蒸気ボイラ装置における復水経路の腐食抑制方法
【目的】蒸気ボイラで発生した蒸気を複数の負荷装置へ分配しながら供給し、各負荷装置で利用された蒸気に由来の復水を各負荷装置から延びる復水経路を通じて回収してボイラ給水として再利用する蒸気ボイラ装置において、復水経路全体の腐食を抑制する。
【構成】蒸気ボイラ30で発生した蒸気を負荷装置40a,40b,40cへ送る蒸気供給経路51に対し、蒸気に含まれる炭酸ガスを中和するためのアミン化合物を薬剤注入装置70から連続的に供給する。一方、負荷装置40a,40b,40cからの復水を給水タンク22へ回収する復水経路60において、各負荷装置からそれぞれ延びる支管61a,61b,61cを流れる復水のpH値を個別に測定する。そして、各復水のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう、薬剤注入装置70から供給するアミン化合物の量を制御する。
【構成】蒸気ボイラ30で発生した蒸気を負荷装置40a,40b,40cへ送る蒸気供給経路51に対し、蒸気に含まれる炭酸ガスを中和するためのアミン化合物を薬剤注入装置70から連続的に供給する。一方、負荷装置40a,40b,40cからの復水を給水タンク22へ回収する復水経路60において、各負荷装置からそれぞれ延びる支管61a,61b,61cを流れる復水のpH値を個別に測定する。そして、各復水のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう、薬剤注入装置70から供給するアミン化合物の量を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気ボイラ装置における復水経路の腐食抑制方法、特に、蒸気ボイラで発生した蒸気を複数の負荷装置へ分配しながら供給し、各負荷装置で利用された蒸気に由来の復水を各負荷装置から延びる復水経路を通じて回収してボイラ給水として再利用する蒸気ボイラ装置において、復水経路の腐食を抑制するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気ボイラへ給水タンクからボイラ給水を供給して加熱し、それにより発生する蒸気を蒸気供給経路に連絡する分配装置で分配しながら複数の負荷装置へ供給して利用するとともに、各負荷装置において利用された蒸気が凝縮して得られる復水を各負荷装置から延びる復水経路を通じて給水タンクへ回収してボイラ給水として再利用する蒸気ボイラ装置が知られている(特許文献1)。このような蒸気ボイラ装置は、給水タンクへ回収する復水のために、ボイラ給水として用いる補給水量を削減することができ、また、復水が高温の場合は蒸気ボイラでのボイラ給水の加熱負担が軽減されるため、蒸気ボイラの経済的な運転が可能になる。
【0003】
ところで、上述の蒸気ボイラ装置において、各負荷装置からの復水を給水タンクへ回収するための復水経路は、炭素鋼などの非不動態化金属を用いて形成されているため、ボイラ給水中に含まれる炭酸水素塩および炭酸塩の分解により発生する炭酸ガスの影響を受け、腐食が生じやすい。この腐食は、復水の円滑な回収を妨げる孔空きを復水経路に引き起こす場合があり、また、ボイラ給水において不純物成分となる鉄イオンその他の金属イオンを復水中に溶出させる可能性がある。
【0004】
そこで、特許文献1における蒸気ボイラ装置の運転では、蒸気供給経路を通過する蒸気に対して復水経路の腐食原因となる炭酸ガスを中和するための中和剤を供給し、復水経路における腐食の進行を抑制している。ここで、中和剤の供給量は、蒸気ボイラにおいて発生する蒸気量に応じて制御されている。
【0005】
ところで、炭酸ガスを中和するための中和剤として、通常、水溶性で揮発性のアミン化合物が用いられる。このアミン化合物は、上述の蒸気供給経路へ供給すると揮発し、分配装置において蒸気とともに分配されて各負荷装置へ供給される蒸気中の炭酸ガスを中和する。
【0006】
ところが、複数の負荷装置のそれぞれは、設置環境が異なる。例えば、分配装置の近傍に設置された負荷装置もあれば、分配装置から遠く離れた場所に設置された負荷装置もある。この場合、分配装置の近傍に設置された負荷装置へ供給される蒸気には十分な量のアミン化合物が供給されるが、分配装置から離れた負荷装置へ供給される蒸気には十分な量のアミン化合物が供給されない可能性がある。この結果、分配装置の近傍の負荷装置からの復水配管は腐食が効果的に抑制され得るが、分配装置から離れた負荷装置からの復水配管は腐食が抑制されにくいという不具合が生じる。
【0007】
【特許文献1】特開2002−327904公報、特許請求の範囲および段落0019
【0008】
本発明の目的は、蒸気ボイラで発生した蒸気を複数の負荷装置へ分配しながら供給し、各負荷装置で利用された蒸気に由来の復水を各負荷装置から延びる復水経路を通じて回収してボイラ給水として再利用する蒸気ボイラ装置において、復水経路全体の腐食を効果的に抑制することにある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、補給水をボイラ給水として給水タンクに貯留し、給水タンクから蒸気ボイラへ給水経路を通じてボイラ給水を供給して加熱することにより発生する蒸気を蒸気供給経路に連絡する分配装置で分配しながら複数の負荷装置へ供給して利用するとともに、複数の負荷装置において利用された蒸気が凝縮して得られる復水を複数の負荷装置のそれぞれから延びる復水経路を通じて給水タンクへ回収して再利用する蒸気ボイラ装置において、復水経路の腐食を抑制するための方法である。この腐食抑制方法は、給水経路および蒸気供給経路のうちの少なくとも一つに対し、炭酸ガスを中和可能なアミン化合物を連続的に供給する工程Aと、複数の負荷装置のそれぞれからの復水のpH値を個別に測定する工程Bとを含んでいる。ここでは、工程Bにおいて測定される個別のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう、工程Aにおいてアミン化合物の供給量を制御する。
【0010】
この腐食抑制方法において、工程Aにおいて供給されるアミン化合物は、蒸気ボイラにおいて加熱されるボイラ給水中に含まれる炭酸水素塩および炭酸塩の分解により発生する炭酸ガスが復水に溶存した場合に当該炭酸ガスを中和する。これにより、復水経路は炭酸ガスの影響による腐食が抑制される。また、復水のpH値は、炭酸ガスの中和に関与しない過剰のアミン化合物の作用によりアルカリ性領域になり得る。この工程Aでのアミン化合物の供給量は、工程Bにおいて測定される、各負荷装置のそれぞれからの復水のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう制御されるため、復水経路の全体は、炭酸ガスを中和するために必要な量以上のアミン化合物が供給されることになる。したがって、この腐食抑制方法によれば、復水経路の全体について、炭酸ガスの影響による腐食を効果的に抑制することができる。
【0011】
この腐食抑制方法は、例えば、複数の負荷装置のそれぞれからの復水について、アミン化合物が検出されるか否かを個別に確認する工程Cをさらに含み、工程Bにおいて測定される個別のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう、かつ、工程Cにおいて複数の負荷装置のそれぞれからの復水のいずれにおいてもアミン化合物が検出されるよう、工程Aにおいてアミン化合物の供給量を制御することもできる。
【0012】
この場合、工程Aでのアミン化合物の供給量は、工程Bにおいて測定される、各負荷装置のそれぞれからの復水のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう、かつ、工程Cにおいて各負荷装置のそれぞれからの復水のいずれにおいてもアミン化合物が検出されるよう制御されるため、復水経路の全体は、炭酸ガスを中和するために必要なアミン化合物がより確実に到達するようになる。したがって、この腐食抑制方法によれば、復水経路の全体について、炭酸ガスの影響による腐食をより効果的に抑制することができる。
【0013】
他の観点に係る本発明は、同じく、補給水をボイラ給水として給水タンクに貯留し、給水タンクから蒸気ボイラへ給水経路を通じてボイラ給水を供給して加熱することにより発生する蒸気を蒸気供給経路に連絡する分配装置で分配しながら複数の負荷装置へ供給して利用するとともに、複数の負荷装置において利用された蒸気が凝縮して得られる復水を複数の負荷装置のそれぞれから延びる復水経路を通じて給水タンクへ回収して再利用する蒸気ボイラ装置において、復水経路の腐食を抑制するための方法である。この腐食抑制方法は、給水経路および蒸気供給経路のうちの少なくとも一つに対し、炭酸ガスを中和可能なアミン化合物を連続的に供給する工程Aと、複数の負荷装置のそれぞれからの復水のpH値を個別に測定する工程Bとを含んでいる。ここでは、工程Bにおいて測定される個別のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう、工程Aにおいて供給するアミン化合物の種類を選択する。
【0014】
この腐食抑制方法において、工程Aにおいて供給されるアミン化合物は、蒸気ボイラにおいて加熱されるボイラ給水中に含まれる炭酸水素塩および炭酸塩の分解により発生する炭酸ガスが復水に溶存した場合に当該炭酸ガスを中和する。これにより、復水経路は炭酸ガスの影響による腐食が抑制される。また、復水のpH値は、炭酸ガスの中和に関与しない過剰のアミン化合物の作用によりアルカリ性領域になり得る。この工程Aで供給されるアミン化合物は、工程Bにおいて測定される、各負荷装置のそれぞれからの復水のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう種類が選択されるため、復水経路の全体は、炭酸ガスを中和するために必要な量以上のアミン化合物が供給されることになる。したがって、この腐食抑制方法によれば、復水経路の全体について、炭酸ガスの影響による腐食を効果的に抑制することができる。
【0015】
この腐食抑制方法は、例えば、複数の負荷装置のそれぞれからの復水について、アミン化合物が検出されるか否かを個別に確認する工程Cをさらに含み、工程Bにおいて測定される個別のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう、かつ、工程Cにおいて複数の負荷装置のそれぞれからの復水のいずれにおいてもアミン化合物が検出されるよう、工程Aにおいて供給するアミン化合物の種類を選択することもできる。
【0016】
この場合、工程Aで供給されるアミン化合物の種類は、工程Bにおいて測定される、各負荷装置のそれぞれからの復水のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう、かつ、工程Cにおいて各負荷装置のそれぞれからの復水のいずれにおいてもアミン化合物が検出されるよう選択されるため、復水経路の全体は、炭酸ガスを中和するために必要なアミン化合物がより確実に到達するようになる。したがって、この腐食抑制方法によれば、復水経路の全体について、炭酸ガスの影響による腐食をより効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る蒸気ボイラ装置における復水経路の腐食抑制方法は、複数の負荷装置のそれぞれからの復水のpH値を個別に測定し、この結果に基づいて、炭酸ガスを中和可能なアミン化合物の供給量を制御するか、或いは、アミン化合物の種類を選択しているので、復水経路の全体について、炭酸ガスの影響による腐食を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
実施の形態1
図1を参照して、本発明の実施の一形態に係る腐食抑制方法を実施可能な蒸気ボイラ装置を説明する。図において、蒸気ボイラ装置1は、給水装置20、蒸気ボイラ30、負荷装置群40、蒸気供給装置50、復水経路60、薬剤注入装置70および制御装置80を主に備えている。
【0019】
給水装置20は、蒸気ボイラ30へボイラ給水を供給するためのものであり、補給水の注水路21、注水路21からの補給水を貯留するための給水タンク22および給水タンク22に貯留されたボイラ給水を蒸気ボイラ30へ供給するための給水経路23を主に備えている。注水路21は、水道水、工業用水または地下水などの原水を補給水として供給するためのものであり、通常、原水に含まれる硬度分、すなわちカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンをナトリウムイオンに変換して原水を軟化水にするための軟水化装置(図示せず)と、軟水化された原水に含まれる溶存酸素を除去するための脱酸素装置(図示せず)とを備えている。給水経路23は、給水タンク22内に貯留されたボイラ給水を蒸気ボイラ30へ向けて送り出すための給水ポンプ24を有している。
【0020】
蒸気ボイラ30は、給水装置20から供給されるボイラ給水を加熱して蒸気を発生するためのものであり、例えば、貫流ボイラである。
【0021】
負荷装置群40は、熱交換器、蒸気釜、リボイラ若しくはオートクレーブ等の蒸気使用設備である3台の負荷装置40a,40b,40cからなる。負荷装置40a,40b,40cは、全てが同種のものであってもよいし、種類の異なるものであってもよい。
【0022】
蒸気供給装置50は、蒸気ボイラ30で発生した蒸気を負荷装置群40へ供給するためのものであり、蒸気ボイラ30から延びる蒸気供給経路51、この蒸気供給経路51に連絡している分配装置52および分配装置52から延びる三本の蒸気供給分岐管53a,53b,53cを主に備えている。分配装置52は、蒸気供給経路51からの蒸気を蓄え、この蒸気を三本の蒸気供給分岐管53a,53b,53cへ分配するためのものである。また、三本の蒸気供給分岐管53a,53b,53cは、それぞれ、負荷装置40a,40b,40cへ個別に連絡している。
【0023】
復水経路60は、負荷装置40a,40b,40cにおいて利用された蒸気が凝縮して得られる凝縮水(復水)を給水タンク22へ回収するためのものであり、負荷装置40a,40b,40cのそれぞれから延びる支管61a,61b,61cと、支管61a,61b,61cが合流して一体化された本管62とを主に備えている。各支管61a,61b,61cは、それぞれ、蒸気と復水とを分離するためのスチームトラップ63a,63b,63cと、スチームトラップ63a,63b,63cで分離された復水のpH値を測定するためのpHセンサー64a,64b,64cとを備えている。本管62は、給水タンク22と連絡している。
【0024】
薬剤注入装置70は、蒸気ボイラ30からの蒸気中へ薬剤を供給するためのものであり、薬剤を貯留するための薬剤タンク71と、薬剤タンク71から蒸気供給経路51へ延びる供給路72と、供給路72に設けられた供給ポンプ73とを主に有している。供給ポンプ73は、薬剤タンク71に貯留された薬剤を供給路72を通じて蒸気供給経路51へ送り出すものであり、流量制御が可能なものである。
【0025】
ここで用いられる薬剤は、後述する炭酸ガスの影響による復水経路60の腐食を抑制するための復水処理剤(腐食抑制剤)であり、炭酸ガスを中和可能なアミン化合物、例えば、モルホリン、シクロヘキシルアミン、ピペリジン、メトキシプロピルアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、ジエタノールアミンおよびアミノプロパノールやアミノエタノール等のアルカノールアミンなどの揮発性のアミン化合物、特に、水溶性のアミン化合物である。復水処理剤は、これらのアミン化合物の二種以上を適宜混合したものであってもよい。
【0026】
制御装置80は、pHセンサー64a,64b,64cからの情報に基づいて薬剤注入装置70の供給ポンプ73を制御し、蒸気供給経路51への薬剤の供給量を制御するためのものである。
【0027】
このような蒸気ボイラ装置1において、蒸気供給装置50の各部および復水経路60の各配管は、炭酸ガスの影響により腐食が進行する非不動態化金属を用いて形成されている。非不動態化金属は、中性水溶液中において自然には不動態化しない金属をいい、通常はステンレス鋼、チタン、アルミニウム、クロム、ニッケルおよびジルコニウム等を除く金属である。具体的には、炭素鋼、鋳鉄、銅および銅合金等である。なお、炭素鋼は、中性水溶液中においても、高濃度のクロム酸イオンの存在下では不動態化する場合があるが、この不動態化はクロム酸イオンの影響によるものであって中性水溶液中での自然な不動態化とは言い難い。したがって、炭素鋼は、ここでの非不動態化金属の範疇に属する。また、銅および銅合金は、電気化学列(emf series)が貴な位置にあるため、通常は水分の影響による腐食が生じ難い金属と考えられているが、中性水溶液中において自然に不動態化するものではないので、非不動態化金属の範疇に属する。
【0028】
次に、上述の蒸気ボイラ装置1の動作について説明する。
蒸気ボイラ装置1を運転する場合は、注水路21から給水タンク22へ補給水を供給し、この補給水をボイラ給水として給水タンク22に貯留する。ここで貯留されるボイラ給水は、脱酸素処理された軟化水である。そして、給水ポンプ23を作動させ、給水タンク22に貯留されたボイラ給水を給水経路23を通じて蒸気ボイラ30へ供給する。蒸気ボイラ30は、供給されたボイラ給水を貯留して加熱し、蒸気を発生する。発生した蒸気は、蒸気供給経路51を通じて分配装置52へ供給され、分配装置52において三本の蒸気供給分岐管53a,53b,53cのそれぞれへ分配される。分配された蒸気は、蒸気供給分岐管53a,53b,53cのそれぞれが個別に連絡する負荷装置40a,40b,40cへ供給されて利用される。
【0029】
負荷装置40a,40b,40cにおいて利用された蒸気は、それぞれ潜熱を失って一部が凝縮水に変わり、スチームトラップ63a,63b,63cにおいて蒸気と水とが分離されて高温の復水になる。この復水は、支管61a,61b,61cを流れて本管62で合流し、本管62をさらに流れて給水タンク22内に回収される。給水タンク22内に回収された復水は、既に貯留されているボイラ給水と混合され、ボイラ給水として再利用される。この際、給水タンク22に貯留されたボイラ給水は、高温の復水が混合されることにより加熱されるので、蒸気ボイラ30での加熱負担が軽減される。したがって、蒸気ボイラ装置1は、蒸気ボイラ30を稼動するための燃料コストを抑制することができ、経済的に運転することができる。
【0030】
上述のような蒸気ボイラ装置1の運転中において、蒸気ボイラ30では、ボイラ給水に含まれる炭酸水素塩および炭酸塩が加熱時に分解されて継続的に炭酸ガスが発生する。この炭酸ガスは、蒸気とともに蒸気供給装置50および負荷装置40a,40b,40cを経由して復水経路60へ排出される。このため、復水経路60は、この炭酸ガスの影響を受けて腐食が発生しやすい。
【0031】
そこで、蒸気ボイラ装置1の運転中は、蒸気供給経路51へ薬剤注入装置70から連続的に所定量Xの復水処理剤を供給する。所定量Xは、例えば、単位時間当りの供給量である。蒸気供給経路51へ供給された復水処理剤は、蒸気供給経路51内において揮発し、蒸気中に混入する。蒸気中に混入した復水処理剤は、分配装置52において三本の蒸気供給分岐管53a,53b,53cへ分配される。このようにして三本の蒸気供給分岐管53a,53b,53cへ分配された復水処理剤は、負荷装置40a,40b,40cからそれぞれ延びる支管61a,61b,61cにおいて生成した復水中の炭酸ガスを中和し、支管61a,61b,61cおよび本管62において炭酸ガスの影響による腐食の進行を抑制する。
【0032】
この実施の形態では、支管61a,61b,61cにおいてそれぞれ生成した復水のpH値を常時または定期的にpHセンサー64a,64b,64cにより個別に測定する。そして、支管61a,61b,61cのそれぞれにおいて生成した復水のpH値がいずれもアルカリ性領域、すなわち、7を超えるpH値になるよう、薬剤注入装置70から蒸気供給経路51へ供給する復水処理剤の供給量を制御する。例えば、支管61a,61b,61cのいずれかにおいて生成した復水のpH値がアルカリ性領域にない場合(すなわち、pHが7以下の場合)、制御装置80により供給ポンプ73を制御し、所定量Xよりも多い量で薬剤注入装置70から蒸気供給経路51へ復水処理剤を供給する。これにより、支管61a,61b,61cの全てに対して炭酸ガスを中和するのに十分な量の復水処理剤が供給され得ることになるため、復水経路60は、支管61a,61b,61cおよび本管62を含む全体の腐食が効果的に抑制される。
【0033】
一方、支管61a,61b,61cのそれぞれにおいて生成した復水のpH値の全てが十分なアルカリ性領域にあるときは、制御装置80により供給ポンプ73を制御し、所定量Xよりも少ない量で薬剤注入装置70から蒸気供給経路51へ復水処理剤を供給することもできる。この場合、復水処理剤の過剰供給を回避することができるため、蒸気ボイラ装置1を経済的に運転することができる。
【0034】
実施の形態1の変形例
図2を参照して、実施の形態1に係る蒸気ボイラ装置1の変形例を説明する。図2は、図1の負荷装置40a,40b,40cから復水経路60にかけての部分図である。図において、復水経路60の支管61a,61b,61cは、ぞれぞれ、末端が開放された分岐経路65a,65b,65cを個別に有している。各分岐経路65a,65b,65cは、それぞれ開閉弁(図示せず)を有している。
【0035】
この変形例の蒸気ボイラ装置1における復水経路60の腐食抑制方法では、開閉弁の操作により支管61a,61b,61cを流れる各復水の一部を分岐経路65a,65b,65cを通じて試料として採取し、それにアミン化合物が含まれるか否かを確認する。そして、pHセンサー64a,64b,64cにより測定される各復水のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう、かつ、各復水の試料のいずれにおいてもアミン化合物が検出されるよう、制御装置80において、薬剤注入装置70からのアミン化合物の供給量を制御する。より好ましくは、支管61a,61b,61cを流れる各復水の一部を試料として採取してそれに含まれるアミン化合物の濃度を測定し、pHセンサー64a,64b,64cにより測定される各復水のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう、かつ、各復水の試料のいずれにおいてもアミン化合物の濃度が所定値以上になるよう、制御装置80において、薬剤注入装置70からのアミン化合物の供給量を制御する。
【0036】
この場合、薬剤注入装置70からのアミン化合物の供給量は、負荷装置40a,40b,40cのそれぞれからの復水においてアミン化合物が検出されるよう制御されるため、復水経路60の全体は炭酸ガスを中和するために必要なアミン化合物がより確実に到達するようになり、炭酸ガスの影響による腐食がより効果的に抑制され得る。
【0037】
復水試料においてアミン化合物が含まれるか否か、或いは、復水試料におけるアミン化合物の濃度は、各種の方法により確認することができる。例えば、高速液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーによる一般的な分析方法による方法の他、化学的手法により確認することもできる。
【0038】
アミン化合物が復水試料に含まれるか否かを化学的手法により確認する方法の一例では、先ず、分岐経路65a,65b,65cのそれぞれから採取した所定量の復水試料をガラス製や化学的に安定な樹脂製などの容器に採る。容器は、後述する変色の判定をするために、無色透明なものを用いるのが好ましい。
【0039】
次に、容器内の復水試料に対し、下記の一般式(1)で表わされる4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンと有機溶媒とを加える。
【0040】
【化1】
一般式(1)において、Xは、塩素やフッ素などのハロゲン原子を示す。
【0041】
ここで用いられる有機溶媒は、アミン化合物と4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンとの反応により生成する発色物質を溶解可能で復水試料に不溶なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、クロロメタン、メチレンクロライドおよびクロロホルムのような塩素系有機溶媒、エーテル類並びに酢酸エチルなどである。このうち、生成する発色物質を選択的に溶解可能なことから、塩素系有機溶媒を用いるのが好ましい。
【0042】
4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンの添加量は、特に限定されるものではないが、通常、復水試料中に含まれると予想されるアミン化合物量の少なくとも1.0倍当量に設定するのが好ましく、1.2倍当量以上に設定するのがより好ましい。この添加量が1.0倍当量未満のときは、復水試料がアミン化合物を微量に含む場合において、アミン化合物と4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンとの反応が進行しにくくなり、アミン化合物を正確に検出するのが困難になる可能性がある。また、アミン化合物の定量をする必要がある場合は、アミン化合物の全てが4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンと反応せず、定量結果の信頼性を損なう可能性がある。
【0043】
また、有機溶媒の添加量は、特に限定されるものではないが、復水試料量と有機溶媒量との比率の制御で上述の発色物質による有機溶媒の発色強度をコントロールできることから、復水試料量に対してアミン化合物の判定下限濃度が判定できる比率に設定するのが望ましい。例えば、アミン化合物がモルホリンであり、その1ミリグラム/リットルを判定下限濃度とする場合、復水試料量(A)と有機溶媒(B)との比率は重量比(A:B)で1:2程度に設定するのが好ましい。
【0044】
この工程においては、必要に応じ、復水試料のpHを7.5〜8.5の範囲に調整するためのpH調整剤を復水試料に対して併せて添加するのが好ましい。pH調整剤としては、例えば、ホウ酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、炭酸塩緩衝液、リン酸緩衝液またはクエン酸緩衝液などを用いることができる。
【0045】
次に、4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザン、有機溶媒および必要に応じてpH調整剤が添加された復水試料を所定時間攪拌する。攪拌は、20〜25℃程度の室温で実行することができる。この攪拌操作により、復水試料に含まれるアミン化合物と4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンとが反応し、発色物質が生成する。攪拌操作は、容器を振とうすることによって実行することもできるし、マグネチックスターラーなどの攪拌装置を用いて実行することもできる。攪拌時間は、アミン化合物と4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンとの反応を十分に進行させるのに十分な時間、例えば、1〜5分に設定するのが好ましい。
【0046】
次に、攪拌後の容器を静置すると、容器内は、復水試料による水相と有機溶媒相とに分離する。ここで、上述の反応により発色物質が生成した場合、この発色物質は、復水試料に不溶で有機溶媒に溶解するため、有機溶媒相を変色させる。そこで、有機溶媒相が発色物質により変色したか否かを判定する。因みに、有機溶媒相は、発色物質により、460〜500nmの波長領域で吸光する黄〜橙色の色彩へ変色する。
【0047】
ここで、有機溶媒相が変色しなかった場合は、4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンの反応相手となるアミン化合物が復水試料に含まれていないため、発色物質が生成しなかったことになる。したがって、復水試料は、アミン化合物を含まないものと判定することができる。一方、有機溶媒相が変色した場合は、復水試料に含まれるアミン化合物が4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンと反応して発色物質が生成したことになる。したがって、復水試料は、アミン化合物を含むものと判定することができる。
【0048】
有機溶媒相の変色の有無は、視覚的に判定することもできるし、吸光光度法により判定することもできる。視覚的に判定するときは、発色物質により着色される有機溶媒相の色見本を作成し、有機溶媒相とこの色見本とを対比することで判定することができる。ここで、有機溶媒相は発色物質の濃度が高まるに従って濃色に変色するため、変色の度合いと発色物質濃度とを関連させた段階的な色見本を作成しておくと、アミン化合物の濃度を推測することができる。
【0049】
一方、吸光光度法により有機溶媒相の変色を判定するときは、予め、有機溶媒のみにおける460〜500nmの吸光度(基準吸光度と云う)を測定しておき、有機溶媒相における同波長範囲の吸収ピークの吸光度(測定吸光度と云う)が基準吸光度から変化したか否かを判定する。そして、測定吸光度が基準吸光度よりも増加しているときは有機溶媒相が変色していることになり、この場合は復水試料にアミン化合物が含まれているものと判定することができる。また、復水試料におけるアミン化合物濃度と測定吸光度との関係を予め調べて検量線などを作成しておくと、復水試料におけるアミン化合物濃度を測定吸光度から求めることもできる。
【0050】
上述の化学的手法は、次の第一容器および第二容器の二つの容器を備えたキットを用いることで、より簡単に実施することができる。
【0051】
第一容器は、ガラス製などの無色で透明な容器であり、所定量の4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンを封入したものである。一方、第二容器は、上述の有機溶媒に対して安定な材料からなるものであり、所定量の有機溶媒を封入したものである。第二容器は、必要に応じて、上述のpH調整剤の所定量をさらに封入していてもよい。第一容器は、開封したときに所定量の復水試料および第二容器の内容物の全量を加えることができるよう、第二容器よりも大型に形成されている。
【0052】
このキットを用いて復水試料に含まれるアミン化合物を検出するときは、第一容器を開封し、その中に所定量の復水試料を加える。また、第二容器を開封し、その内容物を第一容器内へ加える。そして、第一容器の内容物を所定時間攪拌した後に静置し、第一容器内において水相と分離した有機溶媒相について、既述の方法で変色の有無を判定する。
【0053】
このようなキットを用いれば、復水試料の採取現場において、迅速に、しかも簡単に、復水試料にアミン化合物が含まれるか否かを確認することができる。
【0054】
実施の形態2
本発明の他の実施の形態に係る腐食抑制方法を実施可能な蒸気ボイラ装置10を図3に示す。図3において、蒸気ボイラ装置10は、薬剤注入装置70および制御装置80のみが実施の形態1に係る蒸気ボイラ装置1と異なっている。したがって、図3において、図1と同じ部位には同じ符号を付している。
【0055】
この蒸気ボイラ装置10において、薬剤注入装置70は、二台の薬剤注入装置、すなわち、第一薬剤注入装置70aと第二薬剤注入装置70bとを備えている。第一薬剤注入装置70aおよび第二薬剤注入装置70bは、いずれも、蒸気ボイラ30からの蒸気中へ薬剤を供給するためのものであり、薬剤を貯留するための薬剤タンク71と、薬剤タンク71から蒸気供給経路51へ延びる供給路72と、供給路72に設けられた供給ポンプ73とを主に有している。供給ポンプ73は、薬剤タンク71に貯留された薬剤を供給路72を通じて蒸気供給経路51へ送り出すものであり、流量制御が可能なものである。
【0056】
ここで、第一薬剤注入装置70aの薬剤タンク71と第二薬剤注入装置70bの薬剤タンク71とには、互いに分配比が異なるアミン化合物が貯留されている。より具体的には、第二薬剤注入装置70bの薬剤タンク71には、第一薬剤注入装置70aの薬剤タンク71に貯留されているアミン化合物よりも分配比が大きなアミン化合物が貯留されている。
【0057】
ここで、分配比は、気相(すなわち蒸気)中のアミン濃度(A)と液相(すなわち復水)中のアミン濃度(B)との比(A/B)を意味する。アミン化合物は、分配比が大きいもの程気相へ移行しやすく、液相に溶解しにくい傾向がある。アミン化合物の分配比は、蒸気の圧力により変動するが、同一の圧力条件の下においては、アミン化合物の種類による分配比の相対的な大小関係は変動しない。復水処理剤として利用される主なアミン化合物の分配比は、例えば表1の通りである。表1に示した分配比は、蒸気の圧力が1.03MPaのときのものである。
【0058】
【表1】
【0059】
この実施の形態では、例として、第一薬剤注入装置70aの薬剤タンク71にモルホリンを貯留し、第二薬剤注入装置70bの薬剤タンク71にシクロヘキシルアミンを貯留しているものとする。
【0060】
制御装置80は、pHセンサー64a,64b,64cからの情報に基づいて、第一薬剤注入装置70aおよび第二薬剤注入装置70bのいずれか一方または両方を選択して作動させるためのものである。より具体的には、pHセンサー64a,64b,64cからの情報に基づいて、第一薬剤注入装置70aの供給ポンプ73および第二薬剤注入装置70bの供給ポンプ73のいずれか一方を選択して作動させ、他方を停止させるためのものである。
【0061】
蒸気ボイラ装置10は、第一薬剤注入装置70aおよび第二薬剤注入装置70bのいずれかから復水処理剤であるアミン化合物を供給しながら、実施の形態1の場合と同様に運転され、また、実施の形態1と同様に、支管61a,61b,61cにおいてそれぞれ生成した復水のpH値を常時または定期的にpHセンサー64a,64b,64cにより個別に測定する。
【0062】
そして、この実施の形態では、支管61a,61b,61cのそれぞれにおいて生成した復水のpH値がいずれもアルカリ性領域、すなわち、7を超えるpH値になるよう、薬剤注入装置70から蒸気供給経路51へ供給する復水処理剤の種類を選択する。例えば、第一薬剤注入装置70aからモルホリンを供給しながら運転している場合において、支管61a,61b,61cのいずれかにおいて生成した復水のpH値がアルカリ性領域にない場合(すなわち、pHが7以下の場合)、制御装置80により第一薬剤注入装置70aの供給ポンプ73を停止し、第二薬剤注入装置70bの供給ポンプ73を作動させる。これにより、蒸気供給経路51へは、モルホリンよりも分配比が大きなシクロヘキシルアミンが復水処理剤として供給される。これにより、支管61a,61b,61cの全てに炭酸ガスを中和するのに十分な量の復水処理剤が供給され易くなるため、復水経路60は、支管61a,61b,61cおよび本管62を含む全体の腐食が効果的に抑制される。
【0063】
一方、第二薬剤注入装置70bからシクロヘキシルアミンを供給しながら運転している場合において、支管61a,61b,61cにおいて生成した全ての復水のpH値が十分なアルカリ性領域にあるときは、制御装置80により第二薬剤注入装置70bの供給ポンプ73を停止し、かつ、第一薬剤注入装置70aの供給ポンプ73を作動させて、蒸気供給経路51へシクロヘキシルアミンよりも分配比が小さなモルホリンを復水処理剤として供給することもできる。
【0064】
因みに、この実施の形態では、第一薬剤注入装置70aおよび第二薬剤注入装置70bの両方から、蒸気供給経路51に対して同時にアミン化合物を供給することもできる。この場合、供給可能なアミン化合物の選択肢は、モルホリン、シクロヘキシルアミンおよびこれらの混合物の三種類になる。
【0065】
実施の形態2の変形例
(1)実施の形態2に係る蒸気ボイラ装置10では、薬剤注入装置70において二台の薬剤注入装置を用いているが、薬剤注入装置の台数は3台以上であってもよい。この場合、蒸気供給経路51へ供給するアミン化合物の種類の選択肢が広がるため、アミン化合物の種類をより適切に選択することができるようになり、復水経路60全体の腐食をより効果的に抑制することができる。
【0066】
(2)実施の形態2に係る蒸気ボイラ装置10において、復水経路60の支管61a,61b,61cは、図2に示す実施の形態1の変形例と同様に変更して復水試料を採取するための分岐経路65a,65b,65cを設けることができる。
【0067】
この変形例の蒸気ボイラ装置10における復水経路60の腐食抑制方法では、支管61a,61b,61cを流れる各復水の一部を分岐経路65a,65b,65cを通じて試料として採取し、それにアミン化合物が含まれるか否かを確認する。そして、pHセンサー64a,64b,64cにより測定される各復水のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう、かつ、各復水の試料のいずれにおいてもアミン化合物が検出されるよう、制御装置80において、薬剤注入装置70から供給するアミン化合物を選択する。より好ましくは、支管61a,61b,61cを流れる各復水の一部を試料として採取してそれに含まれるアミン化合物の濃度を測定し、pHセンサー64a,64b,64cにより測定される各復水のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう、かつ、各復水の試料のいずれにおいてもアミン化合物の濃度が所定値以上になるよう、制御装置80において、薬剤注入装置70から供給するアミン化合物を選択する。
【0068】
この場合、薬剤注入装置70から供給されるアミン化合物は、負荷装置40a,40b,40cのそれぞれからの復水においてアミン化合物が検出されるよう選択されるため、復水経路60の全体は炭酸ガスを中和するために必要なアミン化合物がより確実に到達するようになり、炭酸ガスの影響による腐食がより効果的に抑制され得る。
【0069】
復水試料においてアミン化合物が含まれるか否か、或いは、復水試料におけるアミン化合物の濃度は、実施の形態1の変形例と同様の方法により確認することができる。
【0070】
他の変形例
(1)実施の形態1,2においては、負荷装置を3台設けた蒸気ボイラ装置1,10における復水経路60の腐食抑制方法を説明したが、負荷装置が2台若しくは4台以上の蒸気ボイラ装置においても本発明を同様に実施することができる。
【0071】
(2)実施の形態1の蒸気ボイラ装置1において利用可能な他の薬剤注入装置の一例を図4に示す。図において、薬剤注入装置100は、親器90と子器95とを備えている。親器90は、薬剤(すなわちアミン化合物)を貯留するための第一薬剤タンク91と、第一薬剤タンク91から蒸気供給経路51へ延びる第一供給路92と、第一供給路92に設けられた第一供給ポンプ93とを主に有している。第一供給ポンプ93は、第一薬剤タンク91に貯留された薬剤を第一供給路92を通じて蒸気供給経路51へ送り出すものであり、流量制御が可能なものである。子器95は、第一薬剤タンク91に貯留される薬剤とは異なる薬剤(すなわち、別のアミン化合物)を貯留するための第二薬剤タンク96と、第二薬剤タンク96から第一供給路92へ延びる第二供給路97と、第二供給路97に設けられた第二供給ポンプ98とを主に有している。第二供給ポンプ98は、第二薬剤タンク96に貯留された薬剤を第二供給路92を通じて第一供給路92へ送り出すものであり、流量制御が可能なものである。
【0072】
薬剤注入装置100は、第二供給ポンプ98を停止した状態で第一供給ポンプ93を作動させると、第一薬剤タンク91に貯留されたアミン化合物を蒸気供給経路51へ供給することができる。一方、第一供給ポンプ93と第二供給ポンプ98とを同時に作動させると、第一薬剤タンク91から蒸気供給経路51へ供給されるアミン化合物は第二薬剤タンク96からの別のアミン化合物が混合され、この混合アミン化合物が蒸気供給経路51へ供給される。
【0073】
この薬剤注入装置100は、実施の形態2において用いることもできる。例えば、薬剤注入装置70を構成する二台の薬剤注入装置70a,70bのうち、第一薬剤注入装置70aを薬剤注入装置100に交換する。このようにすると、蒸気供給経路51に対し、五種類のアミン化合物(薬剤注入装置100の第一薬剤タンク91に貯留されたアミン化合物A、同第二薬剤タンク96に貯留されたアミン化合物B、アミン化合物A,Bの混合物C、第二薬剤注入装置70bの薬剤タンク71に貯留されたアミン化合物D並びに混合物Cとアミン化合物Dとの混合物E)のうちから選択して供給することができる。このため、蒸気供給経路51へ供給するアミン化合物の種類の選択肢がより広がり、アミン化合物をより適切に選択することができるようになるため、復水経路60全体の腐食をより効果的に抑制することができる。
【0074】
(3)上述の各実施の形態においては、蒸気供給経路51へアミン化合物を供給しているが、給水経路23を通じて蒸気ボイラ30へ流れるボイラ給水へアミン化合物を供給するように変更した場合も本発明を同様に実施することができる。
【0075】
[試験例]
4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンを用いた化学的手法によりアミン化合物が復水試料に含まれるか否かを確認する方法について、下記の確認試験をした。
【0076】
検量線Aの作成
モルホリン(和光純薬工業株式会社の和光特級[98.0+% Capillary GC])0.1gに純水を添加して、全量を1リットルにした。この溶液を純水でさらに希釈し、モルホリン濃度が3.2ミリグラム/リットル、6.5ミリグラム/リットルおよび10.1ミリグラム/リットルの三種類の標準液を調製した。
【0077】
標準液2ミリリットルに対し、pH調整剤として1Mトリス塩酸緩衝液(pH=8.0)1ミリリットル、4−フルオロ−7−ニトロベンゾフラザン(一般式(1)のXがフッ素原子のもの)の0.1重量%水溶液0.5ミリリットルおよびクロロホルム4gを混合し、5分間撹拌した。これを静置して分離したクロロホルム相を採取し、株式会社日立製作所製の分光光度計(型番:U−2010)を用いてクロロホルムをブランクとして465nmの吸光度を測定した。
【0078】
各標準液の吸光度とモルホリン濃度とに基づいて作成した、モルホリン濃度測定用の検量線を図5に示す。
【0079】
検量線Bの作成
シクロヘキシルアミン(和光純薬工業株式会社の和光特級[98.0+% Capillary GC])0.1gに純水を添加して、全量を1リットルにした。この溶液を純水でさらに希釈し、シクロヘキシルアミン濃度が3.6ミリグラム/リットル、6.9ミリグラム/リットルおよび11.5ミリグラム/リットルの三種類の標準液を調製した。
【0080】
標準液20ミリリットルに対し、pH調整剤として1Mトリス塩酸緩衝液(pH=8.0)1ミリリットル、4−フルオロ−7−ニトロベンゾフラザン(一般式(1)のXがフッ素原子のもの)の0.1重量%水溶液1.0ミリリットルおよびクロロホルム2gを混合し、5分間撹拌した。これを静置して分離したクロロホルム相を採取し、株式会社日立製作所製の分光光度計(型番:U−2010)を用いてクロロホルムをブランクとして465nmの吸光度を測定した。
【0081】
各標準液の吸光度とシクロヘキシルアミン濃度とに基づいて作成した、シクロヘキシルアミン濃度測定用の検量線を図6に示す。
【0082】
検量線Cの作成
ピペリジン(和光純薬工業株式会社の和光特級[98.0+% Capillary GC])0.1gに純水を添加して、全量を1リットルにした。この溶液を純水でさらに希釈し、ピペリジン濃度が4.6ミリグラム/リットル、8.6ミリグラム/リットルおよび15.2ミリグラム/リットルの三種類の標準液を調製した。
【0083】
標準液2ミリリットルに対し、pH調整剤として1Mトリス塩酸緩衝液(pH=8.0)1ミリリットル、4−フルオロ−7−ニトロベンゾフラザン(一般式(1)のXがフッ素原子のもの)の0.1重量%水溶液0.5ミリリットルおよびクロロホルム4gを混合し、5分間撹拌した。これを静置して分離したクロロホルム相を採取し、株式会社日立製作所製の分光光度計(型番:U−2010)を用いてクロロホルムをブランクとして479nmの吸光度を測定した。
【0084】
各標準液の吸光度とピペリジン濃度とに基づいて作成した、ピペリジン濃度測定用の検量線を図7に示す。
【0085】
被試験水Aの調整
モルホリン0.1gに蒸留水を加えて全量を1リットルにし、モルホリン濃度を100ミリグラム/リットルに調整した。この溶液7gに蒸留水を加えて全量を100ミリリットルにし、モルホリン濃度が7ミリグラム/リットルの被試験水Aを調製した。
【0086】
被試験水Bの調整
シクロヘキシルアミン0.1gに蒸留水を加えて全量を1リットルにし、シクロヘキシルアミン濃度を100ミリグラム/リットルに調整した。この溶液7gに蒸留水を加えて全量を100ミリリットルにし、シクロヘキシルアミンが濃度7ミリグラム/リットルの被試験水Bを調製した。
【0087】
被試験水Cの調整
ピペリジン0.1gに蒸留水を加えて全量を1リットルにし、ピペリジン濃度を100ミリグラム/リットルに調整した。この溶液7gに蒸留水を加えて全量を100ミリリットルにし、ピペリジン濃度が7ミリグラム/リットルの被試験水Cを調製した。
【0088】
試験例1
被試験水A2ミリリットルに対し、pH調整剤としてトリス塩酸緩衝液1ミリリットル、4−フルオロ−7−ニトロベンゾフラザン(一般式(1)のXがフッ素原子のもの)の0.1重量%水溶液0.5ミリリットルおよびクロロホルム4gを加えた混合物を5分間攪拌した。攪拌終了後に混合物を静置したところ、混合物は水相と、黄色〜橙色に変色したクロロホルム相とに分離した。クロロホルム相を採取し、株式会社日立製作所製の分光光度計(型番:U−2010)を用いてクロロホルムをブランクとして465nmの吸光度を測定したところ、0.399であった。検量線Aに基づいてこの吸光度からモルホリン濃度を判定したところ、6.96ミリグラム/リットルであった。この結果は、被試験水Aのモルホリン濃度と略一致している。
【0089】
試験例2
被試験水B20ミリリットルに対し、pH調整剤としてトリス塩酸緩衝液1ミリリットル、4−フルオロ−7−ニトロベンゾフラザン(一般式(1)のXがフッ素原子のもの)の0.1重量%水溶液1.0ミリリットルおよびクロロホルム4gを加えた混合物を5分間攪拌した。攪拌終了後に混合物を静置したところ、混合物は水相と、黄色〜橙色に変色したクロロホルム相とに分離した。クロロホルム相を採取し、株式会社日立製作所製の分光光度計(型番:U−2010)を用いてクロロホルムをブランクとして465nmの吸光度を測定したところ、0.086であった。検量線Bに基づいてこの吸光度からシクロヘキシルアミン濃度を判定したところ、6.62ミリグラム/リットルであった。この結果は、被試験水Bのシクロヘキシルアミン濃度と略一致している。
【0090】
試験例3
被試験水Aに替えて被試験水Cを用いた点を除いて試験例1と同様に操作したところ、混合物は水相と黄〜橙色へ変色したクロロホルム相とに分離した。このクロロホルム相を採取して試験例1と同様にして479nmの吸光度を測定したところ、0.221であった。検量線Cに基づいてこの吸光度からピペリジン濃度を判定したところ、7.04ミリリットル/リットルであった。この結果は、被試験水Cのピペリジン濃度と略一致している。
【0091】
試験例4
被試験水Aに替えて蒸留水を用いた点を除いて試験例1と同様に操作したところ、混合物は水相とクロロホルム相とに分離した。但し、クロロホルム相は無色のままであり、変色しなかった。このクロロホルム相を採取して試験例1と同様にして465nmおよび479nmの吸光度を測定したところ、いずれも0.000であった。検量線A、検量線Bおよび検量線Cに基づいてこの吸光度からモルホリン濃度、シクロヘキシルアミン濃度およびピペリジン濃度をそれぞれ判定したところ、いずれも0ミリリットル/リットルであった。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施の形態1に係る腐食抑制方法を実施可能な蒸気ボイラ装置の概略図。
【図2】前記蒸気ボイラ装置の変形例の部分図。
【図3】本発明の実施の形態2に係る腐食抑制方法を実施可能な蒸気ボイラ装置の概略図。
【図4】前記各蒸気ボイラ装置において利用可能な薬剤注入装置の変形例を示す図。
【図5】試験例で作成した検量線Aを示すグラフ。
【図6】試験例で作成した検量線Bを示すグラフ。
【図7】試験例で作成した検量線Cを示すグラフ。
【符号の説明】
【0093】
1、10 蒸気ボイラ装置
22 給水タンク
23 給水経路
30 蒸気ボイラ
40 負荷装置群
40a,40b,40c 負荷装置
51 蒸気供給経路
52 分配装置
60 復水経路
61a,61b,61c 支管
62 本管
64a,64b,64c pHセンサー
70,100 薬剤注入装置
70a 第一薬剤注入装置
70b 第二薬剤注入装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気ボイラ装置における復水経路の腐食抑制方法、特に、蒸気ボイラで発生した蒸気を複数の負荷装置へ分配しながら供給し、各負荷装置で利用された蒸気に由来の復水を各負荷装置から延びる復水経路を通じて回収してボイラ給水として再利用する蒸気ボイラ装置において、復水経路の腐食を抑制するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気ボイラへ給水タンクからボイラ給水を供給して加熱し、それにより発生する蒸気を蒸気供給経路に連絡する分配装置で分配しながら複数の負荷装置へ供給して利用するとともに、各負荷装置において利用された蒸気が凝縮して得られる復水を各負荷装置から延びる復水経路を通じて給水タンクへ回収してボイラ給水として再利用する蒸気ボイラ装置が知られている(特許文献1)。このような蒸気ボイラ装置は、給水タンクへ回収する復水のために、ボイラ給水として用いる補給水量を削減することができ、また、復水が高温の場合は蒸気ボイラでのボイラ給水の加熱負担が軽減されるため、蒸気ボイラの経済的な運転が可能になる。
【0003】
ところで、上述の蒸気ボイラ装置において、各負荷装置からの復水を給水タンクへ回収するための復水経路は、炭素鋼などの非不動態化金属を用いて形成されているため、ボイラ給水中に含まれる炭酸水素塩および炭酸塩の分解により発生する炭酸ガスの影響を受け、腐食が生じやすい。この腐食は、復水の円滑な回収を妨げる孔空きを復水経路に引き起こす場合があり、また、ボイラ給水において不純物成分となる鉄イオンその他の金属イオンを復水中に溶出させる可能性がある。
【0004】
そこで、特許文献1における蒸気ボイラ装置の運転では、蒸気供給経路を通過する蒸気に対して復水経路の腐食原因となる炭酸ガスを中和するための中和剤を供給し、復水経路における腐食の進行を抑制している。ここで、中和剤の供給量は、蒸気ボイラにおいて発生する蒸気量に応じて制御されている。
【0005】
ところで、炭酸ガスを中和するための中和剤として、通常、水溶性で揮発性のアミン化合物が用いられる。このアミン化合物は、上述の蒸気供給経路へ供給すると揮発し、分配装置において蒸気とともに分配されて各負荷装置へ供給される蒸気中の炭酸ガスを中和する。
【0006】
ところが、複数の負荷装置のそれぞれは、設置環境が異なる。例えば、分配装置の近傍に設置された負荷装置もあれば、分配装置から遠く離れた場所に設置された負荷装置もある。この場合、分配装置の近傍に設置された負荷装置へ供給される蒸気には十分な量のアミン化合物が供給されるが、分配装置から離れた負荷装置へ供給される蒸気には十分な量のアミン化合物が供給されない可能性がある。この結果、分配装置の近傍の負荷装置からの復水配管は腐食が効果的に抑制され得るが、分配装置から離れた負荷装置からの復水配管は腐食が抑制されにくいという不具合が生じる。
【0007】
【特許文献1】特開2002−327904公報、特許請求の範囲および段落0019
【0008】
本発明の目的は、蒸気ボイラで発生した蒸気を複数の負荷装置へ分配しながら供給し、各負荷装置で利用された蒸気に由来の復水を各負荷装置から延びる復水経路を通じて回収してボイラ給水として再利用する蒸気ボイラ装置において、復水経路全体の腐食を効果的に抑制することにある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、補給水をボイラ給水として給水タンクに貯留し、給水タンクから蒸気ボイラへ給水経路を通じてボイラ給水を供給して加熱することにより発生する蒸気を蒸気供給経路に連絡する分配装置で分配しながら複数の負荷装置へ供給して利用するとともに、複数の負荷装置において利用された蒸気が凝縮して得られる復水を複数の負荷装置のそれぞれから延びる復水経路を通じて給水タンクへ回収して再利用する蒸気ボイラ装置において、復水経路の腐食を抑制するための方法である。この腐食抑制方法は、給水経路および蒸気供給経路のうちの少なくとも一つに対し、炭酸ガスを中和可能なアミン化合物を連続的に供給する工程Aと、複数の負荷装置のそれぞれからの復水のpH値を個別に測定する工程Bとを含んでいる。ここでは、工程Bにおいて測定される個別のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう、工程Aにおいてアミン化合物の供給量を制御する。
【0010】
この腐食抑制方法において、工程Aにおいて供給されるアミン化合物は、蒸気ボイラにおいて加熱されるボイラ給水中に含まれる炭酸水素塩および炭酸塩の分解により発生する炭酸ガスが復水に溶存した場合に当該炭酸ガスを中和する。これにより、復水経路は炭酸ガスの影響による腐食が抑制される。また、復水のpH値は、炭酸ガスの中和に関与しない過剰のアミン化合物の作用によりアルカリ性領域になり得る。この工程Aでのアミン化合物の供給量は、工程Bにおいて測定される、各負荷装置のそれぞれからの復水のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう制御されるため、復水経路の全体は、炭酸ガスを中和するために必要な量以上のアミン化合物が供給されることになる。したがって、この腐食抑制方法によれば、復水経路の全体について、炭酸ガスの影響による腐食を効果的に抑制することができる。
【0011】
この腐食抑制方法は、例えば、複数の負荷装置のそれぞれからの復水について、アミン化合物が検出されるか否かを個別に確認する工程Cをさらに含み、工程Bにおいて測定される個別のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう、かつ、工程Cにおいて複数の負荷装置のそれぞれからの復水のいずれにおいてもアミン化合物が検出されるよう、工程Aにおいてアミン化合物の供給量を制御することもできる。
【0012】
この場合、工程Aでのアミン化合物の供給量は、工程Bにおいて測定される、各負荷装置のそれぞれからの復水のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう、かつ、工程Cにおいて各負荷装置のそれぞれからの復水のいずれにおいてもアミン化合物が検出されるよう制御されるため、復水経路の全体は、炭酸ガスを中和するために必要なアミン化合物がより確実に到達するようになる。したがって、この腐食抑制方法によれば、復水経路の全体について、炭酸ガスの影響による腐食をより効果的に抑制することができる。
【0013】
他の観点に係る本発明は、同じく、補給水をボイラ給水として給水タンクに貯留し、給水タンクから蒸気ボイラへ給水経路を通じてボイラ給水を供給して加熱することにより発生する蒸気を蒸気供給経路に連絡する分配装置で分配しながら複数の負荷装置へ供給して利用するとともに、複数の負荷装置において利用された蒸気が凝縮して得られる復水を複数の負荷装置のそれぞれから延びる復水経路を通じて給水タンクへ回収して再利用する蒸気ボイラ装置において、復水経路の腐食を抑制するための方法である。この腐食抑制方法は、給水経路および蒸気供給経路のうちの少なくとも一つに対し、炭酸ガスを中和可能なアミン化合物を連続的に供給する工程Aと、複数の負荷装置のそれぞれからの復水のpH値を個別に測定する工程Bとを含んでいる。ここでは、工程Bにおいて測定される個別のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう、工程Aにおいて供給するアミン化合物の種類を選択する。
【0014】
この腐食抑制方法において、工程Aにおいて供給されるアミン化合物は、蒸気ボイラにおいて加熱されるボイラ給水中に含まれる炭酸水素塩および炭酸塩の分解により発生する炭酸ガスが復水に溶存した場合に当該炭酸ガスを中和する。これにより、復水経路は炭酸ガスの影響による腐食が抑制される。また、復水のpH値は、炭酸ガスの中和に関与しない過剰のアミン化合物の作用によりアルカリ性領域になり得る。この工程Aで供給されるアミン化合物は、工程Bにおいて測定される、各負荷装置のそれぞれからの復水のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう種類が選択されるため、復水経路の全体は、炭酸ガスを中和するために必要な量以上のアミン化合物が供給されることになる。したがって、この腐食抑制方法によれば、復水経路の全体について、炭酸ガスの影響による腐食を効果的に抑制することができる。
【0015】
この腐食抑制方法は、例えば、複数の負荷装置のそれぞれからの復水について、アミン化合物が検出されるか否かを個別に確認する工程Cをさらに含み、工程Bにおいて測定される個別のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう、かつ、工程Cにおいて複数の負荷装置のそれぞれからの復水のいずれにおいてもアミン化合物が検出されるよう、工程Aにおいて供給するアミン化合物の種類を選択することもできる。
【0016】
この場合、工程Aで供給されるアミン化合物の種類は、工程Bにおいて測定される、各負荷装置のそれぞれからの復水のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう、かつ、工程Cにおいて各負荷装置のそれぞれからの復水のいずれにおいてもアミン化合物が検出されるよう選択されるため、復水経路の全体は、炭酸ガスを中和するために必要なアミン化合物がより確実に到達するようになる。したがって、この腐食抑制方法によれば、復水経路の全体について、炭酸ガスの影響による腐食をより効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る蒸気ボイラ装置における復水経路の腐食抑制方法は、複数の負荷装置のそれぞれからの復水のpH値を個別に測定し、この結果に基づいて、炭酸ガスを中和可能なアミン化合物の供給量を制御するか、或いは、アミン化合物の種類を選択しているので、復水経路の全体について、炭酸ガスの影響による腐食を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
実施の形態1
図1を参照して、本発明の実施の一形態に係る腐食抑制方法を実施可能な蒸気ボイラ装置を説明する。図において、蒸気ボイラ装置1は、給水装置20、蒸気ボイラ30、負荷装置群40、蒸気供給装置50、復水経路60、薬剤注入装置70および制御装置80を主に備えている。
【0019】
給水装置20は、蒸気ボイラ30へボイラ給水を供給するためのものであり、補給水の注水路21、注水路21からの補給水を貯留するための給水タンク22および給水タンク22に貯留されたボイラ給水を蒸気ボイラ30へ供給するための給水経路23を主に備えている。注水路21は、水道水、工業用水または地下水などの原水を補給水として供給するためのものであり、通常、原水に含まれる硬度分、すなわちカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンをナトリウムイオンに変換して原水を軟化水にするための軟水化装置(図示せず)と、軟水化された原水に含まれる溶存酸素を除去するための脱酸素装置(図示せず)とを備えている。給水経路23は、給水タンク22内に貯留されたボイラ給水を蒸気ボイラ30へ向けて送り出すための給水ポンプ24を有している。
【0020】
蒸気ボイラ30は、給水装置20から供給されるボイラ給水を加熱して蒸気を発生するためのものであり、例えば、貫流ボイラである。
【0021】
負荷装置群40は、熱交換器、蒸気釜、リボイラ若しくはオートクレーブ等の蒸気使用設備である3台の負荷装置40a,40b,40cからなる。負荷装置40a,40b,40cは、全てが同種のものであってもよいし、種類の異なるものであってもよい。
【0022】
蒸気供給装置50は、蒸気ボイラ30で発生した蒸気を負荷装置群40へ供給するためのものであり、蒸気ボイラ30から延びる蒸気供給経路51、この蒸気供給経路51に連絡している分配装置52および分配装置52から延びる三本の蒸気供給分岐管53a,53b,53cを主に備えている。分配装置52は、蒸気供給経路51からの蒸気を蓄え、この蒸気を三本の蒸気供給分岐管53a,53b,53cへ分配するためのものである。また、三本の蒸気供給分岐管53a,53b,53cは、それぞれ、負荷装置40a,40b,40cへ個別に連絡している。
【0023】
復水経路60は、負荷装置40a,40b,40cにおいて利用された蒸気が凝縮して得られる凝縮水(復水)を給水タンク22へ回収するためのものであり、負荷装置40a,40b,40cのそれぞれから延びる支管61a,61b,61cと、支管61a,61b,61cが合流して一体化された本管62とを主に備えている。各支管61a,61b,61cは、それぞれ、蒸気と復水とを分離するためのスチームトラップ63a,63b,63cと、スチームトラップ63a,63b,63cで分離された復水のpH値を測定するためのpHセンサー64a,64b,64cとを備えている。本管62は、給水タンク22と連絡している。
【0024】
薬剤注入装置70は、蒸気ボイラ30からの蒸気中へ薬剤を供給するためのものであり、薬剤を貯留するための薬剤タンク71と、薬剤タンク71から蒸気供給経路51へ延びる供給路72と、供給路72に設けられた供給ポンプ73とを主に有している。供給ポンプ73は、薬剤タンク71に貯留された薬剤を供給路72を通じて蒸気供給経路51へ送り出すものであり、流量制御が可能なものである。
【0025】
ここで用いられる薬剤は、後述する炭酸ガスの影響による復水経路60の腐食を抑制するための復水処理剤(腐食抑制剤)であり、炭酸ガスを中和可能なアミン化合物、例えば、モルホリン、シクロヘキシルアミン、ピペリジン、メトキシプロピルアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、ジエタノールアミンおよびアミノプロパノールやアミノエタノール等のアルカノールアミンなどの揮発性のアミン化合物、特に、水溶性のアミン化合物である。復水処理剤は、これらのアミン化合物の二種以上を適宜混合したものであってもよい。
【0026】
制御装置80は、pHセンサー64a,64b,64cからの情報に基づいて薬剤注入装置70の供給ポンプ73を制御し、蒸気供給経路51への薬剤の供給量を制御するためのものである。
【0027】
このような蒸気ボイラ装置1において、蒸気供給装置50の各部および復水経路60の各配管は、炭酸ガスの影響により腐食が進行する非不動態化金属を用いて形成されている。非不動態化金属は、中性水溶液中において自然には不動態化しない金属をいい、通常はステンレス鋼、チタン、アルミニウム、クロム、ニッケルおよびジルコニウム等を除く金属である。具体的には、炭素鋼、鋳鉄、銅および銅合金等である。なお、炭素鋼は、中性水溶液中においても、高濃度のクロム酸イオンの存在下では不動態化する場合があるが、この不動態化はクロム酸イオンの影響によるものであって中性水溶液中での自然な不動態化とは言い難い。したがって、炭素鋼は、ここでの非不動態化金属の範疇に属する。また、銅および銅合金は、電気化学列(emf series)が貴な位置にあるため、通常は水分の影響による腐食が生じ難い金属と考えられているが、中性水溶液中において自然に不動態化するものではないので、非不動態化金属の範疇に属する。
【0028】
次に、上述の蒸気ボイラ装置1の動作について説明する。
蒸気ボイラ装置1を運転する場合は、注水路21から給水タンク22へ補給水を供給し、この補給水をボイラ給水として給水タンク22に貯留する。ここで貯留されるボイラ給水は、脱酸素処理された軟化水である。そして、給水ポンプ23を作動させ、給水タンク22に貯留されたボイラ給水を給水経路23を通じて蒸気ボイラ30へ供給する。蒸気ボイラ30は、供給されたボイラ給水を貯留して加熱し、蒸気を発生する。発生した蒸気は、蒸気供給経路51を通じて分配装置52へ供給され、分配装置52において三本の蒸気供給分岐管53a,53b,53cのそれぞれへ分配される。分配された蒸気は、蒸気供給分岐管53a,53b,53cのそれぞれが個別に連絡する負荷装置40a,40b,40cへ供給されて利用される。
【0029】
負荷装置40a,40b,40cにおいて利用された蒸気は、それぞれ潜熱を失って一部が凝縮水に変わり、スチームトラップ63a,63b,63cにおいて蒸気と水とが分離されて高温の復水になる。この復水は、支管61a,61b,61cを流れて本管62で合流し、本管62をさらに流れて給水タンク22内に回収される。給水タンク22内に回収された復水は、既に貯留されているボイラ給水と混合され、ボイラ給水として再利用される。この際、給水タンク22に貯留されたボイラ給水は、高温の復水が混合されることにより加熱されるので、蒸気ボイラ30での加熱負担が軽減される。したがって、蒸気ボイラ装置1は、蒸気ボイラ30を稼動するための燃料コストを抑制することができ、経済的に運転することができる。
【0030】
上述のような蒸気ボイラ装置1の運転中において、蒸気ボイラ30では、ボイラ給水に含まれる炭酸水素塩および炭酸塩が加熱時に分解されて継続的に炭酸ガスが発生する。この炭酸ガスは、蒸気とともに蒸気供給装置50および負荷装置40a,40b,40cを経由して復水経路60へ排出される。このため、復水経路60は、この炭酸ガスの影響を受けて腐食が発生しやすい。
【0031】
そこで、蒸気ボイラ装置1の運転中は、蒸気供給経路51へ薬剤注入装置70から連続的に所定量Xの復水処理剤を供給する。所定量Xは、例えば、単位時間当りの供給量である。蒸気供給経路51へ供給された復水処理剤は、蒸気供給経路51内において揮発し、蒸気中に混入する。蒸気中に混入した復水処理剤は、分配装置52において三本の蒸気供給分岐管53a,53b,53cへ分配される。このようにして三本の蒸気供給分岐管53a,53b,53cへ分配された復水処理剤は、負荷装置40a,40b,40cからそれぞれ延びる支管61a,61b,61cにおいて生成した復水中の炭酸ガスを中和し、支管61a,61b,61cおよび本管62において炭酸ガスの影響による腐食の進行を抑制する。
【0032】
この実施の形態では、支管61a,61b,61cにおいてそれぞれ生成した復水のpH値を常時または定期的にpHセンサー64a,64b,64cにより個別に測定する。そして、支管61a,61b,61cのそれぞれにおいて生成した復水のpH値がいずれもアルカリ性領域、すなわち、7を超えるpH値になるよう、薬剤注入装置70から蒸気供給経路51へ供給する復水処理剤の供給量を制御する。例えば、支管61a,61b,61cのいずれかにおいて生成した復水のpH値がアルカリ性領域にない場合(すなわち、pHが7以下の場合)、制御装置80により供給ポンプ73を制御し、所定量Xよりも多い量で薬剤注入装置70から蒸気供給経路51へ復水処理剤を供給する。これにより、支管61a,61b,61cの全てに対して炭酸ガスを中和するのに十分な量の復水処理剤が供給され得ることになるため、復水経路60は、支管61a,61b,61cおよび本管62を含む全体の腐食が効果的に抑制される。
【0033】
一方、支管61a,61b,61cのそれぞれにおいて生成した復水のpH値の全てが十分なアルカリ性領域にあるときは、制御装置80により供給ポンプ73を制御し、所定量Xよりも少ない量で薬剤注入装置70から蒸気供給経路51へ復水処理剤を供給することもできる。この場合、復水処理剤の過剰供給を回避することができるため、蒸気ボイラ装置1を経済的に運転することができる。
【0034】
実施の形態1の変形例
図2を参照して、実施の形態1に係る蒸気ボイラ装置1の変形例を説明する。図2は、図1の負荷装置40a,40b,40cから復水経路60にかけての部分図である。図において、復水経路60の支管61a,61b,61cは、ぞれぞれ、末端が開放された分岐経路65a,65b,65cを個別に有している。各分岐経路65a,65b,65cは、それぞれ開閉弁(図示せず)を有している。
【0035】
この変形例の蒸気ボイラ装置1における復水経路60の腐食抑制方法では、開閉弁の操作により支管61a,61b,61cを流れる各復水の一部を分岐経路65a,65b,65cを通じて試料として採取し、それにアミン化合物が含まれるか否かを確認する。そして、pHセンサー64a,64b,64cにより測定される各復水のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう、かつ、各復水の試料のいずれにおいてもアミン化合物が検出されるよう、制御装置80において、薬剤注入装置70からのアミン化合物の供給量を制御する。より好ましくは、支管61a,61b,61cを流れる各復水の一部を試料として採取してそれに含まれるアミン化合物の濃度を測定し、pHセンサー64a,64b,64cにより測定される各復水のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう、かつ、各復水の試料のいずれにおいてもアミン化合物の濃度が所定値以上になるよう、制御装置80において、薬剤注入装置70からのアミン化合物の供給量を制御する。
【0036】
この場合、薬剤注入装置70からのアミン化合物の供給量は、負荷装置40a,40b,40cのそれぞれからの復水においてアミン化合物が検出されるよう制御されるため、復水経路60の全体は炭酸ガスを中和するために必要なアミン化合物がより確実に到達するようになり、炭酸ガスの影響による腐食がより効果的に抑制され得る。
【0037】
復水試料においてアミン化合物が含まれるか否か、或いは、復水試料におけるアミン化合物の濃度は、各種の方法により確認することができる。例えば、高速液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーによる一般的な分析方法による方法の他、化学的手法により確認することもできる。
【0038】
アミン化合物が復水試料に含まれるか否かを化学的手法により確認する方法の一例では、先ず、分岐経路65a,65b,65cのそれぞれから採取した所定量の復水試料をガラス製や化学的に安定な樹脂製などの容器に採る。容器は、後述する変色の判定をするために、無色透明なものを用いるのが好ましい。
【0039】
次に、容器内の復水試料に対し、下記の一般式(1)で表わされる4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンと有機溶媒とを加える。
【0040】
【化1】
一般式(1)において、Xは、塩素やフッ素などのハロゲン原子を示す。
【0041】
ここで用いられる有機溶媒は、アミン化合物と4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンとの反応により生成する発色物質を溶解可能で復水試料に不溶なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、クロロメタン、メチレンクロライドおよびクロロホルムのような塩素系有機溶媒、エーテル類並びに酢酸エチルなどである。このうち、生成する発色物質を選択的に溶解可能なことから、塩素系有機溶媒を用いるのが好ましい。
【0042】
4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンの添加量は、特に限定されるものではないが、通常、復水試料中に含まれると予想されるアミン化合物量の少なくとも1.0倍当量に設定するのが好ましく、1.2倍当量以上に設定するのがより好ましい。この添加量が1.0倍当量未満のときは、復水試料がアミン化合物を微量に含む場合において、アミン化合物と4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンとの反応が進行しにくくなり、アミン化合物を正確に検出するのが困難になる可能性がある。また、アミン化合物の定量をする必要がある場合は、アミン化合物の全てが4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンと反応せず、定量結果の信頼性を損なう可能性がある。
【0043】
また、有機溶媒の添加量は、特に限定されるものではないが、復水試料量と有機溶媒量との比率の制御で上述の発色物質による有機溶媒の発色強度をコントロールできることから、復水試料量に対してアミン化合物の判定下限濃度が判定できる比率に設定するのが望ましい。例えば、アミン化合物がモルホリンであり、その1ミリグラム/リットルを判定下限濃度とする場合、復水試料量(A)と有機溶媒(B)との比率は重量比(A:B)で1:2程度に設定するのが好ましい。
【0044】
この工程においては、必要に応じ、復水試料のpHを7.5〜8.5の範囲に調整するためのpH調整剤を復水試料に対して併せて添加するのが好ましい。pH調整剤としては、例えば、ホウ酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、炭酸塩緩衝液、リン酸緩衝液またはクエン酸緩衝液などを用いることができる。
【0045】
次に、4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザン、有機溶媒および必要に応じてpH調整剤が添加された復水試料を所定時間攪拌する。攪拌は、20〜25℃程度の室温で実行することができる。この攪拌操作により、復水試料に含まれるアミン化合物と4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンとが反応し、発色物質が生成する。攪拌操作は、容器を振とうすることによって実行することもできるし、マグネチックスターラーなどの攪拌装置を用いて実行することもできる。攪拌時間は、アミン化合物と4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンとの反応を十分に進行させるのに十分な時間、例えば、1〜5分に設定するのが好ましい。
【0046】
次に、攪拌後の容器を静置すると、容器内は、復水試料による水相と有機溶媒相とに分離する。ここで、上述の反応により発色物質が生成した場合、この発色物質は、復水試料に不溶で有機溶媒に溶解するため、有機溶媒相を変色させる。そこで、有機溶媒相が発色物質により変色したか否かを判定する。因みに、有機溶媒相は、発色物質により、460〜500nmの波長領域で吸光する黄〜橙色の色彩へ変色する。
【0047】
ここで、有機溶媒相が変色しなかった場合は、4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンの反応相手となるアミン化合物が復水試料に含まれていないため、発色物質が生成しなかったことになる。したがって、復水試料は、アミン化合物を含まないものと判定することができる。一方、有機溶媒相が変色した場合は、復水試料に含まれるアミン化合物が4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンと反応して発色物質が生成したことになる。したがって、復水試料は、アミン化合物を含むものと判定することができる。
【0048】
有機溶媒相の変色の有無は、視覚的に判定することもできるし、吸光光度法により判定することもできる。視覚的に判定するときは、発色物質により着色される有機溶媒相の色見本を作成し、有機溶媒相とこの色見本とを対比することで判定することができる。ここで、有機溶媒相は発色物質の濃度が高まるに従って濃色に変色するため、変色の度合いと発色物質濃度とを関連させた段階的な色見本を作成しておくと、アミン化合物の濃度を推測することができる。
【0049】
一方、吸光光度法により有機溶媒相の変色を判定するときは、予め、有機溶媒のみにおける460〜500nmの吸光度(基準吸光度と云う)を測定しておき、有機溶媒相における同波長範囲の吸収ピークの吸光度(測定吸光度と云う)が基準吸光度から変化したか否かを判定する。そして、測定吸光度が基準吸光度よりも増加しているときは有機溶媒相が変色していることになり、この場合は復水試料にアミン化合物が含まれているものと判定することができる。また、復水試料におけるアミン化合物濃度と測定吸光度との関係を予め調べて検量線などを作成しておくと、復水試料におけるアミン化合物濃度を測定吸光度から求めることもできる。
【0050】
上述の化学的手法は、次の第一容器および第二容器の二つの容器を備えたキットを用いることで、より簡単に実施することができる。
【0051】
第一容器は、ガラス製などの無色で透明な容器であり、所定量の4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンを封入したものである。一方、第二容器は、上述の有機溶媒に対して安定な材料からなるものであり、所定量の有機溶媒を封入したものである。第二容器は、必要に応じて、上述のpH調整剤の所定量をさらに封入していてもよい。第一容器は、開封したときに所定量の復水試料および第二容器の内容物の全量を加えることができるよう、第二容器よりも大型に形成されている。
【0052】
このキットを用いて復水試料に含まれるアミン化合物を検出するときは、第一容器を開封し、その中に所定量の復水試料を加える。また、第二容器を開封し、その内容物を第一容器内へ加える。そして、第一容器の内容物を所定時間攪拌した後に静置し、第一容器内において水相と分離した有機溶媒相について、既述の方法で変色の有無を判定する。
【0053】
このようなキットを用いれば、復水試料の採取現場において、迅速に、しかも簡単に、復水試料にアミン化合物が含まれるか否かを確認することができる。
【0054】
実施の形態2
本発明の他の実施の形態に係る腐食抑制方法を実施可能な蒸気ボイラ装置10を図3に示す。図3において、蒸気ボイラ装置10は、薬剤注入装置70および制御装置80のみが実施の形態1に係る蒸気ボイラ装置1と異なっている。したがって、図3において、図1と同じ部位には同じ符号を付している。
【0055】
この蒸気ボイラ装置10において、薬剤注入装置70は、二台の薬剤注入装置、すなわち、第一薬剤注入装置70aと第二薬剤注入装置70bとを備えている。第一薬剤注入装置70aおよび第二薬剤注入装置70bは、いずれも、蒸気ボイラ30からの蒸気中へ薬剤を供給するためのものであり、薬剤を貯留するための薬剤タンク71と、薬剤タンク71から蒸気供給経路51へ延びる供給路72と、供給路72に設けられた供給ポンプ73とを主に有している。供給ポンプ73は、薬剤タンク71に貯留された薬剤を供給路72を通じて蒸気供給経路51へ送り出すものであり、流量制御が可能なものである。
【0056】
ここで、第一薬剤注入装置70aの薬剤タンク71と第二薬剤注入装置70bの薬剤タンク71とには、互いに分配比が異なるアミン化合物が貯留されている。より具体的には、第二薬剤注入装置70bの薬剤タンク71には、第一薬剤注入装置70aの薬剤タンク71に貯留されているアミン化合物よりも分配比が大きなアミン化合物が貯留されている。
【0057】
ここで、分配比は、気相(すなわち蒸気)中のアミン濃度(A)と液相(すなわち復水)中のアミン濃度(B)との比(A/B)を意味する。アミン化合物は、分配比が大きいもの程気相へ移行しやすく、液相に溶解しにくい傾向がある。アミン化合物の分配比は、蒸気の圧力により変動するが、同一の圧力条件の下においては、アミン化合物の種類による分配比の相対的な大小関係は変動しない。復水処理剤として利用される主なアミン化合物の分配比は、例えば表1の通りである。表1に示した分配比は、蒸気の圧力が1.03MPaのときのものである。
【0058】
【表1】
【0059】
この実施の形態では、例として、第一薬剤注入装置70aの薬剤タンク71にモルホリンを貯留し、第二薬剤注入装置70bの薬剤タンク71にシクロヘキシルアミンを貯留しているものとする。
【0060】
制御装置80は、pHセンサー64a,64b,64cからの情報に基づいて、第一薬剤注入装置70aおよび第二薬剤注入装置70bのいずれか一方または両方を選択して作動させるためのものである。より具体的には、pHセンサー64a,64b,64cからの情報に基づいて、第一薬剤注入装置70aの供給ポンプ73および第二薬剤注入装置70bの供給ポンプ73のいずれか一方を選択して作動させ、他方を停止させるためのものである。
【0061】
蒸気ボイラ装置10は、第一薬剤注入装置70aおよび第二薬剤注入装置70bのいずれかから復水処理剤であるアミン化合物を供給しながら、実施の形態1の場合と同様に運転され、また、実施の形態1と同様に、支管61a,61b,61cにおいてそれぞれ生成した復水のpH値を常時または定期的にpHセンサー64a,64b,64cにより個別に測定する。
【0062】
そして、この実施の形態では、支管61a,61b,61cのそれぞれにおいて生成した復水のpH値がいずれもアルカリ性領域、すなわち、7を超えるpH値になるよう、薬剤注入装置70から蒸気供給経路51へ供給する復水処理剤の種類を選択する。例えば、第一薬剤注入装置70aからモルホリンを供給しながら運転している場合において、支管61a,61b,61cのいずれかにおいて生成した復水のpH値がアルカリ性領域にない場合(すなわち、pHが7以下の場合)、制御装置80により第一薬剤注入装置70aの供給ポンプ73を停止し、第二薬剤注入装置70bの供給ポンプ73を作動させる。これにより、蒸気供給経路51へは、モルホリンよりも分配比が大きなシクロヘキシルアミンが復水処理剤として供給される。これにより、支管61a,61b,61cの全てに炭酸ガスを中和するのに十分な量の復水処理剤が供給され易くなるため、復水経路60は、支管61a,61b,61cおよび本管62を含む全体の腐食が効果的に抑制される。
【0063】
一方、第二薬剤注入装置70bからシクロヘキシルアミンを供給しながら運転している場合において、支管61a,61b,61cにおいて生成した全ての復水のpH値が十分なアルカリ性領域にあるときは、制御装置80により第二薬剤注入装置70bの供給ポンプ73を停止し、かつ、第一薬剤注入装置70aの供給ポンプ73を作動させて、蒸気供給経路51へシクロヘキシルアミンよりも分配比が小さなモルホリンを復水処理剤として供給することもできる。
【0064】
因みに、この実施の形態では、第一薬剤注入装置70aおよび第二薬剤注入装置70bの両方から、蒸気供給経路51に対して同時にアミン化合物を供給することもできる。この場合、供給可能なアミン化合物の選択肢は、モルホリン、シクロヘキシルアミンおよびこれらの混合物の三種類になる。
【0065】
実施の形態2の変形例
(1)実施の形態2に係る蒸気ボイラ装置10では、薬剤注入装置70において二台の薬剤注入装置を用いているが、薬剤注入装置の台数は3台以上であってもよい。この場合、蒸気供給経路51へ供給するアミン化合物の種類の選択肢が広がるため、アミン化合物の種類をより適切に選択することができるようになり、復水経路60全体の腐食をより効果的に抑制することができる。
【0066】
(2)実施の形態2に係る蒸気ボイラ装置10において、復水経路60の支管61a,61b,61cは、図2に示す実施の形態1の変形例と同様に変更して復水試料を採取するための分岐経路65a,65b,65cを設けることができる。
【0067】
この変形例の蒸気ボイラ装置10における復水経路60の腐食抑制方法では、支管61a,61b,61cを流れる各復水の一部を分岐経路65a,65b,65cを通じて試料として採取し、それにアミン化合物が含まれるか否かを確認する。そして、pHセンサー64a,64b,64cにより測定される各復水のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう、かつ、各復水の試料のいずれにおいてもアミン化合物が検出されるよう、制御装置80において、薬剤注入装置70から供給するアミン化合物を選択する。より好ましくは、支管61a,61b,61cを流れる各復水の一部を試料として採取してそれに含まれるアミン化合物の濃度を測定し、pHセンサー64a,64b,64cにより測定される各復水のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう、かつ、各復水の試料のいずれにおいてもアミン化合物の濃度が所定値以上になるよう、制御装置80において、薬剤注入装置70から供給するアミン化合物を選択する。
【0068】
この場合、薬剤注入装置70から供給されるアミン化合物は、負荷装置40a,40b,40cのそれぞれからの復水においてアミン化合物が検出されるよう選択されるため、復水経路60の全体は炭酸ガスを中和するために必要なアミン化合物がより確実に到達するようになり、炭酸ガスの影響による腐食がより効果的に抑制され得る。
【0069】
復水試料においてアミン化合物が含まれるか否か、或いは、復水試料におけるアミン化合物の濃度は、実施の形態1の変形例と同様の方法により確認することができる。
【0070】
他の変形例
(1)実施の形態1,2においては、負荷装置を3台設けた蒸気ボイラ装置1,10における復水経路60の腐食抑制方法を説明したが、負荷装置が2台若しくは4台以上の蒸気ボイラ装置においても本発明を同様に実施することができる。
【0071】
(2)実施の形態1の蒸気ボイラ装置1において利用可能な他の薬剤注入装置の一例を図4に示す。図において、薬剤注入装置100は、親器90と子器95とを備えている。親器90は、薬剤(すなわちアミン化合物)を貯留するための第一薬剤タンク91と、第一薬剤タンク91から蒸気供給経路51へ延びる第一供給路92と、第一供給路92に設けられた第一供給ポンプ93とを主に有している。第一供給ポンプ93は、第一薬剤タンク91に貯留された薬剤を第一供給路92を通じて蒸気供給経路51へ送り出すものであり、流量制御が可能なものである。子器95は、第一薬剤タンク91に貯留される薬剤とは異なる薬剤(すなわち、別のアミン化合物)を貯留するための第二薬剤タンク96と、第二薬剤タンク96から第一供給路92へ延びる第二供給路97と、第二供給路97に設けられた第二供給ポンプ98とを主に有している。第二供給ポンプ98は、第二薬剤タンク96に貯留された薬剤を第二供給路92を通じて第一供給路92へ送り出すものであり、流量制御が可能なものである。
【0072】
薬剤注入装置100は、第二供給ポンプ98を停止した状態で第一供給ポンプ93を作動させると、第一薬剤タンク91に貯留されたアミン化合物を蒸気供給経路51へ供給することができる。一方、第一供給ポンプ93と第二供給ポンプ98とを同時に作動させると、第一薬剤タンク91から蒸気供給経路51へ供給されるアミン化合物は第二薬剤タンク96からの別のアミン化合物が混合され、この混合アミン化合物が蒸気供給経路51へ供給される。
【0073】
この薬剤注入装置100は、実施の形態2において用いることもできる。例えば、薬剤注入装置70を構成する二台の薬剤注入装置70a,70bのうち、第一薬剤注入装置70aを薬剤注入装置100に交換する。このようにすると、蒸気供給経路51に対し、五種類のアミン化合物(薬剤注入装置100の第一薬剤タンク91に貯留されたアミン化合物A、同第二薬剤タンク96に貯留されたアミン化合物B、アミン化合物A,Bの混合物C、第二薬剤注入装置70bの薬剤タンク71に貯留されたアミン化合物D並びに混合物Cとアミン化合物Dとの混合物E)のうちから選択して供給することができる。このため、蒸気供給経路51へ供給するアミン化合物の種類の選択肢がより広がり、アミン化合物をより適切に選択することができるようになるため、復水経路60全体の腐食をより効果的に抑制することができる。
【0074】
(3)上述の各実施の形態においては、蒸気供給経路51へアミン化合物を供給しているが、給水経路23を通じて蒸気ボイラ30へ流れるボイラ給水へアミン化合物を供給するように変更した場合も本発明を同様に実施することができる。
【0075】
[試験例]
4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンを用いた化学的手法によりアミン化合物が復水試料に含まれるか否かを確認する方法について、下記の確認試験をした。
【0076】
検量線Aの作成
モルホリン(和光純薬工業株式会社の和光特級[98.0+% Capillary GC])0.1gに純水を添加して、全量を1リットルにした。この溶液を純水でさらに希釈し、モルホリン濃度が3.2ミリグラム/リットル、6.5ミリグラム/リットルおよび10.1ミリグラム/リットルの三種類の標準液を調製した。
【0077】
標準液2ミリリットルに対し、pH調整剤として1Mトリス塩酸緩衝液(pH=8.0)1ミリリットル、4−フルオロ−7−ニトロベンゾフラザン(一般式(1)のXがフッ素原子のもの)の0.1重量%水溶液0.5ミリリットルおよびクロロホルム4gを混合し、5分間撹拌した。これを静置して分離したクロロホルム相を採取し、株式会社日立製作所製の分光光度計(型番:U−2010)を用いてクロロホルムをブランクとして465nmの吸光度を測定した。
【0078】
各標準液の吸光度とモルホリン濃度とに基づいて作成した、モルホリン濃度測定用の検量線を図5に示す。
【0079】
検量線Bの作成
シクロヘキシルアミン(和光純薬工業株式会社の和光特級[98.0+% Capillary GC])0.1gに純水を添加して、全量を1リットルにした。この溶液を純水でさらに希釈し、シクロヘキシルアミン濃度が3.6ミリグラム/リットル、6.9ミリグラム/リットルおよび11.5ミリグラム/リットルの三種類の標準液を調製した。
【0080】
標準液20ミリリットルに対し、pH調整剤として1Mトリス塩酸緩衝液(pH=8.0)1ミリリットル、4−フルオロ−7−ニトロベンゾフラザン(一般式(1)のXがフッ素原子のもの)の0.1重量%水溶液1.0ミリリットルおよびクロロホルム2gを混合し、5分間撹拌した。これを静置して分離したクロロホルム相を採取し、株式会社日立製作所製の分光光度計(型番:U−2010)を用いてクロロホルムをブランクとして465nmの吸光度を測定した。
【0081】
各標準液の吸光度とシクロヘキシルアミン濃度とに基づいて作成した、シクロヘキシルアミン濃度測定用の検量線を図6に示す。
【0082】
検量線Cの作成
ピペリジン(和光純薬工業株式会社の和光特級[98.0+% Capillary GC])0.1gに純水を添加して、全量を1リットルにした。この溶液を純水でさらに希釈し、ピペリジン濃度が4.6ミリグラム/リットル、8.6ミリグラム/リットルおよび15.2ミリグラム/リットルの三種類の標準液を調製した。
【0083】
標準液2ミリリットルに対し、pH調整剤として1Mトリス塩酸緩衝液(pH=8.0)1ミリリットル、4−フルオロ−7−ニトロベンゾフラザン(一般式(1)のXがフッ素原子のもの)の0.1重量%水溶液0.5ミリリットルおよびクロロホルム4gを混合し、5分間撹拌した。これを静置して分離したクロロホルム相を採取し、株式会社日立製作所製の分光光度計(型番:U−2010)を用いてクロロホルムをブランクとして479nmの吸光度を測定した。
【0084】
各標準液の吸光度とピペリジン濃度とに基づいて作成した、ピペリジン濃度測定用の検量線を図7に示す。
【0085】
被試験水Aの調整
モルホリン0.1gに蒸留水を加えて全量を1リットルにし、モルホリン濃度を100ミリグラム/リットルに調整した。この溶液7gに蒸留水を加えて全量を100ミリリットルにし、モルホリン濃度が7ミリグラム/リットルの被試験水Aを調製した。
【0086】
被試験水Bの調整
シクロヘキシルアミン0.1gに蒸留水を加えて全量を1リットルにし、シクロヘキシルアミン濃度を100ミリグラム/リットルに調整した。この溶液7gに蒸留水を加えて全量を100ミリリットルにし、シクロヘキシルアミンが濃度7ミリグラム/リットルの被試験水Bを調製した。
【0087】
被試験水Cの調整
ピペリジン0.1gに蒸留水を加えて全量を1リットルにし、ピペリジン濃度を100ミリグラム/リットルに調整した。この溶液7gに蒸留水を加えて全量を100ミリリットルにし、ピペリジン濃度が7ミリグラム/リットルの被試験水Cを調製した。
【0088】
試験例1
被試験水A2ミリリットルに対し、pH調整剤としてトリス塩酸緩衝液1ミリリットル、4−フルオロ−7−ニトロベンゾフラザン(一般式(1)のXがフッ素原子のもの)の0.1重量%水溶液0.5ミリリットルおよびクロロホルム4gを加えた混合物を5分間攪拌した。攪拌終了後に混合物を静置したところ、混合物は水相と、黄色〜橙色に変色したクロロホルム相とに分離した。クロロホルム相を採取し、株式会社日立製作所製の分光光度計(型番:U−2010)を用いてクロロホルムをブランクとして465nmの吸光度を測定したところ、0.399であった。検量線Aに基づいてこの吸光度からモルホリン濃度を判定したところ、6.96ミリグラム/リットルであった。この結果は、被試験水Aのモルホリン濃度と略一致している。
【0089】
試験例2
被試験水B20ミリリットルに対し、pH調整剤としてトリス塩酸緩衝液1ミリリットル、4−フルオロ−7−ニトロベンゾフラザン(一般式(1)のXがフッ素原子のもの)の0.1重量%水溶液1.0ミリリットルおよびクロロホルム4gを加えた混合物を5分間攪拌した。攪拌終了後に混合物を静置したところ、混合物は水相と、黄色〜橙色に変色したクロロホルム相とに分離した。クロロホルム相を採取し、株式会社日立製作所製の分光光度計(型番:U−2010)を用いてクロロホルムをブランクとして465nmの吸光度を測定したところ、0.086であった。検量線Bに基づいてこの吸光度からシクロヘキシルアミン濃度を判定したところ、6.62ミリグラム/リットルであった。この結果は、被試験水Bのシクロヘキシルアミン濃度と略一致している。
【0090】
試験例3
被試験水Aに替えて被試験水Cを用いた点を除いて試験例1と同様に操作したところ、混合物は水相と黄〜橙色へ変色したクロロホルム相とに分離した。このクロロホルム相を採取して試験例1と同様にして479nmの吸光度を測定したところ、0.221であった。検量線Cに基づいてこの吸光度からピペリジン濃度を判定したところ、7.04ミリリットル/リットルであった。この結果は、被試験水Cのピペリジン濃度と略一致している。
【0091】
試験例4
被試験水Aに替えて蒸留水を用いた点を除いて試験例1と同様に操作したところ、混合物は水相とクロロホルム相とに分離した。但し、クロロホルム相は無色のままであり、変色しなかった。このクロロホルム相を採取して試験例1と同様にして465nmおよび479nmの吸光度を測定したところ、いずれも0.000であった。検量線A、検量線Bおよび検量線Cに基づいてこの吸光度からモルホリン濃度、シクロヘキシルアミン濃度およびピペリジン濃度をそれぞれ判定したところ、いずれも0ミリリットル/リットルであった。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施の形態1に係る腐食抑制方法を実施可能な蒸気ボイラ装置の概略図。
【図2】前記蒸気ボイラ装置の変形例の部分図。
【図3】本発明の実施の形態2に係る腐食抑制方法を実施可能な蒸気ボイラ装置の概略図。
【図4】前記各蒸気ボイラ装置において利用可能な薬剤注入装置の変形例を示す図。
【図5】試験例で作成した検量線Aを示すグラフ。
【図6】試験例で作成した検量線Bを示すグラフ。
【図7】試験例で作成した検量線Cを示すグラフ。
【符号の説明】
【0093】
1、10 蒸気ボイラ装置
22 給水タンク
23 給水経路
30 蒸気ボイラ
40 負荷装置群
40a,40b,40c 負荷装置
51 蒸気供給経路
52 分配装置
60 復水経路
61a,61b,61c 支管
62 本管
64a,64b,64c pHセンサー
70,100 薬剤注入装置
70a 第一薬剤注入装置
70b 第二薬剤注入装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
補給水をボイラ給水として給水タンクに貯留し、前記給水タンクから蒸気ボイラへ給水経路を通じて前記ボイラ給水を供給して加熱することにより発生する蒸気を蒸気供給経路に連絡する分配装置で分配しながら複数の負荷装置へ供給して利用するとともに、複数の前記負荷装置において利用された前記蒸気が凝縮して得られる復水を複数の前記負荷装置のそれぞれから延びる復水経路を通じて前記給水タンクへ回収して再利用する蒸気ボイラ装置において、前記復水経路の腐食を抑制するための方法であって、
前記給水経路および前記蒸気供給経路のうちの少なくとも一つに対し、炭酸ガスを中和可能なアミン化合物を連続的に供給する工程Aと、
複数の前記負荷装置のそれぞれからの復水のpH値を個別に測定する工程Bとを含み、
工程Bにおいて測定される個別のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう、工程Aにおいて前記アミン化合物の供給量を制御する、
蒸気ボイラ装置における復水経路の腐食抑制方法。
【請求項2】
複数の前記負荷装置のそれぞれからの復水について、前記アミン化合物が検出されるか否かを個別に確認する工程Cをさらに含み、
工程Bにおいて測定される個別のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう、かつ、工程Cにおいて複数の前記負荷装置のそれぞれからの復水のいずれにおいても前記アミン化合物が検出されるよう、工程Aにおいて前記アミン化合物の供給量を制御する、
請求項1に記載の蒸気ボイラ装置における復水経路の腐食抑制方法。
【請求項3】
補給水をボイラ給水として給水タンクに貯留し、前記給水タンクから蒸気ボイラへ給水経路を通じて前記ボイラ給水を供給して加熱することにより発生する蒸気を蒸気供給経路に連絡する分配装置で分配しながら複数の負荷装置へ供給して利用するとともに、複数の前記負荷装置において利用された前記蒸気が凝縮して得られる復水を複数の前記負荷装置のそれぞれから延びる復水経路を通じて前記給水タンクへ回収して再利用する蒸気ボイラ装置において、前記復水経路の腐食を抑制するための方法であって、
前記給水経路および前記蒸気供給経路のうちの少なくとも一つに対し、炭酸ガスを中和可能なアミン化合物を連続的に供給する工程Aと、
複数の前記負荷装置のそれぞれからの復水のpH値を個別に測定する工程Bとを含み、
工程Bにおいて測定される個別のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう、工程Aにおいて供給する前記アミン化合物の種類を選択する、
蒸気ボイラ装置における復水経路の腐食抑制方法。
【請求項4】
複数の前記負荷装置のそれぞれからの復水について、前記アミン化合物が検出されるか否かを個別に確認する工程Cをさらに含み、
工程Bにおいて測定される個別のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう、かつ、工程Cにおいて複数の前記負荷装置のそれぞれからの復水のいずれにおいても前記アミン化合物が検出されるよう、工程Aにおいて供給する前記アミン化合物の種類を選択する、
請求項3に記載の蒸気ボイラ装置における復水経路の腐食抑制方法。
【請求項1】
補給水をボイラ給水として給水タンクに貯留し、前記給水タンクから蒸気ボイラへ給水経路を通じて前記ボイラ給水を供給して加熱することにより発生する蒸気を蒸気供給経路に連絡する分配装置で分配しながら複数の負荷装置へ供給して利用するとともに、複数の前記負荷装置において利用された前記蒸気が凝縮して得られる復水を複数の前記負荷装置のそれぞれから延びる復水経路を通じて前記給水タンクへ回収して再利用する蒸気ボイラ装置において、前記復水経路の腐食を抑制するための方法であって、
前記給水経路および前記蒸気供給経路のうちの少なくとも一つに対し、炭酸ガスを中和可能なアミン化合物を連続的に供給する工程Aと、
複数の前記負荷装置のそれぞれからの復水のpH値を個別に測定する工程Bとを含み、
工程Bにおいて測定される個別のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう、工程Aにおいて前記アミン化合物の供給量を制御する、
蒸気ボイラ装置における復水経路の腐食抑制方法。
【請求項2】
複数の前記負荷装置のそれぞれからの復水について、前記アミン化合物が検出されるか否かを個別に確認する工程Cをさらに含み、
工程Bにおいて測定される個別のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう、かつ、工程Cにおいて複数の前記負荷装置のそれぞれからの復水のいずれにおいても前記アミン化合物が検出されるよう、工程Aにおいて前記アミン化合物の供給量を制御する、
請求項1に記載の蒸気ボイラ装置における復水経路の腐食抑制方法。
【請求項3】
補給水をボイラ給水として給水タンクに貯留し、前記給水タンクから蒸気ボイラへ給水経路を通じて前記ボイラ給水を供給して加熱することにより発生する蒸気を蒸気供給経路に連絡する分配装置で分配しながら複数の負荷装置へ供給して利用するとともに、複数の前記負荷装置において利用された前記蒸気が凝縮して得られる復水を複数の前記負荷装置のそれぞれから延びる復水経路を通じて前記給水タンクへ回収して再利用する蒸気ボイラ装置において、前記復水経路の腐食を抑制するための方法であって、
前記給水経路および前記蒸気供給経路のうちの少なくとも一つに対し、炭酸ガスを中和可能なアミン化合物を連続的に供給する工程Aと、
複数の前記負荷装置のそれぞれからの復水のpH値を個別に測定する工程Bとを含み、
工程Bにおいて測定される個別のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう、工程Aにおいて供給する前記アミン化合物の種類を選択する、
蒸気ボイラ装置における復水経路の腐食抑制方法。
【請求項4】
複数の前記負荷装置のそれぞれからの復水について、前記アミン化合物が検出されるか否かを個別に確認する工程Cをさらに含み、
工程Bにおいて測定される個別のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう、かつ、工程Cにおいて複数の前記負荷装置のそれぞれからの復水のいずれにおいても前記アミン化合物が検出されるよう、工程Aにおいて供給する前記アミン化合物の種類を選択する、
請求項3に記載の蒸気ボイラ装置における復水経路の腐食抑制方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2008−249283(P2008−249283A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92966(P2007−92966)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
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