説明

蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関により駆動される発電機の運転制御方法と装置

【課題】蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関で発電機を駆動して得られた電力と、系統遮断器を介して電力系統から供給される電力とを負荷に供給するようにした自家発電システムにおける、非常にまれに生じる特定条件のもとでの負荷のトリップによる、電力系統への電力逆送を生じないようにする。
【解決手段】負荷の使用電力と電力系統からの受電電力を検知し、検知結果が負荷の使用電力の受電電力を越えた急激な減少である状態で、減少が特定条件に該当するか否かを判断し、特定条件において、前記負荷の使用電力の急激な減少直前の使用電力、または前記負荷の使用電力の急激な減少直前の使用電力から受電電力を減じた出力を、瞬時に減じる前記弁開度あるいは弁開時間を算出して前記弁開度あるいは弁開時間を制御するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関により駆動される発電機の運転制御方法と装置に係わり、特に、セメントミルや抄紙機などの大電力を使用する負荷を有する設備に、蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関を用いた発電機により給電すると共に、不足電力を電力系統から補えるようにした自家発電システムにおいて、負荷のセメントミルや抄紙機が故障などで突然停止した場合の、蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関により駆動される発電機の運転制御方法と装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セメントミルや抄紙機などの大電力を使用する負荷を有する場合、蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関を用いた自家発電システムにより給電すると共に、不足電力を電力系統から補えるようにすることが行われている。こういった蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関を用いた自家発電システムにおいては、図5に示したように、設備の故障などによる停止に起因する、突然の負荷減少(以下、このように故障などによる負荷の減少を負荷トリップと称する)が生じた場合、蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関は、瞬時に大幅な出力の変更を行うと、熱的ストレスひいては寿命の点から許容されないため、出力を漸減させて対応している。なお、こういった設備の故障は現在では、数年に1度か2度あるかないかのまれな事象であることを付記しておく。
【0003】
この図5において横軸は時間、縦軸は発電機出力(単位:MW)であり、設備が稼動している状態における使用電力は縦軸にaと記したMWとし、そのうち、発電機による給電は縦軸にbと記したMWで、不足分、すなわち(a−b)は電力系統から受電してまかなっているとする。そして時間tで負荷トリップが起こった場合、太い破線で示したように、一定レート(MW/分)で蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関出力を漸減し、時間tで初めて負荷トリップした使用電力に対応した発電出力dとなるようにする。
【0004】
ところが一般に、電力会社系統と自家用発電機を並列運転する場合、電力会社から需要家には、「需要家の受電バンクが逆送となったとき、自動的に受電用遮断器を開放し得ること」、との要求が出されるため、需要家は受電点に逆電力検出継電器を設置するから、このように蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関出力を漸減し、時間tで初めて負荷トリップした使用電力に対応した発電出力dとなるように制御して、時間tから時間tまでの間に余剰電力が生じた場合、余剰電力が電力系統へ逆送することになるため、これが検出された時点で受電用遮断器が開放され、発電機が系統電力から切り離される。
【0005】
そのため、システムは自家用発電機のみで負荷設備に電力を供給する単独運転状態になり、自家用発電機の出力と負荷設備の所要電力とのアンバランスにより、周波数変動や電圧変動等の動揺現象が生じる等の問題が生じる。また、電力会社系統と自家用発電機との並列運転に自家用発電機を復帰させるためには、開放された受電用遮断器を同期投入動作させる必要が生じる。
【0006】
こういった問題に対して例えば特許文献1には、蒸気タービン出力を漸増、漸減させるため、蒸気タービンの出力設定に変化率を持たせるよう2次設定器が用いられていたが、従来の2次設定器は、過渡的変化を惹起して2次設定器の出力がオーバーシュートすることがあった。そのため、出力設定値と2次設定器の出力値との偏差から、最大許容瞬時応答値を決定する出力信号を得るリミッタ付き増幅器を設け、出力設定値の変化に対して一定値までは瞬時に応答し、一定値を越える分については、2次設定器の変化率によって出力制御を円滑に達成するようにすることが示されている。
【0007】
また特許文献2には、電力会社系統からの買電量が一定値以下に低下したことを検出する買電量低下検出装置と、その買電量低下検出装置からの信号を受けて買電量の変化量を一定時間記憶する買電量変化量記憶装置と、その買電量変化量記憶装置からの信号により電力を貯蔵し、放出するフライホイールを有し、買電電力が負荷設備の運転状況の変動で減少した場合、瞬時にフライホィールに電力を貯蔵することにより、逆電力検出継電器の動作から自家用発電機の単独運転状態に至ることを防止し、需要家の負荷設備に対して安定した電力供給を行うことを可能とすることが示されている。.
【0008】
【特許文献1】特開昭62−199904号公報
【特許文献2】特開平3−293930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながらこの特許文献1に示された蒸気タービンの出力制御装置は、出力を漸増させる場合の制御に関するもので、前記した負荷のトリップにより急激に使用電力が減少したときに対するものではない。また特許文献2に示された買電量制御装置は、負荷が減少した場合に対処するための制御装置ではあるが、フライホイールを用いた機械的な電力貯蔵設備を必要とし、コスト的に問題となると共に、故障などにより瞬時に負荷がトリップした場合に対応できるかどうかは疑問である。
【0010】
そのため本発明においては、蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関で発電機を駆動して得られた電力と、系統遮断器を介して電力系統から供給される電力とを負荷に供給するようにした自家発電システムにおける、非常にまれに生じる特定条件のもとでの負荷のトリップ時、電力系統への電力逆送を生じないようにした、蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関により駆動される発電機の運転制御方法と装置を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため本発明になる蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関により駆動される発電機の運転制御方法は、
蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関により発電機を駆動して得られた電力と、系統遮断器を介して電力系統から供給される電力とを負荷に供給し、
前記発電機の発電出力を、前記蒸気タービンにボイラから供給する蒸気流量、またはガスタービンあるいは内燃機関に供給する燃料流量を弁開度あるいは弁開時間制御することで出力制御して制御するようにした自家発電システムにおける、蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関により駆動される発電機の運転制御方法において、
予め、前記発電機の発電出力を必要とする出力とする前記蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関に供給する蒸気流量あるいは燃料流量を算出する第1の関数と、算出した蒸気流量あるいは燃料流量を得るための前記弁開度あるいは弁開時間を算出する第2の関数とを用意し、
前記負荷の使用電力と前記電力系統からの受電電力を検知して、該検知結果が前記負荷における使用電力の前記受電電力を越えた急激な減少である状態で該減少が特定条件に該当するか否かを判断し、特定条件でない状態で前記発電機の発電出力を漸減させるよう、前記弁開度あるいは弁開時間で前記蒸気流量あるいは燃料流量を制御し、
特定条件において、前記負荷の使用電力の急激な減少直前の使用電力、または前記負荷の使用電力の急激な減少直前の使用電力から受電電力を減じた電力を、瞬時に減じる前記弁開度あるいは弁開時間を前記第1と第2の関数で算出して前記蒸気流量あるいは燃料流量を制御することを特徴とする。
【0012】
そしてこの方法を実施する装置は、
蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関により駆動される発電機、及び系統遮断器を介して接続した電力系統の両者から電力を供給される負荷を有し、前記発電機の発電出力を、前記蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関に供給するボイラからの蒸気流量あるいは燃料流量を制御することで制御するようにした自家発電システムにおける、蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関により駆動される発電機の運転制御装置において、
前記発電機の発電出力を必要とする出力とするための、前記蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関に供給する蒸気流量あるいは燃料流量算出用の第1の関数と、該第1の関数で算出した蒸気流量あるいは燃料流量を得るための弁開度あるいは弁開時間を算出するための第2の関数とを有し、必要な発電出力に対応した弁開度あるいは弁開時間を弁開度あるいは弁開時間制御装置に指示する運転制御装置と、前記負荷の使用電力と前記電力系統からの受電電力の検知手段とを有し、
前記運転制御装置は、前記検知手段による、前記負荷の使用電力の前記受電電力を越えた急激な減少を検知した状態で前記減少が特定条件に該当するか否かを判断し、特定条件でない状態で前記発電機の発電出力を漸減させる前記弁開度あるいは弁開時間指示を前記弁開度あるいは弁開時間制御装置に送り、
特定条件において、前記検知手段が検知した前記負荷の使用電力の急激な減少直前の使用電力、または前記負荷の使用電力の急激な減少直前の使用電力から受電電力を減じた出力を、瞬時に減じる前記弁開度あるいは弁開時間の指示を前記第1と第2の関数で算出して前記弁開度あるいは弁開時間制御装置に送るよう構成されていることを特徴とする。
【0013】
このように、予め必要な発電出力を得るための蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関における弁開度あるいは弁開時間を算出する第1と第2の関数を用意し、負荷トリップが生じた際、その負荷トリップが特定条件に該当するか否かを判断し、該当する場合は発電機からの発電出力を電力系統への逆送が生じないような値に瞬時に絞るよう、蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関の弁開度あるいは弁開時間を算出して指示することで、発電機出力は1秒程度で逆送が生じない値に落とすことができる。そのため、系統遮断器動作により自家用発電機のみで負荷設備に電力を供給する単独運転状態により、自家用発電機の出力と負荷設備の所要電力とのアンバランスに伴う周波数変動や、電圧変動等の動揺現象や、自家用発電機と系統電力との接続を復帰させる際の受電用遮断器を同期投入動作させる煩わしさを防ぐことができる。
【0014】
しかしこのような負荷の急激な変化は、頻繁に起これば蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関の寿命を短くする可能性があるが、こういった瞬時に出力を絞る条件を特定条件とし、前記したように数年に1度か2度あるかないかのまれな事故の場合に限定すれば、蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関の寿命を短くするようなこともない。
【0015】
そして、前記特定条件は、前記負荷の使用電力の前記受電電力を越えた急激な減少で通常とは逆に電力系統へ電力を逆送する状態となって前記系統遮断器による電力系統との遮断が行われたとき、前記発電機の周波数変動が生じるのを負荷が忌避する状態か、前記発電機が前記負荷に給電すると共に前記系統遮断器を介して電力系統に売電する売電用発電機を有し、前記系統遮断器による電力系統の遮断により、前記負荷用発電機出力の漸減で前記売電用発電機の制御に影響を与える状態か、のいずれかとすることで、前記したように蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関出力を瞬時に絞るのは数年に1度か2度あるかないかのまれな事故の場合となり、蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関の寿命を短くすることなく、系統遮断器による電力系統との切り離しに伴うトラブルを避けることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上記載のごとく本発明になる蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関により駆動される発電機の運転制御方法と装置は、数年に1度か2度、あるかないかのまれな事故の場合に電力系統への電力逆送を防ぎ、系統遮断器動作により生じる、自家用発電機のみで負荷設備に電力を供給する単独運転状態により、自家用発電機の出力と負荷設備の所要電力とのアンバランスに伴う周波数変動や、電圧変動等の動揺現象や、自家用発電機と系統電力との接続を復帰させる際の受電用遮断器を同期投入動作させる煩わしさを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りはこの発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0018】
図1は、本発明になる蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関により駆動される発電機の運転制御装置のブロック図である。なお、以下の説明では、本発明を蒸気タービンを用いた場合を例に説明を進めるが、発電機を駆動する駆動源としてはこの他にガスタービンまたは内燃機関が用いられており、これらは蒸気流量ではなく、燃料流量で出力を制御する点が異なるだけで、全く同様に制御できることはあきらかである。
【0019】
図中、10は発電機12を駆動する蒸気タービン、14は遮断器、16は34で示した電力系統から受電する電力を検出する受電電力検出装置、18は電力系統34への逆送が生じるときに系統を切り離すための遮断器、20は前記したセメントミルや抄紙機などの大電力を使用する負荷、22はこの負荷20が使用する電力を検出する使用電力検出装置、24は蒸気タービン10への蒸気供給量を加減する蒸気弁、26は弁開度あるいは弁開時間を制御する蒸気弁制御装置、28は要求される電力を発電するには前記蒸気タービン10を駆動する蒸気流量をどの程度にしたらよいかを算出するための第1の関数と、その蒸気流量を得るために蒸気弁24の開度をどの程度にしたらよいか、を算出するための第2の関数とを有し、これらの関数を用いて必要電力が得られるよう蒸気タービン10を制御する運転制御装置、30は受電電力検出装置16、使用電力検出装置22からの信号を受けて、使用電力と系統34からの受電電力を検出する使用電力・受電電力検出装置、32はボイラである。
【0020】
前記したように、本発明の蒸気タービン10により駆動される発電機12は、セメントミルや抄紙機などの大電力を使用する負荷20に対し、蒸気タービン10を用いた発電機12と電力系統34からも給電できるようにして、かつ、電力系統34への逆送を防ぐため、遮断器18が配されている。そして前記図5で説明したように、通常の発電出力の増減に際しては、一定レート(MW/分)で蒸気タービン10の出力を漸減、漸増するように運転する。
【0021】
そして実際の制御は図4に示したように、時間tで負荷トリップが起こった場合、そのトリップが特定条件に該当するか否かをまず判断し、特定条件でない場合は前記図5に示したように発電出力を漸減させるように制御し、特定条件である場合はこの図4に示したように、瞬時に負荷トリップした使用電力に対応した発電出力dとなるようにするものである。この制御は、運転制御装置28に記憶している第1の関数を用い、負荷20が必要とする出力を発電機12で発電するために、蒸気タービン10の駆動用蒸気流量がどの程度必要か、をまず算出し、その蒸気流量を実際に蒸気タービン10に供給するため、蒸気弁24をどの程度開けばよいかを第2の関数で算出して、蒸気弁制御装置26に指示して行う。なお、この第1と第2の関数は、出力と蒸気流量、蒸気流量と弁開度とがそれぞれ1次関数としてあらわせる関数である。
【0022】
このようにすることで、数年に1度か2度、あるかないかのまれな事故の場合に電力系統34への電力逆送を防ぎ、系統遮断器18の動作により生じる、自家用発電機12のみで負荷設備に電力を供給する単独運転状態により、自家用発電機12の出力と負荷20設備の所要電力のアンバランスに伴う周波数変動や、電圧変動等の動揺現象や、自家用発電機を復帰させる際の受電用遮断器を同期投入動作させる煩わしさを防ぐことができる。
【0023】
特定条件としては、数年に1度か2度、あるかないかのまれな事故の場合とするが、具体的には、図1に示した負荷20の使用電力の系統34からの受電電力を越えた急激な減少で、系統遮断器18による電力系統34との遮断が行われたとき、自家発電設備を構成する発電機12の周波数変動が生じるのを負荷20が忌避する状態か、図3に示したように、自家発電設備が、遮断器44を介して負荷20に給電すると共に、電力系統34に売電する売電用発電機42を有し、系統遮断器18による電力系統34との遮断により、負荷用発電機12の出力の漸減で売電用発電機42の制御に影響を与える状態である場合などである。
【0024】
この図3に示した自家発電設備は、図1に示した自家発電設備に電力系統34への売電用として、蒸気タービン40、売電用発電機42、遮断器44を並列に接続したもので、売電用発電機42は発電機12より大型のものが使われる。通常、これら売電用発電機42、発電機12は、電力系統34に接続されているため電力系統34の周波数に同期して運転される。しかし遮断器18が電力系統34との接続を切断した場合、大型の売電用発電機42で周波数制御するが、このとき、発電機12の発電出力を漸減させていくと、これも前記したように自家用発電機12、42の出力と負荷20の所要電力とのアンバランスにより、それが周波数制御している売電用発電機42に影響を与えて周波数の動揺現象が生じる。すなわち、出力と負荷とのアンバランスが、即、周波数変動をもたらす故、負荷20へ供給する電力の周波数が変動し、悪影響を及ぼすわけである。
【0025】
次に、図1と、図2に示した本発明になる蒸気タービンにより駆動される自家発電設備の運転制御方法のフロー図とを用い、本発明の運転制御方法について説明する。ステップS10で処理がスタートすると、ステップS12で、図1の使用電力・受電電力検出装置30は、使用電力検出装置22、受電電力検出装置16からの信号を受けて負荷20の使用電力・受電電力を検出し、運転制御装置28に送る。使用電力・受電電力を送られた運転制御装置28は、ステップS14で図4の時間tで示したような負荷トリップが生じたか否かを判断し、生じていない場合は処理がステップS18に進んで後記するように、負荷20の駆動に用いられる発電機12が発電した電力と系統34から受電した受電電力とを知り、発電機12の発電出力をどの程度にすればよいかを判断する。
【0026】
そして図4の時間tに示したようにステップS14で負荷トリップが生じた場合、次にステップS16で運転制御装置28は、そのトリップにより、まず電力系統34から受電していた受電電力を越えた急激な減少であるか否かを判断し、受電電力を越えた減少である場合は次にそのトリップが、前記した特定条件に該当するか否かを判断する。
【0027】
特定条件でない場合はステップS18に進み、発電機12の発電出力(MW)設定値が発電出力(MW)目標値より多いか否かを判断し、多い場合はステップS24に進んで発電出力(MW)設定値を例えば変化率3%で漸減させ、ステップS28に進む。
【0028】
また、ステップS18で発電出力(MW)設定値が発電出力(MW)目標値より多くない場合はステップS20に進み、今度は発電出力(MW)設定値が発電出力(MW)目標値より小さいか否かを判断し、少ない場合はステップS26に進んで発電出力(MW)設定値を例えば変化率3%で漸増させ、ステップS28に進む。さらに、このステップS20でも発電出力(MW)設定値が発電出力(MW)目標値より小さくない場合、発電出力(MW)設定値は適正であるとしてステップS28に進む。
【0029】
一方、ステップS16で前記した特定条件に該当する、と判断された場合、処理がステップS22に進み、ここで発電出力(MW)設定値が発電出力(MW)目標値と等しくなるよう、すなわち前記図4に示したように、現在の発電出力(MW)目標値bをdにするよう、変化率が∞となる制御を行う。そして、その発電出力dを得るためには蒸気タービン10にどの程度の流量の蒸気を送ったらよいかを第1の関数で算出し、さらにその蒸気流量を得るために蒸気弁24の開度をどの程度にしたらよいかを第2の関数で算出して、算出結果を蒸気弁開度制御装置26に送り、ボイラ32から蒸気タービン10に送る蒸気流量を制御する蒸気弁24を制御させる。そのため蒸気タービン10は、運転制御装置28が算出した発電出力で発電機12を駆動し、遮断器14を介して必要な電力が負荷20に与えられる。
【0030】
そしてステップS28で、蒸気タービン10を停止するか否か判断し、通常は停止しないので、ステップS12に戻って以上説明した処理を繰り返す。
【0031】
このようにして負荷トリップ時に対応することで、特定条件に該当するトリップの場合は発電設備からの発電出力が電力系統への逆送が生じないよう、蒸気タービン10の出力が瞬時に絞られるから、発電機12の出力は1秒程度で逆送が生じない値に落とすことができ、それにより、系統遮断器18の動作で自家用発電機のみで負荷設備に電力を供給する単独運転状態により、自家用発電機の出力と負荷設備の所要電力とのアンバランスに伴う周波数変動や、電圧変動等の動揺現象や、自家用発電機と系統電力との接続を復帰させる際の受電用遮断器を同期投入動作させる煩わしさを防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、数年に1度か2度、あるかないかのまれな事故の場合に電力系統への電力逆送を防ぎ、自家用発電機の周波数変動や電圧変動等の動揺現象や、自家用発電機と系統電力との接続を復帰させる際の受電用遮断器を同期投入動作させる煩わしさを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明になる蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関により駆動される発電機の運転制御装置のブロック図である。
【図2】本発明になる蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関により駆動される発電機の運転制御方法のフロー図である。
【図3】本発明になる蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関により駆動される発電機の運転制御装置の、特定条件の1つを説明するためのブロック図である。
【図4】本発明になる蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関により駆動される発電機の運転制御方法を説明するための図である。
【図5】従来の蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関により駆動される発電機の運転制御方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0034】
10 蒸気タービン
12 発電機
14 遮断器
16 受電電力検出装置
18 遮断器(系統遮断機)
20 負荷
22 使用電力検出装置
24 蒸気弁
26 蒸気弁開度制御装置
28 運転制御装置
30 使用電力・受電電力検出装置
32 ボイラ
34 電力系統
40 蒸気タービン
42 売電用発電機
44 遮断器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関により発電機を駆動して得られた電力と、系統遮断器を介して電力系統から供給される電力とを負荷に供給し、
前記発電機の発電出力を、前記蒸気タービンにボイラから供給する蒸気流量、またはガスタービンあるいは内燃機関に供給する燃料流量を弁開度あるいは弁開時間制御することで出力制御して制御するようにした自家発電システムにおける、蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関により駆動される発電機の運転制御方法において、
予め、前記発電機の発電出力を必要とする出力とする前記蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関に供給する蒸気流量あるいは燃料流量を算出する第1の関数と、算出した蒸気流量あるいは燃料流量を得るための前記弁開度あるいは弁開時間を算出する第2の関数とを用意し、
前記負荷の使用電力と前記電力系統からの受電電力を検知して、該検知結果が前記負荷における使用電力の前記受電電力を越えた急激な減少である状態で該減少が特定条件に該当するか否かを判断し、特定条件でない状態で前記発電機の発電出力を漸減させるよう、前記弁開度あるいは弁開時間で前記蒸気流量あるいは燃料流量を制御し、
特定条件において、前記負荷の使用電力の急激な減少直前の使用電力、または前記負荷の使用電力の急激な減少直前の使用電力から受電電力を減じた電力を、瞬時に減じる前記弁開度あるいは弁開時間を前記第1と第2の関数で算出して前記蒸気流量あるいは燃料流量を制御することを特徴とする、蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関により駆動される発電機の運転制御方法。
【請求項2】
前記特定条件は、前記負荷の使用電力の前記受電電力を越えた急激な減少で通常とは逆に電力系統へ電力を逆送する状態となって前記系統遮断器による電力系統との遮断が行われたとき、前記発電機の周波数変動が生じるのを負荷が忌避する状態か、前記発電機が前記負荷に給電すると共に前記系統遮断器を介して電力系統に売電する売電用発電機を有し、前記系統遮断器による電力系統の遮断により、前記負荷用発電機出力の漸減で前記売電用発電機の制御に影響を与える状態か、のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載した蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関により駆動される発電機の運転制御方法。
【請求項3】
蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関により駆動される発電機、及び系統遮断器を介して接続した電力系統の両者から電力を供給される負荷を有し、前記発電機の発電出力を、前記蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関に供給するボイラからの蒸気流量あるいは燃料流量を制御することで制御するようにした自家発電システムにおける、蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関により駆動される発電機の運転制御装置において、
前記発電機の発電出力を必要とする出力とするための、前記蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関に供給する蒸気流量あるいは燃料流量算出用の第1の関数と、該第1の関数で算出した蒸気流量あるいは燃料流量を得るための弁開度あるいは弁開時間を算出するための第2の関数とを有し、必要な発電出力に対応した弁開度あるいは弁開時間を弁開度あるいは弁開時間制御装置に指示する運転制御装置と、前記負荷の使用電力と前記電力系統からの受電電力の検知手段とを有し、
前記運転制御装置は、前記検知手段による、前記負荷の使用電力の前記受電電力を越えた急激な減少を検知した状態で前記減少が特定条件に該当するか否かを判断し、特定条件でない状態で前記発電機の発電出力を漸減させる前記弁開度あるいは弁開時間指示を前記弁開度あるいは弁開時間制御装置に送り、
特定条件において、前記検知手段が検知した前記負荷の使用電力の急激な減少直前の使用電力、または前記負荷の使用電力の急激な減少直前の使用電力から受電電力を減じた出力を、瞬時に減じる前記弁開度あるいは弁開時間の指示を前記第1と第2の関数で算出して前記弁開度あるいは弁開時間制御装置に送るよう構成されていることを特徴とする蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関により駆動される発電機の運転制御装置。
【請求項4】
前記特定条件は、前記負荷の使用電力の前記受電電力を越えた急激な減少により通常とは逆に電力系統へ電力を逆送する状態となって前記系統遮断器が実施した電力系統との遮断状態で、前記発電機の周波数変動が生じるのを負荷が忌避する状態か、前記発電機が、前記負荷に給電すると共に前記系統遮断器を介して電力系統に売電する売電用発電機を有し、前記系統遮断器による電力系統との遮断状態で、前記負荷に給電する発電機出力の漸減で前記売電用発電機の制御に影響を与える状態か、のいずれかであることを特徴とする請求項3に記載した蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関により駆動される発電機の運転制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−156285(P2010−156285A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335299(P2008−335299)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】