説明

蒸気供給システム及びその制御方法

【課題】再熱器を有するボイラから工場設備へプロセス用蒸気を供給するにあたり、当該ボイラの運転範囲の制限やプロセス用蒸気の供給量の制限を従来よりも緩和し、且つ再熱器の温度上昇を抑制する。
【解決手段】ボイラタービン発電設備1から工場設備2へプロセス用蒸気を供給する蒸気供給系統3と制御装置4を有する蒸気供給システム5は、ボイラ10の再熱蒸気系統14へ蒸気を混気する混気系統51を有し、蒸気供給系統3は、ボイラ10から発生した蒸気の一部を取り出す抽気管40と、抽気弁41を備えている。混気系統51は、再熱器24と低圧タービン27とを接続する低温再熱蒸気管50における、再熱器24入口より上流側に接続された混気管60と混気弁62を備えている。制御装置4は、再熱器24の温度が上昇した場合に、混気弁62の開度を調整して、再熱器の温度上昇が予め定められた範囲内に収まるように混気量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力と蒸気の供給を同時に行うボイラタービン発電設備から工場設備へ高圧蒸気の供給を行う蒸気供給システム及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば製鉄所などの工場設備内に設置されるボイラタービン発電設備では、ボイラで発生した蒸気を用いてタービン発電機で発電し、発電した電力を工場設備に供給すると共に、工場設備で使用するプロセス用蒸気の供給を行っている。このプロセス用蒸気としては、ボイラで発生した高温高圧の過熱蒸気である主蒸気や、タービンから抽気した低圧の抽気蒸気が、需要側である工場設備の要求に応じて供給される。
【0003】
ところで、プロセス用蒸気の供給源としてのボイラが、例えば図7に示すような、高圧タービン100で仕事をした後の低圧蒸気を加熱する再熱器101を有するボイラ102である場合、当該ボイラ102の主蒸気管103から工場設備104へ供給するプロセス用蒸気として主蒸気を抽気すると、高圧タービン100へ流入する主蒸気の流量が減少するため、高圧タービン100の排気側へ排出される蒸気量も減少する。その結果、再熱器101を通過する蒸気量も減少する。その一方で、ボイラ102に投入される燃料の量は、ボイラ102から発生させる主蒸気、換言すれば過熱器105を通過する蒸気の流量や圧力に応じて決定されるため、主蒸気管103から工場設備104にプロセス用蒸気を供給しても、ボイラ102から発生する主蒸気の量そのものが変化しない場合は、ボイラ102に供給される燃料の流量にも変化は生じない。かかる場合、再熱器101を通過する蒸気量に対してボイラ102に投入される燃料の量が相対的に増加し、再熱器101の温度が上昇することとなる。
【0004】
あるいは、主蒸気管104から主蒸気を抽気する際、高圧タービン100へ流入する主蒸気の流量が減少しないように、ボイラ102に投入される給水と燃料の量を増加させることもできる。この場合も、再熱器101を通過する蒸気量が一定であるのに対してボイラ102に投入される燃料の量が相対的に増加し、再熱器101の温度が上昇することとなる。
【0005】
再熱器101の温度上昇に対しては、再熱器101の上流側に設けられた減温器106により再熱蒸気管107への注水が行われるのが通常であり、減温器106からの注水により再熱器101の温度が予め定められた範囲内に収まるように調整される。この際、減温器106には注水による冷却と蒸気による加熱といった熱負荷が繰り返し加わるため、例えば特許文献1には、注水による熱負荷を低減する再熱蒸気の温度制御方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された方法には「過注入」という問題がある。過注入とは、過剰な注水により蒸気が飽和温度を下回ってしまう現象をいう。
【0007】
図7において、ボイラ102からのプロセス用蒸気の供給量が増加すると、再熱器101を通過する蒸気量に対してボイラ102に投入される燃料の量が相対的に増加し、再熱器101の温度が上昇することから、それに伴い減温器106からの注水量も増加する。そのため、ボイラ102からプロセス用蒸気を大量に供給した場合、再熱蒸気管107を流れる蒸気の流量に対する注水の量が過剰となり、減温器106出口側であって再熱器101の入口側付近において、蒸気温度が蒸気の飽和温度を下回り、過注入が発生する。
【0008】
過注入の状態になると、再熱蒸気管107へのドレンの流入に伴う熱衝撃や、ウォータハンマといった、再熱蒸気管107や再熱器101の破損につながる現象が発生するため好ましくない。このため、通常は過注入が発生しないように、例えば、減温器106を複数台設置して段階的に蒸気温度を制御し、過注入とならないように制御装置により注水量を制限する等の対策がとられるが、減温器106を複数設けた場合、設備費用が増加すると共に、注水の制御が複雑なものとなってしまう。
【0009】
また、過注入を避けるために制御装置により注水量を制限すると、結局再熱器101の温度が上昇してしまうため、その場合、再熱器101の温度が許容値を超えないように燃料流量を制限する、換言すれば、ボイラ102の負荷を制限することとなる。そして、ボイラ102の負荷が制限された場合、例えば要求された発電量に相当する主蒸気量を発生させることができなくなる。また、工場設備104へのプロセス用蒸気の供給量も制限される。その結果、工場設備104側での使用電力やプロセス用蒸気の使用量に制約が発生してしまい、工場設備104の操業上問題となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−135908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、再熱器を有するボイラから工場設備へプロセス用蒸気を供給するにあたり、当該ボイラの運転範囲の制限やプロセス用蒸気の供給量の制限を従来よりも緩和し、且つ再熱器の温度上昇を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者らは、鋭意研究開発の結果、蒸気源から混気弁を経由して再熱蒸気系統へ蒸気を混気する混気系統を設けた上で、抽気量検出機構で検出した抽気量が正の値を示した場合には、混気弁を開いて再熱蒸気管に蒸気源から再熱蒸気管へ供給すれば過注入を回避できることを見出した。
【0013】
発明の要旨は以下の通りである。
(1)主蒸気系統と再熱蒸気系統を有するボイラと、前記ボイラで発生した蒸気の熱エネルギーを回転エネルギーに変換するタービンと、前記タービンの回転エネルギーを電力に変換する発電機とを備えたボイラタービン発電設備から工場設備へプロセス用蒸気を供給する蒸気供給系統と、前記再熱蒸気系統へ蒸気を混気する混気系統から構成される蒸気供給システムの制御方法であって、
前記再熱蒸気系統は、再熱器と、当該再熱器と前記タービンとを接続する再熱蒸気管と、当該再熱蒸気管に設置された前記再熱器の温度を測定する再熱蒸気温度検出機構とを有し、
前記蒸気供給系統は、前記主蒸気系統から発生した蒸気(以下、「主蒸気」という。)の一部を主蒸気管から取り出して蒸気の使用先へ供給する抽気管と、前記抽気管に設けられた抽気弁と、抽気流量検出機構を有し、
前記混気系統は、前記再熱蒸気管における前記再熱器入口より上流側に接続された混気管と、前記混気管に設けられた混気弁と、前記混気管に蒸気を供給する蒸気源とを有し、
前記抽気量検出機構で検出した抽気量が正の値を示した場合には、前記混気弁を開いて再熱蒸気管に蒸気源から再熱蒸気管へ供給することを特徴とする蒸気供給システムの制御方法。
(2)前記再熱蒸気管における再熱器の入口側には、当該再熱蒸気管に注水する減温器が設けられ、
前記再熱蒸気温度検出機構は、再熱蒸気管における前記再熱器の出口側の再熱蒸気温度を測定するものであり、
前記混気弁の開度及び減温器への注水量を、前記再熱蒸気温度検出機構で検出される温度が予め定められた範囲内に収まるように調整することで、前記再熱器の温度上昇を予め定められた範囲内とすることを特徴とする、(1)に記載の蒸気供給システムの制御方法。
(3)前記再熱蒸気管における再熱器の出口側には、過熱後の再熱蒸気を当該再熱蒸気管から他の設備へ送り出す他の蒸気供給系統が設置されていることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の蒸気供給システムの制御方法。
(4)主蒸気系統と再熱蒸気系統を有するボイラと、蒸気の熱エネルギーを回転エネルギーに変換するタービンと、前記タービンの回転エネルギーを電力に変換する発電機とを備えたボイラタービン発電設備から工場設備へプロセス用蒸気を供給する蒸気供給系統と、前記再熱蒸気系統へ蒸気を混気する混気系統から構成される蒸気供給システムであって、
前記再熱蒸気系統は、再熱器と、当該再熱器と前記タービンとを接続する再熱蒸気管と、当該再熱蒸気管に設置された前記再熱器の温度を測定する再熱蒸気温度検出機構とを有し、
前記蒸気供給系統は、前記主蒸気系統から発生した蒸気(以下、「主蒸気」という。)の一部を主蒸気管から取り出して蒸気の使用先へ供給する抽気管と、前記抽気管に設けられた抽気弁と、抽気流量検出機構を有し、
前記混気系統は、前記再熱蒸気管における前記再熱器入口より上流側に接続された混気管と、前記混気管に設けられた混気弁と、前記混気管に蒸気を供給する蒸気源とを有することを特徴とする蒸気供給システム。
(5)さらに制御装置を有し、当該制御装置は、前記抽気量検出機構で検出した抽気量が正の値を示した場合には、前記混気弁を開いて再熱蒸気管に蒸気源から再熱蒸気管へ供給することを特徴とする(4)に記載の蒸気供給システム。
(6)前記再熱蒸気管における再熱器の入口側には、当該再熱蒸気管に注水する減温器が設けられ、
前記再熱蒸気温度検出機構は、再熱蒸気管における前記再熱器の出口側の再熱蒸気温度を測定するものであり、
前記制御装置は、前記混気弁の開度及び減温器への注水量を、前記再熱蒸気温度検出機構で検出される温度が予め定められた範囲内に収まるように調整することで、前記再熱器の温度上昇を予め定められた範囲内とすることを特徴とする、(5)に記載の蒸気供給システム。
(7)前記再熱蒸気管における再熱器の出口側には、過熱後の再熱蒸気を当該再熱蒸気管から他の設備へ送り出す他の蒸気供給系統が設置されていることを特徴とする、(4)乃至(6)のいずれかに記載の蒸気供給システム。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、再熱器を有するボイラから工場設備へプロセス用蒸気を供給するにあたり、過注入の発生を抑制し、当該ボイラの運転範囲の制限やプロセス用蒸気の供給量の制限を従来よりも緩和し、且つ再熱器の温度上昇を抑制することができるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施の形態にかかるボイラタービン発電設備を含む蒸気供給システムの構成を示すプロセスフロー図である。
【図2】再熱蒸気系統における蒸気温度の変化の様子を表すグラフである。
【図3】再熱蒸気系統において過注入となった場合の蒸気温度の変化の様子を表すグラフである。
【図4】再熱蒸気系統において減温器を複数設けた場合の蒸気温度の変化の様子を表すグラフである。
【図5】再熱蒸気流量と主蒸気流量の比率と、発電機における発電量と、抽気量との関係を示したグラフである。
【図6】他の実施の形態にかかるボイラタービン発電設備を含む蒸気供給システムの構成を示すプロセスフロー図である。
【図7】従来の蒸気供給システムの構成を示すプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態は、再熱蒸気系統を有するボイラと、蒸気の熱エネルギーを回転エネルギーに変換するタービンと、前記タービンの回転エネルギーを電力に変換する発電機とを備えたボイラタービン発電設備から工場設備へプロセス用蒸気を供給する蒸気供給系統と、前記再熱蒸気系統へ蒸気を混気する混気系統から構成される蒸気供給システム及びその制御方法である。
【0017】
当該蒸気供給システムの再熱蒸気系統は、再熱器と、当該再熱器と前記タービンとを接続する再熱蒸気管と、当該再熱蒸気管に設置された前記再熱器の温度を測定する再熱蒸気温度検出機構とを有しており、蒸気供給系統は、ボイラから発生した主蒸気の一部を主蒸気管から取り出して蒸気の使用先へ供給する抽気管と、前記抽気管に設けられた抽気弁と、抽気流量検出機構を有しており、混気系統は、前記再熱蒸気管における前記再熱器入口より上流側に接続された混気管と、前記混気管に設けられた混気弁と、前記混気管に蒸気を供給する蒸気源とを有している。
【0018】
制御方法としては、抽気量検出機構で検出した抽気量が正の値を示した場合には、混気弁を開いて再熱蒸気管に蒸気源から再熱蒸気管へ供給する。
【0019】
(装置構成)
図1は、ボイラタービン発電設備1から、プロセス用蒸気の使用先としての工場設備2へプロセス用蒸気を供給する蒸気供給系統3及び制御装置4を備えた、本実施の形態にかかる蒸気供給システム5の構成を示すプロセスフロー図である。
【0020】
ボイラタービン発電設備1は、投入された燃料を燃焼させて蒸気を発生させるボイラ10と、ボイラ10から発生した蒸気の熱エネルギーを回転エネルギーに変換するタービン11と、タービン11の回転エネルギーを電力に変換する発電機12を有している。なお、本実施の形態におけるボイラ10は、給水を蒸発させて高温高圧の過熱蒸気である主蒸気を発生させる主蒸気系統13と、タービン11で仕事をして圧力と温度が低下した蒸気を過熱して高温低圧の再熱蒸気を発生させる再熱蒸気系統14とを有する、いわゆる再熱式ボイラである。
【0021】
ボイラ10の主蒸気系統13には、給水管20からの給水を蒸発させる蒸発器21と、蒸発器から発生した蒸気を過熱する過熱器22と、過熱器22の入口に注水を行い過熱器22出口の温度を制御する減温器23が設けられている。再熱蒸気系統14は、タービン11で仕事をして圧力と温度が低下した蒸気を過熱する再熱器24と、再熱器24の入口に注水を行い再熱器24出口の蒸気温度を制御する減温器25と、を有している。また、タービン11は、過熱器22を通過した高温高圧の主蒸気に対応する高圧タービン26と、再熱器24を通過した高温低圧の高温再熱蒸気に対応する低圧タービン27と、を有している。
【0022】
低圧タービン27の排気側には、当該低圧タービン27で仕事をして圧力と温度が低下した蒸気を水に戻して復水として貯留する復水器28が設けられている。復水器28とボイラ10は給水管20により接続されている。給水管20には、復水器28に貯留された復水をボイラ10に給水する給水ポンプ29が設けられている。減温器23、25への注水には、例えば給水ポンプ29からの給水が用いられる。各減温器23、25への注水量は、減温器23、25と給水ポンプ29との間に設けられた注水制御弁23a、25aの開度を、制御装置4を介して調整することにより制御される。
【0023】
過熱器22と高圧タービン26とを接続する主蒸気管30には、ボイラで発生した主蒸気の温度を検出する主蒸気温度検出機構31が設けられている。主蒸気温度検出機構31で検出された温度は、制御装置4に入力される。
【0024】
蒸気供給系統3は、一端部が主蒸気管30に接続され、当該主蒸気管30を流れる主蒸気の一部を取り出す抽気管40と、抽気管40に設けられた抽気弁41と、抽気管40を流れる蒸気の流量を検出する抽気流量検出機構42を有している。抽気管40の他端部は、工場設備2に接続されており、制御装置4により抽気弁41の開度を調整することで、工場設備2へのプロセス用蒸気としての主蒸気の供給量を制御することができる。抽気流量検出機構42では、抽気弁41を開操作した際に工場設備2へ供給される蒸気量が検出される。検出された蒸気量の値は、制御装置4に入力される。なお、抽気弁41の開度は、抽気管40を流れる蒸気量を一定の範囲内に維持するように調整してもよいし、抽気管40の圧力を一定の範囲内に維持するように調整してもよい。
【0025】
また、再熱器24と低圧タービン27とを接続する高温再熱蒸気管52には、再熱器24で過熱された高温再熱蒸気の温度を検出する再熱蒸気温度検出機構53が設けられている。再熱蒸気温度検出機構53で検出された温度は、制御装置4に入力される。
【0026】
(混気系統)
本発明の蒸気供給システムは、再熱蒸気系統14の高圧タービン26の排気口と再熱器24とを接続する低温再熱蒸気管50に蒸気を混気する混気系統51が設けられており、この混気系統51は蒸気供給システム5の一部を構成している。本発明はこのような混気系統を有していることを特徴としている。
【0027】
混気系統51は、一端部が低温再熱蒸気管50に接続され、当該低温再熱蒸気管50に蒸気を供給する混気管60と、当該混気管60の他端部に接続された蒸気源61と、混気管60に設けられた混気弁62を有している。
【0028】
混気管60は、低温再熱蒸気管50における減温器25の上流側であって且つ高圧タービン26の排気口より下流側に接続されている。蒸気源61から供給される蒸気の圧力は、低温再熱蒸気管50への混気が可能なように、低温再熱蒸気管50内を流れる低温再熱蒸気と同じか、又はそれより高い圧力に設定されている。蒸気源61から低温再熱蒸気管50への蒸気の供給量は、制御装置4により混気弁62の開度を調整することで制御される。なお、蒸気源61としては、例えば工場設備2側に設けられた低温低圧のプロセス用蒸気を貯留するアキュームレータや、低温低圧の蒸気を発生させる排熱回収ボイラ、あるいは背圧タービンなどを用いることができる。
【0029】
本発明の蒸気供給システムは、このような混気系統を備えている結果として、ボイラ10に投入される燃料流量に対する再熱蒸気量の比率が低下した場合であっても、再熱器に蒸気を供給する混気を行うことにより、低温再熱蒸気管50を流れる蒸気の温度を飽和温度以下に低下させることなく再熱器24を通過する蒸気量を増加させて、再熱器24の温度上昇を抑制することができる。したがって、本発明の蒸気供給システムによれば、過注入に起因するボイラ10の負荷制限や、主蒸気管30からの抽気量の制限が減温器25により注水する従来の場合よりも緩和され、且つ再熱器24の温度上昇も抑制することができる。
【0030】
(過注入)
図1において、ボイラタービン発電設備1において、発電機12の出力を一定に制御している状態、換言すれば主蒸気管30から高圧タービン26へ流入する主蒸気流量を一定に保った状態から、抽気弁41を開操作してプロセス用蒸気としての主蒸気を抽気し、使用先である工場設備2へ送気する。
【0031】
主蒸気管30から主蒸気が抽気されると、高圧タービン26へ流入する蒸気量が低下するため、制御装置4は、抽気した蒸気量に見合う量の給水を増加させ、高圧タービン26へ流入する蒸気量を一定に維持するように制御する。なお、増加させる給水量は、発電機12の出力によらず、主蒸気管30からの抽気量により決まるものである。この際、ボイラ10への給水量の増加に比例してボイラ10への燃料投入量も増加するが、一方で、再熱器24を通過する蒸気の量は主蒸気管30からの抽気の前後でほとんど変化しない。この場合、燃料投入量は再熱器24を通過する蒸気量に対して相対的に過剰なものとなり再熱蒸気による再熱器24の冷却が不足するため、再熱器24の温度が上昇する。
【0032】
そして、抽気弁41の開操作に伴う再熱器24の温度上昇を抑制するため、制御装置4は混気弁62を開操作し、蒸気源61からの蒸気を低温再熱蒸気管50へ混気する制御を開始する。この際の、制御装置4による制御、及び主蒸気管30から主蒸気を抽気した場合の再熱蒸気系統14における蒸気温度の変化について詳述する。
【0033】
従来、再熱器24の温度上昇に対しては、再熱器24の上流側に設けられた減温器25からの注水が行われ、この注水量は、再熱器24出口の蒸気温度が予め定められた範囲内に収まるように制御されるのが一般的である。
【0034】
しかしながら既述のように、主蒸気管30からの抽気量の増加により、主蒸気の流量に対する再熱蒸気の流量の比率が大幅に低下すると、再熱器24出口の蒸気温度を予め定められた範囲内に収めるためには多量の注水が必要となり、それにより過注入となる場合がある。この点について、図2、図3を用いて具体的に説明する。
【0035】
図2は、再熱蒸気系統14内における蒸気温度の変化の様子を表したグラフであり、横軸に蒸気の流れ方向に沿って配置された各機器を、縦軸に再熱蒸気温度をそれぞれ表している。
【0036】
図2の実線Aは、主蒸気管30からプロセス用蒸気を抽気していない場合の再熱蒸気の温度変化を示している。実線Aにおいては、減温器25による注水は行っていない。実線Aの状態では、再熱器24入口における蒸気温度が飽和温度以上で、且つ再熱器24出口における蒸気温度が予め定められた範囲内(図2の再熱蒸気温度規定値)となっており、再熱蒸気系統14は正常な状態で運転されている。
【0037】
実線Bは、実線Aの状態から所定量の主蒸気を抽気管40から抽気した場合を示している。なお、実線Bにおいても、減温器による注水は行っていない。この場合、抽気管40からの抽気に伴い給水量を増加させるため、給水量の増加に伴いボイラ10に投入される燃料が増加する一方で、再熱器24を通過する蒸気量は変化しないため、再熱器24を通過する蒸気量に対する燃料流量が相対的に過剰になる。したがって、実線Bにおいては再熱器24での蒸気の温度上昇が大きくなり、再熱器24出口における蒸気温度が予め定められた範囲以上となる。
【0038】
実線Cは、実線Bの状態から減温器25による注水を行った場合、即ち従来の方法を用いて再熱器24の温度上昇を抑制する場合の蒸気温度の変化を示している。減温器25による注水を行うことで、再熱器24入口における蒸気温度が実線Bの場合よりも低下すると共に、注水することにより再熱器24を通過する蒸気量も増加するため、再熱器24における蒸気温度の上昇も緩やかとなる。その結果、再熱器24出口における蒸気温度が予め定められた範囲内に保たれ、再熱器24の温度上昇が抑えられる。
【0039】
次に、主蒸気管30からの抽気量が実線Bの状態よりもさらに増加した場合、即ち実線Bの状態よりも、再熱器24を通過する蒸気量に対する燃料流量の比率がさらに増加した場合について、図3に示す実線D、Eを一例として説明する。
【0040】
抽気量が増加し、再熱器24を通過する蒸気量に対する燃料流量の比率がさらに増加した場合、実線Dに示されるように再熱器24における蒸気温度の上昇の度合いが図2の実線Bの場合と比較して大きくなる。その結果、実線Dでは、再熱器24出口における蒸気温度が、実線Bの場合よりも更に高くなる。
【0041】
図3の実線Eは、実線Dの状態から減温器25による注水を行い、再熱器24出口における蒸気温度を予め定められた範囲内とした場合の蒸気温度の変化を示している。実線Eの場合においては、実線Cの場合よりも多量の注水が必要となるため、注水により再熱器24入口における蒸気温度が飽和温度以下となる過注入の状態となってしまう。この場合、過注入を防ぐために、制御装置4により注水量が制限されるが、それに伴いボイラ10への給水量、燃料投入量の変化速度や変化幅、あるいは主蒸気管30からの抽気量なども制限されることとなる。
【0042】
再熱器24出口における蒸気温度を予め定められた範囲内に保ちつつ、実線Eのように過注入となることを回避するためには、既述のように例えば減温器25を複数設け、段階的に蒸気温度を低下させるという手段もある。減温器25を複数設けた場合の蒸気温度の変化の様子の例を、図4に示す。この図4では、再熱器24として、図1には図示されていないが、1次再熱器と2次再熱器の2つの再熱器を設け、当該1次再熱器の入口側と2次再熱器の入口側とにそれぞれ減温器を設置した場合の再熱蒸気系統における蒸気温度の変化の一例を表している。
【0043】
図4に示す実線Fは、例えば図3の実線Dの状態に、実線Eの場合と同じ注水量を、各減温器から分割して注水した場合の蒸気温度の変化を示す。実線Fの場合においては、例えば1次再熱器の入口における蒸気温度が飽和温度を上回り、且つ2次再熱器の出口において再熱蒸気の温度が予め定められた範囲内となるように、1次再熱器入口の減温器25及び2次再熱器入口の減温器25からの注水量が振り分けられる。これにより、過注入を回避しつつ、再熱器24の温度上昇を抑制することができる。しかしながら、既述のように、減温器25を複数台設置した場合、設備費用が増加すると共に、注水の制御が複雑なものとなってしまう。
【0044】
(本発明の制御方法)
図1に基づいて、本実施の形態にかかる制御方法により再熱器24の温度を制御する場合について説明する。上述のように、本発明の蒸気供給システムは混気系統を備えているので、本実施の形態においては、主蒸気管30からプロセス用蒸気として主蒸気を抽気した場合、混気系統51から低温再熱蒸気管50へ蒸気を供給する混気が行われる。なお、以下では簡単のために、混気系統51から混気される蒸気温度が、低温再熱蒸気管50を流れる低温再熱蒸気と同じ温度であるものとして説明する。
【0045】
低温再熱蒸気管50への混気量を増加させると、再熱器24を通過する蒸気量も増加するため、再熱器24を通過する蒸気量に対する燃料流量の比率は相対的に低下する。その結果、再熱器24入口における蒸気温度は変化しないものの、図3に破線Gで示すように、再熱器24における蒸気温度の上昇が緩やかとなり、再熱器24出口における蒸気温度が低下する。
【0046】
したがって、破線Gの状態から低温再熱蒸気管50への混気量を更に増加させれば、減温器25を複数設けることなく再熱蒸気系統14における蒸気温度を図2示される実線Aと同じとすることができる。これが、本発明において、抽気管40により主蒸気の抽気に対して、混気系統51から低温再熱蒸気管50への混気を行う理由である。
【0047】
次に、制御装置4による蒸気供給システム5の好ましい制御について説明する。
【0048】
蒸気供給系統3からの抽気が開始されると、制御装置4では、抽気流量検出機構42による抽気量の検出値に基づいて、混気系統51からの必要混気量を算出する。そして、当該算出結果に基づいて、混気量が計算した必要混気量となるように混気弁62の開度を調整することにより、再熱蒸気系統14の再熱蒸気温度検出機構53による検出温度を予め設定された範囲内に概ねすることができる。予め設定された範囲内とは、再熱目標温度に対して−15℃〜+8℃程度の範囲であり、設備に応じて決められる温度範囲である。なお、抽気量検出機構で検出した抽気量が正の値を示したときをもって、あるいは抽気弁41を開いたことをもって、蒸気供給系統3からの抽気が開始したと判断することができる。
【0049】
具体的には、抽気管40からの抽気量と、混気管60からの混気量とが概ね等しくなるように混気弁62の開度が調整される。これにより、再熱器24出口の蒸気温度が予め定められた範囲内に概ね収められる。そして、混気後の蒸気は再熱器24で過熱され、低圧タービン27に流入する。
【0050】
本発明においては、再熱蒸気管における再熱器24の入口側に再熱蒸気管に注水する減温器25を設けることとすると好ましい。蒸気源61からの蒸気供給量が制限され、混気系統51からの混気のみでは再熱器24出口の蒸気温度を予め定められた範囲内に維持できない場合、換言すれば、図3に破線Gで示すような状態の場合には、例えば図3に一点鎖線Hで示すように、混気に加えて減温器25から注水することで再熱蒸気温度の上昇を抑制して、蒸気温度を予め定められた範囲内とすることができる。この場合、再熱蒸気温度検出機構53は、再熱蒸気管における前記再熱器の出口側の再熱蒸気温度を測定するものであり、混気弁62の開度及び減温器25への注水量を、再熱蒸気温度検出機構53で検出される温度が予め定められた範囲内に収まるように調整することで、再熱器24の温度上昇を予め定められた範囲内とすることができる。
【0051】
なお、再熱器24の温度上昇を抑制するにあたり、混気系統51と減温器25とをどのように組み合わせて制御するかは任意に決定が可能であり、当業者であれば、混気系統51からの混気量を抽気流量検出機構42による抽気量の検出値に比例して決定し、最終的な再熱器24出口温度での蒸気温度を減温器25からの注水により制御したり、或いは、抽気流量検出機構42による抽気量の検出値に比例して減温器25からの注水量を決定し、最終的な再熱器24出口温度での蒸気温度を混気系統51からの混気により制御したりといったことも可能であり、本発明の効果を奏する。
【0052】
以上の実施の形態によれば、高圧タービン11出口より下流であって再熱器24入口より上流側に接続された混気管60と、混気管60に設けられた混気弁62を有しているので、混気弁62を開操作することで、混気管60から低温再熱蒸気管50に混気を行うことができる。これにより、低温再熱蒸気管50を流れる蒸気の温度を低下させることなく、再熱器24を通過する蒸気量を増加させることができる。そのため、主蒸気管30から工場設備2へプロセス用蒸気を供給することにより、主蒸気流量に対する再熱蒸気流量、換言すれば、ボイラ10に投入される燃料流量に対する再熱蒸気量の比率が低下した場合であっても、混気を行うことにより再熱器24の温度上昇を抑制することができる。したがって、本発明によれば、過注入に起因するボイラ10の負荷制限や、主蒸気管30からの抽気量の制限が減温器25により注水する従来の場合よりも緩和され、且つ再熱器24の温度上昇も抑制することができる。
【0053】
また、過注入を回避しつつボイラ10に投入される燃料流量に対する再熱蒸気量の比率の低下を防ぐことができるので、従来の減温器25を用いて再熱器24の温度上昇を防止する場合と比較して、主蒸気管30から多量の抽気を行うことができる。
【0054】
以上の実施の形態においては、抽気流量検出機構42での抽気量の検出値に基づいて混気弁62の開度を決定していたが、混気弁62の開度の調整方法は本実施の形態の例に限定されず、例えば、抽気弁41に開度計を設け、この抽気弁41の流量特性と抽気弁41の開度との関係から抽気量を算出し、この算出した値に基づいて混気弁62の開度を決定するようにしてもよい。あるいは、抽気流量検出機構42の検出値を用いずに、再熱蒸気温度検出機構53による検出温度が予め設定された範囲内となるように混気弁62の開度を調整することによって制御しても良い。この場合、抽気を開始したことの判断によらず、再熱蒸気温度検出機構53による検出温度が予め設定された範囲内となるように混気弁62の開度を調整することもできる。
【0055】
なお、以上の実施の形態においては、主蒸気管30から工場設備2へプロセス用蒸気を抽気する際に、高圧タービン26へ流入する蒸気量が一定となるように制御する場合の例について説明したが、本発明の制御方法は本実施の形態の内容に限定されず、例えば抽気量を増加させた際に、ボイラ10への給水量と燃料投入量を一定とした場合などにも当然に適用が可能である。
【0056】
また、以上の実施の形態においては、再熱器24の温度上昇が起こる場合、換言すれば、主蒸気流量に対しての再熱器24を通過する再熱蒸気の流量の比率が低下する場合として、主蒸気管30からの抽気量を増加させた場合を例にして説明を行なったが、主蒸気流量に対しての再熱蒸気流量の比率の低下は、例えば主蒸気管30からの抽気量を一定に保った状態から、主蒸気流量を低下させた場合、即ち発電機12による発電量を低下させた場合にも起こる。
【0057】
なお、主蒸気管30からの抽気量を一定とした状態で発電量を減少させた場合、抽気流量検出機構42の検出値や抽気弁41の開度は変化しないが、混気弁62の開度の調整は、例えば高温再熱蒸気管52の再熱蒸気温度検出機構53の検出値に基づいて行うことができる。また、予めわかっているタービン11の性能曲線、即ち発電機12の発電量と主蒸気流量との相関関係から、発電量の低下分に相当する主蒸気流量の減少分を算出し、当該算出したデータに基づいて混気弁62の開度を調整してもよい。
【0058】
蒸気供給系統からの抽気量が増大した際に、高圧タービンへの蒸気供給量を一定に保持したままで混気系統から再熱蒸気系統への混気量を増大すると、再熱蒸気系統から低圧タービンへの蒸気供給量が増大するので低圧タービンの回転エネルギーが増大する。高圧タービンの回転エネルギーは一定なので、合計した回転エネルギーが増大し、発電量が増大することとなる。本発明においては、抽気量が増大した際にそれと見合ったよりも少ない給水量増大量として高圧タービンへの蒸気供給量を低減することによって高圧タービンの回転エネルギーを低減し、高圧タービンの回転エネルギー量低減代を低圧タービンの回転エネルギー増大代と等しくすることとしても良い。これにより、発電量を一定に保ったままで工場設備へのプロセス用蒸気抽気量を増大することが可能となる。
【0059】
なお、以上の実施の形態においては、再熱器24の温度上昇を抑制するにあたり、再熱蒸気温度検出機構53の検出温度を予め定められた範囲内に収めるようにしたが、再熱蒸気温度検出機構としては、再熱器24そのものの温度を測定する、いわゆるメタル温度計を用いてもよい。かかる場合も、メタル温度計の検出温度が予め定められた範囲内に収まるように、混気量や注水量を制御するようにしてもよい。
【0060】
以上の実施の形態では、混気管60は低温再熱蒸気管50における減温器25の上流側に接続されていたが、当該混気管60は再熱器24の入口より上流に接続されていればよく、減温器25の下流側に接続されていてもよい。
【0061】
(主蒸気と再熱蒸気との比率)
主蒸気流量に対する再熱蒸気流量の比率と、発電機12の発電量と、主蒸気管30からの抽気量との関係は、図5に示すような関係となる。
【0062】
図5は、縦軸を主蒸気流量に対する再熱蒸気流量の比率、横軸を発電機12の発電量とし、主蒸気管30からの抽気量を変化させた場合に、発電量と主蒸気流量に対する再熱蒸気流量の比率とがそれぞれどのように変化するかを表したものである。図5に示す実線Sは、主蒸気管30からの抽気を行っていない状態で発電量を変化させた場合である。この場合、主蒸気流量の減少に伴って再熱蒸気流量も同じ比率で変化する。また、図5の実線T〜Vは、抽気量を一定として発電機12での発電量を変化させた場合の主蒸気流量に対する再熱蒸気流量の比率の変化を示すものであり、抽気量は実線Tから実線Vの順に多い。
【0063】
そして、既述のように、主蒸気流量に対しての再熱器24を通過する再熱蒸気の流量の比率が低下する場合としては、図5からも明らかなように、抽気量を増加させた場合(ボイラタービン発電設備1の運転点を図5の下向き矢印の方向に沿って移動させた場合)、及び主蒸気管30から抽気した状態で発電量を減少させた場合(ボイラタービン発電設備1の運転点を図5の左向き矢印の方向に沿って移動させた場合)がある。そして本発明によれば、混気系統51から再熱蒸気系統14に混気を行うことで、どのような負荷帯においても主蒸気流量と再熱器を通過する再熱蒸気流量との比率を一定とできる、換言すれば、図5の実線Sで示される運転点でボイラタービン発電設備1を運転することができる。したがって、本発明による蒸気供給システムの制御方法は、上述の、抽気量を増加させた場合のみならず、主蒸気管30から抽気した状態で発電量を減少させた場合にも適用可能である。さらには、抽気量と発電量の双方を変動させた場合にも適用可能である。
【0064】
主蒸気と再熱蒸気との関係を数値例により説明する。
【0065】
ボイラタービン発電設備1において、例えば主蒸気流量が100t/h、主蒸気からのプロセス用蒸気の供給量が20t/h、抽気した20t/hを除いた再熱蒸気流量が80t/hの条件の下で、所定の発電量を保って運転している状態を想定すると、主蒸気流量に対する再熱蒸気流量の比率は、80/100で0.8となる。
【0066】
そして、抽気量を20t/hで一定に保ちながら発電量を低下させ、換言すれば主蒸気流量を減少させ、それにより例えば主蒸気流量が20t/h減少したとする。
【0067】
そうすると、主蒸気流量は80t/h、再熱蒸気流量は60t/hにそれぞれ変化し、主蒸気流量に対する再熱蒸気流量の比率は60/80で0.75となり、発電量を減少させる前と比較して低くなる。なお、実際のボイラタービン発電設備1では、当該実際のボイラタービン発電設備1内で補助蒸気を使用するため、再熱蒸気量は80t/hよりも低い値となるが、ここでは単純化のために補助蒸気の使用量を無視している。
【0068】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施形態において再熱蒸気管における再熱器の出口側には、過熱後の再熱蒸気を当該再熱蒸気管から他の設備へ送り出す他の蒸気供給系統を更に設置している蒸気供給システムの制御方法である。
【0069】
(設備構成)
第2の実施の形態にかかるボイラタービン発電設備1は、図6に示すように、高温再熱蒸気管52から再熱器24を通過した蒸気を抽気する他の蒸気供給系統70を有していている。
【0070】
(第2の実施形態の特徴)
図1の設備に加えて、蒸気供給系統70を設けることで、混気系統51からの混気により流量が増加した分の再熱蒸気を再熱器24過熱後に、例えば工場設備2などの蒸気使用先に供給することができる。かかる場合、蒸気源61における温度では用途が限られていた蒸気を、高温な状態にして供給することができるので、その結果、例えば工場設備2側で高温の蒸気を発生させるために使用していた燃料を節約することができる。
【0071】
なお、他の蒸気供給系統70の接続先は、工場設備2に限らず、任意に設定が可能である。
【0072】
また、主蒸気管30からの抽気量の増加に伴い再熱蒸気系統14に混気を行った場合、高圧タービン26に流入する蒸気量は、ボイラ負荷を変動させることにより抽気量の増減によらず一定に保つことができるが、低圧タービン27に流入する蒸気量は、混気量の分だけ増加することとなる。かかる場合、発電機12での発電量が増加するが、例えば工場設備2側の電力需要が発電機12の発電量を上回っている場合は蒸気が余剰となり、例えば蒸気を大気放散させたりする必要が生じる。この点、他の蒸気供給系統70を設けることにより余剰となる蒸気を工場設備2などに供給することができるので、エネルギーロスを最小限に抑えることができる。
【実施例】
【0073】
40MWの発電を実施しているが抽気が0t/hである状態から抽気を80t/hを実施している状態に遷移させた場合に過注入が発生するか否かを、本発明の方法と比較例とにより本発明の優位性を確認した。40MWの発電を実施しているが抽気が0t/hである状態から抽気を80t/hを実施している状態に遷移させた場合に、高圧タービンに流入する蒸気量を80t/h減少させ、ボイラでの主蒸気発生量は一定に保った。遷移後の発電量は不明である。なお、実施例と比較例の記載にあたり、明示的に計測器を設置していない場所の温度、圧力、流量を記載している。
【0074】
本発明の方法を実施した場合を表1に、比較例の場合を表2に記した。表1、表2ともに、主蒸気に関しては、過熱器22出口、高圧タービン26入口及び抽気について、再熱蒸気に関しては、減温器25入口、減温器25出口、再熱器24出口、低圧タービン27入口について、さらに減温器25の水、混気について、それぞれ温度[℃]、圧力[MPa]、流量[ton/h]を示した。
【0075】
(1)本発明の方法を用いた場合
本発明の方法、すなわち、減温器と混気を併用した場合についての実施例である。表1は、表1(1)及び表1(2)から構成される。表1(1)は、40MWの発電を実施しているが抽気が0t/hである場合のマテリアルバランスを示している。表1(2)は、40MWの発電を実施しているが抽気が0t/hである状態から抽気を80t/hに遷移したときのマテリアルバランスを示している。
【0076】
表1(1)は、40MWの発電を実施しているが抽気が0t/hである場合であるから、表1(1)の流量において、高圧タービン入口は250[ton/h]、抽気は0[ton/h]である。減温器25の水は15[ton/h]、混気は0[ton/h]である。このとき、減温器25出口の温度は301[℃]であり減温器25出口の飽和温度246[℃]より高い値を示している。
【0077】
表1(2)は、40MWの発電を実施しているが抽気が0t/hである状態から抽気を80t/hに遷移したときであるから、表1(2)において、高圧タービン26入口は170[ton/h]、抽気は80[ton/h]である。減温器25の水は15[ton/h]、混気は80[ton/h]である。このとき、再熱減温器出口の温度は301[℃]であり減温器25出口の飽和温度246[℃]より高い値を示している。したがって、過注入は発生せず、優良なケースである。
【0078】
【表1】

【0079】
(2)比較例の方法を用いた場合
比較例の方法、すなわち、減温器のみを使用した場合についての実施例である。表2は、表2(1)及び表2(2)から構成される。表2(1)は、40MWの発電を実施しているが抽気が0t/hである場合のマテリアルバランスを示している。表2(2)は、40MWの発電を実施しているが抽気が0t/hである状態から抽気を80t/hに遷移したときのマテリアルバランスを示している。
【0080】
表2(1)は、40MWの発電を実施しているが抽気が0t/hであるときであるから、表2(1)の流量において、高圧タービン入口は250[ton/h]、抽気は0[ton/h]である。減温器25の水は15[ton/h]、混気は0[ton/h]である。このとき、減温器25出口の温度は301[℃]であり減温器25出口の飽和温度246[℃]より高い値を示している。
【0081】
表2(2)は、40MWの発電を実施し、かつ、抽気を80t/hである場合であるから、表2(2)において、高圧タービン26入口は170[ton/h]、抽気は80[ton/h]である。減温器25の水は27[ton/h]、混気は0[ton/h]である。このとき、再熱減温器出口の温度は239[℃]であり減温器25出口の飽和温度246[℃]より低い値を示している。したがって、過注入が発生し、不良なケースである。
【0082】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、ボイラタービン発電設備から工場設備へプロセス用蒸気を供給する際に有用である。
【符号の説明】
【0084】
1:ボイラタービン発電設備
2:工場設備
3:蒸気供給系統
4:制御装置
5:蒸気供給システム
10:ボイラ
11:タービン
12:発電機
13:主蒸気系統
14:再熱蒸気系統
20:給水管
21:蒸発器
22:過熱器
23:減温器
24:再熱器
25:減温器
26:高圧タービン
27:低圧タービン
28:復水器
29:給水ポンプ
30:主蒸気管
31:主蒸気温度検出機構
40:抽気管
41:抽気弁
42:抽気流量検出機構
50:低温再熱蒸気管
51:混気系統
52:高温再熱蒸気管
53:再熱蒸気温度検出機構
60:混気管
61:蒸気源
62:混気弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主蒸気系統と再熱蒸気系統を有するボイラと、前記ボイラで発生した蒸気の熱エネルギーを回転エネルギーに変換するタービンと、前記タービンの回転エネルギーを電力に変換する発電機とを備えたボイラタービン発電設備から工場設備へプロセス用蒸気を供給する蒸気供給系統と、前記再熱蒸気系統へ蒸気を混気する混気系統から構成される蒸気供給システムの制御方法であって、
前記再熱蒸気系統は、再熱器と、当該再熱器と前記タービンとを接続する再熱蒸気管と、当該再熱蒸気管に設置された前記再熱器の温度を測定する再熱蒸気温度検出機構とを有し、
前記蒸気供給系統は、前記主蒸気系統から発生した蒸気(以下、「主蒸気」という。)の一部を主蒸気管から取り出して蒸気の使用先へ供給する抽気管と、前記抽気管に設けられた抽気弁と、抽気流量検出機構を有し、
前記混気系統は、前記再熱蒸気管における前記再熱器入口より上流側に接続された混気管と、前記混気管に設けられた混気弁と、前記混気管に蒸気を供給する蒸気源とを有する蒸気供給システムの制御方法であって、
前記抽気量検出機構で検出した抽気量が正の値を示した場合には、前記混気弁を開いて再熱蒸気管に蒸気源から再熱蒸気管へ供給することを特徴とする蒸気供給システムの制御方法。
【請求項2】
前記再熱蒸気管における再熱器の入口側には、当該再熱蒸気管に注水する減温器が設けられ、
前記再熱蒸気温度検出機構は、再熱蒸気管における前記再熱器の出口側の再熱蒸気温度を測定するものであり、
前記混気弁の開度及び減温器への注水量を、前記再熱蒸気温度検出機構で検出される温度が予め定められた範囲内に収まるように調整することで、前記再熱器の温度上昇を予め定められた範囲内とすることを特徴とする、請求項1に記載の蒸気供給システムの制御方法。
【請求項3】
前記再熱蒸気管における再熱器の出口側には、過熱後の再熱蒸気を当該再熱蒸気管から他の設備へ送り出す他の蒸気供給系統が設置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の蒸気供給システムの制御方法。
【請求項4】
主蒸気系統と再熱蒸気系統を有するボイラと、蒸気の熱エネルギーを回転エネルギーに変換するタービンと、前記タービンの回転エネルギーを電力に変換する発電機とを備えたボイラタービン発電設備から工場設備へプロセス用蒸気を供給する蒸気供給系統と、前記再熱蒸気系統へ蒸気を混気する混気系統から構成される蒸気供給システムであって、
前記再熱蒸気系統は、再熱器と、当該再熱器と前記タービンとを接続する再熱蒸気管と、当該再熱蒸気管に設置された前記再熱器の温度を測定する再熱蒸気温度検出機構とを有し、
前記蒸気供給系統は、前記主蒸気系統から発生した蒸気(以下、「主蒸気」という。)の一部を主蒸気管から取り出して蒸気の使用先へ供給する抽気管と、前記抽気管に設けられた抽気弁と、抽気流量検出機構を有し、
前記混気系統は、前記再熱蒸気管における前記再熱器入口より上流側に接続された混気管と、前記混気管に設けられた混気弁と、前記混気管に蒸気を供給する蒸気源とを有することを特徴とする蒸気供給システム。
【請求項5】
さらに制御装置を有し、当該制御装置は、前記抽気量検出機構で検出した抽気量が正の値を示した場合には、前記混気弁を開いて再熱蒸気管に蒸気源から再熱蒸気管へ供給することを特徴とする請求項4に記載の蒸気供給システム。
【請求項6】
前記再熱蒸気管における再熱器の入口側には、当該再熱蒸気管に注水する減温器が設けられ、
前記再熱蒸気温度検出機構は、再熱蒸気管における前記再熱器の出口側の再熱蒸気温度を測定するものであり、
前記制御装置は、前記混気弁の開度及び減温器への注水量を、前記再熱蒸気温度検出機構で検出される温度が予め定められた範囲内に収まるように調整することで、前記再熱器の温度上昇を予め定められた範囲内とすることを特徴とする、請求項5に記載の蒸気供給システム。
【請求項7】
前記再熱蒸気管における再熱器の出口側には、過熱後の再熱蒸気を当該再熱蒸気管から他の設備へ送り出す他の蒸気供給系統が設置されていることを特徴とする、請求項4乃至6のいずれかに記載の蒸気供給システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate