説明

蒸気タービンプラントの廃熱回収設備

【課題】
未利用エネルギーの回収量を増加させ、回収効率を向上させることのできる蒸気タービンプラントの廃熱回収設備を提供する。
【解決手段】
蒸気タービンプラントの廃熱回収設備を、蒸気発生装置であるボイラ1から蒸気を供給する蒸気タービン4と、この蒸気タービン4の排気側に備える復水器7と、この復水器7の循環系統にボイラ1への給水を加熱するヒートポンプとを備えて構成する。使用するヒートポンプは、復水器7の循環系統への廃熱を吸熱源とする少なくとも2台を設けると共に、ヒートポンプのうち1台ずつを圧縮式ヒートポンプ22と蒸気吸収式ヒートポンプ23とし、圧縮式ヒートポンプ22の圧縮機は、背圧式蒸気タービン30を蒸気タービン4側の蒸気源で駆動し、この駆動後の排気蒸気の一部又は全部を、蒸気吸収式ヒートポンプ23の蒸発器32の熱源とするように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービンプラントの廃熱回収設備に係り、特に復水器の循環系統内に複数台のヒートポンプを備えた蒸気タービンプラントの廃熱回収設備に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電設備や複合発電設備の廃熱をヒートポンプで回収し、蒸気タービンの復水やボイラの給水に熱回収することは従来から行われている。
【0003】
廃熱を利用する例としては、ガスタービンと排熱回収ボイラと蒸気タービン、及びガスタービンと蒸気タービンのそれぞれに直結された発電機を備える複合発電設備で、廃熱の活用策としてターボ冷凍機と蒸気吸収式冷凍機を組合せることが提案されており、例えば特許文献1に記載されている。この特許文献1記載の例では、蒸気タービンと発電機の回転軸に、ターボ冷凍機を構成する圧縮機を直結させて駆動し、また蒸気タービンの抽気蒸気を、蒸気吸収式冷凍機の加熱源として利用し、利用後の排出凝縮水は、排熱回収ボイラの給水として再利用している。
【0004】
一方、前記蒸気タービンの排気蒸気は、復水器にて凝縮した後、再び排熱回収ボイラの給水として循環しているが、復水器の冷却水は、冷却水ポンプによってターボ冷凍機から蒸気吸収式冷凍機及び復水器の順に直列に供給され、ターボ冷凍機から蒸気吸収式冷凍機の順に冷却された冷水は、需要家との間を循環する。
【0005】
また、蒸気発電プラントの発電効率を向上させるため、蒸気タービンプラントに蒸気吸収式ヒートポンプを設けることが、特許文献2に記載されている。この例では、蒸気タービンの抽気蒸気を蒸気吸収式ヒートポンプの再生器に導入し、吸収液を加熱すると共に、蒸気タービンの低圧抽気又は蒸気タービン排気蒸気を、未利用エネルギーとして蒸気吸収式ヒートポンプの蒸発器に導入して冷媒を蒸発させている。この出力側は、蒸気吸収式ヒートポンプの吸収器と凝縮器にボイラ給水を導入し、加熱している。
【0006】
更に、蒸気タービンプラントの廃熱を回収するため、蒸気吸収式ヒートポンプを単独で用いた例が、非特許文献1に記載されている。この事例では、石炭火力発電設備の脱硫装置の循環水へのボイラ排熱を吸熱源とし、発電用の蒸気タービンからの抽気蒸気を熱源とした蒸気吸収式ヒートポンプで駆動し、蒸気タービンプラントの脱気器入口の復水系統に熱回収している構成としている。
【0007】
【特許文献1】特開2001−141286号公報
【特許文献2】特開平3−906公報
【非特許文献1】財団法人省エネルギーセンター平成5年度省エネルギー優秀事例42.発電設備における低温廃熱回収
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
蒸気タービンプラント外の需要家へ、冷水供給負荷と発電電力負荷の供給可能域を拡げる特許文献1に記載のシステムでは、電気と冷熱の両方を外部へ供給する熱電併給プラントである。即ち、発電出力に加え、外部に冷熱を供給するので、ガスタービンへの燃料供給量が同一の場合、ターボ冷凍機と蒸気吸収式冷凍機を稼働することにより、ガスタービン発電機と蒸気タービン発電機の電気出力は減少するシステムである。
【0009】
また、ターボ冷凍機を構成する圧縮機の駆動用に発電機と直結の復水タービンを用い、復水タービンの抽気を蒸気吸収式冷凍機に利用する構造は、蒸気タービン及び発電機を新規に設計する場合は容易であるが、既設備の発電用蒸気タービンの軸に新たな機器を接続し駆動させることや、蒸気タービンに新たな抽気口を開けることになるので、蒸気タービンと発電機及び架台の大幅な改造を伴う問題がある。
【0010】
蒸気タービンプラントの未利用エネルギーを、蒸気吸収式ヒートポンプでボイラ給水に熱回収する特許文献2に記載の例では、蒸気吸収式ヒートポンプに導入される蒸気は、過熱飽和蒸気若しくは若干の過熱度を有する1.0MPa以下の蒸気であれば充分である。このため、蒸気タービンの抽気蒸気を使用し、蒸気吸収式ヒートポンプへ導入後に、蒸気は再生器から凝縮水クーラの順に熱交換した後、凝縮水となって装置外に排出されるので、十分に熱回収できないでいる。
【0011】
更に、蒸気吸収式ヒートポンプを単独で用いて、蒸気タービンプラントへ廃熱を回収した非特許文献1の例でも、吸熱源がボイラ排ガス系の脱硫装置の循環水である点を除いては、蒸気タービンプラントへの廃熱回収構成が上記特許文献2と同じであるので、同様の問題がある。
【0012】
蒸気吸収式ヒートポンプは、ほぼ過熱飽和付近にある蒸気を導入し、その内部で凝縮水化して排出するので、その蒸発潜熱まで利用可能した蒸気の利用効率が高い装置と言える。また、蒸気吸収式ヒートポンプの型式にも依るが、一重効用型の蒸気吸収式ヒートポンプでは、放熱側では最大で20℃程度の常温水を90℃以上の温水にまで加熱することが可能であり、温度上昇幅、出力温度共に大きく取ることが可能である。ただし、蒸気側の交換熱量に対する出力側の熱量の比である成績係数は、蒸気吸収式ヒートポンプの場合、最大でも2.0前後である。
【0013】
これに対し、圧縮式ヒートポンプは、圧縮機の駆動機に蒸気タービンを用いる場合、背圧型、復水型蒸気タービンに係らず、蒸気の蒸発潜熱をほとんど利用できないので、蒸気吸収式ヒートポンプと比べ蒸気の利用効率は低くなる。また、圧縮式ヒートポンプは20℃程度の常温水を50℃程度にまでしか加熱できないので、温度上昇幅や出力温度共に蒸気吸収式ヒートポンプより小さくなる。しかし、圧縮式ヒートポンプの成績係数は、圧縮機の駆動力として投入されるエネルギーに対する出力側の熱エネルギーの比で表されるが、6.0程度あり、蒸気吸収式ヒートポンプと比べ吸熱源からの熱エネルギーの汲み上げ効率が約3倍ある。
【0014】
本発明の目的は、圧縮式ヒートポンプと蒸気吸収式ヒートポンプとを適切に用いて、未利用エネルギーの回収量を増加させると共に、回収効率を向上させる蒸気タービンプラントの廃熱回収設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明では、蒸気発生装置から蒸気を供給する蒸気タービンと、前記蒸気タービンの排気側に備える復水器と、前記復水器の循環系統に蒸気発生装置への給水を加熱するヒートポンプとを備えた蒸気タービンプラントの廃熱回収設備を構成する際、前記ヒートポンプは、前記復水器の循環系統への廃熱を吸熱源とする少なくとも2台を設けると共に、前記ヒートポンプのうち1台ずつを圧縮式ヒートポンプと蒸気吸収式ヒートポンプとし、前記圧縮式ヒートポンプの圧縮機は、背圧式蒸気タービンを前記蒸気タービン側の蒸気源で駆動し、該駆動後の排気蒸気の一部又は全部を、前記蒸気吸収式ヒートポンプの蒸発器の熱源とするように構成したものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明のように蒸気タービンプラントの廃熱回収設備を構成すれば、蒸気吸収式ヒートポンプと圧縮式ヒートポンプの性能特性を生かすようにしたので、同一ヒートポンプのみを使用するのに比べて、利用できる未利用エネルギー回収量と回収効率の両方を向上させることができる。したがって、蒸気タービンプラントに回収できるため、数1000kW級の自家発電用の小型発電設備から、100万kW級の事業用の大型発電設備にまで広く適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の蒸気タービンプラントの廃熱回収設備について、図1に示す実施例を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明の図1の一実施例では、蒸気発生装置であるボイラ1で発生した蒸気は、主蒸気管2より主蒸気加減弁3を経て蒸気タービン4に至り、蒸気タービン4で仕事をして発電機5で発電を行った後、排気管6を通って復水器7に入る。蒸気は、復水器7で冷却されて凝縮水となり、蒸気タービン復水として冷却水の循環系統である復水配管10の復水ポンプ8で加圧され、順次グランド蒸気復水器9から脱気器11に送られ、加熱される。この加熱蒸気源は、グランド蒸気復水器9では蒸気タービン4のグランド蒸気、脱気器11では蒸気タービン4から抽気蒸気管27で抽気された蒸気である。
【0019】
ボイラ給水は、脱気器11後のボイラ給水管12のボイラ給水ポンプ13で加圧され、高圧タービン4からの高圧抽気管26からの抽気蒸気により、高圧給水加熱器14で更に加温されて、ボイラ1に戻る。高圧給水加熱器14の蒸気凝縮水は、ドレン管16の高圧給水加熱器水位調節弁15を経て脱気器11に回収される。復水器冷却水は、冷却水ポンプ18により復水器7と冷却塔17の間を冷却水の循環系統である冷却水供給母管19と復水器冷却管24を循環しており、蒸気タービン4から復水器7へ廃熱された蒸気タービン排気蒸気の蒸発潜熱分が、復水器冷却水を加温し、その加温分の熱エネルギーは冷却塔17で蒸発させて大気に放熱している。失った冷却水は、冷却塔下部水槽21に自動的に補給が行われる。
【0020】
そして、本発明では、圧縮式ヒートポンプ22と一重効用蒸気吸収式ヒートポンプ23との異なる型式の各1台を少なくとも用い、設置している。これら両ヒートポンプ22、23への吸熱源水は、図の例では復水器7で蒸気タービン4の排気蒸気の蒸発潜熱と熱交換し、温度が上昇した後の復水器7出口の復水器冷却管24から吸熱源水供給管25を分岐し、その分岐管25に設けた吸熱源水供給ポンプ23Aを用いて、各ヒートポンプ22、23内部の構成機器の蒸発器51、53に並列に供給する。各ヒートポンプ22、23の蒸発器51、53からの戻り熱源水は、1本の吸熱源水戻り管20に合流後、冷却塔17の入口の復水器冷却水管24に合流させている。
【0021】
各ヒートポンプ22、23への蒸気の供給系統は、例えば蒸気タービン4から高圧給水加熱器14への高圧抽気管26より蒸気管28を分岐し、背圧式蒸気タービン30を駆動する。この背圧式蒸気タービン30は、直結されている圧縮式ヒートポンプ22の圧縮機31を駆動し、圧縮機31は凝縮器35と膨張弁52と蒸発器51とで循環路を形成する。圧縮式ヒートポンプ22の入口の蒸気加減弁29により、圧縮式ヒートポンプ22の内部構成機器である凝縮器35の出口の水温を温度調節器49で検知し、この蒸気量を制御する。
【0022】
上記した各ヒートポンプ22、23への供給蒸気は、蒸気タービン4の入口蒸気、抽気蒸気、排気蒸気の何れかから選択して用いられるように蒸気供給系統を構成する配管を設置し、使用することができる。
【0023】
背圧式蒸気タービン30の排気蒸気は、他の一重効用蒸気吸収式ヒートポンプ23の加熱蒸気となって発生器32に導かれ、最終的にこの内部で凝縮水となり、ドレン管33を経て復水器6に回収される。ドレン排出弁34は、排出凝縮水が配管内部でフラッシュせぬように差圧設定される。
【0024】
背圧式蒸気タービン30の排気蒸気の温度は、一重効用蒸気吸収式のヒートポンプ23で必要とする以上の過熱度を有しているので、このヒートポンプ23の蒸気入口に、減温器58と温度検出器59を設け、ボイラ給水ポンプ13出口から取り出したボイラ給水を減温水として使用し、源温水管56に設ける入口蒸気温度調節弁57で、ヒートポンプ23の蒸気温度を一定温度に制御する。
【0025】
また、蒸気圧力については、一重効用蒸気吸収式ヒートポンプ23を構成する凝縮器37の出口温度を、一重効用蒸気吸収式ヒートポンプ23の蒸気入口側に設けて凝縮器出口温度調節器50に応動する出口水温度制御弁43によって制御する。このため、一重効用蒸気吸収式ヒートポンプ23で蒸気が不足する場合は、一重効用蒸気吸収式ヒートポンプ23の入口蒸気管42に設置する圧力調節器38の指示値が、予め設定した圧力より下回った場合には、脱気器抽気管27から分岐したバックアップ系統40に設置の蒸気バックアップ弁41から蒸気を導入する。
【0026】
逆に、一重効用蒸気吸収式ヒートポンプ23の使用蒸気量が少なくなり、圧力調節器38の指示値が予め設定した圧力を上回った場合には、余剰蒸気排出系統38Aに設置の余剰蒸気排出弁39から蒸気を、復水器7に排出する構造とする。このバックアップ及び余剰蒸気排出系統によって、圧縮式ヒートポンプ22と一重効用蒸気吸収式ヒートポンプ23は、その両方又は1台が停止しても、運転している側のヒートポンプや蒸気タービンプラント全体の運転に支障をきたすことがなくなる。
【0027】
一方、熱の回収先は、グランド蒸気復水器9の出口側である蒸気タービン4の復水配管10とし、上流側から圧縮式ヒートポンプ22、一重効用蒸気吸収式ヒートポンプ23の順に配置している。これにより、グランド蒸気復水器9を出た蒸気タービンの復水は、圧縮式ヒートポンプ22の構成機器である凝縮器35で加温され、次に一重効用蒸気吸収式ヒートポンプ23に送水され、この内部では吸収器36から凝縮器37を通って順次加温され、一重効用蒸気吸収式ヒートポンプ23を出た復水は、脱気器11に送られる。
復水配管10には、流量調節弁39、40Aを設け、これらによって圧縮式ヒートポンプ22を流れる蒸気タービン復水の通水流量比率の設定と、一重効用蒸気吸収式ヒートポンプ23を流れる蒸気タービン復水の通水流量比率の設定とが、それぞれ行われる。
【0028】
圧縮式ヒートポンプと蒸気吸収式ヒートポンプとは、蒸気の使用効率、出力温度幅、出力可能温度及び成績係数が異なる装置であり、相補的な関係にある。
【0029】
本発明の例で蒸気側を考えると、蒸気吸収式ヒートポンプ23は、ほぼ過熱飽和付近にある蒸気を凝縮水化するまで熱交換するのに対し、圧縮式ヒートポンプ22の圧縮機を駆動する背圧式蒸気タービンでは過熱蒸気域で利用するので、蒸気吸収式ヒートポンプの性能を阻害することなく背圧式蒸気タービンの排気を蒸気吸収式ヒートポンプに利用することが可能である。
【0030】
また、本発明の例で熱の回収先を考えると、蒸気吸収式ヒートポンプ23では、最大20℃の常温水を90℃程度まで昇温可能であるのに対し、圧縮式ヒートポンプ22では、20℃程度の常温水を50℃程度である。したがって、熱の回収先を考えた場合にも、圧縮式ヒートポンプ、蒸気吸収式ヒートポンプの順に熱回収するか、又は並列構成に熱回収することにより相互に支障なく熱回収を図ることが可能となる。
【実施例2】
【0031】
別の実施例である図2に示す蒸気タービンプラントの廃熱回収設備は、発電用の主タービン4が発電プラント外への蒸気供給も行う抽気復水タービンの場合である。外部への蒸気供給は、脱気器抽気管27から分岐するプロセス蒸気管47から送られる。この蒸気圧力は、蒸気タービン4として予め設定してある範囲内であれば、抽気管27からの抽気流量の多少に係らず、蒸気タービン4の主蒸気加減弁3と抽気加減弁44により、発電機5の電気出力を一定に保ったままほぼ一定圧力に制御される。
【0032】
また、大量の蒸気が系外に送気されるので、補給水も多くなるが、このようなプラントの場合、補給水の持つ熱量を有効に生かすため、復水系統に復水タンク46を設け、補給水系統48に設けた復水タンク水位調節弁54で、復水タンク水位調節器55からの信号により、復水タンク46への補給水の量を調節する構成としている。復水タンク46は一般的に大気圧タンクであるので、その出口側には復水昇圧ポンプ45が設置され、復水昇圧ポンプ45で昇圧された復水が、脱気器11に送り込まれる。
【0033】
この蒸気タービンプラントは、復水側の系統ではグランド蒸気復水器9の後流側に圧縮式ヒートポンプ22を設置し、加温後の復水は復水タンク46に入れる構造である。また、一重効用蒸気吸収式ヒートポンプ23は、復水タンク46の補給水系統48に設置し、この蒸気側の系統では、蒸気ドレン管33から復水タンク46に回収する構造である。
【0034】
本発明では、蒸気吸収式ヒートポンプを復水タンク46への給水の循環系統となる補給水系統48に設置する代りに、復水昇圧ポンプ45の出口側の復水管に設置する場合も適用することができる。
【0035】
また、圧縮式ヒートポンプ22を補給水系統48に設置し、二重効用蒸気吸収式ヒートポンプ23をグランド蒸気復水器9の出口側の復水管10に設置する構成にも適用できる。更に、圧縮式ヒートポンプ22と一重効用又は二重効用蒸気吸収式ヒートポンプ23との順に2台のヒートポンプを、直列に補給水系統48に構成したり、双方のヒートポンプ22、23を並列に設置して使用することもできる。
【0036】
なお、図1及び図2に示す実施例では、どちらも一重効用蒸気吸収式ヒートポンプ22へのバックアップ蒸気源を、脱気器抽気蒸気管27から取るものとしたが、この蒸気源に限定されるものではなく、主蒸気管2や高圧給水加熱器抽気管26など、一重効用蒸気吸収式ヒートポンプ23の加熱蒸気源として供給可能な圧力を有する箇所からは抽気して使用可能である。また、一重効用蒸気吸収式ヒートポンプ23は、これに代えて二重効用蒸気式ヒートポンプを用いるのであっても、その蒸気及び凝縮水側の構成は同様である。
【0037】
上記の各実施例では、余剰蒸気排出系統38の排出先を直接復水器7としているが、余剰蒸気排出系統38の熱量を回収可能な熱交換器がある場合には、その熱交換器に回収することもできる。
【0038】
また更に、各実施例では、復水器7の冷却水を冷却塔17で冷却するとしているが、河川水や海水による直接冷却の場合も適用でき、河川水や海水による直接冷却の場合に、ヒートポンプの直接吸熱源水として導入に水質上問題があるときには、非接触式の熱交換器を間に入れ、間接的に吸熱源水を利用できる。
【0039】
ヒートポンプの吸熱源水は、タービンプラントに限るものではなく、ボイラプラントや系外の未利用エネルギーを利用することできる。また、蒸気タービンプラントのサイクルとして、図1及び図2に示す実施例では、発電用の蒸気タービン4を、非再熱型の復水タービンとしているが、再熱型の蒸気タービンでも用いることができる。
【0040】
更にまた、主タービンが背圧式の蒸気タービンの場合において、復水器が設置されていない場合についても、ヒートポンプの吸熱源となる廃熱源は、蒸気タービンプラントに限らず用いられ、熱の回収先は、補給水系統やボイラ給水系統としても本発明と同様の効果を得られる。
【0041】
各ヒートポンプ22、23の蒸気タービン復水系統側それぞれに再循環系統を設け、その出口や入口の温度制御を行うこともできるが、ヒートポンプのみならず熱交換器類について再循環流量制御による温度制御は一般的に行われており、簡単に適用できる。また、出入口に新たな水タンク類を追設することによる、過渡的な温度変化防止についても同様に適用できる。
【0042】
蒸気タービンプラントの発電設備において、ヒートポンプで吸熱源から汲み上げた未利用の廃熱エネルギーを蒸気タービンの復水系統の昇温に利用し、設置するヒートポンプは圧縮式ヒートポンプと一重効用蒸気吸収式ヒートポンプの1台ずつとし、かつ圧縮式ヒートポンプの圧縮機駆動用の背圧式蒸気タービンの排気蒸気を、一重効用蒸気吸収式ヒートポンプで利用する場合について、以下その効果を具体的に説明する。
【0043】
まず、対象とする蒸気タービンプラントの発電設備での主タービンの入口蒸気条件を、3.9MPa、400℃とし、排気条件を−94.66kPa、復水器出口復水流量を30t/hと想定する。圧縮式ヒートポンプ用の背圧式蒸気タービンの駆動蒸気源には蒸気圧力、温度が1.2MPa、300℃のタービン抽気蒸気を用いるものとする。背圧式蒸気タービンの内部効率を50%とすると、その背圧が、0.4MPa時の排気温度は約240℃となる。この排気蒸気を5.0MPa、175℃のボイラ給水ポンプ出口水を用いて減温器で170℃まで減温し、0.4MPa、170℃の蒸気として一重効用蒸気吸収式ヒートポンプに使用する。使用する蒸気のヒートポンプ出口の蒸気凝縮水温度は90℃とする。
【0044】
各ヒートポンプの成績係数は、圧縮式ヒートポンプの成績係数、即ち圧縮機が受取った熱量に対するタービン復水系統への出熱量の比率は、圧縮式ヒートポンプとして一般的な値である6.0とし、蒸気タービン復水温度を45℃から10℃上げ、55℃とするものとする。また、一重効用蒸気吸収式ヒートポンプの成績係数は、1.7とし、こちらは圧縮式ヒートポンプで昇温した蒸気タービン復水を更に昇温するものとする。
【0045】
上記の条件から、圧縮式ヒートポンプにより吸熱源から蒸気タービン復水系統に汲み上げられる熱量は、30t/hの復水の温度を10℃上げるので、約350kWである。これに使用する背圧式蒸気タービンの動力は、圧縮式ヒートポンプの成績係数が6.0なので、6分の1の約58kWである。
【0046】
一方、一重効用蒸気吸収式ヒートポンプの入口蒸気流量は、背圧タービン出口の0.4MPa、240℃の蒸気を、5.0MPa、175℃の熱水で減温するので、減温水が加わり背圧タービン出口蒸気流量の7.4%増となる。この流量の蒸気が、一重効用蒸気吸収式ヒートポンプから90℃の凝縮水として排出されるので、蒸気側からの入熱量は、約1440kWとなる。今、成績係数が1.7の一重効用蒸気吸収式ヒートポンプを使用するので、復水系統への入熱量は1440kWの1.7倍となり、約2450kWとなる。
【0047】
このことから、蒸気タービンの復水系統は、蒸気タービン抽気系統からの1498kWの入熱に対し、約2800kWの熱エネルギーを受取ることが可能となる。即ち、約1300kWの未利用エネルギーを汲み上げたことになる。
【0048】
この約1300kWという出力は、蒸気タービン発電設備の想定発電端出力である約8000kWの16%を越えるものであり、極めて有効な省エネルギー手段となる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施例を示す蒸気タービンプラントの廃熱回収設備の構成図である。
【図2】本発明の他の実施例を示す蒸気タービンプラントの廃熱回収設備の構成図である。
【符号の説明】
【0050】
1…ボイラ、2…主蒸気管、3…主蒸気加減弁、4…蒸気タービン、6…排気管、7…復水器、8…復水ポンプ、10…復水管、11…脱気器、12…給水管、13…ボイラ給水ポンプ、17…冷却塔、18…冷却水ポンプ、19…冷却水供給母管、20…吸熱源水戻り管、22…圧縮式ヒートポンプ、23…一重効用蒸気吸収式ヒートポンプ、24…復水器冷却管、25…吸熱源水供給管、26…高圧抽気管、27…抽気蒸気管、28…蒸気管、29…蒸気加減弁、30…背圧式蒸気タービン、31…圧縮機、32…発生器、35、37…凝縮器、36…吸収器、42…入口蒸気管、43…蒸気入口弁、44…抽気加減弁、46…復水タンク、47…プロセス蒸気管、48…補給水系統、51、53…蒸発器、52…膨張弁、56…減温水管、57…入口蒸気温度調節弁、58…減温器、59…温度検出器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生装置から蒸気を供給する蒸気タービンと、前記蒸気タービンの排気側に備える復水器と、前記復水器の循環系統に蒸気発生装置への給水を加熱するヒートポンプとを備えた蒸気タービンプラントの廃熱回収設備において、前記ヒートポンプは、前記復水器の循環系統への廃熱を吸熱源とする少なくとも2台を設けると共に、前記ヒートポンプのうち1台ずつを圧縮式ヒートポンプと蒸気吸収式ヒートポンプとし、前記圧縮式ヒートポンプの圧縮機は、背圧式蒸気タービンを前記蒸気タービン側の蒸気源で駆動し、該駆動後の排気蒸気の一部又は全部を、前記蒸気吸収式ヒートポンプの蒸発器の熱源とするように構成したことを特徴とする蒸気タービンプラントの廃熱回収設備。
【請求項2】
請求項1において、前記各ヒートポンプは、圧縮式ヒートポンプと蒸気吸収式ヒートポンプとの順に、給水の循環系統に直列に設けたことを特徴とする蒸気タービンプラントの廃熱回収設備。
【請求項3】
請求項1において、前記各ヒートポンプは、圧縮式ヒートポンプと蒸気吸収式ヒートポンプとは、給水の循環系統に並列に設けたことを特徴とする蒸気タービンプラントの廃熱回収設備。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−64047(P2007−64047A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249078(P2005−249078)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(390023928)日立エンジニアリング株式会社 (134)