説明

蒸気タービンプラント

【課題】様々な運転モードを通じてプラントの高圧蒸気タービンを通過するピーク軸トルクを制限する、中間蒸気抽出のために構成された、一軸形蒸気タービンプラントを提供する。
【解決手段】第1の端部及び第2の端部を備えた軸22と、軸22の前記第1の端部及び前記第2の端部のそれぞれに配置された第1の低圧蒸気タービン30a及び第2の低圧蒸気タービン30bと、第1の蒸気タービン30aと第2の低圧蒸気タービン30bとの間において軸22上に配置された発電機10と、少なくとも1つの高圧蒸気タービン(14)を含む、第1の低圧蒸気タービン30aと低圧蒸気タービン30bとの間において軸22上に配置された蒸気タービン列12とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して蒸気タービンプラント、特に断続的高需要蒸気消費部へ中間蒸気を供給するために設計及び配置された蒸気タービンプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
高需要使用部のための蒸気取出し部を有する一軸形蒸気タービンプラントが直面する課題の一つは、軸ピークトルク応力を最小限に抑制しながらどのように効率的に運転するかということである。このピークトルクは、一般的に軸上に配置されている発電機によって生ぜしめられる抵抗と、一連の蒸気タービンとの差によって生ぜしめられる。
【0003】
高需要蒸気消費部の例、この場合には炭素捕捉及び隔離ユニットが、欧州特許第1688173号明細書に記載されている。高需要蒸気消費部へのエネルギ及び蒸気の効率的な供給のための様々な蒸気タービンプラント装置が、さらに、Zachary, J(2008年6月)"Options for reducing a coal-fired plant's carbon foot print: Part I" POWER 28-33 (Zachary)に記載されている。記載された装置は、複数の低圧蒸気タービンと直列に配置された一軸形蒸気タービンを有している。
【0004】
このような蒸気プラントのさらに別の例は、米国特許出願第2010/0038917号明細書に記載されている。高需要使用部のための中間取出し部を有する一軸形蒸気タービンプラントが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第1688173号明細書
【特許文献2】米国特許出願第2010/0038917号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Zachary, J(2008年6月)"Options for reducing a coal-fired plant's carbon foot print: Part I" POWER 28-33 (Zachary)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
様々な運転モードを通じてプラントの高圧蒸気タービンを通るピーク軸トルクを制限する、中間蒸気抽出のために構成された、一軸形蒸気タービンプラントが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、独立請求項の主体によってこの課題を解決する。有利な実施の形態は従属請求項に記載されている。
【0009】
発明の一態様は、軸のそれぞれの端部に低圧蒸気タービンを備えた一軸形蒸気タービンを提供する。発電機及び高圧蒸気タービンは、低圧蒸気タービンの間に配置されている。この構成は、低圧蒸気タービンからの全トルクが高圧蒸気タービンを通過しないことを保証し、これにより、高圧蒸気タービンを通る軸部分を、より低いトルクに合わせて設計することができる。
【0010】
別の態様は、運転及びメンテナンスにおける柔軟性を提供する、クラッチ及び中間使用部取出し部配列を提供する。
【0011】
本発明の別の態様及び利点は、例として実施の形態が開示されている添付の図面に関連した以下の説明から明らかになるであろう。
【0012】
例えば、本発明の実施の形態は、添付図面に関連して以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】蒸気タービンプラントの典型的な実施の形態の概略図である。
【図2】図1の蒸気タービンを有しかつ3つの軸位置を備えた軸を有する蒸気タービンプラントの概略図である。
【図3】図1の蒸気タービンプラントを有しかつ、1つの軸部分を備えた軸と、2つの取出し部とを有する蒸気タービンプラントの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の記載では説明のために、典型的な実施の形態の十分な理解を提供するための多くの特定の詳細が示される。しかしながら、実施の形態はこれらの特定の詳細を用いずに実施されてもよいことが明らかである。他の例においては、典型的な実施の形態の記載を容易にするために、構造体及び装置は四角で示されている。
【0015】
本明細書を通じて、「蒸気タービン列」が言及される。本明細書において、「蒸気タービン列」は、一つの軸22におけるそれぞれ異なる圧力構成の一連の蒸気タービンであると定義される。蒸気タービン列12は、一つの軸22に配置された一連の蒸気タービンのうちの幾つか又は全てを含んでいる。
【0016】
本明細書を通じて、「高需要蒸気消費部」が言及される。「高需要蒸気消費部」は、蒸気プラント内の低圧蒸気タービンと等しい蒸気量(steam rate)を要求することができる蒸気消費部であると定義される。このような蒸気消費部の例は、炭素捕捉ユニットである。
【0017】
ここで典型的な実施の形態の詳細に言及するが、実施の形態の例は添付の図面に示されている。可能である場合には、同一の部材を示すために同一の参照符号を全体を通じて使用する。
【0018】
図1は典型的な蒸気タービンを示している。蒸気タービンは、軸22を有しており、この軸22には一連の蒸気タービンと、発電機10とが配置されている。蒸気タービンは、蒸気タービン列12と、第1及び第2の低圧蒸気タービン30a,30bとを含んでいる。低圧蒸気タービン30a,30bは、蒸気タービンプラントのそれぞれの端部に配置されており、供給ライン27によって蒸気タービン列に接続されていて蒸気を流通させるようになっている。高需要蒸気消費部のための取出し部24は、この供給ライン27に配置されている。
【0019】
低圧蒸気タービン30aと発電機10とをそれぞれ軸22の反対側の端部に配置することによって、高圧蒸気タービン14を通るトルク負荷が減じられる。高圧蒸気タービン14を通るトルクを更に減じるために、図2に示された蒸気タービン列12においては、高圧蒸気タービン14と中圧蒸気タービン16との位置は、高圧蒸気タービン14ではなく中圧蒸気タービン16が発電機10に隣接して配置されるように、交替して配置されていてもよい。
【0020】
図2は、典型的な蒸気タービンプラントを示しており、この蒸気タービンプラントは軸22を有しており、この軸は、第1のクラッチ20a及び第2のクラッチ20bによって接続された3つの部分22a,22b,22cを有している。第1のクラッチ20aは第1の軸部分22aと第2の軸部分22bとを接続しており、第2のクラッチ20bは第1の軸部分22aと第3の軸部分22cとを接続している。第2の軸部分22bと第3の軸部分22cとは、これらの軸部分にそれぞれ配置された第1の低圧蒸気タービン30aと第2の低圧蒸気タービン30bとを有しており、第1の軸部分22aは、発電機10と、蒸気タービン列12とを有している。典型的な実施の形態において、蒸気タービン列12は、発電機10と、第1の低圧蒸気タービン30aとの間に配置されている。クラッチ20a,20bを使用することによって、低圧蒸気タービン30a,30bのいずれか一方を停止させてメンテナンスしつつ、他方の蒸気プラントを運転することが可能である。これは、例えば蒸気が取出し部24を通じて抽出される場合に行われてよい。
【0021】
図2に示された典型的な実施の形態において、第1の低圧蒸気タービン30aから延びた、中圧蒸気タービン16と高圧蒸気タービン14とを有する一連のタービンを有している。個々の供給ライン27a,27bは、中圧蒸気タービン16を低圧蒸気タービン30b,30aに接続している。一般的に、これらのラインはそれぞれ、個々の低圧タービン30a,30bへの蒸気流を絞り込むための絞り弁26a,26bを有しており、絞り弁は、取出し部24a,24b(図3に示されている)に操作可能に接続されている場合に、低圧蒸気タービン30a,30bの間の負荷を効率的に平衡させるための手段を提供する。
【0022】
図3は、別の典型的な蒸気タービンプラントを示しており、この蒸気タービンプラントは、クラッチを備えた軸22を有しており、この軸22のそれぞれの端部に2つの低圧蒸気タービン30a,30bが配置されている。発電機10と、中圧蒸気タービン16及び高圧蒸気タービン14を含む蒸気タービン列12とは、軸22のそれぞれの端部に配置された低圧蒸気タービン30a,30bの間に配置されている。個々の供給ライン27a,27bが、中圧蒸気タービン16を低圧蒸気タービン30a,30bに接続している。第2の供給ライン27bは、個々の低圧蒸気タービン30bへの蒸気流を絞り込むための絞り弁26bを有している。供給ライン27a,27bのうちの少なくとも一方には、高需要蒸気消費部のための取出し部24a,24bが取り付けられている。
【0023】
別の典型的な実施の形態は、電気式の供給プラントを運転する方法を提供する。この方法はまず、前記のように図1から図3に示された蒸気タービンプラントを提供し、最大電気価格の時間、例えば最大電気価格が基本負荷運転の間よりも10倍高くなる昼食時、夕方及び平日、を特定する。これらの特定された時間の間、高需要蒸気消費部、例えばCO2捕捉プラントのための取出し部24a,24bは閉鎖され、全ての蒸気タービンの負荷を生ぜしめ、これにより最大電気出力を可能にする。
【0024】
対照的に、より中程度の電気価格の時間が特定された場合、高需要蒸気消費部への取出し部24a,24bが開放され、例えばCO2捕捉ユニットに供給する。この運転モードの間、低圧蒸気タービン30a,30bのうちの少なくとも1つから蒸気が逸らされるので、発電プラントの電気出力が減じられる。
【0025】
この典型的な方法の目的は、低い電気価格の間はCO2捕捉を最大化しながら最大電気価格の間は電気発生を最大化することによって、蒸気タービンプラントの運転する利益を最適化することである。
【0026】
択一的に、低効率運転につながる中圧蒸気タービン16及び/又は高圧蒸気タービン14への減じられた供給量で運転する代わりに、低い送電需要の間は取出し部24及びCO2捕捉プラントが運転される。この運転構成は、プラントへの蒸気量を増大させる必要なく、取出し部24を閉鎖しかつ蒸気を低圧蒸気タービン30a,30bへ送ることによって電力出力が極めて急速に増大されるという別の利点を有している。
【0027】
本発明は、最も実用的で典型的な実施の形態であると考えられるものについて図示及び説明されたが、本発明は、本質的な特徴から逸脱することなくその他の特定の形態で具体化することができることが当業者によって認められるであろう。例えば、前記蒸気タービンは、単流又は複流蒸気であってよい。択一的に、低圧蒸気タービン30a,30bは、低圧蒸気タービン間の質量流分配が蒸気消費部の需要に適合させられるように飲み込み能力(swallowing capacity)を提供するために互いに異なる寸法を有していてもよい。従って、本明細書において開示された実施の形態は、全ての点で例示的でありかつ制限されないと考えられる。発明の範囲は前記説明ではなく添付の請求の範囲によって示され、発明の意味及び範囲及び均等物に該当する全ての変更はそれに含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0028】
10 発電機、 12 蒸気タービン列、 14 高圧蒸気タービン、 16 中圧蒸気タービン、 20a,20b クラッチ、 22,22a,22b,22c 軸、 24,24a,24b 取出し部、 26a,26b 絞り弁、 27,27a,27b 供給ライン、 30a,30b 低圧蒸気タービン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンプラントにおいて、
第1の端部及び第2の端部を備えた軸(22)と、
該軸(22)の前記第1の端部及び前記第2の端部のそれぞれに配置された第1の低圧蒸気タービン(30a)及び第2の低圧蒸気タービン(30b)と、
前記第1の低圧蒸気タービン(30a)と前記第2の低圧蒸気タービン(30b)との間において軸(22)上に配置された発電機(10)と、
少なくとも1つの高圧蒸気タービン(14)を含む、前記第1の低圧蒸気タービン(30a)と前記第2の低圧蒸気タービン(30b)との間において軸(22)上に配置された蒸気タービン列(12)とが設けられていることを特徴とする、蒸気タービンプラント。
【請求項2】
前記蒸気タービン列(12)を前記第1の低圧蒸気タービン(30a)に接続する第1の供給ライン(27a)と、
高需要蒸気消費部に供給するために働く、前記第1の供給ライン(27a)に配置された第1の取出し部(24a)とが設けられている、請求項1記載の蒸気タービンプラント。
【請求項3】
前記蒸気タービン列(12)を前記第2の低圧蒸気タービン(30b)に接続する第2の供給ライン(27b)と、
高需要蒸気消費部に供給するために働く、前記第2の供給ライン(27b)に配置された第2の取出し部(24b)とが設けられている、請求項1又は2記載の蒸気タービンプラント。
【請求項4】
前記第1の低圧蒸気タービンと前記発電機(10)との間において前記軸(22)上に配置された第1のクラッチ(20a)と、
前記第2の低圧蒸気タービンと前記蒸気タービン列(12)との間において前記軸(22)上に配置された第2のクラッチ(20b)とが設けられている、請求項1から3までのいずれか1項記載の蒸気タービンプラント。
【請求項5】
前記軸(22)が、クラッチを有さない、請求項1から3までのいずれか1項記載の蒸気タービンプラント。
【請求項6】
前記第1の取出し部(24a)の下流において前記第1の供給ライン(27a)に配置された第1の絞り弁(26a)と、
前記第1の取出し部(24a)の下流において前記第2の供給ライン(27b)に配置された第2の絞り弁(26b)とが設けられている、請求項2から4までのいずれか1項記載の蒸気タービンプラント。
【請求項7】
前記第1の取出し部(24a)の下流において前記第1の供給ライン(27a)に配置された第1の絞り弁(26a)と、
前記第2の取出し部(24b)の下流において前記第2の供給ライン(27b)に配置された第2の絞り弁(26b)とが設けられている、請求項5記載の蒸気タービンプラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−57615(P2012−57615A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−192005(P2011−192005)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland