説明

蒸気タービンの弁装置及びその操作方法

【課題】高温・高圧の作動流体が利用される場合にも、蒸気タービンの製造コスト削減と高効率化が可能な蒸気タービンの弁装置を提供すること。
【解決手段】蒸気タービンケーシング30の上部に取り付けられ第1主流路17を形成する第1弁ケーシング11と、第1主流路17内に設置された第1弁座12と、第1弁座12に対して上下方向に進退可能に第1弁ケーシング11内に収納された第1弁体13と、第1弁体13内に設けられたバイパス流路46と、開口部45に対して上下方向に進退可能に第1弁体13内に収納され、バイパス通路46を開閉する子弁体15と、蒸気タービンケーシング30の下部に取り付けられ第2主流路27を形成する第2弁ケーシング21と、第2主流路27内に設置された第2弁座22と、第2弁座22に対して上下方向に進退可能に第2弁ケーシング21内に収納された第2弁体23とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービン車室に供給される蒸気流量を制御する蒸気タービンの弁装置及びその操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電設備等の蒸気タービン車室に供給される蒸気流量を調節する弁装置は、通常、蒸気タービン車室(蒸気タービンケーシング)の前方もしくは両側に設置されており、蒸気が流通するリード管を介して蒸気タービンケーシングと接続されている(特許文献1等参照)。このタイプの弁装置の配置構造は別置型構造と呼ばれることがある。
【0003】
また、低出力帯の蒸気タービン用の弁装置としては、蒸気タービン車室の上下に弁装置を直接取り付けたシェルマウント型構造のものがある。このタイプの弁装置としては、例えば、蒸気タービン車室の鉛直上側及び鉛直下側にそれぞれ弁ケーシングを取り付け、当該各弁ケーシングに2つの蒸気制御弁を内蔵することで、合計4つの弁で弁装置を構成したものがある。なお、火力発電設備における蒸気タービン制御用に設置される主な弁装置には、主蒸気止め弁、蒸気加減弁、再熱蒸気止め弁、インターセプト弁などがあるが、これらのなかで蒸気流量の調節機能を有する弁装置は蒸気加減弁及びインターセプト弁である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−183582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、火力発電設備の高効率化・低コスト化が求められており、蒸気タービンだけでなく、その付属機器である弁装置についても高効率化・低コスト化が必要となっている。例えば、蒸気流量の調節機能を有する弁装置について、上記した別置型構造とシェルマウント型構造を比較すると、リード管を持たないシェルマウント型構造の方が部品員数が少なく製造コストが安いというメリットがある。さらに、シェルマウント型の方がリード管による熱損失も少ないので高効率化も望める。しかし、近年では、蒸気タービンの作動流体として高温・高圧蒸気が利用されることがあり、このような蒸気が弁装置に導入される点についても考慮する必要がある。
【0006】
本発明の目的は、高温・高圧の作動流体が利用される場合にも、蒸気タービンの製造コスト削減と高効率化が可能な蒸気タービンの弁装置及びその操作方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、上記目的を達成するために、車室を形成する蒸気タービンケーシングの上部に取り付けられ、前記車室に接続された蒸気出口と蒸気入口とを連通する第1主流路を形成する第1弁ケーシングと、前記第1主流路内に設置された第1弁座と、当該第1弁座に対して上下方向に進退可能に前記第1弁ケーシング内に収納された第1弁体と、当該第1弁体内に設けられた流路であって、当該第1弁体に設けられた開口部と前記第1主流路における前記第1弁体の上流側とを連通するバイパス流路と、前記開口部に対して上下方向に進退可能に当該第1弁体内に収納され、前記バイパス通路を開閉する子弁体と、前記蒸気タービンケーシングの下部に取り付けられ、前記車室に接続された蒸気出口と蒸気入口とを連通する第2主流路を形成する第2弁ケーシングと、前記第2主流路内に設置された第2弁座と、当該第2弁座に対して上下方向に進退可能に前記第2弁ケーシング内に収納された第2弁体とを備えるものとする。
【0008】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記第2主流路において前記第2弁体より下流側の流路表面温度を検出する温度検出手段をさらに備えるものとする。
【0009】
(3)上記(2)において、好ましくは、前記温度検出手段は、前記第2弁座の近傍に位置するように前記第2弁ケーシング内に設置された第1温度検出器、または前記第2主流路における前記第2弁座の下流側の流路の近傍に位置するように前記第2弁ケーシング内に設置された第2温度検出器であるものとする。
【0010】
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、好ましくは、前記蒸気タービンケーシングは、上ケーシングと下ケーシングを備え、当該上ケーシングと下ケーシングは、略水平方向に設置されたフランジ部を介して締結されているものとする。
【0011】
(5)また、本発明は、上記目的を達成するために、蒸気タービン車室の上部開口部に設置された第1弁座に対して上下方向に進退可能に設置された第1弁体と、前記上部開口部と前記第1弁体の上流側を連通するバイパス流路内に設置され当該バイパス流路を開閉する子弁体と、前記蒸気タービン車室の下部開口部に設置された第2弁座に対して上下方向に進退可能に設置された第2弁体とを備える蒸気タービンの弁装置の操作方法において、前記子弁体を移動させて前記バイパス流路を開く手順と、前記バイパス流路を開いた後に、前記第1弁体を前記第1弁座から離間させる手順と、前記第1弁体を前記第1弁座から離間させた後に前記第2弁座の表面温度が飽和蒸気温度以上であると推定されたら、前記第2弁体を前記第2弁座から離間させる手順とを備えるものとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蒸気タービンの製造コスト削減と高効率化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る蒸気タービンの弁装置の構造図。
【図2】図1における第1弁ケーシング11付近の拡大図。
【図3】図1における第2弁ケーシング21付近の拡大図。
【図4】子弁体15Aを内蔵した場合における第2弁体13Aの拡大図。
【図5】本発明の実施の形態の比較例である別置型構造の弁装置の上面図。
【図6】本発明の実施の形態の比較例であるシェルマウント型構造の弁装置の構造図。
【図7】図6における上側の弁ケーシング83の内部構造図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0015】
図1は本発明の実施の形態に係る蒸気タービンの弁装置の構造図である。この図に示す蒸気タービンの弁装置は、シェルマウント構造で形成されており、第1弁ケーシング11と、第1弁座12と、第1弁体13と、第2弁ケーシング21と、第2弁座22と、第2弁体23を備えている。
【0016】
第1弁ケーシング11は、車室1を形成する蒸気タービンケーシング30の上部に直接取り付けられており、車室1に接続された蒸気出口とボイラ等の蒸気発生手段(図示せず)に接続された蒸気入口とを連通する第1主流路17をその内部に形成している。蒸気タービンケーシング30は、蒸気タービンの軸方向に2分割されており、上ケーシング31と下ケーシング32から成っている。上ケーシング31と下ケーシング32は、それぞれの略水平方向の両端に設置されたフランジ部33を介して締結されている。
【0017】
第1弁座12は、環状に形成されており、第1弁ケーシング11における第1主流路17内に設置されている。第1弁体13は、上下方向に移動することで第1弁座12に着座又は離間して車室1に供給される蒸気流量を調節するもの(蒸気加減弁)で、第1弁座12に対して上下方向に進退可能に第1弁ケーシング11内に収納されている。
【0018】
図2は図1における第1弁ケーシング11付近の拡大図である。図2において、スリーブ41は第1弁体13の周囲を取り囲むようにして第1弁ケーシング11内に固定された円筒状の部材であり、第1弁体13はスリーブ41内を摺動する。スリーブ41の内周部における第1弁体13の上方には、弁スタンド42が挿入されている。弁スタンド42の内部には、子弁体15と一体となった弁棒(第1弁棒)43が通されている。弁棒43は駆動装置(図示せず)によって上下方向に適宜駆動される。なお、このように第1弁体13内に子弁体15を設けると第1弁体13の弁口径を大型化し易い。そのため、例えば高出力のタービンへの適用が容易になる。
【0019】
第1弁体13の内部には子弁体15及び弁棒43が通される孔44が設けられており、孔44は第1弁体13における第1弁座12に臨む面(図2における下端面)に設けられた開口部45を介して外部に表出している。開口部45は、孔44から第1弁体13とスリーブ41との隙間を介して、第1主流路17における第1弁体13の上流側(すなわち、スリーブ41の外側)と連通しており、これらにより第1主流路17を車室1に接続するバイパス流路(チャンバ)46が形成されている。
【0020】
子弁体15は、その弁座である開口部45の内側に着座又は離間することでバイパス流路46を開閉するもので、開口部45に対して進退可能に第1弁体13内に収納されている。また、弁棒43の外周部と第1弁体13の内周部にはそれぞれ突出部47,48が設けられている。例えば、子弁体15を開口部45に着座させた状態から弁棒43によって引き上げると、まず、バイパス流路46が開いて車室1と連通する。その後、さらに弁棒43を引き上げると、弁棒43の突出部47が第1弁体13の突出部48と係止して第1弁体が引き上げられ、第1流路17が車室1と連通する。
【0021】
また、第1弁ケーシング11には、ドレン管18が接続されている。ドレン管18にはドレン弁19が取り付けられている。タービン起動時には第1弁ケーシング11に発生する熱応力を緩和する目的で第1弁ケーシング11の暖機を行う。この暖機は、第1弁体13を第1弁座に着座させた状態でドレン弁19を開け、第1弁ケーシング11内の蒸気を排出して行うものである。これにより、第1弁ケーシング11内で発生したドレンは、ドレン管18を介して外部に排出されるので、蒸気タービン起動時に車室1内にドレンが流入することを防止できる。
【0022】
図1に戻り、第2弁ケーシング21は、車室1を形成する蒸気タービンケーシング30の下部に直接取り付けられており、車室1に接続された蒸気出口とボイラ等の蒸気発生手段(図示せず)に接続された蒸気入口とを連通する第2主流路27をその内部に形成している。
【0023】
第2弁座22は、環状に形成されており、第2弁ケーシング21における第2主流路27内に設置されている。第2弁体23は、上下方向に移動することで第2弁座22に着座又は離間して車室1に供給される蒸気流量を調節するもの(蒸気加減弁)で、第2弁座22に対して上下方向に進退可能に第2弁ケーシング21内に収納されている。
【0024】
図3は図1における第2弁ケーシング21付近の拡大図である。この図に示すように第2弁体23は、第1弁体13と異なりその内部に子弁体を有しないタイプの弁である。第2弁体23の下端には弁棒(第2弁棒)26が取り付けられている。弁棒26は駆動装置(図示せず)によって上下方向に適宜駆動され、これにより第2弁体23が上下方向に移動される。
【0025】
第2弁ケーシング21には、第2主流路27において第2弁体23より下流側に位置する流路の表面温度を検出する温度検出手段として、第1サーモカップル(第1温度検出器)51と、第2サーモカップル(第2温度検出器)52が取り付けられている。このうち、第1サーモカップル51は、第2弁座22の表面温度を推定するために用いられるものであり、第2弁ケーシング21内において第2弁座22の近傍まで延びる凹部内に収納されている。一方、第2サーモカップル52は、第2主流路27において第2弁座22より下流側の流路の表面温度を推定するために用いられるものであり、第2主流路27において第2弁座22より下流側の流路の近傍まで延びる凹部内に収納されている。
【0026】
なお、本実施の形態では、第2弁体23より下流側に位置する流路の表面温度の検出精度を向上させる観点から、2つのサーモカップル51,52を第2弁ケーシング21に取り付けたが、第2弁座の表面温度を推定する観点からはいずれか一方のサーモカップルを設置すれば足りる。また、本実施の形態において2つのサーモカップル51,52をそれぞれ第2弁座22及び第2主流路27の近傍に設置したのは、蒸気のシールを容易に行うためである。すなわち、第2弁ケーシング21に貫通孔を設けてサーモカップル51,52を取り付ける構造は蒸気のシールが困難になるからである。
【0027】
第2弁ケーシング21には、ドレン管28が接続されている。ドレン管28にはドレン弁29が取り付けられている。第1弁ケーシング11と同様に、タービン起動時には、第2弁体23を第2弁座22に着座させた状態でドレン弁29を開けることで、第2弁ケーシング21内の蒸気を排出して第2弁ケーシング21の暖機を行うことができる。
【0028】
ここで、本実施の形態に係る弁装置の動作及び作用を説明する前に、まず、本実施の形態が発揮する効果の理解を容易にするために、第2弁体23に子弁体を内蔵した場合について説明する。図4は子弁体15Aを内蔵した場合における第2弁体13Aの拡大図である。この図に示す第2弁体13Aは子弁体15Aを有している。この第2弁体13Aの各構成要素は、第1弁体13の各構成要素を上下逆転させたものに相当し、第1弁体13の各構成要素と区別するために添字Aを付している。
【0029】
図4に示すように第2弁体13Aに子弁体15Aを内蔵すると、第2弁体13Aに対して開弁方向と同じ方向(すなわち、鉛直下方向)に重力が作用することになる。そのため、第2弁体13Aの上流側(第2弁ケーシング21内の圧力)と下流側(車室1内の圧力)の差圧が第2弁体13Aの自重より小さい場合には、弁棒43Aを引き下げて子弁体15Aを開口部45Aから離間させると、これに追従して第2弁体13Aが意図せずに下方向に落下してしまうことがある。これでは、弁棒43Aの制御に関係無く第2弁体13Aが移動する場合が生じるので、第2弁体13Aの上流側と下流側の圧力差に応じて第2弁体13Aの制御特性が変化することになる。すなわち、圧力に関係無く第2弁体13Aの開度を自在に制御することができなくなるので、制御の観点からはこのような構造を採用することは難しい。そこで、本実施の形態では、圧力に関係無く第2弁体23の開度を自在に制御する観点から、蒸気タービンケーシング30の下側に設置される第2弁体23には子弁体は内蔵していない。
【0030】
次に本実施の形態に係る弁装置の動作及び作用について説明する。上記のように構成される本実施の形態に係る弁装置において、蒸気タービンを起動する前には、まず、第1弁体13及び第2弁体23を第1弁座12及び第2弁座22に着座させた状態でドレン弁19及びドレン弁29を開いて、ドレン管18及びドレン管28を介して第1主流路17及び第2主流路27外に蒸気を排出することで、第1弁ケーシング11及び第2弁ケーシング21の暖機を行う。その後、第1弁ケーシング11及び第2弁ケーシング21の暖機が完了したら、第1弁体13及び第2弁体23を第1弁座12及び第2弁座22に着座させたままドレン弁19及びドレン弁29を閉め、第1主流路17及び第2主流路27内に蒸気を導く。
【0031】
上記のように、第1弁体13及び子弁体15が第1弁座12及び開口部45に着座しているときに第1主流路17内に蒸気を導くと、第1弁体13の上流側と下流側(車室1側)の圧力差に起因する力が第1弁体13に対して閉方向に作用する。そのため、この状態で第1弁体13を開けるためには、大きな駆動力を要する。そこで、蒸気タービンを起動する際には、まず、第1弁棒43を引き上げることで第1弁体13の開口部45から子弁体15を離間させて、バイパス流路46を開く。このように子弁体15を開口部45から離間させると、開口部45を介してバイパス流路46が車室1と連通するので、第1弁体13の上流側と下流側の圧力差が減少する。この状態でさらに第1弁棒43を引き上げると、突出部47が第1弁体13の突出部48に係止して、第1弁体13が第1弁棒43とともに上昇する。第1弁体13が第1弁体13から離間すると、第1主流路17が車室1と連通され、蒸気タービンへの蒸気流量は第1弁体13の開度に応じて調節される。
【0032】
上記のように第1弁体13を開くときには、第2弁体23は第2弁座22に着座させたままの状態で保持する。これは、第2弁体23には、第1弁体13のように弁開力低減目的の子弁体15が内蔵されておらず、駆動装置の弁開力不足から車室1内の蒸気圧力が所定の値まで上昇しないと第2弁体23を開けることができないからである。そこで、第1ケーシング11を介して車室1内に蒸気を導入し、第2弁体23の移動が可能な値(以下において「開弁可能圧力」と称することがある)まで車室1内の圧力を上昇させてから第2弁体を開く。これにより、作動流体として高温・高圧の蒸気を利用する場合にも、2つの弁体13,23のみで蒸気流量を調節することができるので、蒸気タービンの製造コストの削減が可能であるとともに、蒸気タービンの高効率化も可能となる。
【0033】
次に、本実施の形態に係る弁装置とは異なる構造を有するものを比較例として説明しつつ、本実施の形態が発揮する他の効果について説明する。
【0034】
図5は本発明の実施の形態の比較例である別置型構造の弁装置の上面図である。この図に示す弁装置は、同じ高さに設置された4つの蒸気止め弁61,62,63,64と、これらの弁61〜64の下流側において同じ高さに設置された4つの蒸気制御弁65,66,67,68を備えている。各蒸気止め弁61〜64は隣接する蒸気止め弁61〜64と流路69で接続されている。また、これら8つの蒸気弁61〜68は、蒸気タービンケーシング(蒸気タービン車室)70の前方(図5中の左方向)に設置されており、各蒸気弁61〜68は、4つのリード管71を介して蒸気タービンケーシング70と接続されている。具体的には、蒸気止め弁61及び蒸気制御弁65に接続されたリード管71と、蒸気止め弁64及び蒸気制御弁68に接続されたリード管71は、下方から蒸気タービンケーシング70に接続されており、蒸気止め弁62及び蒸気制御弁66に接続されたリード管71と、蒸気止め弁63及び蒸気制御弁67に接続されたリード管71は、上方から蒸気タービンケーシング70に接続されている。
【0035】
図6は本発明の実施の形態の比較例であるシェルマウント型構造の弁装置の構造図(正面図)である。この図において、蒸気制御弁81,82は、蒸気タービンケーシング70に対して鉛直上側に設置されており、共通の弁ケーシング83に内蔵されている。一方、蒸気制御弁84,85は、蒸気タービンケーシング70に対して鉛直下側に設置されており、共通の弁ケーシング86に内蔵されている。図7は図6における上側の弁ケーシング83の内部構造図であり、弁ケーシング83内の蒸気制御弁82の弁体は閉状態となっており、蒸気制御弁81の弁体は開状態となっている。
【0036】
ところで、一般的に、蒸気タービンの起動過程及び運転時には、各蒸気制御弁はタービンの負荷制御に応じてその開度が調整されて蒸気流量を制御するが、運用上いずれかの蒸気制御弁が全閉する場合がある。例えば、図5のように構成される別置型構造では、蒸気制御弁65〜68のいずれかが全閉しても、各蒸気止め弁61〜64は流路69で接続されているので、蒸気制御弁65〜68のケーシング内はいずれも蒸気の対流が生じることになる。そのため、たとえ蒸気制御弁65〜68のいずれかが全閉されても当該全閉された制御弁の表面温度が低下することは無く、ドレンが溜まることが無い構造となっている。一方、図6のように構成されるシェルマウント型構造では、図7に示すように弁ケーシング83内の蒸気制御弁82の弁体が閉状態のときには、蒸気制御弁81の弁体は開状態にあるので、弁ケーシング83内は常に蒸気の対流が生じることとなる。そのため、図5の場合と同様に、いずれの蒸気制御弁81,82が全閉されても当該全閉された制御弁の表面温度が低下することは無く、ドレンが溜まることが無い構造となっている。
【0037】
これに対して、本実施の形態に係る弁装置では、蒸気タービン起動時に上記のように第1弁体13を開けて第2弁体23を閉じた状態で保持すると、第2弁ケーシング21内は蒸気が滞留したままになる。そのため、第2弁体23及び第2弁座22の表面温度は、蒸気の流れがある第1弁体13及び第1弁座12及び蒸気タービンケーシング30等と比較して上昇し難くなる。一方、第1弁体13を開けて第2弁体23を閉じた状態では、第2弁体23の下流側(第2弁体23の上部)は車室1の最下点となる。そのため、他の部分よりも温度が相対的に低い第2弁体23や第2弁座22に車室1からの蒸気が接触して、第2弁体23の下流側にドレン溜まりが発生する場合がある。
【0038】
そこで、本実施の形態では、第2弁ケーシング21に第1サーモカップル51と第2サーモカップル52を取り付けている。すなわち、これら2つのサーモカップル51,52の検出温度に基づいて第2弁座22の表面温度を推定し、当該推定温度が飽和蒸気温度以上であるか否かを監視している。
【0039】
したがって、車室1内の圧力が開弁可能圧力まで上昇し、かつ、第2弁座22の推定温度が飽和蒸気温度以上であることが確認できた場合には、第2弁体23を開けて蒸気を車室1に導入ことができる。一方、車室1内の圧力が開弁可能圧力まで上昇したが、推定温度が飽和蒸気温度未満である場合には、ドレン溜まりが発生している可能性がある。そこで、ドレン弁29を開けて第2弁ケーシング21内に高温の蒸気を流通させ、第2弁体23及び第2弁座22の温度を上昇させる。そして、第2弁座22の推定温度を飽和蒸気温度以上まで上昇させた後にドレン弁29を再び閉めて第2弁体23を開ければ、ドレン溜まりが無い状態で下側から車室1内に蒸気を導入することができる。したがって、本実施の形態によれば、蒸気タービン車室1の上下に1弁ずつ配置したシェルマウント型構造において、下側の弁の下流域にドレン溜まりが発生している状態で当該弁が開かれることが無くなるので、蒸気タービンの信頼性を向上できる。
【符号の説明】
【0040】
1 車室
11 第1弁ケーシング
12 第1弁座
13 第1弁体
15 子弁体
17 第1主流路
21 第2弁ケーシング
22 第2弁座
23 第2弁体
26 弁棒
27 第2主流路
30 蒸気タービンケーシング
44 孔
45 開口部
46 バイパス流路
47,48 突出部
51,52 サーモカップル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室を形成する蒸気タービンケーシングの上部に取り付けられ、前記車室に接続された蒸気出口と蒸気入口とを連通する第1主流路を形成する第1弁ケーシングと、
前記第1主流路内に設置された第1弁座と、
当該第1弁座に対して上下方向に進退可能に前記第1弁ケーシング内に収納された第1弁体と、
当該第1弁体内に設けられた流路であって、当該第1弁体に設けられた開口部と前記第1主流路における前記第1弁体の上流側とを連通するバイパス流路と、
前記開口部に対して上下方向に進退可能に当該第1弁体内に収納され、前記バイパス通路を開閉する子弁体と、
前記蒸気タービンケーシングの下部に取り付けられ、前記車室に接続された蒸気出口と蒸気入口とを連通する第2主流路を形成する第2弁ケーシングと、
前記第2主流路内に設置された第2弁座と、
当該第2弁座に対して上下方向に進退可能に前記第2弁ケーシング内に収納された第2弁体とを備えることを特徴とする蒸気タービンの弁装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸気タービンの弁装置において、
前記第2主流路において前記第2弁体より下流側の流路表面温度を検出する温度検出手段をさらに備えることを特徴とする蒸気タービンの弁装置。
【請求項3】
請求項2に記載の蒸気タービンの弁装置において、
前記温度検出手段は、前記第2弁座の近傍に位置するように前記第2弁ケーシング内に設置された第1温度検出器、または前記第2主流路における前記第2弁座の下流側の流路の近傍に位置するように前記第2弁ケーシング内に設置された第2温度検出器であることを特徴とする蒸気タービンの弁装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の蒸気タービンの弁装置において、
前記蒸気タービンケーシングは、上ケーシングと下ケーシングを備え、
当該上ケーシングと下ケーシングは、略水平方向に設置されたフランジ部を介して締結されていることを特徴とする蒸気タービンの弁装置。
【請求項5】
蒸気タービン車室の上部開口部に設置された第1弁座に対して上下方向に進退可能に設置された第1弁体と、前記上部開口部と前記第1弁体の上流側を連通するバイパス流路内に設置され当該バイパス流路を開閉する子弁体と、前記蒸気タービン車室の下部開口部に設置された第2弁座に対して上下方向に進退可能に設置された第2弁体とを備える蒸気タービンの弁装置の操作方法において、
前記子弁体を移動させて前記バイパス流路を開く手順と、
前記バイパス流路を開いた後に、前記第1弁体を前記第1弁座から離間させる手順と、
前記第1弁体を前記第1弁座から離間させた後に前記第2弁座の表面温度が飽和蒸気温度以上であると推定されたら、前記第2弁体を前記第2弁座から離間させる手順とを備えることを特徴とする蒸気タービンの弁装置の操作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−41823(P2012−41823A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180973(P2010−180973)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】