説明

蒸気タービンをコールドスタートさせるための方法

【課題】 蒸気タービンのコールドスタート時の予加熱により生じる蒸気タービン構成要素内の熱応力の問題を緩和するための手段を提供することである。
【解決手段】電磁気コイル(18)を備えていること、
ACを電磁気コイル(18)に印加した際に、電磁気コイル(18)が蒸気タービン構成要素(10)内で渦電流を形成できるように、蒸気タービン構成要素(10)に対してコイル(18)を設けること、そして
渦電流を用いて蒸気タービン構成要素(10)を加熱するために、電磁気コイル(18)にACを供給することにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービンをコールドスタートさせるための方法に関し、特にコールドスタート方法の予加熱工程に関する。
【背景技術】
【0002】
超超臨界圧発電所における作動中の蒸気弁の予加熱は、弁室の熱応力を制限するためには必須である。
【0003】
典型的コールドスタートの場合、タービンの始動時における弁ハウジング温度と飽和温度の間の差は280℃を超えているのが一般的である。この大きな温度差がコールドスタートを規定する。予加熱が無い状態で、コールドスタート時に生蒸気を弁に供給することにより、弁ハウジングの内側表面の凝縮加熱は速くなり、結果として熱応力は高くなる。このような高い熱応力は弁の寿命を著しく短くする。この問題は弁を予加熱することにより解決され、従ってコールドスタート開始時の飽和蒸気温度と金属温度の差は最小になる。
【0004】
予加熱の方法は、電気ラジエータ/ブランケットあるいは構成要素の外表面に加えられる凝縮物にも関係している。これらの方法は弁の表面にだけ熱を加える長所を有しており、従って予加熱温度勾配は弁全体にわたっている。このような温度勾配により生じる予加熱時の過度の応力を避けるために、予加熱率は制限されるのが一般的である。このために、熱上昇率は蒸気タービンのコールドスタートにおける時間制限要因になるおそれがある。
【0005】
従って、熱応力の有害な効果を最小にする一方で、できるだけ時間を短くするように蒸気タービンのコールドスタート時に過度の応力に影響を受けやすい弁あるいは構成要素を予加熱する手段を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、蒸気タービンのコールドスタート時の予加熱により生じる蒸気タービン構成要素内の熱応力の問題を緩和するための手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、独立請求項の発明を用いて解決される。更に、有利な実施例は従属請求項に割当てられる。
【0008】
開示内容は、蒸気タービン構成要素内部で作用する渦電流を用いた、蒸気タービン構成要素の加熱の原理に基づいている。内部加熱により、特定のエネルギー入力の場合、内部温度勾配は小さくなり、これによりエネルギー入力を増大させ、かつ臨界熱応力レベル未満に維持することができる。結果として予加熱時間は短くなる。本発明の別の長所は、コイルが蒸気タービン構成要素と直接接触せず、従って蒸気タービン構成要素と同じ程度には加熱されないことである。これにより蒸気タービン構成要素を保護している熱絶縁体の先端にコイルを設けることができる。このことは改善された個々の安全性のための潜在能力を提供するだけでなく、取付けも簡易化する。
【0009】
課題において、加熱処理は蒸気タービン弁に適用される。その方法は特に複雑な形状、および関連して肉厚の壁に関る弁に適している。これらの要因により、弁は不均一な温度分布に対して特に影響を受け易くなる。弁を内部構造において加熱することにより、複雑な形状の影響の一部は弱められ、従って蒸気タービン構成要素はおそらくさらに均等に予加熱される。従って高い加熱率を達成することができる。この方法はおそらくその形状のために特に熱応力に影響を受けやすい管継ぎ手のような他の複雑な蒸気タービン構成要素に適用されると有利である。
【0010】
本発明の開示内容の他の課題と長所は、実例により本発明の好適な実施例を説明する添付の図に関連して理解される以下の記載から明らかになる。
【0011】
実例を用いて、本発明の開示内容の実施例を添付の図に基づいて以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】好適な加熱装置を備えた構成要素の斜視図である。
【図2】蒸気タービンの蒸気弁に適用される図1の加熱装置のブロックダイヤグラムである。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0013】
本発明の開示の好適な実施例を図に関して説明する。その際、参照符号は類似の部材に対しては通して使用する。以下の記載では、説明のために数多くの具体的な詳細事項が開示内容の完全な理解を与えるために明らかにされている。しかしながら、本発明の開示内容はこれらの特定の詳細内容以外に実施されてもよく、かつここで開示された好適実施例に限定されない。
【0014】
図1には加熱装置を備えた蒸気タービン構成要素10の好適実施例が示してある。加熱装置の目的は、必要とされる温度まで構成要素10をもっていくために、例えば蒸気タービン20をスタートもしくは再スタートさせるために蒸気タービン構成要素10を予加熱することであり、同時に好ましいレベルまで蒸気タービン構成要素10内の熱応力を制限している。
【0015】
蒸気タービン構成要素10は好適実施例では導電材料でできている。これにより蒸気タービン構成要素10は渦電流熱に対して伝導性になる。
【0016】
好適実施例において、蒸気タービン構成要素10を加熱するための加熱装置は、電磁コイル18とAC電源12を簡易な形態で備えている。渦電流装置はきわめて予想可能な熱を供給するが、好適実施例は制御系の一部としての制御装置14と任意で蒸気タービン構成要素の温度測定装置を備えている。
【0017】
電磁コイル18は蒸気タービン構成要素10内で渦電流を誘導するために構成されかつ配置されている。好適実施例において、このことは図1に示したように蒸気タービン構成要素10の外表面の周りに巻かれている電磁コイル18により達せられ、電磁コイルは蒸気タービン構成要素と接触していない。
【0018】
AC電源12は図1に示した好適実施例において、電磁コイル18と電気的に接続している。好適実施例において、AC電源12は所定のもしくは規定された割合および深さで
蒸気タービン構成要素10を加熱するのに適した所定の電流および周波数で電磁コイル内のACを変える。
【0019】
図1に示した好適実施例において、ACの変化は制御装置14により行なわれる。他の
好適実施例において、制御装置14は蒸気タービン構成要素10の温度を測定するための温度測定装置16を備えている。これにより加熱率を良好に制御できるようになり、従って最大許容熱応力限界への問題解決の取組みがより綿密にできるようになる。
【0020】
蒸気タービンの好適なコールドスタート方法は、図2に示したように蒸気タービン20と電磁コイル18を備えることである。電磁コイル18は渦電流により蒸気タービン構成要素10の予加熱ができるように、蒸気タービン構成要素10,10aに対して相対的に設けられている。蒸気タービン構成要素10は弁10aであってもよく、この弁は図2に示したように、蒸気タービン20、その一部、配管部材、あるいは(図示していない)蒸気タービンのケーシングの部材内への動力用蒸気を制御するために構成されかつ歯位置された蒸気弁10aを含む。
【0021】
好適実施例において、加熱はACを変えることにより制御されている。別の好適実施例において、この加熱は蒸気タービン構成要素10の温度測定のような別の測定される変数に対応して行なわれる。
【0022】
開示内容はこの文章においては何が最も実際的な好適実施例であるかにおいて示してありかつ記載されているが、本発明の開示内容は別の具体的な形態で例示されていてもよい。したがって、本発明で開示された実施例は、実例となりかつ限定されないように全ての点で考慮されている。開示内容の範囲は、上記の記載と意味および範囲内にある変形の全てにある添付の請求の範囲に示してあり、それについて同等のものは前述の添付の請求の範囲内に包括されるようになっている。
【符号の説明】
【0023】
10 構成要素
10a 蒸気弁
12 AC電源
14 制御装置
16 温度測定装置
18 コイル
20 蒸気タービン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービン構成要素(10)を予加熱する工程を備えた蒸気タービンをコールドスタートさせるための方法であって、
電磁コイル(18)を備えていること、
ACを電磁コイル(18)に印加した際に、電磁コイル(18)が蒸気タービン構成要素(10)内で渦電流を形成できるように、蒸気タービン構成要素(10)に対してコイル(18)を設けること、そして
渦電流を用いて蒸気タービン構成要素(10)を加熱するために、電磁コイル(18)にACを供給することを特徴とする方法。
【請求項2】
蒸気タービン構成要素(10)が蒸気弁(10a)を備えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
蒸気弁(10a)が蒸気タービン(20)内へ動力用蒸気が流れるのを制御するために構成されかつ歯位置された蒸気弁であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
AC電源と周波数を変えることにより加熱している蒸気タービン構成要素(10)を制御している工程を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
ACが蒸気タービン構成要素(10)の温度の測定に基づいて変えられることを特徴とする請求項4に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−236905(P2011−236905A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−102693(P2011−102693)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】