説明

蒸気弁および蒸気弁を備えた発電設備

【課題】主弁が弁棒の軸線から傾かないように保持することによって、主弁キャップの摺動部のエッジ部がくさびとなって弁棒摺動部に損傷を与えことがないようにする。
【解決手段】蒸気弁において、蒸気室26内の弁棒29の中間部に摺動自在に嵌合して設けられた主弁キャップ33と、弁棒の先端部近傍に環状突起した形状で設けられた副弁32と、副弁よりも先端側に設けられた主弁案内棒34と、主弁案内棒に摺動自在に嵌合されるとともに、主弁キャップ34に固定され、かつ副弁32の両側を主弁キャップ33と必要最小限の軸方向間隙をあけて挟み副弁弁シート40を形成する主弁31´とから弁体部を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発電設備の蒸気タービン等に適用される蒸気弁に係り、特に主弁と副弁とを有する蒸気弁および蒸気弁を備えた発電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は一般的な蒸気タービン発電プラントを示す系統概略図である。図6において、ボイラー1で発生した主蒸気は主蒸気止め弁2および蒸気加減弁3を経て高圧タービン4に流入し、ここで膨張仕事をしたのち、逆止弁5を経由して再びボイラー1の再熱器6にて加熱される。この再熱器6で再熱されたのち、再熱蒸気止め弁7およびインターセプト弁8を経て中圧タービン9に流入する。そして再びここで膨張仕事をしたのち、クロスアラウンド管10を経て低圧タービン11へ流入し膨張仕事をする。低圧タービン11で膨張仕事をし終えた蒸気は復水器12にて水に戻され、給水ポンプ13にて昇圧して再びボイラー1に供給されるようにして循環する。
【0003】
なお、図示の蒸気タービン発電プラントは、プラントの運用効率を高めるために、ボイラー1出口の主蒸気止め弁2の上流側とボイラー1の再熱器6の入口側とを高圧タービンバイパス弁14で接続し、さらに再熱蒸気止め弁7の再熱器6側と復水器12とを低圧タービンバイパス弁15で接続することによって、タービンの運転にかかわらずボイラー系統単独の循環運転ができるように構成している。
【0004】
以上説明した図6の蒸気系統概略図からわかるように、蒸気タービン発電プラントでは、蒸気系統には主蒸気止め弁2や蒸気加減弁3をはじめとする、各種の蒸気弁を用いている。この蒸気弁は下記の特許文献1に記載されているが、ここでは、特許文献1と同様な構造を採用している図7の蒸気弁によって具体的に説明する。
【0005】
図7は従来の蒸気弁の構造図である。図7において、21は弁ケーシングであり、蒸気入口管22の軸線と蒸気出口管23の軸線とを直交させて、蒸気流路が直角に曲がるように形成されている。そして、弁ケーシングの蒸気出口管23の軸線と交差する部分には開口部24を形成し、この開口部24を弁蓋25で塞いで内部に蒸気室26を形成している。
【0006】
27は蒸気室26の出口側に設けられた円環状の弁座であり、その中心線が後述する弁棒29の軸線と一致するように取り付けられている。そして、弁座27のシート面に対向して進退自在に弁体28を配置し、この弁体28を弁閉または弁開方向に駆動する弁棒29が弁蓋25に設けたガイドブッシュ30を貫通して摺動可能に保持されている。
【0007】
ここで、弁体28は、主弁31、副弁32および主弁キャップ33からなる部分を指し、弁体28は弁棒29の先端部に形成された環状突起部を副弁32とし、弁棒29上を摺動可能な主弁キャップ33と、この主弁キャップ33に対して必要最小限の軸方向間隙をあけて配置した主弁31とで副弁32を両側から挟むようにしてネジで固定している。
【0008】
このように構成された蒸気弁において、その全閉時は副弁32と主弁31に形成された副弁弁シートおよび主弁31と弁座27により形成される主弁弁シートにより蒸気弁上流から蒸気弁下流に流出する蒸気は遮断される。
【0009】
一方、タービン通気および運転時等の蒸気弁下流に蒸気を流す際には、副弁32と一体の弁棒29を開方向(図示上部方向)に必要最小限の間隙分だけ動かすことによって副弁32と主弁31に設けられた副弁弁シート部に蒸気通路部が形成され、蒸気室26内の蒸気はこの通路部を介して下流に流出する。更に弁棒29を開方向に移動すると弁棒29先端部に設けられた環状突起部の肩部と主弁キャップ33に設けられたシート部とが接触することによって弁棒29のみの移動が拘束され、弁棒29と主弁キャップ33に連結された主弁31とが一体的に弁開方向に移動し、主弁31と弁座27により形成される主弁弁シート部に蒸気通路部が形成され、蒸気室26内の蒸気はこの主弁弁シートの蒸気通路部を介して下流に流出しタービンへ流入する。
【特許文献1】特開平11−247619号公報(第3−4頁、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した従来の蒸気弁では、主弁31は主弁キャップ33を介して弁棒29に摺動するように設けられ、しかも弁棒29の先端部に設けられた副弁32との間で副弁弁シート部を構成しているので、蒸気弁を弁棒29の摺動方向が鉛直方向以外に任意角度傾斜して取り付けた場合、副弁32の全開状態で主弁31を開または閉動作させたときに、主弁31が弁棒29の軸線から自重により鉛直方向に傾く惧れがある。
【0011】
万一、主弁31が弁棒29の軸線から傾いた場合、主弁キャップ33の摺動部のエッジ部(弁棒と接する鋭角部分)がくさびとなって弁棒29の摺動部に損傷を与え、この状態を放置すると過度の損傷により蒸気弁の重要機能である蒸気弁下流への流出蒸気の遮断機能を損なう可能性がある。
【0012】
近年、タービンプラントのレイアウトのコンパクト化要求等により機器配置および据え付け方向について任意の取り付け角度に対応した蒸気弁が必要となってきているが、図7のような従来構造の蒸気弁ではこの要求を満たすことが困難である。
【0013】
本発明は、主弁が弁棒の軸線から傾かないように保持することによって、主弁キャップの摺動部のエッジ部がくさびとなって弁棒摺動部に損傷を与えことがないようにした蒸気弁およびその蒸気弁を備えた発電設備を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る蒸気弁の発明は、蒸気入口管、蒸気出口管および弁蓋によって塞がれる開口部を有し、内部に蒸気室を形成する弁ケーシングと、この蒸気室の流路中に設けた弁座と、この弁座に対向して配置された弁体部と、前記弁蓋を気密に貫通して摺動可能に保持されるとともに、前記弁体部を前記弁座に対して進退させる弁棒と、を備えた蒸気弁において、前記蒸気室内の弁棒の中間部に摺動自在に嵌合して設けられた主弁キャップと、前記弁棒の先端部近傍に環状突起した形状で設けられた副弁と、前記弁棒の副弁よりも先端側に設けられた主弁案内棒と、前記主弁案内棒に摺動自在に嵌合されるとともに、前記主弁キャップに固定され、かつ前記副弁の両側を前記主弁キャップと必要最小限の軸方向間隙をあけて挟み副弁弁シートを形成する主弁と、から前記弁体部を構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、主弁を主弁キャップおよびガイドブッシュによって弁棒上および主弁案内棒上を摺動案内するようにしたので、弁棒、副弁間、弁棒、主弁間それぞれで安定した摺動が可能となり、蒸気弁の任意の取り付け角度に対して安定した弁開および弁閉動作を実現することができる。したがって、蒸気弁下流への流出蒸気の遮断機能を損なうことなくタービン過速保護に対する信頼性を向上することが可能な蒸気弁を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図を通して共通する要素には同一符号を付けて、重複する説明は適宜省略する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る蒸気弁の構造図であり、図2は蒸気弁の要部拡大断面図である。
本実施形態は、弁棒の先端部に主弁案内棒を設け、この主弁案内棒に主弁を嵌合させて摺動案内する機能を付加するようにしたことを特徴とするものであり、以下に詳細に説明する。
【0018】
図1において、蒸気弁は、弁ケーシング21を図7に比べて反時計方向に90度回転させた角度で設置することによって、蒸気入口管22を図示下側に、蒸気出口管23を図示右側に位置し、そして弁ケーシング21の図示左側壁面に開口部24を形成し、この開口部24を弁蓋25で塞ぐことにより内部に蒸気室26を形成している。
【0019】
この蒸気室26の内部には、円環状の弁座27と、弁棒29の先端部に取り付けられ、弁座27に対して進退して圧接または開離する弁体部28とを設けている。そして、これら弁棒29、弁体部28および弁座27の中心軸は一致するように調整されている。なお、弁棒29が弁蓋25を貫通する部分にはガイドブッシュ30を設けており、このガイドブッシュ30によって弁棒29は気密状態で摺動可能に保持されている。
【0020】
ところで、前述した弁体部28は、主弁31´、副弁32、主弁キャップ33および主弁案内棒34から構成されている。弁棒29の先端部近傍には算盤玉のような環状突起部35を設けており、この環状突起部35の傾斜部が主弁主弁31´と当接することによって副弁32としての機能を担うように構成してある。そして、この環状突起部35のさらなる先端部には、主弁案内棒34が弁棒29の軸線と同一軸線となるように一体化して設けられている。なお、図中ピン36は、弁体部28が弁棒29に対して回転しないように、主弁キャップ33に設けられた図示しない溝によってガイドされている。
また、この主弁案内棒34は、弁棒29および環状突起部35と一体形成されていても良いし、環状突起部35の先端部分に溶接等で一体化しても良い。
【0021】
主弁キャップ33は環状突起部35とガイドブッシュ30間の弁棒29に嵌合して弁棒29上を円滑に摺動可能に設けられている。主弁31´は後述するように中心部を主弁案内棒34に嵌合して摺動案内されるようになっている。そして、環状突起部35を両側から必要最小限の軸方向間隙をあけて主弁キャップ33と主弁31´とで挟み、ボルト37で固定している。
【0022】
図2の蒸気弁の要部断面図で詳細を示すように、本実施形態の主弁31´は図7の主弁31のように中心部の穴を蒸気通路とする代わりに、弁棒29の軸線と一致するガイドブッシュ38を嵌合させ、このガイドブッシュ38に主弁案内棒34を嵌合させることによって、主弁31´を主弁案内棒34で摺動案内するようになっている。そして、さらにこのガイドブッシュ38の外周に小穴を複数個あけて蒸気通路39を形成している。
【0023】
このように、主弁31´は、副弁32を担う環状突起部35を挟んで一方を主弁キャップ33を介して弁棒29上を摺動案内され、他方の弁棒端部側をガイドブッシュ38によって主弁案内棒34上に摺動案内されるようになっている。
【0024】
本実施形態の蒸気弁は以上のように構成したので、蒸気弁の全閉時は副弁32と主弁31´により形成される副弁弁シート40と、主弁31´と弁座27により形成される主弁弁シート41とにより、蒸気弁上流から蒸気弁下流に流出する蒸気は遮断される。
【0025】
なお、タービン通気および運転時等のように、蒸気弁下流に蒸気を流す際には、副弁32を直結した弁棒29を開方向に移動することによって、まず、副弁32と主弁31´とによる副弁弁シート部40に蒸気通路部が形成され、蒸気弁上流の蒸気はこの蒸気通路部および主弁31´のガイドブッシュ35周りの蒸気通路39を経て蒸気出口管23から下流に流入する。
【0026】
更に、弁棒29を開方向に移動することによって、弁棒29に設けられた環状突起部35の肩部(弁棒開方向側の傾斜部)と主弁キャップ33に設けられた副弁弁シート部40が押圧されることにより主弁キャップ33に固定された主弁31´が弁棒29と一体となって開方向に移動するので、主弁31´と弁座27より形成される主弁弁シート部41に蒸気通路部が形成され、蒸気室26内の蒸気はこの主弁弁シート41の蒸気通路部を経て蒸気出口管23から下流に流出し、タービンへ流入する。
【0027】
この主弁31´の移動に際して、主弁31´は主弁キャップ33を介して弁棒29上を摺動案内されるとともに、副弁弁シート部40の下流において主弁案内棒34により摺動案内される。この結果、蒸気弁を開または閉動作する場合に弁体部28の軸中心が取り付け角度によって仮に偏心するとしても、単に弁棒29と主弁キャップ33との間隙分および主弁31´と主弁案内棒34との間隙分だけ偏心するのみでその量は僅かである。このため、主弁キャップ33の内径部のエッジ部およびガイドブッシュ35の内径部のエッジ部が共にくさび状とならず、弁棒29の摺動部に損傷を与えることがない。
なお、図示の例では、弁棒の取り付け角度を水平にしたが、取り付け角度は水平以外の任意の角度とすることができる。
【0028】
以上述べたように、本実施形態による蒸気弁は、弁棒29の先端部近傍に設けた副弁の機能を担う環状突起部35の先端部に弁棒29と同一軸線上に主弁案内棒34を設け、かつ主弁31´の周辺部を弁棒29上を摺動する主弁キャップ33に固定し、さらに主弁31´の中心部にガイドブッシュ35設けて主弁案内棒35上を摺動するように構成したので、蒸気弁の取り付け角度が例え、鉛直方向以外の任意の角度であっても、弁棒29、主弁キャップ33、主弁31´および主弁案内棒35の軸中心は常に同心となるので、主弁31´の自重による主弁31´、弁棒29および主弁ガイド部35の相対的な軸傾斜が起こることはない。
【0029】
この結果、主弁キャップ33の摺動部のエッジ部がくさび状となって弁棒摺動部の損傷をおこすことはなく、蒸気弁の重要機能である蒸気弁下流への流入蒸気の遮断機能を損なわずに安定した蒸気弁開および閉動作を実現することができる。
【0030】
(第2実施の形態)
図3を参照して本発明の第2実施形態を説明する。
図3において、本実施形態の蒸気弁は、2個の蒸気弁(第1弁および第2弁)の蒸気出口管23を共用とし、弁ケーシング21Aを鋳造または溶接によりY字状に一体化したものである。すなわち、この蒸気弁は蒸気出口管23を水平状態に置き、蒸気出口管23軸線に対して第1弁棒29の成す角度を反時計回り方向にθ1回転した角度とし、蒸気出口管23軸線に対して第2弁棒29の成す角度を時計回り方向にθ2回転した角度となるように配置している。
【0031】
本実施形態は、これらの点を除き主要部が第1実施形態とほぼ同じなので、図面では第1弁に添字1を、第2弁に添字2を付けるが、明細書中では特に添字を用いずに説明する。
【0032】
本実施形態によれば、第1弁および第2弁とも、弁棒29の先端部近傍に設けた主弁案内棒34を当該弁棒29と同一軸線上に設け、かつ主弁31´は、副弁32を担う環状突起部35を挟んで一方を主弁キャップ33を介して弁棒29上を摺動案内され、他方の弁棒端部側をガイドブッシュ38によって主弁案内棒34上を摺動案内されるように構成したので、弁棒29の取り付け角度が水平位置から反時計回り方向にθ1回転した角度、および水平位置から時計回り方向にθ2回転した角度であっても、第1弁、第2弁とも弁棒29、主弁キャップ33、主弁31´および主弁案内棒34の軸中心は常に同一軸線上にあり、主弁31´の自重による主弁31´、弁棒29および主弁案内棒34の相対的な軸傾斜が起こることはない。
【0033】
この結果、主弁キャップ33の摺動部のエッジ部およびガイドブッシュ38の摺動部がくさび状となって弁棒摺動部を損傷させることはなく、蒸気弁の重要機能である蒸気弁下流への流入蒸気の遮断機能を損なわずに安定した蒸気弁開および閉動作を実現することができ、かつ弁ケ−シングをY字形、あるいはT字形に形成することによって、蒸気弁の下流に必要であった配管YピースまたはTピースを削減することができる。
【0034】
(第3実施形態)
図4は本発明の第3実施形態を示す蒸気弁構造図である。
図4において、本実施形態の蒸気弁は、単一ケーシング内に同一構造の弁体部28を2個並列に配列するように構成し、かつ弁棒の取り付け角度を水平にしたものである。
【0035】
すなわち、単一ケーシング21Bで形成した1個の蒸気室26内に2個の弁座27、27を並列に配列し、これらの弁座27、27に対向して第1及び第2の個別弁棒51、51により進退する第1及び第2の弁体部28、28を並列に配置し、さらに個別弁棒51、51を、連結棒50を介して1本の共通弁棒29の中間部に固定するように構成している。
【0036】
各個別弁棒51、51はナット52、52等の固定手段によって連結棒50に固定されている。なお、弁棒29の先端部53は、弁ケーシング21Bの蒸気室26内に設けたブッシュ54を介して摺動自在に保持されるようになっている。
【0037】
本実施形態は、複数個の同一構造の弁体部28、28を単一ケーシング21Bの蒸気室26内に収容し、複数個の弁体部28、28それぞれが、個別弁棒51、51の先端部に主弁案内棒34、34を同一軸線上に設け、かつ主弁31´は、副弁32の機能を担う環状突起部35を挟んで一方を主弁キャップ33を介して弁棒29上を摺動案内され、他方の弁棒端部側をガイドブッシュ38によって主弁案内棒34上を摺動案内されるように構成したので、蒸気弁の取り付け角度が例えば水平方向等鉛直方向以外の角度であっても、弁棒29、主弁キャップ33、主弁31´および主弁案内棒35の軸中心は常に同心となるので、主弁31´の自重による主弁31´、弁棒29および主弁ガイド部35の相対的な軸傾斜が起こることはなく、個別弁棒51、51と主弁31´または主弁キャップ33と主弁案内棒34内径部のエッジ部がくさび状とならないため、弁棒摺動部に損傷を与えることがない。
【0038】
よって蒸気弁の重要機能である蒸気弁下流への流入蒸気の遮断機能を損なうことなく蒸気弁開および閉動作を実現することができる蒸気弁である。
【0039】
なお、以上述べた実施形態では、弁棒29および個別弁棒51、51の位置を横位置としたが、横位置以外の任意の角度に設置してもよい。また、1つの蒸気室26内に弁体部を2個並列配置するようにしたが、3個以上の弁体部を並列配置するようにしてもよい。また、弁体部は必ずしも同一構造にする必要はなく、異なる弁構造のものを並列配置するようにしてもよい。
【0040】
(第4実施形態)
図5は本発明の第4実施形態を示す蒸気弁構造図である。
本実施形態の蒸気弁は、縦長の単一弁ケーシング21Cの蒸気室26内に、弁棒29の軸方向に弁体部を2個縦列に配置し、それぞれの弁体部に対応して蒸気出口23および蒸気出口23を設けたことを特徴とするもので、以下詳細に説明する。
【0041】
本実施形態は縦長の単一弁ケーシング21C内に形成された蒸気室26の上側部に蒸気入口管22を直交するように取り付け、また、中間部および下部の側部に蒸気出口管23、23を直交するように取り付けている。そして、蒸気室26内の蒸気出口管23、23に対応した部位にそれぞれ円環状弁座27および27を配置するとともに、これら円環状弁座27、27に圧接および開離する弁体部28、28を設け、この弁体部28、28を1本の共通の弁棒29で操作するように構成している。なお、弁棒29はガイドブッシュ30を介して弁蓋25で摺動自在に保持されるようになっている。
【0042】
本実施形態は、縦長に形成された蒸気室26の中間部および下部に設けた蒸気出口管23、23から蒸気を流出するような構造を採用したために、円環状弁座27および27の蒸気流出口と蒸気出口管23および23とを気密に包囲する必要がある。
【0043】
このために、本実施形態では弁座27および27の外周を断面コ字状の円筒体55、55で包囲し、かつ弁座27および27の蒸気流出口を有底円筒体56、56で気密に包囲し、この有底円筒体56、56の円周部に開口を設けてこの開口を前記蒸気出口管23、23と連通させるようにし、さらに、この有底円筒体56、56の底部に下部ガイドブッシュ57、57を設け、この下部ガイドブッシュ57、57を弁棒29が気密に貫通するようにしている。
【0044】
弁棒29を弁開方向に操作すると、2個の弁体部28、28それぞれの副弁弁シート(符号を省略)がまず開き、続いて主弁弁シート(符号を省略)が開き、蒸気は有底円筒体56、56内に流入し、蒸気出口管23および23からそれぞれ外部に流出する。
【0045】
本実施の形態においても、弁棒摺動部に主弁31´および主弁キャップ33と主弁案内棒34と下部ガイドブッシュ57、57と弁棒29の軸中心に相対的に傾斜が生じることがなく、弁棒29と主弁31´または主弁キャップ33と主弁案内棒34と下部ガイドブッシュ57、57内径部のエッジ部がくさび状とならないため、弁棒摺動部に損傷を与えることがない。よって蒸気弁の重要機能である蒸気弁下流への流入蒸気の遮断機能を損なうことなく蒸気弁開および閉動作を実現することができる蒸気弁である。
【0046】
なお、本実施形態では、弁棒29の位置を縦位置としたが、縦位置以外の任意の角度に傾いた状態としてよい。また、蒸気室26内に弁体部を2個縦列配置するようにしたが、3個以上の弁体部を縦列配置するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施形態を示す蒸気弁構造図。
【図2】本発明の第1実施形態に係る蒸気弁の主要拡大断面。
【図3】本発明の第2実施形態を示す蒸気弁構造図。
【図4】本発明の第3実施形態を示す蒸気弁構造図。
【図5】本発明の第4実施形態を示す蒸気弁構造図。
【図6】通常の発電プラントの蒸気系統概略図。
【図7】従来技術による副弁構造を有する蒸気弁構造図。
【符号の説明】
【0048】
21…弁ケーシング、22…蒸気入口管、23…蒸気出口管、24…開口部、25…弁蓋、26…蒸気室、27…弁座、28…弁体部、29…弁棒、30…ガイドブッシュ、31´…主弁、32…副弁、33…主弁キャップ、34…主弁ガイド部、35…環状突起部、36…ピン、37…ボルト、38…ガイドブッシュ、39…蒸気通路、40…副弁弁シート、41…主弁弁シート、50…連結棒、51…個別弁棒、52…ボルト、55…円筒体、56…有底円筒体、57…下部ガイドブッシュ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気入口管、蒸気出口管および弁蓋によって塞がれる開口部を有し、内部に蒸気室を形成する弁ケーシングと、
この蒸気室の流路中に設けた弁座と、
この弁座に対向して配置された弁体部と、
前記弁蓋を気密に貫通して摺動可能に保持されるとともに、前記弁体部を前記弁座に対して進退させる弁棒と、
を備えた蒸気弁において、
前記蒸気室内の弁棒の中間部に摺動自在に嵌合して設けられた主弁キャップと、
前記弁棒の先端部近傍に環状突起した形状で設けられた副弁と、
前記弁棒の副弁よりも先端側に設けられた主弁案内棒と、
前記主弁案内棒に摺動自在に嵌合されるとともに、前記主弁キャップに固定され、かつ前記副弁の両側を前記主弁キャップと必要最小限の軸方向間隙をあけて挟み副弁弁シートを形成する主弁と、
から前記弁体部を構成したことを特徴とする蒸気弁。
【請求項2】
前記主弁は、前記主弁案内棒に摺動自在に嵌合する部分にガイドブッシュを設けるとともに、当該ガイドブッシュの周囲に蒸気通路を形成したことを特徴とする請求項1記載の蒸気弁。
【請求項3】
前記弁棒と前記副弁とをそれぞれ別体に製作し、両者を接合して一体化したことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の蒸気弁。
【請求項4】
前記副弁と前記主弁案内棒とをそれぞれ別体に製作し、両者を結合して一体化したことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の蒸気弁。
【請求項5】
前記弁ケーシング内に前記弁座および前記弁体部を複数個並列配置し、共通の弁棒に前記弁体部を操作するように構成したことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の蒸気弁。
【請求項6】
前記弁ケーシング内に前記弁座および前記弁体部を複数個縦列配置し、共通の弁棒に前記弁体部を操作するように構成したことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の蒸気弁。
【請求項7】
前記弁ケーシングに前記弁棒の操作方向に沿って複数個の蒸気出口管を接続し、各蒸気出口管と前記弁座の蒸気流通口とを、前記弁棒によって貫通される有底円筒体によって気密に連通するようにしたことを特徴とする請求項6記載の蒸気弁。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の蒸気弁を備えたことを特徴とする発電設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−329073(P2006−329073A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153799(P2005−153799)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】