説明

蒸気加熱装置

【課題】 熱交換容器の熱交換面が水平状の場合であっても、蒸気による加熱温度ムラを発生することのない蒸気加熱装置を得ること。
【解決手段】 熱交換容器1に制御弁7を介して加熱流体供給管3を接続する。加熱流体供給管3の複数の熱交換容器1側端部23を、水平状の熱交換面2とは反対側の底面20に向けて開口する。熱交換容器1の上面に熱交換面2を配置する。複数の熱交換容器1側端部23と熱交換面2の間に、多孔質部材19を取り付ける。熱交換容器1の底面20を、管路8を介して吸引手段6の吸引室10と接続する。
加熱流体供給管3の熱交換容器1側端部23から供給される蒸気は、熱交換容器1内へ分散して供給されることで、温度ムラなく蒸気加熱することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換容器の内部を減圧状態にして、被熱交換物を加熱する蒸気加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蒸気加熱装置は、反応釜の加熱及び冷却用流体室に加熱用蒸気と、ポンプ装置の吐出水の一部とを切り換え供給できるように供給路と弁手段を設けたもので、加熱から冷却あるいは冷却から加熱への切換え時に、温度変化をなだらかなものとすることができるものである。
【0003】
上記従来の蒸気加熱装置では、熱交換容器の熱交換面に蒸気による加熱温度ムラを発生する問題、特に、熱交換容器の熱交換面が水平状である場合に、加熱温度ムラを発生してしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−315336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、熱交換容器の熱交換面が水平状の場合であっても、蒸気による加熱温度ムラを発生することのない蒸気加熱装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、熱交換容器へ弁を介して加熱用の流体を供給する加熱流体供給管を接続すると共に、熱交換容器の内部を減圧状態に維持する吸引手段を接続して、熱交換容器の被熱交換物を加熱するものにおいて、加熱用の流体を蒸気とすると共に、熱交換容器を平板状として、この平板状熱交換容器の上端面に水平状に熱交換面を形成し、加熱流体供給管の複数の熱交換容器側端部を、水平状の熱交換面とは反対側に開口して、複数の熱交換容器側端部と熱交換面との間に、多数の貫通孔を有する多孔質部材を取り付けたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、熱交換容器を平板状として、加熱流体供給管の複数の熱交換容器側端部を、水平状の熱交換面とは反対側に開口したことにより、加熱流体供給管から熱交換容器へ供給される蒸気は、平板状の熱交換容器の底面に向けて供給され、この底面に一旦衝突した後に、熱交換容器内へ分散して供給されることにより、熱交換面の全体を均一に加熱することができる。複数の熱交換容器側端部と熱交換面との間に多孔質部材を取り付けたことにより、熱交換容器内の蒸気を更に均一に分散することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る蒸気加熱装置の実施例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、加熱流体供給管の複数の熱交換容器側端部を、水平状の熱交換面とは反対側に開口するものであるが、開口する位置は、熱交換容器の形状に応じて適宜選定することができる。
【実施例】
【0010】
図1において、円筒状で平板状の熱交換容器1と、この熱交換容器1の上端面に水平状に形成した熱交換面2と、熱交換容器1の内部へ蒸気を供給する加熱流体供給管3、及び、熱交換容器1の下方に連通した吸引手段6とで蒸気加熱装置を構成する。
【0011】
加熱流体供給管3には、熱交換容器1へ供給する蒸気の量を制御するための制御弁7を取り付ける。加熱流体供給管3の複数の熱交換容器1側端部23を、水平状の熱交換面2とは反対側の底面20に向けて開口する。複数の熱交換容器1側端部23と熱交換面2との間に、多数の貫通孔を有する平板状の多孔質部材19を取り付ける。この複数の熱交換容器1側端部23から、熱交換容器1の底面20へ向けて蒸気が供給され、更に、多孔質部材19を通過することで、熱交換容器1内へ分散して蒸気が供給されるものである。
【0012】
熱交換容器1に冷却水を供給する冷却水供給管5を接続して、熱交換容器1を冷却することもできるようにする。冷却水供給管5の下端は吸引手段6の一部と接続する。冷却水供給管5には、水エゼクタ11と自動弁12を介在して、熱交換容器1の内部と接続する。自動弁12が開弁することにより、熱交換容器1の内部へ冷却水が供給されるものである。冷却水供給管5の熱交換容器1側端部21には、冷却水を熱交換面2側へ噴射することのできる噴射ノズルを取り付けることが望ましい。
【0013】
冷却水供給管5に取り付けた水エゼクタ11の吸込室には蒸気供給管16を接続する。水エゼクタ11内を流下する冷却水に、蒸気供給管16から加熱用の蒸気を供給することで、熱交換容器1へ供給する冷却水の温度を調節することができるものである。
【0014】
冷却水供給管5に取り付けた自動弁12と並列に、冷却水循環弁18を取り付ける。冷却水循環弁18は、熱交換容器1を冷却する場合に常時、微少開弁しておき、自動弁12が閉弁しても、少しの冷却水を熱交換容器1内へ供給して、冷却水の一部を絶えず循環するものである。
【0015】
熱交換容器1の円弧状の底面20から管路8によりスチームトラップ4の入口側と接続する。スチームトラップ4と並列に開閉弁9を取り付ける。スチームトラップ4と開閉弁9の出口側は、吸引手段6を構成する液体エゼクタ13の吸込室10と接続する。
【0016】
吸引手段6を、液体エゼクタ13と冷却水タンク14と循環ポンプ15とで構成する。循環ポンプ15の駆動によって、冷却水タンク14内の冷却水を液体エゼクタ13へ供給して吸込室10で所定の吸引力を発生すると共に、冷却水供給管5から熱交換容器1へ冷却水を供給するものである。
【0017】
冷却水タンク14の上部に、冷却水補給管30を接続すると共に、循環ポンプ15の吐出側の管路を分岐して余剰水排出管17を接続する。
【0018】
熱交換面2を加熱する場合は、加熱流体供給管3と制御弁7から熱交換容器1内へ所定量の蒸気を供給することによって、蒸気によって加熱される。加熱流体供給管3の複数の熱交換容器1側端部23を、水平状の熱交換面2とは反対側の底面20に向けて開口すると共に、多孔質部材19を取り付けたことで、熱交換容器1内へ分散して蒸気が供給され、加熱温度ムラを防止して、熱交換面2の全体を均一に加熱することができる。
加熱により蒸気の凝縮した復水は、熱交換容器1下端の管路8からスチームトラップ4を通り、更に、液体エゼクタ13から冷却水タンク14へと至る。
【0019】
一方、熱交換面2を冷却する場合は、冷却水供給管5の自動弁12を開弁して熱交換面2の底面へ冷却水を供給することによって、熱交換面2の熱により冷却水が蒸発気化して、その蒸発潜熱でもって冷却することで、冷却効率を向上することができる。
気化した蒸気と、気化し切れなかった冷却水は、管路8から開閉弁9を通り、更に、液体エゼクタ13から冷却水タンク14へと至る。
【産業上の利用可能性】
【0020】
間接的な加熱を行うさまざまな蒸気加熱装置として適用できる。
【符号の説明】
【0021】
1 熱交換容器
2 熱交換面
3 加熱流体供給管
5 冷却水供給管
6 吸引手段
7 制御弁
10 吸込室
13 液体エゼクタ
14 冷却水タンク
15 循環ポンプ
19 多孔質部材
23 熱交換容器側端部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換容器へ弁を介して加熱用の流体を供給する加熱流体供給管を接続すると共に、熱交換容器の内部を減圧状態に維持する吸引手段を接続して、熱交換容器の被熱交換物を加熱するものにおいて、加熱用の流体を蒸気とすると共に、熱交換容器を平板状として、この平板状熱交換容器の上端面に水平状に熱交換面を形成し、加熱流体供給管の複数の熱交換容器側端部を、水平状の熱交換面とは反対側に開口して、複数の熱交換容器側端部と熱交換面との間に、多数の貫通孔を有する多孔質部材を取り付けたことを特徴とする蒸気加熱装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−62598(P2011−62598A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213179(P2009−213179)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000133733)株式会社テイエルブイ (913)
【Fターム(参考)】