説明

蒸気供給システム及び蒸気供給システムの制御方法

【課題】再熱器を有するボイラの主蒸気系統から工場設備へプロセス用蒸気を供給するにあたり、当該ボイラの圧力変動を抑制することで、プロセス用蒸気の供給制限を従来よりも緩和する。
【解決手段】ボイラタービン発電設備1から工場設備2へプロセス用蒸気を供給する蒸気供給系統3と制御装置4を有する蒸気供給システム5は、再熱蒸気管29における再熱器27の下流側であって、且つ低圧タービン16の上流側に接続された再熱蒸気抽気管60と、再熱蒸気抽気管60に設けられた再熱蒸気抽気弁61を有している。蒸気供給系統3は、ボイラ10から発生した蒸気の一部を取り出す抽気管40と、抽気弁41を備えている。制御装置4は、主蒸気抽気弁41が開かれて工場設備へ蒸気が供給され、注水制御弁34が開かれて減温器28から再熱蒸気管に注水が行われた場合に、再熱蒸気抽気弁61を開いて再熱蒸気管29から蒸気を工場設備2に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力と蒸気の供給を同時に行うボイラタービン発電設備から工場設備へ高圧蒸気の供給を行う蒸気供給システム及び蒸気供給システムの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば製鉄所などの工場設備内に設置されるボイラタービン発電設備では、ボイラで発生した蒸気を用いてタービン発電機で発電し、発電した電力を工場設備に供給すると共に、工場設備で使用するプロセス用蒸気の供給を行っている。このプロセス用蒸気としては、ボイラで発生した高温高圧の過熱蒸気である主蒸気や、タービンから排気された低圧の蒸気などが工場設備側の需要に応じて供給される。
【0003】
ところで、プロセス用蒸気の供給源としてのボイラが、例えば図2に示すような、発電機100に接続された高圧タービン101で仕事を行った後の低圧蒸気を加熱する再熱器102を有するボイラ103である場合、当該ボイラ103の主蒸気管104から工場設備105へ供給するプロセス用蒸気として主蒸気を抽気すると、高圧タービン101へ流入する主蒸気の流量が減少する。そのため、高圧タービン101の排気側へ排出される蒸気量も減少し、その結果、再熱器102を通過する蒸気量も減少する。その一方で、ボイラ103に投入される燃料の量は、ボイラ103から発生させる主蒸気、換言すれば過熱器106を通過する蒸気の流量や圧力に応じて決定される。そのため、主蒸気管104から工場設備105にプロセス用蒸気を供給することで再熱器102を通過する蒸気量が減少しても、ボイラ103から発生する主蒸気の量そのものが変化しない場合は、ボイラ103に供給される燃料の流量にも変化は生じない。かかる場合、再熱器102を通過する蒸気量に対してボイラ103に投入される燃料の量が相対的に増加し、再熱器102の温度が上昇することとなる。
【0004】
あるいは、主蒸気管104から主蒸気を抽気する際、高圧タービン101へ流入する主蒸気の流量が減少しないように、ボイラ103に投入される給水と燃料の量を増加させることもできる。この場合も、再熱器102を通過する蒸気量が一定であるのに対してボイラ103に投入される燃料の量が相対的に増加し、再熱器102の温度が上昇することとなる。
【0005】
再熱器102の温度上昇に対しては、再熱器102の上流側に設けられた減温器107により再熱蒸気管108への注水が行われるのが通常であり、例えば特許文献1に示されるように、再熱器102の温度が規定値を超えないように減温器107からの注水量が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−135908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述のようにボイラ103から発生した高温高圧の主蒸気を主蒸気管104からプロセス用蒸気として抽気すると、高圧タービン101に流入する蒸気量が減少する。その結果、タービン100に接続された発電機100による発電量が減少する。
【0008】
一方、工場設備105への安定的な電力供給という観点から、発電機100による発電量は、主蒸気の抽気量に左右されることなく工場設備105の需要に対応させて一定に維持されることが望まれる。かかる要求に対応する場合、主蒸気管104からの抽気が行われると、発電機100の発電量を一定に維持するために、高圧タービン101の入口側に設けられた主蒸気加減弁109が開方向に操作され、それにより高圧タービン101への主蒸気の流入量が回復されると共に、主蒸気加減弁109の開方向への操作により主蒸気管104の圧力が低下するので、低下した主蒸気管104の圧力を回復させるため、抽気量に対応する量の給水と燃料がボイラ103に更に供給される。
【0009】
高圧タービン101に流入する主蒸気の流量が一定に保たれることで、再熱蒸気管108へ排気される蒸気の流量も一定に保たれるが、その一方でボイラ103への燃料の供給量は増加しているため、再熱器101を通過する蒸気量に対する燃料供給量の比率は相対的に増加する。この場合、上述のように減温器107により注水することで再熱器102の温度上昇が抑えられるが、注水に伴い再熱器102を通過する蒸気量が増加するため、タービン100へ流入する蒸気量も増加し、結果として発電機101の発電量が増加する。そして、発電機出力が増加すると、タービン100に流入する主蒸気量を制限して発電機出力を一定に維持するように、タービン100の入口側に設けられた主蒸気加減弁109は閉方向に操作される。
【0010】
しかしながら、主蒸気加減弁109の開度が低下するとボイラ103の主蒸気圧力が上昇するため、主蒸気系統に圧力変動が発生してしまう。圧力変動が発生すると、圧力を所定の値に維持するために燃料流量や給水流量の調整が行われるが、ボイラ103は時定数が大きいため、主蒸気加減弁109の操作による主蒸気の圧力変化に対応できず、結果として主蒸気圧力の変動が収束して再び安定するまでには時間がかかる。この傾向は、主蒸気加減弁109の操作速度が速いほど、即ち減温器107からの注水量の変化率が大きいほど顕著となる。
【0011】
そのため、通常は減温器107からの注水量が急激に変化することを防ぐために、工場設備105側へのプロセス用蒸気の送気量の変化速度や変化幅を低く抑えて運用している。しかしながら、送気量を制限すると工場設備105で要求する蒸気量が確保できない場合があり、工場設備105の操業上問題となる。
【0012】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、再熱器を有するボイラの主蒸気系統から工場設備へプロセス用蒸気を供給するにあたり、当該ボイラの圧力変動を抑制することで、プロセス用蒸気の供給制限を従来よりも緩和することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)主蒸気系統13と再熱蒸気系統14を有するボイラ10と、前記ボイラ10で発生した蒸気の熱エネルギーを回転エネルギーに変換するタービン11と、前記タービン11の回転エネルギーを電力に変換する発電機12とを備えたボイラタービン発電設備1を用い、
主蒸気系統13からの蒸気(以下、「主蒸気」という。)はタービン11に送られその一部を抽気して工場設備2へプロセス用蒸気を供給する蒸気供給系統3と、
ボイラ10の再熱蒸気系統14からの蒸気はタービン11に送られその一部を抽気して工場設備2に供給する再熱蒸気抽気系統50と、
を有する蒸気供給システムの制御方法であって、
再熱蒸気系統14は、再熱器27と、再熱器27と前記タービン11とを接続する再熱蒸気管29と、当該再熱蒸気管29における再熱器27の上流側に設けられた減温器28と、減温器28に注水する注水制御弁34を備え、
蒸気供給系統3は、ボイラ10から発生した主蒸気の一部を主蒸気管24から取り出して蒸気の使用先へ供給する主蒸気抽気管41と、主蒸気抽気管41に設けられた主蒸気抽気弁40とを備え、
再熱蒸気抽気系統50は、再熱蒸気管29における再熱器27の下流側であって、且つタービンの上流側に接続された再熱蒸気抽気管60と、再熱蒸気抽気管60に設けられた再熱蒸気抽気弁61とを有し、
主蒸気抽気弁41が開かれて工場設備へ蒸気が供給され、注水制御弁34が開かれて減温器28から再熱蒸気管に注水が行われた場合に、再熱蒸気抽気弁61を開いて再熱蒸気管29から蒸気を工場設備2に供給することを特徴とする蒸気供給システムの制御方法。
(2)再熱蒸気抽気弁61の開度は、減温器28への注水量に基づいて決定されることを特徴とする、(1)に記載の蒸気供給システムの制御方法。
(3)再熱蒸気抽気弁61の開度は、再熱蒸気管29における再熱器27の下流側であって、且つタービン11の上流側に設置された圧力検出機構30により計測された圧力に基づいて決定されることを特徴とする(1)に記載の蒸気供給システムの制御方法。
(4)主蒸気系統13と再熱蒸気系統14を有するボイラ10と、前記ボイラ10で発生した蒸気の熱エネルギーを回転エネルギーに変換するタービン11と、前記タービン11の回転エネルギーを電力に変換する発電機12とを備えたボイラタービン発電設備1を用い、
主蒸気系統13からの蒸気(以下、「主蒸気」という。)はタービン11に送られその一部を抽気して工場設備2へプロセス用蒸気を供給する蒸気供給系統3と、
ボイラ10の再熱蒸気系統14からの蒸気はタービン11に送られその一部を抽気して工場設備2に供給する再熱蒸気抽気系統50と、
を有する蒸気供給システムであって、
再熱蒸気系統14は、再熱器27と、再熱器27と前記タービン11とを接続する再熱蒸気管29と、再熱蒸気管29における再熱器27の上流側に設けられた減温器28と、減温器28に注水する注水制御弁34を備え、
前記蒸気供給系統3は、前記ボイラ10から発生した主蒸気の一部を主蒸気管24から取り出して蒸気の使用先へ供給する主蒸気抽気管41と、前記主蒸気抽気管41に設けられた主蒸気抽気弁40とを備え、
前記再熱蒸気抽気系統50は、前記再熱蒸気管29における前記再熱器27の下流側であって、且つタービンの上流側に接続された再熱蒸気抽気管60と、前記再熱蒸気抽気管60に設けられた再熱蒸気抽気弁61とを有することを特徴とする蒸気供給システム。
(5)前記蒸気供給システムはさらに制御装置4を有し、制御装置4は、主蒸気抽気弁41が開かれて工場設備へ蒸気が供給され、注水制御弁34が開かれて減温器28から再熱蒸気管に注水が行われた場合に、再熱蒸気抽気弁61を開いて再熱蒸気管29から蒸気を工場設備2に供給することを特徴とする上記(4)に記載の蒸気供給システム。
(6)再熱蒸気抽気弁61の開度は、減温器28への注水量に基づいて決定されることを特徴とする、(5)に記載の蒸気供給システム。
(6)再熱蒸気抽気弁61の開度は、再熱蒸気管29における再熱器27の下流側であって、且つタービン11の上流側に設置された圧力検出機構30により計測された圧力に基づいて決定されることを特徴とする(5)に記載の蒸気供給システム。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、再熱器を有するボイラの主蒸気系統から工場設備へプロセス用蒸気を供給するにあたり、当該ボイラの圧力変動を抑制することで、プロセス用蒸気の供給制限を従来よりも緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施の形態にかかるボイラタービン発電設備を含む蒸気供給システムの構成を示すプロセスフロー図である。
【図2】従来の蒸気供給システムの構成を示すプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態は、主蒸気系統13と再熱蒸気系統14を有するボイラ10と、ボイラ10で発生した蒸気の熱エネルギーを回転エネルギーに変換するタービン11と、前記タービン11の回転エネルギーを電力に変換する発電機12とを備えたボイラタービン発電設備1を用い、主蒸気系統13からの蒸気(主蒸気)はタービン11に送られその一部を抽気して工場設備2へプロセス用蒸気を供給する蒸気供給系統3と、ボイラ10の再熱蒸気系統14からの蒸気はタービン11に送られその一部を抽気して前記工場設備2に供給する再熱蒸気抽気系統50と、を有する蒸気供給システムの制御方法である。
【0017】
具体的には、再熱蒸気系統14は、再熱器27と、再熱器27とタービン11とを接続する再熱蒸気管29と、再熱蒸気管29における再熱器27の上流側に設けられた減温器28と、減温器28に注水する注水制御弁34を備え、蒸気供給系統3は、ボイラ10から発生した主蒸気の一部を主蒸気管24から取り出して蒸気の使用先へ供給する主蒸気抽気管41と、主蒸気抽気管41に設けられた主蒸気抽気弁40とを備え、再熱蒸気抽気系統50は、再熱蒸気管29における再熱器27の下流側であって、且つタービンの上流側に接続された再熱蒸気抽気管60と、再熱蒸気抽気管60に設けられた再熱蒸気抽気弁61とを有し、主蒸気抽気弁41が開かれて工場設備へ蒸気が供給され、注水制御弁34が開かれて減温器28から再熱蒸気管に注水が行われた場合に、再熱蒸気抽気弁61を開いて再熱蒸気管29から蒸気を工場設備2に供給する蒸気供給システムの制御方法である。
【0018】
再熱蒸気抽気弁61の開度は、前記減温器28への注水量に基づいて決定することができる。
【0019】
また、再熱蒸気抽気弁61の開度は、再熱蒸気管29における再熱器27の下流側であって、且つタービン11の上流側に設置された圧力検出機構30により計測された圧力に基づいて決定することができる。
【0020】
(蒸気供給システム)
蒸気供給システムについて図1を用いて説明する。
【0021】
図1は、ボイラタービン発電設備1から、プロセス用蒸気の使用先としての工場設備2へプロセス用蒸気を供給する蒸気供給システム5であって、主蒸気系統13から蒸気を供給する蒸気供給系統3、再熱蒸気系統14から蒸気を供給する再熱蒸気抽気系統50及び制御装置4を備えた、本実施の形態にかかる蒸気供給システム5の構成を示すプロセスフロー図である。
【0022】
ボイラタービン発電設備1は、投入された燃料を燃焼させて蒸気を発生させるボイラ10と、ボイラ10から発生した蒸気の熱エネルギーを回転エネルギーに変換するタービン11と、タービン11の回転エネルギーを電力に変換する発電機12を有している。
【0023】
なお、本実施の形態におけるボイラ10は、給水を蒸発させて高温高圧の過熱蒸気である主蒸気を発生させる主蒸気系統13と、タービン11で仕事をして圧力と温度が低下した蒸気を過熱して高温低圧の再熱蒸気を発生させる再熱蒸気系統14とを有する、いわゆる再熱式ボイラである。また、タービン11は、主蒸気系統から流入する高温高圧の主蒸気に対応する高圧タービン15と、再熱蒸気系統14からの高温低圧の高温再熱蒸気に対応する低圧タービン16と、を有している。
【0024】
(制御装置4の概要)
制御装置4は、ボイラタービン発電設備1の各機器を制御するものであり、例えば燃料供給設備(図示せず)からボイラ10への燃料供給量、ボイラ10への給水量、発電機12の発電量などを制御する
ボイラ10の主蒸気系統13は、給水管20からの給水を蒸発させる蒸発器21と、蒸発器から発生した蒸気を過熱する過熱器22と、過熱器22の入口に注水を行い過熱器22出口の温度を制御する減温器23と、を有している。過熱器22と高圧タービン15とは、主蒸気管24により接続されている。主蒸気管24における高圧タービン15の入口には高圧タービン15に導入する主蒸気の流量を制御する主蒸気加減弁25が設けられている。また、主蒸気管24には、ボイラで発生した主蒸気の温度ないし圧力を検出する温度・圧力検出機構26が設けられている。温度・圧力検出機構26で検出された温度は、制御装置4に入力される。
【0025】
再熱蒸気系統14は、高圧タービン15で仕事をして圧力と温度が低下した蒸気を過熱する再熱器27と、再熱器27の入口に注水を行い再熱器27出口の蒸気温度を制御する減温器28と、を有している。高圧タービン15の排気口と再熱器27、及び再熱器27と低圧タービン16とは、再熱蒸気管29により接続されている。再熱蒸気管29における再熱器27の下流側であって、且つ低圧タービン16の上流側には、当該再熱蒸気管29を流れる再熱蒸気の温度ないし圧力を検出する温度・圧力検出機構30が設けられている。温度・圧力検出機構30で検出された圧力は、制御装置4に入力される。
【0026】
低圧タービン16の排気側には、当該低圧タービン16で仕事をして圧力と温度が低下した蒸気を水に戻し、この水を復水として貯留する復水器31が設けられている。復水器31とボイラ10は給水管20により接続されている。給水管20には、復水器31に貯留された復水をボイラ10に給水する給水ポンプ32が設けられている。減温器23、28への注水には、例えば給水ポンプ32からの給水が用いられる。各減温器23、28への注水量は、制御装置4により注水制御弁33、34の開度をそれぞれ調整することにより制御される。
【0027】
蒸気供給系統3は、一端部が主蒸気管24に接続され、当該主蒸気管24を流れる主蒸気の一部を取り出す抽気管40と、抽気管40に設けられた抽気弁41を有している。抽気管40の他の端部は、工場設備2に接続されており、制御装置4により抽気弁41の開度を調整することで、工場設備2へのプロセス用蒸気としての主蒸気の供給量を制御することができる。
【0028】
なお、抽気弁41の開度は、抽気管40を流れる蒸気量を一定の範囲内に維持するように調整してもよいし、抽気管40の圧力を一定の範囲内に維持するように調整してもよい。
【0029】
再熱蒸気系統14には、本発明の特徴である再熱蒸気管29から蒸気を抽気する再熱蒸気抽気系統50が設けられており、この再熱蒸気抽気系統50は蒸気供給システム5の一部を構成している。再熱蒸気抽気系統50は、再熱蒸気管29から再熱蒸気を抽気する再熱蒸気抽気管60と、再熱蒸気抽気管60に設けられた再熱蒸気抽気弁61を有している。再熱蒸気抽気管60は、その一端部が再熱蒸気管29における再熱器27の下流側であって且つ低圧タービン16の上流側に接続されている。また、再熱蒸気抽気管60の他端部は例えば工場設備2などの、他の設備に接続されている。
【0030】
本発明の蒸気供給システムは、このような再熱蒸気抽気系統を備えている結果として、蒸気供給系統3において主蒸気管から抽気管40を経由して蒸気を抽気するに際し、再熱蒸気系統の減温器28から注水によって再熱器27を通過する蒸気の流量が増加しても、この増加分を再熱蒸気抽気系統から抽気するので低圧タービンへの蒸気量の増加を抑えることができ、発電機12の発電量が増加することがない。
【0031】
(具体的制御方法)
本実施の形態にかかる蒸気供給システム5は以上のように構成されており、次に、本実施の形態にかかるボイラタービン発電設備1から工場設備2へプロセス用蒸気を供給する際の蒸気供給システム5の好ましい制御方法について説明する。
【0032】
なお、以下においては、工場設備2へプロセス用蒸気を供給する際に、発電機12の発電量及び主蒸気管24の圧力を所定の値に一定制御する、いわゆるボイラタービン協調制御モードにより制御する場合を例にして説明する。
【0033】
先ず、ボイラタービン発電設備1がボイラタービン協調制御モードにより主蒸気管24を流れる主蒸気の流量と圧力、及び発電機12の発電量を一定に制御されている状態で、抽気弁41を開操作して抽気管40からプロセス用蒸気の使用先である工場設備2への送気を開始する。
【0034】
抽気管40から主蒸気が抽気されると、主蒸気管24を流れる蒸気の圧力が低下し、高圧タービン15へ流入する主蒸気の流量が減少するため、発電機12の発電量が低下するが、発電機12の発電量低下に伴い制御装置4は、発電機12の発電量を抽気開始前の状態に回復させるために、主蒸気加減弁25を開方向に操作する。また、主蒸気加減弁25の開操作により主蒸気管24の圧力が低下するため、制御装置4は、ボイラ10への燃料供給量及び給水流量を増加させる。それにより、主蒸気管24の圧力は一定に保たれ、発電機12の発電量も維持されるが、ボイラ10への燃料供給量は増加しているので、燃料供給量は再熱器27を通過する蒸気量に対して相対的に過剰となり、再熱器27の温度、換言すれば再熱蒸気管29における再熱器27出口の再熱蒸気温度が上昇する。
【0035】
そして、再熱蒸気の温度が規定値以上になると、制御装置4からの指令により注水制御弁34が開操作され、減温器28からの注水により再熱器27の温度上昇が抑制される。その一方で、減温器28から注水により、この注水量分だけ再熱器27を通過する蒸気の流量が増加する。再熱器27を通過する蒸気の流量が増加すると、低圧タービン17へ流入する再熱蒸気の流量も増加し、結果として発電機12の発電量が増加するので、制御装置4は再熱蒸気抽気弁61を開操作して、注水により増加した分の再熱蒸気を工場設備2へ送気する。この場合、再熱蒸気の増加分が低圧タービン17へ流入することがなく、発電機12の発電量が増加することがないので、上述のような主蒸気加減弁25の動作に伴う主蒸気管24の圧力変動が抑制される。なお、再熱蒸気抽気弁61の開度は、例えば注水制御弁34の開度に基づいて調整されてもよいし、再熱蒸気管29に設けられた圧力検出機構30による検出値に基づいて調整されてもよい。
【0036】
具体的には、注水制御弁34の開度と流量との関係、及び再熱蒸気抽気弁61の開度と流量との関係は、注水制御弁34、再熱蒸気抽気弁61の性能曲線により予め把握可能なので、注水制御弁34の開度に基づいて再熱蒸気抽気弁61の開度を調整する場合は、制御装置4で注水制御弁34の開度から注水されている流量を求め、次いで、この流量に相当する開度指令が再熱蒸気抽気弁61に出力される。なお、注水制御弁34からの注水量を求めるに当たっては、注水制御弁34の上流に流量計を設けて実流量を測定するようにしてもよい。
【0037】
また、再熱蒸気抽気弁61の開度を再熱蒸気管29に設けられた圧力検出機構30による検出値に基づいて調整する場合は、減温器28からの注水が開始された時点、換言すれば注水制御弁34の開操作が開始された時点での圧力検出機構30での検出値が制御装置4により圧力設定値として記憶される。そして、制御装置4により、再熱蒸気管29の圧力が圧力設定値から所定の範囲内に収まるように再熱蒸気抽気弁61の開度が調整される。
【0038】
以上の実施の形態によれば、再熱蒸気管29における再熱器27の下流側であって、且つ低圧タービン16の上流側に再熱蒸気抽気管60が接続されているので、主蒸気管24からの抽気に伴う再熱蒸気管29への注水によって再熱器27を通過する蒸気が増加した際に、再熱蒸気管29から増加分の蒸気を抽気することができる。これにより、低圧タービン16へ流入する蒸気量の増加を防ぐことができるので、発電機12の発電量増加に伴う主蒸気加減弁25の絞り込み動作を防ぎ、主蒸気系統13の圧力変動を抑えることができる。したがって本発明によれば、ボイラタービン発電設備1から工場設備2へプロセス用蒸気を供給するにあたり、プロセス用蒸気の供給制限を従来よりも緩和することができる。
【0039】
また、再熱器27通過後の高温再熱蒸気を抽気して例えば工場設備2などの蒸気使用先に供給するので、工場設備2側で高温の蒸気を発生させるために使用していた他の蒸気発生源の燃料を節約することができる。
【0040】
なお、以上の実施の形態においては、主蒸気加減弁25の絞り込み動作により主蒸気管24の圧力変動が起こる場合として、主蒸気管24からの抽気を開始した場合を例にして説明したが、本発明にかかる制御方法が適用される場面は本実施の形態の内容に限定されるものではない。例えば主蒸気管24からの抽気中に、当該抽気量を急激に増加させ、それにより減温器28からの注水量が急激に増加した場合は、発電機12の発電量も急激に増加する。かかる場合、主蒸気加減弁25は発電量の増加を抑えるために急速に絞り込まれるが、このような場合は、発電機12の発電量の変化幅が小さい場合であっても主蒸気管24の圧力に大きな影響を与える。また、減温器28からの注水量が急激に減少した場合も、主蒸気加減弁25は急速に開方向に操作されるので、やはり主蒸気管24の圧力に大きな影響がある。したがって本発明は、減温器28からの注水を行っている間に注水量が急激に変化した際に、注水量の変化に合わせて再熱蒸気抽気弁61の開度を調整することで主蒸気管13の圧力変動を抑える場合にも用いることができる。
【0041】
なお、減温器28からの注水量の変化速度が遅く、ボイラ10の負荷変化により主蒸気管24の圧力変動を抑えることができる場合には、必ずしも再熱蒸気抽気系統50からの抽気を行う必要がない。かかる場合、例えば制御装置4により注水量の変化率を監視し、変化率が所定の値を上回った場合にのみ再熱蒸気抽気弁61を操作するようにしてもよい。注水量の変化率は、注水制御弁34の開度の変化率により求めてもよいし、例えば注水制御弁34の上流側に流量検出機構を設け、その検出値の変化率により求めてもよい。
【0042】
なお、以上の実施の形態における再熱蒸気抽気系統50は、再熱蒸気の抽気を行うことで、再熱蒸気系統14への注水に伴う発電機12の発電量増加を抑えるために用いられたが、例えば、再熱蒸気の抽気中に発電機12の発電量増加の要求があった場合に、再熱蒸気抽気弁61を閉操作することで低圧タービン16への蒸気の流入量を増加させ、それにより発電機12の発電量を増加させるように用いることもできる。かかる場合、ボイラ10への燃料供給量を増加させることなく発電機12の発電量を増加させることができる。
【0043】
また、以上の実施の形態においては、再熱器27の温度が上昇して減温器28による注水が起こる場合として、主蒸気管24からの抽気量を増加させた場合を例にして説明を行なったが、例えば主蒸気管24からの抽気量を一定に保った状態から、主蒸気流量を低下させた場合などにも、ボイラ102への燃料供給量に対する再熱器27を通過する蒸気量が相対的に減少し、再熱器27の温度上昇が起こるので、かかる場合においても、再熱蒸気抽気系統50から再熱蒸気を抽気することで、ボイラ10の圧力変動を抑制することができる。即ち、本実施の形態にかかる蒸気供給システム5は、減温器28による注水の発生原因によらず、ボイラ10の圧力変動を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、ボイラタービン発電設備から工場設備へプロセス用蒸気を供給する際に有用である。
【符号の説明】
【0045】
1 ボイラタービン発電設備
2 工場設備
3 蒸気供給系統
4 制御装置
5 蒸気供給システム
10 ボイラ
11 タービン
12 発電機
13 主蒸気系統
14 再熱蒸気系統
15 高圧タービン
16 低圧タービン
20 給水管
21 蒸発器
22 過熱器
23 減温器
24 主蒸気管
25 主蒸気加減弁
26 温度・圧力検出機構
27 再熱器
28 減温器
29 再熱蒸気管
30 温度・圧力検出機構
31 復水器
32 給水ポンプ
33、34 注水制御弁
40 抽気管
41 抽気弁
50 再熱蒸気抽気系統
60 再熱蒸気抽気管
61 再熱蒸気抽気弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主蒸気系統と再熱蒸気系統を有するボイラと、前記ボイラで発生した蒸気の熱エネルギーを回転エネルギーに変換するタービンと、前記タービンの回転エネルギーを電力に変換する発電機とを備えたボイラタービン発電設備を用い、
前記主蒸気系統からの蒸気(以下、「主蒸気」という。)はタービンに送られその一部を抽気して工場設備へプロセス用蒸気を供給する蒸気供給系統と、
前記再熱蒸気系統からの蒸気はタービンに送られその一部を抽気して前記工場設備に供給する再熱蒸気抽気系統と、
を有する蒸気供給システムの制御方法であって、
前記再熱蒸気系統は、再熱器と、当該再熱器と前記タービンとを接続する再熱蒸気管と、当該再熱蒸気管における再熱器の上流側に設けられた減温器と、減温器に注水する注水制御弁を備え、
前記蒸気供給系統は、前記ボイラから発生した主蒸気の一部を主蒸気管から取り出して蒸気の使用先へ供給する主蒸気抽気管と、前記主蒸気抽気管に設けられた主蒸気抽気弁とを備え、
前記再熱蒸気抽気系統は、前記再熱蒸気管における前記再熱器の下流側であって、且つタービンの上流側に接続された再熱蒸気抽気管と、前記再熱蒸気抽気管に設けられた再熱蒸気抽気弁とを有し、
前記主蒸気抽気弁が開かれて工場設備へ蒸気が供給され、注水制御弁が開かれて前記減温器から前記再熱蒸気管に注水が行われた場合に、前記再熱蒸気抽気弁を開いて前記再熱蒸気管から蒸気を工場設備に供給することを特徴とする蒸気供給システムの制御方法。
【請求項2】
前記再熱蒸気抽気弁の開度は、前記減温器への注水量に基づいて決定されることを特徴とする、請求項1に記載の蒸気供給システムの制御方法。
【請求項3】
前記再熱蒸気抽気弁の開度は、前記再熱蒸気管における前記再熱器の下流側であって、且つタービンの上流側に設置された圧力検出機構により計測された圧力に基づいて決定されることを特徴とする請求項1に記載の蒸気供給システムの制御方法。
【請求項4】
主蒸気系統と再熱蒸気系統を有するボイラと、前記ボイラで発生した蒸気の熱エネルギーを回転エネルギーに変換するタービンと、前記タービンの回転エネルギーを電力に変換する発電機とを備えたボイラタービン発電設備を用い、
前記主蒸気系統からの蒸気(以下、「主蒸気」という。)はタービンに送られその一部を抽気して工場設備へプロセス用蒸気を供給する蒸気供給系統と、
前記再熱蒸気系統からの蒸気はタービンに送られその一部を抽気して前記工場設備に供給する再熱蒸気抽気系統と、
を有する蒸気供給システムであって、
前記再熱蒸気系統は、再熱器と、当該再熱器と前記タービンとを接続する再熱蒸気管と、当該再熱蒸気管における再熱器の上流側に設けられた減温器と、減温器に注水する注水制御弁を備え、
前記蒸気供給系統は、前記ボイラから発生した主蒸気の一部を主蒸気管から取り出して蒸気の使用先へ供給する主蒸気抽気管と、前記主蒸気抽気管に設けられた主蒸気抽気弁とを備え、
前記再熱蒸気抽気系統は、前記再熱蒸気管における前記再熱器の下流側であって、且つタービンの上流側に接続された再熱蒸気抽気管と、前記再熱蒸気抽気管に設けられた再熱蒸気抽気弁とを有することを特徴とする蒸気供給システム。
【請求項5】
前記蒸気供給システムはさらに制御装置を有し、該制御装置は、前記主蒸気抽気弁が開かれて工場設備へ蒸気が供給され、注水制御弁が開かれて前記減温器から前記再熱蒸気管に注水が行われた場合に、前記再熱蒸気抽気弁を開いて前記再熱蒸気管から蒸気を工場設備に供給することを特徴とする請求項4に記載の蒸気供給システム。
【請求項6】
前記再熱蒸気抽気弁の開度は、前記減温器への注水量に基づいて決定されることを特徴とする、請求項5に記載の蒸気供給システム。
【請求項7】
前記再熱蒸気抽気弁の開度は、前記再熱蒸気管における前記再熱器の下流側であって、且つタービンの上流側に設置された圧力検出機構により計測された圧力に基づいて決定されることを特徴とする請求項5に記載の蒸気供給システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−233679(P2012−233679A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−19912(P2012−19912)
【出願日】平成24年2月1日(2012.2.1)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【出願人】(595060306)戸畑共同火力株式会社 (3)
【Fターム(参考)】