説明

蒸気タービンプラントおよびその運転方法

【課題】タービンバイパスシステムを備える蒸気タービンの起動を安定的に制御することができる蒸気タービンプラントおよびその運転方法を提供する。
【解決手段】実施形態の蒸気タービンプラント10は、過熱器21と、再熱器22と、高圧タービン30と、中圧タービン40と、低圧タービン50と、復水器110と、主蒸気管70から分岐し、高圧タービンバイパス弁95を備えるバイパス配管74と、高温再熱蒸気管72から分岐し復水器110に接続された、低圧タービンバイパス弁97を備えるバイパス配管75と、低温再熱蒸気管71から分岐し復水器110に接続された、ベンチレータ弁99を備える分岐管76とを備える。タービン起動の際、ベンチレータ弁99、高圧タービンバイパス弁95および低圧タービンバイパス弁97を全開とし、高圧タービン30および中圧タービン40に同時に蒸気を通気する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蒸気タービンプラントおよびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、火力発電所に使用される蒸気タービンプラントにおいては、タービンバイパスシステムが採用されることが多い。このタービンバイパスシステムの設置により、蒸気タービンが低負荷域および停止中のときでも、ボイラからの発生蒸気量を低減させる必要がない。そのため、ボイラの燃焼安定化を図ることができる。特に、毎日の起動停止運用機能を改善するための一つの対応策としては有効なシステムである。
【0003】
タービンバイパスシステムを設けた蒸気タービンプラントは、中間負荷火力プラントが増加するに伴い増加している。このようなタービンバイパスシステムは、高圧および低圧の二段のバイパス系から構成されている。
【0004】
図6および図7は、従来のタービンバイパスシステムを備えた蒸気タービンプラントの系統図である。
【0005】
図6に示された蒸気タービンプラントの系統では、高圧タービンと中圧タービンに同時に通気する起動法を採用している。図7に示された蒸気タービンプラントの系統では、中圧タービンにのみに通気する起動法を採用している。両者の系統上の相違点は、高圧タービンの排気室から復水器へのベンチレータ弁が設置されているかどうかである。
【0006】
図6に示すように、ボイラ410の過熱器411で発生した蒸気は、主蒸気止め弁420、蒸気加減弁421を経て高圧タービン500に流入する。高圧タービン500から排気された蒸気は、逆止弁422を通り、ボイラ410の再熱器412に導かれ再び加熱される。
【0007】
再熱器412を通った蒸気は、再熱蒸気止め弁423、インターセプト弁424を経て中圧タービン510に導入される。中圧タービン510から排気された蒸気は、低圧タービン520に導かれる。低圧タービン520の軸端には発電機530が連結され、発電機530は、低圧タービン520によって駆動される。
【0008】
低圧タービン520より排気された蒸気は、復水器540に導かれ、凝縮して復水となる。この復水は、復水ポンプ550によって、低圧給水加熱器561、脱気器562に導かれる。そして、脱気器562を通過した給水は、給水ポンプ551によって昇圧され、高圧給水加熱器563を通り過熱器411に再び流入する。
【0009】
過熱器411と主蒸気止め弁420との配管の途中から分岐された配管には、高圧バイパス弁425および減温装置570が配設されている。この配管は、逆止弁422とボイラの途中に接続されている。また、減温装置570への冷却水を供給調整するための冷却水調整弁426が設置されている。
【0010】
再熱器412と再熱蒸気止め弁423との配管の途中から分岐された配管には、低圧バイパス弁427および減温装置571が配設されている。また、減温装置571への冷却水を供給調整するための冷却水調整弁428が設置されている。
【0011】
以上の図6に示された系統に比べ、図7に示された系統においては、高圧タービン500と逆止弁422との間の配管から分岐し、ベンチレータ弁580を介在して復水器540に接続される配管が設けられている。これにより、タービン起動時に高圧タービン500の内部を真空とするように動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭54−77803号公報
【特許文献2】特開昭61−65003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来の、例えば、図6に示された系統においては、高圧タービン500、中圧タービン510に同時に通気している。しかしながら、逆止弁422が高圧バイパス弁425の出口圧力により強制的に全閉状態となるときに、主蒸気止め弁420による全周噴射起動によって微開し、高圧タービン500に通気した場合には、主蒸気止め弁420の絞り損失により高圧タービン500の初段ノズルの前圧力が低下する。そのため、高圧タービン500の動翼での有効な仕事が発生しない。
【0014】
さらに、主蒸気止め弁420と同時にインターセプト弁424を開弁して、低圧バイパス弁427によって圧力制御された蒸気が中圧タービン510に通気され、タービン回転数が上昇される。そのため、翼長が長くなる高圧タービン500の排気部近傍では、風損が発生する。これによって、排気室の温度が急上昇するとともに、この温度変化により高圧タービン500のタービンロータの表面の熱応力が増加し、過度の寿命消費が発生する。
【0015】
これを解決するために、中圧タービン510に流入する蒸気量の数倍の蒸気を高圧タービン500に流入させて、高圧タービン500の内部のクーリングが行なわれるが、物理的および起動蒸気条件的に十分な対策ではない。
【0016】
一方、従来の、例えば、図7に示された系統においては、起動前にベンチレータ弁580を開弁して、高圧タービン500の内部を復水器540と直結して真空とする。そして、蒸気加減弁421を全閉状態とし、インターセプト弁424によって中圧タービン510にのみ通気して、タービン回転数を上昇させる。
【0017】
しかしながら、高圧タービン500の排気部は、真空となっている間は、風損による温度上昇はないが、インターセプト弁424が全開となった後は、高圧タービン500にて負荷を得るため、蒸気加減弁421を急速開弁するとともに、ベンチレータ弁580 を閉止する。すなわち、この蒸気加減弁421を急速開弁した時に、高圧タービン500の初段より下流の金属部品に、流入蒸気温度との温度差(温度変化)が生じ、大きな熱応力が発生する。
【0018】
これを解決するために、蒸気加減弁421を微少に開弁して、ウォーミング蒸気を作用させている。しかしながら、例えば、蒸気加減弁421がシェルマウント型のように、全数の蒸気加減弁421を同時に微少に開弁できない場合には、部分的なウォーミングとなり、結果的に高圧タービン500のノズルボックスに熱応力が発生する。そのため、この解決策も十分な対策ではない。
【0019】
また、蒸気加減弁421の開弁動作とベンチレータ弁580の閉弁動作のタイミングが不良な場合には、弁前後の圧力差により、逆止弁422にチャタリングが発生し、破損することがある。また、蒸気加減弁421が所定の弁開度に開弁する以前に、ベンチレータ弁580が全閉となった場合には、高圧タービン500の排気室における風損によって温度が上昇する。
【0020】
本発明が解決しようとする課題は、タービンバイパスシステムを備える蒸気タービンの起動を安定的に制御することができる蒸気タービンプラントおよびその運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
実施形態の蒸気タービンプラントは、過熱器と、前記過熱器に、主蒸気管を介して接続された高圧タービンと、前記高圧タービンに、逆止弁を備えた低温再熱蒸気管を介して接続された再熱器と、前記再熱器に、高温再熱蒸気管を介して接続された中圧タービンと、前記中圧タービンから排気された蒸気が導入される低圧タービンと、前記低圧タービンから排気された蒸気が導入される復水器と、前記主蒸気管から分岐し、前記高圧タービンをバイパスして前記逆止弁の下流側で前記低温再熱蒸気管に接続された、高圧タービンバイパス弁を備える高圧タービンバイパス配管と、前記高温再熱蒸気管から分岐し、前記中圧タービンおよび前記低圧タービンをバイパスして前記復水器に接続された、低圧タービンバイパス弁を備える低圧タービンバイパス配管と、前記逆止弁よりも上流側における前記低温再熱蒸気管から分岐して前記復水器に接続された、ベンチレータ弁を備える分岐管とを備える。
【0022】
そして、タービン起動の際、前記ベンチレータ弁、前記高圧タービンバイパス弁および前記低圧タービンバイパス弁を全開とし、前記高圧タービンおよび前記中圧タービンに同時に蒸気を通気する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施の形態の蒸気タービンプラントの系統図である。
【図2】第1の実施の形態の蒸気タービンプラントにおける蒸気タービン起動時の、タービン回転数、負荷および各弁開度の関係を示した図である。
【図3】第2の実施の形態の蒸気タービンプラントの系統図である。
【図4】第2の実施の形態の蒸気タービンプラントにおける蒸気タービン起動時の、タービン回転数、負荷および各弁開度の関係を示した図である。
【図5】第3の実施の形態の蒸気タービンプラントにおける蒸気タービン起動時の、タービン回転数、負荷および各弁開度の関係を示した図である。
【図6】従来のタービンバイパスシステムを備えた蒸気タービンプラントの系統図である。
【図7】従来のタービンバイパスシステムを備えた蒸気タービンプラントの系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0025】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の蒸気タービンプラント10の系統図である。図1に示すように、ボイラ20の過熱器21で発生した主蒸気は、主蒸気管70に備えられた、主蒸気止め弁90、蒸気加減弁91を経て高圧タービン30に流入する。高圧タービン30から排気された蒸気は、低温再熱蒸気管71に備えられた逆止弁92を通り、ボイラ20の再熱器22に導かれ再び加熱される。
【0026】
再熱器22において加熱された再熱蒸気は、高温再熱蒸気管72に備えられた、再熱蒸気止め弁93、インターセプト弁94を経て中圧タービン40に流入する。中圧タービン40から排気された蒸気は、クロスオーバ管73を通り低圧タービン50に流入する。低圧タービン50の軸端には発電機60が連結され、発電機60は、低圧タービン50によって駆動される。
【0027】
低圧タービン50より排気された蒸気は、復水器110に導かれ、凝縮して復水となる。この復水は、復水ポンプ120によって、低圧給水加熱器121、脱気器122に導かれる。そして、脱気器122を通過した給水は、給水ポンプ123によって昇圧され、高圧給水加熱器124を通り過熱器21に再び流入する。
【0028】
過熱器21と高圧タービン30との間において、主蒸気管70から分岐されたバイパス配管74が設けられている。この高圧タービン30をバイパスするバイパス配管74は、高圧タービンバイパス配管として機能し、低温再熱蒸気管71に連結されている。主蒸気管70における分岐部は、主蒸気止め弁90、蒸気加減弁91よりも上流側に位置している。なお、バイパス配管74が、低温再熱蒸気管71に連結する連結部は、逆止弁92の下流側(再熱器22側)である。
【0029】
また、バイパス配管74には、高圧タービンバイパス弁95および減温装置130が備えられている。減温装置130への冷却水を供給する配管には、供給量を調整するための冷却水調整弁96が備えられている。
【0030】
再熱器22と中圧タービン40との間において、高温再熱蒸気管72から分岐されたバイパス配管75が設けられている。中圧タービン40および低圧タービン50をバイパスするバイパス配管75は、低圧タービンバイパス配管として機能し、復水器110に連結されている。高温再熱蒸気管72における分岐部は、再熱蒸気止め弁93、インターセプト弁94よりも上流側に位置している。
【0031】
また、バイパス配管75には、低圧タービンバイパス弁97および減温装置131が備えられている。減温装置131への冷却水を供給する配管には、供給量を調整するための冷却水調整弁98が備えられている。
【0032】
高圧タービン30と再熱器22との間において、低温再熱蒸気管71から分岐された分岐管76が設けられている。この分岐管76は、復水器110に連結されている。なお、分岐管76が低温再熱蒸気管71から分岐する分岐部は、逆止弁92の上流側(高圧タービン30側)である。また、分岐管76には、ベンチレータ弁99が備えられている。
【0033】
また、蒸気タービンプラント10には、上記した各弁などを制御する制御装置(図示しない)が備えられている。制御装置は、演算処理装置、入出力処理装置、記憶装置などを備えている。制御装置は、上記した各弁、蒸気タービンプラント10の運転状態を検知する検知装置などに電気的に接続されている。
【0034】
検知装置としては、例えば、蒸気タービンの構成部品(例えば、ノズルボックス、主蒸気止め弁90、蒸気加減弁91など)などの温度を検知する装置、各蒸気弁の弁開度を検知する装置、タービンロータの回転数を検知するための装置、負荷を検知するための装置、蒸気の流量を検知するための装置、蒸気の圧力を検知するための装置、電力系統併入時における系統周波数や電圧および位相を検知するための装置などが挙げられる。また、記憶装置には、例えば、各設定条件などに係るデータベースが記憶されている。
【0035】
制御装置は、各検知装置からの検知信号や記憶装置に記憶されたデータベースなどに基づいて、上記した各弁などの開度を調整する。
【0036】
次に、蒸気タービンプラント10の運転方法について説明する。
【0037】
図2は、第1の実施の形態の蒸気タービンプラント10における蒸気タービン起動時の、タービン回転数、負荷および各弁開度の関係を示した図である。図2において、横軸に時間、縦軸の、(a)にはタービン回転数および負荷、(b)には主蒸気止め弁90、蒸気加減弁91およびインターセプト弁94の開度、(c)にはベンチレータ弁99および逆止弁92の開度、(d)には高圧タービンバイパス弁95の開度、(e)には低圧タービンバイパス弁97の開度を示している。
【0038】
なお、第1の実施の形態の蒸気タービンプラント10における蒸気タービン起動時において、高圧タービン30と中圧タービン40とに同時に蒸気を通気している。蒸気タービンの昇速過程では、予め設定された目標速度を目標にタービン回転数を上昇させる。また、以下において、各弁は、前述した制御装置によって制御される。
【0039】
以前では、図示しないが蒸気タービンのリセット動作において、再熱蒸気止め弁93は全開とさせる。また、高圧タービンバイパス弁95および低圧タービンバイパス弁97は、全開状態においてタービンバイパス運転が開始される。
【0040】
において、主蒸気止め弁90に内蔵された副弁(子弁)は、全閉状態から徐々に開かれ、高圧タービンバイパス弁95は、全開状態から徐々に閉じられる。そして、主蒸気が高圧タービン30に流入して、高圧タービン30が起動する。
【0041】
また、tにおいて、インターセプト弁94は、全閉状態から徐々に開かれ、低圧タービンバイパス弁97は、全開状態から徐々に閉じられる。そして、再熱蒸気が中圧タービン40に流入し、主蒸気止め弁90の副弁およびインターセプト弁94からの蒸気の流入によって、タービン回転数を上昇させる。
【0042】
また、tにおいて、主蒸気止め弁90の副弁による全周噴射運転に対応するため、蒸気加減弁91は全開状態となっている。なお、逆止弁92は全閉状態、ベンチレータ弁99は全開状態となっている。そして、t〜tにおいて、主蒸気止め弁90およびインターセプト弁94を徐々に開き、設定された目標回転数までタービン回転数を上昇させる。ここで、制御装置は、タービン回転数に係る情報に基づいて、設定した目標回転数に達するまで、t〜t間における制御を行う。
【0043】
なお、インターセプト弁94においては、主弁が全閉状態であっても、主弁に形成された孔から蒸気が下流側に流出する構成のものがある。そのため、インターセプト弁94においても、副弁を備える構成として、完全に蒸気の流出を遮断できる構成としてもよい。これにより、再熱蒸気止め弁93が全開状態であっても、蒸気流量の的確な調整が可能となり、制御性が向上する。
【0044】
また、再熱蒸気止め弁93に副弁を備える構成としてもよい。この場合には、インターセプト弁94に副弁を備えなくてもよい。そして、インターセプト弁94を全開状態として、再熱蒸気止め弁93で蒸気流量の調整を行ってもよいし、インターセプト弁94および再熱蒸気止め弁93の双方で蒸気流量の調整を行ってもよい。これにより、蒸気流量の的確な調整が可能となり、制御性が向上する。
【0045】
なお、上記したインターセプト弁94や再熱蒸気止め弁93に副弁を備える構成は、以下に示す実施の形態においても適用することができる。
【0046】
〜t間では、設定した目標回転数に維持して、ヒートソーク運転として蒸気タービン本体の暖機を行う。この際、制御装置は、設定した目標回転数に達したことを検知したときに、主蒸気止め弁90の副弁およびインターセプト弁94の開度を一定に維持し、タービン回転数を一定に維持する。また、蒸気加減弁91、高圧タービンバイパス弁95、低圧タービンバイパス弁97の開度も一定に維持される。ここで、制御装置は、タービン回転数に係る情報に基づいて、設定した目標回転数に達したと判定した場合、t〜t間における制御を行う。
【0047】
なお、制御装置は、例えば、蒸気タービンの構成部品(例えば、ノズルボックス、主蒸気止め弁90、蒸気加減弁91など)などの温度に係る情報に基づいて、蒸気タービンの構成部品の温度が所定の温度に達したと判定した場合、ヒートソーク運転の完了、すなわち暖機運転の完了と判断する。
【0048】
ヒートソーク運転の完了後、t〜t間では、主蒸気止め弁90およびインターセプト弁94を徐々に開き、予め設定された定格回転数までタービン回転数を上昇させる。各蒸気タービンに流入する蒸気量を増加するため、高圧タービンバイパス弁95および低圧タービンバイパス弁97を徐々に閉じ、これらのバイパス弁の上流側の圧力を調整する。ここで、制御装置は、例えば、タービン回転数に係る情報に基づいて、タービン回転数が定格回転数に上昇するまで、t〜t間における制御を行う。
【0049】
定格回転数までタービン回転数を上昇した後、t〜t間では、インターセプト弁94の開度を一定に維持し、主蒸気止め弁90の副弁の開度を微調整して揃速運転を行い、電力系統併入操作を行う。ここで、制御装置は、例えば、タービン回転数に係る情報に基づいて、タービン回転数が定格回転数に上昇したと判定した場合、t〜t間における制御を行う。また、電力系統併入操作において、制御装置は、例えば、系統周波数を参照しながら、主蒸気止め弁90を調整し、タービン回転数の微調整を行う。
【0050】
この際、蒸気加減弁91、高圧タービンバイパス弁95、低圧タービンバイパス弁97の開度は一定に維持される。
【0051】
電力系統併入後、t〜t間において、主蒸気止め弁90の副弁およびインターセプト弁94の開度を徐々に開き、初負荷まで負荷運転を行う。各蒸気タービンに流入する蒸気を増加するため、高圧タービンバイパス弁95および低圧タービンバイパス弁97を徐々に閉じ、これらのバイパス弁の上流側の圧力を調整する。ここで、制御装置は、例えば、電力系統と発電機の周波数、電圧、位相などの情報に基づいて、電力系統併入が完了したと判定した場合に、t〜t間における制御を行う。
【0052】
初負荷に到達後、t〜t間において、負荷一定のまま、主蒸気止め弁90の副弁による全周噴射運転から、蒸気加減弁91による部分噴射運転に切り換える。この期間は、インターセプト弁94、高圧タービンバイパス弁95、低圧タービンバイパス弁97、ベンチレータ弁99の開度は一定に維持される。
【0053】
ここで、t〜t間の動作について詳しく説明する。
【0054】
このt〜t間では、主蒸気止め弁90の副弁の開度を一定に維持したまま、全開となっていた蒸気加減弁91を徐々に閉じる。tの時点では、高圧タービン30に流入する蒸気は、主蒸気止め弁90の副弁よって制御されており、tの時点では、蒸気加減弁91は、主蒸気止め弁90の副弁の流量より多く流せる弁開度に達している。
【0055】
〜t間は、蒸気加減弁91を閉じながら、主蒸気止め弁90の副弁を徐々に開く。この期間で、高圧タービン30に流入する蒸気を調整する弁は、主蒸気止め弁90の副弁から蒸気加減弁91に切り替わる。
【0056】
そのため、tにおける主蒸気止め弁90の副弁からの流量と、tにおける蒸気加減弁91からの流量は、同一になるように設定され、t以降の高圧タービン30に流入する蒸気流量は、蒸気加減弁91により調整される。t〜t間は、主蒸気止め弁90の副弁が全開となり、続けて主蒸気止め弁90そのものが全開となって、全周噴射運転から部分噴射運転への切り換え操作を完了する。
【0057】
このように、制御装置は、例えば、負荷に係る情報に基づいて、予め設定された初負荷に達したと判定した場合、t〜t間における制御を行う。t〜t間では、制御装置は、負荷およびタービン回転数を一定に維持するために、例えば、負荷に係る情報に基づいて、主蒸気止め弁90の副弁、蒸気加減弁91、インターセプト弁94、高圧タービンバイパス弁95および低圧タービンバイパス弁97などを制御する。
【0058】
〜t11間では、負荷の降下がないように、蒸気加減弁91の開動作に伴い、ベンチレータ弁99を閉動作させるような連動関係を持たせて協調制御を行い、最終的にベンチレータ弁99を全閉状態とする。ベンチレータ弁99と蒸気加減弁91との弁開度を連動させて制御している間、蒸気加減弁91とインターセプト弁94を制御することで回転数を制御し、タービン負荷を上昇させる。この負荷上昇に伴い、高圧タービンバイパス弁95および低圧タービンバイパス弁97を徐々に閉じる。
【0059】
ここで、ベンチレータ弁99が全閉状態に近づくことにより、高圧タービン30の排気室の圧力、すなわち逆止弁92の上流側(高圧タービン30側)の圧力が上昇する。tでは、この逆止弁92の上流側の圧力と逆止弁92の下流側の圧力(換言すれば、再熱器22の入口圧力)とがバランスした状態から、逆止弁92の上流側の圧力の方が高くなる状態となる。そのため、逆止弁92が一気に全開まで開弁する。逆止弁92が全開すると、ベンチレータ弁99がほぼ閉状態となっているため、高圧タービン30の排気室を通過した蒸気は、その全量が再熱器22へ流れる。なお、t10では、ベンチレータ弁99は全閉状態となる。
【0060】
また、t〜t11間では、蒸気加減弁91とインターセプト弁94を制御して、タービン負荷を上昇させる。なお、t10において、ベンチレータ弁99が全閉状態となるに伴い、高圧タービン30での膨張熱落差が減少するため、若干高圧タービン30の動翼翼列における有効な仕事が減る。しかしながら、負荷分担率の大きい中圧タービン40および低圧タービン50における出力が支配的なので負荷特性に影響は及ぼさない。
【0061】
ここで、制御装置は、例えば、主蒸気止め弁90が全開状態となったことを検知し、主蒸気止め弁90による全周噴射運転が終了したと判定した場合、tからの制御を行う。
【0062】
11〜t12間では、負荷上昇に伴い蒸気加減弁91とインターセプト弁94を徐々に開いていくが、t11におけるインターセプト弁94の弁開度はすでに高い状態にあり、弁開度に対する流量変化が少ない。そのため、インターセプト弁94の開弁特性の傾斜を大きくしてt12で全開となるようにしている。
【0063】
また、t11〜t12間では、インターセプト弁94の上流側の圧力が低圧タービンバイパス弁97の圧力制御の設定値まで上昇するため、インターセプト弁94の開弁動作に伴い、低圧タービンバイパス弁97がt12で全閉状態となり圧力制御が終了する。この制御と同時に、インターセプト弁94が全開状態となっても、インターセプト弁94の上流側の圧力は、ほとんど変動しないため、負荷特性に影響は及ぼさない。
【0064】
ここで、制御装置は、負荷上昇要求に基づいて、t11〜t12間における制御を行う。
【0065】
12〜t13間では、負荷上昇に伴い、t12以降の負荷制御は、全て蒸気加減弁91のみで行われる。そして、t13において、蒸気加減弁91が全開状態となり、定格負荷に到達する。
【0066】
なお、t12〜t13間の途中において、高圧タービンバイパス弁95の容量の制約から、蒸気加減弁91の開弁動作に伴い、やがて高圧タービンバイパス弁95が全閉状態となり圧力制御が終了する。
【0067】
ここで、制御装置は、低圧タービンバイパス弁97が全閉状態となり、インターセプト弁94が全開状態となったことを検知した場合、t12〜t13間における制御を行う。
【0068】
次に、タービン起動時や負荷運転中において、何らかの要因で蒸気加減弁91が全閉状態となった場合の運転動作について説明する。
【0069】
この場合、高圧タービン30への蒸気の供給が停止され、逆止弁92が全閉状態となる。この状態が続くと、風損により高圧タービン30の排気室の温度が上昇し、危険な状態となる。
【0070】
そこで、タービン起動時や負荷運転中において、何らかの要因で蒸気加減弁91が全閉状態となり、さらに逆止弁92が全閉状態となった場合、制御装置は、ベンチレータ弁99を開く制御を行う。これによって、高圧タービン30の排気室が復水器110と連通し、真空状態となるため、風損による高圧タービン30の排気室の温度の上昇を抑制できる。
【0071】
なお、主蒸気止め弁90において、副弁による全周噴射運転を行う一例を示したが、これに限られるものではない。例えば、複数の蒸気加減弁91のそれぞれに、制御装置によって制御される油筒を備えるような大型再熱蒸気タービンにおいては、起動時に主蒸気止め弁90を全開状態とし、蒸気加減弁91を全弁同時に微開にして全周噴射運転を行うこともできる。そして、全周噴射運転後、部分噴射運転に切り換える。蒸気加減弁91における、全周噴射運転から部分噴射運転への切り換えは、図2のt5〜t8間に行われる。この期間における作用効果は、主蒸気止め弁90における、全周噴射運転から部分噴射運転への切り換える際の作用効果と同じである。
【0072】
第1の実施の形態の蒸気タービンプラント10によれば、蒸気タービンの起動時に、高圧タービン30および中圧タービン40のいずれにも同時に蒸気を供給することができる。すなわち、高圧タービン30および中圧タービン40を同時に暖機することができるため、起動時間を短縮することができる。
【0073】
また、高圧タービン30の排気室と復水器110との間の分岐管76にベンチレータ弁99を備えているため、ベンチレータ弁99を開弁することで、高圧タービン30の排気室を真空とすることができる。これによって、例えば、タービン起動時や負荷運転中に、蒸気加減弁91が全閉状態となり、さらに逆止弁92が全閉状態となった場合においても、高圧タービン30の排気室の風損による温度上昇を抑制することができる。
【0074】
(第2の実施の形態)
図3は、第2の実施の形態の蒸気タービンプラント11の系統図である。図3に示すように、ボイラ220の過熱器221で発生した主蒸気は、主蒸気管270に備えられた、超高圧主蒸気止め弁290、超高圧蒸気加減弁291を経て超高圧タービン230に流入する。超高圧タービン230から排気された蒸気は、第一低温再熱蒸気管271に備えられた超高圧逆止弁292を通り、ボイラ220の第一再熱器222に導かれ再び加熱される。
【0075】
第一再熱器222において加熱された再熱蒸気は、第一高温再熱蒸気管272に備えられた、第一再熱蒸気止め弁293、第一インターセプト弁294を経て第一中圧タービン240に流入する。
【0076】
第一中圧タービン240から排気された蒸気は、第二低温再熱蒸気管310に備えられた逆止弁320を通り、ボイラ220の第二再熱器223に導かれ再び加熱される。
【0077】
第二再熱器223において加熱された再熱蒸気は、第二高温再熱蒸気管311に備えられた、第二再熱蒸気止め弁321、第二インターセプト弁322を経て第二中圧タービン241に流入する。
【0078】
第二中圧タービン241から排気された蒸気は、クロスオーバ管273を通り低圧タービン250に流入する。低圧タービン250の軸端には発電機260が連結され、発電機260は、低圧タービン250によって駆動される。
【0079】
低圧タービン250より排気された蒸気は、復水器330に導かれ、凝縮して復水となる。この復水は、復水ポンプ340によって、低圧給水加熱器341、脱気器342に導かれる。そして、脱気器342を通過した給水は、給水ポンプ343によって昇圧され、高圧給水加熱器344を通り過熱器221に再び流入する。
【0080】
過熱器221と超高圧タービン230との間において、主蒸気管270から分岐されたバイパス配管274が設けられている。この超高圧タービン230をバイパスするバイパス配管274は、超高圧タービンバイパス配管として機能し、第一低温再熱蒸気管271に連結されている。主蒸気管270における分岐部は、超高圧主蒸気止め弁290、超高圧蒸気加減弁291よりも上流側に位置している。なお、バイパス配管274が、第一低温再熱蒸気管271に連結する連結部は、超高圧逆止弁292の下流側(第一再熱器222側)である。
【0081】
また、バイパス配管274には、超高圧タービンバイパス弁295および減温装置350が備えられている。減温装置350への冷却水を供給する配管には、供給量を調整するための冷却水調整弁296が備えられている。
【0082】
第一再熱器222と第一中圧タービン240との間において、第一高温再熱蒸気管272から分岐されたバイパス配管312が設けられている。この第一中圧タービン240をバイパスするバイパス配管312は、中圧タービンバイパス配管として機能し、第二低温再熱蒸気管310に連結されている。第一高温再熱蒸気管272における分岐部は、第一再熱蒸気止め弁293、第一インターセプト弁294よりも上流側に位置している。なお、バイパス配管312が、第二低温再熱蒸気管310に連結する連結部は、逆止弁320の下流側(第二再熱器223側)である。
【0083】
また、バイパス配管312には、中圧タービンバイパス弁323および減温装置351が備えられている。減温装置351への冷却水を供給する配管には、供給量を調整するための冷却水調整弁324が備えられている。
【0084】
第二再熱器223と第二中圧タービン241との間において、第二高温再熱蒸気管311から分岐されたバイパス配管275が設けられている。第二中圧タービン241および低圧タービン250をバイパスするバイパス配管275は、低圧タービンバイパス配管として機能し、復水器330に連結されている。第二高温再熱蒸気管311における分岐部は、第二再熱蒸気止め弁321、第二インターセプト弁322よりも上流側に位置している。
【0085】
また、バイパス配管275には、低圧タービンバイパス弁297および減温装置352が備えられている。減温装置352への冷却水を供給する配管には、供給量を調整するための冷却水調整弁298が備えられている。
【0086】
超高圧タービン230と第一再熱器222との間において、第一低温再熱蒸気管271から分岐された分岐管276が設けられている。この分岐管276は、第一分岐管として機能し、復水器330に連結されている。なお、分岐管276が第一低温再熱蒸気管271から分岐する分岐部は、超高圧逆止弁292の上流側(超高圧タービン230側)である。また、分岐管276には、第一ベンチレータ弁299が備えられている。
【0087】
第一中圧タービン240と第二再熱器223との間において、第二低温再熱蒸気管310から分岐された分岐管313が設けられている。この分岐管313は、第二分岐管として機能し、復水器330に連結されている。なお、分岐管313が第二低温再熱蒸気管310から分岐する分岐部は、逆止弁320の上流側(第一中圧タービン240側)である。また、分岐管313には、第二ベンチレータ弁325が備えられている。
【0088】
また、蒸気タービンプラント11には、第1の実施の形態の蒸気タービンプラント10と同様の、各弁などを制御する制御装置(図示しない)が備えられている。
【0089】
次に、蒸気タービンプラント11の運転方法について説明する。
【0090】
図4は、第2の実施の形態の蒸気タービンプラント11における蒸気タービン起動時の、タービン回転数、負荷および各弁開度の関係を示した図である。図4において、横軸に時間、縦軸の、(a)にはタービン回転数および負荷、(b)には超高圧主蒸気止め弁290、超高圧蒸気加減弁291、第一インターセプト弁294および第二インターセプト弁322の開度、(c)には第一ベンチレータ弁299、第二ベンチレータ弁325、超高圧逆止弁292および逆止弁320の開度、(d)には超高圧タービンバイパス弁295の開度、(e)には中圧タービンバイパス弁323の開度、(f)には低圧タービンバイパス弁297の開度を示している。
【0091】
なお、第2の実施の形態の蒸気タービンプラント11における蒸気タービン起動時において、超高圧タービン230、第一中圧タービン240および第二中圧タービン241に同時に蒸気を通気している。蒸気タービンの昇速過程では、予め設定された目標速度を目標にタービン回転数を上昇させる。また、以下において、各弁は、前述した制御装置によって制御される。
【0092】
第2の実施の形態では、第一インターセプト弁294および第二インターセプト弁322は、同時に同じ動作を行う。また、第一ベンチレータ弁299および第二ベンチレータ弁325は、同時に同じ動作を行う。
【0093】
以前では、図示しないが蒸気タービンのリセット動作において、第一再熱蒸気止め弁293および第二再熱蒸気止め弁321は全開とさせる。また、超高圧タービンバイパス弁295、中圧タービンバイパス弁323および低圧タービンバイパス弁297は、全開状態においてタービンバイパス運転が開始される。
【0094】
において、超高圧主蒸気止め弁290に内蔵された副弁(子弁)は、全閉状態から徐々に開かれ、超高圧タービンバイパス弁295は、全開状態から徐々に閉じられる。そして、主蒸気が超高圧タービン230に流入して、超高圧タービン230が起動する。
【0095】
また、tにおいて、第一インターセプト弁294および第二インターセプト弁322は、全閉状態から徐々に開かれ、中圧タービンバイパス弁323および低圧タービンバイパス弁297は、全開状態から徐々に閉じられる。そして、再熱蒸気が第一中圧タービン240および第二中圧タービン241に流入し、超高圧主蒸気止め弁290の副弁、第一インターセプト弁294および第二インターセプト弁322からの蒸気の流入によって、タービン回転数を上昇させる。
【0096】
また、tにおいて、超高圧主蒸気止め弁290の副弁による全周噴射運転に対応するため、超高圧蒸気加減弁291は全開状態となっている。なお、超高圧逆止弁292および逆止弁320は全閉状態、第一ベンチレータ弁299および第二ベンチレータ弁325は全開状態となっている。そして、t〜tにおいて、超高圧主蒸気止め弁290、第一インターセプト弁294および第二インターセプト弁322を徐々に開き、設定された目標回転数までタービン回転数を上昇させる。ここで、制御装置は、タービン回転数に係る情報に基づいて、設定した目標回転数に達するまで、t〜t間における制御を行う。
【0097】
なお、第一インターセプト弁294、第二インターセプト弁322、第一再熱蒸気止め弁293および第二再熱蒸気止め弁321の構成については、第1の実施の形態におけるインターセプト弁94や再熱蒸気止め弁93の構成と同様である。
【0098】
〜t間では、設定した目標回転数に維持して、ヒートソーク運転として蒸気タービン本体の暖機を行う。この際、制御装置は、設定した目標回転数に達したことを検知したときに、超高圧主蒸気止め弁290の副弁、第一インターセプト弁294および第二インターセプト弁322の開度を一定に維持し、タービン回転数を一定に維持する。また、超高圧蒸気加減弁291、超高圧タービンバイパス弁295、中圧タービンバイパス弁323、低圧タービンバイパス弁297の開度も一定に維持される。ここで、制御装置は、タービン回転数に係る情報に基づいて、設定した目標回転数に達したと判定した場合、t〜t間における制御を行う。
【0099】
なお、制御装置は、例えば、蒸気タービンの構成部品(例えば、ノズルボックス、主蒸気止め弁90、蒸気加減弁91など)などの温度に係る情報に基づいて、蒸気タービンの構成部品の温度が所定の温度に達したと判定した場合、ヒートソーク運転の完了、すなわち暖機運転の完了と判断する。
【0100】
ヒートソーク運転の完了後、t〜t間では、超高圧主蒸気止め弁290、第一インターセプト弁294および第二インターセプト弁322を徐々に開き、予め設定された定格回転数までタービン回転数を上昇させる。各蒸気タービンに流入する蒸気量を増加するため、超高圧タービンバイパス弁295、中圧タービンバイパス弁323および低圧タービンバイパス弁297を徐々に閉じ、これらのバイパス弁の上流側の圧力を調整する。ここで、制御装置は、例えば、タービン回転数に係る情報に基づいて、タービン回転数が定格回転数に上昇するまで、t〜t間における制御を行う。
【0101】
定格回転数までタービン回転数を上昇した後、t〜t間では、第一インターセプト弁294および第二インターセプト弁322の開度を一定に維持し、超高圧主蒸気止め弁290の副弁の開度を微調整して揃速運転を行い、電力系統併入操作を行う。ここで、制御装置は、例えば、タービン回転数に係る情報に基づいて、タービン回転数が定格回転数に上昇したと判定した場合、t〜t間における制御を行う。また、電力系統併入操作において、制御装置は、例えば、系統周波数を参照しながら、超高圧主蒸気止め弁290を調整し、タービン回転数の微調整を行う。
【0102】
この際、超高圧蒸気加減弁291、超高圧タービンバイパス弁295、中圧タービンバイパス弁323、低圧タービンバイパス弁297の開度は一定に維持される。
【0103】
電力系統併入後、t〜t間において、超高圧主蒸気止め弁290の副弁、第一インターセプト弁294および第二インターセプト弁322の開度を徐々に開き、初負荷まで負荷運転を行う。各蒸気タービンに流入する蒸気を増加するため、超高圧タービンバイパス弁295、中圧タービンバイパス弁323および低圧タービンバイパス弁297を徐々に閉じ、これらのバイパス弁の上流側の圧力を調整する。
【0104】
ここで、制御装置は、例えば、電力系統と発電機の周波数、電圧、位相などの情報に基づいて、電力系統併入が完了したと判定した場合に、t〜t間における制御を行う。
【0105】
初負荷に到達後、t〜t間において、負荷一定のまま、超高圧主蒸気止め弁290の副弁による全周噴射運転から、超高圧蒸気加減弁291による部分噴射運転に切り換える。この期間は、第一インターセプト弁294、第二インターセプト弁322、超高圧タービンバイパス弁295、中圧タービンバイパス弁323、低圧タービンバイパス弁297、第一ベンチレータ弁299および第二ベンチレータ弁325の開度は一定に維持される。
【0106】
ここで、t〜t間の動作について詳しく説明する。
【0107】
このt〜t間では、超高圧主蒸気止め弁290の副弁の開度を一定に維持したまま、全開となっていた超高圧蒸気加減弁291を徐々に閉じる。tの時点では、超高圧タービン230に流入する蒸気は、超高圧主蒸気止め弁290の副弁よって制御されており、tの時点では、超高圧蒸気加減弁291は、超高圧主蒸気止め弁290の副弁の流量より多く流せる弁開度に達している。
【0108】
また、t〜t間は、超高圧蒸気加減弁291を閉じながら、超高圧主蒸気止め弁290の副弁を徐々に開く。この期間で、超高圧タービン230に流入する蒸気を調整する弁は、超高圧主蒸気止め弁290の副弁から超高圧蒸気加減弁291に切り替わる。
【0109】
そのため、tにおける超高圧主蒸気止め弁290の副弁からの流量と、tにおける超高圧蒸気加減弁291からの流量は、同一になるように設定され、t以降の超高圧タービン230に流入する蒸気流量は、超高圧蒸気加減弁291により調整される。t〜t間は、超高圧主蒸気止め弁290の副弁が全開となり、続けて超高圧主蒸気止め弁290そのものが全開となって、全周噴射運転から部分噴射運転への切り換え操作を完了する。
【0110】
このように、制御装置は、例えば、負荷に係る情報に基づいて、予め設定された初負荷に達したと判定した場合、t〜t間における制御を行う。t〜t間では、制御装置は、負荷およびタービン回転数を一定に維持するために、例えば、負荷に係る情報に基づいて、超高圧主蒸気止め弁290の副弁、超高圧蒸気加減弁291、第一インターセプト弁294、第二インターセプト弁322、超高圧タービンバイパス弁295、中圧タービンバイパス弁323および低圧タービンバイパス弁297などを制御する。
【0111】
〜t11間では、負荷の降下がないように、超高圧蒸気加減弁291および第一インターセプト弁294の開動作に伴い、第一ベンチレータ弁299および第二ベンチレータ弁325を閉動作させるような連動関係を持たせて協調制御を行い、最終的に第一ベンチレータ弁299および第二ベンチレータ弁325を全閉状態とする。第一ベンチレータ弁299、第二ベンチレータ弁325、超高圧蒸気加減弁291および第一インターセプト弁294の弁開度を連動させて制御している間、超高圧蒸気加減弁291、第一インターセプト弁294および第二インターセプト弁322を制御することで回転数を制御し、タービン負荷を上昇させる。この負荷上昇に伴い、超高圧タービンバイパス弁295、中圧タービンバイパス弁323および低圧タービンバイパス弁297を徐々に閉じる。
【0112】
ここで、第一ベンチレータ弁299が全閉状態に近づくことにより、超高圧タービン230の排気室の圧力、すなわち超高圧逆止弁292の上流側(超高圧タービン230側)の圧力が上昇する。また、第二ベンチレータ弁325が全閉状態に近づくことにより、第一中圧タービン240の排気室の圧力、すなわち逆止弁320の上流側(第一中圧タービン240側)の圧力が上昇する。
【0113】
また、tでは、この超高圧逆止弁292の上流側の圧力と超高圧逆止弁292の下流側の圧力(換言すれば、第一再熱器222の入口圧力)とがバランスした状態から、超高圧逆止弁292の上流側の圧力の方が高くなる状態となる。そのため、超高圧逆止弁292が一気に全開まで開弁する。超高圧逆止弁292が全開すると、第一ベンチレータ弁299がほぼ閉状態となっているため、超高圧タービン230の排気室を通過した蒸気は、その全量が第一再熱器222へ流れる。また、逆止弁320の上流側の圧力と逆止弁320の下流側の圧力(換言すれば、第二再熱器223の入口圧力)とがバランスした状態から、逆止弁320の上流側の圧力の方が高くなる状態となる。そのため、逆止弁320が一気に全開まで開弁する。逆止弁320が全開すると、第二ベンチレータ弁325がほぼ閉状態となっているため、第一中圧タービン240の排気室を通過した蒸気は、その全量が第二再熱器223へ流れる。
【0114】
また、t〜t11間では、超高圧蒸気加減弁291、第一インターセプト弁294および第二インターセプト弁322を制御して、タービン負荷を上昇させる。t10では、第一ベンチレータ弁299および第二ベンチレータ弁325は全閉状態となる。なお、t10において、第一ベンチレータ弁299および第二ベンチレータ弁325が全閉状態となるに伴い、超高圧タービン230および第一中圧タービン240での膨張熱落差が減少するため、若干超高圧タービン230および第一中圧タービン240の動翼翼列における有効な仕事が減る。しかしながら、負荷分担率の大きい第二中圧タービン241および低圧タービン250における出力が支配的なので負荷特性に影響は及ぼさない。
【0115】
ここで、制御装置は、例えば、超高圧主蒸気止め弁290が全開状態となったことを検知し、超高圧主蒸気止め弁290による全周噴射運転が終了したと判定した場合、tからの制御を行う。
【0116】
11〜t12間では、負荷上昇に伴い超高圧蒸気加減弁291と第一インターセプト弁294および第二インターセプト弁322を徐々に開いていくが、t11における第一インターセプト弁294および第二インターセプト弁322の弁開度はすでに高い状態にあり、弁開度に対する流量変化が少ない。そのため、第一インターセプト弁294および第二インターセプト弁322の開弁特性の傾斜を大きくしてt12で全開となるようにしている。
【0117】
また、t11〜t12間では、第一インターセプト弁294および第二インターセプト弁322の上流側の圧力が中圧タービンバイパス弁323および低圧タービンバイパス弁297の圧力制御の設定値まで上昇する。そのため、第一インターセプト弁294および第二インターセプト弁322の開弁動作に伴い、中圧タービンバイパス弁323および低圧タービンバイパス弁297がt12で全閉状態となり圧力制御が終了する。この制御と同時に、第一インターセプト弁294および第二インターセプト弁322が全開状態となっても、第一インターセプト弁294および第二インターセプト弁322の上流側の圧力は、ほとんど変動しないため、負荷特性に影響は及ぼさない。
【0118】
ここで、制御装置は、負荷上昇要求に基づいて、t11〜t12間における制御を行う。
【0119】
12〜t13間では、負荷上昇に伴い、t12以降の負荷制御は、全て超高圧蒸気加減弁291のみで行われる。そして、t13において、超高圧蒸気加減弁291が全開状態となり、定格負荷に到達する。
【0120】
なお、t12〜t13間の途中において、超高圧タービンバイパス弁295の容量の制約から、超高圧蒸気加減弁291の開弁動作に伴い、やがて超高圧タービンバイパス弁295が全閉状態となり圧力制御が終了する。
【0121】
ここで、制御装置は、中圧タービンバイパス弁323および低圧タービンバイパス弁297が全閉状態となり、第一インターセプト弁294および第二インターセプト弁322が全開状態となったことを検知した場合、t12〜t13間における制御を行う。
【0122】
次に、タービン起動時や負荷運転中において、何らかの要因で超高圧蒸気加減弁291が全閉状態となった場合の運転動作について説明する。
【0123】
この場合、超高圧タービン230への蒸気の供給が停止され、超高圧逆止弁292が全閉状態となる。この状態が続くと、風損により超高圧タービン230の排気室の温度が上昇し、危険な状態となる。
【0124】
そこで、タービン起動時や負荷運転中において、何らかの要因で超高圧蒸気加減弁291が全閉状態となり、さらに超高圧逆止弁292が全閉状態となった場合、制御装置は、第一ベンチレータ弁299を開く制御を行う。これによって、超高圧タービン230の排気室が復水器330と連通し、真空状態となるため、風損による超高圧タービン230の排気室の温度の上昇を抑制できる。
【0125】
また、タービン起動時や負荷運転中において、何らかの要因で第一インターセプト弁294が全閉状態となった場合、次に示す運転動作を行う。
【0126】
この場合、第一中圧タービン240への蒸気の供給が停止され、逆止弁320が全閉状態となる。この状態が続くと、風損により第一中圧タービン240の排気室の温度が上昇し、危険な状態となる。
【0127】
そこで、タービン起動時や負荷運転中において、何らかの要因で第一インターセプト弁294が全閉状態となり、さらに逆止弁320が全閉状態となった場合、制御装置は、第二ベンチレータ弁325を開く制御を行う。これによって、第一中圧タービン240の排気室が復水器330と連通し、真空状態となるため、風損による第一中圧タービン240の排気室の温度の上昇を抑制できる。
【0128】
なお、超高圧主蒸気止め弁290において、副弁による全周噴射運転を行う一例を示したが、例えば、複数の超高圧蒸気加減弁291のそれぞれに、制御装置によって制御される油筒を備えるような大型再熱蒸気タービンにおいては、第1の実施の形態において説明したとおりである。
【0129】
第2の実施の形態の蒸気タービンプラント11によれば、蒸気タービンの起動時に、超高圧タービン230、第一中圧タービン240および第二中圧タービン241のいずれにも同時に蒸気を供給することができる。すなわち、超高圧タービン230、第一中圧タービン240および第二中圧タービン241を同時に暖機することができるため、起動時間を短縮することができる。
【0130】
また、超高圧タービン230の排気室と復水器330との間の分岐管276に第一ベンチレータ弁299を備えているため、第一ベンチレータ弁299を開弁することで、超高圧タービン230の排気室を真空とすることができる。さらに、第一中圧タービン240の排気室と復水器330との間の分岐管313に第二ベンチレータ弁325を備えているため、第二ベンチレータ弁325を開弁することで、第一中圧タービン240の排気室を真空とすることができる。
【0131】
これによって、例えば、タービン起動時や負荷運転中に、超高圧蒸気加減弁291が全閉状態となり、さらに超高圧逆止弁292が全閉状態となった場合においても、超高圧タービン230の排気室の風損による温度上昇を抑制することができる。また、タービン起動時や負荷運転中に、第一インターセプト弁294が全閉状態となり、さらに逆止弁320が全閉状態となった場合においても、第一中圧タービン240の排気室の風損による温度上昇を抑制することができる。
【0132】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態では、第2の実施の形態の蒸気タービンプラント11において、第一インターセプト弁294、第二インターセプト弁322、第一ベンチレータ弁299、第二ベンチレータ弁325をそれぞれ別個に制御したときの運転方法の一例を説明する。
【0133】
図5は、第3の実施の形態の蒸気タービンプラント11における蒸気タービン起動時の、タービン回転数、負荷および各弁開度の関係を示した図である。図5において、横軸に時間、縦軸の、(a)にはタービン回転数および負荷、(b)には超高圧主蒸気止め弁290、超高圧蒸気加減弁291、第一インターセプト弁294および第二インターセプト弁322の開度、(c)には第一ベンチレータ弁299および超高圧逆止弁292の開度、(d)には第二ベンチレータ弁325および逆止弁320の開度、(e)には超高圧タービンバイパス弁295の開度、(f)には中圧タービンバイパス弁323の開度、(g)には低圧タービンバイパス弁297の開度を示している。
【0134】
なお、第2の実施の形態の蒸気タービンプラント11における蒸気タービン起動時において、超高圧タービン230、第一中圧タービン240および第二中圧タービン241に同時に蒸気を通気している。蒸気タービンの昇速過程では、予め設定された目標速度を目標にタービン回転数を上昇させる。また、以下において、各弁の制御は、前述した制御装置によって制御される。
【0135】
ここで、第3の実施の形態における蒸気タービンプラント11の運転方法における、t0〜t8間は、第2の実施の形態の蒸気タービンプラント11の運転方法と同じなので(図4参照)、説明を省略する。
【0136】
〜t10間では、負荷の降下がないように、超高圧蒸気加減弁291の開動作に伴い、第一ベンチレータ弁299を閉動作させるような連動関係を持たせて協調制御を行い、最終的に第一ベンチレータ弁299を全閉状態とする。第一ベンチレータ弁299および超高圧蒸気加減弁291との弁開度を連動させて制御している間、超高圧蒸気加減弁291および第一インターセプト弁294を制御することで回転数を制御し、タービン負荷を上昇させる。この負荷上昇に伴い、超高圧タービンバイパス弁295、中圧タービンバイパス弁323および低圧タービンバイパス弁297を徐々に閉じる。
【0137】
ここで、第一ベンチレータ弁299が全閉状態に近づくことにより、超高圧タービン230の排気室の圧力、すなわち超高圧逆止弁292の上流側(超高圧タービン230側)の圧力が上昇する。
【0138】
また、tでは、超高圧逆止弁292の上流側の圧力と超高圧逆止弁292の下流側の圧力(換言すれば、第一再熱器222の入口圧力)とがバランスした状態から、超高圧逆止弁292の上流側の圧力の方が高くなる状態となる。そのため、超高圧逆止弁292が一気に全開まで開弁する。超高圧逆止弁292が全開すると、第一ベンチレータ弁299がほぼ閉状態となっているため、超高圧タービン230の排気室を通過した蒸気は、その全量が第一再熱器222へ流れる。なお、t10では、第一ベンチレータ弁299は全閉状態となる。
【0139】
10〜t12間では、負荷の降下がないように、第一インターセプト弁294の開動作に伴い、第二ベンチレータ弁325を閉動作させるような連動関係を持たせて協調制御を行い、最終的に第二ベンチレータ弁325を全閉状態とする。第二ベンチレータ弁325および第一インターセプト弁294との弁開度を連動させて制御している間、超高圧蒸気加減弁291、第一インターセプト弁294、第二インターセプト弁322を制御することで回転数を制御し、タービン負荷を上昇させる。この負荷上昇に伴い、超高圧タービンバイパス弁295、中圧タービンバイパス弁323および低圧タービンバイパス弁297を徐々に閉じる。
【0140】
ここで、第二ベンチレータ弁325が全閉状態に近づくことにより、第一中圧タービン240の排気室の圧力、すなわち逆止弁320の上流側(第一中圧タービン240側)の圧力が上昇する。
【0141】
また、t11では、逆止弁320の上流側の圧力と逆止弁320の下流側の圧力(換言すれば、第二再熱器223の入口圧力)とがバランスした状態から、逆止弁320の上流側の圧力の方が高くなる状態となる。そのため、逆止弁320が一気に全開まで開弁する。逆止弁320が全開すると、第二ベンチレータ弁325がほぼ閉状態となっているため、第一中圧タービン240の排気室を通過した蒸気は、その全量が第二再熱器223へ流れる。なお、t12では、第二ベンチレータ弁325は全閉状態となる。
【0142】
さらに、t〜t12間では、超高圧蒸気加減弁291、第一インターセプト弁294および第二インターセプト弁322を制御して、タービン負荷を上昇させる。この負荷上昇に伴って、超高圧タービンバイパス弁295、中圧タービンバイパス弁323、低圧タービンバイパス弁297を徐々に閉じる。
【0143】
なお、第一ベンチレータ弁299および第二ベンチレータ弁325が全閉状態となるに伴い、超高圧タービン230および第一中圧タービン240での膨張熱落差が減少するため、若干超高圧タービン230および第一中圧タービン240の動翼翼列における有効な仕事が減る。しかしながら、負荷分担率の大きい第二中圧タービン241および低圧タービン250における出力が支配的なので負荷特性に影響は及ぼさない。
【0144】
ここで、制御装置は、例えば、超高圧主蒸気止め弁290が全開状態となったことを検知し、超高圧主蒸気止め弁290による全周噴射運転が終了したと判定した場合、tからの制御を行う。
【0145】
12〜t13間では、負荷上昇に伴い超高圧蒸気加減弁291と第一インターセプト弁294および第二インターセプト弁322を徐々に開いていくが、t12における第一インターセプト弁294の弁開度はすでに高い状態にあり、弁開度に対する流量変化が少ない。そのため、第一インターセプト弁294の開弁特性の傾斜を大きくしてt13で全開となるようにしている。なお、このt12〜t13間における第二インターセプト弁322の開弁特性の傾斜は変化させない。
【0146】
またt12〜t13間では、第一インターセプト弁294の上流側の圧力が中圧タービンバイパス弁323の圧力制御の設定値まで上昇するため、第一インターセプト弁294の開弁動作に伴い、中圧タービンバイパス弁323がt13で全閉状態となり圧力制御が終了する。この制御と同時に、第一インターセプト弁294が全開状態となっても、第一インターセプト弁294の上流側の圧力は、ほとんど変動しないため、負荷特性に影響は及ぼさない。
【0147】
ここで、制御装置は、負荷上昇要求に基づいて、t12〜t13間における制御を行う。
【0148】
13〜t14間では、負荷上昇に伴い超高圧蒸気加減弁291と第二インターセプト弁322を徐々に開いていくが、t13における第二インターセプト弁322の弁開度はすでに高い状態にあり、弁開度に対する流量変化が少ない。そのため、第二インターセプト弁322の開弁特性の傾斜を大きくしてt14で全開となるようにしている。
【0149】
また、t13〜t14間では、第二インターセプト弁322の上流側の圧力が低圧タービンバイパス弁297の圧力制御の設定値まで上昇するため、第二インターセプト弁322の開弁動作に伴い、低圧タービンバイパス弁297がt14で全閉状態となり圧力制御が終了する。この制御と同時に、第二インターセプト弁322が全開状態となっても、第二インターセプト弁322の上流側の圧力は、ほとんど変動しないため、負荷特性に影響は及ぼさない。
【0150】
ここで、制御装置は、中圧タービンバイパス弁323が全閉状態となり、第一インターセプト弁294が全開状態となったことを検知し、かつ負荷上昇要求に基づいて、
13〜t14間における制御を行う。
【0151】
14〜t15間では、負荷上昇に伴い、t14以降の負荷制御は、全て超高圧蒸気加減弁291のみで行われる。そして、t15において、超高圧蒸気加減弁291が全開状態となり、定格負荷に到達する。
【0152】
なお、t14〜t15間の途中において、超高圧タービンバイパス弁295の容量の制約から、超高圧蒸気加減弁291の開弁動作に伴い、やがて超高圧タービンバイパス弁295が全閉状態となり圧力制御が終了する。
【0153】
ここで、制御装置は、低圧タービンバイパス弁297が全閉状態となり、第二インターセプト弁322が全開状態となったことを検知し、かつ負荷上昇要求に基づいて、t14〜t15間における制御を行う。
【0154】
なお、本発明の第3の実施形態においても、タービン起動時や負荷運転中に、超高圧蒸気加減弁291や第一インターセプト弁294が全閉した場合でも、第2の実施の形態と同様に、第一ベンチレータ弁299や第二ベンチレータ弁325を開弁することで、風損による超高圧タービン230や第一中圧タービン240の排気室の温度の上昇を抑制できる。
【0155】
第3の実施の形態の蒸気タービンプラント11によれば、第2の実施の形態の蒸気タービンプラント11の作用効果に加えて、第一インターセプト弁294、第二インターセプト弁322、第一ベンチレータ弁299、第二ベンチレータ弁325をそれぞれ別個に制御することができる。これにより、蒸気タービンプラント運転中における、回転数変動や負荷変動などの蒸気タービンの挙動に与える影響を的確に緩和することができる。
【0156】
例えば、第一インターセプト弁294が開弁した後に、第二インターセプト弁322を直ぐ開弁することや、蒸気タービンの挙動が安定するまで第二インターセプト弁322の開弁を待つような制御をすることが可能となる。
【0157】
このように、第一インターセプト弁294、第二インターセプト弁322、第一ベンチレータ弁299、第二ベンチレータ弁325をそれぞれ別個に制御することで、制御性を向上することができる。
【0158】
以上説明した実施形態によれば、タービンバイパスシステムを備える蒸気タービンの起動を安定的に制御することが可能となる。
【0159】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0160】
10,11…蒸気タービンプラント、20,220…ボイラ、21,221…過熱器、22…再熱器、30…高圧タービン、40…中圧タービン、50,250…低圧タービン、60,260…発電機、70,270…主蒸気管、71…低温再熱蒸気管、72…高温再熱蒸気管、73,273…クロスオーバ管、74,274,275,312…バイパス配管、75…バイパス配管、76,276,313…分岐管、90…主蒸気止め弁、91…蒸気加減弁、92,320…逆止弁、93…再熱蒸気止め弁、94…インターセプト弁、95…高圧タービンバイパス弁、96,98,296,298,324…冷却水調整弁、97,297…低圧タービンバイパス弁、99…ベンチレータ弁、110,330…復水器、120,340…復水ポンプ、121,341…低圧給水加熱器、122,342…脱気器、123,343…給水ポンプ、124,344…高圧給水加熱器、130,131,350,351,352…減温装置、222…第一再熱器、223…第二再熱器、230…超高圧タービン、240…第一中圧タービン、241…第二中圧タービン、271…第一低温再熱蒸気管、272…第一高温再熱蒸気管、290…超高圧主蒸気止め弁、291…超高圧蒸気加減弁、292…超高圧逆止弁、293…第一再熱蒸気止め弁、294…第一インターセプト弁、295…超高圧タービンバイパス弁、299…第一ベンチレータ弁、310…第二低温再熱蒸気管、311…第二高温再熱蒸気管、321…第二再熱蒸気止め弁、322…第二インターセプト弁、323…中圧タービンバイパス弁、325…第二ベンチレータ弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過熱器と、
前記過熱器に、主蒸気管を介して接続された高圧タービンと、
前記高圧タービンに、逆止弁を備えた低温再熱蒸気管を介して接続された再熱器と、
前記再熱器に、高温再熱蒸気管を介して接続された中圧タービンと、
前記中圧タービンから排気された蒸気が導入される低圧タービンと、
前記低圧タービンから排気された蒸気が導入される復水器と、
前記主蒸気管から分岐し、前記高圧タービンをバイパスして前記逆止弁の下流側で前記低温再熱蒸気管に接続された、高圧タービンバイパス弁を備える高圧タービンバイパス配管と、
前記高温再熱蒸気管から分岐し、前記中圧タービンおよび前記低圧タービンをバイパスして前記復水器に接続された、低圧タービンバイパス弁を備える低圧タービンバイパス配管と、
前記逆止弁よりも上流側における前記低温再熱蒸気管から分岐して前記復水器に接続された、ベンチレータ弁を備える分岐管と
を具備し、
タービン起動の際、前記ベンチレータ弁、前記高圧タービンバイパス弁および前記低圧タービンバイパス弁を全開とし、前記高圧タービンおよび前記中圧タービンに同時に蒸気を通気することを特徴とする蒸気タービンプラント。
【請求項2】
前記主蒸気管が、分岐部よりも下流側に主蒸気止め弁および蒸気加減弁を備え、
前記主蒸気止め弁による全周噴射運転から前記蒸気加減弁による部分噴射運転に切り換え、前記蒸気加減弁の開動作に伴い、前記ベンチレータ弁、前記高圧タービンバイパス弁および前記低圧タービンバイパス弁を閉動作することを特徴とする請求項1記載の蒸気タービンプラント。
【請求項3】
前記高温再熱蒸気管が、分岐部よりも下流側にインターセプト弁を備え、
前記蒸気加減弁の開動作に伴い、前記ベンチレータ弁、前記高圧タービンバイパス弁および前記低圧タービンバイパス弁を閉動作する際、前記蒸気加減弁および前記インターセプト弁の調整によってタービン回転数を一定に維持することを特徴とする請求項2記載の蒸気タービンプラント。
【請求項4】
前記蒸気加減弁および前記インターセプト弁の調整によってタービン回転数を一定に維持している間に、前記インターセプト弁を全開とし、前記低圧タービンバイパス弁を全閉とすることを特徴とする請求項3記載の蒸気タービンプラント。
【請求項5】
前記蒸気加減弁が全閉となった際、前記高圧タービンバイパス弁および前記ベンチレータ弁を全開とすることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項記載の蒸気タービンプラント。
【請求項6】
過熱器と、
前記過熱器に、主蒸気管を介して接続された超高圧タービンと、
前記超高圧タービンに、超高圧逆止弁を備えた第一低温再熱蒸気管を介して接続された第一再熱器と、
前記第一再熱器に、第一高温再熱蒸気管を介して接続された第一中圧タービンと、
前記第一中圧タービンに、逆止弁を備えた第二低温再熱蒸気管を介して接続された第二再熱器と、
前記第二再熱器に、第二高温再熱蒸気管を介して接続された第二中圧タービンと、
前記第二中圧タービンから排気された蒸気が導入される低圧タービンと、
前記低圧タービンから排気された蒸気が導入される復水器と、
前記主蒸気管から分岐し、前記超高圧タービンをバイパスして前記超高圧逆止弁の下流側で前記第一低温再熱蒸気管に接続された、超高圧タービンバイパス弁を備える超高圧タービンバイパス配管と、
前記第一高温再熱蒸気管から分岐し、前記第一中圧タービンをバイパスして前記逆止弁の下流側で前記第二低温再熱蒸気管に接続された、中圧タービンバイパス弁を備える中圧タービンバイパス配管と、
前記第二高温再熱蒸気管から分岐し、前記第二中圧タービンおよび前記低圧タービンをバイパスして前記復水器に接続された、低圧タービンバイパス弁を備える低圧タービンバイパス配管と、
前記超高圧逆止弁よりも上流側における前記第一低温再熱蒸気管から分岐して前記復水器に接続された、第一ベンチレータ弁を備える第一分岐管と、
前記逆止弁よりも上流側における前記第二低温再熱蒸気管から分岐して前記復水器に接続された、第二ベンチレータ弁を備える第二分岐管と
を具備し、
タービン起動の際、前記第一ベンチレータ弁、前記第二ベンチレータ弁、前記超高圧タービンバイパス弁、前記中圧タービンバイパス弁および前記低圧タービンバイパス弁を全開とし、前記超高圧タービン、前記第一中圧タービンおよび前記第二中圧タービンに同時に蒸気を通気することを特徴とする蒸気タービンプラント。
【請求項7】
前記主蒸気管が、分岐部よりも下流側に超高圧主蒸気止め弁および超高圧蒸気加減弁を備え、
前記第一高温再熱蒸気管が、分岐部よりも下流側に第一インターセプト弁を備え、
前記超高圧主蒸気止め弁による全周噴射運転から前記超高圧蒸気加減弁による部分噴射運転に切り換え、前記超高圧蒸気加減弁および前記第一インターセプト弁の開動作に伴い、前記第一ベンチレータ弁、前記第二ベンチレータ弁、前記超高圧タービンバイパス弁、前記中圧タービンバイパス弁および前記低圧タービンバイパス弁を閉動作し、かつ前記第一ベンチレータ弁と前記第二ベンチレータ弁とが同時に同じ動作を行うことを特徴とする請求項6記載の蒸気タービンプラント。
【請求項8】
前記第二高温再熱蒸気管が、分岐部よりも下流側に、前記第一インターセプト弁と同時に同じ動作を行う第二インターセプト弁を備え、
前記超高圧蒸気加減弁および前記第一インターセプト弁の開動作に伴い、前記第一ベンチレータ弁、前記第二ベンチレータ弁、前記超高圧タービンバイパス弁、前記中圧タービンバイパス弁および前記低圧タービンバイパス弁を閉動作する際、前記超高圧蒸気加減弁、前記第一インターセプト弁および前記第二インターセプト弁の調整によってタービン回転数を一定に維持することを特徴とする請求項7記載の蒸気タービンプラント。
【請求項9】
前記超高圧蒸気加減弁、前記第一インターセプト弁および前記第二インターセプト弁の調整によってタービン回転数を一定に維持している間に、前記第一インターセプト弁および前記第二インターセプト弁を全開とし、前記中圧タービンバイパス弁および前記低圧タービンバイパス弁を全閉とすることを特徴とする請求項8記載の蒸気タービンプラント。
【請求項10】
前記超高圧蒸気加減弁が全閉となった際、前記超高圧タービンバイパス弁および前記第一ベンチレータ弁を全開とすることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項記載の蒸気タービンプラント。
【請求項11】
前記第一インターセプト弁が全閉となった際、前記中圧タービンバイパス弁および前記第二ベンチレータ弁を全開とすることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項記載の蒸気タービンプラント。
【請求項12】
前記主蒸気管が、分岐部よりも下流側に超高圧主蒸気止め弁および超高圧蒸気加減弁を備え、
前記第一高温再熱蒸気管が、分岐部よりも下流側に第一インターセプト弁を備え、
前記超高圧主蒸気止め弁による全周噴射運転から前記超高圧蒸気加減弁による部分噴射運転に切り換え、前記超高圧蒸気加減弁および前記第一インターセプト弁の開動作に伴い、前記第一ベンチレータ弁、前記第二ベンチレータ弁、前記超高圧タービンバイパス弁、前記中圧タービンバイパス弁および前記低圧タービンバイパス弁を閉動作し、かつ前記第一ベンチレータ弁と前記第二ベンチレータ弁とが時間差を有して同じ動作を行うことを特徴とする請求項6記載の蒸気タービンプラント。
【請求項13】
前記第二高温再熱蒸気管が、分岐部よりも下流側に、前記第一インターセプト弁と時間差を有して同じ動作を行う第二インターセプト弁を備え、
前記超高圧蒸気加減弁および前記第一インターセプト弁の開動作に伴い、前記第一ベンチレータ弁、前記第二ベンチレータ弁、前記超高圧タービンバイパス弁、前記中圧タービンバイパス弁および前記低圧タービンバイパス弁を閉動作する際、前記超高圧蒸気加減弁、前記第一インターセプト弁および前記第二インターセプト弁の調整によってタービン回転数を一定に維持することを特徴とする請求項12記載の蒸気タービンプラント。
【請求項14】
前記超高圧蒸気加減弁、前記第一インターセプト弁および前記第二インターセプト弁の調整によってタービン回転数を一定に維持している間に、前記第一インターセプト弁および前記第二インターセプト弁を全開とし、前記中圧タービンバイパス弁および前記低圧タービンバイパス弁を全閉とすることを特徴とする請求項13記載の蒸気タービンプラント。
【請求項15】
前記超高圧蒸気加減弁が全閉となった際、前記超高圧タービンバイパス弁および前記第一ベンチレータ弁を全開とすることを特徴とする請求項12乃至14のいずれか1項記載の蒸気タービンプラント。
【請求項16】
前記第一インターセプト弁が全閉となった際、前記中圧タービンバイパス弁および前記第二ベンチレータ弁を全開とすることを特徴とする請求項12乃至15のいずれか1項記載の蒸気タービンプラント。
【請求項17】
過熱器と、
前記過熱器に、主蒸気止め弁および蒸気加減弁を備える主蒸気管を介して接続された高圧タービンと、
前記高圧タービンに、逆止弁を備えた低温再熱蒸気管を介して接続された再熱器と、
前記再熱器に、高温再熱蒸気管を介して接続された中圧タービンと、
前記中圧タービンから排気された蒸気が導入される低圧タービンと、
前記低圧タービンから排気された蒸気が導入される復水器と、
前記主蒸気止め弁および前記蒸気加減弁よりも上流側で前記主蒸気管から分岐し、前記高圧タービンをバイパスして前記逆止弁の下流側で前記低温再熱蒸気管に接続された、高圧タービンバイパス弁を備える高圧タービンバイパス配管と、
前記高温再熱蒸気管から分岐し、前記中圧タービンおよび前記低圧タービンをバイパスして前記復水器に接続された、低圧タービンバイパス弁を備える低圧タービンバイパス配管と、
前記逆止弁よりも上流側における前記低温再熱蒸気管から分岐して前記復水器に接続された、ベンチレータ弁を備える分岐管と
を備える蒸気タービンプラントの運転方法であって、
タービン起動の際、前記ベンチレータ弁、前記高圧タービンバイパス弁および前記低圧タービンバイパス弁を全開とし、前記高圧タービンおよび前記中圧タービンに同時に蒸気を通気し、
前記主蒸気止め弁による全周噴射運転から前記蒸気加減弁による部分噴射運転に切り換えた後、前記蒸気加減弁の開動作に伴い、前記ベンチレータ弁、前記高圧タービンバイパス弁および前記低圧タービンバイパス弁を閉動作することを特徴とする蒸気タービンプラントの運転方法。
【請求項18】
過熱器と、
前記過熱器に、超高圧主蒸気止め弁および超高圧蒸気加減弁を備える主蒸気管を介して接続された超高圧タービンと、
前記超高圧タービンに、超高圧逆止弁を備えた第一低温再熱蒸気管を介して接続された第一再熱器と、
前記第一再熱器に、第一インターセプト弁を備えた第一高温再熱蒸気管を介して接続された第一中圧タービンと、
前記第一中圧タービンに、逆止弁を備えた第二低温再熱蒸気管を介して接続された第二再熱器と、
前記第二再熱器に、第二高温再熱蒸気管を介して接続された第二中圧タービンと、
前記第二中圧タービンから排気された蒸気が導入される低圧タービンと、
前記低圧タービンから排気された蒸気が導入される復水器と、
前記超高圧主蒸気止め弁および前記超高圧蒸気加減弁よりも上流側で前記主蒸気管から分岐し、前記超高圧タービンをバイパスして前記超高圧逆止弁の下流側で前記第一低温再熱蒸気管に接続された、超高圧タービンバイパス弁を備える超高圧タービンバイパス配管と、
前記第一インターセプト弁よりも上流側で前記第一高温再熱蒸気管から分岐し、前記第一中圧タービンをバイパスして前記逆止弁の下流側で前記第二低温再熱蒸気管に接続された、中圧タービンバイパス弁を備える中圧タービンバイパス配管と、
前記第二高温再熱蒸気管から分岐し、前記第二中圧タービンおよび前記低圧タービンをバイパスして前記復水器に接続された、低圧タービンバイパス弁を備える低圧タービンバイパス配管と、
前記超高圧逆止弁よりも上流側における前記第一低温再熱蒸気管から分岐して前記復水器に接続された、第一ベンチレータ弁を備える第一分岐管と、
前記逆止弁よりも上流側における前記第二低温再熱蒸気管から分岐して前記復水器に接続された、第二ベンチレータ弁を備える第二分岐管と
を備える蒸気タービンプラントの運転方法であって、
タービン起動の際、前記第一ベンチレータ弁、前記第二ベンチレータ弁、前記超高圧タービンバイパス弁、前記中圧タービンバイパス弁および前記低圧タービンバイパス弁を全開とし、前記超高圧タービン、前記第一中圧タービンおよび前記第二中圧タービンに同時に蒸気を通気し、
前記超高圧主蒸気止め弁による全周噴射運転から前記超高圧蒸気加減弁による部分噴射運転に切り換えた後、前記超高圧蒸気加減弁および前記第一インターセプト弁の開動作に伴い、前記第一ベンチレータ弁、前記第二ベンチレータ弁、前記超高圧タービンバイパス弁、前記中圧タービンバイパス弁および前記低圧タービンバイパス弁を閉動作することを特徴とする蒸気タービンプラントの運転方法。
【請求項19】
前記第一ベンチレータ弁と前記第二ベンチレータ弁とが同時に同じ動作を行うことを特徴とする請求項18記載の蒸気タービンプラントの運転方法。
【請求項20】
前記第一ベンチレータ弁と前記第二ベンチレータ弁とが時間差を有して同じ動作を行うことを特徴とする請求項18記載の蒸気タービンプラントの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−50055(P2013−50055A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187554(P2011−187554)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】