説明

葛根資源の完全または高度利用

【課題】葛根の効能成分を選択的に収着させた葛澱粉または澱粉組成物を得る製造方法、この製造工程で発生する廃棄物から動物飼料または飼料添加剤を得る製造方法、および、これらの製造方法で得られた風味・食感・効能ともに優れた機能性本葛粉または機能性澱粉、および動物飼料または飼料添加剤を提供する。
【解決手段】一番絞り汁の調整利用工程(A)、イソフラボンの吸蔵工程(B)、絞り残渣の飼料加工工程(C)により、風味・食感・効能ともに優れた機能性本葛粉または機能性澱粉、および動物飼料または飼料添加剤を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、葛根を食糧資源としての完全または高度利用に、具体に、葛根の効能成分を選択的に収着する葛澱粉または澱粉組成物を得る製造方法、この製造工程で発生する廃棄物から動物飼料または飼料添加剤を得る製造方法、および、これらの製造方法で得られた風味・食感・効能ともに優れた機能性本葛粉または機能性澱粉、および動物飼料または飼料添加剤に関している。
【背景技術】
【0002】
葛(くず)は多年性蔓状草本、秋の七草の一つである。植物学の分類としてはマメ科ソラマメ亜科アズキ族クズ属に属する。古くから漢方として利用されてきた。古典の「神農本草経」をはじめ現代の医学文献まで沢山記載されている。解毒、鎮徑、脳冠状血管血流増加作用、高血圧の治療効果、血糖降下作用、発汗解熱効果、がん抑制作用、抗菌効果、更年期諸障害の改良効果などが優れているといわれる。
【0003】
葛植物は、成長力が旺盛で栽培しやすく、また優れた効能活性や栄養価などの理由で、世界中に注目されつつある。FAO(国連食糧機構)の専門家によると、近い将来世界で第六食糧作物となると予測される。伝統的に葛を利用してきた中国では国家プロジェクトとして取り込んでいるといわれる。
【0004】
米国は19世紀70年代で葛の旺盛な成長力に目をつけ、水土保持の植物として日本から持ち帰った。また数十年間葛の地上部を家畜飼料や肥料として利用していた実績がある。近年では葛から健康食品、生物薬品、飼料を開発する研究が盛んに行われている。
【0005】
日本では、伝統的な食品として、葛根から取れた澱粉は「本葛粉」と呼ばれている。「本葛粉」は高級食材や病人回復食として使われてきた。京料理や和菓子の材料として日本の独特な文化を支えている。
【0006】
葛澱粉は長い歴史の中で珍重されてきた理由として他の澱粉がない独特な風味、食感、健康効能であることが挙げられる。しかし、これらの優れた特性を生み出す成分の特徴は科学的に不明のままである。
【0007】
一般に乾燥ベースで100kg葛根から15kg位の澱粉がしかとれない。しかも、手作業と時間のかかる寒晒などの伝統的な製造工程が守られているので、生産のコストが高く、産業の発展が阻害される。重量ベースで8割もある絞り残渣は主に繊維で、産業廃棄物となる。特開2008−240177号公報(特許文献1)には、この廃棄物を原材料として葛根繊維を得る製造方法が開示されている。しかし、コストや市場の面を別として、この技術は葛粉の製造工程で発生する大量の廃水や廃棄物を部分的に利用すると同時に、新しい廃棄物も発生する。
【0008】
葛または葛澱粉の特性を活かす食品技術として、例えば、特開2001−299251号公報(特許文献2)、特許第3624218号公報(特許文献3)、特開平8−9890号公報(特許文献4)、特開平10−136897号公報(特許文献5)、特開2005−253347号公報(特許文献6)、特開2006−262889号公報(特許文献7)がある。
【0009】
効能成分を活かす技術として、例えば、特開2003−95971号公報(特許文献8)には、葛根粉末を主成分として含有していることを特徴とする骨粗鬆症治療剤が開示されている。この薬剤の主な有効成分はイソフラボンとされている。WO2005/105125号公報(特許文献9)には、葛植物の各部位から親水性溶媒で抽出回収したエキスを含有していることを特徴とする骨粗鬆症予防または治療剤が開示されている。このエキスの主成分がイソフラボンで、主な有効成分がプエラリンとされている。特開2004−316005号公報(特許文献10)には温感刺激性物質として葛根のアルコール抽出物を固着させた繊維構造物が開示されている。特開2008−148588号公報(特許文献11)にはポリフェノールとデキストリン類及びコラーゲンペプチドを含有する組成物が開示されている。
【0010】
また、安全で環境にやさしい家畜の生産性向上の技術として、例えば、特開2006−333703号公報(特許文献12)には生薬を含むことを特徴とする動物飼料添加剤及び動物飼料が開示されている。特開2006−298793号公報(特許文献13)にはラクトオリゴ糖を有効成分とする免疫賦活組成物およびそれを用いた飲食物あるいは動物飼料が開示されている。
【0011】
【特許文献1】特開2008−240177号公報
【特許文献2】特開2001−299251号公報
【特許文献3】特許第3624218号公報
【特許文献4】特開平8−9890号公報
【特許文献5】特開平10−136897号公報
【特許文献6】特開2005−253347号公報
【特許文献7】特開2006−262889号公報
【特許文献8】特開2003−95971号公報
【特許文献9】WO2005/105125号公報
【特許文献10】特開2004−316005号公報
【特許文献11】特開2008−148588号公報
【特許文献12】特開2006−333703号公報
【特許文献13】特開2006−298793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1〜10に示しているように、すべての技術は葛根の一部分を利用することを特徴としている。特許文献11には、苦味・渋味の天然効能成分が食品分野にも容易に利用されるように比較的低分子の糖質やタンパク質に収着させることを特徴としている。特許文献12と13には、貴重な人間用の生薬資源を家畜に転用する技術である。しかし、葛根を食糧資源として完全または高度利用の技術はまだない。
従って、本発明は葛根を食糧資源として完全または高度利用を目指そうとしている。具体的に、葛根の効能成分を選択的に収着する葛澱粉または澱粉組成物を得る製造方法、この製造工程で発生する廃棄物から動物飼料または飼料添加剤を得る製造方法、および、これらの製造方法で得られた風味・食感・効能ともに優れた機能性本葛粉または機能性澱粉、および動物飼料または飼料添加剤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は上述の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、葛粉の風味・食感・効能を決める成分特性を解明した。また、葛粉の製造工程に発生する廃水・廃棄物は優れた免疫細胞を活性化する能力を見出した。さらに検討を重ね、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、貴重な葛根資源は無駄なくほぼ全部利用される。風味・食感・効能ともに優れた新規な澱粉または澱粉組成物、および飼料または飼料添加剤が得られる。同時にほとんど産業廃棄物が発生しなく、環境にやさしい。
【0015】
また、高度な効能が期待される澱粉素材として食品をはじめ、医薬品、化粧品などに広く利用されることができる。資源の無駄なくに加えて製造工程の改良によって、生産効率が高まり、コストの低減が実現され、より多くの人々が葛の恩恵を受けることができる。
【0016】
飼料または飼料添加剤は栄養価が高く消化吸収されやすい、安価で天然物由来の強力な免疫賦活力をもつ。新しい動物飼料源として世界的食糧危機のなかで貢献することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明においての全製造工程の流れである。
【図2】従来の本葛粉の製造工程の流れである。
【図3】最高の食感とされている本葛粉の澱粉、アミロース、アミロペクチンのヨウ素との複合体の可視部の吸収スペクトル曲線である。
【図4】製造例1において機能性本葛粉と従来型本葛粉の効能成分とされているイソフラボン含量の比較である。
【図5】製造例1において得られた飼料または飼料添加剤を添加した餌を1週間経口自由摂取したマウスのマイクロファージの貪食亢進を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
従って、本発明の全製造工程は図1に示されているように、従来の製造工程(図2)にない(A)一番絞り汁の調整利用工程、(B)イソフラボンの吸蔵工程、(C)絞り残渣の飼料加工工程を増設した。増設によって、成分調整・成分吸蔵・成分還元の3工程/または処理をもつことが最大の特徴となる。また、乾燥重量で300mg/100gまで、澱粉粒の内部構造にイソフラボンが収着されることを特徴としている。また、環境に負担をかける産業廃棄物がほとんど出ないことも特徴である。
【0019】
(A)一番絞り汁の調整利用工程:
通常、葛粉の製造工程に湿ベースで1トンの粗葛澱粉を得るため、一番絞り汁だけでもおよそ20〜30トンの高濃度のイソフラボンを含有している廃水が発生する。この一番絞り汁は成分調整の工程によって、高純度かつ安定性のよい水性溶媒組成物に生まれ変わる。さらに濃縮または噴霧乾燥の工程で、深褐色な液状または粉末状な中間製品も得られる。
【0020】
(B)イソフラボンの吸蔵工程:
絞り汁から沈降法・遠心法またはろ過法で集めた粗葛澱粉は異物除去と洗浄工程を経て精製される。精製された葛澱粉が前述の水性溶媒組成物と一緒に一定条件下で撹拌される。沈降法・遠心法またはろ過法で回収された葛澱粉の成分構成は目的に応じて再調整することもできる。最後に乾燥設備で快速に乾燥され、本葛粉が出来上がる。吸蔵するイソフラボンが少なくとも乾燥重量で80mg/100g含有すること、最高3000mg/100gまで含有することを特徴としている。これを「機能性本葛粉」と呼ぶ。
【0021】
また、温和条件下で水性溶媒に不溶性で葛澱粉の理化学的特性と類似した他植物由来の澱粉または澱粉組成物、または独特な理化学的特性をもつ澱粉または澱粉組成物、またはこれらの予期される理化学的特性になるように各組成澱粉は順次に前述の水性溶媒組成物に加えられ、一定条件下で撹拌される。沈降法・遠心法またはろ過法で回収、そして乾燥の工程を経て、機能性本葛粉と同様に葛の効能、風味または食感を獲得した澱粉または澱粉組成物が得られる。吸蔵するイソフラボンが少なくとも乾燥重量で80mg/100g含有すること、最高3000mg/100gまで含有することを特徴としている。この澱粉または澱粉組成物を「機能性澱粉」と呼ぶ。
【0022】
(C)絞り残渣の飼料加工工程:
絞り残渣は砂などの異物が除去されたあと、上述澱粉の製造工程で不要または未使用の水性溶媒組成物と混合して均一化される。ここで必要に応じて適度な発酵処理の工程を加える。次に乾燥したあと、60メッシュー以下に粉砕される。得られた粉末は主成分がヘミセルロースで、飼料添加剤の場合では総イソフラボンを少なくとも1重量%含有すること、飼料の場合では総イソフラボンを少なくとも0.5重量%含有すること、を特徴としている。
【0023】
成分調整とは、
第一、一番絞り汁に対してpH調整、溶媒組成調整、不溶性の微細浮遊物の除去、変質または濁りが生じやすい高分子の除去、グリコシド型イソフラボンからアグリコン型イソフラボンへの転換などを意図する。これらの調整は公知の方法で行われる。この成分調整の工程によって、高純度かつ安定性のよい水性溶媒組成物に生まれ変わる。
次に、水性溶媒組成物の苦味・渋味を抑えるため、また絞り残渣の栄養価・風味・嗜好性を高めるため、2大成分の再合流の前に、絞り残渣に対してペルオキシターゼ・セルラーゼまたは微生物などを用いた発酵的処理または化学的処理を行うことが望ましい。具体処理は公知の方法でよろしい。
第三、一定温度と溶媒条件下で、澱粉粒内部とくに螺旋構造内の低分子脂肪または脂肪酸を抽出すること、または澱粉粒の結晶構造に組み込まれていないアミロース分子を溶け出すことによって、澱粉または澱粉組成物は本来の構造特性が維持されながら成分構成が調整される。同時に、効能成分を吸蔵するための空間が拡大される。
【0024】
成分吸蔵とは、澱粉または澱粉組成物を用いて水性溶媒組成物からイソフラボン成分または特定の種類のイソフラボンを効率良く吸蔵させることを意図する。予期的に吸蔵させるため、上述の適当な成分調整以外、撹拌する強度、時間、温度などの条件も大切である。
【0025】
成分還元とは、澱粉に一部の成分(イソフラボン)を還元したあと、未使用または余りの水性溶媒組成物を元の絞り残渣に全部還元することを意図する。これで、従来ほとんど捨てられる運命の2大成分は再合流によって新しい飼料または飼料添加物に生まれ変わる。
【0026】
葛粉の効能は澱粉粒の内部に収着したプエラリンおよび/または澱粉分子の二重螺旋構造内部に収着したアグリコン型のイソフラボンによる。これらの苦味・渋味のある微量成分は澱粉などの糖質分子と相互作用で葛粉の独特な風味を形成する。葛粉の食感は特徴的なアミロペクチンの分子構造およびアミロースの分子特性・割合などの独特な組み合わせによって決められる。最高の食感とされている本葛粉は、アミロペクチンが数平均重合度でおよそ4500グルコース残基、数平均鎖長で20グルコース残基以下、アミロース含量が澱粉の25重量%〜30重量%を占めることを特徴としている。また、これらの澱粉、アミロース、アミロペクチンの総合的分子特性を表すヨウ素-澱粉複合体の可視部の吸収スペクトル曲線(図3)が特徴的である。
【0027】
澱粉の数平均重合度、数平均鎖長、鎖長分布、分子量分布などの微細構造解析は、公知の微細構造解析法に準じて行われる。ヨウ素-澱粉複合体の可視部の吸収スペクトルも公知の測定方法で実行される。イソフラボンの組成と含量は公知のHPLC法により測定される。分析サンプルの調製は、澱粉または澱粉組成物の場合では糊化後アルコールで抽出、飼料または飼料添加剤の場合では粉末から熱アルコール溶媒で循環抽出が適当である。
【0028】
葛根は、本明細書において使用するとき、本発明における使用に適当である、任意の天然由来するすべての葛根を包含することを意図する。天然葛根は、本明細書において使用するとき、天然に見出される葛根である。また、交雑育種、転座、逆位、形質転換または遺伝子または染色体を操作する他の方法およびそれらの変型などの標準的育種技術により得られた葛根も適当である。さらに、上記遺伝的組成物の人工的突然変異および変異型から成長した葛植物、既知の標準的突然変異育種法により生産された葛根も適当である。
【0029】
澱粉とは、ここで用いられるように、ここでの使用に適するかもしれない、いかなる天然資源からも誘導される全ての澱粉を含むように意図されている。標準的育種技術または標準的突然変異育種法により成長した植物から誘導された澱粉または組成物の変形物は適している。また、水性溶媒組成物から沈降・遠心またはろ過で全量的または90重量%以上に回収可能な加工澱粉または組成物も適している。
【0030】
下記の実施例により本発明をさらに例示し、説明するが、これらの実施例によりいずれの点においても本発明は限定されるものと解釈すべきでない。
【実施例1】
【0031】
製造例1
吉野葛の生葛根1kgをスライスして、2倍重量の水を加え、ミキサーで粉砕した。吸引ろ過で上澄みと繊維を分離した。残渣に2倍重量の水を加え、吸引ろ過で上澄みと繊維を分離した。集まった上澄みから遠心分離で澱粉を回収した。ここで、およそ4.5Lの上澄みと150gの粗澱粉が得られた。回収した粗澱粉は120メッシュー、400メッシューの順で篩をかけた。さらに水晒しによって精製された。
一方、上澄みは120℃15分間加熱処理されたあと、室温に放冷されて5℃で48時間静置された。生じた沈澱物は遠心で除去され、透き通った褐色液体が得られ、これを水性溶媒組成物とした。
精製した葛澱粉に5倍重量のイソフラボン濃度を調整した水性溶媒組成物を加え、20℃、60分間、300回転/分で撹拌した。遠心で澱粉を回収した。この澱粉に5倍重量の水を加え、20℃、5分間、120回転/分で撹拌し、澱粉粒表面が洗浄された。さらに、電気乾燥でおよそ70gの機能性本葛粉が得られた。
また、キノア澱粉とうるち種の大麦小顆粒澱粉が重量割合で1対1の澱粉組成物100gは85%のエタノールで脱脂処理を行ったあと、5倍重量のイソフラボン濃度を調整した水性溶媒組成物を加え、40℃、60分間、300回転/分で撹拌した。遠心で澱粉を回収した。この澱粉に5倍重量の水を加え、20℃、5分間、120回転/分で撹拌し、澱粉粒表面の洗浄作業は2回繰り替えされた。さらに、電気乾燥でおよそ98gの機能性澱粉が得られた。
さらに残渣は砂などの異物が除去されたあと、上述澱粉の製造工程で不要または余りの水性溶媒組成物と全部混合して均一化される。この混合物は0.2重量%水酸化ナトリウムになるように調整され、1時間煮詰められた。塩酸で中和して電気乾燥した。次に、60メッシュー以下まで粉砕して、400gの粉末が得られ、飼料添加剤とした。
【実施例2】
【0032】
製造例1で得られた機能性本葛粉のプエラリン(Puerarin)含量
製造例1で得られた機能性本葛粉を0.1g精秤し、2mlの水を加え、水浴中で煮沸し、完全に融解後、すぐに99.5%のエタノールを6ml加えた。よく撹拌して2時間以上に静置し、遠心で上澄みを回収した。この融解から澄み回収までの操作を繰り返し、回収した上澄みを20mlに定容した。0.45μサイズのフィルターでろ過し、HPLC分析用サンプルとした。対照として市販の本葛粉を用いた。その分析結果は図4に示している。
HPLCの分析条件は次のとおりであった。
カラム:Nacalai Tesque, INC.製のCosmosil 5C18-AR-II
(250×4.6 mm内径)
移動相:A液は0.1%ギ酸を含む10%(v/v)のアセトニトリル水溶液
B液は0.1%ギ酸を含む35%(v/v)のアセトニトリル水溶液
勾 配:B液0分で0%→60分で80% →70分で80% →85分で100% →90分で100%
カラム温度:25℃
流 速:1.0 ml/min
検出の波長:260 nm
【実施例3】
【0033】
製造例1で得られた機能性澱粉の成分特性
製造例1で用いた澱粉組成物はキノア澱粉とうるち種の大麦小顆粒澱粉の1対1の重量割合の混合澱粉である。本澱粉の平均粒径がおよそ2μmであった。アミロペクチンは数平均重合度がおよそ4900グルコース残基で、平均鎖長が19グルコース残基であった。見かけのアミロース含量は24重量%で、真のアミロース含量は15%であった。40℃の5倍重量の水性溶媒組成物に撹拌されることによって、真のアミロース含量は2ポイント%の減少を実現した。また、イソフラボン吸蔵の前に脱脂が行われたので、キノアの独特なにおいが消された。これらの処理によって最終的に得られた機能性澱粉は風味と食感とともに製造例1で得られた機能性本葛粉に近付き、むしろよくなった。さらに、脱脂と脱アミロースによってイソフラボンとくにアグリコン型のイソフラボン、ダイゼイン(Daizein)、グリシテイン(Glycitein)、ジェニステイン(Genistein)、フォモノネチン(Formononetin)などの含量が顕著に高まり、グリコシド型が13mg/100g、アグリコン型が308mg/100gに達した。
【実施例4】
【0034】
製造例1の飼料または飼料添加剤の薬理試験
製造例1で得られた飼料または飼料添加剤を5重量%添加し、混餌を作成した。生後70日目の普通マウス(実験群15匹、対照群10匹)を用いて、混餌、水は1週間自由摂取させた。1週間後、対照群も実験群もマウスの腹腔マイクロファージを採集して、直径約1μmのプラスチックビーズと一緒にシャーレに培養した。ビーズを洗浄して染色し、1000倍の油浸レンズ下でマイクロファージが貪食したビーズ数を計数した。対照群と比較してトータルの貪食数と6ビーズ以上を貪食した細胞数ともに有意に多かった。従って、この混餌の摂取によって動物の初期防御システムが活性化されることが証明された(図5)。製造例1の飼料または飼料添加剤は免疫賦活剤として有用と考えられる。
【符号の説明】
【0035】
(A)一番絞り汁の調整利用工程
(B)イソフラボンの吸蔵工程
(C)絞り残渣の飼料加工工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
葛根を食糧資源として完全または高度利用の製造工程、およびこの製造工程で得られる機能性本葛粉または機能性澱粉、飼料または飼料添加剤。
【請求項2】
成分調整・成分吸蔵・成分還元の3工程をもつことを特徴とする請求項1に記載の葛根を食糧資源として完全または高度利用の製造工程。
【請求項3】
不溶性異物および高分子の除去、またはイソフラボンの組成比調整によって、高純度かつ安定性のよい水性溶媒組成物が得られることを特徴とする請求項1から2に記載の製造工程。
【請求項4】
いくつかの澱粉の組み合わせ、または澱粉粒の構造を破壊せず脱脂または脱アミロースによって予期される理化学的特性になるように成分調整を行うことを特徴とする請求項1から3に記載の製造工程。
【請求項5】
葛根澱粉または請求項4の澱粉または澱粉組成物で葛根のイソフラボンを吸蔵させることを特徴とする請求項1から4に記載の製造工程。
【請求項6】
葛根の一番絞り汁由来の水性溶媒組成物を全部に絞り残渣由来の繊維性組成物に還元することを特徴とする請求項1から3に記載の製造工程。
【請求項7】
苦味・渋味を抑え、栄養価・風味・嗜好性が高めるため、物理的・化学的・酵素的処理が行われることを特徴とする請求項1から3および請求項6に記載の製造工程。
【請求項8】
吸蔵する葛根のイソフラボンが少なくとも乾燥重量で80mg/100g含有すること、最高3000mg/100gまで含有することを特徴とする請求項1から5に記載の製造工程で得られる機能性本葛粉または機能性澱粉。
【請求項9】
澱粉粒の内部構造に葛根のイソフラボンを乾燥重量で300mg/100gまで収着させることを特徴とする請求項1から5に記載の製造工程で得られる機能性本葛粉または機能性澱粉。
【請求項10】
アミロペクチンの数平均重合度がおよそ6000グルコース残基以下、数平均鎖長が20グルコース残基以下、アミロース含量が澱粉の30重量%以下を占めることを特徴とする請求項1から5に記載の製造工程で得られる機能性本葛粉または機能性澱粉。
【請求項11】
ヘミセルロースを主成分とした60メッシュー以下の粉末で、総イソフラボンを少なくとも0.5重量%含有することを特徴とする請求項1から3および請求項6から7に記載の製造工程で得られる飼料または飼料添加剤。
【請求項12】
ヘミセルロースを主成分とした60メッシュー以下の粉末で、総イソフラボンを少なくとも1重量%含有することを特徴とする請求項1から3および請求項6から7に記載の製造工程で得られる飼料または飼料添加剤。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項記載の製造工程を含む澱粉または澱粉組成物および飼料または飼料添加剤の製造工程
【請求項14】
請求項1から12のいずれか1項記載の製造工程を含む澱粉または澱粉組成物。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか1項記載の製造工程を含む飼料または飼料添加剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−154833(P2010−154833A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145(P2009−145)
【出願日】平成21年1月5日(2009.1.5)
【出願人】(506344413)丸中音株式会社 (1)
【Fターム(参考)】