えば塗料、プラスチック、ポリマー、製紙、およびコーティング組成物中の充填剤または増量剤のような多くの用途を有することができる。さらに一般的には、本発明の生成物は、焼成カオリンが使用されるところではどこでも使用することができる。
【背景技術】
【0003】
粒子状カオリンは、水を含む形で天然に産出し、ヒドロキシ官能基を有する結晶構造として存在する。粒子状カオリンは、熱的プロセスによって焼成された形に変換され得る。そのようなプロセスは、粒子状カオリンの脱ヒドロキシル化を引き起こす。焼成中に、含水カオリンは、結晶形から非晶質形へ変換する。さらに、焼成中に、典型的に凝集が起こる。
【0004】
焼成カオリンは、顔料の不透明度を改良するために使用することができ、塗料、プラスチック、ゴム、シーラント中の顔料として、およびセラミック、セメント質製品およびその他の応用組成物の原材料として広範囲の使用が見出されている。例えば、焼成カオリンは、塗料およびコーティング中のつや消し剤として使用することができる。焼成カオリンは、最終の乾燥された塗料フィルムの表面の光沢および光輝を調節するのを助けることができる。光学的な塗料フィルム特性に関しては、焼成カオリンは不透明度、白色度、およびその他の望ましい特性を付与することができる。焼成カオリンは、白色度または不透明度の最小限の減少で、二酸化チタンおよびその他のもっと高価な顔料を部分的に置き換えることによって、増量剤としての役目を果たす。
【0005】
一般的に、含水および焼成のカオリン顔料の両方の特性は、いくつかの顔料に関係する属性、例えば個々の粒子およびその凝集塊の粒径(粒径分布、またはPSDによって表現される)、形状およびテクスチャーに依存する。典型的な焼成カオリンは、著しく広範な粒径分布を有する。これらのカオリンは、焼成カオリンのそれよりさらに広範な粒径分布を有する含水供給原料から調製される。
【特許文献1】WO99/24360
【特許文献2】米国特許第6,136,086号
【特許文献3】米国特許第3,450,257号
【特許文献4】米国特許第4,227,920号
【特許文献5】米国特許第5,685,900号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば塗料の不透明度、白色度、および光沢/光輝の調節のようないくつかの改良される物理的特性の少なくとも1つを与えることができる顔料への必要性が残存している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様は、焼成カオリンからなる組成物であって、前記焼成カオリンが、式:
【数10】


の粒径分布を有し、さらに焼成カオリンが、少なくとも約1〜約3μmの範囲の中央(median)粒径を有し、前記組成物中に存在するアルカリおよびアルカリ土類金属の合計が、前記組成物の全重量に対して約1.0重量%未満またはそれに等しいことを特徴とする組成物を提供する。
【0008】
本発明のもう1つの態様は、
(a)式:
【数11】

の粒径分布を有する含水カオリンを供給すること、
(b)前記含水カオリンを少なくとも部分的に脱ヒドロキシル化するのに十分な時間、約500℃〜約1200℃の範囲の少なくとも1つの温度に含水カオリンを加熱すること、
(c)式:
【数12】


の粒径分布を有する焼成カオリンからなる組成物を形成することからなることを特徴とする、焼成カオリンの調製方法を提供する。
【0009】
本発明のもう1つの態様は、焼成カオリンからなる組成物であって、前記焼成カオリンが式:
【数13】


の粒径分布を有し、さらにブラジルのRio Capim地域から得られる含水カオリンから形成されることを特徴とする組成物を提供する。
【0010】
本発明のもう1つの態様は、
(a)式:
【数14】

の粒径分布を有する含水カオリンを供給すること、および
(b)前記含水カオリンを少なくとも部分的に脱ヒドロキシル化するのに十分な時間、約500℃〜約1200℃の範囲の少なくとも1つの温度に含水カオリンを加熱すること
からなり、前記含水カオリンが、ブラジルのRio Capim地域から得られるものであることを特徴とする、焼成カオリンの調製方法を提供する。
【0011】
本発明のもう1つの態様は、焼成カオリンからなる組成物であって、前記焼成カオリンが式:
【数15】


の粒径分布を有し、さらに前記組成物中に存在するアルカリおよびアルカリ土類金属の合計が、前記組成物の全重量に対して約1.0重量%未満またはそれに等しく、さらに焼成カオリンは、含水カオリンから形成され、前記焼成カオリンは、限定工程(defining step)なしで精製されることを特徴とする前記組成物を提供する。
【0012】
本発明のもう1つの態様は、
(a)式:
【数16】

の粒径分布を有する含水カオリンを供給すること、
(b)前記含水カオリンを少なくとも部分的に脱ヒドロキシル化するのに十分な時間、約500℃〜約1200℃の範囲の少なくとも1つの温度に含水カオリンを加熱すること、および
(c)焼成カオリンからなる組成物を形成することからなり、前記組成物は、限定工程なしで精製されることを特徴とする、焼成カオリンの調製方法を提供する。
【0013】
本発明のもう1つの態様は、焼成カオリンからなる組成物であって、前記焼成カオリンが式:
【数17】


の粒径分布を有し、さらに前記組成物は、少なくとも約1μmの中央粒径を有し、かつ、少なくとも約100%の吸油度を有することを特徴とする組成物を提供する。
【0014】
一般的に、カオリンは、コーティングに対して充填剤として、および不透明度を加えるためにコーティングにおいて使用される。塗料フィルムの不透明度は、光が2つ以上の異なる材料を通して移動する場合、特にその異なる材料が、著しく異なる屈折率を有する場合に起こる光散乱に関係する。カオリンからなる組成物において、光は、カオリン粒子および空洞または空隙の両方によって散乱させることができる。したがって、顔料および空洞または空隙の両方によって光散乱を最大化させるマトリックス中にカオリン粒子および空洞または空隙の配列を実現することが望まれる。
【0015】
非常に狭い粒径分布を有する焼成カオリンが、マトリックス中にカオリン粒子および空洞または空隙の最適の配列をもたらすことができ、光散乱が改良され、それにより不透明度が改良されるということは、予期しない発見である。
【0016】
粒子物質の粒径分布(psd)は、しばしば「勾配因子(steepness facter)」によって特徴付けられる。勾配スチープネス(steepness)は、y軸上の粒子の累積重量パーセントに対して粒子直径がx軸にプロットされているpsd曲線の傾斜から誘導される。広い粒子分布は、低い勾配値を有するが、狭い粒径分布は、高い勾配因子を伴う。
【0017】
本発明の1つの態様は、狭い粒径分布、すなわち、Sedigraph 5100によって決定される(2)粒子の20%未満の累積質量(cumulative mass)における粒径に対する(1)粒子の80%未満の累積質量における粒径の比率によって測定される高い勾配因子を有する焼成カオリンに関する。特に、粒径分布は、式:
【数18】


によって特徴付けられる。
【0018】
この比率はまた、80/20相対粒径比率(RPR)と称される。
【0019】
本出願で言及される粒径およびその他の粒径特性は、例えばMicromeritics Corporationによって供給されるSEDIGRAPH 5100装置を使用して水性媒体中の完全に分散された状態での粒子物質の沈降法による既知の方法で測定される。所定の粒子のサイズは、分散体を通して沈殿する同等の直径の球体の直径、すなわち同等球体直径またはesdの点から表される。実施例を含む本明細書中で測定され、報告されている全ての粒子データは、標準温度34.9℃で水中において行われた測定により、既知の方法で採取されたものである。本明細書中に表された全てのパーセントおよび量は、重量基準である。本明細書に表された全ての量、パーセントおよび範囲は、近似値である。
【0020】
1つの態様において、焼成カオリン組成物は、少なくとも約1μmのSedigraph 5100による中央粒径を有する。もう1つの態様においては、焼成カオリン組成物は、少なくとも約1〜約3μmの範囲の中央粒径を有している。
【0021】
本明細書に使用される「焼成カオリン」は、熱的な方法によって相応の(天然に産出する)含水カオリンから脱ヒドロキシル化された形に変換されたカオリンをいう。焼成は、その他の特性の中でカオリン構造を結晶形から非晶質形に変化させる。焼成は、例えば500℃〜1200℃の範囲の温度、例えば800℃〜1200℃の範囲の温度で、いずれかの既知の方法で、きめの粗いまたは細かな含水カオリンを加熱処理することによって実行される。
【0022】
含水カオリンが結晶形において変化を受ける程度は、含水カオリンが受ける熱の量に依存する。最初に、含水カオリンの脱ヒドロキシル化は、熱にさらされたときに起こり得る。最高約850〜900℃より低い温度では、生成物は、メタカオリンと通常称されている生成した非晶質形構造を有していて、実質的に脱ヒドロキシル化されていると考えられる。しばしば、この温度での焼成は、「部分焼成」と称され、また生成物は、「部分焼成カオリン」と称することができる。約900〜950℃より高い温度へのさらなる加熱は、例えば高密度化のようなさらなる構造変化を生じ得る。これらのさらに高い温度での焼成は、「完全焼成」と通常称され、生成物は、「完全焼成カオリン」と通常称される。
【0023】
さらなる焼成は、ムライトの形成を引き起こし得る。本発明による組成物の全重量に対して約2〜約3重量%の範囲のムライト濃度は、例えばセラミック触媒基材、例えばコーディエライト基材のようないくつかの最終用途の応用に有用であり得る。その他の態様において、ムライトは、前記組成物の全重量に対して約2%より大きい、約5%より大きい、または約8%より大きい範囲の量で前記組成物中に存在することもあり得、それらもまた、いくつかの最終用途の応用に有用であり得る。
【0024】
したがって、本明細書で使用される「焼成」は、部分(メタ)および/または完全および/または瞬間焼成を含むいかなる程度の焼成も包含し得る。
【0025】
効果的な焼成方法は、ソーク焼成(soak calcining)および/または瞬間焼成を含むが、それらに限定されない。ソーク焼成においては、含水カオリンが、カオリンを脱ヒドロキシル化するのに充分な時間(例えば少なくとも1分〜5時間以上)、本明細書に記載されたように500℃〜1200℃の範囲の温度、例えば800℃〜1200℃、850〜900℃または900〜950℃の温度で熱処理される。瞬間焼成においては、含水カオリンが、1秒未満、典型的には0.5秒未満の時間、急速に加熱される。
【0026】
含水カオリンの焼成を実行するのに使用される炉、キルンまたはその他の加熱装置は、いずれかの知られている種類のものであり得る。ソーク焼成を行うために適当な、知られている装置は、高温オーブンおよび回転および垂直キルンを含む。瞬間焼成を実行するための知られている装置は、ドーナツ形の流動加熱装置、例えばその開示が、本明細書に参照により組み込まれているWO99/24360に記載されているものを含む。
【0027】
狭い粒径分布を有する焼成カオリンが、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属化合物を有する含水カオリンによって製造され得ることが以前に提案されている。これらの金属化合物は、含水カオリンに天然に存在し得るか、「フラクシング(fluxing)」(参照、例えば米国特許第6,136,086号)と称されるプロセスを促進するために焼成前に含水カオリンに加えられ得る。フラクシングは、強力で、永久的なカオリンの結合を引き起こすために、例えばアルカリおよびアルカリ土類金属化合物のような融剤(fluxing agent)を加えることを含む。しかしながら、フラクシングプロセスの結果として、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が焼成カオリン生成物の中に残存し、いくつかの応用において有害な不純物として作用し得る。
【0028】
したがって、本発明のもう1つの態様は、狭い粒径分布を有し、アルカリおよびアルカリ土類金属化合物を実質的に含まない焼成カオリン組成物を提供する。本発明は、焼成前のアルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物の添加を避け、高純度の焼成カオリン生成物を生成する。ある態様においては、「アルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物を実質的に含まない」ことは、前記組成物の重量に対して約1重量%未満の量で存在するアルカリおよびアルカリ土類金属を有する、すなわち前記組成物中に存在するアルカリおよびアルカリ土類金属の合計が、前記組成物の全重量に対して約1.0重量%以下の焼成カオリンを指す。もう1つの態様では、前記組成物中に存在するアルカリおよびアルカリ土類金属の合計が、前記組成物の全重量に対して約0.75重量%以下、例えば約0.6%以下、0.5%以下、または0.25重量%以下である。
【0029】
またある態様において、焼成カオリンは、最適の吸油特性を有する。吸油度は、顔料100gによって吸収される油のグラム数(単位g/g、%として示される)を称し、顔料の総多孔度の指標である。吸油度は、粒子構造および粒径に依存する。吸収度が高くなると、不透明度は増す。1つの態様においては、焼成カオリンの吸油度は、少なくとも約100%、例えば少なくとも約110%である。
【0030】
本発明のもう1つの態様は、狭い粒径分布を有する焼成カオリンの調製方法を提供する。この方法は、
(a)式:
【数19】

の粒径分布を有する含水カオリンを供給すること、および
(b)前記含水カオリンを少なくとも部分的に脱ヒドロキシル化するのに十分な時間、約500℃〜約1200℃の範囲の少なくとも1つの温度に含水カオリンを加熱すること
からなる。
【0031】
(a)における比率は、また80/40相対粒径比(RPR)と称される。したがって、(a)において、含水カオリンは、比較的に狭いpsdを有するように選択される。ある態様においては、(a)における含水カオリンは、少なくとも約0.5〜約2μmの範囲内の中央粒径を有する。(a)におけるカオリンは、市販のものを購入することができる。代わりに、(a)における含水カオリンは、天然に産出するカオリンの精製、例えば遠心分離および/または限定(defining)によって得ることができる。例示的な天然に産出するカオリンは、米国、例えばジョージア州、ブラジル、例えばRio Capim地域、オーストラリアおよび英国から得られるものである。
【0032】
1つの態様においては、含水カオリンは、少なくとも約10の形状係数(Shape factor)、例えば少なくとも約20の形状係数を有する板状である。
【0033】
(b)の前に、カオリンは、望ましくない不純物を除去するために1つまたは複数のよく知られている選鉱工程にかけることができる。例えば、カオリン粘土の水性分散体を泡浮選処理にかけて、泡沫中にチタンを含有する不純物を除去することができる。さらに具体的な例においては、そのスラリーは、浮遊槽中で生成される空気の泡を被覆するためにオレイン酸で調節することができる。チタニア鉱物は、空気の泡に付着し、カオリンスラリーから浮き出てくる。そのような浮選プロセスは、参照により本明細書に組み込まれているCundyへの米国特許第3,450,257号に記載されている。このプロセスは、カオリン顔料に改良された明度、すなわち約0.1〜約3ユニットの範囲の明度の増加を生じさせる。
【0034】
その代わりに、または加えて、カオリンは、(b)の前に分散体として高強度磁気分離機を通して鉄を含む不純物を除去することができる。標準の高強度湿潤磁気分離機が使用され得る。このプロセスもまた、例えば約0.1〜約3.0ユニットの範囲の明度の増加をもたらすことができる。
【0035】
また場合により、カオリンは、(b)の前に、カオリン粘土が分散体に残っている間に不純物が分散体から凝集される選択的凝集プロセスにかけることができる。1つの例においては、百万を超える分子量または約1000万〜約1500万の範囲の分子量を有する高分子量の陰イオン性ポリマーが使用され得る。前記陰イオン性ポリマーは、ポリアクリルアミドのコポリマーまたは両性高分子電解質であり得る。精製された粘土スラリーは、オゾン化され、浸出され(漂白され)、および/またはろ過され得る。その後、粘土は酸凝集され、乾燥され、またはメイクダウン(makedown)タンクに再分散され、交互にスプレー乾燥される。特定の選択的な凝集プロセスの詳細は、ChapmanおよびAndersonへの米国特許第4,227,920号、オゾン処理を含むYuanらへの米国特許第5,685,900号に見出すことができる。
【0036】
(b)における含水カオリンの加熱は、前に論じられた焼成プロセスのいずれかを指す。少なくとも1つの温度に加熱することは、含水カオリンを1つの温度のみで、2つ以上の異なる温度で、または温度の範囲にわたって含水カオリンを加熱することを含む。加熱は、加熱の時間および温度に依存して、含水カオリンが部分的にまたは完全に焼成する間、行うことができる。例えば、1つの態様において、(b)における加熱は、含水カオリンを部分的に焼成するのに充分な時間行われる。もう1つの態様において、(b)における加熱は含水カオリンを完全に焼成するのに充分な時間行われる。
【0037】
本発明の焼成カオリン組成物は、増加された不透明度、白色度または光輝/光沢の調節が望まれる様々な応用に使用することができる。例えば、本発明の焼成カオリン生成物は、これらの特性のいずれか1つが望まれるコーティング組成物に使用することができる。本発明の生成物はまた、例えば充填されたプラスチック、ゴム、シーラントおよびケーブルの製造のようなカオリンが使用されるところではどこでも有用であり、または、セラミック製品、セメント質製品、および紙製品および紙コーティングの製造に使用され得る。
【0038】
本発明は、超軽量の被覆された紙から、被覆されまたは充填された板紙までの全てのグレードの紙の製造に使用することができる。紙および板紙の製品は、最終的な紙または板紙の明度および不透明度を改良することができるコーティングを含むことができる。
【0039】
本発明の生成物は、また、増量剤として役立ち得、不透明度または色合いの強さの容認できない損失なしで高価な二酸化チタン顔料の部分的な置換を可能にする。増量剤物質は、紙、ポリマー、塗料などに使用され、または紙、板紙、プラスチック、書類などのコーティングのためのコーティング顔料またはカラー成分として使用される。
【0040】
したがって、本発明の1つの態様は、被覆紙または被覆板紙の製造方法を提供する。この方法は、繊維質基材を式:
【数20】


の粒径分布を有する焼成カオリンで被覆することを含む。
【0041】
本発明の他の態様は、上記の粒径分布を有する焼成カオリンからなる、紙または板紙のコーティングまたは塗料を含む。
【0042】
焼成カオリンおよび任意に本明細書に記載されている増粘剤、分散剤、および殺生物剤の少なくとも1つの成分を含む塗料組成物は、追加的にポリマーバインダー、一次的顔料、例えば二酸化チタン、二次的顔料、例えば炭酸カルシウム、シリカ、かすみ石せん長岩、長石、ドロマイト、珪藻土、およびフラックス焼成珪藻土から選択される少なくとも1つの追加成分を含むことができる。そのような塗料組成物の水系に関しては、例えばポリビニルアルコール(PVA)およびアクリルのような水分散可能なバインダーが使用され得る。本発明の塗料組成物は、また、以下のものに限定されないが、界面活性剤、増粘剤、消泡剤、湿潤剤、分散剤、溶剤および合体剤を含むその他の従来の添加剤を含むことができる。
【0043】
本発明による紙コーティングは、上記の焼成カオリンに加えて、紙コーティングおよび紙充填剤の製造に一般的に使用される材料を含むことができる。その組成物は、バインダーおよび例えばTiOのような顔料を含むことができる。本発明によるコーティングは、以下のものに限定されないが、任意に、分散剤、架橋剤、水分保持助剤、粘度変性剤または増粘剤、潤滑助剤またはカレンダー助剤、制泡剤/消泡剤、グロスインク・ホールドアウト(gloss−ink hold−out)添加剤、乾燥または湿潤摩擦改良添加剤または耐摩耗性添加剤、乾燥または湿潤ピック(pick)改良添加剤、光学的光沢剤または蛍光増白剤、染料、殺生物剤、レベリングまたは平滑助剤、耐グリースまたは耐油添加剤、耐水添加剤、および/または不溶化剤を含むその他の添加剤を含むことができる。
【0044】
いずれの技術分野でも認知されているバインダーも本発明に使用することができる。例示的なバインダーは、以下のものに限定されないが、知られている植物供給源、例えば小麦、とうもろこし、じゃがいも、またはタピオカから得られる天然澱粉に由来する接着剤、およびスチレンブタジエン、アクリルラテックス、酢酸ビニルラテックスまたはスチレンアクリル、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、またはそれらの混合物を含む合成バインダーを含む。
【0045】
紙コーティングは、被覆された紙製品と共に使用される印刷のタイプに依存する非常に異なるバインダーの量を有する。所望の最終製品に基づく適当なバインダーの量は、当業者にとって容易に明らかであろう。バインダーの量は、分裂することなく表面にインクを受容させるために調節される。紙コーティングのためのラテックスバインダーの量は、一般的に約3〜約30%の範囲である。本発明による1つの態様において、バインダーは、約3〜約10%の範囲の量で紙コーティング中に存在する。本発明による1つの態様においては、バインダーは、約10〜約30重量%の範囲の量でコーティング中に存在する。
【0046】
もう1つの態様において、本発明は、本明細書に記載された焼成カオリン組成物からなるポリマーを提供する。もう1つの態様において、本発明は、本明細書に記載された焼成カオリン組成物からなるワイヤーまたはケーブルのためのポリマー被覆材を含む。もう1つの態様において、本発明は、本明細書に記載された焼成カオリン組成物からなるゴム組成物を含む。
【0047】
本発明のもう1つの態様は、例えば自動車触媒コンバーターのような触媒応用または触媒クラッキング応用における使用のための狭いpsdを有する焼成カオリンを提供する。自動車触媒コンバーターにおいて、焼成カオリンは、例えば白金またはパラジウムのような金属触媒の薄い層の支持構造体として使用することができる。したがって、本発明の1つの態様は、上記の焼成カオリンからなる自動車触媒支持体のための組成物を提供する。焼成カオリンは、また、触媒としてまたは触媒と結合して触媒クラッキングの応用のためのゼオライトの製造に使用されてきた。したがって、本発明のもう1つの態様は、上記の焼成カオリンからなる触媒クラッキングのための組成物を提供する。
【0048】
1つの態様において、本発明は、本明細書に記載された焼成カオリンからなるセラミックのための供給原料を供給する。セラミックは、例えば触媒コンバーターに使用される触媒のような触媒を支持するために使用され得る。もう1つの態様では、セラミックは触媒を含む。
【0049】
本発明は、純粋に本発明の例示であることを意図された次の非限定的な実施例によってさらに明らかにされるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
〔実施例〕
これらの実施例において、粒径は、Sedigraph 5100によって測定された。
【実施例1】
【0051】
焼成された含水カオリンの粒径分布は、後記の表Iに示されてる。この実施例において、含水カオリンAおよびBから調製された焼成カオリンの粒径分布が、従来の焼成カオリンのそれと比較された。含水カオリンAおよびBは、得られた80/40相対粒径比率(RPR)が3.5未満であるような狭い粒径分布を有するように選択された。これに対し、従来の焼成カオリンのための供給原料の80/40RPRは、6.0で、その値は3.5より相当高かった。
【0052】
含水カオリンAおよびBおよび市販の焼成カオリンのための供給原料が、完全に焼成されるまで1050℃で焼成された。また表Iは、得られた焼成カオリンの粒径分布を表にしたものである。従来の焼成カオリンの80/20RPRは、3.0よりかなり高いところにある。これに対して、本発明の焼成カオリンAおよびBは、それぞれ80/20RPRが2.9および2.4を有する狭い粒径分布を与えた。
【表1】

【実施例2】
【0053】
この実施例は、アルカリおよびアルカリ土類金属化合物を含有する含水カオリンから調製された焼成カオリンの粒径分布が、実施例1からの本発明の焼成カオリンAおよびBと比較された。表IIは、実施例1のサンプルAおよびBおよびこの実施例のアルカリ金属含有カオリンの含水および焼成カオリンの粒径分布を表にしたものである。
【表2】

【0054】
アルカリ金属含有含水サンプルは、3.5より少し上の80/40RPRを有していた。しかしながら、含水カオリンを1050℃で完全に焼成しても、80/20RPRは3.0より下に下落しなかった。これに対し、本発明の焼成カオリンAおよびBサンプルは、出発の含水カオリンにアルカリ金属不純物を加える工程を必要とせずに、80/20RPRが3より低いことによって証明されるように、非常に狭い粒径分布を達成した。したがって、得られた焼成カオリン生成物は、フラックシング(fluxing)によって得られるものより、高い純度を有していた。表IIIには、本発明の焼成カオリンAおよび焼成カオリンBの焼成カオリン生成物、さらにフラックシングで調製した焼成カオリンに存在する金属不純物の量を表にしてある。
【表3】

【0055】
本発明の焼成カオリンAおよび焼成カオリンBは、アルカリおよびアルカリ土類金属の不純物を合計量で0.55%未満含有していた。これに対し、アルカリ金属含有焼成生成物は、アルカリおよびアルカリ土類金属の不純物を少なくとも2.1%含有していた。
【実施例3】
【0056】
実施例1の焼成カオリン生成物の物理的特性は、次の表IVに示される。
【表4】

【0057】
吸油度は、Spatula Rub−out Oil Absorption Test(ASTM D−281)によって測定された。本発明の焼成カオリンAおよび焼成カオリンB顔料の吸油度は、市販の顔料よりも高かった。
【0058】
本発明の焼成カオリンAおよびBサンプルおよび市販の焼成カオリンを含む44%PVC(顔料容量濃度)の配合物が、表Vの配合に示されるように調製された。
【表5】

【0059】
表VIは、44%PVC配合物の塗料フィルム特性をまとめたものである。
【表6】

【0060】
光沢および光輝は、Hunter Pro−3 Gloss Meterを使用して知られている方法で測定された。ASTM−E−313白色および黄色は、Hunter Ultrascan XE装置を使用してなされた白色度および白色に近い不透明のフィルムコーティングの黄色度の標準の測定値である。コンポーネントa、bおよびLは、Hunter Ultrascan XE装置で測定されたカラースペーススケール(color space scale)でのカラー成分値である。「+a」は、赤色の色合いの尺度、「−a」は、緑色の色合いの尺度、「+b」は、黄色の色合いの尺度、「−b」は、青色の色合いの尺度、「L」は、白色度の尺度である。
【0061】
本発明の顔料から調製された配合物から得られた塗料フィルムは、市販の含水カオリンから調製された顔料に匹敵する光沢およびそれに匹敵する光輝を与えることが表VIから理解され得る。さらに、本発明の組成物は、改良された白色度、明度およびコントラスト比を示した。
【0062】
色づけされたフィルムが、塗料100ガロンにフタロブルー分散体11ポンドの当量を加えることによって44%PVCから製造された。表VIIは、44%PVC配合物からの色づけされた塗料フィルムの特性をまとめた。
【表7】

【0063】
パラメーターΔEは色合いの強さの尺度であり、式:ΔE=(ΔL+Δa+Δb1/2によって与えられる。再び、本発明の組成物は優れた全体的な色合いの強さを示した。
【0064】
表VIIIの配合に示されるように、本発明の焼成カオリンAおよびBサンプルおよび市販の焼成カオリンを含む65%PVC配合物が調製された。
【表8】

【0065】
表IXに65%PVC配合物の塗料フィルム特性をまとめた。
【表9】

【0066】
本発明の組成物を使用して製造された塗料フィルムは、市販の焼成カオリンから調製された塗料と比較して、それに匹敵する光沢および光輝を示し、それより優れた白色度および明度の特性を示した。
【0067】
表Xに65%PVC配合物からの色づけされたフィルムの特性がまとめた。
【表10】

【0068】
再び、本発明の組成物は、市販の従来の焼成された生成物に比較して、65%PVC塗料において優れた色合いの強さの特性を示した。
【0069】
別段の記載がない限り、本明細書および特許請求の範囲に使用される成分の量、反応条件などを表現する全ての数字は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対のことが示されない限り、以下の明細書および付属の特許請求の範囲に記述された数字のパラメーターは、本発明によって得ようとする所望の特性に依存して変化し得る概略値である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成カオリンからなる組成物であって、前記焼成カオリンが、式:
【数1】

の粒径分布を有し、さらに焼成カオリンが、少なくとも約1μm〜約3μmの範囲の中央粒径を有し、前記組成物中に存在するアルカリおよびアルカリ土類金属の合計が、前記組成物の全重量に対して約1.0重量%未満またはそれに等しいことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記焼成カオリンが、式:
【数2】

の粒径分布を有する含水カオリンから製造される請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記含水カオリンが少なくとも約0.5μm〜約2μmの範囲の中央粒径を有する請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記含水カオリンが、少なくとも約10の形状係数を有する請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物中に存在するアルカリおよびアルカリ土類金属の合計量が、前記組成物の全重量に対して約0.5重量%未満またはそれに等しい請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、少なくとも約100%の吸油度を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、少なくとも約110%の吸油度を有する請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記焼成カオリンが、ムライトからなる請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ムライトが、前記組成物の全重量に対して少なくとも約2重量%の量で前記組成物中に存在する請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ムライトが、前記組成物の全重量に対して少なくとも約5重量%の量で前記組成物中に存在する請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記ムライトが、前記組成物の全重量に対して少なくとも約8重量%の量で前記組成物中に存在する請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記焼成カオリンがメタカオリンからなる請求項1に記載の前記組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の組成物からなる塗料。
【請求項14】
請求項1に記載の組成物からなるポリマー。
【請求項15】
請求項1に記載の組成物からなるケーブル被覆材。
【請求項16】
請求項1に記載の組成物からなるゴム。
【請求項17】
請求項1に記載の組成物からなるセラミック用供給原料。
【請求項18】
請求項17に記載の供給原料から得られる触媒支持用セラミック。
【請求項19】
請求項17に記載の供給原料から得られるセラミックを含む触媒。
【請求項20】
請求項1に記載の触媒クラッキング用組成物。
【請求項21】
請求項1に記載の焼成カオリンからなる紙コーティング組成物。
【請求項22】
繊維質基材をスラリーで被覆することからなり、前記スラリーが請求項1に記載の組成物からなることを特徴とする被覆紙の製造方法。
【請求項23】
(a)式:
【数3】

の粒径分布を有する含水カオリンを供給すること、
(b)前記含水カオリンを少なくとも部分的に脱ヒドロキシル化するのに充分な時間、約500℃〜約1200℃の範囲の少なくとも1つの温度に含水カオリンを加熱すること、
(c)式:
【数4】

の粒径分布を有する焼成カオリンからなる組成物を形成すること
からなることを特徴とする焼成カオリンの調製方法。
【請求項24】
(a)における前記含水カオリンが、少なくとも約0.5μm〜約2μmの範囲の中央粒径を有する請求項23に記載の方法。
【請求項25】
(c)における前記焼成カオリンからなる組成物中に存在するアルカリおよびアルカリ土類金属の合計が、前記組成物の全重量に対して約1.0重量%未満またはそれに等しい請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記含水カオリンが、(b)の前に少なくとも1つの選鉱プロセスにかけられる請求項23に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1つの選鉱プロセスが、フロス浮選、磁気的分離、選択的凝集および浸出から選択される請求項26に記載の方法。
【請求項28】
(b)における前記加熱が、含水カオリンを完全に脱ヒドロキシル化するのに充分な時間で起こる請求項23に記載の方法。
【請求項29】
(b)における前記加熱が、瞬間焼成を含む請求項23に記載の方法。
【請求項30】
(c)における前記組成物が、完全焼成カオリンからなる請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記完全焼成カオリンが、ムライトからなる請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ムライトが、前記組成物の全重量に対して少なくとも約2重量%の量で前記組成物中に存在する請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記ムライトが、前記組成物の全重量に対して少なくとも約5重量%の量で前記組成物中に存在する請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記ムライトが、前記組成物の全重量に対して少なくとも約8重量%の量で前記組成物中に存在する請求項33に記載の方法。
【請求項35】
(c)における前記組成物が、メタカオリンからなる請求項23に記載の方法。
【請求項36】
(c)における前記焼成カオリンからなる前記組成物が、少なくとも約1μm〜約3μmの範囲の中央粒径を有する請求項23に記載の方法。
【請求項37】
式:
【数5】

の粒径分布を有する焼成カオリンからなり、さらにブラジルのRio Capim地域から得られる含水カオリンから形成されることを特徴とする組成物。
【請求項38】
前記含水カオリンが、少なくとも約0.5μm〜約2μmの範囲の中央粒径を有する請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
(a)式:
【数6】

の粒径分布を有する含水カオリンを供給すること、
(b)前記含水カオリンを少なくとも部分的に脱ヒドロキシル化するのに十分な時間、約500℃〜約1200℃の範囲の少なくとも1つの温度に含水カオリンを加熱すること
からなり、前記含水カオリンが、ブラジルのRio Capim地域から得られるものであることを特徴とする焼成カオリンの調製方法。
【請求項40】
前記含水カオリンが、少なくとも約0.5μm〜約2μmの範囲の中央粒径を有する請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
式:
【数7】

の粒径分布を有する焼成カオリンからなる組成物であって、さらに前記組成物中に存在するアルカリおよびアルカリ土類金属の合計が、前記組成物の全重量に対して約1.0重量%未満またはそれに等しく、さらに前記焼成カオリンは、含水カオリンから形成され、前記焼成カオリンは、限定工程なしで精製されることを特徴とする組成物。
【請求項42】
(a)式:
【数8】

の粒径分布を有する含水カオリンを供給すること、
(b)前記含水カオリンを少なくとも部分的に脱ヒドロキシル化するのに十分な時間、約500℃〜約1200℃の範囲の少なくとも1つの温度に含水カオリンを加熱すること、
(c)焼成カオリンを含む組成物を形成すること
からなり、前記組成物は、限定工程なしで精製されることを特徴とする焼成カオリンの調製方法。
【請求項43】
(a)における前記含水カオリンが、少なくとも約10の形状係数を有する請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
焼成カオリンを含む組成物であって、前記焼成カオリンが式:
【数9】

の粒径分布を有し、さらに前記組成物は、少なくとも約1μmの中央粒径を有し、かつ少なくとも約100%の吸油度を有することを特徴とする組成物。
【請求項45】
前記組成物が少なくとも約110%の吸油度を有する請求項44に記載の組成物。

【公表番号】特表2006−524175(P2006−524175A)
【公表日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507187(P2006−507187)
【出願日】平成16年3月16日(2004.3.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/007821
【国際公開番号】WO2004/085336
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(505348371)アイメリーズ カオリン,インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】