説明

蒸気タービン用加減弁および組合せ蒸気弁

【課題】圧力損失の低減と振動抑制とを両立しうる蒸気タービン用加減弁およびこれを用いた組合せ蒸気弁を提供する。
【解決手段】加減弁20は、第2弁体22を第2弁座24に対して相対移動させることで、第2弁座24と第2弁体22との間の流路の面積を変化させて該流路を流れる蒸気量を調節する。第2弁座24は、蒸気流れ方向における上流側から下流側に向かって拡径する形状を有する。第2弁体22は、加減弁20の開弁状態において第2弁座24のシート部24Aから離れ、加減弁20の閉弁状態において第2弁座24のシート部24Aに当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電所や原子力発電所等の蒸気タービンに供給する蒸気量を調節するための蒸気タービン用加減弁およびこれを用いた組合せ蒸気弁に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所や原子力発電所等の蒸気タービンは、負荷変化に応じて蒸気量を調節したり、異常時に蒸気の供給を遮断したりするために、多数の蒸気弁が設けられている。このうち、負荷変化に応じて蒸気量を調節するものは、加減弁と呼ばれており、アクチュエータで弁棒を動かし、弁座と弁体との間の流路面積を変化させることで、蒸気量を調節可能としたものが一般的である。
【0003】
加減弁は、蒸気量の調節機能を有するという性質上、常に途中開度(微開状態)で運転されるから、加減弁の通過後に蒸気流が乱れやすい傾向がある。特に、蒸気タービンの高圧室の上流に配置される蒸気加減弁や、中圧室の上流に配置されるインターセプト弁は、高圧かつ大流量の蒸気を扱うため、弁体と弁座との間隙を流れる蒸気が遷音速状態となる際に発する衝撃波に伴う流れの乱れが、加減弁各部の振動を引き起こすことが問題になっていた。
【0004】
そこで、従来から、弁体及び弁座の形状を工夫することで、加減弁各部の振動を低減する試みがなされている。例えば、特許文献1及び2には、弁体の曲率半径をシート径の0.52〜0.6倍とし、弁座の曲率半径をシート径の0.6倍よりも大きくした蒸気弁が開示されている。
図3は、特許文献1及び2に記載された蒸気弁を模式的に示す断面図である。図3に示すように、弁体102の曲率半径rはシート径Dの0.52〜0.6倍であり、弁座104の曲率半径Rはシート径Dの0.6倍よりも大きくなっている。よって、蒸気弁が微小開されたときの蒸気の流線100は、弁体の移動方向Yに比較的沿った状態(いわゆる、流線100が立った状態)となるので、蒸気流が弁座104側に付着したアニュラーフロー(環状流れ)が形成され、蒸気流が安定化し、蒸気弁各部の振動を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭58−44909号公報
【特許文献2】特許第4185029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1及び2に記載の蒸気弁では、弁座104と弁体102とが接触する位置(シート位置103)における弁座104の接線方向が比較的立っている(弁体102の移動方向Yに比較的沿っている)ため、弁座104と弁体102との間の流路面積が小さく、圧力損失が大きい傾向にある。このため、圧力損失を減少させるために、弁体102のリフト量を大きく設定する必要がある。ところが、弁体102のリフト量が大きくなると、シート位置103の下流側で蒸気流の干渉が起こり、上述のアニュラーフローが乱れてしまい、蒸気弁各部の振動が生じてしまう。
このように、特許文献1及び2に記載の蒸気弁では、圧力損失の低減と振動の低減とを両立することが難しい。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、圧力損失の低減と振動抑制とを両立しうる蒸気タービン用加減弁およびこれを用いた組合せ蒸気弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る蒸気タービン用加減弁は、弁体を弁座に対して相対移動させることで、前記弁座と前記弁体との間の流路の面積を変化させて該流路を流れる蒸気量を調節する蒸気タービン用加減弁であって、蒸気流れ方向における上流側から下流側に向かって拡径する弁座と、開弁状態において前記弁座のシート部から離れ、閉弁状態において前記弁座のシート部に当接する弁体とを備えることを特徴とする。
【0009】
従来から、上流側から下流側に向かって徐々に縮径する弁座を用い、弁体の基部から弁頭部に向かって蒸気を流すようにした蒸気弁の構成が当業者間で定着していた。しかし、このような構成の蒸気弁では、圧力損失の低減と振動の低減とがトレードオフの関係にあり、弁座および弁体の形状を工夫により両者を同時に改善することは困難であった。そこで、本願発明者は、当業者間で定着していた蒸気弁の構成を見直し、鋭意検討を重ねることで、本発明を着想するに至った。
【0010】
本発明に係る蒸気タービン用加減弁によれば、蒸気流の上流側から下流側に向かって拡径する弁座を設けたので、弁座のシート部の上流側よりも該シート部の下流側のほうが蒸気の流路面積が大きい。このため、加減弁の上流側から供給される蒸気は、弁座のシート部を通過する際に流速が遅くなり、シート部下流側における蒸気流の乱れが抑制される。よって、圧力損失の低減のために弁体のリフト量を大きくしても、シート部通過後の蒸気流は弁座に付着したままのアニュラーフローの状態が維持されるから、加減弁各部の振動を抑制できる。
なお、アニュラーフローとは、蒸気流が弁座に沿って環状に流れることをいう。一般的に、アニュラーフローの形成によって、蒸気流が安定化し、加減弁各部の振動を抑制可能であると言われている。
【0011】
上記蒸気タービン用加減弁において、前記弁体の弁頭部は凹形状であることが好ましい。
【0012】
これにより、シート部の上流側において弁頭部の凹部に蒸気流が一旦滞留し、蒸気流が弁座に沿うように整流されるので、アニュラーフローをより一層安定化することができる。
【0013】
上記蒸気タービン用加減弁は、前記弁体の外周に設けられ、前記弁体を案内する円筒状の弁体ガイドをさらに備え、前記弁体の弁頭部には、前記弁体及び前記弁体ガイドで囲まれた内部空間を前記弁体の上流側の空間に連通するバランス穴が形成されており、前記弁座のシート部の直径よりも、前記弁体ガイドの内径が大きいことが好ましい。
【0014】
このように、バランス穴を設けることで、弁体及び弁体ガイドで囲まれた内部空間と、弁体の上流側の空間とにおける蒸気圧力が同等になる。ここで、弁座のシート部の直径よりも、弁体ガイドの内径が大きいから、全体として弁体に作用する正味の蒸気力は、蒸気流の下流側から上流側に向かう方向(すなわち、加減弁の閉弁方向)である。こうして、弁体に作用する正味の蒸気力によって、加減弁が閉まる方向に弁体が常に引っ張られるから、弁体の調心性が向上し、蒸気流の乱れをより一層抑制できる。
【0015】
上記蒸気タービン用加減弁において、前記弁体の中心軸方向が、前記シート部から上流側に延ばした前記シート部における接線方向に対してなす角度が25〜50度であることが好ましい。
【0016】
このように、弁体の中心軸方向がシート部の接線方向に対してなす角度を25度以上にすることで、シート部を境に流路面積を急拡大させて、シート部の上流側に比べて下流側の蒸気流の流速を十分遅くして、蒸気流の干渉をより確実に抑制できる。一方、同角度を50度以下にすることで、噴流衝突が回避でき流体騒音が低下し、騒音を小さくすることができる。
【0017】
本発明に係る組合せ蒸気弁は、上述の蒸気タービン用加減弁と、前記蒸気タービン用加減弁の上流側に配置された蒸気タービン用止め弁とを備え、前記蒸気タービン用加減弁と前記蒸気タービン用止め弁とが共通の弁ケーシングに設けられたことを特徴とする。
【0018】
この組合せ蒸気弁は、上述の蒸気タービン用加減弁を備える。ここで、上述の蒸気タービン用加減弁では、蒸気流の上流側から下流側に向かって拡径する弁座を設けたので、弁座のシート部の上流側よりも該シート部の下流側のほうが蒸気の流路面積が大きい。このため、加減弁の上流側から供給される蒸気は、弁座のシート部を通過する際に流速が遅くなり、シート部下流側における蒸気流の乱れが抑制される。よって、圧力損失の低減のために弁体のリフト量を大きくしても、シート部通過後の蒸気流は弁座に付着したままのアニュラーフローの状態が維持されるから、組合せ蒸気弁各部の振動を抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、蒸気流の上流側から下流側に向かって拡径する弁座を設けたので、弁座のシート部の上流側よりも該シート部の下流側のほうが蒸気の流路面積が大きい。このため、加減弁の上流側から供給される蒸気は、弁座のシート部を通過する際に流速が遅くなり、シート部下流側における蒸気流の乱れが抑制される。よって、圧力損失の低減のために弁体のリフト量を大きくしても、シート部通過後の蒸気流は弁座に付着したままのアニュラーフローの状態が維持されるから、加減弁各部の振動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態の蒸気タービン用加減弁を備えた組合せ蒸気弁の構成例を示す断面図である。
【図2】図1の組合せ蒸気弁のうち蒸気タービン用加減弁の周辺を示す拡大図である。
【図3】従来の蒸気弁を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0022】
図1は、本実施形態の蒸気タービン用加減弁を備えた組合せ蒸気弁の構成例を示す断面図である。図2は、図1の組合せ蒸気弁のうち蒸気タービン用加減弁の周辺を示す拡大図である。
なお、以下では、図1及び2を用いて、組合せ蒸気弁に組み込まれた蒸気タービン用加減弁について説明するが、本発明に係る蒸気タービン用加減弁はこの例に限定されず、蒸気タービン用止め弁とは独立した別個の弁であってもよい。
【0023】
図1に示すように、組合せ蒸気弁1は、蒸気タービン用止め弁10(以下、単に「止め弁10」という。)及び蒸気タービン用加減弁20(以下、単に「加減弁20」という。)が共通の弁ケーシング40に設けられた構成を有する。止め弁10が緊急時に蒸気流を遮断する役割を担う一方で、加減弁20は負荷変化に応じて蒸気量を調節するようになっている。
【0024】
弁ケーシング40は、蒸気流れの上流側から順に、蒸気入口部46、止め弁室42、中間流路48、加減弁室44及び蒸気出口部50を有する。止め弁室42には止め弁10が収納され、加減弁室44には加減弁20が収納される。止め弁室42及び加減弁室44は、それぞれ、弁ケーシング40に取り付けられたボンネット52によって閉じられている。
蒸気入口部46から供給される蒸気は、止め弁室42を流れた後、中間流路48を経て加減弁室44に流入し、最終的に蒸気出口部50から排出される。
【0025】
止め弁室42に収納された止め弁10は、第1弁体12と、第1弁体12が閉弁時に当接する第1弁座14と、第1弁体12に取り付けられた第1弁棒16と、第1弁棒16を案内するガイドブシュ18とを有する。
【0026】
第1弁体12は、止め弁10の閉弁時に第1弁座14のシート部14Aに当接する主弁12Aと、この主弁12Aに内包された副弁12Bとにより構成される。なお、主弁12Aの内壁面13は、副弁12Bにとっての弁座として機能する。
【0027】
第1弁棒16は、一端が第1弁体12の副弁12Bに取り付けられ、他端がアクチュエータに連結されている。この第1弁棒16を介して、アクチュエータの駆動力が第1弁体12の副弁12Bに伝わるようになっている。
【0028】
第1弁棒16を案内するガイドブシュ18は、ボンネット52に埋設されている。これにより、アクチュエータによって駆動される第1弁棒16は、ガイドブシュ18内を摺動し、第1弁棒16の中心軸Cに沿って移動する。
【0029】
止め弁10では、第1弁棒16が取り付けられた副弁12Bは、所定のリフト量までは単独で進退するが、所定のリフト量に達すると主弁12Aとともに進退するようになっている。このため、アクチュエータによって第1弁棒16を介して副弁12Bを開弁方向(図1の上方向)に移動させると、所定のリフト量までは副弁12Bのみが移動し、副弁12Bが先に開く。この後、さらにアクチュエータによって第1弁棒16を介して副弁12Bを開弁方向に移動させると、所定のリフト量において副弁12Bが主弁12Aとともに移動するようになり、主弁12Aも開かれる。このように、最初に副弁12Bを開くことで、主弁12Aの前後の圧力差を低減することができ、副弁12Bよりもシート径の大きい主弁12Aを小さな駆動力で開くことができる。
【0030】
止め弁10の外周には、蒸気に含まれる異物を除去する円筒状のストレーナ17が設けられている。ストレーナ17によって、所定のサイズ以上の異物が除去されるので、ストレーナ17よりも下流側の組合せ蒸気弁1の各部(止め弁10及び加減弁20)および組合せ蒸気弁1が接続される蒸気タービンを異物による故障から保護することができる。
また、止め弁室42の蒸気入口部46から遠い側にはバッフルプレート19が設けられている。バッフルプレート19は、ストレーナ17の外周面と止め弁室42の内壁面との間に配置され、ストレーナ17の外周を迂回してきた蒸気流を整流するようになっている。
【0031】
止め弁10の下流側には加減弁20が設けられている。加減弁20は、図1及び2に示すように、第2弁体22(「弁体」に相当)と、第2弁体22が閉弁時に当接する第2弁座24(「弁座」に相当)と、第2弁体22に取り付けられた第2弁棒26と、第2弁棒26を案内するガイドブシュ28とを有する。
【0032】
従来から、上流側から下流側に向かって徐々に縮径する弁座を用い、弁体の基部から弁頭部に向かって蒸気を流すようにした蒸気弁が当業者間で定着していた。これに対し、本実施形態では、アニュラーフローの安定化の観点から、加減弁20の第2弁座24を上流側から下流側に向かって拡径する形状にするとともに、第2弁体22の弁頭部23から基部に向かって蒸気を流すようにしている。
このように、加減弁20の第2弁座24は、蒸気流れ方向における上流側から下流側に向かって徐々に拡径する形状を有するから、第2弁座24のシート部24Aの上流側よりも該シート部24Aの下流側のほうが蒸気の流路面積が大きい。このため、中間流路48から供給される蒸気は、第2弁座24のシート部24Aを通過する際に流速が遅くなり、第2弁座24のシート部の下流側における蒸気流の乱れが抑制される。よって、第2弁座24のシート部24Aを通過した蒸気流が第2弁座24に付着したままのアニュラーフローの状態が維持され、組合せ蒸気弁1の各部の振動を抑制できる。
【0033】
第2弁座24のシート部24Aから上流側に延ばしたシート部24Aにおける接線Tが、第2弁体22の中心軸(すなわち、第2弁棒26の中心軸C)に対してなす角度θ(図2参照)は、25〜50度であることが好ましい。このように、シート部24Aの接線Tが第2弁体22の中心軸に対してなす角度θを25度以上にすることで、シート部24Aを境に流路面積を急拡大させて、シート部24Aの上流側に比べて下流側の蒸気流の流速を十分遅くして、蒸気流の干渉をより確実に抑制できる。一方、同角度θを50度以下にすることで、噴流衝突が回避でき流体騒音が低下し、騒音を小さくすることができる。
【0034】
また、加減弁20の第2弁座24は、図1に示すように、止め弁10の第1弁座14と一体化された共通弁座4として設けられている。共通弁座4は、中間流路48の全長にわたって設けられ、弁ケーシング40の内壁に固定される。
このように、止め弁10の第1弁座14と加減弁20の第2弁座24を共通化することで、部品数が減少し、組合せ蒸気弁1の組立て作業の効率が向上する。また、第1弁座14と第2弁座24との間に継ぎ目がなく平滑面であるから、継ぎ目部分で蒸気流が乱れてしまうことがない。
【0035】
共通弁座4は、第1弁座14のシート部14Aよりも蒸気流れ方向における上流側においてのみ、弁ケーシング40の内壁に固定されていることが好ましい。例えば、シート部14Aよりも上流側の位置で、締結部材6によって共通弁座4を弁ケーシング40の内壁に固定してもよい。
このように、共通弁座4の弁ケーシング40の内壁への固定は、止め弁10のシート部14Aよりも上流側においてのみ行い、止め弁10のシート部14Aよりも下流側では行わないようにすることで、固定用の締結部材6によって蒸気流が乱れることがない。また、共通弁座4の片側(止め弁10側)のみが締結部材6により固定され、共通弁座4の反対側は締結部材6による固定点を始点として自由に熱膨張可能であるから、加減弁20の起動停止時に、急激な温度変化によって発生する熱応力に起因した共通弁座4の損傷を防止できる。さらに、組合せ蒸気弁1を縦置き(鉛直方向に沿って配置)する場合、共通弁座4を止め弁10側から抜き取ることで、下方の加減弁20の第2弁体22等を止め弁10側に抜くことができ、組合せ蒸気弁1の分解作業が容易になる。
【0036】
第2弁座24に対して閉弁時に当接する第2弁体22は、先端側(第2弁座24に近い側)に凹形状の弁頭部23を有する。このように、第2弁体22の弁頭部23を凹形状とすることで、図2の流線100で示すように、第2弁座24のシート部24Aの上流側において弁頭部23の凹部に蒸気流が一旦滞留し、蒸気流が第2弁座24に沿うように整流される。よって、アニュラーフローをより一層安定化することができる。
【0037】
図2に示すように、第2弁体22の外周には、第2弁体22を案内する円筒状の弁体ガイド30が設けられている。この弁体ガイド30の内径Dは、第2弁座24のシート部24Aの直径(シート径)Dよりも大きい。また、第2弁体22の弁頭部23には、第2弁体22及び弁体ガイド30で囲まれた内部空間32を中間流路48に連通するバランス穴34が形成されている。
【0038】
このように、バランス穴34を設けることで、第2弁体22及び弁体ガイド30で囲まれた内部空間32と、第2弁体22の上流側の中間流路48とにおける蒸気圧力が同等になる。ここで、第2弁座24のシート部24Aの直径Dよりも、弁体ガイド30の内径Dのほうが大きいから、全体として第2弁体22に作用する正味の蒸気力は、蒸気流の下流側から上流側に向かう方向(すなわち、加減弁の閉弁方向)である。こうして、加減弁20の第2弁体22に作用する正味の蒸気力によって、加減弁20が閉まる方向に第2弁体22が常に引っ張られるから、第2弁体22の調心性が向上し、蒸気流の乱れをより一層抑制できる。
【0039】
第2弁体22には第2弁棒26が取り付けられる。加減弁20の第2弁棒26と、止め弁10の第1弁棒16とは、図1に示すように、中間流路48を挟んで反対方向に延在している。よって、組合せ蒸気弁1の全体形状は、中間流路48に沿って延びる略直線状であり、タービン車室の周囲に複数の組合せ蒸気弁1をレイアウトする際に、省スペース化を図ることが可能となる。
なお、図1に示す例では、加減弁20の第2弁棒26は、その中心軸Cが、止め弁10の第1弁棒16の中心軸Cと略一致するように配置されている。
【0040】
また第2弁棒26は、第2弁体22が取り付けられた端部とは反対側の端部で、アクチュエータに連結されている。この第2弁棒26を介して、アクチュエータの駆動力が第2弁体22に伝わるようになっている。
【0041】
第2弁棒26を案内するガイドブシュ28は、ボンネット52に埋設されている。これにより、アクチュエータによって駆動される第2弁棒26は、ガイドブシュ28内を摺動し、第2弁棒26の中心軸Cに沿って移動する。
【0042】
以上説明したように、本実施形態では、加減弁20は、蒸気流れ方向における上流側から下流側に向かって拡径する第2弁座24と、加減弁20の開弁状態において第2弁座24のシート部24Aから離れ、加減弁20の閉弁状態において第2弁座24のシート部24Aに当接する第2弁体22とを備える。
本実施形態によれば、蒸気流の上流側から下流側に向かって拡径する第2弁座24を設けたので、第2弁座24のシート部24Aの上流側よりも該シート部24Aの下流側のほうが蒸気の流路面積が大きい。このため、加減弁20の上流側から供給される蒸気は、第2弁座24のシート部24Aを通過する際に流速が遅くなり、シート部24Aの下流側における蒸気流の乱れが抑制される。よって、圧力損失の低減のために第2弁体22のリフト量を大きくしても、シート部24A通過後の蒸気流は第2弁座24に付着したままのアニュラーフローの状態が維持されるから、加減弁20各部の振動を抑制できる。
なお、本願発明者が行った数値流体力学(Computational Fluid Dynamics:CFD)を用いた計算結果によれば、本実施形態の加減弁20は、従来の構成の加減弁に比べて約10dBの騒音(振動)低下効果が得られた。
【0043】
以上、本発明の一例について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはいうまでもない。
【0044】
例えば、上述の実施形態では、止め弁10と共通の弁ケーシング40に設けられた加減弁20について説明したが、本発明に係る蒸気タービン用加減弁は止め弁と独立した別個の弁であってもよい。
【0045】
また、上述の実施形態では、図2に示す構成を有する加減弁20について説明したが、本発明に係る蒸気タービン用加減弁は、弁座が蒸気流れ方向における上流側から下流側に向かって拡径する形状であれば特に限定されず、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0046】
1 組合せ蒸気弁
4 共通弁座
6 締結部材
10 止め弁
12 第1弁体
12A 主弁
12B 副弁
14 第1弁座
14A シート部
16 第1弁棒
17 ストレーナ
18 ガイドブシュ
19 バッフルプレート
20 加減弁
22 第2弁体
23 弁頭部
24 第2弁座
24A シート部
26 第2弁棒
28 ガイドブシュ
30 弁体ガイド
32 内部空間
34 バランス穴
40 弁ケーシング
42 止め弁室
44 加減弁室
46 蒸気入口部
48 中間流路
50 蒸気出口部
52 ボンネット
100 流線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体を弁座に対して相対移動させることで、前記弁座と前記弁体との間の流路の面積を変化させて該流路を流れる蒸気量を調節する蒸気タービン用加減弁であって、
蒸気流れ方向における上流側から下流側に向かって拡径する弁座と、
開弁状態において前記弁座のシート部から離れ、閉弁状態において前記弁座のシート部に当接する弁体とを備えることを特徴とする蒸気タービン用加減弁。
【請求項2】
前記弁体の弁頭部が凹形状であることを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービン用加減弁。
【請求項3】
前記弁体の外周に設けられ、前記弁体を案内する円筒状の弁体ガイドをさらに備え、
前記弁体の弁頭部には、前記弁体及び前記弁体ガイドで囲まれた内部空間を前記弁体の上流側の空間に連通するバランス穴が形成されており、
前記弁座のシート部の直径よりも、前記弁体ガイドの内径が大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の蒸気タービン用加減弁。
【請求項4】
前記弁体の中心軸方向が、前記シート部から上流側に延ばした前記シート部における接線方向に対してなす角度が25〜50度であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の蒸気タービン用加減弁。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の蒸気タービン用加減弁と、
前記蒸気タービン用加減弁の上流側に配置された蒸気タービン用止め弁とを備え、
前記蒸気タービン用加減弁と前記蒸気タービン用止め弁とが共通の弁ケーシングに設けられたことを特徴とする組合せ蒸気弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−112271(P2012−112271A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260629(P2010−260629)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】