説明

蒸気タービン制御装置および蒸気タービン制御方法

【課題】パワーロードアンバランス回路の動作後のタービン整定過程におけるタービン回転数の変動を小さくし、滑らかに整定回転数に到達できるようにする。
【解決手段】蒸気タービンの出力19sと発電機出力20sとの偏差51sが所定の設定値以上52sで、かつ、発電機出力減少率53sが所定値以上54sのとき動作して自己保持し、パワーロードアンバランス信号50sを発生するパワーロードアンバランス回路50を備えた蒸気タービン制御装置において、タービン回転数の上昇レート58sが所定値以下59sになったことを検出するタービン回転数上昇レート判定手段59と、タービン回転数が所定値以下510sになったことを検出するタービン回転数検出手段510とを備え、これらタービン回転数上昇レート判定手段59およびタービン回転数検出手段510が共に動作したことを検出してパワーロードアンバランス回路の動作をリセットする回路512、513を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパワーロードアンバランス回路の動作後のタービン整定過程におけるタービン回転数の変動を小さくし、滑らかに整定回転数に到達できるようにした蒸気タービン制御装置および蒸気タービン制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、蒸気タービン制御装置においては、負荷遮断時あるいは系統事故時におけるタービンの過速(オーバースピード)状態を回避するために、発電機負荷とタービン出力との不平衡(アンバランス)状態を検出して、主要蒸気弁を一定時間だけ閉動作させてタービンへの流入蒸気を制限し、オーバースピードを抑制するパワーロードアンバランス機能とインターセプト弁急閉機能とを設けている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図7は特許文献1に記載されている一般的な蒸気タービンプラントの概略系統図であり、図8は従来の蒸気タービン制御装置の概略制御ブロック図である。そして、図9はパワーロードアンバランス発生時の従来の蒸気タービン制御装置によるタービン整定過程の動作図である。
【0004】
まず、図7の蒸気タービンプラントの概略系統図について説明する。
図7において、蒸気発生器またはボイラ1からの蒸気は、主蒸気管2に設けた主蒸気止め弁3及び蒸気加減弁4を経て高圧タービン5に流入し、ここで仕事を行なってタービン軸を回転させる。そして、高圧タービン5で仕事を終えた高圧排気蒸気は低温再熱管6により再熱器7に導かれ、ここで再熱されたのち、高温再熱管8に設けられた再熱蒸気止め弁9及びインターセプト弁10を経て中圧タービン11に供給される。
【0005】
中圧タービン11に供給された蒸気はここで仕事を行なった後排気されクロスオーバー管12を経て低圧タービン13に流入する。そして、ここで仕事を行なった後復水器14で凝縮されて復水し、図示しない給水系を経て再び蒸気発生器またはボイラ1に戻るように構成されている。
【0006】
このように高圧タービン5、中圧タービン11、低圧タービン13で蒸気のエネルギを利用してタービン軸が回転されると、このタービン軸に直結されている発電機15を駆動して発電電力を遮断器16を介して電力系統の送電線17に送電する。
【0007】
なお、18はタービン軸に設けられたタービン回転数検出器であり、19はタービン出力と比例関係にある高圧排気蒸気または高圧排気蒸気を再熱した再熱蒸気の圧力を検出する蒸気圧力検出器である。なお、発電プラントによっては、インターセプト弁10の下流で中圧タービン11の上流に蒸気圧力検出器を設置する場合がある。
【0008】
20は発電機15から送電線17への送電電力(これを、発電機負荷量という)を検出するための発電機電流用変流器である。また、21は蒸気加減弁4の弁開度を検出する弁開度検出器、22はインターセプト弁10の弁開度を検出する弁開度検出器である。
【0009】
次に、図8に示す従来の蒸気タービン制御装置100Tの概略制御ブロック図に基づいて機能を簡単に説明する。
図8に示す従来の蒸気タービン制御装置100Tは、構成要素を大別すると、速度制御回路30と、負荷制御回路40と、パワーロードアンバランス回路50Tと、弁開度制御回路60と、インターセプト弁急閉回路70とを備えている。これらの構成要素はいずれも公知であるが、以下、概要を説明する。
【0010】
まず、速度制御回路30は、目標回転数である定格回転数と前記タービン回転数検出器18によって検出されたタービン実回転数18sとの偏差に制御ゲインを乗算して得られた速度制御信号30sを負荷制御回路40に対して出力するように構成されている。
【0011】
次に、負荷制御回路40は、オペレータ等によって設定された出力設定指定80sと内蔵する負荷設定器(積分要素)の負荷設定信号との偏差を積分したあとで前記速度制御回路30から入力される速度制御信号30sを加算して負荷要求指令信号44sを得、この負荷要求指令信号44sと負荷制限設定信号とのいずれか低値の信号を選択し、蒸気加減弁流量指令信号40sとして前記弁開度制御回路60に出力するように構成されている。
【0012】
次に、弁開度制御回路60について説明する。
弁開度制御回路60は、蒸気加減弁4の弁開度を制御する蒸気加減弁弁開度制御回路60−1と、インターセプト弁10の弁開度を制御するインターセプト弁弁開度制御回路60−2との2系統から構成されており、このうち、蒸気加減弁弁開度制御回路60−1は、前記負荷制御回路40から蒸気加減弁流量指令信号40sを入力して蒸気加減弁4の「流量−弁開度特性」に従って弁開度指令を決定し、この弁開度指令と弁開度検出器21の実弁開度21sとの偏差に制御ゲインを乗算して得られる値をサーボ指令信号として出力するように構成されている。
【0013】
一方、インターセプト弁弁開度制御回路60−2は、前記負荷制御回路40から出力された前記負荷要求指令信号44sを入力し、この負荷要求指令信号44sに、蒸気加減弁調定率とインターセプト弁調定率によって決定されるゲインを乗算した後に、インターセプト弁10を全開させるためのバイアス値(100%)を加算してインターセプト弁流量指令信号を求め、インターセプト弁10の「流量−弁開度特性」に従って決定される弁開度指令と弁開度検出器22の実弁開度22sとの偏差に制御ゲインを乗算して得られる値をサーボ指令信号として出力するように構成されている。
【0014】
次に、前記パワーロードアンバランス回路50Tについて説明する。
パワーロードアンバランス回路50Tは、負荷遮断あるいは系統事故によって発生する発電機負荷とタービン出力との不平衡(アンバランス)状態を検出してタービンの過速状態を解消するように機能するもので、タービン出力と比例関係にある蒸気圧力、例えば、再熱蒸気圧力を検出する再熱蒸気圧力検出器19の出力信号であるタービン出力信号19sと、発電機電流用変流器20で検出した発電機負荷信号20sとを入力し、発電機負荷信号20sの変化率(単位時間あたりの減少量)と、タービン出力信号19Tsと発電機負荷信号20sとの偏差をそれぞれ監視し、発電機負荷20sの変化率が予め定めた設定値(例えば、−40%/10msec)以上で、かつ、タービン出力信号19sと発電機負荷信号20sとの偏差が予め定めた設定値(例えば、+40%)以上となった状態を検知すると、信号50Tsを出力して、蒸気加減弁4の図示していない急速作動電磁弁により蒸気加減弁4を急速に全閉させると同時に、前記負荷制御回路40に内蔵されている負荷設定器の出力を強制的にゼロに設定するように構成されている。
【0015】
そして、この動作は、タービン出力信号19sと発電機負荷信号20sとの偏差が設定値(40%)未満になるまで継続され、偏差が設定値(40%)未満になると、図示していない急速作動電磁弁の作動を解除させると同時に、前記負荷制限回路40内の負荷設定器の出力を無負荷定格回転数の値に設定する。
【0016】
また、パワーロードアンバランス回路50Tが動作する状況下では、インターセプト弁急閉回路70も動作し、インターセプト弁10の急速作動電磁弁を作動させてインターセプト弁10を急速に全閉させる。
【0017】
最後に、前記インターセプト弁急閉回路70を説明する。
インターセプト弁急閉回路70は、負荷遮断あるいは系統事故によって発生するタービンの過速状態を解消するために、タービン出力19sが所定値(例えば、15%)以上あり、かつ、インターセプト弁の負荷制御信号から計算されるインターセプト弁10の弁開度指令が実弁開度よりも例えば5%以上低い値になった状態、すなわち、インターセプト弁弁開度指令とインターセプト弁の実開度との偏差が−5%以下になった条件を検出して、一定時間インターセプト弁10の急速作動電磁弁を動作させることによりインターセプト弁10を全閉させるように構成されている。
インターセプト弁急閉回路70には、上記の2つの条件に加え、インターセプト弁10の弁開度指令が全開値以下であることもインターロック条件としている。
【0018】
パワーロードアンバランス状態が発生してタービン回転数18sがインターセプト弁10の動作回転数域まで上昇すると、全開していたインターセプト弁10が閉方向に動作し始めて閉め方向偏差大の状態となり、インターセプト弁10が急速作動電磁弁の作動によって全閉する。インターセプト弁10が全閉すると、閉め方向偏差大が解消されて、タービン回転数の降下過程においてインターセプト弁10の速度調定率によって決定されるタービン回転数(例えば、インターセプト弁調定率が2%であれば102%)から定格回転数までの間で、インターセプト弁10が全閉状態から全開状態へ移行する。
【0019】
図9は従来装置によるパワーロードアンバランス発生時のタービン整定過程の動作図である。
負荷遮断時あるいは系統事故によって、発電機負荷とタービン出力との不平衡(アンバランス)状態になると、時刻t1でパワーロードアンバランス回路50Tが動作(ON)し、同時にタービン回転数は定格回転数(100%)から急速に上昇する。
【0020】
そして、タービン回転数が上昇し、時刻t2でブローダウン回転数(インターセプト弁速度調定率が例えば2%であれば102%の回転数)以上になると、この時点t2でインターセプト弁急閉回路70が動作(ON)し、インターセプト弁10の弁開度はそれまでの100%の弁開度から急激に絞られて全閉(0%)する。
インターセプト弁10の弁開度が全閉になると、インターセプト弁急閉回路70は再びOFF状態に戻る。
【0021】
なお、タービン回転数は、高圧タービン5、中圧タービン11への蒸気量が急減した直後は慣性により暫く上昇を続け、ピーク値に到達して減少に転じる。
その後、タービン回転数が時刻t3でブローダウン回転数(102%回転数)まで減少してくると、インターセプト弁10の弁開度が全閉(0%)状態から徐々に開き始める。
【0022】
そして、タービン回転数が更に低下し、時刻t4でタービン回転数が101%まで低下すると、パワーロードアンバランス回路50Tがリセット(OFF)し、同時にインターセプト弁10の弁開度をさらに増加させる。
【0023】
この結果、タービン回転数は時刻t4から再び増加し、102%を超えるようになる。
時刻t5でインターセプト弁急閉回路70が再び動作(ON)するため、インターセプト弁10の弁開度は再び全閉(0%)状態まで制御される。インターセプト弁10の弁開度が全閉になるので、インターセプト弁急閉回路70は再びOFF状態に戻る(時刻t6)。タービン回転数が102%まで低下すると、インターセプト弁10は関数発生器67の弁開度特性に応じて再び開き始め、時刻t7で101%の回転数になったあと、大きな変化率で開き、時刻t8で全開(100%)状態に戻る。このときのタービン回転数は100%である。
【0024】
タービン回転数はその後も減少し続け、時刻t9で定格回転数(100%)よりもかなり低い回転数に落ち着く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開平5−18207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
図9の特性図からわかるように、従来の蒸気タービン制御装置100Tでは、パワーロードアンバランス回路50Tやインターセプト弁急閉回路70の動作がリセットされるタイミングによって、タービン回転数の降下(タービン整定)過程における回転数の変動が発生することがある。
【0027】
すなわち、従来の蒸気タービン制御装置では、
(i) タービン出力と比例関係にある蒸気圧力として、インターセプト弁後の再熱ボウル圧力を使用する場合は、インターセプト弁急閉回路70が動作してインターセプト弁10が全閉(0%)した時点でタービン出力もゼロになってしまうため、オフディレータイマーを追加して一定時間パワーロードアンバランス回路の動作を継続させるようにしている。
【0028】
この場合は、定格負荷運転時の回転数上昇がもっとも大きくなる状況を想定してタイマー時間を設定するため、部分負荷運転中にパワーロードアンバランスが動作すると、動作をリセットするタイミングが遅すぎて、タービン回転数が定格回転数からアンダーシュートしてしまう欠点がある。
【0029】
(ii) タービン整定過程において、タービン回転数がブローダウン回転数(インターセプト弁速度調定率が2%であれば102%)以下になると、再熱器内の残留蒸気をブローダウンするために、インターセプト弁10が開き始める(図9の時刻t3)。タービン整定過程における回転数の2次ピーク(図9の時刻t4−t6)の発生は、ブローダウン回転数近辺におけるパワーロードアンバランス回路やインターセプト弁急閉回路の動作タイミングやリセットタイミングによってもたらされる。
【0030】
(iii) パワーロードアンバランス回路50Tのリセット時に負荷制御回路40の負荷設定器が無負荷定格回転数の値に設定されるため、最終的なタービンの整定回転数はほぼ定格回転数となるが、整定時の蒸気条件の影響を受けて定格回転数から乖離する場合がある。
【0031】
そこで、本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、パワーロードアンバランス動作後のタービン整定過程におけるタービン回転数の変動を小さくし、滑らかに整定回転数に到達できるようにした蒸気タービン制御装置および蒸気タービン制御方法を得ることを目的とする。
【0032】
また、他の目的は、パワーロードアンバランス動作をリセットするタイミングを適正にすることにより、インターセプト弁の開動作によってタービン回転数が上昇したり、タービン回転数が定格回転数からアンダーシュートするのを防止することができるようにした蒸気タービン制御装置および蒸気タービン制御方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、目標回転数とタービン実回転数との偏差から得られる速度制御信号を出力する速度制御回路と、負荷設定器によって設定された負荷設定信号と出力設定指令との偏差に前記速度制御回路から入力される速度制御信号を加算して得られる負荷要求指令信号と、負荷制限設定器によって設定される負荷制限設定信号とのうち、いずれかの低値を選択して蒸気加減弁流量指令信号として出力する負荷制御回路と、前記負荷制御回路からの蒸気加減弁流量指令信号に基づいて弁開度指令を決定し、弁開度指令と実弁開度との偏差に基づくサーボ指令信号として出力する蒸気加減弁弁開度制御回路と、前記負荷制御回路から入力した負荷要求指令信号に蒸気加減弁調定率およびインターセプト弁調定率によって決定される値を乗算した後、弁を全開させるためのバイアス値を加算してインターセプト弁流量指令信号を求め、このインターセプト弁流量指令信号を関数発生器に設定した弁の流量−開度特性に入力して弁開度指令を求め、この弁開度指令と実弁開度との偏差から得られる値をサーボ指令信号として出力するインターセプト弁弁開度制御回路と、発電機負荷とタービン出力との不平衡状態を検出したとき、急速作動電磁弁を動作させて前記蒸気加減弁を全閉させ、不平衡状態が解消されるまでこの動作状態を自己保持するパワーロードアンバランス回路と、インターセプト弁弁開度指令が実弁開度よりも所定値以上低い値になった状態を検出したとき、一定時間急速作動電磁弁を動作させてインターセプト弁を全閉させるインターセプト弁急閉回路と、からなる蒸気タービン制御装置において、前記パワーロードアンバランス回路は、タービン回転数の上昇レートが所定値以下になったことを検出するタービン回転数上昇レート判定手段と、タービン回転数が所定値以下になったことを検出するタービン回転数検出手段とを付加し、これらタービン回転数上昇レート判定手段およびタービン回転数検出手段が共に動作した条件でリセットすることを特徴とする。
【0034】
また、請求項2に係る発明は、目標回転数とタービン実回転数との偏差から得られる速度制御信号を出力する速度制御回路と、負荷設定器によって設定された負荷設定信号と出力設定指令との偏差に前記速度制御回路から入力される速度制御信号を加算して得られる負荷要求指令信号と、負荷制限設定器によって設定される負荷制限設定信号とのうち、いずれかの低値を選択して蒸気加減弁流量指令信号として出力する負荷制御回路と、前記負荷制御回路からの蒸気加減弁流量指令信号に基づいて弁開度指令を決定し、弁開度指令と実弁開度との偏差に基づくサーボ指令信号として出力する蒸気加減弁弁開度制御回路と、前記負荷制御回路から入力した負荷要求指令信号に蒸気加減弁調定率およびインターセプト弁調定率によって決定される値を乗算した後、弁を全開させるためのバイアス値を加算してインターセプト弁流量指令信号を求め、このインターセプト弁流量指令信号を関数発生器に設定した弁の流量−開度特性に入力して弁開度指令を求め、この弁開度指令と実弁開度との偏差から得られる値をサーボ指令信号として出力するインターセプト弁弁開度制御回路と、発電機負荷とタービン出力との不平衡状態を検出したとき、急速作動電磁弁を動作させて前記蒸気加減弁を全閉させ、不平衡状態が解消されるまでこの動作状態を自己保持するパワーロードアンバランス回路と、インターセプト弁弁開度指令が実弁開度よりも所定値以上低い値になった状態を検出したとき、一定時間急速作動電磁弁を動作させてインターセプト弁を全閉させるインターセプト弁急閉回路と、からなる蒸気タービン制御装置において、前記インターセプト弁弁開度制御回路は、インターセプト弁の急閉動作のリセットによってインターセプト弁が開動作する際に、インターセプト弁の動作速度を制限する開動作速度制限手段を有することを特徴とする。
【0035】
また、請求項4に係る発明は、目標回転数とタービン実回転数との偏差から得られる速度制御信号を出力する速度制御回路と、負荷設定器によって設定された負荷設定信号と出力設定指令との偏差に前記速度制御回路から入力される速度制御信号を加算して得られる負荷要求指令信号と、負荷制限設定器によって設定される負荷制限設定信号とのうち、いずれかの低値を選択して蒸気加減弁流量指令信号として出力する負荷制御回路と、前記負荷制御回路からの蒸気加減弁流量指令信号に基づいて弁開度指令を決定し、弁開度指令と実弁開度との偏差に基づくサーボ指令信号として出力する蒸気加減弁弁開度制御回路と、前記負荷制御回路から入力した負荷要求指令信号に蒸気加減弁調定率およびインターセプト弁調定率によって決定される値を乗算した後、弁を全開させるためのバイアス値を加算してインターセプト弁流量指令信号を求め、このインターセプト弁流量指令信号を関数発生器に設定した弁の流量−開度特性に入力して弁開度指令を求め、この弁開度指令と実弁開度との偏差から得られる値をサーボ指令信号として出力するインターセプト弁弁開度制御回路と、発電機負荷とタービン出力との不平衡状態を検出したとき、急速作動電磁弁を動作させて前記蒸気加減弁を全閉させ、不平衡状態が解消されるまでこの動作状態を自己保持するパワーロードアンバランス回路と、インターセプト弁弁開度指令が実弁開度よりも所定値以上低い値になった状態を検出したとき、一定時間急速作動電磁弁を動作させてインターセプト弁を全閉させるインターセプト弁急閉回路と、からなる蒸気タービン制御装置において、前記負荷制御回路は、前記パワーロードアンバランス回路の動作のリセット後の整定回転数を定格回転数に一致させるように前記負荷設定器の出力を変化させる負荷設定器出力制御手段を有することを特徴とする。
【0036】
さらに、請求項6に係る発明は、目標回転数とタービン実回転数との偏差から得られる速度制御信号を出力する速度制御回路と、負荷設定器によって設定された負荷設定信号と出力設定指令との偏差に前記速度制御回路から入力される速度制御信号を加算して得られる負荷要求指令信号と、負荷制限設定器によって設定される負荷制限設定信号とのうち、いずれかの低値を選択して蒸気加減弁流量指令信号として出力する負荷制御回路と、前記負荷制御回路からの蒸気加減弁流量指令信号に基づいて弁開度指令を決定し、弁開度指令と実弁開度との偏差に基づくサーボ指令信号として出力する蒸気加減弁弁開度制御回路と、
前記負荷制御回路から入力した負荷要求指令信号に蒸気加減弁調定率およびインターセプト弁調定率によって決定される値を乗算した後、弁を全開させるためのバイアス値を加算してインターセプト弁流量指令信号を求め、このインターセプト弁流量指令信号を関数発生器に設定した弁の流量−開度特性に入力して弁開度指令を求め、この弁開度指令と実弁開度との偏差から得られる値をサーボ指令信号として出力するインターセプト弁弁開度制御回路と、発電機負荷とタービン出力との不平衡状態を検出したとき、急速作動電磁弁を動作させて前記蒸気加減弁を全閉させ、不平衡状態が解消されるまでこの動作状態を自己保持するパワーロードアンバランス回路と、インターセプト弁弁開度指令が実弁開度よりも所定値以上低い値になった状態を検出したとき、一定時間急速作動電磁弁を動作させてインターセプト弁を全閉させるインターセプト弁急閉回路とを備えて蒸気タービンを制御するようにした蒸気タービン制御方法において、タービン回転数の上昇レートが所定値以下になった条件と、タービン回転数が所定値以下になった条件とが同時に成立したとき、パワーロードアンバランス動作をリセットすることを特徴とする。
【0037】
さらに、請求項7に係る発明は、目標回転数とタービン実回転数との偏差から得られる速度制御信号を出力する速度制御回路と、負荷設定器によって設定された負荷設定信号と出力設定指令との偏差に前記速度制御回路から入力される速度制御信号を加算して得られる負荷要求指令信号と、負荷制限設定器によって設定される負荷制限設定信号とのうち、いずれかの低値を選択して蒸気加減弁流量指令信号として出力する負荷制御回路と、前記負荷制御回路からの蒸気加減弁流量指令信号に基づいて弁開度指令を決定し、弁開度指令と実弁開度との偏差に基づくサーボ指令信号として出力する蒸気加減弁弁開度制御回路と、前記負荷制御回路から入力した負荷要求指令信号に蒸気加減弁調定率およびインターセプト弁調定率によって決定される値を乗算した後、弁を全開させるためのバイアス値を加算してインターセプト弁流量指令信号を求め、このインターセプト弁流量指令信号を関数発生器に設定した弁の流量−開度特性に入力して弁開度指令を求め、この弁開度指令と実弁開度との偏差から得られる値をサーボ指令信号として出力するインターセプト弁弁開度制御回路と、発電機負荷とタービン出力との不平衡状態を検出したとき、急速作動電磁弁を動作させて前記蒸気加減弁を全閉させ、不平衡状態が解消されるまでこの動作状態を自己保持するパワーロードアンバランス回路と、インターセプト弁弁開度指令が実弁開度よりも所定値以上低い値になった状態を検出したとき、一定時間急速作動電磁弁を動作させてインターセプト弁を全閉させるインターセプト弁急閉回路とを備えて蒸気タービンを制御するようにした蒸気タービン制御方法において、インターセプト弁の急閉動作のリセットによってインターセプト弁が開動作していく際に、インターセプト弁の弁開度指令の増加レートを制限することを特徴とする。
【0038】
さらにまた、請求項8に係る発明は、目標回転数とタービン実回転数との偏差から得られる速度制御信号を出力する速度制御回路と、負荷設定器によって設定された負荷設定信号と出力設定指令との偏差に前記速度制御回路から入力される速度制御信号を加算して得られる負荷要求指令信号と、負荷制限設定器によって設定される負荷制限設定信号とのうち、いずれかの低値を選択して蒸気加減弁流量指令信号として出力する負荷制御回路と、前記負荷制御回路からの蒸気加減弁流量指令信号に基づいて弁開度指令を決定し、弁開度指令と実弁開度との偏差に基づくサーボ指令信号として出力する蒸気加減弁弁開度制御回路と、前記負荷制御回路から入力した負荷要求指令信号に蒸気加減弁調定率およびインターセプト弁調定率によって決定される値を乗算した後、弁を全開させるためのバイアス値を加算してインターセプト弁流量指令信号を求め、このインターセプト弁流量指令信号を関数発生器に設定した弁の流量−開度特性に入力して弁開度指令を求め、この弁開度指令と実弁開度との偏差から得られる値をサーボ指令信号として出力するインターセプト弁弁開度制御回路と、発電機負荷とタービン出力との不平衡状態を検出したとき、急速作動電磁弁を動作させて前記蒸気加減弁を全閉させ、不平衡状態が解消されるまでこの動作状態を自己保持するパワーロードアンバランス回路と、インターセプト弁弁開度指令が実弁開度よりも所定値以上低い値になった状態を検出したとき、一定時間急速作動電磁弁を動作させてインターセプト弁を全閉させるインターセプト弁急閉回路とを備えて蒸気タービンを制御するようにした蒸気タービン制御方法において、パワーロードアンバランス回路の動作のリセット後の整定回転数を定格回転数に一致させるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0039】
本発明の蒸気タービン制御装置および蒸気タービン制御方法によれば、タービン回転数とその変化量によってパワーロードアンバランス動作の自己保持をリセットするタイミングを決定するようにしたので、リセットのタイミングが早すぎてインターセプト弁の開動作によってタービン回転数が上昇したり、リセットのタイミングが遅すぎてタービン回転数が定格回転数からアンダーシュートしたりする不具合を防止することができる。
【0040】
また、本発明の蒸気タービン制御装置および蒸気タービン制御方法によれば、パワーロードアンバランス動作後のタービン整定過程におけるタービン回転数の変動を小さくし、滑らかに整定回転数に到達させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態1に係る蒸気タービン制御装置の概略制御ブロック図。
【図2】実施形態1の蒸気タービン制御装置のパワーロードアンバランス発生時のタービン整定過程の動作図。
【図3】本発明の実施形態2に係る蒸気タービン制御装置の概略制御ブロック図。
【図4】実施形態2の蒸気タービン制御装置のパワーロードアンバランス発生時のタービン整定過程の動作図。
【図5】本発明の実施形態3に係る蒸気タービン制御装置の概略制御ブロック図。
【図6】実施形態3の蒸気タービン制御装置のパワーロードアンバランス発生時のタービン整定過程の動作図。
【図7】蒸気タービンプラントを示す概略系統図。
【図8】従来の蒸気タービン制御装置を示す概略制御ブロック図。
【図9】従来のパワーロードアンバランス発生時のタービン整定過程の動作図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明に係る蒸気タービン制御装置の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各図を通して同一の構成要素には同一の符号を付け、重複した説明とならないように適宜割愛する。
【0043】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1に係る蒸気タービン制御装置の制御ブロック図であり、図2は同実施形態1のパワーロードアンバランス発生時のタービン整定過程の動作図である。
【0044】
(構成)
図1において、本実施形態1に係る蒸気タービン制御装置100は、従来の蒸気タービン制御装置100Tと同様に、速度制御御回路30、負荷制御回路40、パワーロードアンバランス回路50、弁開度制御回路60およびインターセプト弁急閉回路70によって構成されているが、パワーロードアンバランス回路50に改良が施されている点で従来装置100Tとは異なる。
【0045】
以下、順を追って、速度制御回路30からインターセプト弁急閉回路70までの内部構成を詳細に説明する。
【0046】
まず、速度制御御回路30から説明する。
速度制御御回路30は、タービン定格回転数を設定する定格回転数設定器31と、このタービン定格回転数設定器31の定格回転数設定値31sとタービン回転数検出器18(図7)で検出されたタービン実回転数18sとを突き合せて回転数偏差信号32sを算出する加算部32と、この回転数偏差信号32sに必要な制御ゲインを乗算するゲイン調整器33とから構成されている。そして、このゲイン調整器33の出力30sは速度制御信号として、次段の負荷制御回路40に出力される。
【0047】
次に、負荷制御回路40について説明する。
負荷制御回路40は、積分要素によって構成され、出力信号を入力側にフィードバックして一次遅れ回路を構成する負荷設定器43と、この負荷設定器43の入力側でオペレータ等によって設定された出力設定指令80sと前記負荷設定信号43sとの偏差信号41sを算出する加算部41と、負荷設定器43から出力された負荷設定値43sを後述するパワーロードアンバランス回路50の動作によって強制的にゼロに設定する設定切替器42と、前記偏差信号41sを前記負荷設定器43で積分して得られた負荷設定値43sに前述の速度制御御回路30から出力された速度制御信号30sを加算して負荷要求指令信号44sを得る加算部44と、負荷制限設定器45と、前記加算部44から出力された負荷要求指令信号44sおよび前記負荷制限設定器45からの制限信号45sを入力し、何れか低値の信号を選択して蒸気加減弁流量指令40sとして出力する低値選択器46とから構成されている。
【0048】
次に、パワーロードアンバランス回路50について説明する。
本実施形態1によるパワーロードアンバランス回路50は、所定時間内におけるタービン回転数の変化量、すなわちタービン回転数変化率を計算し、上昇レートが所定値(例えば0%)以下になったこと(条件1)、およびタービン回転数が所定値(例えば101%)以下になったこと(条件2)を検出して、動作状態をリセット(OFF)させる機能を従来のパワーロードアンバランス回路50Tに付加している。
【0049】
すなわち、本実施形態1によるパワーロードアンバランス回路50は、大きく分けて従来例の図8に記載のパワーロードアンバランス回路50Tに対応する第1保護回路50−1と、この第1保護回路50−1が動作して自己保持しているときに上記の2条件が成立すると自己保持を解除すなわちリセットする第2保護回路50−2とから構成されている。
【0050】
まず、第1保護回路50−1は、タービン出力と比例関係にある再熱蒸気圧力検出器19の出力信号であるタービン出力信号19sと発電機電流用変流器20で検出された発電機負荷信号20sとを突き合せてその偏差信号を算出する加算部51と、この加算部51の偏差信号51sを入力してその偏差大きさが予め設定されている設定値(一例として、+40%)以上か否かを比較して設定値以上であれば論理信号「1」なる信号52sを出力する比較器52と、発電機負荷20sの変化率を演算する微分器53と、この微分器53から出力された発電機負荷変化率53sが予め定めた変化率レート(一例として、−40%/10msec)以上に減少した場合、論理信号「1」なる信号54sを出力する比較器54と、前記比較器52の出力信号52sを第1の入力信号とするとともに、前記比較器54の出力信号54sをOR演算子55を介して第2の入力信号55sとし、両入力信号52s、55sのアンド条件が成立している間、論理信号「1」を出力するAND演算子56とから構成されている。
【0051】
なお、前述した再熱蒸気圧力検出器19が再熱器7の上流に設置されずにインターセプト弁10の下流に設置される場合は、インターセプト弁10の全閉によって直ちにリセットされることを防ぐために、AND演算子56の後にオフディレータイマーを設けてリセットのタイミングを一定時間遅延させるようにしている。
【0052】
次に、第2保護回路50−2は、前記タービン回転数検出器18によって検出されたタービン実回転数18sを入力し、そのタービン実回転数の上昇レートを演算する変化率演算器58と、この変化率演算器58で求められたタービン回転数の上昇レートが予め定めた設定値(一例として、0%)以下か否かを判定し、0%以下の場合に論理信号「1」を出力する比較器59を有している。ここで、設定値が0%以下という意味は、タービン回転数の上昇レートがマイナスの場合も含まれる。
【0053】
さらに、第2保護回路50−2は、タービン実回転数18sが予め定めた設定値(一例として、101%)以下であるか否かを判定し、101%以下の場合に論理信号「1」を出力する比較器510と、これら両出力信号59s、510sを入力して両者のアンド条件が成立したとき論理信号「1」を、アンド条件が成立しないとき論理信号「0」を出力するAND演算子511と、このAND演算子511の論理出力「1」または「0」を反転して「0」または「1」の出力信号512sとして出力するNOT演算子512と、このNOT演算子512の出力信号51sと、前記第1保護回路50−1のAND演算子56の出力56sをOR演算子57を介して得た信号57sとを入力し、両入力信号512s、57sのアンド条件が成立したとき蒸気加減弁4に対して急閉指令50sを出力するAND演算子513とから構成されている。
【0054】
なお、このパワーロードアンバランス回路50は、第1保護回路50−1が一旦動作した場合自己保持するようにAND演算子513の出力信号50sをOR演算子57の入力端子に入力するように構成している。
【0055】
このように、本実施形態1のパワーロードアンバランス回路50には、従来のパワーロードアンバランス回路50Tに相当する第1保護回路50−1に対して、タービン回転数検出器18で検出したタービン回転数18sを入力し、変化率計算器58によって計算される整定過程におけるタービン回転数の上昇レートが0%以下の設定値になったことを比較器59で検出し、かつ、このときのタービン回転数18sが101%の設定値以下であることを比較器510で検出し、両比較器59、510から出力される信号59s、510sのアンド条件が成立したとき、パワーロードアンバランス回路50の動作状態をリセットする第2保護回路50−2を付加してある。
【0056】
次に、弁開度制御回路60について説明する。
この弁開度制御回路60は大きく分けて、蒸気加減弁4の弁開度を制御する蒸気加減弁弁開度制御回路60−1と、インターセプト弁10の弁開度を制御するインターセプト弁弁開度制御回路60−2との2系統から構成されている。
【0057】
蒸気加減弁弁開度制御回路60−1は、負荷制御回路40から蒸気加減弁流量指令信号40sを入力して予め設定されている蒸気加減弁4の「流量指令−弁開度指令変換特性」に従って弁開度指令61sを決定する関数発生器61と、この弁開度指令61sと実弁開度21sとの偏差信号62sを算出する加算部62と、この偏差信号62sに所定の制御ゲインを乗算して得られる値をサーボ指令信号として出力するゲイン調整器63と、から構成されている。
【0058】
一方、インターセプト弁弁開度制御回路60−2は、前記負荷制御回路40の加算部44から出力された負荷要求指令信号44sを入力し、この負荷要求指令信号44sに蒸気加減弁調定率とインターセプト弁調定率によって決定される制御ゲインを乗算するゲイン調整器64と、このゲイン調整器64で乗算して得られた値64sおよびバイアス設定器65によって設定された弁を全開させるためのバイアス値(100%)65sを加算してインターセプト弁流量指令信号66sを求める加算部66と、このインターセプト弁流量指令信号66sを入力して、予め定められたインターセプト弁の「流量−弁開度特性」に従って弁開度指令67sを決定する関数発生器67と、この弁開度指令67sと実弁開度22sとの偏差68sを求める加算部68と、この偏差68sに制御ゲインを乗算して得られた値をサーボ指令信号60−2sとして出力するゲイン調整器69と、から構成されている。
【0059】
さらに、インターセプト弁急閉回路70について説明する。
このインターセプト弁急閉回路70は、前記インターセプト弁弁開度制御回路60−2の関数発生器67からインターセプト弁弁開度指令67sを入力し、この弁開度指令67sが全開値以下である場合に論理信号「1」なる信号71sを出力する比較器71と、前記インターセプト弁弁開度制御回路60−2の加算部68から出力される偏差68sを入力し、この偏差68sが所定値(例えば、−5%)以下である場合に、論理信号「1」なる信号72sを出力する比較器72と、再熱蒸気圧力検出器19からのタービン出力信号19sを入力し、これが所定値(例えば、15%)以上である場合に論理信号「1」なる信号73sを出力する比較器73と、これら比較器71、72および73の出力信号71s、72s、73sを入力してアンド条件を検出し、アンド条件成立結果をインターセプト弁10に急閉指令70sとして出力するAND演算子74とから構成されている。
【0060】
このように、インターセプト弁急閉回路70の動作条件は、タービン出力19sが所定値(例えば、15%)以上あり、かつ、インターセプト弁速度負荷制御信号から計算されるインターセプト弁開度指令とインターセプト弁開度との偏差が所定値(例えば、−5%)以下、すなわち閉め方向の偏差が大きくなった状態にあり、さらに、インターセプト弁10の弁開度指令が全開値以下であることである。
【0061】
(作用)
次に本実施形態1に係わる蒸気タービン制御装置100の作用を説明する。
(i)定常状態(蒸気タービン出力と発電機出力とが平衡している状態)
速度制御回路30は、定格回転数設定信号31sとタービン回転数信号18sとの偏差信号32sがゲイン調整器33により好ましいゲインに調整されて速度制御信号30sとして負荷制限回路40へ出力する。
【0062】
この速度制御信号30sは負荷制限回路40において、負荷設定信号43sと加算されて負荷要求指令信号44sとなって低値選択器46へ送られる。この低値選択器46には予め負荷制限設定値45sが入力されており、負荷要求指令信号44sと負荷制限設定値45sのうちのいずれか低い値の信号が選択されて蒸気弁流量指令信号40sとなって弁開度制御回路60に出力される。
【0063】
弁開度制御回路60の蒸気加減弁弁開度制御回路60−1では、負荷制限回路40から出力された蒸気加減弁流量指令信号40sを関数発生器61に入力して蒸気加減弁4の「流量指令−弁開度指令変換特性」に従って弁開度指令61sを決定し、加算部62でこの弁開度指令61sと蒸気加減弁4の弁開度検出器21で検出された弁開度信号21sとの偏差62sを演算し、さらに、この偏差62sにゲイン調整器63で調整ゲインを乗じたうえで図示しない蒸気加減弁用駆動装置にサーボ指令信号60−1sを送る。蒸気加減弁4はこのサーボ指令信号60−1sに対応した高圧蒸気を高圧蒸気タービン5に供給する。
【0064】
また、インターセプト弁弁開度制御回路60−2では、前記負荷制御回路40の加算部44から出力された負荷要求指令信号44sをゲイン調整器64に入力して、蒸気加減弁調定率とインターセプト弁調定率によって決定される値を乗算して乗算値64sを求め、この乗算値64sにインターセプト弁10を全開させるためのバイアス値(100%)65sを加算してインターセプト弁流量指令信号66sを求め、関数発生器67に入力される。この関数発生器67では入力に応じた弁開度指令67sを発生させ、弁開度検出器22の検出信号22sとの偏差68sを演算し、ゲイン調整器69で調整ゲインを乗じたうえで図示しないインターセプト弁駆動装置にサーボ指令信号60−2sを送る。インターセプト弁10はこのサーボ指令信号60−2sに応じた中圧蒸気を中圧蒸気タービン11に供給する。
【0065】
このようにして、電力系統の定常状態では、発電機負荷が変動しても、発電機回転数が定格回転数に維持されるように蒸気加減弁4およびインターセプト弁10の弁開度を制御している。
【0066】
なお、この電力系統の定常状態では蒸気タービン出力19sと発電機出力20sとがバランスしているので、パワーロードアンバランス回路50の第1保護回路50−1の加算部51の偏差信号51sは比較器52の設定値よりも十分に小さいので比較器52から出力される信号は論理値「0」であり、さらに、微分器53から得られる発電機出力変化率53sも比較器54の設定値よりも十分に小さいので、比較器54から出力される信号は論理値「0」であり、結局、第1保護回路50−1は動作せず、パワーロードアンバランス回路50が動作することはない。
【0067】
パワーロードアンバランス回路50が動作しないので、負荷制御回路40の設定切替器42は負荷設定器43の設定値を強制的にゼロにするように動作することはない。このため、インターセプト弁急閉回路70も動作することはない。
【0068】
(ii)蒸気タービン出力と発電機出力とが不平衡(アンバランス)の状態
系統事故等によって遮断器16が遮断されたり、あるいは図示していない電力系統内で負荷遮断が行われたことに起因して発電機出力20sが急減すると、その発電機出力20sの減少分に応じて原動機である蒸気タービンの回転数は上昇する。
【0069】
パワーロードアンバランス回路50の第1保護回路50−1では、微分器53で得られた発電機出力20sの減少率53sが比較器54に設定されている所定値(例えば、−40%/10msec)以上の割合で減少し、かつ、タービン出力信号19sと発電機負荷信号20sとの偏差51sが比較器52で設定されている所定値(例えば、+40%)以上になったことをAND演算子56で検知する。すると、AND演算子56から論理値「1」なる信号56sがOR演算子57を経てAND演算子513の一方の入力端子に出力される。
【0070】
このとき、パワーロードアンバランス回路50の第2保護回路50−2では、パワーロードアンバランス発生時のタービン整定過程時に変化率計算器58によって計算されるタービン回転数18sの上昇レート58sは、比較器59に予め設定されている所定値(例えば0%)以下ではなく、0%を当然超える大きさとなるので、比較器59からは論理値「0」なる信号59sが出力される。
【0071】
また、タービン回転数18sは比較器510に予め設定されている所定値(例えば、101%)以下ではなく、101%より大きいので、比較器510からは論理値「0」なる信号510sが出力される。この状態では、AND演算子511のアンド条件は成立せず、AND演算子511から論理値「0」なる信号511sがNOT演算子512に出力される。NOT演算子512は、この論理値「0」なる信号511sを反転して論理値「1」なる信号512sをAND演算子513の他方の入力端子に入力する。
【0072】
この結果、系統事故等によって負荷遮断がなされたり、遮断器16が遮断されたりして発電機出力20sがゼロになるか急激に減少する状態では、AND演算子513では両入力信号が「1」となってパワーロードアンバランス回路50が動作する。
【0073】
パワーロードアンバランス回路50は動作すると、蒸気加減弁4の図示していない急速作動電磁弁に急閉指令50sを与えて蒸気加減弁4を急速に全閉させると同時に、負荷制御回路40に内蔵されている設定切替器42を介して負荷設定器43の出力を強制的にゼロに設定する。
なお、この動作は第2保護回路50−2の比較器59および比較器510がともに動作してNOT演算子512から論理値「0」なる信号512sが出力されるまで継続される。
【0074】
前述のように負荷設定器43の出力を強制的にゼロに設定した結果、加算部44から出力される負荷要求指令信号44sは小さい値になってインターセプト弁弁開度制御回路60−2に出力される。このためインターセプト弁弁開度制御回路60−2では、加算部66の出力信号66sが健全状態のときよりも小さくなり、関数発生器67から出力されたインターセプト弁弁開度指令67sも全開値(100%)よりも小さくなる。
【0075】
すると、インターセプト弁急閉回路70において、比較器71が動作する。このとき、インターセプト弁弁開度制御回路60−2で得られる偏差68sも一定値(例えば、−5%)以下なので、比較器72も動作し、タービン出力19sは一定値(例えば、15%)以上の大きさであるので比較器73も動作する。
【0076】
このため、インターセプト弁急閉回路70のAND演算子74の入力条件が成立し、インターセプト弁10の図示していない急速作動電磁弁に急閉指令70sを与えてインターセプト弁10の弁開度を急速に全閉させる。
【0077】
タービン回転数は、これらパワーロードアンバランス回路50、インターセプト弁急閉回路70が動作した直後は慣性によって上昇し、ピーク値に到達した後減少に転じる。タービン回転数18sがピーク値から予め設定した所定値(例えば、101%)以下まで低下し、かつ、このときの変化率計算器58によって計算されるタービン回転数の上昇レートが所定値(たとえば、0%)以下になると、第2保護回路50−2の比較器510および比較器59がそれぞれ動作して論理信号「1」を出力するので、AND演算子511から論理値「1」なる信号511sが出力される。この結果NOT演算子512からの出力信号512sはこれまでの論理値「1」から「0」に反転し、パワーロードアンバランス回路50の動作の自己保持をリセットし、蒸気加減弁4の急速作動電磁弁の作動を解除し、さらに、負荷制御回路40に設けられている負荷設定器43の出力を無負荷定格回転数の値に設定する。
【0078】
このように、本実施形態1によるパワーロードアンバランス回路50は、従来のパワーロードアンバランス回路50Tに相当する第1保護回路50−1に対して、タービン回転数の上昇レートが所定値(たとえば、0%)以下になったこと、およびタービン回転数18sが所定値(例えば、101%)以下であることの2条件を検出したときにパワーロードアンバランス回路50の動作の自己保持をリセットする第2保護回路50−2を付加したので、従来よりもタービン回転数の高い状態で蒸気加減弁4の急速作動電磁弁の作動を解除するとともに、負荷制御回路40の負荷設定器43の出力を無負荷定格回転数の値に設定する。
【0079】
図2は、パワーロードアンバランス回路50の動作(ON)時点からリセット(OFF)時点までの本実施形態1と従来装置の動作を対比して描いたものであり、図2(a)は従来例の応動の様子を、図2(b)は本実施形態1の応動の様子をそれぞれ示す。
【0080】
従来のパワーロードアンバランス回路では、本実施形態1の第2保護装置50−2を設けていないので、パワーロードアンバランス回路50Tのみで動作、リセットを判定せざるを得ない。図2(a)で示すように、タービン回転数がピーク値から定格回転数(100%)まで低下した時点t8でパワーロードアンバランス回路50Tをリセットさせているため、結果的にパワーロードアンバランス回路の復帰タイミングが遅過ぎてしまい、タービン回転数は定格回転数(100%)からアンダーシュートしてかなり低い回転数で整定回転数となる。DS2は整定回転数と定格回転数との差を表す。
【0081】
これに対して、本実施形態1では、パワーロードアンバランス回路50に第2の保護装置50−2を追加したことにより、図2(b)で示すように、タービン回転数がピーク値から定格回転数よりも高い回転数(例えば101%)以下まで低下した時点txでそのときの上昇レートの変化率を判定してパワーロードアンバランス回路50をリセットさせるようにしたので、従来よりも適切なタイミングで整定回転数を定格回転数に近づけることができる。この場合の整定回転数と定格回転数との差をDS1とすると、DS1は従来例のDS2に比べて小さくすることができる。
【0082】
以上述べたように、本実施形態1によれば、タービン回転数とその変化量によってパワーロードアンバランス回路の動作の自己保持をリセットするタイミングを決定するようにしたので、従来技術の図9の時刻t4−t5のように、リセットのタイミングが早すぎてインターセプト弁10の開動作によってタービン回転数が上昇したり、リセットのタイミングが遅すぎて時刻t8−t9のようにタービン回転数が定格回転数からアンダーシュートしたりする不具合を防止することができる。
【0083】
(実施形態2)
次に、図3、図4を参照して本実施形態2の蒸気タービン制御装置を説明する。
図3は、本発明の実施形態2に係る蒸気タービン制御装置の制御ブロック図であり、図4は、同実施形態2のパワーロードアンバランス発生時のタービン整定過程の動作図である。
【0084】
本実施形態2の蒸気タービン制御装置100Aが前述した実施形態1の蒸気タービン制御装置100と相違する点は、パワーロードアンバランス回路50および弁開度制御回路60の内部構成の一部が変更されたことであり、その他の構成要件については実施形態1と同様であるので、重複する説明は適宜省略する。
【0085】
すなわち、本実施形態2のパワーロードアンバランス回路50は、図1のパワーロードアンバランス回路50から第2保護回路50−2を削除して従来技術と同じ第1保護回路50−1のみの構成としている。
【0086】
また、本実施形態2の弁開度制御回路60は、インターセプト弁弁開度制御回路60−2の関数発生器67と加算部68との間に、インターセプト弁10の急閉動作のリセット(OFF)によってインターセプト弁10が開動作する際の動作速度、言い換えれば、弁開度指令の増加レートを制限する、開動作速度制限手段を設ける構成としている。
【0087】
この開動作速度制限手段は、関数発生器67と加算部68との間に当該関数発生器67の出力である弁開度指令67sの増加方向の変化率を制限する変化率制限器610を設け、さらに、パワーロードアンバランス回路50およびインターセプト急閉回路70が動作してからタービンが整定するまでの間、関数発生器67からの出力信号67sを変化率制限器610からの出力信号610sに切り替えて出力する信号切替器611とから構成している。
【0088】
このように構成された本実施形態2においては、パワーロードアンバランスの発生によってパワーロードアンバランス回路50およびインターセプト急閉回路70が動作してからタービンが整定するまでの間は、インターセプト弁10の弁開度指令として変化率制限器610の出力610sが信号切替器611によって選択され、弁開度指令の増加率が制限されるようになっている。
【0089】
この制限された弁開度指令の変化に従って、タービンが整定するまでインターセプト弁10が緩やかに開いていく。タービン回転数が整定した後は再び、信号切替器611によって関数発生器67の出力を弁開度指令として切り替える。
【0090】
図4に本実施形態2によるパワーロードアンバランス発生時のタービン整定過程と、従来技術のタービン整定過程とを対比して描いており、図4(a)は図9と同じく従来技術のタービン整定過程を示し、図4(b)は本実施形態2のインターセプト弁開度およびタービン回転数の変化の様子を示す。
【0091】
インターセプト弁弁開度制御回路60−2に変化率制限器610、信号切替器611を備えていない従来技術の場合には、図4(a)のように、インターセプト弁10が開いていく過程(時刻t4−t6)で、タービン回転数が上昇に転じたり、それによって再度インターセプト弁急閉回路70が動作する不具合がある(時刻t5−t6)。
【0092】
これに対して、本実施形態2の場合は、図4(b)で示すように、タービン回転数が整定するまでの間、変化率制限器610によってインターセプト弁10の弁開度指令の変化を制限して緩やかにインターセプト弁10を開動作させることにより、タービン回転数に与える外乱を少なくすることができる。
以上述べたように、本実施形態2によれば、インターセプト弁10の開動作がタービン回転数の変動に与える影響を小さくすることができる。
【0093】
(実施形態3)
次に、図5、図6を参照して本実施形態3の蒸気タービン制御装置を説明する。
図5は、本発明の実施形態3に係る蒸気タービン制御装置の制御ブロック図であり、図6は、同実施形態3のパワーロードアンバランス発生時のタービン整定過程の動作図である。
【0094】
本実施形態3の蒸気タービン制御装置100Bが前述の実施形態1の蒸気タービン制御装置100と相違する点は、パワーロードアンバランス回路50および負荷制御回路40の内部構成の一部が変更されたことであり、その他の構成要件については実施形態1と同様であるので、重複する説明は適宜省略する。
【0095】
すなわち、本実施形態3では、パワーロードアンバランス回路50は、図1のパワーロードアンバランス回路50から第2保護回路50−2を削除して第1保護回路50−1のみすなわち、従来技術と同じ構成としている。
【0096】
また、負荷制御回路40は、出力設定指令80sと負荷設定器43の出力43sとの偏差を演算する加算部41と負荷設定器43との間に、パワーロードアンバランス回路50が動作状態からリセット後にタービンの整定回転数を定格回転数と一致させるように制御する負荷設定器出力制御を追加した構成としている。
【0097】
この追加した負荷設定器出力制御手段は、タービン回転数18sを入力して定格回転数設定器47(速度制御回路30の定格回転数設定器31と同等の設定器)との偏差48sを演算する加算部48と、この偏差48sをゲイン調整して出力するゲイン調整器49と、負荷設定器43への入力信号を出力設定指令80sと負荷設定器43の出力43sとの偏差41sから、ゲイン調整器49の出力に切り替えるための信号切替器410とから構成されている。
【0098】
このように構成された本実施形態3において、パワーロードアンバランス回路50が動作状態からリセットしてタービンが整定した後、信号切替器410によって定格回転数と実際の整定回転数の偏差に応じた値が負荷設定器43に入力される。負荷設定器43は前述したように積分要素であるため、上記の定格回転数と実際の整定回転数の偏差が打ち消されるまで、つまりタービン回転数が定格回転数に一致するまで負荷設定器43の出力43sを変化させる。タービン回転数18sが定格回転数に復帰した後は、信号切替器410は本来の出力設定指令80sと負荷設定器43の出力値43sとの偏差信号に出力を切り替える。
【0099】
図6に本実施形態3によるパワーロードアンバランス発生時のタービン整定過程と、従来技術のタービン整定過程と対比して描いており、図6(a)は図9と同じく従来技術の場合のタービン整定過程を示し、図6(b)は本実施形態3のタービン回転数の変化の様子を示す。
【0100】
図8のように、負荷制御回路40にゲイン調整器49および信号切替器410を付加していない従来例の場合には、図6(a)の時刻t9以降のように、整定時の蒸気条件に依存して最終的なタービンの整定回転数が定格回転数から乖離する場合がある。
【0101】
これに対して、本実施形態3では、整定回転数と定格回転数の偏差を信号切替器410によって負荷設定器43に積算するようにしたので、図6(b)の時刻t11以降のように、整定後にタービン回転数を定格回転数に一致させるように制御できる。
【0102】
以上述べたように、本実施形態3によれば、パワーロードアンバランス回路の動作後の整定回転数が定格回転数から大きく乖離することを防止できるので、その後のタービン運転操作をスムーズに行うことができる。
【符号の説明】
【0103】
1…蒸気発生器またはボイラ、2…主蒸気管、3…主蒸気止弁、4…蒸気加減弁、5…高圧タービン、6…低温再熱管、7…再熱器、8…高温再熱管、9…再熱蒸気止弁、10…インターセプト弁、11…中圧タービン、12…クロスオーバー管、13…低圧タービン、14…復水器、15…発電機、16…遮断器、17…電力系統、18…タービン回転数検出器、19…再熱蒸気圧力検出器、20…発電機電流用変流器、21…蒸気加減弁の弁開度検出器、22…インターセプト弁の弁開度検出器、80…出力設定指令、30…速度制御回路、31…(タービン)定格回転数設定器、32…加算部、33…(速度制御用)ゲイン調整器、40…負荷制御回路、41…加算部、42…(負荷設定器出力強制)設定切替器、43…負荷設定器、45…負荷制限設定器、46…低値選択器、47…(タービン)定格回転数設定器、48…加算部、49…ゲイン調整器、410…信号切替器、50…パワーロードアンバランス回路、50−1…第1保護回路、50−2…第2保護回路、51…加算部、52…(タービン出力−発電機負荷偏差)比較器、53…(発電機負荷用)微分器、54…(発電機負荷変化)比較器、55…OR演算子、56…AND演算子、57…OR演算子、58…(タービン回転数)変化率計算器、59…(タービン回転数変化率)比較器、510…(タービン回転数)比較器、511…AND演算子、512…NOT演算子、513…AND演算子、60…弁開度制御回路、60−1、60−2、61…蒸気加減弁4の流量指令−弁開度指令変換用関数発生器、62…加算部、63…蒸気加減弁4の弁開度制御用ゲイン調整器、64…(インターセプト弁速度調定率)ゲイン調整器、65…(インターセプト弁全開バイアス)設定器、66…加算部、67…(インターセプト弁の流量指令−弁開度指令変換用)関数発生器、68…加算部、69…(インターセプト弁の弁開度制御用)ゲイン調整器、610…(インターセプト弁 弁開度指令)変化率制限器、611…信号切替器、70…インターセプト弁急閉回路、71…(インターセプト弁の弁開度指令)比較器、72…(インターセプト弁の弁開度指令−実弁開度)比較器、73…(タービン出力)比較器、74…AND演算子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標回転数とタービン実回転数との偏差から得られる速度制御信号を出力する速度制御回路と、
負荷設定器によって設定された負荷設定信号と出力設定指令との偏差に前記速度制御回路から入力される速度制御信号を加算して得られる負荷要求指令信号と、負荷制限設定器によって設定される負荷制限設定信号とのうち、いずれかの低値を選択して蒸気加減弁流量指令信号として出力する負荷制御回路と、
前記負荷制御回路からの蒸気加減弁流量指令信号に基づいて弁開度指令を決定し、弁開度指令と実弁開度との偏差に基づくサーボ指令信号として出力する蒸気加減弁弁開度制御回路と、
前記負荷制御回路から入力した負荷要求指令信号に蒸気加減弁調定率およびインターセプト弁調定率によって決定される値を乗算した後、弁を全開させるためのバイアス値を加算してインターセプト弁流量指令信号を求め、このインターセプト弁流量指令信号を関数発生器に設定した弁の流量−開度特性に入力して弁開度指令を求め、この弁開度指令と実弁開度との偏差から得られる値をサーボ指令信号として出力するインターセプト弁弁開度制御回路と、
発電機負荷とタービン出力との不平衡状態を検出したとき、急速作動電磁弁を動作させて前記蒸気加減弁を全閉させ、不平衡状態が解消されるまでこの動作状態を自己保持するパワーロードアンバランス回路と、
インターセプト弁弁開度指令が実弁開度よりも所定値以上低い値になった状態を検出したとき、一定時間急速作動電磁弁を動作させてインターセプト弁を全閉させるインターセプト弁急閉回路と、
からなる蒸気タービン制御装置において、
前記パワーロードアンバランス回路は、
タービン回転数の上昇レートが所定値以下になったことを検出するタービン回転数上昇レート判定手段と、タービン回転数が所定値以下になったことを検出するタービン回転数検出手段とを付加し、これらタービン回転数上昇レート判定手段およびタービン回転数検出手段が共に動作した条件でリセットすることを特徴とする蒸気タービン制御装置。
【請求項2】
目標回転数とタービン実回転数との偏差から得られる速度制御信号を出力する速度制御回路と、
負荷設定器によって設定された負荷設定信号と出力設定指令との偏差に前記速度制御回路から入力される速度制御信号を加算して得られる負荷要求指令信号と、負荷制限設定器によって設定される負荷制限設定信号とのうち、いずれかの低値を選択して蒸気加減弁流量指令信号として出力する負荷制御回路と、
前記負荷制御回路からの蒸気加減弁流量指令信号に基づいて弁開度指令を決定し、弁開度指令と実弁開度との偏差に基づくサーボ指令信号として出力する蒸気加減弁弁開度制御回路と、
前記負荷制御回路から入力した負荷要求指令信号に蒸気加減弁調定率およびインターセプト弁調定率によって決定される値を乗算した後、弁を全開させるためのバイアス値を加算してインターセプト弁流量指令信号を求め、このインターセプト弁流量指令信号を関数発生器に設定した弁の流量−開度特性に入力して弁開度指令を求め、この弁開度指令と実弁開度との偏差から得られる値をサーボ指令信号として出力するインターセプト弁弁開度制御回路と、
発電機負荷とタービン出力との不平衡状態を検出したとき、急速作動電磁弁を動作させて前記蒸気加減弁を全閉させ、不平衡状態が解消されるまでこの動作状態を自己保持するパワーロードアンバランス回路と、
インターセプト弁弁開度指令が実弁開度よりも所定値以上低い値になった状態を検出したとき、一定時間急速作動電磁弁を動作させてインターセプト弁を全閉させるインターセプト弁急閉回路と、
からなる蒸気タービン制御装置において、
前記インターセプト弁弁開度制御回路は、インターセプト弁の急閉動作のリセットによってインターセプト弁が開動作する際に、インターセプト弁の動作速度を制限する開動作速度制限手段を有することを特徴とする蒸気タービン制御装置。
【請求項3】
前記インターセプト弁の動作速度を制限する開動作速度制限手段は、前記関数発生器の出力である弁開度指令の増加方向の変化率を制限する変化率制限器と、前記パワーロードアンバランス回路およびインターセプト急閉回路が動作してからタービンが整定するまでの間、前記関数発生器からの出力信号を前記変化率制限器からの出力信号に切り替えて出力する信号切替器と、から構成したことを特徴とする請求項2記載の蒸気タービン制御装置。
【請求項4】
目標回転数とタービン実回転数との偏差から得られる速度制御信号を出力する速度制御回路と、
負荷設定器によって設定された負荷設定信号と出力設定指令との偏差に前記速度制御回路から入力される速度制御信号を加算して得られる負荷要求指令信号と、負荷制限設定器によって設定される負荷制限設定信号とのうち、いずれかの低値を選択して蒸気加減弁流量指令信号として出力する負荷制御回路と、
前記負荷制御回路からの蒸気加減弁流量指令信号に基づいて弁開度指令を決定し、弁開度指令と実弁開度との偏差に基づくサーボ指令信号として出力する蒸気加減弁弁開度制御回路と、
前記負荷制御回路から入力した負荷要求指令信号に蒸気加減弁調定率およびインターセプト弁調定率によって決定される値を乗算した後、弁を全開させるためのバイアス値を加算してインターセプト弁流量指令信号を求め、このインターセプト弁流量指令信号を関数発生器に設定した弁の流量−開度特性に入力して弁開度指令を求め、この弁開度指令と実弁開度との偏差から得られる値をサーボ指令信号として出力するインターセプト弁弁開度制御回路と、
発電機負荷とタービン出力との不平衡状態を検出したとき、急速作動電磁弁を動作させて前記蒸気加減弁を全閉させ、不平衡状態が解消されるまでこの動作状態を自己保持するパワーロードアンバランス回路と、
インターセプト弁弁開度指令が実弁開度よりも所定値以上低い値になった状態を検出したとき、一定時間急速作動電磁弁を動作させてインターセプト弁を全閉させるインターセプト弁急閉回路と、
からなる蒸気タービン制御装置において、
前記負荷制御回路は、
前記パワーロードアンバランス回路の動作のリセット後の整定回転数を定格回転数に一致させるように前記負荷設定器の出力を変化させる負荷設定器出力制御手段を有することを特徴とする蒸気タービン制御装置。
【請求項5】
前記負荷設定器出力制御手段は、タービン回転数と定格回転数との偏差をゲイン調整して出力するゲイン調整器と、前記負荷設定器への入力を前記出力設定指令と負荷設定器の出力との偏差から、ゲイン調整器の出力に切り替える信号切替器と、から構成したことを特徴とする請求項4記載の蒸気タービン制御装置。
【請求項6】
目標回転数とタービン実回転数との偏差から得られる速度制御信号を出力する速度制御回路と、
負荷設定器によって設定された負荷設定信号と出力設定指令との偏差に前記速度制御回路から入力される速度制御信号を加算して得られる負荷要求指令信号と、負荷制限設定器によって設定される負荷制限設定信号とのうち、いずれかの低値を選択して蒸気加減弁流量指令信号として出力する負荷制御回路と、
前記負荷制御回路からの蒸気加減弁流量指令信号に基づいて弁開度指令を決定し、弁開度指令と実弁開度との偏差に基づくサーボ指令信号として出力する蒸気加減弁弁開度制御回路と、
前記負荷制御回路から入力した負荷要求指令信号に蒸気加減弁調定率およびインターセプト弁調定率によって決定される値を乗算した後、弁を全開させるためのバイアス値を加算してインターセプト弁流量指令信号を求め、このインターセプト弁流量指令信号を関数発生器に設定した弁の流量−開度特性に入力して弁開度指令を求め、この弁開度指令と実弁開度との偏差から得られる値をサーボ指令信号として出力するインターセプト弁弁開度制御回路と、
発電機負荷とタービン出力との不平衡状態を検出したとき、急速作動電磁弁を動作させて前記蒸気加減弁を全閉させ、不平衡状態が解消されるまでこの動作状態を自己保持するパワーロードアンバランス回路と、
インターセプト弁弁開度指令が実弁開度よりも所定値以上低い値になった状態を検出したとき、一定時間急速作動電磁弁を動作させてインターセプト弁を全閉させるインターセプト弁急閉回路とを備えて蒸気タービンを制御するようにした蒸気タービン制御方法において、
タービン回転数の上昇レートが所定値以下になった条件と、タービン回転数が所定値以下になった条件とが同時に成立したとき、パワーロードアンバランス動作をリセットすることを特徴とする蒸気タービン制御方法。
【請求項7】
目標回転数とタービン実回転数との偏差から得られる速度制御信号を出力する速度制御回路と、
負荷設定器によって設定された負荷設定信号と出力設定指令との偏差に前記速度制御回路から入力される速度制御信号を加算して得られる負荷要求指令信号と、負荷制限設定器によって設定される負荷制限設定信号とのうち、いずれかの低値を選択して蒸気加減弁流量指令信号として出力する負荷制御回路と、
前記負荷制御回路からの蒸気加減弁流量指令信号に基づいて弁開度指令を決定し、弁開度指令と実弁開度との偏差に基づくサーボ指令信号として出力する蒸気加減弁弁開度制御回路と、
前記負荷制御回路から入力した負荷要求指令信号に蒸気加減弁調定率およびインターセプト弁調定率によって決定される値を乗算した後、弁を全開させるためのバイアス値を加算してインターセプト弁流量指令信号を求め、このインターセプト弁流量指令信号を関数発生器に設定した弁の流量−開度特性に入力して弁開度指令を求め、この弁開度指令と実弁開度との偏差から得られる値をサーボ指令信号として出力するインターセプト弁弁開度制御回路と、
発電機負荷とタービン出力との不平衡状態を検出したとき、急速作動電磁弁を動作させて前記蒸気加減弁を全閉させ、不平衡状態が解消されるまでこの動作状態を自己保持するパワーロードアンバランス回路と、
インターセプト弁弁開度指令が実弁開度よりも所定値以上低い値になった状態を検出したとき、一定時間急速作動電磁弁を動作させてインターセプト弁を全閉させるインターセプト弁急閉回路とを備えて蒸気タービンを制御するようにした蒸気タービン制御方法において、
インターセプト弁の急閉動作のリセットによってインターセプト弁が開動作していく際に、インターセプト弁の弁開度指令の増加レートを制限することを特徴とする蒸気タービン制御方法。
【請求項8】
目標回転数とタービン実回転数との偏差から得られる速度制御信号を出力する速度制御回路と、
負荷設定器によって設定された負荷設定信号と出力設定指令との偏差に前記速度制御回路から入力される速度制御信号を加算して得られる負荷要求指令信号と、負荷制限設定器によって設定される負荷制限設定信号とのうち、いずれかの低値を選択して蒸気加減弁流量指令信号として出力する負荷制御回路と、
前記負荷制御回路からの蒸気加減弁流量指令信号に基づいて弁開度指令を決定し、弁開度指令と実弁開度との偏差に基づくサーボ指令信号として出力する蒸気加減弁弁開度制御回路と、
前記負荷制御回路から入力した負荷要求指令信号に蒸気加減弁調定率およびインターセプト弁調定率によって決定される値を乗算した後、弁を全開させるためのバイアス値を加算してインターセプト弁流量指令信号を求め、このインターセプト弁流量指令信号を関数発生器に設定した弁の流量−開度特性に入力して弁開度指令を求め、この弁開度指令と実弁開度との偏差から得られる値をサーボ指令信号として出力するインターセプト弁弁開度制御回路と、
発電機負荷とタービン出力との不平衡状態を検出したとき、急速作動電磁弁を動作させて前記蒸気加減弁を全閉させ、不平衡状態が解消されるまでこの動作状態を自己保持するパワーロードアンバランス回路と、
インターセプト弁弁開度指令が実弁開度よりも所定値以上低い値になった状態を検出したとき、一定時間急速作動電磁弁を動作させてインターセプト弁を全閉させるインターセプト弁急閉回路とを備えて蒸気タービンを制御するようにした蒸気タービン制御方法において、
パワーロードアンバランス回路の動作のリセット後の整定回転数を定格回転数に一致させるように制御することを特徴とする蒸気タービン制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−52553(P2011−52553A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200098(P2009−200098)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】