説明

蒸気噴出装置およびその製造方法

【課題】被処理物に水が付着することを抑えることができる蒸気噴出装置を提供する。
【解決手段】蒸気噴出装置3は、蒸気供給源から供給された蒸気を流動させる共通流動部31と、共通流動部の前記蒸気を分流する分流流動部32とを備え、分流流動部32の末端に形成した蒸気噴出部32dから被処理物(繊維不織布)に蒸気を噴出する。繊維不織布の上方に蒸気噴出装置3を配置する場合には、共通流動部31の最下側部31dが蒸気から凝縮した水を溜める溜水部として機能する一方、繊維不織布の下方に蒸気噴出装置3を配置する場合には、共通流動部31の最上側部31uが蒸気から凝縮した水を溜める溜水部として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば蒸気によって繊維を絡ませた交絡繊維不織布の製造や、上下方向の厚さを薄くした芯材を備える複合体を処理する処理装置に用いる蒸気を噴出する蒸気噴出装置、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蒸気供給源から供給された蒸気を流動させる共通流動部と、共通流動部の蒸気を分流する分流流動部とを備え、分流流動部の末端に形成した蒸気噴出部から繊維ウエブ(被処理物)に蒸気を噴出する蒸気噴出装置は公知である。
例えば特許文献1には、以下のような蒸気噴出装置(加圧蒸気噴出ノズル)に係る技術が開示されている。
(1)円筒状の共通流動部(ノズルホルダー)を水平方向に延在するよう配置する(特許文献1(図1)参照)。この共通流動部の下端部には、水平方向に延在する長孔(スリット状開口)を形成する。
(2)上下方向に延在し、この延在方向に直交する断面形状が円形の孔である分流流動部(貫通孔)を直方体状の材料(第1ノズルプレート支持部材)に複数形成し、各分流流動部の上端部が、前記長孔を通じて共通流動部にそれぞれ通じるよう直方体状の材料を前記円筒状の共通流動部に接続する(特許文献1(図3)参照)。
(3)各分流流動部の末端には、蒸気を噴出する蒸気噴出部(ノズル孔)を形成する(特許文献1(図4)参照)。
(4)繊維ウエブの上方に蒸気噴出装置を配置し、蒸気噴出部から下方の繊維ウエブに蒸気を噴出することによって、繊維ウエブの熱可塑性繊維を互いに溶着させ、繊維どうしを絡ませた交絡繊維不織布を製造する(特許文献1(図17、18)参照)。
【0003】
また、特許文献1には、前記蒸気噴出装置を繊維ウエブの下方に配置し、蒸気を吸引するサクションボックスを繊維ウエブの上方に配置し、蒸気噴出部から上方の繊維ウエブに蒸気を噴出することも開示されている(特許文献1(第20頁、図20)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−238785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
過熱蒸気や飽和蒸気等の蒸気は、熱エネルギーを失った場合、凝縮して水となる。前記蒸気を用いて被処理物を処理する技術において、蒸気噴出装置を繊維ウエブの上方に配置した場合には、共通流動部において凝縮した水が重力の作用で分流流動部に流れ、蒸気とともに水が蒸気噴出部から噴出される。この蒸気噴出部から噴射された水は繊維ウエブに付着する。この水は繊維ウエブを通過する蒸気の妨げとなる。蒸気が繊維ウエブを通過した個所は、繊維が絡む一方、蒸気が繊維ウエブを通過しなかった個所は繊維が充分に絡まず、繊維の絡み具合が不均一となって、交絡繊維不織布の品質が低下するおそれがある。加えて、交絡繊維不織布を乾燥させる工程が必要となる問題もある。
【0006】
そこで、この発明では、被処理物に水が付着することを抑えることができる蒸気噴出装置を提供することを課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するためこの発明は、蒸気噴出装置に係る第1発明と、その蒸気噴出装置の製造方法に係る第2発明とを含んでいる。
【0008】
この発明のうち第1発明が対象とするのは、蒸気供給源から供給された蒸気を流動させる共通流動部と、前記共通流動部の前記蒸気を分流する分流流動部とを備え、前記分流流動部の末端に形成した蒸気噴出部から被処理物に前記蒸気を噴出する蒸気噴出装置である。
【0009】
かかる蒸気噴出装置において第1発明が特徴とするところは、蒸気から凝縮した水を溜める溜水部が前記共通流動部に設けられていることにある。
【0010】
第1発明の実施形態の一つにおいて、前記共通流動部は、水平方向に延在するよう形成したものであり、前記共通流動部の延在方向と直交する横断面において、前記共通流動部の最上側部に対する水平な接線と、最下側部に対する水平な接線との間において前記分流流動部と前記共通流動部とが通じている。
【0011】
第1発明の実施形態の他の一つにおいて、前記分流流動部と前記共通流動部とは、前記横断面における下半分よりも上方で通じている。
【0012】
第1発明の実施形態の他の一つにおいて、前記共通流動部は、前記横断面において、前記共通流動部の延在方向と上下方向とにそれぞれ直交する方向における寸法が下方に行くに従い徐々に狭くなるよう形成してある。
【0013】
第1発明の実施形態の他の一つにおいて、前記分流流動部が前記共通流動部に通じる個所には筒状部を形成してあり、前記筒状部を、前記横断面において前記共通流動部の周面の外方から内方に突き入れてある。
【0014】
第1発明の実施形態の他の一つにおいて、前記分流流動部は、曲部を1つだけ有している。
【0015】
第1発明の実施形態の他の一つにおいて、前記共通流動部には、前記横断面において上部側と下部側とを仕切る仕切部を設けてあり、仕切部を設けた上方において、分流流動部が共通流動部に通じている。
【0016】
第1発明の実施形態の他の一つにおいて、前記共通流動部及び前記分流流動部の一部を含み、かつ互いに直交する上下方向と横断方向と前後方向とを含む直方体状の第1ブロック体と、前記分流流動部の一部及び前記蒸気噴出部を含む第2ブロック体とを有し、前記第1ブロック体は、前記横断方向における第1側壁部から第2側壁部に至り、前記横断方向に延在する前記共通流動部と、前記共通流動部から前記前後方向のいずれか一方に延在し、前記分流流動部の一部を形成する第1形成路と、前記第1形成路から前記上下方向における下方の端部に至り、前記上下方向に延在し、かつ前記分流流動部の一部を形成する第2形成路とを含む。
【0017】
第2発明が対象とするところは、前記蒸気噴出装置の製造方法であって、その製造方法に下記工程が含まれる;
(a)直方体状の前記第1ブロック体を前記横断方向における第1側壁部から第2側壁部に至るまで前記横断方向に穿孔することにより前記共通流動部を形成する工程;
(b)前記第1ブロック体を前記前後方向における一方の側壁部から前記共通流動部に至るまで前記前後方向のいずれか一方に穿孔する工程;
(c)前記前後方向に延在する孔において、前記一方の側壁部を閉塞部材で閉塞することにより前記第1形成路を形成する工程;及び
(d)前記第1ブロック体を前記上下方向における下方の端部から前記第1形成路に至るまで前記上下方向の上方に穿孔することにより前記第2形成路を形成する工程。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係る蒸気噴出装置では、蒸気から凝縮した水を溜める溜水部が共通流動部に設けられているため、共通流動部で蒸気から水を分離することができる。従って、被処理物に水が付着することを抑えることができる蒸気噴出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】蒸気噴出装置を有する処理装置の部分図。
【図2】蒸気噴出装置の全体概略側面図。
【図3】第1ブロック体の斜視図。
【図4】蒸気噴出装置の横断面図。
【図5】第2ブロック体の斜視図。
【図6】蒸気噴出装置で処理される複合体の斜視図。
【図7】実施形態の他の一例を示す蒸気噴出装置の横断面図。
【図8】実施形態のさらに他の一例を示す蒸気噴出装置の横断面図。
【図9】実施形態のさらに他の一例を示す蒸気噴出装置の横断面図。
【図10】実施形態のさらに他の一例を示す蒸気噴出装置の横断面図。
【図11】実施形態のさらに他の一例を示す蒸気噴出装置の横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付図面を参照して、この発明に係る蒸気噴出装置及びその製造方法の詳細を説明すると、以下の通りである。図中、MDは機械方向、CDは機械方向MDと直交する交差(横断)方向、Vは垂直(上下)方向をそれぞれ示す。なお、機械方向MDと、これに反対の方向とを前後方向と言う。
【0021】
図1は、蒸気噴出装置3を用いて繊維どうしを絡めた交絡繊維不織布(被処理物)の製造や、上下方向の厚さを薄くした綿状パルプ繊維と超吸収ポリマ粒子との混合物を含む芯材を備える複合体(被処理物)を処理する処理装置1の部分図である。処理装置1は、例えば繊維不織布等の被処理物100を搬送する搬送手段2と、蒸気を噴出する蒸気噴出装置3と、蒸気噴出装置3から噴出された蒸気を吸引する蒸気吸引装置4とを備えている。
搬送手段2は、搬送する被処理物100を協働して挟持し、上方に配置する第1挟持手段21と、下方に配置する第2挟持手段22とを含んでいる。
第1挟持手段21は、例えば、金属製の針金をメッシュ状に編んで形成された、所要の開口率を有する周知のエンドレスベルトである。この第1挟持手段21は、例えば、複数の回転ローラ(不図示)に掛け回されており、図1に示す機械方向MDへ向けて走行する。この第1挟持手段21の上部には、被処理物100、例えば繊維どうしが交絡又は結合していない繊維ウエブや、繊維どうしが交絡又は結合している繊維不織布等が置かれる。繊維不織布は、例えば、熱可塑性合成樹脂の繊維によって形成されている。
第2挟持手段22は、例えば、金属製の針金をメッシュ状に編んで形成された、所要の開口率を有する周知のエンドレスベルトである。この第2挟持手段22は、例えば複数の回転ローラ(不図示)に掛け回されており、第1挟持手段21と協働して被処理物100を挟持している。これによって第1挟持手段21の走行とともに、被処理物100及び第2挟持手段22も図1に示す機械方向MDへ向けて移動する。
【0022】
図2は、処理装置1の全体概略側面図である。処理装置1は、過熱蒸気を供給する蒸気供給源11と、蒸気供給源11から供給される蒸気を有効利用するため蒸気噴出装置3を通過する主経路12Mと、主経路12Mの途中において蒸気噴出装置3よりも上流に設けられたバイパス弁13と、バイパス弁13によって主経路12Mから分岐し、蒸気噴出装置3を通過した後に主経路12Mに合流して蒸気噴出装置3を迂回するバイパス経路12Bと、主経路12Mの途中に設けられ、蒸気が熱エネルギーを失うことで凝縮した水等を溜めるドレンタンク14とを含んでいる。
ドレンタンク14は、蒸気噴出装置3の下流側であって、主経路12Mにバイパス経路12Bが合流する個所よりもさらに下流側に配置してある。このドレンタンク14の底には、ドレンタンク14の内部に溜めた水を排出する排出管14Pを設けてある。また、この排出管14Pの途中には排出弁14Vを設けてある。この排出弁14Vは、通常、ドレンタンク14の内部の水が排出管14Pを通じて排出されることを防止するため閉じている一方、ドレンタンク14の内部に予め設定された所定量の水が溜まった場合には開き、ドレンタンク14の内部に溜まった水を排出するものである。
【0023】
蒸気噴出装置3は、主経路12Mの一部を成す共通流動部31と、この共通流動部31から分流する分流流動部32とを備えている。共通流動部31の延在方向を横断方向CDに合致させた場合、この蒸気噴出装置3には、横断方向CDに中心間距離aをとって7つの分流流動部32を設けてある。各分流流動部32は、第1形成路32aと第2形成路32bと第3形成路32cと蒸気噴出部32dとでそれぞれ形成してある。
また、この蒸気噴出装置3は、例えば、ステンレス等の金属材料でそれぞれ形成し、上方に配置する第1ブロック体33と、下方に配置する第2ブロック体34とを含んでいる。第1ブロック体33及び第2ブロック体34は、図3及び図5にそれぞれ示すように、その上下方向Vと、横断方向CDと、前後方向とを有し、直方体状に形成してある。
【0024】
第1ブロック体33には、図3に示すように共通流動部31を形成してある。共通流動部31は、水平方向である横断方向CDに延在している。より具体的には、共通流動部31は、図3及び図4に示すように、延在方向である横断方向CDと直交する横断面が円形を成し、第1ブロック体33の横断方向CDにおける第1側壁部(図3中の右方側壁部)33mから第2側壁部(図3中の左方側壁部)33nに至り、第1ブロック体33を横断方向CDに貫通する長孔である。この共通流動部31には、蒸気供給源11から供給された蒸気が流動する。
第1ブロック体33には、複数の第1形成路32aを形成してある。この第1形成路32aは、前後方向と直交する断面が円形を成し、共通流動部31から機械方向MDの反対方向へ延在する長孔である。この第1形成路32aは、蒸気供給源11から供給された蒸気を共通流動部31から分流する部分であって、分流流動部32の最も上部側に配置された部分である。
また、図4に示すように、前記横断面において、共通流動部31の最上側部31uに対する水平な接線L1と、最下側部31dに対する水平な接線L2との間において、各第1形成路32aと共通流動部31とがそれぞれ通じている。さらに、共通流動部31は、共通流動部31と各第1形成路32aとがそれぞれ通じた連通個所の下方に、共通流動部31と各第1形成路32aとが非連通である下方周面31Rdを含み、かつ連通個所の上方にも、共通流動部31と各第1形成路32aとが非連通である上方周面31Ruを含んでいる。加えて、各第1形成路32aと共通流動部31とは、前記横断面において共通流動部31を二等分する中央線P−Pよりも上方でそれぞれ通じている。換言すれば、第1形成路32aと共通流動部31とは、前記横断面における下半分よりも上方でそれぞれ通じている。
第1ブロック体33には、第2形成路32bを形成してある。この第2形成路32bは、上下方向Vに直交する断面が円形を成し、第1形成路32aから上下方向Vにおける第1ブロック体33の下方の底壁部33pに至り、上下方向Vへ延在する長孔である。図4からも明らかなように、第1形成路32aと第2形成路32bとはL字状に通じている。
【0025】
このような第1ブロック体33は、例えば、以下の工程により製造される。
(a)先ず、第1ブロック体33を横断方向CDにおける第1側壁部(図3中の右方側壁部)33mから第2側壁部(図3中の左方側壁部)33nに至るまで横断方向CDに穿孔することにより共通流動部31を形成する。
(b)次に、第1ブロック体33を機械方向MDの上流側(前後方向の後方側)の第3側壁部33qから共通流動部31に至るまで機械方向MDの下流側(前後方向の前方側)に穿孔することにより、前後方向に延在する長孔を形成する。この動作を繰り返すことによって、この例では前後方向に延在する長孔を全部で7つ形成する。
(c)次に、前後方向に延在する各孔の上流側の第3側壁部33qを閉塞部材33aでそれぞれ閉塞することにより第1形成路32aを形成する。
(d)次に、第1ブロック体33を上下方向Vにおける下方の底壁部33pから第1形成路32aに至るまで上下方向Vの上方に穿孔することにより第2形成路32bを形成する。この動作を繰り返すことによって、この例では第2形成路32bを全部で7つ形成する。
このように共通流動部31、第1形成路32a、及び第2形成路32bをそれぞれ直線状に形成するため、これら共通流動部31、及び形成路32a、32bを容易に製造することができる。
【0026】
また、図2に示すように、前後方向における共通流動部31の両端部の内周面には雌ネジ31aをそれぞれ形成してある。各雌ネジ31aは、図2において仮想線で示すパイプ12M1の一方の端部の外周面に形成した雄ネジ(不図示)に螺合する。パイプ12M1は、主経路12Mの一部を形成するものである。この共通流動部31の雌ネジ31aにパイプ12M1の雄ネジをねじ込むことにより、第1ブロック体33にパイプ12M1を取り付けたとき、パイプ12M1の内周面の表面と、共通流動部31の内周面の表面とを合致させれば、第1ブロック体33とパイプ12M1との接合個所において、蒸気の流れに損失が発生することを防止できる。
【0027】
また、図2、図3、及び図4に示すように、第1ブロック体33の底壁部33pには、下面から上方に向けて凹み、第1ブロック体33の底壁部33pにおいて、7つの第2形成路32bの下端部の周囲の全体を囲む溝33bを形成してある。この溝33bにはO−リング33cを嵌めることにより、第1ブロック体33と第2ブロック体34との間から蒸気が漏れることを防止できる。
さらに、第1ブロック体33の底壁部33pには、図3及び図4に示すように、下面から上方に向けて凹むネジ孔33dを設けてある。このネジ孔33dは、第1ブロック体33の底壁部33pの縁に沿って所定のピッチ間隔で複数形成してある。このネジ孔33dは、第1ブロック体33の底壁部33pにおいて、第2形成路32bの周面に対して前記溝33bを設けた部位よりもさら外方に形成してある。また、このネジ孔33dの内周面には雌ネジ(不図示)を設けてある。
【0028】
このような第1ブロック体33に対して第2ブロック体34は、図1、図2、及び図4に示すように、その前後方向と横断方向CDとにおける縦横の大きさが、第1ブロック体33における前後方向と横断方向CDとの縦横の大きさと同一である。
また、この第2ブロック体34は、図4に示すように、前後方向において第2ブロック体34を二等分する二等分線Q−Qに対して対称である。また、第2ブロック体34は、上面が平坦である一方、下面には隆起部34aを設けてある。この隆起部34aは、前後方向において、前後方向における前方側及び後方側の双方から上記二等分線Q−Qに向けて徐々に下方に向けて隆起し、横断方向CDにおいて、図2に示すように、左方縁部及び右方縁部を除いた中央部が下方へ向けて隆起している。
【0029】
第2ブロック体34には、図5に示すように、第3形成路32cと、蒸気噴出部32dとを形成してある。
第3形成路32cは、第2ブロック体34において上面から下方へ向けて凹むように形成された凹部である。この第3形成路32cにおいて、第2ブロック体34の上面における横断方向CDの寸法b1は、図2に示すように、横断方向CDにおける最も右方に形成された第2形成路32bの端から最も左方に形成された第2形成路32bの端までの寸法b2よりも大きく、第2ブロック体34の上面における前後方向の寸法は、図4に示すように、第2形成路32bの寸法とほぼ同一であり、上下方向Vにおいて、各第2形成路32bが第3形成路32cにそれぞれ通じている。換言すれば、蒸気供給源11を上流側とし、ドレンタンク14を下流側とする蒸気の流れ方向に沿って説明すれば、上流側の第2形成路32bを、下流側の第3形成路32cに直線的に接続している。
蒸気噴出部32dは、蒸気を噴出する部分であって、凹部である第3形成路32cの底に形成してある。蒸気噴出部32dは、第3形成路32cと、第2ブロック体34の隆起部34aの下方の空間とを連通するものであって、上下方向Vに直交する断面が円形を成し、上下方向Vに延在する孔である。この蒸気噴出部32dは、横断方向CDに沿って列状に並設してあるとともに、この列を前後方向において複数設けてあり、これらにより第3形成路32cの底の全域に一様に配置してある。すなわち、蒸気噴出部32bは、各分流流動部32の末端にそれぞれ形成してあり、蒸気の流れ方向に沿って第3形成路32cと蒸気噴出部32dとは上下方向において直線的に通じている。
【0030】
第2ブロック体34には、図4及び図5に示すように、第2ブロック体34を上下方向Vに貫通する貫通孔34cを形成してある。この貫通孔34cは、複数であって、これらは第2ブロック体34の上面及び下面の縁に沿って所定のピッチで形成してあり、かつ第1ブロック体33のネジ孔33dに合致するよう配置してある。また、第2ブロック体34の下面において、貫通孔34cを形成した個所には、第2ブロック体34の下面から上方へ向けて凹む凹部34dを形成してある。
【0031】
第1ブロック体33に第2ブロック体34を取り付ける場合、貫通孔34cとネジ孔33dとを合致させ、ネジ孔33dに形成した雌ネジ(不図示)に螺合する雄ネジを形成したボルト(図4において仮想線で示す)35の先端を貫通孔34cに挿通させてからネジ孔33dに入れて前記雄ネジと雌ネジとを螺合させる。このとき、ボルト35の頭部35aは凹部34dに嵌る。すなわち、凹部34dは、第2ブロック体34の下面からボルト35の頭部35aが突出することを防止する機能を有しており、図2に示すように、第2ブロック体34の下面に第2挟持手段22を接触させながら被処理物100を処理する際、第2挟持手段22にボルト35の頭部35aが引っ掛かることを防止できる。
【0032】
上記構成を有する第1ブロック体33及び第2ブロック体34を有する蒸気噴出装置3と蒸気吸引装置4とは、図1に示すように、それら装置3,4の間に搬送手段2を介在するように配置する。具体的には、蒸気吸引装置4で第1挟持手段21を支持するよう蒸気吸引装置4が第1挟持手段21の下部に接触する態様で配置する一方、蒸気噴出装置3を第2挟持手段22の上方において、蒸気噴出装置3の隆起部34aが第2挟持手段22の上部に接触するよう配置する。より詳細には、機械方向(前後方向)MDと、蒸気噴出部32dの並設方向である交差方向(横断方向)CDとが直交するよう蒸気噴出装置3を第2挟持手段22の上部に配置する。また、この蒸気噴出装置3を搬送手段2の上方に配置するとき、蒸気噴出装置3は、図2に示す共通流動部31において蒸気が凝縮した水が排出されるように蒸気供給源11に通じる図2中の右方側壁部(第2側壁部33n)を上方とし、ドレンタンク14に通じる図2中の左方側壁部(第1側壁部33m)を下方とするようわずかに傾斜した態様で配置する。このように傾斜させて蒸気噴出装置3を配置することで、蒸気の流れ方向と、水の排出方向とを一致させて水の排出を促進している。
【0033】
次に、処理装置1及び蒸気噴出装置3の作用を説明する。先ず、蒸気供給源11から供給された蒸気が蒸気噴出装置3を通過するようにバイパス弁13を切り換える。
その後、蒸気により蒸気噴出装置3が予め設定された所定温度以上となってから、図1に示すように、第1挟持手段21と第2挟持手段22とで被処理物100を挟持した状態で、第1挟持手段21を機械方向MDへ走行させる。
また、蒸気噴出装置3では、蒸気供給源11から供給された蒸気を、共通流動部31及び分流流動部32を通して蒸気噴出部32dから噴出させる。蒸気噴出装置3から噴出された蒸気は、第2挟持手段22を通過し、被処理物100を通過し、かつ第1挟持手段21を通過した後、蒸気吸引装置4に吸引される。蒸気が被処理物100を通過する際、蒸気が有する熱エネルギーによって被処理物100が繊維ウエブである場合、熱可塑性合成樹脂の繊維どうしが溶着し、これにより繊維どうしを絡めた交絡繊維不織布が形成される。このようにして形成された交絡繊維不織布は、適宜の形状にカットすることで、例えば、使い捨てのおむつや生理用ナプキンを例とする体液吸収性物品の透液性トップシートとして使用することができる。また、トップシートと吸液性の芯材とバックシートとを重ねたものを、第1挟持手段21と第2挟持手段22とで挟持した状態で、蒸気噴出部32dから蒸気を噴出させれば、図6に示すように、上下方向Vの厚さを薄くした吸液性の芯材91と、トップシート92と、バックシート93とを備える複合体90を処理することができる。
【0034】
また、共通流動部31から分流流動部32に至るまでに蒸気が凝縮した水は、図4に示す共通流動部31と各第1形成路32aとが非連通である共通流動部31の下方周面31Rdであって、共通流動部31の最下側部31dに溜まる。すなわち、共通流動部31の最下側部31dは、蒸気から凝縮した水を溜める溜水部として機能する。
この共通流動部31の最下側部31dに溜まった水は、図2に示す蒸気噴出装置3が傾斜していることによって、図2中の左方側壁部(第1側壁部33m)に流れ、主経路12Mの一部を通ってドレンタンク14に溜まる。
また、仮にこの蒸気噴出装置3を搬送手段2の下方において、上下を反対にして配置した場合でも、図4に示す共通流動部31と各第1形成路32aとが非連通である上方周面31Ruであって、共通流動部31の最上側部31uに水が溜まり、共通流動部31の最上側部31uが溜水部として機能する。
【0035】
かような蒸気噴出装置3によれば、被処理物100の上方に配置する場合、及び被処理物100の下方に配置する場合のいずれにおいても、蒸気から凝縮した水を溜める溜水部が共通流動部31に設けられているため、共通流動部31で蒸気から水を分離することができる。従って、蒸気噴出装置3を被処理物の上方及び下方のいずれに配置した場合でも、被処理物100に水が付着することを抑えることができる。
また、分流流動部32と共通流動部31とは、前記横断面における下半分よりも上方で通じているため、蒸気から凝縮した水が分流流動部32に入ることを確実に防止することができる。
また、分流流動部32において、図4に示すように、第1形成路32aと第2形成路32bとがL字状に通じているが、第1形成路32a、第2形成路32b、及び第3形成路32cは、直線状にそれぞれ形成してあり、かつ第2形成路32bと第3形成路32cとが直線的に通じており、かつ第3形成路32cと蒸気噴出部32dとが直線的に通じている。換言すれば、この分流流動部32は、曲部を1つだけ有しているため、曲部の数を可及的に少なくすることにより、熱エネルギーの損失を抑えることができる。
【0036】
なお、図1〜図5に示す形態は本発明に係る実施形態の一例であって、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。例えば、分流流動部32の個数は7つに限られず、適宜増減することができる。
また、共通流動部31には、蒸気が凝縮することを防止するため、蒸気を加熱する不図示のヒータを設けても良い。
さらに、第1ブロック体33を製造する工程において、(d)第1ブロック体33を上下方向Vにおける下方の底壁部33pから第1形成路32aに至るまで上下方向Vの上方に穿孔することにより第2形成路32bを形成した後、(c)前後方向の後方の第3側壁部33qの前記孔を閉塞部材33aでそれぞれ閉塞しても良い。
【0037】
また、共通流動部31の前記横断面の形状は適宜変更することができ、共通流動部31の他の実施形態を図7〜図11に示す。
図7に示す例では、共通流動部31は、前記横断面が、三角形状の孔を成すよう形成してある。より具体的には、共通流動部31は、前記横断面において、前後方向における寸法Wが下方に行くに従い徐々に狭くなる一方、上方に行くに従い徐々に広くなる三角形状の孔を成すよう形成してある。
このように、前記横断面において、共通流動部31を、共通流動部31の延在方向である横断方向CDと上下方向Vとにそれぞれ直交する前後方向における寸法Wが下方に行くに従い徐々に狭くなるよう形成すれば、共通流動部31の最下側部31dに、蒸気から凝縮した水を集めることができる。すなわち、この蒸気噴出装置3では、共通流動部31の最下側部31dが溜水部として機能する。
仮にこの蒸気噴出装置3を搬送手段2の下方において、上下を反対にして配置した場合でも、共通流動部31と各第1形成路32aとが非連通である最上側部31uに水が溜まり、この最上側部31uが溜水部として機能する。
なお、図示省略するが、共通流動部31は、前記横断面が四角形状を成すよう形成しても良いし、楕円形状を成すよう形成しても良い。もちろん、他の形状を成すよう形成しても良い。
また、共通流動部31は、前記横断面が、上述した四角形状、三角形状、楕円形状を適宜組み合わせた形状を成すよう形成しても良い。
【0038】
また、図8に示す例では、分流流動部32が共通流動部31に通じる個所には、筒状部33Tが形成してあり、筒状部33Tの上流側の先端部33T1を、前記横断面において共通流動部31の周面の外方から内方に突き入れてある。このように蒸気噴出装置3を形成すれば、筒状部33Tによって、蒸気から凝縮した水が、共通流動部31の内周面を伝って分流流動部32に入ることを防止することができる。従って、分流流動部32に水が入ることを確実に防止することができる。
【0039】
また、図9に示す例では、図8に示す例と同様、分流流動部32が共通流動部31に通じる個所に筒状部33Tを形成してあり、かつ上方から下方に延在する筒状部33Tの先端部33T1を、上方から下方に向けて共通流動部31の周面の外方から内方に突き入れてある。この蒸気噴出装置3では、共通流動部31の最下側部31dが溜水部として機能する。仮にこの蒸気噴出装置3を搬送手段2の下方において、上下を反対にして配置した場合、共通流動部31において、筒状部33Tの周面の外方であって、共通流動部31と第1形成路32aとが非連通である上方周面31Ruが溜水部として機能する。
【0040】
また、図10に示す例では、共通流動部31に、前記横断面において上部側と下部側とを仕切る仕切部36を設けてあり、仕切部36を設けた上方において、分流流動部32が共通流動部31に通じている。この仕切部36には、前後方向において、共通流動部31の内周面に接する側を上方とし、中央側を下方とする傾斜部36bを横断方向CDに延在するよう形成してある。また、この仕切部36には、前後方向の中央に切欠36aを形成してある。この切欠36aは、横断方向CDに所定の間隔で配置してある。
この蒸気噴出装置3では、蒸気が凝縮した水が共通流動部31の内周面に付着した場合、この水は、重力の作用によって共通流動部31の内周面の上方から下方に移動してから、傾斜部36bによって共通流動部31の最下側部31dに集められる。また、仕切部36により、水が集まる共通流動部31の下部側と、上部側とを分け、加えて仕切部36を設けた上方において、分流流動部32が共通流動部31に通じているため、水に接している蒸気が分流流動部32に入ることを抑えることができる。従って、飽和温度に近い蒸気が被処理物100に噴出されることを抑えることができる。
【0041】
さらに、図11に示す例では、上下方向に延在する第2形成路32bと第3形成路32cと蒸気噴出部32dとで分流流動部32を形成してあり、かつこの分流流動部32を共通流動部31の下方に設けてある。共通流動部31には、前記横断面において、第2形成路32bを設けた両側に、下方に向けて凹む凹部37をそれぞれ形成してある。この蒸気噴出装置3では、この凹部37が溜水部として機能する。仮にこの蒸気噴出装置3を搬送手段2の下方において、上下を反対にして配置した場合、共通流動部31における最上側部31uが溜水部として機能する。
【符号の説明】
【0042】
3 蒸気噴出装置
11 蒸気供給源
31 共通流動部
31b 最下側部(溜水部)
31u 最上側部(溜水部)
32 分流流動部
32a 第1形成路
32b 第2形成路
32d 蒸気噴出部
33 第1ブロック体
33a 閉塞部材
33T 筒状部
34 第2ブロック体
34a 隆起部
36 仕切部
90 複合体(被処理物)
100 被処理物
L1 最上側部に対する水平な接線
L2 最下側部に対する水平な接線
W 寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気供給源から供給された蒸気を流動させる共通流動部と、前記共通流動部の前記蒸気を分流する分流流動部とを備え、前記分流流動部の末端に形成した蒸気噴出部から被処理物に前記蒸気を噴出する蒸気噴出装置において、
蒸気から凝縮した水を溜める溜水部が前記共通流動部に設けられていることを特徴とする前記蒸気噴出装置。
【請求項2】
前記共通流動部は、水平方向に延在するよう形成したものであり、
前記共通流動部の延在方向と直交する横断面において、前記共通流動部の最上側部に対する水平な接線と、最下側部に対する水平な接線との間において前記分流流動部と前記共通流動部とが通じている請求項1記載の蒸気噴出装置。
【請求項3】
前記分流流動部と前記共通流動部とは、前記横断面における下半分よりも上方で通じている請求項2記載の蒸気噴出装置。
【請求項4】
前記共通流動部は、前記横断面において、前記共通流動部の延在方向と上下方向とにそれぞれ直交する方向における寸法が下方に行くに従い徐々に狭くなるよう形成してある請求項2又は3記載の蒸気噴出装置。
【請求項5】
前記分流流動部が前記共通流動部に通じる個所には筒状部を形成してあり、
前記筒状部を、前記横断面において前記共通流動部の周面の外方から内方に突き入れてある請求項2〜4のいずれかに記載の蒸気噴出装置。
【請求項6】
前記分流流動部は、曲部を1つだけ有している請求項1〜5のいずれかに記載の蒸気噴出装置。
【請求項7】
前記共通流動部には、前記横断面において上部側と下部側とを仕切る仕切部を設けてあり、
仕切部を設けた上方において、分流流動部が共通流動部に通じている請求項2〜6のいずれかに記載の蒸気噴出装置。
【請求項8】
前記共通流動部及び前記分流流動部の一部を含み、かつ互いに直交する上下方向と横断方向と前後方向とを含む直方体状の第1ブロック体と、
前記分流流動部の一部及び前記蒸気噴出部を含む第2ブロック体とを有し、
前記第1ブロック体は、
前記横断方向における第1側壁部から第2側壁部に至り、前記横断方向に延在する前記共通流動部と、
前記共通流動部から前記前後方向のいずれか一方に延在し、前記分流流動部の一部を形成する第1形成路と、
前記第1形成路から前記上下方向における下方の底壁部に至り、前記上下方向に延在し、かつ前記分流流動部の一部を形成する第2形成路と、
を含む請求項2、3、6、7のいずれかに記載の蒸気噴出装置。
【請求項9】
請求項8記載の蒸気噴出装置の製造方法であって、下記工程を含むことを特徴とする前記製造方法;
(a)直方体状の前記第1ブロック体を前記横断方向における第1側壁部から第2側壁部に至るまで前記横断方向に穿孔することにより前記共通流動部を形成する工程;
(b)前記第1ブロック体を前記前後方向における一方の側壁部から前記共通流動部に至るまで前記前後方向のいずれか一方に穿孔する工程;
(c)前記前後方向に延在する孔において、前記一方の側壁部を閉塞部材で閉塞することにより前記第1形成路を形成する工程;及び
(d)前記第1ブロック体を前記上下方向における下方の底壁部から前記第1形成路に至るまで前記上下方向の上方に穿孔することにより前記第2形成路を形成する工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−208331(P2011−208331A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79670(P2010−79670)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】