説明

蒸気タービン試験設備、低負荷試験方法、及び負荷遮断試験方法

【課題】実際の蒸気タービンの挙動を忠実に模擬できるとともに、性能試験の効率を向上できる試験用蒸気タービンを備える蒸気タービン試験設備などを提供することを課題とする。
【解決手段】蒸気タービンプラント10に備わる蒸気タービン11の実機の挙動を模擬する試験用蒸気タービン2に、電動発電機4を接続した蒸気タービン試験設備1とする。電動発電機4に備わる制御装置5は、任意に設定できる変速パターンに従って試験用蒸気タービン2の回転速度を変速するように電動発電機4を制御する。そして、変速パターンは、負荷が遮断された蒸気タービン11の回転速度の時間経過に伴う変化を、負荷遮断状態の試験用蒸気タービン2が模擬するように設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービンプラントの性能及び信頼性検証試験をする蒸気タービン試験設備と、その蒸気タービン試験設備を利用する低負荷試験方法、及び負荷遮断試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火力発電プラントや原子力発電プラントなどを構成する蒸気タービンプラントの性能を評価するため、蒸気タービンプラントの高圧タービン、中圧タービン、低圧タービンのいずれか一部のみを模擬運転することで、蒸気タービンプラントの蒸気タービンの挙動を模擬する試験用蒸気タービンを備える蒸気タービン試験設備を構築している。そして、蒸気タービン試験設備で、高負荷試験、低負荷試験、及び負荷遮断試験などの性能及び信頼性検証試験を実施して試験用蒸気タービンの性能及び信頼性を評価することで、蒸気タービンプラントの性能及び信頼性を評価している。
【0003】
(1)高負荷試験
蒸気によって得られる動力が機械的な損失を上回る高負荷試験においては、試験用蒸気タービンは自力で回転速度の上昇と維持ができる。したがって、高負荷試験では、出力される動力を回収するため発電機や動力計などを試験用蒸気タービンに接続して、タービン動翼に発生する応力や蒸気タービン内部の蒸気の流れなど、蒸気タービンプラントの性能及び信頼性を評価するために必要なデータを試験計測している。
【0004】
(2)低負荷試験
蒸気タービンの負荷(蒸気流量)が一定値以下になると、タービン動翼の翼長が長い場合(例えば、低圧タービン)はタービン動翼の下流に蒸気の渦流が発生し、蒸気タービンにランダム振動が発生する。そこで、ランダム振動が及ぼす影響を含めた蒸気タービンプラントの信頼性を評価するために低負荷試験を実施する。
低負荷試験は、試験用蒸気タービンの負荷が、ランダム振動が発生する負荷以下の低負荷状態のときに、タービン動翼に発生する応力や蒸気タービン内部の蒸気の流れなど、蒸気タービンプラントの信頼性を評価するために必要なデータを試験計測する試験である。低負荷試験では、蒸気によって得られる動力が機械的な損失を下回ると試験用蒸気タービンは自力で回転速度を維持できない。そこで、従来、駆動用タービンや電動機を試験用蒸気タービンに接続して試験用蒸気タービンの回転速度を維持している。
【0005】
(3)負荷遮断試験
原子力発電プラントでは、原子炉及び蒸気タービンの負荷を遮断する負荷遮断試験を実施する。蒸気タービンの負荷が遮断されると、蒸気タービン内が急減圧することによって、主蒸気から抽気される蒸気が逆流(フラッシュバック)し、フラッシュバックに伴って蒸気タービンの内部に非定常な蒸気の流れが発生する。そして、この非定常な蒸気の流れによって発生する流体力が加振力となって、タービン動翼にフラッシュバック振動が発生する。
また、主蒸気が遮断されるため蒸気タービンは極低負荷状態となって蒸気の渦流によるランダム振動が発生し、これがフラッシュバック振動と重畳してタービン動翼に大きな振動力として作用することが近年判明した。
そこで、負荷遮断試験におけるフラッシュバック振動とランダム振動が及ぼす影響を含めた蒸気タービンプラントの信頼性を評価するため、蒸気タービン試験設備によって負荷遮断試験を実施することが望ましい。
【0006】
このように、従来、高負荷試験においては、発生する動力を回収するために発電機や動力計などを試験用蒸気タービンに接続している。
また、低負荷試験においては、試験用蒸気タービンに駆動用タービンや電動機を接続して試験用蒸気タービンの回転速度を維持している。
【0007】
しかしながら、負荷遮断試験において、実際の蒸気タービンは、負荷の遮断によって発電機負荷が遮断されるため、負荷遮断直後は回転速度が一時的に上昇(オーバースピード)することがわかっている。
一方、試験用蒸気タービンは、慣性の相違などによって、負荷遮断後の挙動が実際の蒸気タービンと同じにならない。試験用蒸気タービンに駆動用タービンや電動機を接続し、負荷が遮断された状態(負荷遮断状態)のときに回転速度を維持するように構成しても、実際の蒸気タービンで負荷を遮断した直後に発生するオーバースピードなど、実際の蒸気タービンの回転速度の過渡的な変化を忠実に模擬することができない。
【0008】
すなわち、従来使用される、一般的な駆動用タービンや電動機を接続した試験用蒸気タービンは、実際の蒸気タービンの負荷を遮断したときの挙動を忠実に模擬することができない。
そのため、従来の試験用蒸気タービンでは、負荷を遮断したときに発生するフラッシュバック振動やランダム振動が及ぼす影響を精度よく評価することができない。
【0009】
また、高負荷試験のときは、試験用蒸気タービンに発電機や動力計を接続し、低負荷試験や負荷遮断試験のときは、試験用蒸気タービンに駆動用タービンや電動機を接続することから、高負荷試験、低負荷試験、負荷遮断試験で試験用蒸気タービンへの接続機器を交換する必要があり、これら各試験を含んだ性能及び信頼性検証試験の効率が低下する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は、特に負荷遮断試験における実際の蒸気タービンの挙動を忠実に模擬できるとともに、性能及び信頼性検証試験の効率を向上できる試験用蒸気タービンを備える蒸気タービン試験設備などを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明は、発電機モードと電動機モードを切り替え可能で、蒸気タービンの回転速度を制御可能な電動発電機を接続した試験用蒸気タービンを備える蒸気タービン試験設備などとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、特に負荷遮断試験における実際の蒸気タービンの挙動を忠実に模擬できるとともに、性能及び信頼性検証試験の効率を向上できる試験用蒸気タービンを備える蒸気タービン試験設備などを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、適宜図を参照して詳細に説明する。
図1の(a)は一般的な蒸気タービンプラントの構成図、(b)は、蒸気タービン試験設備の一構成例を示す図である。
図1の(a)に示すように、一般的な蒸気タービンプラント10には、蒸気タービンの実機(蒸気タービン11)として高圧タービン11H、中圧タービン11M、及び低圧タービン11Lを備えるものがある。このように構成される蒸気タービンプラント10は、ボイラ12で発生した蒸気Stが高圧タービン11Hで仕事をしてボイラ12に備わる再熱器12aに流入して加熱され、中圧タービン11Mに流入する。そして、中圧タービン11Mで仕事をした後、低圧タービン11Lに流入して低圧タービン11Lで仕事をして復水器13に流入する。このように、蒸気Stが高圧タービン11H、中圧タービン11M、及び低圧タービン11Lに流入して仕事をすることで、出力軸11aが回転する。
【0014】
そして、出力軸11aには、負荷となる機器(負荷機器14)が接続され、出力軸11aの回転によって駆動する。負荷機器14は例えば発電機である。
【0015】
図1の(a)に示すように構成される蒸気タービンプラント10は、実際の稼動前に必要に応じて性能及び信頼性を評価する必要があり、蒸気タービン11の挙動を模擬する試験用蒸気タービンを備えた蒸気タービン試験設備で性能及び信頼性検証試験を実施する場合がある。
【0016】
図1の(b)に示すように、本実施形態に係る蒸気タービン試験設備1は、性能及び信頼性検証試験の対象である蒸気タービンプラント10に備わる実際の蒸気タービン11(図1の(a)参照)の挙動を模擬する試験用蒸気タービン2の出力軸2aに、変速機3を介して制御装置5を備える電動発電機4が接続される。さらに、電動発電機4には、電動発電機4が電動機として動作するとき(以下、電動機モードと称する)に電力を供給するとともに、電動発電機4が発電機として動作するとき(以下、発電機モードと称する)に電動発電機4が発電する電力を蓄電するバッテリ6が接続されている。
【0017】
例えば性能及び信頼性検証試験の対象である実際の蒸気タービン11が、図1の(a)に示すように、高圧タービン11H、中圧タービン11M、及び低圧タービン11Lを含んで構成される場合、蒸気タービン試験設備1は、例えば、図1の(b)に示すように低圧タービン11Lを模擬する試験用蒸気タービン2が備わる構成とすればよいが、高圧タービン11H、又は中圧タービン11Mを模擬する試験用蒸気タービン2が備わる構成であってもよい。また、低圧タービン11L(高圧タービン11H、中圧タービン11M)の一部を模擬する試験用蒸気タービン2が備わる構成であってもよい。以下、蒸気タービンプラント10に備わる実際の蒸気タービン11を実機蒸気タービン11と称し、試験用蒸気タービン2と区別する。
【0018】
図1の(b)に示すような構成の蒸気タービン試験設備1では、ボイラ20で発生した蒸気Stが復水器21からボイラ20の再熱器20aに流入して加熱され、試験用蒸気タービン2に供給されて仕事をした後、復水器21に流入する。このように、蒸気Stが試験用蒸気タービン2に供給されて仕事をすることで出力軸2aが回転する。以下、出力軸2aの回転速度を、試験用蒸気タービン2の回転速度と称する。
【0019】
変速機3は、所定の減速率(又は増速率)で回転軸4aの回転速度を好適に変速して電動発電機4の動力を出力軸2aに伝達する。
変速機3の減速率(又は増速率)は、試験用蒸気タービン2の回転速度の特性と電動発電機4の回転速度の特性に基づいて適宜設定すればよい。
また、試験用蒸気タービン2の回転速度の特性と電動発電機4の回転速度の特性によっては変速機3が不要になり、電動発電機4を出力軸2aに直接接続する構成になる。
【0020】
図2は電動発電機と制御装置の一構成例を示す図である。電動発電機4は、電動機モードのときは3相交流電動機として動作し、発電機モードのときは3相交流発電機として動作する。
図2に示すように、電動発電機4には、回転子鉄心40aと磁極を構成する永久磁石40bが備わり、回転軸4aと一体に回転する回転子40が構成される。
回転子鉄心40aは、回転軸4aを介して変速機3(図1の(b)参照)と接続され、試験用蒸気タービン2(図1の(b)参照)の出力軸2aの回転に伴って回転する。
【0021】
固定子41は、固定子鉄心41aに3相固定子巻線41bを巻装した構成とし、外周側に電動発電機4のハウジングを取り付けて構成される。
そして、3相固定子巻線41bは、制御装置5と電気的に接続される。
【0022】
また、電動発電機4には、回転子40の回転角度θを検出する角度センサ42が備わる。角度センサ42は、例えばレゾルバであり、検出した回転子40の回転角度θを制御装置5に入力する。
【0023】
電動発電機4に備わる制御装置5は、インバータ回路を含んで構成される制御回路5aと、制御回路5aを制御する制御部5bを含んで構成される。
制御回路5aは、スイッチング素子50とダイオード51からなる3相ブリッジ回路に構成されるインバータ回路を含んでなる。
【0024】
制御回路5aにはインバータ回路と並列にバッテリ6が接続され、さらにインバータ回路とバッテリ6の間には、制御回路5aを流れる電流を平滑するためのコンデンサ52が接続される。
【0025】
制御部5bは、例えば、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えるマイクロコンピュータおよび周辺回路などから構成され、ROMに格納されるプログラムを実行して、制御回路5aを制御する。
また、制御部5bには、例えばキーボードやマウスなど、データを入力するための入力装置5cと、ディスプレイ装置など、入力結果を表示するための表示装置5dが備わる。
【0026】
制御部5bは、制御回路5aの各スイッチング素子50をスイッチング操作することで、電動機モードの電動発電機4を駆動するためのPWM(pulse width modulation)信号を発生し、このPWM信号に基づく電流をバッテリ6の直流電流から生成して、3相固定子巻線41bに供給する。
【0027】
さらに、制御部5bは、角度センサ42から入力される回転子40の回転角度θを時間微分して回転子40の回転速度ωを算出し、回転子40が所定の回転速度ωで回転するように、PWM信号を制御する。
このように、制御部5bは電動発電機4の回転子40を任意の回転速度ωで回転できる。回転子40は回転軸4aと一体に回転し、回転軸4aは変速機3(図1の(b)参照)を介して出力軸2a(図1の(b)参照)と接続することから、制御部5bは、出力軸2aを任意の回転速度ωsで回転できる。すなわち制御部5bは、試験用蒸気タービン2を任意の回転速度ωsで回転できる。
【0028】
電動発電機4は、制御装置5が設定する試験用蒸気タービン2(図1の(b)参照)の回転速度ωsで回転するときに得られる動力よりも出力軸2a(図1の(b)参照)を介して入力される動力が小さいとき、すなわち入力される負荷が小さいときは電動機モードで動作する。
一方、電動発電機4は、試験用蒸気タービン2が回転速度ωsで回転するときに得られる動力よりも大きな動力が出力軸2aを介して入力される、すなわち大きな負荷が入力されると発電機モードに自動的に切り替わる。
【0029】
図1の(b)に示す試験用蒸気タービン2は、蒸気流量を多くすると動力が増大して高負荷状態になり、電動発電機4は発電機モードで動作する。
一方、試験用蒸気タービン2は、蒸気流量を低減すると動力が減少して低負荷状態になり、電動発電機4は電動機モードに自動的に切り替わる。
また、試験用蒸気タービン2は、蒸気供給が遮断されると負荷遮断状態になる。このとき試験用蒸気タービン2は極低負荷状態になり、電動発電機4は電動機モードに自動的に切り替わる。
【0030】
このような構成によって、例えば試験用蒸気タービン2(図1の(b)参照)の高負荷試験時には電動発電機4を発電機モードで動作して、試験用蒸気タービン2の動力を電動発電機4で回収することができる。
【0031】
また、低負荷試験時及び負荷遮断試験時に試験用蒸気タービン2(図1の(b)参照)が低負荷状態(極低負荷状態)になると、電動発電機4が電動機モードに自動的に切り替わり、試験用蒸気タービン2を任意の回転速度で回転駆動することができる。したがって、試験用蒸気タービン2の回転速度を維持することができる。
【0032】
このように、本実施形態に係る蒸気タービン試験設備1(図1の(b)参照)においては、試験用蒸気タービン2(図1の(b)参照)の高負荷試験時と、低負荷試験時や負荷遮断試験時で接続する機器を変更する必要がなく、蒸気タービン試験設備1に備わる試験用蒸気タービン2を利用した性能及び信頼性検証試験(高負荷試験、低負荷試験、負荷遮断試験)の効率を向上できるという優れた効果を奏する。
【0033】
また、制御装置5(図2参照)は、例えば負荷遮断試験における試験用蒸気タービン2(図1の(b)参照)の回転速度ωsを、負荷遮断試験の時間経過に伴って任意に設定される変速パターンに基づいて変速できる機能を備える構成が好適である。
図3の(a)は、実機蒸気タービンの回転速度の変化を示す図であり、縦軸に実機蒸気タービンの回転速度ωs、横軸に時刻(経過時間)tを示している。
また、図3の(b)は、負荷遮断試験における変速パターンの一例を示す図である。
図3の(b)の横軸は負荷遮断試験の時刻(経過時間)tを示し、時刻0は負荷遮断試験の開始時刻を示す。また、縦軸は、試験用蒸気タービンの回転速度ωsを示す。
【0034】
図3の(a)に示すように、例えば、実機蒸気タービン11(図1の(a)参照)が回転速度ωs1で回転しているときに時刻t1で負荷を遮断すると、発電機負荷が遮断されるため時刻t2に回転速度が一時的にωs2に上昇する。
時刻t1では、負荷の遮断とともに蒸気供給も遮断されることから、実機蒸気タービン11は、時刻t2以降は減速し、時刻t3で回転速度ωs1より少し高い回転速度ωs3になってしばらく回転し、時刻4tから徐々に減速する。時刻t2〜t4、及び回転速度ωs1〜ωs3は、実機蒸気タービン11の特性値であり、予め計測可能である。
【0035】
本実施形態においては、電動発電機4に備わる制御装置5(図2参照)が、電動発電機4の回転子40(図2参照)の回転速度ωを、例えば、負荷遮断試験の時間経過に伴って任意に設定される変速パターンに基づいて変速し、負荷遮断試験における実機蒸気タービン11(図1の(a)参照)の回転速度の変化を忠実に模擬できる構成とする。
【0036】
図2に示すように、電動発電機4の回転子40は回転軸4aと一体に回転する構成であり、図1の(b)に示すように回転軸4aは変速機3を介して出力軸2aと接続している。したがって、制御装置5は、変速機3の減速率(又は増速率)を考慮して回転子40の回転速度ωを設定することで、試験用蒸気タービン2の回転速度ωsを設定できる。
すなわち、制御装置5は、任意に設定される変速パターンに基づいて回転子40の回転速度ωを変速することで、試験用蒸気タービン2の回転速度ωsを、任意に設定される変速パターンに基づいて変速できる。
【0037】
オペレータは、図3の(b)に示すように、負荷を遮断する時刻t1以前の試験用蒸気タービン2(図1の(b)参照)の回転速度ωs1と、時刻t1以降の試験用蒸気タービン2の回転速度ωsの変化を、負荷遮断試験の時間経過に伴って設定し、変速パターンPtとして入力装置5c(図2参照)で制御部5b(図2参照)に入力する。
【0038】
例えば、時刻t1以降の代表的な時刻t(図3の(b)には、時刻t2〜t5で例示)における回転速度ωs(図3の(b)には、回転速度ωs2〜ωs4で例示)を設定することで、負荷遮断試験の時間経過に伴った変速パターンPtを設定できる。
なお、負荷遮断試験の時間経過の代表的な時刻は、図3の(b)に示す時刻t1〜t5の5箇所に限定されず、必要に応じて適宜増減すればよい。
また、試験用蒸気タービン2(図1の(b)参照)は、蒸気供給が遮断されることで負荷遮断状態になることから、時刻t1は、試験用蒸気タービン2への蒸気供給を遮断する時刻となる。
【0039】
このように、図2に示す入力装置5cを介して入力される変速パターンPt(図3の(b)参照)は、制御部5bの図示しない記憶部に記憶され、制御部5bは、記憶された変速パターンPtに基づいて電動発電機4を制御する。
すなわち、制御装置5(図1の(b)参照)は、任意に設定される変速パターンPtに基づいて試験用蒸気タービン2(図1の(b)参照)の回転速度ωsを変速する。
【0040】
制御部5b(図2参照)は、試験用蒸気タービン2(図1の(b)参照)への蒸気供給が遮断される時刻t1まで発電機モードで動作する電動発電機4(図1の(b)参照)の回転速度をωs1に維持する。時刻t1になると、制御部5bは、時刻t2で試験用蒸気タービン2の回転速度がωs2になるように、制御回路5a(図2参照)で発生するPWM信号を制御する。
時刻t1では、試験用蒸気タービン2への蒸気供給が遮断されて試験用蒸気タービン2が極低負荷状態になり、電動発電機4が電動機モードに切り替わることから、電動発電機4に備わる制御装置5は、極低負荷状態の試験用蒸気タービン2の回転速度ωsを変速できる。
【0041】
さらに、制御部5b(図2参照)は、試験用蒸気タービン2(図1の(b)参照)の回転速度ωsが、時刻t3〜t5に設定された回転速度ωs3、ωs4になるようにPWM信号を制御し、試験用蒸気タービン2の回転速度ωsを、時間経過に伴って変速する。
【0042】
このように、制御装置5(図2参照)が、試験用蒸気タービン2(図1の(b)参照)の回転速度ωsを変速パターンPtに基づいて変速することで、試験用蒸気タービン2は、負荷が遮断された実機蒸気タービン11(図1の(a)参照)の回転速度ωsの変化を忠実に模擬できる。
【0043】
この構成によって、負荷が遮断された実機蒸気タービン11(図1の(a)参照)に発生するフラッシュバック振動やランダム振動による影響を、試験用蒸気タービン2(図1の(b)参照)で精度よく評価することが可能になる。
【0044】
なお、図2に示すように、本実施形態に係る制御装置5の制御部5bは、入力装置5cと出力装置5dを備える構成としたが、この構成に限定されず、例えば入力装置5cと出力装置5dの代わりに図示しない通信端子を備え、図示しないパーソナルコンピュータと通信可能な構成としてもよい。
この場合、図示しないパーソナルコンピュータにオペレータが入力した変速パターンPt(図3の(b)参照)を、図示しない通信端子を介して受信可能な構成とすれば、入力装置5cと出力装置5dを備える制御部5bと同等の機能を有することができる。
【0045】
また、例えば、制御装置5(図2参照)が、試験用蒸気タービン2(図1の(b)参照)への蒸気供給が遮断されたことを示す信号を入力可能な構成とし、制御装置5は、当該信号の入力をトリガとして、試験用蒸気タービン2の回転速度ωsを変速パターンPtに基づいて変速する構成としてもよい。
この構成によると、試験用蒸気タービン2の蒸気供給の遮断に精度良く同期して、制御装置5が、試験用蒸気タービン2の回転速度ωsの変速を開始できる。
したがって、試験用蒸気タービン2は、実機蒸気タービン11(図1の(a)参照)の挙動を、より精度良く模擬できる。
【0046】
例えば、電力業界では、原子力発電プラントをベースロード運転し、火力発電プラントで、負荷側の電力需要に応じた供給調整をする運用体制が一般的である。
このような運用の場合、火力発電プラントの蒸気タービンは、負荷追従運転のために広い負荷範囲が要求されることから負荷変動が大きくなり、ランダム振動が発生しやすい。
さらに、火力発電プラントの蒸気タービンは、車室数を減らしてタービン動翼を長翼化する傾向にあり、このことによってもランダム振動の発生が助長される。
【0047】
また、全発電量に対する、原子力発電による発電量の割合が増加して火力発電プラントによる供給調整が困難になった場合、原子力発電プラントで供給調整する運用体制をとることも考えられ、このときには、原子力発電プラントの蒸気タービンに広い負荷範囲が要求される。つまり、原子力発電プラントの蒸気タービンの負荷変動が大きくなってランダム振動が発生する可能性が高くなる。
【0048】
ランダム振動は、タービン動翼の破損要因となりうる大きな振動応力を発生する振動である。また、前記したように、例えば負荷を遮断すると、主蒸気から抽気される蒸気のフラッシュバックで発生するフラッシュバック振動と重畳して、タービン動翼に大きな振動力として作用する場合がある。
【0049】
前記したように、一般的な発電プラントの蒸気タービンはランダム振動が発生する可能性があり、また、フラッシュバック振動と重畳したときの影響は大きいことから、ランダム振動やフラッシュバック振動に対する効果的な対策を施すことが望ましい。したがって、試験用蒸気タービンでランダム振動やフラッシュバック振動による影響を精度よく評価することが重要である。
【0050】
本実施形態に係る蒸気タービン試験設備1に備わる試験用蒸気タービン2(図1の(b)参照)は、実機蒸気タービン11(図1の(a)参照)の挙動を忠実に模擬できることから、試験用蒸気タービン2による性能及び信頼性検証試験で実機蒸気タービン11の性能を精度よく評価することが可能であり、負荷を遮断した実機蒸気タービン11に発生するランダム振動やフラッシュバック振動に対する効果的な対策を実機蒸気タービン11に施すための指標を得ることができる。
【0051】
以上、主に負荷遮断試験について説明したが、本実施形態に係る試験用蒸気タービン2(図1の(b)参照)で低負荷試験を実施した場合の効果について説明する。
【0052】
前記したように、低負荷試験においては、試験用蒸気タービン2(図1の(b)参照)の蒸気流量が一定値以下に低減し、蒸気によって得られる動力が機械的な損失を下回ると、試験用蒸気タービン2は自力で回転速度を維持できず、ランダム振動を計測できない場合がある。
本実施形態に係る試験用蒸気タービン2では、自力で維持できなくなった試験用蒸気タービン2の回転速度を、接続した電動発電機4で維持することができ、ランダム振動を計測することができる。
【0053】
また、従来、試験用蒸気タービン2(図1の(b)参照)に接続される動力計や駆動用タービンは回転速度の制御性が悪く、試験用蒸気タービン2を所定の回転速度に精度良く維持することが困難であるが、電動発電機4(図1の(b)参照)は、回転速度の制御性が良く、試験用蒸気タービン2を所定の回転速度に精度良く維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】(a)は一般的な蒸気タービンプラントの構成図、(b)は、蒸気タービン試験設備の一構成例を示す図である。
【図2】電動発電機と制御装置の一構成例を示す図である。
【図3】(a)は、実機蒸気タービンの回転速度の変化を示す図、(b)は、負荷遮断試験における変速パターンの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 蒸気タービン試験設備
2 試験用蒸気タービン
4 電動発電機
5 制御装置
10 蒸気タービンプラント
11 実機蒸気タービン(蒸気タービンの実機)
Pt 変速パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンプラントに備わる蒸気タービンの実機の挙動を模擬する試験用蒸気タービンを少なくとも1台備え、
前記試験用蒸気タービンには、電動機として動作する電動機モードと、発電機として動作する発電機モードを切り替え可能な電動発電機が接続されていることを特徴とする蒸気タービン試験設備。
【請求項2】
前記電動発電機には、
任意に設定できる変速パターンに従って前記試験用蒸気タービンの回転速度が変速するように当該電動発電機を制御可能な制御装置が備わることを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービン試験設備。
【請求項3】
前記変速パターンは、
負荷が遮断された前記蒸気タービンの実機の回転速度の時間経過に伴う変化を、負荷遮断状態になった前記試験用蒸気タービンで模擬するように設定されることを特徴とする請求項2に記載の蒸気タービン試験設備。
【請求項4】
請求項2に記載の蒸気タービン試験設備において、前記試験用蒸気タービンの蒸気流量を低減し、低負荷状態になった前記試験用蒸気タービンで低負荷試験することを特徴とする低負荷試験方法。
【請求項5】
請求項3に記載の蒸気タービン試験設備において、前記試験用蒸気タービンへの蒸気供給を遮断し、負荷遮断状態になった前記試験用蒸気タービンで負荷遮断試験することを特徴とする負荷遮断試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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