蒸気タービンおよび蒸気タービンの運転方法
【課題】可変速運転が要求されるタービンであっても車室からの蒸気漏れを防止し、タービンの性能向上を図ることができる蒸気タービンおよび蒸気タービンの運転方法を提供する。
【解決手段】内部にタービン2Hを収納する空間を有するとともに、分割面を有する車室と、タービン2Hに供給される蒸気流量を調節する調節部5と、タービン2Hに供給される蒸気流量を減少させる場合には、分割面における空間に隣接した領域の面圧が所定面圧以上になるように、調節部5に対して蒸気流量の減少率を調節する制御を行う制御部6と、が設けられていることを特徴とする。
【解決手段】内部にタービン2Hを収納する空間を有するとともに、分割面を有する車室と、タービン2Hに供給される蒸気流量を調節する調節部5と、タービン2Hに供給される蒸気流量を減少させる場合には、分割面における空間に隣接した領域の面圧が所定面圧以上になるように、調節部5に対して蒸気流量の減少率を調節する制御を行う制御部6と、が設けられていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービン、特に可変速運転が要求される蒸気タービンに適用して好適な蒸気タービンおよび蒸気タービンの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、蒸気タービンにおいては、回転数上昇時や出力上昇時、特に蒸気タービンの起動時においてタービン車室の壁における壁温に基づいて、蒸気タービンの回転数を制限する制御が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
これは、タービン車室の壁面における表面温度と、壁面の中位温度との温度差によって、タービン車室に過大な熱応力がかかるのを防止するためである。
【0003】
その一方で、蒸気タービンの回転数減少時や出力減少時においては、蒸気タービンの運転状態、例えば回転数を制限する制御は特に行われていなかった。
船舶の主機として用いられている蒸気タービンの場合には、船舶の減速時に蒸気タービンの出力を減少させる制御(減速運転)がおこなわれている。具体的には、蒸気タービンの状態を監視することなく、ブリッジからの指令に基づいて蒸気タービンの出力を一意に減少させる制御が行われていた。
【0004】
上述の舶用主機として用いられる蒸気タービンは、推進機関として常に可変速運転が求められる点が、定格速度で運用される陸用の事業用蒸気タービンと異なっている。
港湾航行において、舶用主機として用いられる蒸気タービンは、常に、増減速運転による柔軟な操作が求められ、また運行スケジュールの調整や外洋航行から港湾入港時等、減速運転が行われる頻度は陸用の事業用蒸気タービンと比べても非常に多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3480532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の減速運転を負荷変化速度一定で行うと、タービンの車室における継ぎ手面から蒸気漏れが発生する恐れがあった。
つまり、舶用主機として用いられる蒸気タービンの車室における動特性シミュレーションおよび非定常FEM解析を実施した結果、車室に流入する主蒸気温度および再熱蒸気温度の変化の影響により、車室の内面温度が低下して外面温度などよりも低くなることが分かった。これにより、蒸気漏れにつながる車室の継ぎ手面における面圧低下を引き起こす可能性が極めて高くなるという問題があった。
【0007】
さらに、上述の面圧低下を防止または抑制する方法として、車室ボルトの配置を変更して、車室の継ぎ手面における面圧低下を防止等する方法や、車室における壁面の肉厚を変更して、車室の継ぎ手面における面圧低下を防止等する方法などが挙げられる。
しかしながら、ボルト配置や車室構造による方法のみでは限界があり、面圧低下を防止する十分な効果が期待できず、車室の継ぎ手面からの蒸気漏れを防止または抑制することは困難であるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、可変速運転が要求されるタービンであっても車室からの蒸気漏れを防止し、タービンの性能向上を図ることができる蒸気タービンおよび蒸気タービンの運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の蒸気タービンは、内部にタービンを収納する空間を有するとともに、分割面を有する車室と、前記タービンに供給される蒸気流量を調節する調節部と、前記タービンに供給される蒸気流量を減少させる場合には、前記分割面における前記空間に隣接した領域の面圧が所定面圧以上になるように、前記調節部に対して前記蒸気流量の減少率を調節する制御を行う制御部と、が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、タービンの出力を減少させる場合などのように、タービンに供給される蒸気の流量が減少される場合に、車室の分割面における空間に隣接した領域の面圧が所定面圧よりも小さいときには、上記空間に隣接した領域の面圧が所定面圧以上になるように、蒸気流量の減少率が調節される。例えば、蒸気流量の減少率を抑制する制御が行われる。これにより、上記空間に隣接した領域の面圧の低下が抑制される。
【0011】
具体的には、タービンが定常運転やプログラム自動昇速やプログラム自動減速されている際に、タービンの出力を減少させる制御を行うと、ボイラからタービンに供給される蒸気の流量が減少されるとともに、ボイラ負荷も低下することから供給される蒸気の温度も低下する。
【0012】
車室の壁面温度よりも温度が低い蒸気が、タービンを収納した空間に流入すると、車室の壁面は、空間に隣接した部分から蒸気に保有熱が奪われ温度が低下する。このとき、車室壁面における外側の温度と、空間に隣接した部分の温度との間に温度差が生じる。さらに、分割面により分割された車室を一体につなぎとめるボルトの温度と、空間に隣接した部分の温度との間にも温度差が生じている。つまり、車室壁面における外側の部分およびボルトと比較して、車室壁面の空間に隣接した部分は早い段階から熱収縮して熱収縮量に差が生じる。これにより、分割面における空間に隣接した領域における面圧に関する押しつけ力が低下する。
【0013】
その一方で、タービンに供給される蒸気の圧力は緩やかに低下することから、上記空間における蒸気圧力も緩やかに低下する。つまり、車室の分割面を押し広げようとする力は、上述の押しつけ力の低下と比較して緩やかに減少する。
これらのことから、タービンの出力を減少させる場合などのように、タービンに供給される蒸気流量が減少されるときには、上記空間に隣接した領域の面圧が低下する。
【0014】
このようにして発生した面圧の低下が所定面圧よりも小さくなると、タービンに供給された蒸気が、分割面から上述のボルトが挿通されるボルト孔などを介して外部に漏れるおそれがある。
そこで、調節部によって調節される蒸気流量の減少率を抑制する制御を行う。
【0015】
すると、蒸気流量の減少率を抑制する前と比較して、上述の車室壁面における外側部分およびボルトと、車室壁面の空間に隣接した部分との間の熱収縮量の差が縮まる。さらに、タービンに供給される蒸気圧力も低下し、車室における分割面を押し広げようとする力も減少する。
これらのことから、蒸気流量の減少率を抑制する前と比較して、分割面における空間に隣接した領域の面圧が高くなり、タービンに供給された蒸気が外部に漏れにくくなる。
【0016】
上記発明においては、少なくとも、前記分割面における前記空間に隣接した領域の面圧に関する情報を取得する面圧情報取得手段が設けられ、前記制御部は、取得された前記面圧に関する情報に基づいて、前記分割面における前記空間に隣接した領域の面圧が所定面圧以上になるように、前記蒸気流量の減少率を制御することが望ましい。
【0017】
本発明によれば、上述の空間に隣接した領域の面圧に関する情報に基づくことにより、上記空間に隣接した領域の面圧が実際に所定面圧よりも小さいか否かが判断される。これにより、上述の蒸気流量の減少率を抑制する制御が適切に行われ、上記空間に隣接した領域の面圧低下を確実に抑制することができる。
【0018】
上記発明においては、前記面圧情報取得手段は、前記分割面における前記空間に隣接した領域の温度、および、前記分割面における外側の温度を測定する温度測定部であり、前記制御部は、前記空間に隣接した領域の温度、および、前記外側の温度に基づいて、前記分割面における前記空間に隣接した領域の面圧が所定面圧以上になるように、前記蒸気流量の減少率を制御することが望ましい。
【0019】
本発明によれば、分割面における空間に隣接した領域の温度(車室壁面における内側部分の温度)と、外側の温度(車室壁面における外側部分の温度)とを比較して、例えば上記空間に隣接した領域の温度が上記外側の温度よりも低いか否かにより、上記空間に隣接した領域の面圧が所定面圧より小さいか否かが判断される。
【0020】
具体的には、車室を構成する材料の線膨脹係数は既知であることから、上記領域における温度と外側の温度との温度差に基づき、これらの部分の間の収縮量の差を求めることができる。さらに、上記空間に隣接した領域における温度および外側の温度に基づいて上記ボルトの温度が推定され、上記領域における温度とボルトの温度との温度差に基づき、これらの部分の間の収縮量の差を求めることができる。
これらに基づいて上記領域の面圧に関する押しつけ力の変化を考慮した上記領域の面圧を求めることができ、上記領域の面圧が所定面圧よりも小さいか否かを判断できる。
【0021】
上記空間に隣接した領域における面圧を測定する他の方法と比較して、温度は容易に測定することができるため、蒸気流量の減少率を抑制する制御を行うか否かを容易に判断できる。
【0022】
あるいは、上記領域における温度および外側の温度と、上記領域の面圧の関係を予め取得しておくことにより、上記領域における温度および外側の温度に基づき、蒸気流量の減少を保留する制御を行うか否かを直接判断することもできる。
実際には、運転状態における内部圧力も考慮する必要があるが、プラントの運転状況を動特性シミュレーションで予測できる場合には、予め車室内外温度と面圧との関係情報を大よそ得る事ができ、上述の判断をすることが可能となる。
【0023】
上記発明においては、前記制御部は、前記蒸気流量の減少率制御を所定期間だけ行った後、前記空間に隣接した領域の温度に所定温度を加えた温度が、前記外側の温度未満である場合には、前記蒸気流量の減少率制御を終了し、前記空間に隣接した領域の温度に所定温度を加えた温度が、前記外側の温度以上である場合には、前記蒸気流量の減少率制御を継続することが望ましい。
【0024】
本発明によれば、最初の所定期間が経過した後に、上記空間に隣接した領域の温度に所定温度を加えた温度が、上記外側の温度未満か否かに基づいて、蒸気流量の減少率を調節する制御を終了するか、再度、所定期間の間だけ蒸気流量の減少率を調節する制御を行うかの判断が行われる。
【0025】
再度の蒸気流量の減少率を調節する制御を行うか否かの判断に際して、上記空間に隣接した領域の温度に所定温度を加えた温度が、上記外側の温度未満か否かに基づいて判断を行うのは次の理由による。
【0026】
つまり、最初に蒸気流量の減少率を調節する制御を行うか否かの判断を行った時と比較して、タービン出力の減少が開始されてから経過した時間が長いため、車室を締め付けて一体化させるボルトの温度は伝熱により低下している。すると、当該ボルトは熱収縮して締付力が回復することから、上記空間に隣接した領域の温度が上記外側の温度よりも低温であっても、その温度差が所定温度未満であれば、上記空間に隣接した領域の面圧を所定面圧以上に保つことができるからである。
【0027】
さらに、最初に蒸気流量の減少率を調節する制御を行うか否かの判断を行った時と比較して、タービンに供給される蒸気の圧力が低くなっているため、車室における分割面を押し広げようとする力が低下している。そのため、上記空間に隣接した領域の温度が上記外側の温度よりも低温であっても、その温度差が所定温度未満であれば、上記空間に隣接した領域の面圧を所定面圧以上に保つことができるからである。
【0028】
なお、上述の所定温度は固定値であってもよいし、タービンに供給される蒸気の圧力または空間の内部の圧力に基づいて変化する値であってもよく、特に限定するものではない。
【0029】
上記発明においては、前記制御部は、前記調節部に対して前記蒸気流量の減少を保留することにより、前記蒸気流量の減少率を調節する制御を行うことが望ましい。
【0030】
本発明によれば、蒸気流量の減少を保留することにより蒸気流量の減少率を調節する制御が行われる。言い換えると、タービンに供給される蒸気流量および蒸気温度が、上記空間に隣接した領域の面圧が所定面圧未満であると判断された時点での蒸気流量および蒸気温度に大よそ固定される。
【0031】
すると、タービンに供給される蒸気温度が大よそ一定に保たれ、上述の車室壁面における外側部分およびボルトの熱収縮量と、車室壁面の空間に隣接した部分の熱収縮量との間の熱収縮量差が縮まる。これは、例えば蒸気流量の減少率を抑制する場合であって、タービンに供給される蒸気温度が緩やかに減少するときに、上述の熱収縮量差が縮まる時間と比較して、より短い時間で熱収縮量差が縮まる。
【0032】
本発明の蒸気タービンの運転方法は、外部からの指示に基づき、タービンに供給する蒸気流量を減少させる流量減少ステップと、前記タービンを内部に収納する車室における分割面の面圧に関する情報を取得し、取得した前記面圧情報に基づいて推定される面圧が、所定面圧よりも小さいか否か比較する比較ステップと、前記推定される面圧が前記所定の面圧よりも小さい場合には、前記蒸気流量の減少率を調節する減少率調節ステップと、を有することを特徴とする。
【0033】
本発明によれば、タービンの出力を減少させる場合などのように、タービンに供給される蒸気の流量が減少されるときに、車室の分割面における空間に隣接した領域の面圧が所定面圧よりも小さい場合には、上記空間に隣接した領域の面圧が所定面圧以上になるように、蒸気流量の減少率が調節される。例えば、蒸気流量の減少率を抑制する制御が行われる。これにより、上記空間に隣接した領域の面圧の低下が抑制される。
【発明の効果】
【0034】
本発明の蒸気タービンおよび蒸気タービンの運転方法によれば、タービンに供給される蒸気流量を減少させる場合に、分割面における空間に隣接した領域の面圧が所定面圧以上になるように、蒸気流量の減少率を調節するため、可変速運転が要求されるタービンであっても車室からの蒸気漏れを防止し、タービンの性能向上を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係る蒸気タービンの概略構成を説明する模式図である。
【図2】図1の高圧タービンおよび中圧タービンを収納する車室の構成を説明する模式図である。
【図3】図2の車室における高圧内側温度測定部および高圧外側温度測定部の配置位置を説明するA−A断面視図である。
【図4】図2の車室における中圧内側温度測定部および中圧外側温度測定部の配置位置を説明するB−B断面視図である。
【図5】図1の制御部の構成を説明するブロック図である。
【図6】従来の減速制御を行った場合における蒸気タービンの出力変動、主蒸気の温度および再熱蒸気の温度の変化を説明するグラフである。
【図7】車室における高圧タービンおよび中圧タービンの入口近傍における温度変化を算出した場所を説明する模式図である。
【図8】従来の高圧タービンの入口近傍における車室の温度変化を説明するグラフである。
【図9】従来の中圧タービンの入口近傍における車室の温度変化を説明するグラフである。
【図10】本実施形態における減速制御を説明するフローチャートである。
【図11】本実施形態における高圧タービンの入口近傍における車室の内壁面および外壁面の温度変化を説明するグラフである。
【図12】従来および本実施形態における高圧タービンの入口近傍における内壁面および外壁面の温度差の変化を説明するグラフである。
【図13】本実施形態における中圧タービンの入口近傍における車室の内壁面および外壁面の温度変化を説明するグラフである。
【図14】従来および本実施形態における中圧タービンの入口近傍における内壁面および外壁面の温度差の変化を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
この発明の一実施形態に係る蒸気タービンについて、図1から図14を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る蒸気タービンの概略構成を説明する模式図である。図2は、図1の高圧タービンおよび中圧タービンを収納する車室の構成を説明する模式図である。
本実施形態に係る蒸気タービン1は船舶の主機として用いられるものであって、高圧タービン2Hから排出された蒸気を加熱する再熱器4Rを備えた再熱タービンである。
【0037】
蒸気タービン1には、図1および図2に示すように、蒸気高圧タービン(タービン)2Hおよび中圧タービン2Mを収納する車室3と、高圧タービン2Hに主蒸気を供給する主ボイラ(ボイラ)4Hと、中圧タービン2Mに再熱蒸気を供給する再熱器4Rと、主蒸気の流量を調節するガバナ(調節部)5と、蒸気タービン1をリモートコントロールする制御部6と、主ボイラ(ボイラ)4Hと再熱器4Rを制御する制御部7と、が主に設けられている。
【0038】
図3は、図2の車室における高圧内側温度測定部および高圧外側温度測定部の配置位置を説明するA−A断面視図である。図4は、図2の車室における中圧内側温度測定部および中圧外側温度測定部の配置位置を説明するB−B断面視図である。
車室3は、高圧タービン2Hおよび中圧タービン2Mを内部に収納するとともに、蒸気が導入されるものである。
車室3には、図2から図4に示すように、高圧タービン2Hおよび中圧タービン2Mを内部に収納する空間Sと、車室3を上下に2分割する分割面SPと、高圧側入口内壁温度センサ(面圧情報取得手段、温度測定部)31Hと、高圧側入口外壁温度センサ(面圧情報取得手段、温度測定部)32Hと、中圧側入口内壁温度センサ31Mと、中圧側入口外壁温度センサ32Mと、が主に設けられている。
【0039】
高圧タービン2Hおよび中圧タービン2Mは、回転軸(図示せず)の周方向に等間隔に配置されるとともに、回転軸の軸方向に間隔をあけて配置されたタービン動翼、および車室3に設けられたタービン静翼から主に構成されたものである。
【0040】
高圧タービン2Hは、図1に示すように、主ボイラ4Hから主蒸気の供給を受けて回転駆動力を発生させるものである。
中圧タービン2Mは、再熱器4Rから再熱蒸気の供給を受けて回転駆動力を発生させるものである。
【0041】
空間Sは、図2から図4に示すように、車室3の内部に形成された空間であって、高圧タービン2Hおよび中圧タービン2Mが配置されるとともに、主蒸気および再熱蒸気が流れる流路を形成するものである。
【0042】
分割面SPは、図3および図4に示すように、車室3を上車室3Uおよび下車室3Lの2つに分割する面である。言い換えると、上車室3Uおよび下車室3Lが接触する面である。
上車室3Uおよび下車室3Lは、上車室3Uに設けられたボルト孔41に挿通されたボルト42によって一体に締め付けられている。さらに、下車室3Lには、高圧側入口内壁温度センサ31H、高圧側入口外壁温度センサ32H、中圧側入口内壁温度センサ31Mおよび中圧側入口外壁温度センサ32Mが設けられている。
【0043】
高圧側入口内壁温度センサ31Hおよび高圧側入口外壁温度センサ32Hは、図2および図3に示すように、下車室3Lにおける主蒸気が高圧タービン2Hに流入する領域近傍の温度を測定するものである。
【0044】
高圧側入口内壁温度センサ31Hは、主蒸気が高圧タービン2Hに流入する領域であって、車室3の内壁面とボルト孔41との間の距離が最も離れている点を含む断面における車室3の内壁面の温度(空間に隣接した領域の温度)を測定するものである。言い換えると、分割面SPにおける面圧が最初に低下する領域の内壁面の温度を測定するものである。
さらに、高圧側入口内壁温度センサ31Hは、上述の内壁面の温度に係る測定信号を制御部6に出力するものである。
【0045】
高圧側入口外壁温度センサ32Hは、主蒸気が高圧タービン2Hに流入する領域であって、車室3の内壁面とボルト孔41との間の距離が最も離れている点を含む断面における車室3の外壁面の温度を測定するものである。さらに、高圧側入口外壁温度センサ32Hは、上述の外壁面の温度(外側の温度)に係る測定信号を制御部6に出力するものである。
【0046】
中圧側入口内壁温度センサ31Mおよび中圧側入口外壁温度センサ32Mは、図2および図4に示すように、下車室3Lにおける再熱蒸気が中圧タービン2Mに流入する領域近傍の温度を測定するものである。
【0047】
中圧側入口内壁温度センサ31Mは、再熱蒸気が中圧タービン2Mに流入する領域であって、車室3の内壁面とボルト孔41との間の距離が最も離れている点を含む断面における車室3の内壁面の温度を測定するものである。言い換えると、分割面SPにおける面圧が最初に低下する領域の内壁面の温度を測定するものである。
さらに、中圧側入口内壁温度センサ31Mは、上述の内壁面の温度に係る測定信号を制御部6に出力するものである。
【0048】
中圧側入口外壁温度センサ32Mは、再熱蒸気が中圧タービン2Mに流入する領域であって、車室3の内壁面とボルト孔41との間の距離が最も離れている点を含む断面における車室3の外壁面の温度を測定するものである。さらに、中圧側入口外壁温度センサ32Mは、上述の外壁面の温度に係る測定信号を制御部6に出力するものである。
【0049】
さらに、車室3に高圧側出口内壁温度センサ33Hと、高圧側出口外壁温度センサ34Hと、中圧側出口内壁温度センサ33Mと、中圧側出口外壁温度センサ34Mと、を設けて車室3の温度を測定して、制御部6における制御に用いてもよい。
【0050】
なお、制御部6における制御は、主に高圧側入口内壁温度センサ31H、高圧側入口外壁温度センサ32H、中圧側入口内壁温度センサ31Mおよび中圧側入口外壁温度センサ32Mの測定信号に基づいて行われ、高圧側出口内壁温度センサ33H、高圧側出口外壁温度センサ34H、中圧側出口内壁温度センサ33Mおよび中圧側出口外壁温度センサ34Mの測定信号は参考情報として用いられる。
【0051】
高圧側出口内壁温度センサ33Hおよび高圧側出口外壁温度センサ34Hは、図2に示すように、下車室3Lにおける主蒸気が高圧タービン2Hから流出する領域近傍の温度を測定するものである。
【0052】
高圧側出口内壁温度センサ33Hは、主蒸気が高圧タービン2Hから流出する領域の断面における車室3の内壁面の温度を測定するものである。さらに、高圧側出口内壁温度センサ33Hは、上述の内壁面の温度に係る測定信号を制御部6に出力するものである。
【0053】
高圧側出口外壁温度センサ34Hは、主蒸気が高圧タービン2Hから流出する領域の断面における車室3の外壁面の温度を測定するものである。さらに、高圧側出口外壁温度センサ34Hは、上述の外壁面の温度に係る測定信号を制御部6に出力するものである。
【0054】
中圧側出口内壁温度センサ33Mおよび中圧側出口外壁温度センサ34Mは、図2に示すように、下車室3Lにおける再熱蒸気が中圧タービン2Mから流出する領域近傍の温度を測定するものである。
【0055】
中圧側出口内壁温度センサ33Mは、再熱蒸気が中圧タービン2Mから流出する領域の断面における車室3の内壁面の温度を測定するものである。さらに、中圧側出口内壁温度センサ33Mは、上述の内壁面の温度に係る測定信号を制御部6に出力するものである。
【0056】
中圧側出口外壁温度センサ34Mは、再熱蒸気が中圧タービン2Mから流出する領域の断面における車室3の外壁面の温度を測定するものである。さらに、中圧側出口外壁温度センサ34Mは、上述の外壁面の温度に係る測定信号を制御部6に出力するものである。
【0057】
その他にも、高圧側入口ボルト温度センサ35Hと、中圧側入口ボルト温度センサ35Mと、高圧側出口ボルト温度センサ36Hと、中圧側出口ボルト温度センサ36Mと、を設けてボルト42の温度を測定して、制御部6における制御の参照温度として用いてもよい。
高圧側入口ボルト温度センサ35H、中圧側入口ボルト温度センサ35M、高圧側出口ボルト温度センサ36Hおよび中圧側出口ボルト温度センサ36Mの測定信号は、対応するボルト42の温度が、隣接する車室3の内壁温度や外壁温度と連動して変化しているか否かを確認するため等に用いられる。
【0058】
高圧側入口ボルト温度センサ35Hは、図2に示すように、主蒸気が高圧タービン2Hに流入する領域近傍に配置されたボルト42の温度を測定するものである。さらに、高圧側入口ボルト温度センサ35Hは、上述のボルト42の温度に係る測定信号を制御部6に出力するものである。
中圧側入口ボルト温度センサ35Mは、再熱蒸気が中圧タービン2Mに流入する領域近傍の温度を測定するものである。さらに、中圧側入口ボルト温度センサ35Mは、上述のボルト42の温度に係る測定信号を制御部6に出力するものである。
【0059】
高圧側出口ボルト温度センサ36Hは、主蒸気が高圧タービン2Hから流出する領域近傍に配置されたボルト42の温度を測定するものである。さらに、高圧側出口ボルト温度センサ36Hは、上述のボルト42の温度に係る測定信号を制御部6に出力するものである。
中圧側出口ボルト温度センサ36Mは、再熱蒸気が中圧タービン2Mから流出する領域近傍の温度を測定するものである。さらに、中圧側出口ボルト温度センサ36Mは、上述のボルト42の温度に係る測定信号を制御部6に出力するものである。
【0060】
主ボイラ4Hは、図1に示すように、外部から供給された燃料を燃焼させて得た熱を用いて蒸気を発生させるものであって、高圧タービン2Hに主蒸気を供給するものである。
再熱器4Rは、図1に示すように、燃料を燃焼させて得た熱を用いて高圧タービン2Hから排出された蒸気を再び加熱し、中圧タービン2Mに再熱蒸気を供給するものである。
【0061】
主ボイラ4Hおよび再熱器4Rによる主蒸気および再熱蒸気の供給は、制御部6により制御されるガバナ5による蒸気状態とガバナ開度指示値から、制御部7により制御されている。
なお、主ボイラ4Hおよび再熱器4Rとしては、公知のものを用いることができ、特に限定するものではない。
【0062】
ガバナ5は、図1に示すように、蒸気タービン1の負荷に応じて主ボイラ4Hから高圧タービン2Hに供給される主蒸気の流量を制御するものである。言い換えると、蒸気タービン1の出力が、制御部6から指示された出力になるように主蒸気の流量を制御するものである。
なお、ガバナ5としては公知のものを用いることができ、特に限定するものではない。
【0063】
図5は、図1の制御部の構成を説明するブロック図である。
制御部6は、船舶の船橋からの指令や、高圧側入口内壁温度センサ31Hなどの測定信号に基づき、ガバナ5などを制御し且つ、主ボイラ4H及び再熱器4Rを制御する制御部7へガバナ開度指示値を発信するものである。
制御部6には、図5に示すように、船橋からの指令や、高圧側入口内壁温度センサ31H、高圧側入口外壁温度センサ32H、中圧側入口内壁温度センサ31M、中圧側入口外壁温度センサ32Mの測定信号が主に入力されている。
【0064】
さらに制御部6には、高圧側出口内壁温度センサ33H、高圧側出口外壁温度センサ34H、中圧側出口内壁温度センサ33Mおよび中圧側出口外壁温度センサ34Mの測定信号が入力されていてもよい。
その他にも、制御部6に高圧側入口ボルト温度センサ35H、中圧側入口ボルト温度センサ35M、高圧側出口ボルト温度センサ36Hおよび中圧側出口ボルト温度センサ36Mの測定信号が入力されていてもよい。
【0065】
制御部6からは、ガバナ5に主蒸気の流量を制御する制御信号が、制御部7からは主ボイラ4Hおよび再熱器4Rに供給される燃料の流量を制御する制御信号などが出力されている。
なお、制御部6による制御方法の詳細については後述する。
【0066】
制御部7は、制御部6から入力されたガバナリフト指示値や運転モードの情報と、主蒸気や再熱蒸気の状態とに基づいて、主ボイラ4H及び再熱器4Rを制御するものである。
【0067】
次に、上記の構成からなる蒸気タービン1における制御方法、特に外洋航行モードから港湾航行モードに切り替える場合などのように、蒸気タービン1の負荷が高い状態からの減速制御について説明する。
【0068】
ここで港湾航行モードとは、船舶が港湾内を航行する際に主に用いられるモードであり、主機である蒸気タービン1の最大負荷に対して0%程度から約25%程度の範囲の負荷で用いられるモードである。これに対して、外洋航行モードは船舶が外洋を航行する際に用いられるモードであり、港湾航行モードと比較して蒸気タービン1の負荷が高い状態で用いられるモードである。
【0069】
まず、蒸気タービン1における蒸気の流れについて、図1を参照しながら説明する。
蒸気は主ボイラ4Hにおいて燃料の燃焼により得られた熱を用いて生成され、高温高圧の主蒸気として車室3内の高圧タービン2Hに供給される。このとき、主ボイラ4Hに供給される燃料の流量は制御部7によって制御されている。さらに、主ボイラ4Hから高圧タービン2Hに供給される主蒸気の流量は制御部6から制御信号(指令)が入力されたガバナ5により制御されている。
【0070】
主蒸気は高圧タービン2Hを回転駆動することにより圧力および温度が低下し、車室3の外へ排出される。排出された主蒸気は再熱器4Rにおいて燃料の燃焼により得られた熱を用いて加熱され、高温の再熱蒸気として車室3内の中圧タービン2Mに供給される。このとき、再熱器4Rに供給される燃料の流量は制御部7により制御されている。
【0071】
再熱蒸気は中圧タービン2Mを回転駆動することにより圧力および温度が低下し、車室3の外部に排出される。
このとき車室3は、内部に供給される主蒸気および再熱蒸気により温められている。
【0072】
なお上述の説明は、再熱器4Rにおいて燃料の燃焼が行われる外洋航行モード(Normal Mode)の場合に適用して説明している。港湾航行モード(Harbor Mode)の場合には、再熱器4Rにおいて燃料の燃焼は行われない点が外洋航行モードと異なっている。
【0073】
次に、本実施形態の特徴である蒸気タービン1の負荷が高い状態からの減速制御について説明する。ここでは、外洋航行モードから短時間(例えば10分や30分や45分など)で港湾航行モード(例えば港湾航行船速FULL相当)に切り替える場合に適用して説明する。
最初に従来の減速制御、および、その問題点について説明し、その後に本実施形態の減速制御、および、その効果について説明する。
【0074】
従来の減速制御の場合には、タービンリモコンは、蒸気タービンの出力の目標値および制御に要する時間に基づいて、ガバナリフト(ガバナの開度)の時間変化を制御するタイムスケジュールを作成し、このタイムスケジュールに従ってガバナリフトを制御することにより行われている。さらに、蒸気タービンの出力に応じて主ボイラおよび再熱器に供給される燃料の流量も制御されている。
言い換えると、蒸気タービンの車室温度などを考慮したガバナリフトの制御は行われていない。
【0075】
図6は、従来の減速制御を行った場合における蒸気タービンの出力変動、主蒸気の温度および再熱蒸気の温度の変化を説明するグラフである。
ここでは、蒸気タービン1の出力を約15分で約5分の1に低下させた場合のシミュレーション結果について説明する。図6における横軸は、減速制御を開始してからの経過時間を分単位で示すものであり、縦軸は蒸気タービン1の出力、主蒸気の温度および再熱蒸気の温度を示すものである。さらに、蒸気タービン1の出力は符号Pが付されたグラフで、主蒸気の温度は符号THが付されたグラフで、再熱蒸気の温度は符号TRが付されたグラフで示している。
【0076】
図6に示すように、減速制御が開始されてから3分程度経過するまでは、蒸気タービン1の出力P、主蒸気の温度THおよび再熱蒸気の温度TRは一定で推移している。このとき、主蒸気の温度TMおよび再熱蒸気の温度TRは大体同じである。
【0077】
その後、蒸気タービン1の出力Pの減少が始まり、減速制御の開始から7分程度が経過するまでの間は、出力が一定の割合で低下し続ける。そして7分程度から10分程度までの間は、蒸気タービン1の出力Pの減少率が小さくなり、10分程度が経過すると減少率は再び大きくなる。蒸気タービン1の出力Pは、目標値である制御前出力の約5分の1よりも一時小さくなり(アンダーシュートして)、その後徐々に目標値に近づき、制御開始から約15分で目標値に制御される。
【0078】
その一方で、蒸気タービン1の出力Pの低下に遅れて、減速制御の開始から5分程度が経過すると主蒸気の温度THおよび再熱蒸気の温度TRの低下が始まる。
再熱蒸気の温度TRと比較して主蒸気の温度THは先行して低下し、主蒸気の温度THと再熱蒸気の温度TRとの逆転が発生する。この逆転は最大で約50℃に達し、蒸気タービン1の出力Pが目標値である約5分の1まで低下した後も続き、減速制御の開始から30分程度が経過するまで維持される。
【0079】
つまり、主蒸気が高圧タービンを回転駆動した後に、再熱器4Rにより加熱されたものが再熱蒸気であることから、再熱蒸気の温度TRは、主蒸気の温度THと比較して追従性が悪いため、このような事象が発生する。具体的には、主蒸気の温度THは、再熱蒸気の温度TRと比較して、早期に温度低下が始まり、制御開始から25分程度で温度が一定になり始めている。それに対して、再熱蒸気の温度TRは、主蒸気の温度THに遅れて温度の低下が始まり、制御の開始から30分程度で主蒸気の温度THまで温度が低下している。
【0080】
次に、従来の減速制御を行った場合における車室の温度変化のシミュレーション結果について説明する。
図7は、車室における高圧タービンおよび中圧タービンの入口近傍における温度変化を算出した場所を説明する模式図である。
図7における点HIは車室3における高圧タービン2Hの入口近傍における内壁面上の温度変化を観察した点であり、点HOは外壁面上の温度変化を観察した点である。さらに、点MIは車室3における中圧タービン2Mの入口近傍における内壁面上の温度変化を観察した点であり、点MOは外壁面上の温度変化を観察した点である。
【0081】
図8は、従来の高圧タービンの入口近傍における車室の温度変化を説明するグラフである。
まず図8に基づいて、高圧タービン2Hの入口近傍における車室3の内壁面上の点HIおよび外壁面上の点HOの温度変化について説明する。
減速制御が開始された時点である経過時間が0分の近傍では、点HIにおける温度は、点HOにおける温度よりも高い状態で保たれている。点HIが相対的に高温なのは、図6に示すように、点HIが面している高圧タービン2Hが配置されている空間Sに高温の主蒸気が供給されているためである。
【0082】
減速制御が開始されると高圧タービン2Hに供給される主蒸気の流量が減少するとともに、主蒸気の温度も低下するため、車室3の内壁面(点HIを含む。)に供給される熱量が減少する。その結果、点HIにおける温度は時間の経過とともに低下して、主蒸気の温度変化が安定する制御の開始から30分程度で安定化する。
【0083】
その一方で、車室3の外壁面(点HOを含む。)の温度は、直接主蒸気の温度低下の影響を受けるものではなく、車室3の壁面を内側から外側に伝わる熱量に依存するため、点HIにおける温度よりも緩やかに低下する。
その結果、減速制御が開始されてから5分程度で点HIにおける温度と、点HOにおける温度の逆転が発生していることが図8から分かる。
【0084】
図9は、中圧タービンの入口近傍における車室の温度変化を説明するグラフである。
次に図9に基づいて、中圧タービン2Mの入口近傍における車室3の内壁面上の点MIおよび外壁面上の点MOの温度変化について説明する。
中圧タービン2Mには、図6に示すように主蒸気と比較して減速制御に対して温度追従性が低い再熱蒸気が供給されているため、点MIにおける温度変化は点HIにおける温度変化と比較して緩やかになっている。具体的には減速制御が開始されてから10分程度が経過してから点MIにおける温度の低下が始まり、15分程度が経過してから温度の低下率が大きくなっている。
【0085】
その一方で、点MOにおける温度は、点HOにおける温度と同様に、直接再熱蒸気の温度低下の影響を受けるものではなく、車室3の壁面を内側から外側に伝わる熱量に依存するため、点HIにおける温度よりも緩やかに低下する。
その結果、減速制御が開始されてから23分程度で点MIにおける温度と、点MOにおける温度の逆転が発生していることが図9から分かる。
【0086】
このように、点HIにおける温度と点HOにおける温度との逆転、および、点MIにおける温度と点MOにおける温度との逆転が発生すると、車室3の内壁面における熱収縮量が、外壁面における熱収縮量よりも大きくなり、分割面SPにおける内壁面近傍の面圧が低下する。
【0087】
さらに、内壁面と外壁面との間に配置されたボルト42における温度は、減速運転が開始された直後は内壁面における温度よりも高いため、ボルト42における熱収縮量は内壁面における熱収縮量と比較して大きくない。つまり、ボルト42における上車室3Uおよび下車室3Lを締め付ける締付力が低下するため、さらに分割面SPにおける面圧が低下する。
【0088】
次に、本実施形態における減速制御について説明する。
図10は、本実施形態における減速制御を説明するフローチャートである。
まず、船橋から制御部6に対して、船舶の航行速度を減速させる指示が入力される。例えば、船舶を入港させるために外洋航行モードから港湾航行モードに切り替える(減速させる)指示が入力される(制御オーダーステップS1)。このとき同時に、船舶を指示された航行速度までに減速させる所要時間も入力される。
【0089】
制御部6は入力された指示に基づいて、指示された航行速度に対応するガバナ5における主蒸気の流量、つまりガバナ5のリフト量(以後、「オーダーリフト量」と表記する。)を算出する。さらに、入力された所要時間内に、現在のガバナ5のリフト量をオーダーリフト量まで変化させるタイムスケジュールを算出する。その後、制御部6は、算出したタイムスケジュールに従って、ガバナ5のリフト量制御を行う(ガバナ制御ステップ(流量減少ステップ)S2)。
【0090】
ガバナ5のリフト量制御が開始されると、ガバナ5のリフト量が徐々に減少するため、ガバナ5を通過する主蒸気の流量が減少する。その結果、高圧タービン2Hに供給される主蒸気の流量、および、中圧タービン2Mに供給される再熱蒸気の流量が減少する。
同時に制御部6の指示値、主蒸気及び再熱蒸気状態により、制御部7は、主ボイラ4Hおよび再熱器4Rに供給される燃料の流量を減少させる制御を行う。そのため、主ボイラ4Hから供給される主蒸気温度および再熱器4Rから供給される再熱蒸気温度が低下する。
【0091】
ガバナ5のリフト量制御が開始されると制御部6は、高圧側入口/出口内壁温度センサ31H/33Hおよび高圧側入口/出口外壁温度センサ32H/34H、中圧側入口/出口内壁温度センサ31M/33Mおよび中圧側入口/出口外壁温度センサ32M/34Mの測定信号に基づいて、高圧タービン2Hの主蒸気の入口および出口、中圧タービン2Mの再熱蒸気の入口および出口近傍における車室3の内壁面温度と、外壁面温度との比較を行う(第1温度比較ステップ(比較ステップ)S3)。
【0092】
内壁面温度が外壁面温度以上の場合には、制御部6はその時点におけるガバナ5のリフト量と、オーダーリフト量との比較を行う(第1リフト比較ステップS4)。
その時点におけるガバナ5のリフト量がオーダーリフト量と等しくない場合には、上述のガバナ制御ステップS2に戻り、タイムスケジュールに従ったガバナ5のリフト量制御が継続される。
その一方で、その時点におけるガバナ5のリフト量がオーダーリフト量と等しい場合には、制御部6による減速制御が終了する。
【0093】
内壁面温度が外壁面温度未満の場合には、制御部6はガバナ5のリフト量をその時点のリフト量で保持する制御を行う(リフト量保持ステップ(減少率調節ステップ)S5)。
リフト量の保持は所定の期間、例えば10分程度継続される。
【0094】
リフト量の保持を行うことで、蒸気流量の減少が保留されるとともに、蒸気温度の低下も保留される。例えば蒸気流量の減少率を抑制する場合には、高圧タービン2Hに供給される蒸気温度が緩やかに減少するのに対して、蒸気流量の減少を抑制する場合には、蒸気温度が一定に保たれる。
そのため、上述の車室3の壁面における外側部分およびボルト42における熱収縮量と、車室3の壁面における空間Sに隣接した部分(内側部分)の熱収縮量との間の熱収縮量差をより短い時間で小さくすることができる。
【0095】
リフト量を保持する期間が経過すると制御部6は、再び、高圧側入口/出口内壁温度センサ31H/33Hおよび高圧側入口/出口外壁温度センサ32H/34H、中圧側入口/出口内壁温度センサ31M/33Mおよび中圧側入口/出口外壁温度センサ32M/34Mの測定信号に基づいて、高圧タービン2Hの主蒸気の入口および出口、中圧タービン2Mの再熱蒸気の入口および出口近傍における車室3の内壁温度に第1所定温度(所定温度)α1を加えた温度と、外壁面温度との比較を行う(第2温度比較ステップS6)。
【0096】
第1所定温度α1としては、50℃程度を例示することができる。
第2温度比較ステップS6を行うに際して、車室3の内壁温度に第1所定温度α1を加えた温度が、外壁面温度未満か否かに基づいて判断を行うのは次の理由による。
【0097】
つまり、第1温度比較ステップS3を行った時と比較して、蒸気タービン1の出力減少が開始されてから経過した時間が長いため、車室3を締め付けて一体化させるボルト42の温度は伝熱により低下している。すると、ボルト42は熱収縮して締付力が回復することから、内壁温度が外壁面温度よりも低温であっても、その温度差が第1所定温度α1未満であれば、空間Sに隣接した領域の面圧を所定面圧以上に保つことができるからである。
【0098】
さらに、第1温度比較ステップS3を行った時と比較して、高圧タービン2Hに供給される蒸気流量が減少し、タービン内部の圧力が低くなっているため、車室3における分割面SPを押し広げようとする力が低下している。そのため、内壁温度が外壁面温度の温度よりも低温であっても、その温度差が第1所定温度α1未満であれば、空間Sに隣接した領域の面圧を所定面圧以上に保つことができるからである。
【0099】
なお、第1所定温度α1は固定された温度であってもよいし、高圧タービン2Hに供給される蒸気の圧力または空間Sの内部の圧力に基づいて変化する温度であってもよく、特に限定するものではない。
【0100】
内壁温度に第1所定温度(α1)を加えた温度が外壁温度未満の場合には、制御部6は、再び、リフト量保持ステップS5に戻り、リフト量の保持が所定の期間だけ繰り返される。
【0101】
その一方で、内壁温度に第1所定温度(α1)を加えた温度が外壁温度以上の場合には、制御部6は、タイムスケジュールに従ってガバナ5のリフト量制御を再開する(ガバナ制御再開ステップS7)。
【0102】
ガバナ5のリフト量制御が再開されると制御部6は、更に、高圧側入口/出口内壁温度センサ31H/33Hおよび高圧側入口/出口外壁温度センサ32H/34H、中圧側入口/出口内壁温度センサ31M/33Mおよび中圧側入口/出口外壁温度センサ32M/34Mの測定信号に基づいて、高圧タービン2Hの主蒸気の入口および出口、中圧タービン2Mの再熱蒸気の入口および出口近傍における車室3の内壁温度に第2所定温度(所定温度)α2を加えた温度と、外壁面温度との比較を行う(第3温度比較ステップS8)。
【0103】
第2所定温度α2としては、第1所定温度α1と同じ50℃程度であってもよいし、第1所定温度α1よりも高い温度であってもよく、特に限定するものではない。
【0104】
つまり、第2所定温度α2が用いられる第3温度比較ステップS8が行われる際には、第1所定温度α1が用いられる第2温度比較ステップS6が行われる際と比較して、高圧タービン2Hに供給される主蒸気流量の減少に伴い、タービン内部の圧力や、中圧タービン2Mに供給される再熱蒸気の圧力が低下している。そのため、第2温度比較ステップS6が行われる際と比較して第3温度比較ステップS8が行われる際には、車室3の分割面SPを押し広げる力が弱くなることから、第2所定温度α2が第1所定温度α1よりも高い温度であっても、分割面SPにおける面圧を確保することができる。
【0105】
内壁温度に第2所定温度(α2)を加えた温度が外壁温度未満の場合には、制御部6は、再び、リフト量保持ステップS5に戻り、リフト量の保持が所定の期間だけ繰り返される。
【0106】
その一方で、内壁温度に第2所定温度(α2)を加えた温度が外壁温度以上の場合には、制御部6はその時点におけるガバナ5のリフト量と、オーダーリフト量との比較を行う(第2リフト比較ステップS9)。
その時点におけるガバナ5のリフト量がオーダーリフト量と等しくない場合には、上述のガバナ制御再開ステップS7に戻り、タイムスケジュールに従ったガバナ5のリフト量制御が継続される。
その一方で、その時点におけるガバナ5のリフト量がオーダーリフト量と等しい場合には、制御部6による減速制御が終了する。
【0107】
次に、本実施形態の減速制御を行った場合における車室の温度変化のシミュレーション結果について説明する。
ここでは、船舶の航行速度を約45分で港湾航行船速FULLに相当する航行速度に減速するとともに、第1所定温度(α1)および第2所定温度(α2)を約50℃とする場合に適用してシミュレーションを行っている。
【0108】
図11は、本実施形態における高圧タービンの入口近傍における車室の内壁面および外壁面の温度変化を説明するグラフである。図12は、従来および本実施形態における高圧タービンの入口近傍における内壁面および外壁面の温度差の変化を説明するグラフである。
まず図11および図12に基づいて、高圧タービン2Hの入口近傍における車室3の内壁面上の点HIおよび外壁面上の点HOの温度変化について説明する。
なお、点HIおよび点HOの位置は、図7において示された位置と同一である。
【0109】
さらに、図12における破線で記載されたグラフは、従来の減速制御における点HIにおける温度と点HOにおける温度の温度差を表し、実線で記載されたグラフは、本実施形態の減速制御における点HIにおける温度と点HOにおける温度の温度差を表している。
【0110】
減速制御が開始された時点である経過時間が0分の近傍では、従来の減速制御の場合と同様に点HIにおける温度は、点HOにおける温度よりも高い状態で保たれている。
【0111】
その後、減速制御が継続されると、高圧タービン2Hに供給される主蒸気の流量が減少するとともに、主蒸気の温度が低下するため、点HIにおける温度も低下する。本実施形態の減速制御が継続されている間、つまり、減速制御が開始されてから約45分が経過するまでは、点HIにおける温度は、ほぼ一定に低下し続ける。
そして、本実施形態の減速制御が終了すると、点HIにおける温度は、それ以前よりも大きな割合で低下する。
【0112】
その一方で、点HOにおける温度は、従来の減速制御の場合と同様に、点HIにおける温度よりも緩やかに低下する。
その結果、減速制御が開始されてから約7分で点HIにおける温度と、点HOにおける温度の逆転が発生している。
【0113】
つまり、減速制御が開始されてから約7分が経過する前は、制御部6は上述のガバナ制御ステップS2、第1温度比較ステップS3および第1リフト比較ステップS4を繰り返している。
【0114】
そして、減速制御が開始されてから約7分が経過する前後において、点HIにおける温度(内壁面温度)が点HOにおける温度(外壁面温度)未満となるため、制御部6はリフト量保持ステップS5に移行して、ガバナ5のリフト量をその時点のリフト量で保持する制御を開始する。
【0115】
その後、制御部6は、リフト量保持ステップS5、第2温度比較ステップS6、ガバナ制御再開ステップS7、第3温度比較ステップS8および第2リフト比較ステップS9を行う。
そのため、本実施形態の減速制御が行われている間、つまり減速制御が開始されてから約45分が経過するまでは、点HIにおける温度(内壁面温度)と、点HOにおける温度(外壁面温度)との間の温度差は約50℃未満に保たれている。本実施形態の減速制御が終了した後は、点HIにおける温度と、点HOにおける温度との間の温度差は約50℃以上となっている。
【0116】
その一方で従来の減速制御の場合には、減速制御が開始されてから約15分が経過した時点で、点HIにおける温度と、点HOにおける温度との間の温度差は約50℃以上となる。
【0117】
図13は、本実施形態における中圧タービンの入口近傍における車室の内壁面および外壁面の温度変化を説明するグラフである。図14は、従来および本実施形態における中圧タービンの入口近傍における内壁面および外壁面の温度差の変化を説明するグラフである。
次に図13および図14に基づいて、中圧タービン2Mの入口近傍における車室3の内壁面上の点MIおよび外壁面上の点MOの温度変化について説明する。
なお、点MIおよび点MOの位置は、図7において示された位置と同一である。
【0118】
さらに、図14における破線で記載されたグラフは、従来の減速制御における点MIにおける温度と点MOにおける温度の温度差を表し、実線で記載されたグラフは、本実施形態の減速制御における点MIにおける温度と点MOにおける温度の温度差を表している。
【0119】
減速制御が開始された時点である経過時間が0分の近傍では、従来の減速制御の場合と同様に点MIにおける温度は、点MOにおける温度よりも高い状態で保たれている。
【0120】
その後、減速制御が継続されると、中圧タービン2Mに供給される再熱蒸気の流量が減少するとともに、再熱蒸気の温度が低下するため、点MIにおける温度も低下する。本実施形態の減速制御が継続されている間、つまり、減速制御が開始されてから約45分が経過するまでは、点MIにおける温度は、ほぼ一定に低下し続ける。
そして、本実施形態の減速制御が終了すると、点MIにおける温度は、それ以前よりも大きな割合で低下する。
なお、高圧タービン2Hに係る点HIにおける温度と比較すると、中圧タービン2Mに係る点MIにおける温度の低下は、中圧タービン2Mには再熱蒸気が供給されていることから緩やかになっている。
【0121】
その一方で、点MOにおける温度は、従来の減速制御の場合と同様に、点MIにおける温度よりもさらに緩やかに低下する。
その結果、減速制御が開始されてから約33分で点MIにおける温度と、点MOにおける温度の逆転が発生している。
【0122】
上記の構成によれば、蒸気タービン1の出力を減少させる場合などのように、高圧タービン2Hに供給される主蒸気の流量が減少される場合に、車室3の分割面SPにおける空間Sに隣接した領域の面圧が所定面圧よりも小さいときには、空間Sに隣接した領域の面圧が所定面圧以上になるように、蒸気流量の減少が保留される(減少率が抑制される)。これにより、空間Sに隣接した領域の面圧の低下が抑制され、可変速運転が要求される蒸気タービン1であっても車室3からの蒸気漏れを防止でき、蒸気タービン1の性能向上を図ることができる。
【0123】
具体的には、蒸気タービン1が定常運転やプログラム自動昇速やプログラム自動減速されている際に、蒸気タービン1の出力を減少させる制御を行うと、主ボイラ4Hから高圧タービン2Hに供給される蒸気の流量が減少されるとともに、主ボイラ4Hの負荷も低下することから主蒸気の温度も低下する。
【0124】
車室3の内壁面温度よりも温度が低い主蒸気が、高圧タービン2Hを収納した空間Sに流入すると、車室3の内壁面は、主蒸気と接触する部分から主蒸気に保有熱が奪われ温度が低下する。このとき、車室3の壁面における外側の温度(外壁面温度)と、空間Sに隣接した部分の温度(内壁面温度)との間に温度差が生じる。さらに、分割面SPにより分割された上車室3Uおよび下車室3Lを一体につなぎとめるボルト42の温度と、内壁面温度との間にも温度差が生じている。つまり、車室3の壁面における外側の部分およびボルト42と比較して、車室3の壁面の空間Sに隣接した部分は早い段階から熱収縮して熱収縮量に差が生じる。これにより、分割面SPにおける空間Sに隣接した領域における面圧に関する押しつけ力が低下する。
【0125】
その一方で、主蒸気流量の減少に伴い、空間Sの内部における圧力も緩やかに低下する。つまり、車室3の分割面SPを押し広げようとする力は、上述の押しつけ力の低下と比較して緩やかに減少する。
これらのことから、蒸気タービン1の出力を減少させる場合などのように、高圧タービン2Hに供給される蒸気流量が減少されるときには、分割面SPにおける空間Sに隣接した領域の面圧が低下する。
このようにして発生した面圧の低下が所定面圧よりも小さくなると、高圧タービン2Hに供給された主蒸気が、分割面SPからボルト孔41などを介して外部に漏れるおそれがある。
【0126】
そこで蒸気流量の減少を保留する制御を行うと、蒸気流量の減少を保留する前と比較して、車室3の壁面における外側部分およびボルト42と、車室3の壁面の空間Sに隣接した部分との間の熱収縮量の差が縮まる。さらに、高圧タービン2Hに供給される主蒸気の圧力も低下し、分割面SPを押し広げようとする力も減少する。
これらのことから、蒸気流量の減少を保留する前と比較して、分割面SPにおける空間Sに隣接した領域の面圧が高くなり、高圧タービン2Hに供給された蒸気が外部に漏れにくくなる。
【0127】
分割面SPにおける空間Sに隣接した領域の温度(内壁面温度)と、外側の温度(外壁面温度)との比較に基づいて、蒸気流量の減少を保留する制御を行うことにより、これらの温度に基づかない場合と比較して蒸気流量の減少を保留する制御が適切に行われる。
【0128】
具体的には、車室3を構成する材料の線膨脹係数は既知であることから、内壁面温度と外壁面温度との温度差に基づき、分割面SPにおける内壁面部分と外壁面部分との間の収縮量の差を求めることができる。さらに、内壁面温度および外壁面温度に基づいてボルト42の温度が推定され、内壁面温度とボルト42の温度との温度差に基づき、分割面SPの内壁面部分とボルト42との間の収縮量の差を求めることができる。
これらに基づいて押しつけ力の変化を考慮した分割面SPの内壁面部分の面圧を求めることができ、分割面SPの内壁面部分の面圧が所定面圧よりも小さいか否かを判断できる。
【0129】
分割面SPの内壁面部分の面圧を測定する他の方法と比較して、温度は容易に測定することができるため、蒸気流量の減少を保留する制御を行うか否かを容易に判断できる。
【0130】
なお、蒸気タービン1の運転状態と、分割面SPの内壁面部分の面圧の関係とを予め取得しておくことにより、内壁面温度および外壁面温度を測定することなく、蒸気流量の減少を保留する制御を直接行うことができる。
あるいは、内壁面温度および外壁面温度と、分割面SPの内壁面部分の面圧の関係を予め取得しておくことにより、内壁面温度および外壁面温度に基づき、蒸気流量の減少を保留する制御を行うか否かを、面圧を求める演算を行うことなく判断することもできる。
【0131】
リフト量保持ステップS5が行われた後に、つまりリフト量の保持を行う最初の所定期間が経過した後に、内壁面温度に所定温度を加えた温度が、外壁面温度未満か否かに基づいて、蒸気流量の減少を保留する制御を終了して、蒸気流量を減少させる制御を再開するか、再度、所定期間の間だけ蒸気流量の減少を保留する制御を行うかの判断が行われる。
このようにすることで、内壁面温度が外壁面温度未満か否かに基づいて判断する場合と比較して、より早い時期に蒸気流量を減少させる制御を再開することができる。
【符号の説明】
【0132】
1 蒸気タービン
2H 蒸気高圧タービン(タービン)
3 車室
4H 主ボイラ(ボイラ)
5 ガバナ(調節部)
6 制御部(タービンリモコン)
7 制御部(主ボイラ・再熱器制御)
S 空間
SP 分割面
31H 高圧側入口内壁温度センサ(面圧情報取得手段、温度測定部)
32H 高圧側入口外壁温度センサ(面圧情報取得手段、温度測定部)
S2 ガバナ制御ステップ(流量減少ステップ)
S3 第1温度比較ステップ(比較ステップ)
S5 リフト量保持ステップ(減少率調節ステップ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービン、特に可変速運転が要求される蒸気タービンに適用して好適な蒸気タービンおよび蒸気タービンの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、蒸気タービンにおいては、回転数上昇時や出力上昇時、特に蒸気タービンの起動時においてタービン車室の壁における壁温に基づいて、蒸気タービンの回転数を制限する制御が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
これは、タービン車室の壁面における表面温度と、壁面の中位温度との温度差によって、タービン車室に過大な熱応力がかかるのを防止するためである。
【0003】
その一方で、蒸気タービンの回転数減少時や出力減少時においては、蒸気タービンの運転状態、例えば回転数を制限する制御は特に行われていなかった。
船舶の主機として用いられている蒸気タービンの場合には、船舶の減速時に蒸気タービンの出力を減少させる制御(減速運転)がおこなわれている。具体的には、蒸気タービンの状態を監視することなく、ブリッジからの指令に基づいて蒸気タービンの出力を一意に減少させる制御が行われていた。
【0004】
上述の舶用主機として用いられる蒸気タービンは、推進機関として常に可変速運転が求められる点が、定格速度で運用される陸用の事業用蒸気タービンと異なっている。
港湾航行において、舶用主機として用いられる蒸気タービンは、常に、増減速運転による柔軟な操作が求められ、また運行スケジュールの調整や外洋航行から港湾入港時等、減速運転が行われる頻度は陸用の事業用蒸気タービンと比べても非常に多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3480532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の減速運転を負荷変化速度一定で行うと、タービンの車室における継ぎ手面から蒸気漏れが発生する恐れがあった。
つまり、舶用主機として用いられる蒸気タービンの車室における動特性シミュレーションおよび非定常FEM解析を実施した結果、車室に流入する主蒸気温度および再熱蒸気温度の変化の影響により、車室の内面温度が低下して外面温度などよりも低くなることが分かった。これにより、蒸気漏れにつながる車室の継ぎ手面における面圧低下を引き起こす可能性が極めて高くなるという問題があった。
【0007】
さらに、上述の面圧低下を防止または抑制する方法として、車室ボルトの配置を変更して、車室の継ぎ手面における面圧低下を防止等する方法や、車室における壁面の肉厚を変更して、車室の継ぎ手面における面圧低下を防止等する方法などが挙げられる。
しかしながら、ボルト配置や車室構造による方法のみでは限界があり、面圧低下を防止する十分な効果が期待できず、車室の継ぎ手面からの蒸気漏れを防止または抑制することは困難であるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、可変速運転が要求されるタービンであっても車室からの蒸気漏れを防止し、タービンの性能向上を図ることができる蒸気タービンおよび蒸気タービンの運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の蒸気タービンは、内部にタービンを収納する空間を有するとともに、分割面を有する車室と、前記タービンに供給される蒸気流量を調節する調節部と、前記タービンに供給される蒸気流量を減少させる場合には、前記分割面における前記空間に隣接した領域の面圧が所定面圧以上になるように、前記調節部に対して前記蒸気流量の減少率を調節する制御を行う制御部と、が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、タービンの出力を減少させる場合などのように、タービンに供給される蒸気の流量が減少される場合に、車室の分割面における空間に隣接した領域の面圧が所定面圧よりも小さいときには、上記空間に隣接した領域の面圧が所定面圧以上になるように、蒸気流量の減少率が調節される。例えば、蒸気流量の減少率を抑制する制御が行われる。これにより、上記空間に隣接した領域の面圧の低下が抑制される。
【0011】
具体的には、タービンが定常運転やプログラム自動昇速やプログラム自動減速されている際に、タービンの出力を減少させる制御を行うと、ボイラからタービンに供給される蒸気の流量が減少されるとともに、ボイラ負荷も低下することから供給される蒸気の温度も低下する。
【0012】
車室の壁面温度よりも温度が低い蒸気が、タービンを収納した空間に流入すると、車室の壁面は、空間に隣接した部分から蒸気に保有熱が奪われ温度が低下する。このとき、車室壁面における外側の温度と、空間に隣接した部分の温度との間に温度差が生じる。さらに、分割面により分割された車室を一体につなぎとめるボルトの温度と、空間に隣接した部分の温度との間にも温度差が生じている。つまり、車室壁面における外側の部分およびボルトと比較して、車室壁面の空間に隣接した部分は早い段階から熱収縮して熱収縮量に差が生じる。これにより、分割面における空間に隣接した領域における面圧に関する押しつけ力が低下する。
【0013】
その一方で、タービンに供給される蒸気の圧力は緩やかに低下することから、上記空間における蒸気圧力も緩やかに低下する。つまり、車室の分割面を押し広げようとする力は、上述の押しつけ力の低下と比較して緩やかに減少する。
これらのことから、タービンの出力を減少させる場合などのように、タービンに供給される蒸気流量が減少されるときには、上記空間に隣接した領域の面圧が低下する。
【0014】
このようにして発生した面圧の低下が所定面圧よりも小さくなると、タービンに供給された蒸気が、分割面から上述のボルトが挿通されるボルト孔などを介して外部に漏れるおそれがある。
そこで、調節部によって調節される蒸気流量の減少率を抑制する制御を行う。
【0015】
すると、蒸気流量の減少率を抑制する前と比較して、上述の車室壁面における外側部分およびボルトと、車室壁面の空間に隣接した部分との間の熱収縮量の差が縮まる。さらに、タービンに供給される蒸気圧力も低下し、車室における分割面を押し広げようとする力も減少する。
これらのことから、蒸気流量の減少率を抑制する前と比較して、分割面における空間に隣接した領域の面圧が高くなり、タービンに供給された蒸気が外部に漏れにくくなる。
【0016】
上記発明においては、少なくとも、前記分割面における前記空間に隣接した領域の面圧に関する情報を取得する面圧情報取得手段が設けられ、前記制御部は、取得された前記面圧に関する情報に基づいて、前記分割面における前記空間に隣接した領域の面圧が所定面圧以上になるように、前記蒸気流量の減少率を制御することが望ましい。
【0017】
本発明によれば、上述の空間に隣接した領域の面圧に関する情報に基づくことにより、上記空間に隣接した領域の面圧が実際に所定面圧よりも小さいか否かが判断される。これにより、上述の蒸気流量の減少率を抑制する制御が適切に行われ、上記空間に隣接した領域の面圧低下を確実に抑制することができる。
【0018】
上記発明においては、前記面圧情報取得手段は、前記分割面における前記空間に隣接した領域の温度、および、前記分割面における外側の温度を測定する温度測定部であり、前記制御部は、前記空間に隣接した領域の温度、および、前記外側の温度に基づいて、前記分割面における前記空間に隣接した領域の面圧が所定面圧以上になるように、前記蒸気流量の減少率を制御することが望ましい。
【0019】
本発明によれば、分割面における空間に隣接した領域の温度(車室壁面における内側部分の温度)と、外側の温度(車室壁面における外側部分の温度)とを比較して、例えば上記空間に隣接した領域の温度が上記外側の温度よりも低いか否かにより、上記空間に隣接した領域の面圧が所定面圧より小さいか否かが判断される。
【0020】
具体的には、車室を構成する材料の線膨脹係数は既知であることから、上記領域における温度と外側の温度との温度差に基づき、これらの部分の間の収縮量の差を求めることができる。さらに、上記空間に隣接した領域における温度および外側の温度に基づいて上記ボルトの温度が推定され、上記領域における温度とボルトの温度との温度差に基づき、これらの部分の間の収縮量の差を求めることができる。
これらに基づいて上記領域の面圧に関する押しつけ力の変化を考慮した上記領域の面圧を求めることができ、上記領域の面圧が所定面圧よりも小さいか否かを判断できる。
【0021】
上記空間に隣接した領域における面圧を測定する他の方法と比較して、温度は容易に測定することができるため、蒸気流量の減少率を抑制する制御を行うか否かを容易に判断できる。
【0022】
あるいは、上記領域における温度および外側の温度と、上記領域の面圧の関係を予め取得しておくことにより、上記領域における温度および外側の温度に基づき、蒸気流量の減少を保留する制御を行うか否かを直接判断することもできる。
実際には、運転状態における内部圧力も考慮する必要があるが、プラントの運転状況を動特性シミュレーションで予測できる場合には、予め車室内外温度と面圧との関係情報を大よそ得る事ができ、上述の判断をすることが可能となる。
【0023】
上記発明においては、前記制御部は、前記蒸気流量の減少率制御を所定期間だけ行った後、前記空間に隣接した領域の温度に所定温度を加えた温度が、前記外側の温度未満である場合には、前記蒸気流量の減少率制御を終了し、前記空間に隣接した領域の温度に所定温度を加えた温度が、前記外側の温度以上である場合には、前記蒸気流量の減少率制御を継続することが望ましい。
【0024】
本発明によれば、最初の所定期間が経過した後に、上記空間に隣接した領域の温度に所定温度を加えた温度が、上記外側の温度未満か否かに基づいて、蒸気流量の減少率を調節する制御を終了するか、再度、所定期間の間だけ蒸気流量の減少率を調節する制御を行うかの判断が行われる。
【0025】
再度の蒸気流量の減少率を調節する制御を行うか否かの判断に際して、上記空間に隣接した領域の温度に所定温度を加えた温度が、上記外側の温度未満か否かに基づいて判断を行うのは次の理由による。
【0026】
つまり、最初に蒸気流量の減少率を調節する制御を行うか否かの判断を行った時と比較して、タービン出力の減少が開始されてから経過した時間が長いため、車室を締め付けて一体化させるボルトの温度は伝熱により低下している。すると、当該ボルトは熱収縮して締付力が回復することから、上記空間に隣接した領域の温度が上記外側の温度よりも低温であっても、その温度差が所定温度未満であれば、上記空間に隣接した領域の面圧を所定面圧以上に保つことができるからである。
【0027】
さらに、最初に蒸気流量の減少率を調節する制御を行うか否かの判断を行った時と比較して、タービンに供給される蒸気の圧力が低くなっているため、車室における分割面を押し広げようとする力が低下している。そのため、上記空間に隣接した領域の温度が上記外側の温度よりも低温であっても、その温度差が所定温度未満であれば、上記空間に隣接した領域の面圧を所定面圧以上に保つことができるからである。
【0028】
なお、上述の所定温度は固定値であってもよいし、タービンに供給される蒸気の圧力または空間の内部の圧力に基づいて変化する値であってもよく、特に限定するものではない。
【0029】
上記発明においては、前記制御部は、前記調節部に対して前記蒸気流量の減少を保留することにより、前記蒸気流量の減少率を調節する制御を行うことが望ましい。
【0030】
本発明によれば、蒸気流量の減少を保留することにより蒸気流量の減少率を調節する制御が行われる。言い換えると、タービンに供給される蒸気流量および蒸気温度が、上記空間に隣接した領域の面圧が所定面圧未満であると判断された時点での蒸気流量および蒸気温度に大よそ固定される。
【0031】
すると、タービンに供給される蒸気温度が大よそ一定に保たれ、上述の車室壁面における外側部分およびボルトの熱収縮量と、車室壁面の空間に隣接した部分の熱収縮量との間の熱収縮量差が縮まる。これは、例えば蒸気流量の減少率を抑制する場合であって、タービンに供給される蒸気温度が緩やかに減少するときに、上述の熱収縮量差が縮まる時間と比較して、より短い時間で熱収縮量差が縮まる。
【0032】
本発明の蒸気タービンの運転方法は、外部からの指示に基づき、タービンに供給する蒸気流量を減少させる流量減少ステップと、前記タービンを内部に収納する車室における分割面の面圧に関する情報を取得し、取得した前記面圧情報に基づいて推定される面圧が、所定面圧よりも小さいか否か比較する比較ステップと、前記推定される面圧が前記所定の面圧よりも小さい場合には、前記蒸気流量の減少率を調節する減少率調節ステップと、を有することを特徴とする。
【0033】
本発明によれば、タービンの出力を減少させる場合などのように、タービンに供給される蒸気の流量が減少されるときに、車室の分割面における空間に隣接した領域の面圧が所定面圧よりも小さい場合には、上記空間に隣接した領域の面圧が所定面圧以上になるように、蒸気流量の減少率が調節される。例えば、蒸気流量の減少率を抑制する制御が行われる。これにより、上記空間に隣接した領域の面圧の低下が抑制される。
【発明の効果】
【0034】
本発明の蒸気タービンおよび蒸気タービンの運転方法によれば、タービンに供給される蒸気流量を減少させる場合に、分割面における空間に隣接した領域の面圧が所定面圧以上になるように、蒸気流量の減少率を調節するため、可変速運転が要求されるタービンであっても車室からの蒸気漏れを防止し、タービンの性能向上を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係る蒸気タービンの概略構成を説明する模式図である。
【図2】図1の高圧タービンおよび中圧タービンを収納する車室の構成を説明する模式図である。
【図3】図2の車室における高圧内側温度測定部および高圧外側温度測定部の配置位置を説明するA−A断面視図である。
【図4】図2の車室における中圧内側温度測定部および中圧外側温度測定部の配置位置を説明するB−B断面視図である。
【図5】図1の制御部の構成を説明するブロック図である。
【図6】従来の減速制御を行った場合における蒸気タービンの出力変動、主蒸気の温度および再熱蒸気の温度の変化を説明するグラフである。
【図7】車室における高圧タービンおよび中圧タービンの入口近傍における温度変化を算出した場所を説明する模式図である。
【図8】従来の高圧タービンの入口近傍における車室の温度変化を説明するグラフである。
【図9】従来の中圧タービンの入口近傍における車室の温度変化を説明するグラフである。
【図10】本実施形態における減速制御を説明するフローチャートである。
【図11】本実施形態における高圧タービンの入口近傍における車室の内壁面および外壁面の温度変化を説明するグラフである。
【図12】従来および本実施形態における高圧タービンの入口近傍における内壁面および外壁面の温度差の変化を説明するグラフである。
【図13】本実施形態における中圧タービンの入口近傍における車室の内壁面および外壁面の温度変化を説明するグラフである。
【図14】従来および本実施形態における中圧タービンの入口近傍における内壁面および外壁面の温度差の変化を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
この発明の一実施形態に係る蒸気タービンについて、図1から図14を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る蒸気タービンの概略構成を説明する模式図である。図2は、図1の高圧タービンおよび中圧タービンを収納する車室の構成を説明する模式図である。
本実施形態に係る蒸気タービン1は船舶の主機として用いられるものであって、高圧タービン2Hから排出された蒸気を加熱する再熱器4Rを備えた再熱タービンである。
【0037】
蒸気タービン1には、図1および図2に示すように、蒸気高圧タービン(タービン)2Hおよび中圧タービン2Mを収納する車室3と、高圧タービン2Hに主蒸気を供給する主ボイラ(ボイラ)4Hと、中圧タービン2Mに再熱蒸気を供給する再熱器4Rと、主蒸気の流量を調節するガバナ(調節部)5と、蒸気タービン1をリモートコントロールする制御部6と、主ボイラ(ボイラ)4Hと再熱器4Rを制御する制御部7と、が主に設けられている。
【0038】
図3は、図2の車室における高圧内側温度測定部および高圧外側温度測定部の配置位置を説明するA−A断面視図である。図4は、図2の車室における中圧内側温度測定部および中圧外側温度測定部の配置位置を説明するB−B断面視図である。
車室3は、高圧タービン2Hおよび中圧タービン2Mを内部に収納するとともに、蒸気が導入されるものである。
車室3には、図2から図4に示すように、高圧タービン2Hおよび中圧タービン2Mを内部に収納する空間Sと、車室3を上下に2分割する分割面SPと、高圧側入口内壁温度センサ(面圧情報取得手段、温度測定部)31Hと、高圧側入口外壁温度センサ(面圧情報取得手段、温度測定部)32Hと、中圧側入口内壁温度センサ31Mと、中圧側入口外壁温度センサ32Mと、が主に設けられている。
【0039】
高圧タービン2Hおよび中圧タービン2Mは、回転軸(図示せず)の周方向に等間隔に配置されるとともに、回転軸の軸方向に間隔をあけて配置されたタービン動翼、および車室3に設けられたタービン静翼から主に構成されたものである。
【0040】
高圧タービン2Hは、図1に示すように、主ボイラ4Hから主蒸気の供給を受けて回転駆動力を発生させるものである。
中圧タービン2Mは、再熱器4Rから再熱蒸気の供給を受けて回転駆動力を発生させるものである。
【0041】
空間Sは、図2から図4に示すように、車室3の内部に形成された空間であって、高圧タービン2Hおよび中圧タービン2Mが配置されるとともに、主蒸気および再熱蒸気が流れる流路を形成するものである。
【0042】
分割面SPは、図3および図4に示すように、車室3を上車室3Uおよび下車室3Lの2つに分割する面である。言い換えると、上車室3Uおよび下車室3Lが接触する面である。
上車室3Uおよび下車室3Lは、上車室3Uに設けられたボルト孔41に挿通されたボルト42によって一体に締め付けられている。さらに、下車室3Lには、高圧側入口内壁温度センサ31H、高圧側入口外壁温度センサ32H、中圧側入口内壁温度センサ31Mおよび中圧側入口外壁温度センサ32Mが設けられている。
【0043】
高圧側入口内壁温度センサ31Hおよび高圧側入口外壁温度センサ32Hは、図2および図3に示すように、下車室3Lにおける主蒸気が高圧タービン2Hに流入する領域近傍の温度を測定するものである。
【0044】
高圧側入口内壁温度センサ31Hは、主蒸気が高圧タービン2Hに流入する領域であって、車室3の内壁面とボルト孔41との間の距離が最も離れている点を含む断面における車室3の内壁面の温度(空間に隣接した領域の温度)を測定するものである。言い換えると、分割面SPにおける面圧が最初に低下する領域の内壁面の温度を測定するものである。
さらに、高圧側入口内壁温度センサ31Hは、上述の内壁面の温度に係る測定信号を制御部6に出力するものである。
【0045】
高圧側入口外壁温度センサ32Hは、主蒸気が高圧タービン2Hに流入する領域であって、車室3の内壁面とボルト孔41との間の距離が最も離れている点を含む断面における車室3の外壁面の温度を測定するものである。さらに、高圧側入口外壁温度センサ32Hは、上述の外壁面の温度(外側の温度)に係る測定信号を制御部6に出力するものである。
【0046】
中圧側入口内壁温度センサ31Mおよび中圧側入口外壁温度センサ32Mは、図2および図4に示すように、下車室3Lにおける再熱蒸気が中圧タービン2Mに流入する領域近傍の温度を測定するものである。
【0047】
中圧側入口内壁温度センサ31Mは、再熱蒸気が中圧タービン2Mに流入する領域であって、車室3の内壁面とボルト孔41との間の距離が最も離れている点を含む断面における車室3の内壁面の温度を測定するものである。言い換えると、分割面SPにおける面圧が最初に低下する領域の内壁面の温度を測定するものである。
さらに、中圧側入口内壁温度センサ31Mは、上述の内壁面の温度に係る測定信号を制御部6に出力するものである。
【0048】
中圧側入口外壁温度センサ32Mは、再熱蒸気が中圧タービン2Mに流入する領域であって、車室3の内壁面とボルト孔41との間の距離が最も離れている点を含む断面における車室3の外壁面の温度を測定するものである。さらに、中圧側入口外壁温度センサ32Mは、上述の外壁面の温度に係る測定信号を制御部6に出力するものである。
【0049】
さらに、車室3に高圧側出口内壁温度センサ33Hと、高圧側出口外壁温度センサ34Hと、中圧側出口内壁温度センサ33Mと、中圧側出口外壁温度センサ34Mと、を設けて車室3の温度を測定して、制御部6における制御に用いてもよい。
【0050】
なお、制御部6における制御は、主に高圧側入口内壁温度センサ31H、高圧側入口外壁温度センサ32H、中圧側入口内壁温度センサ31Mおよび中圧側入口外壁温度センサ32Mの測定信号に基づいて行われ、高圧側出口内壁温度センサ33H、高圧側出口外壁温度センサ34H、中圧側出口内壁温度センサ33Mおよび中圧側出口外壁温度センサ34Mの測定信号は参考情報として用いられる。
【0051】
高圧側出口内壁温度センサ33Hおよび高圧側出口外壁温度センサ34Hは、図2に示すように、下車室3Lにおける主蒸気が高圧タービン2Hから流出する領域近傍の温度を測定するものである。
【0052】
高圧側出口内壁温度センサ33Hは、主蒸気が高圧タービン2Hから流出する領域の断面における車室3の内壁面の温度を測定するものである。さらに、高圧側出口内壁温度センサ33Hは、上述の内壁面の温度に係る測定信号を制御部6に出力するものである。
【0053】
高圧側出口外壁温度センサ34Hは、主蒸気が高圧タービン2Hから流出する領域の断面における車室3の外壁面の温度を測定するものである。さらに、高圧側出口外壁温度センサ34Hは、上述の外壁面の温度に係る測定信号を制御部6に出力するものである。
【0054】
中圧側出口内壁温度センサ33Mおよび中圧側出口外壁温度センサ34Mは、図2に示すように、下車室3Lにおける再熱蒸気が中圧タービン2Mから流出する領域近傍の温度を測定するものである。
【0055】
中圧側出口内壁温度センサ33Mは、再熱蒸気が中圧タービン2Mから流出する領域の断面における車室3の内壁面の温度を測定するものである。さらに、中圧側出口内壁温度センサ33Mは、上述の内壁面の温度に係る測定信号を制御部6に出力するものである。
【0056】
中圧側出口外壁温度センサ34Mは、再熱蒸気が中圧タービン2Mから流出する領域の断面における車室3の外壁面の温度を測定するものである。さらに、中圧側出口外壁温度センサ34Mは、上述の外壁面の温度に係る測定信号を制御部6に出力するものである。
【0057】
その他にも、高圧側入口ボルト温度センサ35Hと、中圧側入口ボルト温度センサ35Mと、高圧側出口ボルト温度センサ36Hと、中圧側出口ボルト温度センサ36Mと、を設けてボルト42の温度を測定して、制御部6における制御の参照温度として用いてもよい。
高圧側入口ボルト温度センサ35H、中圧側入口ボルト温度センサ35M、高圧側出口ボルト温度センサ36Hおよび中圧側出口ボルト温度センサ36Mの測定信号は、対応するボルト42の温度が、隣接する車室3の内壁温度や外壁温度と連動して変化しているか否かを確認するため等に用いられる。
【0058】
高圧側入口ボルト温度センサ35Hは、図2に示すように、主蒸気が高圧タービン2Hに流入する領域近傍に配置されたボルト42の温度を測定するものである。さらに、高圧側入口ボルト温度センサ35Hは、上述のボルト42の温度に係る測定信号を制御部6に出力するものである。
中圧側入口ボルト温度センサ35Mは、再熱蒸気が中圧タービン2Mに流入する領域近傍の温度を測定するものである。さらに、中圧側入口ボルト温度センサ35Mは、上述のボルト42の温度に係る測定信号を制御部6に出力するものである。
【0059】
高圧側出口ボルト温度センサ36Hは、主蒸気が高圧タービン2Hから流出する領域近傍に配置されたボルト42の温度を測定するものである。さらに、高圧側出口ボルト温度センサ36Hは、上述のボルト42の温度に係る測定信号を制御部6に出力するものである。
中圧側出口ボルト温度センサ36Mは、再熱蒸気が中圧タービン2Mから流出する領域近傍の温度を測定するものである。さらに、中圧側出口ボルト温度センサ36Mは、上述のボルト42の温度に係る測定信号を制御部6に出力するものである。
【0060】
主ボイラ4Hは、図1に示すように、外部から供給された燃料を燃焼させて得た熱を用いて蒸気を発生させるものであって、高圧タービン2Hに主蒸気を供給するものである。
再熱器4Rは、図1に示すように、燃料を燃焼させて得た熱を用いて高圧タービン2Hから排出された蒸気を再び加熱し、中圧タービン2Mに再熱蒸気を供給するものである。
【0061】
主ボイラ4Hおよび再熱器4Rによる主蒸気および再熱蒸気の供給は、制御部6により制御されるガバナ5による蒸気状態とガバナ開度指示値から、制御部7により制御されている。
なお、主ボイラ4Hおよび再熱器4Rとしては、公知のものを用いることができ、特に限定するものではない。
【0062】
ガバナ5は、図1に示すように、蒸気タービン1の負荷に応じて主ボイラ4Hから高圧タービン2Hに供給される主蒸気の流量を制御するものである。言い換えると、蒸気タービン1の出力が、制御部6から指示された出力になるように主蒸気の流量を制御するものである。
なお、ガバナ5としては公知のものを用いることができ、特に限定するものではない。
【0063】
図5は、図1の制御部の構成を説明するブロック図である。
制御部6は、船舶の船橋からの指令や、高圧側入口内壁温度センサ31Hなどの測定信号に基づき、ガバナ5などを制御し且つ、主ボイラ4H及び再熱器4Rを制御する制御部7へガバナ開度指示値を発信するものである。
制御部6には、図5に示すように、船橋からの指令や、高圧側入口内壁温度センサ31H、高圧側入口外壁温度センサ32H、中圧側入口内壁温度センサ31M、中圧側入口外壁温度センサ32Mの測定信号が主に入力されている。
【0064】
さらに制御部6には、高圧側出口内壁温度センサ33H、高圧側出口外壁温度センサ34H、中圧側出口内壁温度センサ33Mおよび中圧側出口外壁温度センサ34Mの測定信号が入力されていてもよい。
その他にも、制御部6に高圧側入口ボルト温度センサ35H、中圧側入口ボルト温度センサ35M、高圧側出口ボルト温度センサ36Hおよび中圧側出口ボルト温度センサ36Mの測定信号が入力されていてもよい。
【0065】
制御部6からは、ガバナ5に主蒸気の流量を制御する制御信号が、制御部7からは主ボイラ4Hおよび再熱器4Rに供給される燃料の流量を制御する制御信号などが出力されている。
なお、制御部6による制御方法の詳細については後述する。
【0066】
制御部7は、制御部6から入力されたガバナリフト指示値や運転モードの情報と、主蒸気や再熱蒸気の状態とに基づいて、主ボイラ4H及び再熱器4Rを制御するものである。
【0067】
次に、上記の構成からなる蒸気タービン1における制御方法、特に外洋航行モードから港湾航行モードに切り替える場合などのように、蒸気タービン1の負荷が高い状態からの減速制御について説明する。
【0068】
ここで港湾航行モードとは、船舶が港湾内を航行する際に主に用いられるモードであり、主機である蒸気タービン1の最大負荷に対して0%程度から約25%程度の範囲の負荷で用いられるモードである。これに対して、外洋航行モードは船舶が外洋を航行する際に用いられるモードであり、港湾航行モードと比較して蒸気タービン1の負荷が高い状態で用いられるモードである。
【0069】
まず、蒸気タービン1における蒸気の流れについて、図1を参照しながら説明する。
蒸気は主ボイラ4Hにおいて燃料の燃焼により得られた熱を用いて生成され、高温高圧の主蒸気として車室3内の高圧タービン2Hに供給される。このとき、主ボイラ4Hに供給される燃料の流量は制御部7によって制御されている。さらに、主ボイラ4Hから高圧タービン2Hに供給される主蒸気の流量は制御部6から制御信号(指令)が入力されたガバナ5により制御されている。
【0070】
主蒸気は高圧タービン2Hを回転駆動することにより圧力および温度が低下し、車室3の外へ排出される。排出された主蒸気は再熱器4Rにおいて燃料の燃焼により得られた熱を用いて加熱され、高温の再熱蒸気として車室3内の中圧タービン2Mに供給される。このとき、再熱器4Rに供給される燃料の流量は制御部7により制御されている。
【0071】
再熱蒸気は中圧タービン2Mを回転駆動することにより圧力および温度が低下し、車室3の外部に排出される。
このとき車室3は、内部に供給される主蒸気および再熱蒸気により温められている。
【0072】
なお上述の説明は、再熱器4Rにおいて燃料の燃焼が行われる外洋航行モード(Normal Mode)の場合に適用して説明している。港湾航行モード(Harbor Mode)の場合には、再熱器4Rにおいて燃料の燃焼は行われない点が外洋航行モードと異なっている。
【0073】
次に、本実施形態の特徴である蒸気タービン1の負荷が高い状態からの減速制御について説明する。ここでは、外洋航行モードから短時間(例えば10分や30分や45分など)で港湾航行モード(例えば港湾航行船速FULL相当)に切り替える場合に適用して説明する。
最初に従来の減速制御、および、その問題点について説明し、その後に本実施形態の減速制御、および、その効果について説明する。
【0074】
従来の減速制御の場合には、タービンリモコンは、蒸気タービンの出力の目標値および制御に要する時間に基づいて、ガバナリフト(ガバナの開度)の時間変化を制御するタイムスケジュールを作成し、このタイムスケジュールに従ってガバナリフトを制御することにより行われている。さらに、蒸気タービンの出力に応じて主ボイラおよび再熱器に供給される燃料の流量も制御されている。
言い換えると、蒸気タービンの車室温度などを考慮したガバナリフトの制御は行われていない。
【0075】
図6は、従来の減速制御を行った場合における蒸気タービンの出力変動、主蒸気の温度および再熱蒸気の温度の変化を説明するグラフである。
ここでは、蒸気タービン1の出力を約15分で約5分の1に低下させた場合のシミュレーション結果について説明する。図6における横軸は、減速制御を開始してからの経過時間を分単位で示すものであり、縦軸は蒸気タービン1の出力、主蒸気の温度および再熱蒸気の温度を示すものである。さらに、蒸気タービン1の出力は符号Pが付されたグラフで、主蒸気の温度は符号THが付されたグラフで、再熱蒸気の温度は符号TRが付されたグラフで示している。
【0076】
図6に示すように、減速制御が開始されてから3分程度経過するまでは、蒸気タービン1の出力P、主蒸気の温度THおよび再熱蒸気の温度TRは一定で推移している。このとき、主蒸気の温度TMおよび再熱蒸気の温度TRは大体同じである。
【0077】
その後、蒸気タービン1の出力Pの減少が始まり、減速制御の開始から7分程度が経過するまでの間は、出力が一定の割合で低下し続ける。そして7分程度から10分程度までの間は、蒸気タービン1の出力Pの減少率が小さくなり、10分程度が経過すると減少率は再び大きくなる。蒸気タービン1の出力Pは、目標値である制御前出力の約5分の1よりも一時小さくなり(アンダーシュートして)、その後徐々に目標値に近づき、制御開始から約15分で目標値に制御される。
【0078】
その一方で、蒸気タービン1の出力Pの低下に遅れて、減速制御の開始から5分程度が経過すると主蒸気の温度THおよび再熱蒸気の温度TRの低下が始まる。
再熱蒸気の温度TRと比較して主蒸気の温度THは先行して低下し、主蒸気の温度THと再熱蒸気の温度TRとの逆転が発生する。この逆転は最大で約50℃に達し、蒸気タービン1の出力Pが目標値である約5分の1まで低下した後も続き、減速制御の開始から30分程度が経過するまで維持される。
【0079】
つまり、主蒸気が高圧タービンを回転駆動した後に、再熱器4Rにより加熱されたものが再熱蒸気であることから、再熱蒸気の温度TRは、主蒸気の温度THと比較して追従性が悪いため、このような事象が発生する。具体的には、主蒸気の温度THは、再熱蒸気の温度TRと比較して、早期に温度低下が始まり、制御開始から25分程度で温度が一定になり始めている。それに対して、再熱蒸気の温度TRは、主蒸気の温度THに遅れて温度の低下が始まり、制御の開始から30分程度で主蒸気の温度THまで温度が低下している。
【0080】
次に、従来の減速制御を行った場合における車室の温度変化のシミュレーション結果について説明する。
図7は、車室における高圧タービンおよび中圧タービンの入口近傍における温度変化を算出した場所を説明する模式図である。
図7における点HIは車室3における高圧タービン2Hの入口近傍における内壁面上の温度変化を観察した点であり、点HOは外壁面上の温度変化を観察した点である。さらに、点MIは車室3における中圧タービン2Mの入口近傍における内壁面上の温度変化を観察した点であり、点MOは外壁面上の温度変化を観察した点である。
【0081】
図8は、従来の高圧タービンの入口近傍における車室の温度変化を説明するグラフである。
まず図8に基づいて、高圧タービン2Hの入口近傍における車室3の内壁面上の点HIおよび外壁面上の点HOの温度変化について説明する。
減速制御が開始された時点である経過時間が0分の近傍では、点HIにおける温度は、点HOにおける温度よりも高い状態で保たれている。点HIが相対的に高温なのは、図6に示すように、点HIが面している高圧タービン2Hが配置されている空間Sに高温の主蒸気が供給されているためである。
【0082】
減速制御が開始されると高圧タービン2Hに供給される主蒸気の流量が減少するとともに、主蒸気の温度も低下するため、車室3の内壁面(点HIを含む。)に供給される熱量が減少する。その結果、点HIにおける温度は時間の経過とともに低下して、主蒸気の温度変化が安定する制御の開始から30分程度で安定化する。
【0083】
その一方で、車室3の外壁面(点HOを含む。)の温度は、直接主蒸気の温度低下の影響を受けるものではなく、車室3の壁面を内側から外側に伝わる熱量に依存するため、点HIにおける温度よりも緩やかに低下する。
その結果、減速制御が開始されてから5分程度で点HIにおける温度と、点HOにおける温度の逆転が発生していることが図8から分かる。
【0084】
図9は、中圧タービンの入口近傍における車室の温度変化を説明するグラフである。
次に図9に基づいて、中圧タービン2Mの入口近傍における車室3の内壁面上の点MIおよび外壁面上の点MOの温度変化について説明する。
中圧タービン2Mには、図6に示すように主蒸気と比較して減速制御に対して温度追従性が低い再熱蒸気が供給されているため、点MIにおける温度変化は点HIにおける温度変化と比較して緩やかになっている。具体的には減速制御が開始されてから10分程度が経過してから点MIにおける温度の低下が始まり、15分程度が経過してから温度の低下率が大きくなっている。
【0085】
その一方で、点MOにおける温度は、点HOにおける温度と同様に、直接再熱蒸気の温度低下の影響を受けるものではなく、車室3の壁面を内側から外側に伝わる熱量に依存するため、点HIにおける温度よりも緩やかに低下する。
その結果、減速制御が開始されてから23分程度で点MIにおける温度と、点MOにおける温度の逆転が発生していることが図9から分かる。
【0086】
このように、点HIにおける温度と点HOにおける温度との逆転、および、点MIにおける温度と点MOにおける温度との逆転が発生すると、車室3の内壁面における熱収縮量が、外壁面における熱収縮量よりも大きくなり、分割面SPにおける内壁面近傍の面圧が低下する。
【0087】
さらに、内壁面と外壁面との間に配置されたボルト42における温度は、減速運転が開始された直後は内壁面における温度よりも高いため、ボルト42における熱収縮量は内壁面における熱収縮量と比較して大きくない。つまり、ボルト42における上車室3Uおよび下車室3Lを締め付ける締付力が低下するため、さらに分割面SPにおける面圧が低下する。
【0088】
次に、本実施形態における減速制御について説明する。
図10は、本実施形態における減速制御を説明するフローチャートである。
まず、船橋から制御部6に対して、船舶の航行速度を減速させる指示が入力される。例えば、船舶を入港させるために外洋航行モードから港湾航行モードに切り替える(減速させる)指示が入力される(制御オーダーステップS1)。このとき同時に、船舶を指示された航行速度までに減速させる所要時間も入力される。
【0089】
制御部6は入力された指示に基づいて、指示された航行速度に対応するガバナ5における主蒸気の流量、つまりガバナ5のリフト量(以後、「オーダーリフト量」と表記する。)を算出する。さらに、入力された所要時間内に、現在のガバナ5のリフト量をオーダーリフト量まで変化させるタイムスケジュールを算出する。その後、制御部6は、算出したタイムスケジュールに従って、ガバナ5のリフト量制御を行う(ガバナ制御ステップ(流量減少ステップ)S2)。
【0090】
ガバナ5のリフト量制御が開始されると、ガバナ5のリフト量が徐々に減少するため、ガバナ5を通過する主蒸気の流量が減少する。その結果、高圧タービン2Hに供給される主蒸気の流量、および、中圧タービン2Mに供給される再熱蒸気の流量が減少する。
同時に制御部6の指示値、主蒸気及び再熱蒸気状態により、制御部7は、主ボイラ4Hおよび再熱器4Rに供給される燃料の流量を減少させる制御を行う。そのため、主ボイラ4Hから供給される主蒸気温度および再熱器4Rから供給される再熱蒸気温度が低下する。
【0091】
ガバナ5のリフト量制御が開始されると制御部6は、高圧側入口/出口内壁温度センサ31H/33Hおよび高圧側入口/出口外壁温度センサ32H/34H、中圧側入口/出口内壁温度センサ31M/33Mおよび中圧側入口/出口外壁温度センサ32M/34Mの測定信号に基づいて、高圧タービン2Hの主蒸気の入口および出口、中圧タービン2Mの再熱蒸気の入口および出口近傍における車室3の内壁面温度と、外壁面温度との比較を行う(第1温度比較ステップ(比較ステップ)S3)。
【0092】
内壁面温度が外壁面温度以上の場合には、制御部6はその時点におけるガバナ5のリフト量と、オーダーリフト量との比較を行う(第1リフト比較ステップS4)。
その時点におけるガバナ5のリフト量がオーダーリフト量と等しくない場合には、上述のガバナ制御ステップS2に戻り、タイムスケジュールに従ったガバナ5のリフト量制御が継続される。
その一方で、その時点におけるガバナ5のリフト量がオーダーリフト量と等しい場合には、制御部6による減速制御が終了する。
【0093】
内壁面温度が外壁面温度未満の場合には、制御部6はガバナ5のリフト量をその時点のリフト量で保持する制御を行う(リフト量保持ステップ(減少率調節ステップ)S5)。
リフト量の保持は所定の期間、例えば10分程度継続される。
【0094】
リフト量の保持を行うことで、蒸気流量の減少が保留されるとともに、蒸気温度の低下も保留される。例えば蒸気流量の減少率を抑制する場合には、高圧タービン2Hに供給される蒸気温度が緩やかに減少するのに対して、蒸気流量の減少を抑制する場合には、蒸気温度が一定に保たれる。
そのため、上述の車室3の壁面における外側部分およびボルト42における熱収縮量と、車室3の壁面における空間Sに隣接した部分(内側部分)の熱収縮量との間の熱収縮量差をより短い時間で小さくすることができる。
【0095】
リフト量を保持する期間が経過すると制御部6は、再び、高圧側入口/出口内壁温度センサ31H/33Hおよび高圧側入口/出口外壁温度センサ32H/34H、中圧側入口/出口内壁温度センサ31M/33Mおよび中圧側入口/出口外壁温度センサ32M/34Mの測定信号に基づいて、高圧タービン2Hの主蒸気の入口および出口、中圧タービン2Mの再熱蒸気の入口および出口近傍における車室3の内壁温度に第1所定温度(所定温度)α1を加えた温度と、外壁面温度との比較を行う(第2温度比較ステップS6)。
【0096】
第1所定温度α1としては、50℃程度を例示することができる。
第2温度比較ステップS6を行うに際して、車室3の内壁温度に第1所定温度α1を加えた温度が、外壁面温度未満か否かに基づいて判断を行うのは次の理由による。
【0097】
つまり、第1温度比較ステップS3を行った時と比較して、蒸気タービン1の出力減少が開始されてから経過した時間が長いため、車室3を締め付けて一体化させるボルト42の温度は伝熱により低下している。すると、ボルト42は熱収縮して締付力が回復することから、内壁温度が外壁面温度よりも低温であっても、その温度差が第1所定温度α1未満であれば、空間Sに隣接した領域の面圧を所定面圧以上に保つことができるからである。
【0098】
さらに、第1温度比較ステップS3を行った時と比較して、高圧タービン2Hに供給される蒸気流量が減少し、タービン内部の圧力が低くなっているため、車室3における分割面SPを押し広げようとする力が低下している。そのため、内壁温度が外壁面温度の温度よりも低温であっても、その温度差が第1所定温度α1未満であれば、空間Sに隣接した領域の面圧を所定面圧以上に保つことができるからである。
【0099】
なお、第1所定温度α1は固定された温度であってもよいし、高圧タービン2Hに供給される蒸気の圧力または空間Sの内部の圧力に基づいて変化する温度であってもよく、特に限定するものではない。
【0100】
内壁温度に第1所定温度(α1)を加えた温度が外壁温度未満の場合には、制御部6は、再び、リフト量保持ステップS5に戻り、リフト量の保持が所定の期間だけ繰り返される。
【0101】
その一方で、内壁温度に第1所定温度(α1)を加えた温度が外壁温度以上の場合には、制御部6は、タイムスケジュールに従ってガバナ5のリフト量制御を再開する(ガバナ制御再開ステップS7)。
【0102】
ガバナ5のリフト量制御が再開されると制御部6は、更に、高圧側入口/出口内壁温度センサ31H/33Hおよび高圧側入口/出口外壁温度センサ32H/34H、中圧側入口/出口内壁温度センサ31M/33Mおよび中圧側入口/出口外壁温度センサ32M/34Mの測定信号に基づいて、高圧タービン2Hの主蒸気の入口および出口、中圧タービン2Mの再熱蒸気の入口および出口近傍における車室3の内壁温度に第2所定温度(所定温度)α2を加えた温度と、外壁面温度との比較を行う(第3温度比較ステップS8)。
【0103】
第2所定温度α2としては、第1所定温度α1と同じ50℃程度であってもよいし、第1所定温度α1よりも高い温度であってもよく、特に限定するものではない。
【0104】
つまり、第2所定温度α2が用いられる第3温度比較ステップS8が行われる際には、第1所定温度α1が用いられる第2温度比較ステップS6が行われる際と比較して、高圧タービン2Hに供給される主蒸気流量の減少に伴い、タービン内部の圧力や、中圧タービン2Mに供給される再熱蒸気の圧力が低下している。そのため、第2温度比較ステップS6が行われる際と比較して第3温度比較ステップS8が行われる際には、車室3の分割面SPを押し広げる力が弱くなることから、第2所定温度α2が第1所定温度α1よりも高い温度であっても、分割面SPにおける面圧を確保することができる。
【0105】
内壁温度に第2所定温度(α2)を加えた温度が外壁温度未満の場合には、制御部6は、再び、リフト量保持ステップS5に戻り、リフト量の保持が所定の期間だけ繰り返される。
【0106】
その一方で、内壁温度に第2所定温度(α2)を加えた温度が外壁温度以上の場合には、制御部6はその時点におけるガバナ5のリフト量と、オーダーリフト量との比較を行う(第2リフト比較ステップS9)。
その時点におけるガバナ5のリフト量がオーダーリフト量と等しくない場合には、上述のガバナ制御再開ステップS7に戻り、タイムスケジュールに従ったガバナ5のリフト量制御が継続される。
その一方で、その時点におけるガバナ5のリフト量がオーダーリフト量と等しい場合には、制御部6による減速制御が終了する。
【0107】
次に、本実施形態の減速制御を行った場合における車室の温度変化のシミュレーション結果について説明する。
ここでは、船舶の航行速度を約45分で港湾航行船速FULLに相当する航行速度に減速するとともに、第1所定温度(α1)および第2所定温度(α2)を約50℃とする場合に適用してシミュレーションを行っている。
【0108】
図11は、本実施形態における高圧タービンの入口近傍における車室の内壁面および外壁面の温度変化を説明するグラフである。図12は、従来および本実施形態における高圧タービンの入口近傍における内壁面および外壁面の温度差の変化を説明するグラフである。
まず図11および図12に基づいて、高圧タービン2Hの入口近傍における車室3の内壁面上の点HIおよび外壁面上の点HOの温度変化について説明する。
なお、点HIおよび点HOの位置は、図7において示された位置と同一である。
【0109】
さらに、図12における破線で記載されたグラフは、従来の減速制御における点HIにおける温度と点HOにおける温度の温度差を表し、実線で記載されたグラフは、本実施形態の減速制御における点HIにおける温度と点HOにおける温度の温度差を表している。
【0110】
減速制御が開始された時点である経過時間が0分の近傍では、従来の減速制御の場合と同様に点HIにおける温度は、点HOにおける温度よりも高い状態で保たれている。
【0111】
その後、減速制御が継続されると、高圧タービン2Hに供給される主蒸気の流量が減少するとともに、主蒸気の温度が低下するため、点HIにおける温度も低下する。本実施形態の減速制御が継続されている間、つまり、減速制御が開始されてから約45分が経過するまでは、点HIにおける温度は、ほぼ一定に低下し続ける。
そして、本実施形態の減速制御が終了すると、点HIにおける温度は、それ以前よりも大きな割合で低下する。
【0112】
その一方で、点HOにおける温度は、従来の減速制御の場合と同様に、点HIにおける温度よりも緩やかに低下する。
その結果、減速制御が開始されてから約7分で点HIにおける温度と、点HOにおける温度の逆転が発生している。
【0113】
つまり、減速制御が開始されてから約7分が経過する前は、制御部6は上述のガバナ制御ステップS2、第1温度比較ステップS3および第1リフト比較ステップS4を繰り返している。
【0114】
そして、減速制御が開始されてから約7分が経過する前後において、点HIにおける温度(内壁面温度)が点HOにおける温度(外壁面温度)未満となるため、制御部6はリフト量保持ステップS5に移行して、ガバナ5のリフト量をその時点のリフト量で保持する制御を開始する。
【0115】
その後、制御部6は、リフト量保持ステップS5、第2温度比較ステップS6、ガバナ制御再開ステップS7、第3温度比較ステップS8および第2リフト比較ステップS9を行う。
そのため、本実施形態の減速制御が行われている間、つまり減速制御が開始されてから約45分が経過するまでは、点HIにおける温度(内壁面温度)と、点HOにおける温度(外壁面温度)との間の温度差は約50℃未満に保たれている。本実施形態の減速制御が終了した後は、点HIにおける温度と、点HOにおける温度との間の温度差は約50℃以上となっている。
【0116】
その一方で従来の減速制御の場合には、減速制御が開始されてから約15分が経過した時点で、点HIにおける温度と、点HOにおける温度との間の温度差は約50℃以上となる。
【0117】
図13は、本実施形態における中圧タービンの入口近傍における車室の内壁面および外壁面の温度変化を説明するグラフである。図14は、従来および本実施形態における中圧タービンの入口近傍における内壁面および外壁面の温度差の変化を説明するグラフである。
次に図13および図14に基づいて、中圧タービン2Mの入口近傍における車室3の内壁面上の点MIおよび外壁面上の点MOの温度変化について説明する。
なお、点MIおよび点MOの位置は、図7において示された位置と同一である。
【0118】
さらに、図14における破線で記載されたグラフは、従来の減速制御における点MIにおける温度と点MOにおける温度の温度差を表し、実線で記載されたグラフは、本実施形態の減速制御における点MIにおける温度と点MOにおける温度の温度差を表している。
【0119】
減速制御が開始された時点である経過時間が0分の近傍では、従来の減速制御の場合と同様に点MIにおける温度は、点MOにおける温度よりも高い状態で保たれている。
【0120】
その後、減速制御が継続されると、中圧タービン2Mに供給される再熱蒸気の流量が減少するとともに、再熱蒸気の温度が低下するため、点MIにおける温度も低下する。本実施形態の減速制御が継続されている間、つまり、減速制御が開始されてから約45分が経過するまでは、点MIにおける温度は、ほぼ一定に低下し続ける。
そして、本実施形態の減速制御が終了すると、点MIにおける温度は、それ以前よりも大きな割合で低下する。
なお、高圧タービン2Hに係る点HIにおける温度と比較すると、中圧タービン2Mに係る点MIにおける温度の低下は、中圧タービン2Mには再熱蒸気が供給されていることから緩やかになっている。
【0121】
その一方で、点MOにおける温度は、従来の減速制御の場合と同様に、点MIにおける温度よりもさらに緩やかに低下する。
その結果、減速制御が開始されてから約33分で点MIにおける温度と、点MOにおける温度の逆転が発生している。
【0122】
上記の構成によれば、蒸気タービン1の出力を減少させる場合などのように、高圧タービン2Hに供給される主蒸気の流量が減少される場合に、車室3の分割面SPにおける空間Sに隣接した領域の面圧が所定面圧よりも小さいときには、空間Sに隣接した領域の面圧が所定面圧以上になるように、蒸気流量の減少が保留される(減少率が抑制される)。これにより、空間Sに隣接した領域の面圧の低下が抑制され、可変速運転が要求される蒸気タービン1であっても車室3からの蒸気漏れを防止でき、蒸気タービン1の性能向上を図ることができる。
【0123】
具体的には、蒸気タービン1が定常運転やプログラム自動昇速やプログラム自動減速されている際に、蒸気タービン1の出力を減少させる制御を行うと、主ボイラ4Hから高圧タービン2Hに供給される蒸気の流量が減少されるとともに、主ボイラ4Hの負荷も低下することから主蒸気の温度も低下する。
【0124】
車室3の内壁面温度よりも温度が低い主蒸気が、高圧タービン2Hを収納した空間Sに流入すると、車室3の内壁面は、主蒸気と接触する部分から主蒸気に保有熱が奪われ温度が低下する。このとき、車室3の壁面における外側の温度(外壁面温度)と、空間Sに隣接した部分の温度(内壁面温度)との間に温度差が生じる。さらに、分割面SPにより分割された上車室3Uおよび下車室3Lを一体につなぎとめるボルト42の温度と、内壁面温度との間にも温度差が生じている。つまり、車室3の壁面における外側の部分およびボルト42と比較して、車室3の壁面の空間Sに隣接した部分は早い段階から熱収縮して熱収縮量に差が生じる。これにより、分割面SPにおける空間Sに隣接した領域における面圧に関する押しつけ力が低下する。
【0125】
その一方で、主蒸気流量の減少に伴い、空間Sの内部における圧力も緩やかに低下する。つまり、車室3の分割面SPを押し広げようとする力は、上述の押しつけ力の低下と比較して緩やかに減少する。
これらのことから、蒸気タービン1の出力を減少させる場合などのように、高圧タービン2Hに供給される蒸気流量が減少されるときには、分割面SPにおける空間Sに隣接した領域の面圧が低下する。
このようにして発生した面圧の低下が所定面圧よりも小さくなると、高圧タービン2Hに供給された主蒸気が、分割面SPからボルト孔41などを介して外部に漏れるおそれがある。
【0126】
そこで蒸気流量の減少を保留する制御を行うと、蒸気流量の減少を保留する前と比較して、車室3の壁面における外側部分およびボルト42と、車室3の壁面の空間Sに隣接した部分との間の熱収縮量の差が縮まる。さらに、高圧タービン2Hに供給される主蒸気の圧力も低下し、分割面SPを押し広げようとする力も減少する。
これらのことから、蒸気流量の減少を保留する前と比較して、分割面SPにおける空間Sに隣接した領域の面圧が高くなり、高圧タービン2Hに供給された蒸気が外部に漏れにくくなる。
【0127】
分割面SPにおける空間Sに隣接した領域の温度(内壁面温度)と、外側の温度(外壁面温度)との比較に基づいて、蒸気流量の減少を保留する制御を行うことにより、これらの温度に基づかない場合と比較して蒸気流量の減少を保留する制御が適切に行われる。
【0128】
具体的には、車室3を構成する材料の線膨脹係数は既知であることから、内壁面温度と外壁面温度との温度差に基づき、分割面SPにおける内壁面部分と外壁面部分との間の収縮量の差を求めることができる。さらに、内壁面温度および外壁面温度に基づいてボルト42の温度が推定され、内壁面温度とボルト42の温度との温度差に基づき、分割面SPの内壁面部分とボルト42との間の収縮量の差を求めることができる。
これらに基づいて押しつけ力の変化を考慮した分割面SPの内壁面部分の面圧を求めることができ、分割面SPの内壁面部分の面圧が所定面圧よりも小さいか否かを判断できる。
【0129】
分割面SPの内壁面部分の面圧を測定する他の方法と比較して、温度は容易に測定することができるため、蒸気流量の減少を保留する制御を行うか否かを容易に判断できる。
【0130】
なお、蒸気タービン1の運転状態と、分割面SPの内壁面部分の面圧の関係とを予め取得しておくことにより、内壁面温度および外壁面温度を測定することなく、蒸気流量の減少を保留する制御を直接行うことができる。
あるいは、内壁面温度および外壁面温度と、分割面SPの内壁面部分の面圧の関係を予め取得しておくことにより、内壁面温度および外壁面温度に基づき、蒸気流量の減少を保留する制御を行うか否かを、面圧を求める演算を行うことなく判断することもできる。
【0131】
リフト量保持ステップS5が行われた後に、つまりリフト量の保持を行う最初の所定期間が経過した後に、内壁面温度に所定温度を加えた温度が、外壁面温度未満か否かに基づいて、蒸気流量の減少を保留する制御を終了して、蒸気流量を減少させる制御を再開するか、再度、所定期間の間だけ蒸気流量の減少を保留する制御を行うかの判断が行われる。
このようにすることで、内壁面温度が外壁面温度未満か否かに基づいて判断する場合と比較して、より早い時期に蒸気流量を減少させる制御を再開することができる。
【符号の説明】
【0132】
1 蒸気タービン
2H 蒸気高圧タービン(タービン)
3 車室
4H 主ボイラ(ボイラ)
5 ガバナ(調節部)
6 制御部(タービンリモコン)
7 制御部(主ボイラ・再熱器制御)
S 空間
SP 分割面
31H 高圧側入口内壁温度センサ(面圧情報取得手段、温度測定部)
32H 高圧側入口外壁温度センサ(面圧情報取得手段、温度測定部)
S2 ガバナ制御ステップ(流量減少ステップ)
S3 第1温度比較ステップ(比較ステップ)
S5 リフト量保持ステップ(減少率調節ステップ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にタービンを収納する空間を有するとともに、分割面を有する車室と、
前記タービンに供給される蒸気流量を調節する調節部と、
前記タービンに供給される蒸気流量を減少させる場合には、前記分割面における前記空間に隣接した領域の面圧が所定面圧以上になるように、前記調節部に対して前記蒸気流量の減少率を調節する制御を行う制御部と、
が設けられていることを特徴とする蒸気タービン。
【請求項2】
少なくとも、前記分割面における前記空間に隣接した領域の面圧に関する情報を取得する面圧情報取得手段が設けられ、
前記制御部は、取得された前記面圧に関する情報に基づいて、前記分割面における前記空間に隣接した領域の面圧が所定面圧以上になるように、前記蒸気流量の減少率を制御することを特徴とする請求項1記載の蒸気タービン。
【請求項3】
前記面圧情報取得手段は、前記分割面における前記空間に隣接した領域の温度、および、前記分割面における外側の温度を測定する温度測定部であり、
前記制御部は、前記空間に隣接した領域の温度、および、前記外側の温度に基づいて、前記分割面における前記空間に隣接した領域の面圧が所定面圧以上になるように、前記蒸気流量の減少率を制御することを特徴とする請求項2記載の蒸気タービン。
【請求項4】
前記制御部は、前記蒸気流量の減少率制御を所定期間だけ行った後、
前記空間に隣接した領域の温度に所定温度を加えた温度が、前記外側の温度未満である場合には、前記蒸気流量の減少率制御を終了し、
前記空間に隣接した領域の温度に所定温度を加えた温度が、前記外側の温度以上である場合には、前記蒸気流量の減少率制御を継続することを特徴とする請求項3記載の蒸気タービン。
【請求項5】
前記制御部は、前記調節部に対して前記蒸気流量の減少を保留することにより、前記蒸気流量の減少率を調節する制御を行うことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の蒸気タービン。
【請求項6】
外部からの指示に基づき、タービンに供給する蒸気流量を減少させる流量減少ステップと、
前記タービンを内部に収納する車室における分割面の面圧に関する情報を取得し、取得した前記面圧情報に基づいて推定される面圧が、所定面圧よりも小さいか否か比較する比較ステップと、
前記推定される面圧が前記所定の面圧よりも小さい場合には、前記蒸気流量の減少率を調節する減少率調節ステップと、
を有することを特徴とする蒸気タービンの運転方法。
【請求項1】
内部にタービンを収納する空間を有するとともに、分割面を有する車室と、
前記タービンに供給される蒸気流量を調節する調節部と、
前記タービンに供給される蒸気流量を減少させる場合には、前記分割面における前記空間に隣接した領域の面圧が所定面圧以上になるように、前記調節部に対して前記蒸気流量の減少率を調節する制御を行う制御部と、
が設けられていることを特徴とする蒸気タービン。
【請求項2】
少なくとも、前記分割面における前記空間に隣接した領域の面圧に関する情報を取得する面圧情報取得手段が設けられ、
前記制御部は、取得された前記面圧に関する情報に基づいて、前記分割面における前記空間に隣接した領域の面圧が所定面圧以上になるように、前記蒸気流量の減少率を制御することを特徴とする請求項1記載の蒸気タービン。
【請求項3】
前記面圧情報取得手段は、前記分割面における前記空間に隣接した領域の温度、および、前記分割面における外側の温度を測定する温度測定部であり、
前記制御部は、前記空間に隣接した領域の温度、および、前記外側の温度に基づいて、前記分割面における前記空間に隣接した領域の面圧が所定面圧以上になるように、前記蒸気流量の減少率を制御することを特徴とする請求項2記載の蒸気タービン。
【請求項4】
前記制御部は、前記蒸気流量の減少率制御を所定期間だけ行った後、
前記空間に隣接した領域の温度に所定温度を加えた温度が、前記外側の温度未満である場合には、前記蒸気流量の減少率制御を終了し、
前記空間に隣接した領域の温度に所定温度を加えた温度が、前記外側の温度以上である場合には、前記蒸気流量の減少率制御を継続することを特徴とする請求項3記載の蒸気タービン。
【請求項5】
前記制御部は、前記調節部に対して前記蒸気流量の減少を保留することにより、前記蒸気流量の減少率を調節する制御を行うことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の蒸気タービン。
【請求項6】
外部からの指示に基づき、タービンに供給する蒸気流量を減少させる流量減少ステップと、
前記タービンを内部に収納する車室における分割面の面圧に関する情報を取得し、取得した前記面圧情報に基づいて推定される面圧が、所定面圧よりも小さいか否か比較する比較ステップと、
前記推定される面圧が前記所定の面圧よりも小さい場合には、前記蒸気流量の減少率を調節する減少率調節ステップと、
を有することを特徴とする蒸気タービンの運転方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−94556(P2011−94556A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250538(P2009−250538)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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