説明

蒸気噴射装置用ハンドピース

本発明は、供給線用入口及び送出線用出口を有するハウジング、ここで、前記ハウジング内にドーシングバルブがバルブハウジングを備えて配置され、このバルブハウジング内に、バルブ本体が変位方向において前後に直線変位可能なように装着される、を備えた蒸気噴射装置用ハンドピースであって、前記バルブ本体が、前記ハウジング上に保持された作動要素に可動となるように結合され、この作動要素が、使用者によりばね力の作用に反して可動であるハンドピースに関する。蒸気送出の特に繊細な割り当てを可能にするようなやり方で前記ハンドピースを更に改良するため、本発明によれば、少なくとも1つのばね要素が、前記バルブハウジングに隣接して側方に配置され、前記変位方向に平行な向きのばね力でもって前記バルブ本体に作用することが提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給線用入口及び送出線用出口を有するハウジング、ここで、前記ハウジング内にドーシングバルブが配置され、該ドーシングバルブがバルブハウジングを有し、該バルブハウジング内に、変位方向において前後に直線変位可能なバルブ本体が装着される、を備えた蒸気噴射装置用ハンドピースであって、前記バルブ本体が、前記ハウジング上に保持された作動要素に可動となるように結合され、該作動要素が、使用者によりばね力の作用に反して可動であるハンドピースに関する。
【背景技術】
【0002】
この種類のハンドピースは、例えば家庭内の洗浄に使用されるような蒸気噴射装置に使用される。上記蒸気噴射装置は蒸気発生器を含み、蒸気発生器により蒸気を発生させ、蒸気はハンドピースに供給線を介して供給することができる。蒸気は、ハンドピースの助けにより、洗浄されるべき表面へと向けることができる。単位時間当たりに送出される蒸気の量は、使用者により割り当てることができる。この目的で、ハンドピース内にドーシングバルブが設置され、ドーシングバルブは、直線変位させることができ且つ使用者が作動要素により変位させることができるバルブ本体を有する。バルブ本体は、その位置に応じて弁開口を程度の差こそあれ解放する。すなわち、ドーシングバルブの流れ断面は、送出されるべき蒸気の量を割り当てるため、使用者により調節することができる。この種類のハンドピースは、例えば、DE 44 43 795 C2及びDE 298 16 208 U1から知られている。
【0003】
例えばEP 0 715 827 A2において、蒸気噴射装置からハンドピースへの蒸気供給のオンとオフを切り替えることのできる電気スイッチをハンドピース内に配置することも既に提案されている。このようなスイッチを、ドーシングバルブに加えて使用することができる。
【0004】
DE 44 43 795 C2から知られているハンドピースの場合、ドーシングバルブの作動は調節ホイールの助けによりもたらされ、調節ホイールの上に歯車が一体的に形成される。歯車は、バルブ本体と一体に接続される歯付ロッドと噛み合う。調節ホイールは、ハンドピースのハウジングに摩擦接続又は弾性接続を介して結合されることから、特定のトルクを克服することによってのみ旋回させることができる。このような設計により、ハンドピースが使用者の手から滑り出ても、バルブはその位置を維持することができる。このことは、蒸気が意図せず送出されるリスクを伴う。
【0005】
いかなる意図しない蒸気送出をも回避するため、DE 298 16 208 U1において戻しばねが提案されており、この戻しばねは、作動要素が使用者により解放されると休止位置を自動的に占めるように作動要素に復元力を付与し、休止位置ではドーシングバルブの流れ断面が最小となる。結果として、ハンドピースが使用者の手から滑り出た時に蒸気が意図せず送出されるリスクは低減される。
【0006】
DE 298 16 208 U1から知られているハンドピースの戻しばねは、螺線状の圧縮ばねとして設計され、作動要素とハウジングの止めの間で締め付けられる。作動要素がその休止位置から移動すると、戻しばねは圧迫されて側方へ曲げられることになる。使用者が作動要素を解放すると、戻しばねは作動要素を休止位置へと押し戻し、作動要素は再びバルブ本体をその初期位置へと戻す。
【0007】
しかしバルブ本体が引っかかるというリスクがある。このことにより、蒸気送出の割り当てがより困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】DE 44 43 795 C2
【特許文献2】DE 298 16 208 U1
【特許文献3】EP 0 715 827 A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、蒸気送出の特に繊細な割り当てが可能となるよう、一般的な種類のハンドピースを更に改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、本発明によれば、冒頭で特定された種類のハンドピースにおいて、少なくとも1つのばね要素が、前記バルブハウジングに隣接して側方に配置され、前記変位方向に平行な向きのばね力でもって前記バルブ本体に作用する、という点で達成される。
【0011】
前記バルブ本体が前記変位方向に平行な向きのばね力の作用を受けるよう、少なくとも1つのばね要素を前記バルブハウジングに隣接して側方に配置することにより、交差方向の力をほぼ免れる前記バルブ本体の移動が可能になるので、前記バルブ本体が引っかかるリスクは非常に小さくなる。前記バルブ本体に作用する復元力の作用の結果として、使用者が前記作動要素を解放すると、前記バルブ本体は自動的に前記ドーシングバルブの流れ断面を限定する休止位置を占める。前記作動要素は、前記バルブ本体に結合されており、前記ドーシングバルブの流れ断面を増加させるため、前記バルブ本体に作用する前記ばね力の作用に反して、使用者によりその休止位置から移動させることができる。交差方向の力をほぼ免れる前記バルブ本体の前記移動により、蒸気送出を非常に繊細に割り当てることが可能になる。
【0012】
前記ハンドピースが、前記バルブハウジングの互いから離れる方を向く横側に配置された、前記変位方向に平行な向きのばね力でもって前記バルブ本体に作用する2つのばね要素を有すると特に有利である。前記バルブ本体が変位のために保持される前記バルブハウジングは、このような設計により、各々が前記バルブ本体に作用する2つのばね要素の間に配置される。前記ばね要素により付与される前記ばね力は、前記バルブ本体の前記変位方向に対して平行に向けられる。
【0013】
前記ハンドピースが2つより多いばね要素を有し、全ての前記ばね要素が、前記バルブ本体の前記変位方向に平行な向きのばね力を前記バルブ本体に付与するようにしてもよい。
【0014】
前記ハンドピースの前記少なくとも1つのばね要素は、好ましくは引張ばねとして設計される。特に、螺線状の引張ばねが有利であることが分かっている。
【0015】
有利な一実施形態において、前記少なくとも1つのばね要素は、前記バルブ本体と前記バルブハウジングの間で締め付けられる。このような設計は、前記ドーシングバルブを前記ハウジングの外側で予め組み立てることができる、ここでは、前記バルブハウジング内に前記バルブ本体を挿入し、前記少なくとも1つのばね要素を、一方では前記バルブハウジングに、他方では前記バルブ本体に固定する、という利点を有する。その後、予め組み立てられた前記ドーシングバルブを、続けて前記ハンドピースの前記ハウジング内に挿入することができる。
【0016】
前記バルブ本体は、好ましくは、前記バルブハウジングの受けチャンバに入り込み、該受けチャンバの内壁上を案内されて変位する摺動部、及び、前記受けチャンバから突き出て、前記摺動部から異なる方向に突出する2つの保持部、ここで、該保持部の各々にばね要素が係合する、を有する。前記摺動部は、例えばボルトのように設計することができる。特に、前記摺動部を円筒形に設計することが有利であることが分かっている。
【0017】
前記バルブ本体がT形の設計であると特に好ましい。前記バルブ本体は、このような実施形態において、シャフトの態様である中央摺動部を有し、この中央摺動部から2つの保持部が、側部アームのように、互いから離れる方を向く方向に直角に突出する。
【0018】
前記ドーシングバルブが閉鎖弁として設計され、この閉鎖弁により蒸気送出を完全に遮断することができるようにしてもよい。
【0019】
前記バルブハウジングは、好ましくはバルブシートを形成し、該バルブシートに前記バルブ本体が封止的に当接するように適合されている。
【0020】
前記バルブシートは、例えば、内側肩部又は段部の形態に設計することができ、この内側肩部又は段部に前記バルブ本体が閉鎖位置において封止的に当接することができる。
【0021】
前記バルブ本体は、好ましくは、前記バルブ本体を周方向に包囲する少なくとも1つのシールリングを含む。
【0022】
前記バルブ本体が、前記バルブハウジング内におけるその位置に応じて、前記ドーシングバルブの流れ断面を程度の差こそあれ解放するという点で、前記ドーシングバルブの流れ断面が連続的に変更可能であるようにしてもよい。
【0023】
本発明の好適な一実施形態において、前記流れ断面は段階的に変更される。このような設計では、使用者は異なる割り当て範囲の間で選択することができ、前記ドーシングバルブの流れ断面は2つの割り当て範囲の間において段階的なやり方で広くなる。
【0024】
前記ドーシングバルブが、前記バルブ本体の第1変位範囲における第1最大流れ断面まで開放されると共に、前記バルブ本体の第2変位範囲における第2最大流れ断面まで開放され、前記第2最大流れ断面が前記第1最大流れ断面よりも大きいようにしてもよい。前記流れ断面は、前記第1変位範囲から前記第2変位範囲へ移行する間に、急激に増加することができる。
【0025】
有利な一実施形態において、前記バルブ本体は階段状の設計である。このことにより、前記ドーシングバルブの第1流れ断面から第2流れ断面への階段状の移行が、構造的に簡単なやり方で可能となる。
【0026】
前記作動要素は、好ましくは、枢動軸を中心に枢動可能となるように前記ハウジング上に装着された枢動レバーとして設計され、前記枢動軸が、前記枢動レバーの前記ドーシングバルブから離れる方を向く後部に配置される。前記枢動軸を前記ドーシングバルブから可及的に遠い距離に位置決めすることにより、前記バルブ本体を比較的大きなバルブ経路に亘って移動可能とある。他方、このことにより、単位時間当たりに送出されるべき蒸気の量の特に繊細な割り当てが可能となる。
【0027】
既に説明したように、前記作動要素は前記バルブ本体に結合される。好適な一実施形態において、前記結合は摺動案内部を介してもたらされる。特に、前記作動要素が枢動レバーとして設計されると、前記枢動レバーを前記バルブ本体に摺動案内部を介して結合することができる。
【0028】
前記枢動レバーが、付加的な機械的伝達要素が使用されることなく、前記バルブ本体に直接結合されると好ましい。このことにより、前記ハンドピースの構成要素の数が減らされ、結果としてその組立てが促進される。
【0029】
前記作動要素が枢動レバーの形態に設計される場合、この枢動レバーが、該枢動レバーの前記枢動軸から離れる方を向く前端部に少なくとも1つの受け器を有し、該受け器内に前記バルブ本体の連行要素が可動となるように保持されると好ましい。
【0030】
前記枢動レバー用の前記受け器は、例えば、溝、細長い孔、又はスロットの形態に設計することができる。
【0031】
前記枢動レバーが、該枢動レバーの前記枢動軸から離れる方を向く前端部に、前記バルブハウジングの少なくとも1つの端部を間に収容し且つ前記バルブ本体に摺動案内部を介して結合される2つの拡張部を有すると特に有利である。例えば、前記拡張部は、各々、前記バルブ本体の連行要素用の受け器を含むことができる。前記拡張部は、前記バルブ本体の互いから離れる方を向く外側に沿って摺動することができる。
【0032】
2つの前記拡張部が同一の設計であると好ましい。
【0033】
本発明に係る前記ハンドピースの特に好適な一実施形態において、前記作動要素により作動可能な電気スイッチが、前記蒸気噴射装置からの蒸気供給のオンオフを切り替えるため、そのハウジング内に配置される。このような実施形態では、上で説明したやり方で、前記ドーシングバルブ及び前記作動要素により、蒸気送出を制御することができる。更に、蒸気供給は、前記作動要素及び前記電気スイッチの助けにより、オンオフを切り替えることができる。結果として、使用者が前記作動要素により前記ハンドピース内の前記電気スイッチを作動させる時にのみ、前記蒸気噴射装置から前記ハンドピースに蒸気を供給することができる。前記作動は、前記バルブ本体に作用し且つこのバルブ本体により前記作動要素に伝えられる前記ばね力の作用に反してもたらされる。蒸気供給がオンに切り替えられると、使用者は、作用するばね力に反して前記作動要素を移動させることにより、前記ハンドピースから単位時間当たりに送出される蒸気の量を非常に繊細に割り当てることができる。使用者が前記作動要素を再び解放すると、この作動要素は、前記作用するばね力のためにその休止位置に自動的に戻り、蒸気供給はオフに切り替えられる。
【0034】
前記作動要素が枢動レバーの形態に設計され、その前記枢動軸が前記ドーシングバルブから離れる方を向く後方枢動レバー部内に配置される場合、前記スイッチが、前記枢動レバーの前記枢動軸と前記ドーシングバルブの間の領域に位置決めされると好ましい。
【0035】
前記作動要素は、好ましくはロック可能である。前記作動要素をその休止位置にロックすることができ、この休止位置において前記ドーシングバルブの前記流れ断面が最小であると好ましい。結果として、蒸気が意図せず送出されるリスクは特に小さいままにしておくことができる。
【0036】
前記作動要素の可動範囲が、調節要素によって調節可能であると好ましい。例えば、使用者が、前記作動要素の小さめの可動範囲と大きめの可動範囲の間で選択することができるようにしてもよい。使用者は、前記小さめの可動範囲を選択すると、前記ドーシングバルブの前記流れ断面を最小値から開始して中間値まで変化させることができる。他方、使用者は、前記作動要素の前記大きめの可動範囲を選択すると、前記ドーシングバルブの前記流れ断面をその最小値から開始して前記中間値を介し最大値まで変化させることができる。
【0037】
従って、前記作動要素は、前記調節要素により予め決められた端位置を占めるまでの範囲でのみ、移動させることができる。
【0038】
前記調節要素は、例えば、前記ハウジング上に回転可能に装着され且つ前記作動要素の前記可動範囲を限定するカムを有する調節ホイールの形態に設計することができる。
【0039】
前記作動要素を前記調節要素によりその休止位置にロックすることができると特に好ましい。従って、前記調節要素は、一方で、前記作動要素の前記可動範囲を予め決めるという機能を受け持ち、更に、前記作動要素をその休止位置にロックするという機能を受け持つ。
【0040】
前記蒸気の流れ方向において、別個の送出線が前記ドーシングバルブに隣接することができる。前記送出線は、前記バルブハウジングにシール要素を介在させて接続することができる。
【0041】
本発明の特に好適な一実施形態において、前記送出線は、前記バルブハウジング上に一体的に形成される。従って、送出線及びバルブハウジングは、一つの部分から成る構成要素を形成することができる。結果として、前記送出線と前記バルブハウジングの間の付加的な密封要素を省くことができる。
【0042】
本発明をより詳細に説明するため、本発明の2つの好適な実施形態を、図面を参照しつつ、以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係るハンドピースの第1実施形態の縦断面図。
【図2】図1の2‐2線に沿った断面図。
【図3】本発明に係るハンドピースの第2実施形態の縦断面図。
【図4】図3の4‐4線に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明に係るハンドピースの第1実施形態を図1及び図2に示し、全体として参照符号10を与える。この実施形態は、2つの半殻14、16により形成されるハウジング12を含む。これら2つの半殻14、16は、互いに接続される、好ましくはねじ締め又はリベット留めされる。この実施形態は、略管状の設計であり、侵入部18及び退出部20を有する。侵入部18及び退出部20は、互いに合わさって、これにより概ね45°の角度を形成する
【0045】
侵入部18は、退出部20から離れる方を向くその後方側22に、入口24を有する。入口24には供給線26が侵入する。供給線26は、図示しない蒸気噴射装置にハンドピース10を接続し、ハンドピース10に熱蒸気を供給する。供給線26は保護ホース28を含み、保護ホース28は、2つの半殻14及び16間で締め付けられ且つ蒸気を導く内部ホース30を包囲する。内部ホース30は、ハウジング12内をその退出部20まで延びる。退出部20内にはドーシングバルブ32がバルブハウジング34を備えて配置され、バルブハウジング34はホースステム36を含み、ホースステム36には内部ホース30が接続される。ホースステム36はバルブハウジング34の受けチャンバ38内へ開口し、受けチャンバ38は、バルブシートを形成する内方に向けられた段部40を介して、送出線42に一体に隣接する。送出線42は、退出部20の侵入部18から離れる方を向く端面46から自由端44が突出する。退出部20は端面46の領域において出口48を形成し、出口48は送出線42の自由端44が通過する。
【0046】
バルブハウジング34の受けチャンバ38は、送出線42と同一直線上に整列され、ホースステム36の開口領域から距離を置いて後方開口端50を有する。
【0047】
中央シャフト54の形態の摺動部を備えたT形のバルブ本体52が、バルブハウジング34の受けチャンバ38に入り込む。シャフト54は、受けチャンバ38の内壁56上を案内されて変位し、また、前端領域58が送出線42の方向にバルブハウジング34の段部40を越えたところまで延びる。シャフト54は、段部40の高さにおいて、前方シールリング60により包囲される。前方シールリング60は、図1及び図2に示すドーシングバルブ32の閉鎖位置においてバルブシートを形成する段部40に封止的に当接する。
【0048】
バルブ本体52のシャフト54は、その前端領域58に側方扁平領域62を有する。
【0049】
シャフト54は、受けチャンバ38の領域において、受けチャンバ38の内壁56に封止的に当接する後方シールリング64により包囲される。後方シールリング64は、受けチャンバ38内で段部40から距離を置いて配置され、受けチャンバ38にホースステム36を介して流れ込む蒸気が受けチャンバの開口端50を介して後方へ退出できないことを保証する。
【0050】
シャフト54は、その後端領域が受けチャンバ38から突出する。シャフト54は、その突出領域において、第1側部アーム66及び第2側部アーム68の形態の2つの保持部を担持する。第1側部アーム66及び第2側部アーム68は、互いから離れる方を向く方向において、シャフト54から離れるように直角に突出する
【0051】
バルブハウジング34は、送出線42の方向に段部40から距離を置いて、側部アーム66、68に対して平行に整列される第1支持翼70及び第2支持翼72を有する。第1支持翼70と第1側部アーム66の間で第1閉鎖ばね74が張力をかけられ、第2支持翼72と第2側部アーム68の間では第2閉鎖ばね76が張力をかけられる。2つの閉鎖ばね74、76は、それぞれ螺線状の引張ばねとして設計され、シャフト54に平行な向きのばね力でもってバルブ本体52に作用する。バルブ本体52は、ばね力の作用に反して、図1及び図2に示すその閉鎖位置から、受けチャンバ38の内壁56に沿って、送出線42から離れる方を向く方向において後方へと移動させることができる。この時、前方シールリング60が、段部40から離れて上昇し、ドーシングバルブ32の流れ断面を解放する。シャフト54の扁平領域62が段部40に達すると、ドーシングバルブ32の流れ断面は急激に増加する。
【0052】
バルブ本体52を移動させる目的で、ハンドピース10は、枢動レバー78の形態の作動要素を含む。枢動レバー78は、枢動軸80を中心に枢動可能であり、作動部82が侵入部18においてハウジング開口84を通過し、使用者により把持することができる。
【0053】
枢動軸80は、枢動レバー78のドーシングバルブ32から離れる方を向く後端部86に配置され、従ってドーシングバルブ32から相当な距離を置かれている。枢動レバー78は、ドーシングバルブ32の方を向くその前端部88に、第1拡張部90及び第2拡張部92を有する。第1拡張部90及び第2拡張部92は、間にバルブハウジング34の後端領域を収容し、第1案内スロット94及び第2案内スロット96をそれぞれ有する。第1案内スロット94はバルブ本体52の第1側部アーム66が通過し、第2案内スロット96はバルブ本体52の第2側部アーム68が通過する。2つの側部アーム66及び68は、案内スロット94及び96と組んで枢動レバー78の枢動中に枢動レバーの枢動運動を摺動案内部のようにバルブ本体52の直線変位運動に変換する連行要素を形成する。枢動レバー78が、図1に示すその休止位置から時計回りの方向にハウジング12内へと枢動すると、結果としてバルブ本体52が後方に向かって移動し、そのためドーシングバルブ32の流れ断面が増加する。この場合、前方シールリング60が段部40から距離を置かれているため、内部ホース30及びホースステム36を介してバルブハウジング34に侵入する蒸気は、段部40を通り、ドーシングバルブ32と一体に接続される送出線42を介して送出することができる。バルブ本体52は、2つの閉鎖ばね74、76により、バルブ本体の変位方向に平行な向きのばね力の作用を受ける。従って、枢動レバー78の移動は、閉鎖ばね74、76により付与されるばね力の作用に反してもたらされる。使用者が枢動レバーを解放すると、バルブ本体52は、その閉鎖位置に自動的に移行する。この閉鎖位置では、前方シールリング60が段部40に封止的に当接し、その結果、蒸気の流路が遮断される。
【0054】
侵入部18と退出部20の間の移行領域において、調節ホイール98の形態の調節部材が、ハウジング12内に回転自在に装着されており、ハウジング12の開口100を通ってハウジング12から外方へ部分的に突出し、ハウジング12内でカム102を担持する。カム102は、径方向外方へ向けられ、調節ホイール98の方を向く枢動レバー78の接触面104と相互作用する。調節ホイール98は、ハウジング半殻14の内側に一体的に形成されるロック鼻106と連動接続を介して相互作用し、ロック鼻106の助けにより3つの位置で固定することができる。
【0055】
調節ホイール98の第1位置を図1に示す。この位置では、カム102は枢動レバー78の接触面104に当接し、枢動レバーはその休止位置でロックされる。従って、枢動レバーは内方へ枢動することができない。
【0056】
図1において、調節ホイール98は、時計回りの方向に反して第2位置へと枢動することができる。この第2位置において、カム102は、休止位置にある枢動レバー78の接触面104から比較的小さい第1距離のところにある。このことにより、枢動レバー78が第1移動範囲で枢動することが許容され、従って、バルブ本体52が第1変位範囲で移動することが許容される。
【0057】
調節ホイール98は、時計回りの方向に反して第3位置へと枢動することができる。この第3位置において、カム102は、休止位置にある枢動レバー78の接触面104から比較的大きい距離のところにある。このことにより、枢動レバー78が比較的大きい移動範囲で枢動することが許容され、その結果、バルブ本体52が大きい変位範囲で変位することが許容される。
【0058】
よって、調節ホイール98は、一方で、枢動レバー78をその休止位置で自らの助けによりロック可能なロック要素を形成する。更に、調節ホイール98は、ドーシングバルブの割り当て範囲を調節することを可能にする。なぜなら、使用者が、調節ホイール98を旋回させることにより、枢動レバー78のより小さい可動範囲を予め定めるか、それとも、より大きい可動範囲を予め定めるかに応じて、バルブ本体52をより小さい又はより大きい距離に亘って前後に変位させることができ、そのため、ドーシングバルブ32のレギュレーション範囲を調節ホイール98により予め定めることができる。
【0059】
本発明に係るハンドピースの第2実施形態を図3及び図4に示し、全体として参照符号110を与える。この実施形態は、図1及び図2に関して上で述べたハンドピース10と、かなりの程度において同一の設計である。従って、図1及び図2において使用したものと同じ参照符号を図3及び図4における同一の構成要素について使用し、これらの構成要素に関しては、いかなる繰り返しも避けるため、先行する説明が参照される。
【0060】
ハンドピース10とは対照的に、ハンドピース110では、単一のシールリング114のみにより包囲されるバルブ本体112が使用される。シールリング114は、受けチャンバ38内で段部40から距離を置いて配置され、蒸気が受けチャンバ38の開口端50を介して後方へと退出できないことを保証する。従って、シールリング114の機能は、ハンドピース10の後方シールリング64の機能に対応する。
【0061】
枢動レバー78がハンドピース110内で休止位置にある場合に、段部40の領域において受けチャンバ38を送出線42の方向に密封する必要はない。なぜなら、蒸気噴射装置からハンドピース110への蒸気供給を、電気スイッチ116の助けにより、電気的に制御することができるからである。この目的で、図示しない蒸気噴射装置が、電気スイッチ116に、供給線26の保護ホース28内で内部ホース30に隣接して側方に延びる制御ケーブル118を介して接続される。スイッチは、ハウジング12の侵入部18内で、長手方向において概ね中央に配置されており、枢動レバー78の作動部82の内側に配置された切替カム122と相互作用する切替プランジャ120を有する。
【0062】
ハンドピース110の枢動レバー78が、図3及び図4に示すその休止位置から内方に枢動すると、切替カム122が電気スイッチ116の切替プランジャ120を作動させ、蒸気噴射装置からハンドピース110への蒸気供給がオンに切り替えられる。枢動レバー78は、引き続き、更に内方にハウジング12内へと枢動することができる。この場合、切替カム122が、切替プランジャ120を電気スイッチ116のハウジング内へと、スイッチ116の切替位置を変更することなく押し込む。結果として、蒸気の供給がオンに切り替えられると、枢動レバー78及びドーシングバルブ32により、送出されるべき蒸気量を、ハンドピース10に対応する方法で割り当てることができる。使用者が枢動レバー78を再び解放すると、この枢動レバーは、閉鎖ばね74、76によりバルブ本体52を介してその休止位置に戻るように枢動し、蒸気供給は電気スイッチ116によりオフに切り替えられる。
【0063】
ハンドピース10の場合、またハンドピース110の場合も、バルブ本体52は、バルブハウジング34の受けチャンバ38内を低摩擦のやり方で案内される。この場合、バルブ本体52は、実際上、交差方向の力を受けない。バルブ本体52は、2つの閉鎖ばね74及び76により、変位方向に平行な向きのばね力の作用を受ける。実際上、バルブ本体52がバルブハウジング34内で引っかかるリスクはない。従って、蒸気の送出を非常に繊細に割り当てることができる。
【0064】
2つの閉鎖ばね74及び76は、ハウジング12の退出部20内において、バルブハウジング34に隣接して側方に配置される。結果として、電気スイッチ116を配置するため、侵入部18内で枢動レバー78の作動部82と内部ホース30の間に自由空間を作り出すことができる。従って、ハンドピース10とハンドピース110については、バルブ本体52及び112を除き、同一の構成要素をそれぞれ使用することができ、それ故、これらの構成要素はより多く製造することができる。従って、ハンドピース10及び110は、送出されるべき蒸気量の非常に繊細な割り当てだけでなく、安価な製造をも特徴とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給線用入口及び送出線用出口を有するハウジング、ここで、前記ハウジング内にドーシングバルブが配置され、該ドーシングバルブがバルブハウジングを有し、該バルブハウジング内に、変位方向において前後に直線変位可能なバルブ本体が装着される、を備えた蒸気噴射装置用ハンドピースであって、
前記バルブ本体が、前記ハウジング上に保持された作動要素に可動となるように結合され、該作動要素が、使用者によりばね力の作用に反して可動であるハンドピースにおいて、
少なくとも1つのばね要素(74、76)が、前記バルブハウジング(34)に隣接して側方に配置され、前記変位方向に平行な向きのばね力でもって前記バルブ本体(52)に作用すること、を特徴とするハンドピース。
【請求項2】
請求項1に記載のハンドピースであって、該ハンドピース(10;110)が、前記バルブハウジング(34)の互いから離れる方を向く横側に配置された、前記変位方向に平行な向きのばね力でもって前記バルブ本体(52)に作用する2つのばね要素(74、76)を有すること、を特徴とするハンドピース。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のハンドピースであって、前記少なくとも1つのばね要素が引張ばね(74、76)として設計されること、を特徴とするハンドピース。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のハンドピースであって、前記少なくとも1つのばね要素(74、76)が、前記バルブ本体(52)と前記バルブハウジング(34)の間で締め付けられること、を特徴とするハンドピース。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のハンドピースであって、前記バルブ本体(52)が、
前記バルブハウジング(34)の受けチャンバ(38)に入り込み、該受けチャンバの内壁(56)上を案内されて変位する摺動部(54)、及び
前記受けチャンバ(38)から突き出て、前記摺動部(54)から異なる方向に突出する2つの保持部(66、68)、ここで、該保持部の各々にばね要素(74、76)が係合する、
を有すること、を特徴とするハンドピース。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のハンドピースであって、前記バルブ本体(52)がT形の設計であること、を特徴とするハンドピース。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のハンドピースであって、前記バルブハウジング(34)がバルブシート(40)を形成し、該バルブシートに前記バルブ本体(52)が封止的に当接するように適合されていること、を特徴とするハンドピース。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のハンドピースであって、前記バルブ本体(52)が階段状であること、を特徴とするハンドピース。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のハンドピースであって、前記作動要素が、枢動軸(80)を中心に枢動可能となるように装着された枢動レバー(78)として設計され、前記枢動軸(80)が、前記枢動レバー(78)の前記ドーシングバルブ(32)から離れる方を向く後部(86)に配置されること、を特徴とするハンドピース。
【請求項10】
請求項9に記載のハンドピースであって、前記枢動レバー(78)が、前記バルブ本体(52)に摺動案内部(66、68、94、96)を介して結合されること、を特徴とするハンドピース。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のハンドピースであって、前記枢動レバー(78)が、前記バルブ本体(52)に直接結合されること、を特徴とするハンドピース。
【請求項12】
請求項9、10、又は11に記載のハンドピースであって、前記枢動レバー(78)が、該枢動レバー(78)の前記枢動軸(80)から離れる方を向く前端部(88)に少なくとも1つの受け器(94、96)を有し、該受け器内に前記バルブ本体(52)の連行要素(66、68)が可動となるように保持されること、を特徴とするハンドピース。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれか1項に記載のハンドピースであって、前記枢動レバー(78)が、該枢動レバー(78)の前記枢動軸(80)から離れる方を向く前端部(88)に、前記バルブハウジング(34)の少なくとも1つの端部を間に収容し且つ前記バルブ本体(52)に前記摺動案内部を介して結合される2つの拡張部(90、92)を有すること、を特徴とするハンドピース。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のハンドピースであって、前記作動要素(78)により作動可能な電気スイッチ(116)が、前記蒸気噴射装置からの蒸気供給のオンオフを切り替えるため、前記ハウジング(12)内に配置されること、を特徴とするハンドピース。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のハンドピースであって、前記作動要素(78)がロック可能であること、を特徴とするハンドピース。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載のハンドピースであって、前記作動要素(78)の可動範囲が、調節要素(98)によって調節可能であること、を特徴とするハンドピース。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載のハンドピースであって、送出線(42)が、前記ドーシングバルブ(32)の前記バルブハウジング(34)上に一体的に形成されること、を特徴とするハンドピース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−513465(P2013−513465A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542438(P2012−542438)
【出願日】平成22年11月23日(2010.11.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068033
【国際公開番号】WO2011/069819
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(505201098)アルフレツド ケルヒヤー ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー (6)
【Fターム(参考)】