説明

蒸気タービンの運転制御装置及び運転制御方法

【課題】実機が本来備えている機械性能を実現し得る蒸気タービンの運転制御装置及び運転制御方法を提供する。
【解決手段】速度制御器22により蒸気タービン101の出力目標値及び速度検出値に基づき速度制御出力信号S11を生成し、抽気圧制御器23により蒸気タービン101の抽気流量目標値及び抽気圧力検出値に基づき抽気圧制御出力信号S12を生成し、速度制御出力信号S11及び抽気圧制御出力信号S12に応じて定まる運転点における蒸気加減弁14及び抽気調圧弁15のそれぞれの開度を導く抽気マップ24を参照して、蒸気加減弁14及び抽気調圧弁15のそれぞれの操作信号を生成する際に、定期的に検出される蒸気タービン101の抽気流量実測値に基づき、抽気マップ24における抽気圧制御出力信号S12のスケールを「抽気流量目標値/抽気流量実測値」倍に修正した抽気マップ24を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蒸気タービンの運転制御装置及び運転制御方法に係り、特に、抽気マップに基づき弁開度制御信号を生成して運転制御を行う蒸気タービンの運転制御装置及び運転制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンの中間段から蒸気を抽出し、これをプラント等のプロセス系へ供給して利用する抽気タービンが知られている(例えば、特開昭62−67209号公報等)。図7に、従来の蒸気タービン及びその周辺機器の構成を例示する。同図において、蒸気タービン110は、高圧タービン11及び低圧タービン12を備え、また、高圧タービン11に供給する蒸気流量を加減する蒸気加減弁14と、高圧タービン11から低圧タービン12に供給する蒸気流量を加減する抽気調圧弁15とを備えた構成である。なお、蒸気タービン110には、発電機13が直結されている。
【0003】
また、蒸気タービンの運転制御装置として電子ガバナ51を備えており、電子ガバナ51は、蒸気タービン110の出力目標値並びに速度検出器41からの速度信号S1に基づき速度制御出力信号S11を生成する速度制御器52と、蒸気タービン110の抽気流量目標値並びに抽気圧検出器42からの抽気圧力信号S2に基づき抽気圧制御出力信号S12を生成する抽気圧制御器53と、速度制御出力信号S11及び抽気圧制御出力信号S12に応じて定まる運転点における蒸気加減弁14及び抽気調圧弁15のそれぞれの開度を導く抽気マップ54と、を備えた構成であり、抽気マップ54の変換によって蒸気加減弁14のGV操作信号S21並びに抽気調圧弁15のECV操作信号S22を生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−67209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来技術においては、抽気マップ54に基づいて、蒸気タービン110の出力に相当する速度制御出力信号S11、並びに、蒸気タービン110の抽気流量に相当する抽気圧制御出力信号S12を、蒸気加減弁14の開度並びに抽気調圧弁15の開度に変換して運転制御を行っている。ここで、実機における蒸気加減弁14の開度並びに抽気調圧弁15の開度と、想定している蒸気タービン110の出力及び蒸気タービン110の抽気流量との関係において、実機と想定(計画)との間にずれがある場合には、想定している抽気マップ54上の運転点と実際の運転点とにずれが生じ、想定する運転制御通りに運転が行われずに実機が本来備えている機械性能が実現されないおそれがあるという事情があった。
【0006】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、蒸気タービンの運転制御に用いる抽気マップ上の運転点と実際の運転点とのずれを修正して、想定する運転制御通りの運転を行うことができ、実機が本来備えている機械性能を実現し得る蒸気タービンの運転制御装置及び運転制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用する。
本発明に係る蒸気タービンの運転制御装置は、少なくとも高圧タービン及び低圧タービンを有し、前記高圧タービンに供給する蒸気流量を加減する蒸気加減弁と、前記高圧タービンから前記低圧タービンに供給する蒸気流量を加減する抽気調圧弁とを備えた蒸気タービンの運転制御装置であって、前記蒸気タービンの出力目標値並びに該蒸気タービンの速度検出値に基づき速度制御出力信号を生成する速度制御器と、前記蒸気タービンの抽気流量目標値並びに該蒸気タービンの抽気圧力検出値に基づき抽気圧制御出力信号を生成する抽気圧制御器と、前記速度制御出力信号及び前記抽気圧制御出力信号に応じて定まる運転点における前記蒸気加減弁及び前記抽気調圧弁のそれぞれの開度を導く抽気マップと、を有し、定期的に検出される前記蒸気タービンの抽気流量実測値に基づき、前記抽気マップにおける前記抽気圧制御出力信号のスケールを「抽気流量目標値/抽気流量実測値」倍に修正し、該修正後の抽気マップを参照して、前記蒸気加減弁及び前記抽気調圧弁のそれぞれの操作信号を生成することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、定期的に検出される抽気流量実測値に基づき抽気マップを修正し、修正後の抽気マップに基づいて蒸気加減弁の開度並びに抽気調圧弁の開度を調整するので、蒸気タービンの運転制御に用いる抽気マップ上の運転点と実際の運転点とのずれを修正して、想定する運転制御通りの運転を行うことができ、実機が本来備えている機械性能を確実に実現することができる。
【0009】
また、本発明は、上記記載の蒸気タービンの運転制御装置において、定期的に検出される前記蒸気タービンの出力実測値に基づき、前記抽気マップにおける前記速度制御出力信号のスケールを「出力実測値/出力目標値」倍に修正し、該修正後の抽気マップを参照して、前記蒸気加減弁及び前記抽気調圧弁のそれぞれの操作信号を生成することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、さらに定期的に検出される出力実測値に基づき抽気マップを修正し、修正後の抽気マップに基づいて蒸気加減弁の開度並びに抽気調圧弁の開度を調整するので、蒸気タービンの運転制御に用いる抽気マップ上の運転点と実際の運転点とのずれを修正して、想定する運転制御通りの運転を行うことができ、実機が本来備えている機械性能をより確実に実現することができる。
【0011】
また、本発明に係る蒸気タービンの運転制御装置は、少なくとも高圧タービン及び低圧タービンを有し、前記高圧タービンに供給する蒸気流量を加減する蒸気加減弁と、前記高圧タービンから前記低圧タービンに供給する蒸気流量を加減する抽気調圧弁とを備えた蒸気タービンの運転制御装置であって、前記蒸気タービンの出力目標値並びに該蒸気タービンの速度検出値に基づき速度制御出力信号を生成する速度制御器と、前記蒸気タービンの抽気流量目標値並びに該蒸気タービンの抽気圧力検出値に基づき抽気圧制御出力信号を生成する抽気圧制御器と、前記速度制御出力信号及び前記抽気圧制御出力信号に応じて定まる運転点における前記蒸気加減弁及び前記抽気調圧弁のそれぞれの開度を導く抽気マップと、を有し、定期的に検出される前記蒸気タービンの出力実測値に基づき、前記抽気マップにおける前記速度制御出力信号のスケールを「出力実測値/出力目標値」倍に修正し、該修正後の抽気マップを参照して、前記蒸気加減弁及び前記抽気調圧弁のそれぞれの操作信号を生成することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、定期的に検出される出力実測値に基づき抽気マップを修正し、修正後の抽気マップに基づいて蒸気加減弁の開度並びに抽気調圧弁の開度を調整するので、蒸気タービンの運転制御に用いる抽気マップ上の運転点と実際の運転点とのずれを修正して、想定する運転制御通りの運転を行うことができ、実機が本来備えている機械性能を確実に実現することができる。
【0013】
また、本発明に係る蒸気タービンの運転制御方法は、少なくとも高圧タービン及び低圧タービンを有し、前記高圧タービンに供給する蒸気流量を加減する蒸気加減弁と、前記高圧タービンから前記低圧タービンに供給する蒸気流量を加減する抽気調圧弁とを備えた蒸気タービンの運転制御方法であって、前記蒸気タービンの出力目標値並びに該蒸気タービンの速度検出値に基づき速度制御出力信号を生成する速度制御ステップと、前記蒸気タービンの抽気流量目標値並びに該蒸気タービンの抽気圧力検出値に基づき抽気圧制御出力信号を生成する抽気圧制御ステップと、前記速度制御出力信号及び前記抽気圧制御出力信号に応じて定まる運転点における前記蒸気加減弁及び前記抽気調圧弁のそれぞれの開度を導く抽気マップを参照して、該蒸気加減弁及び該抽気調圧弁のそれぞれの操作信号を生成する操作信号生成ステップと、を有し、定期的に検出される前記蒸気タービンの抽気流量実測値に基づき、前記抽気マップにおける前記抽気圧制御出力信号のスケールを「抽気流量目標値/抽気流量実測値」倍に修正することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、定期的に検出される抽気流量実測値に基づき抽気マップを修正し、修正後の抽気マップに基づいて蒸気加減弁の開度並びに抽気調圧弁の開度を調整するので、蒸気タービンの運転制御に用いる抽気マップ上の運転点と実際の運転点とのずれを修正して、想定する運転制御通りの運転を行うことができ、実機が本来備えている機械性能を確実に実現することができる。
【0015】
また、本発明は、上記記載の蒸気タービンの運転制御方法において、定期的に検出される前記蒸気タービンの出力実測値に基づき、前記抽気マップにおける前記速度制御出力信号のスケールを「出力実測値/出力目標値」倍に修正することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、さらに定期的に検出される出力実測値に基づき抽気マップを修正し、修正後の抽気マップに基づいて蒸気加減弁の開度並びに抽気調圧弁の開度を調整するので、蒸気タービンの運転制御に用いる抽気マップ上の運転点と実際の運転点とのずれを修正して、想定する運転制御通りの運転を行うことができ、実機が本来備えている機械性能をより確実に実現することができる。
【0017】
さらに、本発明に係る蒸気タービンの運転制御方法は、少なくとも高圧タービン及び低圧タービンを有し、前記高圧タービンに供給する蒸気流量を加減する蒸気加減弁と、前記高圧タービンから前記低圧タービンに供給する蒸気流量を加減する抽気調圧弁とを備えた蒸気タービンの運転制御方法であって、前記蒸気タービンの出力目標値並びに該蒸気タービンの速度検出値に基づき速度制御出力信号を生成する速度制御ステップと、前記蒸気タービンの抽気流量目標値並びに該蒸気タービンの抽気圧力検出値に基づき抽気圧制御出力信号を生成する抽気圧制御ステップと、前記速度制御出力信号及び前記抽気圧制御出力信号に応じて定まる運転点における前記蒸気加減弁及び前記抽気調圧弁のそれぞれの開度を導く抽気マップを参照して、該蒸気加減弁及び該抽気調圧弁のそれぞれの操作信号を生成する操作信号生成ステップと、を有し、定期的に検出される前記蒸気タービンの出力実測値に基づき、前記抽気マップにおける前記速度制御出力信号のスケールを「出力実測値/出力目標値」倍に修正することを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、定期的に検出される出力実測値に基づき抽気マップを修正し、修正後の抽気マップに基づいて蒸気加減弁の開度並びに抽気調圧弁の開度を調整するので、蒸気タービンの運転制御に用いる抽気マップ上の運転点と実際の運転点とのずれを修正して、想定する運転制御通りの運転を行うことができ、実機が本来備えている機械性能を確実に実現することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、蒸気タービンの運転制御に用いる抽気マップ上の運転点と実際の運転点とのずれを修正して、想定する運転制御通りの運転を行うことができ、実機が本来備えている機械性能を確実に実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る蒸気タービンの運転制御装置の構成図である。
【図2】蒸気タービンの運転制御に用いる抽気マップを例示する説明図である。
【図3】抽気マップに対応する高圧蒸気流量とタービン出力との関係を例示する説明図である。
【図4】第1実施形態における修正後の抽気マップを例示する説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る蒸気タービンの運転制御装置の構成図である。
【図6】第2実施形態における修正後の抽気マップを例示する説明図である。
【図7】従来の蒸気タービン及びその周辺機器の構成を例示する構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の蒸気タービンの運転制御装置及び運転制御方法の実施形態について、第1実施形態、第2実施形態の順に図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1実施形態に係る蒸気タービンの運転制御装置の構成図である。同図において、図7(従来例)と重複する部分には同一の符号を附する。
同図において、本実施形態の蒸気タービンの運転制御装置が制御対象とする蒸気タービン101は、従来と同様に、高圧タービン11及び低圧タービン12を備え、また、高圧タービン11に供給する蒸気流量を加減する蒸気加減弁14と、高圧タービン11から低圧タービン12に供給する蒸気流量を加減する抽気調圧弁15とを備えた構成である。また、この蒸気タービン101には、発電機13が直結またはギアを介して接続されている。さらに、各種物理量を検出する検出器として、蒸気タービン110の回転速度を検出して速度信号S1を出力する速度検出器41と、蒸気タービン110の抽気圧力を検出して抽気圧力信号S2を出力する抽気圧検出器42と、蒸気タービン110の抽気流量を定期的に検出して抽気流量信号S3を出力する抽気流量検出器43と、を備えている。
【0023】
また、蒸気タービンの運転制御装置としての電子ガバナ21は、蒸気タービン101の出力目標値並びに速度検出器41からの速度信号S1に基づき速度制御出力信号S11を生成する速度制御器22と、蒸気タービン101の抽気流量目標値並びに抽気圧検出器42からの抽気圧力信号S2に基づき抽気圧制御出力信号S12を生成する抽気圧制御器23と、速度制御出力信号S11及び抽気圧制御出力信号S12に応じて定まる運転点における蒸気加減弁14及び抽気調圧弁15のそれぞれの開度を導く抽気マップ24と、を備えた構成であり、抽気マップ24の変換によって蒸気加減弁14のGV操作信号S21並びに抽気調圧弁15のECV操作信号S22を生成している。
【0024】
ここで、抽気マップ24は、定期的に(例えば1[秒]間隔で)抽気流量検出器43からの抽気流量信号S3に基づき修正される。すなわち、現運転制御における蒸気タービン101の抽気流量目標値並びに蒸気タービン101の抽気流量実測値に基づき、抽気マップ24における抽気圧制御出力信号のスケールを「抽気流量目標値/抽気流量実測値」倍に修正する。この修正により実機と想定(計画)との間にずれが修正されることとなる。
【0025】
次に、以上のような構成要素を備えた蒸気タービンの運転制御装置による運転制御方法について、図2〜図4を参照して説明する。ここで、図2は本実施形態の蒸気タービンの運転制御で用いる抽気マップを例示する説明図であり、図3は抽気マップ(図2)に対応する高圧蒸気流量とタービン出力との関係を例示する説明図であり、図4は本実施形態における修正後の抽気マップを例示する説明図である。
【0026】
まず、図2の抽気マップについて簡単に説明すると、抽気マップ24は、横軸を速度制御出力信号[%]、縦軸をGV操作信号[%](蒸気加減弁14の開度)とし、これらの相対関係に対応して、抽気圧制御出力信号[%]について、0[%](:図中、線分O−A1)から100[%](:図中、線分B1−C12)まで、縦軸方向にスケールを刻み(図中、1点鎖線で10[%]毎に表記)、またECV操作信号[%](抽気調圧弁15の開度)について、0[%](:図中、線分O−B1)から100[%](:図中、線分A1−C11)まで、横軸方向にスケールを刻んだもの(図中、破線で10[%]毎に表記)である。
【0027】
例えば、速度制御器22から速度制御出力信号S11=70[%]が、また抽気圧制御器23から抽気圧制御出力信号S12=100[%]がそれぞれ出力されているとき、抽気マップ24上で運転点R1が定まり、該運転点R1における蒸気加減弁14の開度並びに抽気調圧弁15の開度が求められる。すなわち、GV操作信号S21=85[%]、ECV操作信号S22=46[%]である。
【0028】
また、抽気マップにおける速度制御出力信号[%]はタービン出力[MW]に、GV操作信号[%]は高圧蒸気流量[%]に、抽気圧制御出力信号[%]は抽気流量[t/h]に、それぞれ対応しており、これらの関係は図3の制御マップで表される。なお、制御マップは、蒸気加減弁14の開度制御と抽気調圧弁15の開度制御とが干渉を起こさない不干渉制御となるよう、設計データ等に基づき作成されるものであり、蒸気タービンの運転制御時には、この制御マップを参照して蒸気タービン101の出力目標値及び抽気流量目標値が設定される。つまり、上記した具体的数値例では、蒸気タービン101の出力目標値=21[MW]、抽気流量目標値=80[t/h]に設定されていたこととなる。
【0029】
次に、抽気マップ24の修正について、実機と想定(計画)との間にずれが生じているケースを例示して説明する。ここでは、抽気流量検出器43からの抽気流量信号S3により、抽気流量実測値=60[t/h]であったとする(実際には、これほどの大きなずれが生じる可能性は低いが、説明を分かり易くするためにこの数値例を用いる)。このとき、抽気マップ24における抽気圧制御出力信号のスケールは「抽気流量目標値/抽気流量実測値≒1.33」倍に修正され、図4に示す如くなる。
【0030】
図4において、修正後の抽気マップ24は、速度制御出力信号[%]及びGV操作信号[%]の相対関係に対応して、抽気圧制御出力信号[%]について、0[%](:図中、線分O−A1)から100[%](:図中、線分B2−C22)まで、縦軸方向にスケールが刻まれ、またECV操作信号[%]について、0[%](:図中、線分O−B2)から100[%](:図中、線分A1−C11)まで、横軸方向にスケールが刻まれたものとなっている。
【0031】
したがって、図2の抽気マップ24上では運転点がR1であったが、この修正により、図4の修正後の抽気マップ24上では運転点はR2となり、該運転点R2における蒸気加減弁14の開度並びに抽気調圧弁15の開度が求められ、GV操作信号S21=96[%]、ECV操作信号S22=32[%]となる。
【0032】
すなわち、蒸気タービン101の出力目標値=21[MW]、抽気流量目標値=80[t/h]に応じて図2の抽気マップ24上での運転点R1による運転制御を行ったが、実機と想定との間のずれにより、実際には抽気流量=60[t/h]となっていた。ここで、図4の修正後の抽気マップ24上での運転点R2による運転制御を行うことにより、抽気流量=80[t/h]とすることが可能となる。
【0033】
なお、実機と想定(計画)との間のずれは、例えば、蒸気加減弁14や抽気調圧弁15などについて起こり得る。より具体的には、抽気調圧弁15の弁開度を0〜80[%]の間で調整するためにECV操作信号S22は0〜100[%]の間で設定されるが、実際には抽気調圧弁15の弁開度調整範囲が狭いような(例えば、0〜76[%])ケースである。この場合、実機では想定よりも蒸気流量が抑えられることとなってずれが生じるが、実機に即した抽気マップ24の修正を行うことにより、想定通りの運転状態に持っていくことが可能となる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態の蒸気タービンの運転制御装置及び運転制御方法では、少なくとも高圧タービン11及び低圧タービン12を有し、高圧タービン11に供給する蒸気流量を加減する蒸気加減弁14と、高圧タービン11から低圧タービン12に供給する蒸気流量を加減する抽気調圧弁15とを備えた蒸気タービン101の運転制御装置及び運転制御方法であって、速度制御器21により蒸気タービン101の出力目標値及び速度検出値(S1)に基づき速度制御出力信号S11を生成し(速度制御ステップ)、抽気圧制御器23により蒸気タービン101の抽気流量目標値及び抽気圧力検出値(S2)に基づき抽気圧制御出力信号S12を生成し(抽気圧制御ステップ)、速度制御出力信号S11及び抽気圧制御出力信号S12に応じて定まる運転点における蒸気加減弁14及び抽気調圧弁15のそれぞれの開度を導く抽気マップ24を参照して、蒸気加減弁14及び抽気調圧弁15のそれぞれの操作信号(S21及びS22)を生成する(操作信号生成ステップ)際に、定期的に検出される蒸気タービン101の抽気流量実測値(S3)に基づき、抽気マップ24における抽気圧制御出力信号S12のスケールを「抽気流量目標値/抽気流量実測値」倍に修正した抽気マップ24を用いる。
【0035】
このように、定期的に検出される抽気流量実測値(S3)に基づき抽気マップ24を修正し、修正後の抽気マップ24に基づいて蒸気加減弁14の開度並びに抽気調圧弁15の開度を調整するので、蒸気タービン101の運転制御に用いる抽気マップ24上の運転点と実際の運転点とのずれを修正して、想定する運転制御通りの運転を行うことができ、実機が本来備えている機械性能を確実に実現することができる。
【0036】
〔第2実施形態〕
次に、図5は本発明の第2実施形態に係る蒸気タービンの運転制御装置の構成図である。同図において、図1(第1実施形態)及び図7(従来例)と重複する部分には同一の符号を附する。
【0037】
同図において、本実施形態の蒸気タービンの運転制御装置が制御対象とする蒸気タービン102は、第1実施形態と同様に、高圧タービン11及び低圧タービン12を備え、また、高圧タービン11に供給する蒸気流量を加減する蒸気加減弁14と、高圧タービン11から低圧タービン12に供給する蒸気流量を加減する抽気調圧弁15とを備えた構成である。また、この蒸気タービン102には、発電機13が直結またはギアを介して接続されている。さらに、各種物理量を検出する検出器として、蒸気タービン110の回転速度を検出して速度信号S1を出力する速度検出器41と、蒸気タービン110の抽気圧力を検出して抽気圧力信号S2を出力する抽気圧検出器42と、発電機13の出力を定期的に検出して出力信号S4を出力する出力検出器45と、を備えている。
【0038】
また、蒸気タービンの運転制御装置としての電子ガバナ31は、蒸気タービン102の出力目標値並びに速度検出器41からの速度信号S1に基づき速度制御出力信号S11を生成する速度制御器32と、蒸気タービン102の抽気流量目標値並びに抽気圧検出器42からの抽気圧力信号S2に基づき抽気圧制御出力信号S12を生成する抽気圧制御器33と、速度制御出力信号S11及び抽気圧制御出力信号S12に応じて定まる運転点における蒸気加減弁14及び抽気調圧弁15のそれぞれの開度を導く抽気マップ34と、を備えた構成であり、抽気マップ34の変換によって蒸気加減弁14のGV操作信号S21並びに抽気調圧弁15のECV操作信号S22を生成している。
【0039】
ここで、抽気マップ34は、定期的に(例えば1[秒]間隔で)出力検出器45からの出力信号S4に基づき修正される。すなわち、現運転制御における蒸気タービン102の出力目標値並びに蒸気タービン102の出力実測値に基づき、抽気マップ34における速度制御出力信号のスケールを「出力実測値/出力目標値」倍に修正する。この修正により実機と想定(計画)との間にずれが修正されることとなる。
【0040】
次に、以上のような構成要素を備えた蒸気タービンの運転制御装置による運転制御方法について、図2及び図6を参照して説明する。ここで、図6は本実施形態における修正後の抽気マップを例示する説明図である。
【0041】
ここで、現運転制御が第1実施形態同様に図2に示す抽気マップ34に基づき行われているものとし、実機と想定(計画)との間にずれが生じて抽気マップ34を修正するケースを例示して説明する。すなわち、出力検出器45からの出力信号S4により、出力実測値=21×0.96=20.16≒20.2[MW]であったとする。
このとき、抽気マップ34における速度制御出力信号のスケールは「出力実測値/出力目標値≒0.96」倍に修正され、図6に示す如くなる。
【0042】
図6において、修正後の抽気マップ34は、速度制御出力信号[%]及びGV操作信号[%]の相対関係に対応して、抽気圧制御出力信号[%]について、0[%](:図中、線分O−A3)から100[%](:図中、線分B1−C32)まで、縦軸方向にスケールが刻まれ、またECV操作信号[%]について、0[%](:図中、線分O−B1)から100[%](:図中、線分A3−C31)まで、横軸方向にスケールが刻まれたものとなっている。
【0043】
したがって、図2の抽気マップ24上では運転点がR1であったが、この修正により、図6の修正後の抽気マップ34上では運転点はR4となり、該運転点R4における蒸気加減弁14の開度並びに抽気調圧弁15の開度が求められ、GV操作信号S21=88[%]、ECV操作信号S22=47[%]となる。
【0044】
すなわち、蒸気タービン102の出力目標値=24[MW]、抽気流量目標値=80[t/h]に応じて図2の抽気マップ34上での運転点R1による運転制御を行ったが、実機と想定との間のずれにより、実際には出力=20.2[MW]となっていた。ここで、図6の修正後の抽気マップ34上での運転点R4による運転制御を行うことにより、出力=21[MW]とすることが可能となる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の蒸気タービンの運転制御装置及び運転制御方法では、少なくとも高圧タービン11及び低圧タービン12を有し、高圧タービン11に供給する蒸気流量を加減する蒸気加減弁14と、高圧タービン11から低圧タービン12に供給する蒸気流量を加減する抽気調圧弁15とを備えた蒸気タービン102の運転制御装置及び運転制御方法であって、速度制御器31により蒸気タービン102の出力目標値及び速度検出値(S1)に基づき速度制御出力信号S11を生成し(速度制御ステップ)、抽気圧制御器33により蒸気タービン102の抽気流量目標値及び抽気圧力検出値(S2)に基づき抽気圧制御出力信号S12を生成し(抽気圧制御ステップ)、速度制御出力信号S11及び抽気圧制御出力信号S12に応じて定まる運転点における蒸気加減弁14及び抽気調圧弁15のそれぞれの開度を導く抽気マップ34を参照して、蒸気加減弁14及び抽気調圧弁15のそれぞれの操作信号(S21及びS22)を生成する(操作信号生成ステップ)際に、定期的に検出される蒸気タービン103の出力実測値(S4)に基づき、抽気マップ34における速度制御出力信号S11のスケールを「出力実測値/出力目標値」倍に修正した抽気マップ34を用いる。
【0046】
このように、定期的に検出される出力実測値(S4)に基づき抽気マップ34を修正し、修正後の抽気マップ34に基づいて蒸気加減弁14の開度並びに抽気調圧弁15の開度を調整するので、蒸気タービン102の運転制御に用いる抽気マップ34上の運転点と実際の運転点とのずれを修正して、想定する運転制御通りの運転を行うことができ、実機が本来備えている機械性能を確実に実現することができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、本発明はこれら実施形態およびその変形に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。例えば、第1実施形態と第2実施形態を組み合わせた構成とすることができる。すなわち。第1実施形態の構成(図1)に、発電機13の出力を定期的に検出して出力信号S4を出力する出力検出器45を追加して、抽気マップ24を抽気流量検出器43からの抽気流量信号S3に基づき修正すると共に、出力検出器45からの出力信号S4に基づき修正する。なお、修正の順序は不問である。このようにすれば、蒸気タービンの運転制御に用いる抽気マップ上の運転点と実際の運転点とのずれを修正して、想定する運転制御通りの運転を行うことができ、実機が本来備えている機械性能をより確実に実現することができる。
また、上述した各実施形態では、蒸気タービンの被駆動機として発電機を例に挙げて説明したが、被駆動機としては、圧縮機としてもよく、さらにはポンプやファンであってもよい。第2実施形態において発電機が被駆動機とされていない場合には、発電機の出力信号に代えてタービン出力軸に装備したトルクメータの出力信号を用いれば良い。
【符号の説明】
【0048】
11 高圧タービン
12 低圧タービン
13 発電機
14 蒸気加減弁
15 抽気調圧弁
21,31 電子ガバナ(蒸気タービンの運転制御装置)
22,32 速度制御器
23,33 抽気圧制御器
24,34 抽気マップ
41 速度検出器
42 抽気圧検出器
43 抽気流量検出器
101,102 蒸気タービン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも高圧タービン及び低圧タービンを有し、前記高圧タービンに供給する蒸気流量を加減する蒸気加減弁と、前記高圧タービンから前記低圧タービンに供給する蒸気流量を加減する抽気調圧弁とを備えた蒸気タービンの運転制御装置であって、
前記蒸気タービンの出力目標値並びに該蒸気タービンの速度検出値に基づき速度制御出力信号を生成する速度制御器と、
前記蒸気タービンの抽気流量目標値並びに該蒸気タービンの抽気圧力検出値に基づき抽気圧制御出力信号を生成する抽気圧制御器と、
前記速度制御出力信号及び前記抽気圧制御出力信号に応じて定まる運転点における前記蒸気加減弁及び前記抽気調圧弁のそれぞれの開度を導く抽気マップと、を有し、
定期的に検出される前記蒸気タービンの抽気流量実測値に基づき、前記抽気マップにおける前記抽気圧制御出力信号のスケールを「抽気流量目標値/抽気流量実測値」倍に修正し、該修正後の抽気マップを参照して、前記蒸気加減弁及び前記抽気調圧弁のそれぞれの操作信号を生成することを特徴とする蒸気タービンの運転制御装置。
【請求項2】
定期的に検出される前記蒸気タービンの出力実測値に基づき、前記抽気マップにおける前記速度制御出力信号のスケールを「出力実測値/出力目標値」倍に修正し、該修正後の抽気マップを参照して、前記蒸気加減弁及び前記抽気調圧弁のそれぞれの操作信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービンの運転制御装置。
【請求項3】
少なくとも高圧タービン及び低圧タービンを有し、前記高圧タービンに供給する蒸気流量を加減する蒸気加減弁と、前記高圧タービンから前記低圧タービンに供給する蒸気流量を加減する抽気調圧弁とを備えた蒸気タービンの運転制御装置であって、
前記蒸気タービンの出力目標値並びに該蒸気タービンの速度検出値に基づき速度制御出力信号を生成する速度制御器と、
前記蒸気タービンの抽気流量目標値並びに該蒸気タービンの抽気圧力検出値に基づき抽気圧制御出力信号を生成する抽気圧制御器と、
前記速度制御出力信号及び前記抽気圧制御出力信号に応じて定まる運転点における前記蒸気加減弁及び前記抽気調圧弁のそれぞれの開度を導く抽気マップと、を有し、
定期的に検出される前記蒸気タービンの出力実測値に基づき、前記抽気マップにおける前記速度制御出力信号のスケールを「出力実測値/出力目標値」倍に修正し、該修正後の抽気マップを参照して、前記蒸気加減弁及び前記抽気調圧弁のそれぞれの操作信号を生成することを特徴とする蒸気タービンの運転制御装置。
【請求項4】
少なくとも高圧タービン及び低圧タービンを有し、前記高圧タービンに供給する蒸気流量を加減する蒸気加減弁と、前記高圧タービンから前記低圧タービンに供給する蒸気流量を加減する抽気調圧弁とを備えた蒸気タービンの運転制御方法であって、
前記蒸気タービンの出力目標値並びに該蒸気タービンの速度検出値に基づき速度制御出力信号を生成する速度制御ステップと、
前記蒸気タービンの抽気流量目標値並びに該蒸気タービンの抽気圧力検出値に基づき抽気圧制御出力信号を生成する抽気圧制御ステップと、
前記速度制御出力信号及び前記抽気圧制御出力信号に応じて定まる運転点における前記蒸気加減弁及び前記抽気調圧弁のそれぞれの開度を導く抽気マップを参照して、該蒸気加減弁及び該抽気調圧弁のそれぞれの操作信号を生成する操作信号生成ステップと、を有し、
定期的に検出される前記蒸気タービンの抽気流量実測値に基づき、前記抽気マップにおける前記抽気圧制御出力信号のスケールを「抽気流量目標値/抽気流量実測値」倍に修正することを特徴とする蒸気タービンの運転制御方法。
【請求項5】
定期的に検出される前記蒸気タービンの出力実測値に基づき、前記抽気マップにおける前記速度制御出力信号のスケールを「出力実測値/出力目標値」倍に修正することを特徴とする請求項4に記載の蒸気タービンの運転制御方法。
【請求項6】
少なくとも高圧タービン及び低圧タービンを有し、前記高圧タービンに供給する蒸気流量を加減する蒸気加減弁と、前記高圧タービンから前記低圧タービンに供給する蒸気流量を加減する抽気調圧弁とを備えた蒸気タービンの運転制御方法であって、
前記蒸気タービンの出力目標値並びに該蒸気タービンの速度検出値に基づき速度制御出力信号を生成する速度制御ステップと、
前記蒸気タービンの抽気流量目標値並びに該蒸気タービンの抽気圧力検出値に基づき抽気圧制御出力信号を生成する抽気圧制御ステップと、
前記速度制御出力信号及び前記抽気圧制御出力信号に応じて定まる運転点における前記蒸気加減弁及び前記抽気調圧弁のそれぞれの開度を導く抽気マップを参照して、該蒸気加減弁及び該抽気調圧弁のそれぞれの操作信号を生成する操作信号生成ステップと、を有し、
定期的に検出される前記蒸気タービンの出力実測値に基づき、前記抽気マップにおける前記速度制御出力信号のスケールを「出力実測値/出力目標値」倍に修正することを特徴とする蒸気タービンの運転制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−177340(P2012−177340A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40724(P2011−40724)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(310010564)三菱重工コンプレッサ株式会社 (45)
【Fターム(参考)】