説明

蒸気止め弁用操作機

【目的】油の使用種類および油の使用量が少なくて済む蒸気止め弁用操作機の提供。
【構成】この発明の蒸気止め弁用操作機1は、制御装置からの指令に応じて可逆回転動作をする出力軸12を備えた電動機11、電動機11の出力軸12の前記動作を蒸気止め弁の全開およびリセットを行うのに必要な動作に変換する動作変換用機構21,蒸気止め弁が全開された場合に電動機11を駆動することなしにこの状態を保持できるようにする全開状態保持機構5および全閉操作用ばね体14を内部に装着した操作機構部2、この操作機構部2の動作に応じて蒸気止め弁の弁体に開閉動作を行わせるリンク機構15、シリンダー,ピストンなどを有し油圧の有無に応じて全開状態保持機構5をロック状態/ロック解除状態に切り換えてセットする油圧操作機構部6を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蒸気タービンの蒸気入口部に設置される蒸気止め弁の開閉操作に用いられる蒸気止め弁用操作機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地熱蒸気タービンを含む蒸気タービンの主蒸気入口部や,コンバインドサイクルプラント用蒸気タービンの混圧蒸気入口部などには、蒸気タービンおよび蒸気タービンで駆動される発電機などの被駆動機の保護などのために、主蒸気止め弁,混圧蒸気止め弁などと称せられている蒸気止め弁が設置されている。これ等の蒸気止め弁は蒸気タービンの運転開始時に全開とされ,蒸気タービンの運転停止時に全閉とされるが、蒸気タービンを持つプラントに何らかの不具合が発生してプラントの緊急停止を要する場合には、迅速かつ確実に全閉できるように配慮されている。そうして、蒸気止め弁の緊急停止を含む開閉操作が正常に行えることを蒸気タービンの運転中にも確認できるようにするために、蒸気止め弁を含む蒸気供給配管系統を少なくとも2系統備え、蒸気止め弁の開閉操作を電磁弁の操作を介して行うようにした蒸気タービンプラントが知られている。(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
以下、図8,図9を用いて従来例の蒸気タービンに用いられている蒸気止め弁用操作機の概要について説明する。ここで、図8は従来例の蒸気タービンプラントを説明するその要部の概要を示す説明図であり、図9は図8に示した従来例の蒸気止め弁用操作機を説明する説明図である。図8においては、蒸気タービンプラントは地熱蒸気タービンプラントとして例示されており、地熱蒸気井から取り入れられた地熱蒸気は周知の気水分離処理,フラッシャー処理などが行われた上で、蒸気タービン用の主蒸気99として用いられることが一般的であるので、図8ではこのような内容を一括して主蒸気源98として示している。主蒸気源98で得られた主蒸気99は、この事例の場合には2系統に分かれ、主蒸気止め弁91a,主蒸気加減弁92a、および主蒸気止め弁91b,主蒸気加減弁92bを通って蒸気タービン96に供給され、蒸気タービン96に接続された発電機95の駆動に用いられる。地熱蒸気を直接に利用する地熱蒸気タービンプラントの場合には、蒸気タービン96の駆動を終えて復水された主蒸気99は、還元井97に戻されるのが一般的である。
【0004】
蒸気タービン96の出力は不図示の負荷制御装置によって主蒸気加減弁92(主蒸気加減弁92a,主蒸気加減弁92bを総称する場合には、以降も含めてこのように記述する。)の弁開度を調整することにより行われる。主蒸気止め弁91(主蒸気止め弁91a,主蒸気止め弁91bを総称する場合には、以降も含めてこのように記述する。)は蒸気タービンプラントの運転開始時に全開に、運転停止時に全閉とされる。また、蒸気タービンプラントに不具合が発生した緊急時には、主蒸気止め弁91は速やかに全閉とされる。この主蒸気止め弁91の全開,全閉の操作は、この事例の場合には、主蒸気止め弁91a,主蒸気止め弁91bのそれぞれに個別に設けられた、油圧を駆動源とした油圧駆動装置8a,油圧駆動装置8bによって行われている。図9に示したように、油圧駆動装置8(油圧駆動装置8a,油圧駆動装置8bを総称する場合には、以降も含めてこのように記述する。)は駆動油89によって駆動されるパワーピストン81と、駆動油89のパワーピストン81への供給を制御するリレーピストン82とを有し、リレーピストン82の動作制御用として制御油88が使用され、リレーピストン82への制御油88の供給の指令用として電磁弁83cが配設されている。油圧駆動装置8による主蒸気止め弁91の開閉操作は、主蒸気止め弁用の制御装置である制御装置94も用いて次のようにして行われる。
【0005】
まず、全閉状態の主蒸気止め弁91を全開する場合には、電磁弁83cを制御装置94からの電気信号によって開くと、制御油88の油圧駆動装置8の排出口88bからの排出が開始されることで、図9におけるリレーピストン82の下側の空間の圧力が、リレーピストン82の上側の空間の圧力よりも低くなることで、リレーピストン82にはリターンスプリング82aの引張力が働いているにもかかわらず、リレーピストン82は図9におけるY方向に動かされる。リレーピストン82がY方向に動かされると、リレーピストン82と一体に動作するように構成されたリレー83がY方向に動くことで、流入口89a以降の油圧駆動装置8内の駆動油89の通流経路が、流入口89a→リレー83に設けられている駆動油89の導入通路→ブッシュ84に設けられている駆動油89の通流路→図9におけるパワーピストン81の下側のパワーシリンダー85に至る経路として形成され、駆動油89が図9におけるパワーピストン81の下側のパワーシリンダー85に流入する。パワーシリンダー85にこのようにして流入された駆動油89の油圧によってパワーピストン81がX方向に動かされ、主蒸気止め弁91はパワーピストン81に装着された駆動軸86を介して開操作されて全開する。図9に示されたリレーピストン82とパワーピストン81の位置は、主蒸気止め弁91が全開状態にある場合の位置である。なお、主蒸気止め弁91のこの開操作の際に、主蒸気止め弁91を全閉するように作用する全閉操作用ばね体93が付勢される。
【0006】
また、全開状態の主蒸気止め弁91を全閉する場合には、電磁弁83cを制御装置94からの電気信号によって閉じると、制御油88の油圧駆動装置8の排出口88bからの排出が停止されることで、図9におけるリレーピストン82の下側の空間の圧力が,電磁弁83cが開いている場合よりも上昇し、リレーピストン82にはリターンスプリング82aの引張力が働くこともあって、リレーピストン82は図9におけるX方向に動かされる。リレーピストン82がX方向に動かされると、リレーピストン82と一体に動作するように構成されたリレー83がX方向に動くことで、図9におけるパワーピストン81の下側のパワーシリンダー85に満たされている駆動油89の排出経路が、パワーピストン81の下側のパワーシリンダー85→ブッシュ84に設けられている駆動油89の通流路→リレー83に設けられている駆動油89の排出通路→駆動油89の排出口89bに至る経路として形成され、駆動油89がパワーピストン81の下側のパワーシリンダー85から排出される。パワーピストン81に働いていたパワーピストン81の下側の駆動油89の油圧に基づく力が喪失されることで、主蒸気止め弁91は全閉操作用ばね体93の力によって全閉される。
【0007】
なお、以上説明した油圧駆動装置8と全閉操作用ばね体93とは、総称して蒸気止め弁用操作機と呼ばれるが、主蒸気止め弁91では全開する場合には駆動油89の油圧による力を用いて行われ、全閉する場合には全閉操作用ばね体93による力を用いて行われるので、油圧駆動装置8と全閉操作用ばね体93とが用いられる主蒸気止め弁用操作機は、一般にばね単動型操作機とも呼ばれている。すなわち、図8,図9を用いて示された蒸気止め弁用操作機は、ばね単動型の油圧操作機であり、使用される油は駆動油89と制御油88の2種類であり、制御油88はリレーピストン82の動作に使用されるのみなのに対し、駆動油89は主蒸気止め弁91の全開および主蒸気止め弁91の全閉を行う全閉操作用ばね体93の付勢に使用されるので、その使用油量は制御油88と対比して多量になっている。
【特許文献1】特開2003−336603号公報 (第4−5頁、第1−2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した蒸気タービンプラントの蒸気止め弁の開閉操作に用いられている従来技術による蒸気止め弁用操作機8は、制御装置94からの電気信号による電磁弁83cに対する開閉指令によって蒸気止め弁91の開閉操作を行うことができる。しかしながら、従来技術による蒸気止め弁用操作機8では、駆動油89と制御油88の2種類の油が併用されること、また、駆動油89は制御油88と対比すると油の使用量が多量であることによって、制御油88に対する油配管よりも大口径の油配管が必要になることで、広い設置スペースが油配管に要することなどが問題点として指摘されている。したがってこの発明の目的は、油の使用種類および油の使用量が少なくて済む蒸気止め弁用操作機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明では前述の目的は、
1)蒸気タービンに設置される蒸気止め弁の全開操作および全閉操作を行う蒸気止め弁用操作機において、前記蒸気止め弁の全開操作を行う場合にはその出力軸がある方向の回転動作を行うと共に蒸気止め弁の全閉状態においてリセットを行う場合にはその出力軸が蒸気止め弁の全開操作時とは逆方向となる方向の回転動作を行う可逆回転動作をする電動機と、この電動機の出力軸の可逆回転動作を蒸気止め弁の全開および前記リセットに必要な動作に変換する動作変換用機構と、蒸気止め弁が全開された状態においては前記電動機の駆動を行うことなしに蒸気止め弁の全開状態を保持する全開状態保持機構とを有する操作機構部と、前記動作変換用機構の蒸気止め弁の全開操作時の前記動作により付勢されて前記蒸気止め弁の全閉操作時の駆動源となる全閉操作用ばね体と、蒸気止め弁の全開操作開始前の全閉状態において油圧を印加することで前記全開状態保持機構をリセットすると共に,蒸気止め弁の全閉操作時に前記油圧を釈放することで前記全開状態保持機構をリセット状態から解除する油圧動作機構部とを備えること、または、
2)前記1項に記載の蒸気止め弁用操作機において、前記油圧動作機構部に印加される油圧は、タービン保護のための非常停止装置に用いられている非常停止油による油圧であること、または、
3)前記1または2項に記載の蒸気止め弁用操作機において、前記動作変換用機構は、前記電動機の出力軸の前記可逆回転動作を可逆直進動作に変換する互いに嵌め合うことが可能な雄ねじと雌ねじとでなるねじ機構と;前記電動機の出力軸に組み合わせられる一方の端部の側で前記出力軸の回転動作には同体で回転可能で、かつ出力軸の軸長方向には移動可能であるように組み合わせられ,その他方の端部の側に前記ねじ機構の雄ねじを持つと共に,前記一方の端部と前記他方の端部との中間となる部位に前記雄ねじのねじ外径よりも大きな外形寸法の段差部を持つねじスピンドルと;前記ねじ機構の雌ねじを内面側に持っ筒状部を一方の端部の側に、前記主蒸気止め弁の弁体を回動自在に保持する弁軸を回動させるためのリンク機構を装着するリンク機構装着部を他方の端部に、前記全閉操作用ばね体である圧縮コイルばねを掛止するためのばね体掛止部を前記一方の端部と前記他方の端部との中間となる部位にそれぞれ持ち、前記電動機の出力軸の前記可逆回転動作などに関連付けて前記リンク機構装着部に可逆直進動作を行わせる操作軸と;前記ねじスピンドルの一方の端部の外面部が回転可能に嵌め合わされる一方の内面部と、前記操作軸の一方の端部の外面部に軸長方向に移動可能に嵌め合わされて前記一方の内面部よりも大きな寸法を持つ他方の内面部と、これ等の一方の内面部と他方の内面部とが接続される部位にねじスピンドルの前記段差部に当接されるねじスピンドル掛止部が形成される内面を持ち、前記全開状態保持機構のロックを行う際に全開状態保持機構が掛止される保持機構掛止部を外面部に持つ円筒状のブッシュと;前記ねじ機構の一方の端部の側に前記ブッシュをその一方の内面部で嵌め合わせた状態で,これ等のねじ機構とブッシュとをねじ機構が回動可能であるようにして締結する締結体とを有するものであること、または、
4)前記1ないし3の何れかの項に記載の蒸気止め弁用操作機において、前記全開状態保持機構は、前記ブッシュの外面にその中心軸線がほぼ接するように、しかもブッシュの中心軸線とほぼ直交する姿勢関係で回動可能に配設され,前記ロックが行われる際にブッシュの前記保持機構掛止部に掛止される部位がカム面をなしている円形軸状のカム軸を有するものであること、または
5)前記1ないし4の何れかの項に記載の蒸気止め弁用操作機において、前記油圧動作機構部は、油圧用のシリンダー部とこのシリンダー部に可逆直進動作可能に嵌め合わされると共に前記油圧の印加の有無に応じて可逆直進動作を行うピストン部とこのピストン部と一体の可逆直進動作を行うピストン軸とを有し,前記油圧の印加状態に応じてこのピストン軸により全開状態保持機構の前記カム軸を可逆回動駆動することで,油圧の印加時にこのカム軸を前記保持機構掛止部に掛止して全開状態保持機構をロック状態にすると共にこの油圧の釈放時に前記全開状態保持機構をロック状態から解除するものであることにより達成される。
【発明の効果】
【0010】
この発明による蒸気止め弁用操作機は、前記課題を解決するための手段の項で述べた構成とすることで、蒸気止め弁91の全開操作をこの操作機に備えられた電動機の駆動力によって行い、蒸気止め弁91の全閉操作を前記電動機の駆動力によって付勢された全閉操作用ばね体のばね力によって行うことになるので、ばね単動型の電動操作機であることになる。そうして、油の使用種類は制御油88の1種類のみであり、しかも、この制御油88がこの操作機が備えるブッシュの保持機構掛止部を掛止状態(ロック状態)にするためにのみ用いられることで、その使用油量を従来例の制御油88の場合と同様に少量で済ますことが可能になる。また、蒸気止め弁91の操作用に必要な油配管は、制御油88用の1本の細い油配管と、この制御油88が元になって生じたドレイン油用の1本の細いドレイン油配管の合計2本で済むことになる。したがって、従来例の油圧操作機の場合に必要とした高圧で多量の駆動油89が不要になることで、駆動油89とそれから生じるドレイン油のために必要であった大口径の駆動油用配管を全く不要にすることが可能になり、油配管を設置するためのスペースの縮小が可能になるとの効果を得られる。
さらに、制御油88としてタービン保護のための非常停止装置に用いられている非常停止油を利用することにより、非常停止油は蒸気タービンプラントの緊急停止時にその油圧が解放されることから、蒸気タービンプラントの緊急停止時に制御油88の油圧がそれ自身で釈放される。これにより、蒸気止め弁の全開状態保持機構のロック状態が解除され、緊急時に速やかに蒸気を遮断することができるようになり、蒸気タービンプラントの保護装置と連動した緊急遮断機能を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下この発明を実施するための最良の形態を図1〜図7を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては、図8,図9に示した従来例の蒸気タービンプラントおよび蒸気止め弁用操作機と同一部分には同じ符号を付しその説明を省略する。また、以後の説明に用いる図中には、図8,図9で付した符号については代表的な符号のみを記すことがある。なお、この発明の蒸気止め弁用操作機は図1〜図7に示された内容のみに限定されるものではない。図1はこの発明の実施の形態の一例による蒸気止め弁用操作機を搭載した主蒸気止め弁が適用されている蒸気タービンプラントを説明するその要部の概要を示す説明図であり、図2は図1に示したこの発明の一例の蒸気止め弁用操作機を説明する主蒸気止め弁と共に示す説明図である。図3はこの発明の一例の蒸気止め弁用操作機のリセット状態の図2における一部破断したP矢視図である。図4はこの発明の一例の蒸気止め弁用操作機の全開状態保持機構にロックが施された状態とされた場合の図2における一部破断したP矢視図であり、図5は図4におけるA−B断面図である。図6は図4におけるR部の図2におけるP矢視図であり、図7は全開状態保持機構が持つカム軸の図5におけるC−C断面図である。
【0012】
図1〜図7において、1は、電動機11,操作機構部2,全閉操作用ばね体である圧縮コイルばね14,リンク機構15,油圧操作機構部6とフレーム類とを備えるこの発明の蒸気止め弁用操作機である。図8,図9に示された従来例の蒸気タービンプラントの場合と対比すると、この発明の蒸気止め弁用操作機1は、従来例の場合の油圧駆動装置8と全閉操作用ばね体93とが持つ機能とを一体に有して、蒸気止め弁91の全開操作および蒸気タービン96の緊急停止時を含む全閉操作を行う蒸気止め弁用操作機であることになる。なお、蒸気止め弁用操作機1は、蒸気止め弁91a,91bのそれぞれに個別に備えられているので、個別の蒸気止め弁用操作機1を指定する場合には、蒸気止め弁用操作機1aおよび蒸気止め弁用操作機1bと記述するが、以降も含めて蒸気止め弁用操作機1a,1bを総称する場合には、単に蒸気止め弁用操作機1と記述する。この発明の蒸気止め弁用操作機1が持つ電動機11は、例えば、歯車式減速機構を持つ誘導電動機であり、図9に示した蒸気止め弁91用の制御装置94と同等の機能を持つ制御装置94Aからの指令に応じて可逆回転動作をする出力軸12を備えている。
この出力軸12の可逆回転動作は、蒸気止め弁91の全開操作時にはある方向の回転動作を行うと共に,蒸気止め弁91の全閉状態においてリセットを行う場合(図3は蒸気止め弁91の全閉状態においてリセットがなされた状態の蒸気止め弁用操作機1を示している。)には蒸気止め弁91の全開操作時とは逆方向となる方向の回転動作を行うように設定されている。操作機構部2は、この事例の場合には、電動機11の出力軸12の可逆回転動作を蒸気止め弁91の全開およびリセットを行うのに必要な動作に変換する動作変換用機構21と、蒸気止め弁91が全開された状態の場合に電動機11を駆動することなしにこの全開状態を保持できるようにする全開状態保持機構5とを備えると共に、全閉操作用ばね体14を後記するように内部に装着している。動作変換用機構21は、さらに、ねじ機構22、ねじスピンドル24、操作軸3、ブッシュ4、締結体29を備えている。このねじ機構22はねじスピンドル24の他方の端部24bの側に形成された雄ねじ22aと、操作軸3の一方の端部3a側に形成された雌ねじ22bとで構成され、これ等の雄ねじ22aと雌ねじ22bとは、互いに嵌め合うことが可能な形状・寸法を持っている。
【0013】
ねじスピンドル24はその一方の端部24aの側に円筒状をした筒状部25を持ち、この筒状部25の内面を電動機11の出力軸12と、出力軸12の回転動作に対しては同体で回転可能で,かつ出力軸12の軸長方向には移動可能であるように、例えば、出力軸12に形成されたキー溝に装着されるキー26を用いて組み合わせられている。この筒状部25の外周面の端部24a側には、この事例の場合には、締結体29を装着するための雄ねじが形成されている。また、ねじスピンドル24はその他方の端部24bの側には前記雄ねじ22aが形成されており、端部24aと端部24bとの中間となる部位には雄ねじ22aのねじ外径よりも大きく,かつ筒状部25の外面部の寸法よりも大きな外形寸法を持つ鍔状の掛止部27が形成されている。操作軸3は、その一方の端部3aの側に前記雌ねじ22bが内面側に形成された円筒状部31を、その他方の端部3bの側にリンク機構15を装着するこの事例の場合のリンク機構装着部である貫通孔35を、また、端部3aと端部3bとの中間となる部位に圧縮コイルばね14を掛止するためのばね体掛止部33を備えている。
ブッシュ4は円筒状体であり、その一方の端部4aの側にねじスピンドル24の筒状部25の外面部が回転可能に嵌め合わされる一方の内面部41と、他方の端部4bの側に操作軸3の円筒状部31の外面部に軸長方向に移動可能に嵌め合わされる,前記内面部41よりも大きな径方向寸法を持つ他方の内面部42とが形成されている。内面部41と内面部42とは、端部4aと端部4bの中間部位で接続されるが、この接続される部位には、ねじスピンドル24の掛止部27の端部24a側の面に当接される段差状のねじスピンドル掛止部43が形成されている。すなわち、ブッシュ4には、ねじスピンドル24が筒状部25を内面部41に嵌め合わせると共に、掛止部27の端部24a側の面をねじスピンドル掛止部43に当接させて配設されることになる。このブッシュ4への配設の際に、ねじスピンドル24は、その筒状部25の外周面の端部24a側に形成された前記雄ねじに、この事例の場合にはナットである締結体29を装着し、電動機11の出力軸12の回転時にねじスピンドル24が内面部41に対して回動が可能なようにして締結される。
【0014】
また、ブッシュ4の外面部には、全開状態保持機構5をロック状態にする際に、全開状態保持機構5の持つカム軸51(蒸気止め弁用操作機1にはカム軸としてカム軸51Aとカム軸51Bとを備えているが、カム軸51A,カム軸51Bを総称する場合には、以降も含めてこのように記述する。)のカム面52が当接される保持機構掛止部44,44が、この事例の場合には、出力軸12,ねじ機構22,ねじスピンドル24,操作軸3およびブッシュ4の共通中心軸線(図3,図4に1点鎖線で示す)Z−Zを含む平面に関して互いに面対象となる関係で相対して形成されている。このブッシュ4はその外面部を上部取付台71に共通中心軸線Z−Zに平行する方向に移動可能に装填される。
全開状態保持機構5はブッシュ4の外面にその中心軸線がほぼ接するように、しかもブッシュ4の中心軸線とほぼ直交する姿勢関係で回動可能に配設され,ブッシュ4の前記保持機構掛止部44,44にそれぞれ掛止される部位がカム面52をなしている円形軸状のカム軸51A,51Bを備えている。カム軸51A,51Bがそれぞれに持つカム面52も、保持機構掛止部44,44の場合と同様に、共通中心軸線Z−Zを含む平面に関して互いに面対象となる関係で形成されている。このカム軸51A,51Bは上部取付台71に形成された貫通孔に回動自在に装着される(図3,図4,図5を参照)。これ等のカム軸51Aとカム軸51Bとは、互いに同一の仕様を持つ歯車53,53を介して連結されており、また、カム軸51Aには油圧操作機構部6のピストン軸63の可逆直進動作に応じてカム軸51Aを可逆回動させるレバー体54が装着されていることで、カム軸51Aとカム軸51Bとは、ピストン軸63の可逆直進動作によって互いに面対称となる関係で可逆回動されることになる(図5,図6を参照)。
【0015】
リンク機構15は、操作軸側リンク16と,弁軸側リンク17と,操作軸3の貫通孔35と操作軸側リンク16とを回動自在に連結するピン18Aと,操作軸側リンク16と弁軸側リンク17とを回動自在に連結するピン18Bとで構成されている。弁軸側リンク17の反ピン18B側の端部部分は、蒸気止め弁91の弁軸913に相互間の回動ができないようにして装着されている。油圧操作機構部6はシリンダー部61と、このシリンダー部61に可逆直進動作可能に嵌め合わされるピストン部62と、このピストン部62に装着されたピストン軸63と、圧縮コイルばね64とを備えている。シリンダー部61には制御油88をシリンダー部61の内部に流入させるための流入口65と、流入口65から見てピストン部62の反対側となる部位に排油口66が形成されている。この排油口66は、シリンダー部61とピストン部62との隙間から洩れてシリンダー部61の圧縮コイルばね64が配設された部位に流入した制御油88を、油圧操作機構部6から排出させるために設けられている。
油圧操作機構部6への制御油88の油圧の印加は、制御装置94Aからの指令によって動作する三方電磁弁19(なお、三方電磁弁19は、蒸気止め弁用操作機1a,1bのそれぞれに個別に備えられているので、個別の三方電磁弁19を指定する場合には、三方電磁弁19aおよび三方電磁弁19bと記述するが、以降も含めて三方電磁弁19a,19bを総称する場合には、単に三方電磁弁19と記述する。)の開弁操作によって行われる。三方電磁弁19が開弁されると、制御油88の三方電磁弁19を介する通流路が開路され、制御油88の油圧がシリンダー部61に印加され、制御油88が流入口65からシリンダー部61の内部に流入されて、制御油88の油圧によってピストン部62が図5において紙面に向かって左方向に移動させられる力を受け、圧縮コイルばね64が制御油88の油圧によって圧縮されて付勢されると共に、ピストン軸63がピストン部62と共に移動することになる。
【0016】
また、制御装置94Aからの指令による三方電磁弁19の閉弁操作が行われると、制御油88の三方電磁弁19を介する通流路が閉塞され、シリンダー部61に充填された制御油88はドレイン油88aとして三方電磁弁19を介してドレインに排出されることになるので、シリンダー部61に印加される制御油88の油圧は実質的に零になる。したがって、ピストン部62は制御油88の油圧によって圧縮されることで付勢されていた圧縮コイルばね64が発生するばね力によって、図5において紙面に向かって右方向に移動させられる力を受けることになり、ピストン軸63もピストン部62と共に紙面に向かって右方向に移動することになる。すなわち、油圧操作機構部6のピストン軸63は、流入口65に加わる制御油88の油圧の有無に応じて可逆直進動作を行うことになる。
この事例の場合の蒸気止め弁用操作機1においては、制御油88には蒸気タービンプラントの安全保護用に用いる非常停止油と称せられている油が用いられている。この制御油88を蒸気止め弁用操作機1に供給するための油配管87は三方電磁弁19が介挿されるようにして敷設され、また、三方電磁弁19のドレイン油88aの排出口以降には、ドレイン油配管87aが敷設されている。なお、油圧操作機構部6のシリンダー部61の圧縮コイルばね64が配設された部位に流入した制御油88は、排油口66からドレイン油88aの一部として排出されるが、そのための配管として、例えば、ドレイン油配管87aに接続されるドレイン油配管87bが敷設される。
【0017】
この発明の蒸気止め弁用操作機1を構成するための主なフレーム類には、ばね体掛止部33よりも端部3b側の操作軸3を除く操作機構部2,および圧縮コイルばね14を装着または収容するものとして、上部取付台71、下部取付台72および上部取付台71と下部取付台72との相互間隔を保持するスタンド73が用いられており、電動機11は上部取付台71の上面部に装着されている。なお、圧縮コイルばね14は、操作軸3のばね体掛止部33と上部取付台71の下面に配設されたばね受け体74との間に配設され、油圧操作機構部6は上部取付台71の側面部に配設される取付体75に装着されている。さらに、フレーム類を含む蒸気止め弁用操作機1の全体は、ブラケット76によって蒸気止め弁91に装着される。ここで、この事例の場合の、蒸気止め弁用操作機1が組み合わされるチェッキ型蒸気止め弁である蒸気止め弁91の、蒸気止め弁用操作機1に関連する構造の概略を図2を用いて説明する。蒸気止め弁91は弁胴911,弁体912,弁軸913とカバー914などを備え、弁体912は弁胴911に回動自在に装填された弁軸913に固定されており、弁軸913の回動に応じて蒸気止め弁91を全開状態または全閉状態にする。弁軸913はカバー914を貫通して弁胴911の外部に突き出されて配設されているので、リンク機構15の弁軸側リンク17は、その反ピン18B側の端部部分で、このカバー914から突き出された弁軸913に装着されていることになる。
【0018】
図1〜図7に示すこの発明の実施の形態の一例による蒸気止め弁用操作機1では前述の構成としたので、蒸気止め弁91が全閉状態であってしかも蒸気止め弁用操作機1のリセットがなされている場合には、蒸気止め弁用操作機1の各部は図3に示す状態とされている。この状態の場合には、操作軸3はその移動可能範囲の図3の紙面における最下端に位置している。またこの時には、制御装置94Aから三方電磁弁19に対しては、制御油88の油圧を油圧操作機構部6に印加しないままにするとの内容の指令が出されており、油圧操作機構部6の流入口65には制御油88の油圧が印加されていないので、そのピストン軸63はその移動可能範囲の図3〜図6の紙面における最右端に位置している。全開状態保持機構5のカム軸51A,51Bのそれぞれのカム面52は、ブッシュ4の保持機構掛止部44には当接されておらず、全開状態保持機構5がブッシュ4に掛止されていない状態、すなわち、ブッシュ4のロックが未実施の状態になっている。そうして、図3に示す蒸気止め弁用操作機1は、蒸気止め弁91の全閉状態においてリセット状態にあり,しかも,ロック解除状態にあることになる。またこの時、ブッシュ4の上端面は上部取付台71の上端面に最も近接された関係の状態になっており、また、ばね体掛止部33の下面と下部取付台72の上端面との間の間隙長は、この事例の場合には、実質的に零の状態になっている。
【0019】
この状態で蒸気止め弁91を全開させる場合には、制御装置94Aからは、まず、電動機11に対する指令内容を電動機11が停止状態を継続するとしたままで、三方電磁弁19に対する指令内容が、制御油88の油圧を油圧操作機構部6に印加せよとする指令に改められる。この指令により、制御油88の三方電磁弁19を介する油圧操作機構部6への通流路が開路され、油圧操作機構部6のシリンダー部61の流入口65に制御油88の油圧が印加されることで、ピストン部62が圧縮コイルばね64を付勢しつつ移動して、ピストン軸63はその移動可能範囲の図3〜図6の紙面における最左端の位置まで移動する。これにより、全開状態保持機構5のカム軸51A,51Bのそれぞれのカム面52が、ブッシュ4の両方の保持機構掛止部44のそれぞれに当接されることになり、蒸気止め弁用操作機1はリセット状態であることに加えて、全開状態保持機構5がブッシュ4に掛止されたロック状態になる。図4は、このリセット状態にあると共にロック状態にもある蒸気止め弁用操作機1を示している。
【0020】
蒸気止め弁用操作機1をロック状態にする操作が完了すると、制御装置94Aからの指令内容は、三方電磁弁19に対する指令内容を制御油88の油圧の油圧操作機構部6への印加を継続するとしたままで、電動機11に対する指令内容が、電動機11を駆動して蒸気止め弁91を全開させよとする内容に改められる。この蒸気止め弁91の全開指令に関する内容は、電動機11に関しては、操作軸3を図4の紙面における共通中心軸線Z−Zに沿う上方向に移動するようにその出力軸12を回転させよとする内容である。電動機11の駆動開始によってその出力軸12はある方向への回転を開始するが、ねじスピンドル24とブッシュ4とは,ねじスピンドル24は単独で回転可能であると共に,共通中心軸線Z−Zに沿う方向に関してはブッシュ4とねじスピンドル24とは一体になって移動するようにされており、また、ブッシュ4が全開状態保持機構5によってロック状態にされていることから、ねじ機構22が持つ機能によって、操作軸3のみが共通中心軸線Z−Zに沿う上方向への移動を開始する。その際、操作軸3と一体のばね体掛止部33も上方向へ移動するので、圧縮コイルばねである全閉操作用ばね体14は圧縮されることで付勢される。操作軸3の上方向への移動に伴って、その端部3bおよびリンク機構装着部である貫通孔35も上方向へ移動するので、リンク機構15が持つ前述の構成によって、弁軸側リンク17は弁軸913の中心位置を中心にして、図4においてその紙面に向かって反時計方向に回動する。
【0021】
弁軸913が所定位置まで回動して蒸気止め弁91が全開状態になる(図4ではこの状態での弁軸側リンク17を1点鎖線で示している。)と、制御装置94Aからの指令は、三方電磁弁19に対する指令内容はそのままで、蒸気止め弁用操作機1の電動機11を駆動せよとする指令のみが解除される内容に改められる。この蒸気止め弁用操作機1の電動機11の駆動に関する指令が解除されることで、電動機11の駆動が停止される。この時、操作軸3は、蒸気止め弁91の全閉位置→全開位置に従う弁軸913の回動角度に対応したストローク(図4におけるL寸法)だけ上方向に移動した状態になり、全閉操作用ばね体14はこのL寸法だけ圧縮されることで付勢をされていることになる。そうして、蒸気止め弁91は全開状態にあり、蒸気止め弁用操作機1はリセット状態にあると共にロック状態にもあることになる。またこの時、ブッシュ4の上端面と上部取付台71の上端面との位置関係は、図3,図4に示された状態と同一の位置関係のままになっているが、しかし、下部取付台72の上端面とばね体掛止部33の下面との間の間隙長は、図3,図4に示された状態に対して、L寸法だけ増大されていることになる。
蒸気止め弁用操作機1により開閉操作される蒸気止め弁91を備えたタービンプラントは、前記の蒸気止め弁91が全開で,しかも蒸気止め弁用操作機1がリセットおよびロックを行われた状態で運転されることになる。この蒸気タービンプラントに何らかの不具合が発生してプラントの緊急停止を要することになった場合には、制御装置94Aからの指令は、蒸気止め弁用操作機1の電動機11の駆動を停止するとしたままで、三方電磁弁19に対する指令内容のみが、制御油88の油圧を解放せよとする指令に改められか、もしくは、蒸気止め弁用操作機1の場合には、蒸気タービンプラントの安全保護用に用いる非常停止油と称せられている油が制御油88に用いられていることで、非常停止油がプラントの緊急停止時にはその油圧が解放されるようにされた油であることから、制御油88の油圧がそれ自身で解放されることになる。
【0022】
こうしたことにより、油圧操作機構部6のシリンダー部61内に充填されていた制御油88は三方電磁弁19を介してドレインに排出される。このために、前記したところにより、ピストン軸63は、図3〜図6において紙面に向かって右方向に移動することになる。このピストン軸63の右側への移動動作が、レバー体54を介してカム軸51Aを図6において紙面に向かって反時計方向に回動させ、カム軸51Aの回動動作は歯車53,53を介してカム軸51Bに伝達されることもあり、結果として、カム軸51A,51Bがそれぞれに持つカム面52の、ブッシュ4の保持機構掛止部44,44への掛止状態が解除されることで、蒸気止め弁用操作機1はトリップ状態にされる。なお、プラントの緊急停止時には、制御油88の三方電磁弁19を介する油圧操作機構部6への供給通路が閉塞されると共に、油圧操作機構部6のシリンダー部61内の制御油88の三方電磁弁19を介するドレインへの排出通路が開路される。
蒸気止め弁用操作機1がリセットおよびロックが施されていた状態からトリップ状態にされると、操作軸3,ねじスピンドル24とブッシュ4とは一体で、ストロークLだけ圧縮された全閉操作用ばね体14が発生するばね力により、共通中心軸線Z−Zに平行し,かつ図3,図4における紙面に向かって下向きの方向に移動し、下部取付台72の上端面とばね体掛止部33の下面との間の間隙長を実質的に零の状態にまで戻す。この動作により、操作軸3のリンク機構装着部である貫通孔35も下方向へ移動するので、リンク機構15が持つ構成によって、弁軸側リンク17は弁軸913の中心位置を中心にして回動して、蒸気止め弁91を全閉状態にする。すなわち、蒸気止め弁用操作機1がトリップ状態にされることで、蒸気止め弁91は速やかに全閉されることになる。この時、図3,図4に示された状態と対比すると、ブッシュ4の上端面については,L寸法だけ下がった位置にあることになり、また、ばね体掛止部33の下面と下部取付台72の上端面との間の間隙長については,実質的に零の状態に戻ることになる。
【0023】
蒸気止め弁用操作機1がトリップされることで蒸気止め弁91が全閉された蒸気タービンプラントは、蒸気止め弁91を全閉状態に保持したままでプラントの不具合原因の除去作業が行われ、それに続いて蒸気タービンプラントが再運転可能であることを確認する作業が実施される。蒸気タービンプラントの再運転が可能であることを確認されると、蒸気止め弁用操作機1をリセット状態に戻す処置、すなわち、蒸気止め弁用操作機1の各部を図3に示す状態に戻す処置が行われる。この場合には、制御装置94Aからは、まず、三方電磁弁19に対しては制御油88の油圧を解放するとの指令内容のままで、蒸気止め弁用操作機1の電動機11を前述した蒸気止め弁91の全開時とは逆方向に回転させよとする指令が出される。電動機11の駆動開始によってその出力軸12は、蒸気止め弁91の全開時の場合とは逆方向に回転を開始して、ねじ機構22が持つ機能によって、ねじスピンドル24は図3の紙面における共通中心軸線Z−Zに沿う上方向への移動を開始する。
前述したようにねじスピンドル24とブッシュ4とは,ねじスピンドル24は単独で回転可能であると共に,共通中心軸線Z−Zに沿う方向に対してはブッシュ4とねじスピンドル24とは一体になって移動するようにされており、また、この場合にはブッシュ4が全開状態保持機構5によってロックされていないことから、この場合のブッシュ4は、ねじスピンドル24と共に共通中心軸線Z−Zに沿う上方向へ移動を行うことになる。なお、操作軸3は、この場合には全閉操作用ばね体14によって共通中心軸線Z−Zに沿う下方向へ押圧されていることから、その位置は変化しない。ブッシュ4の上端面が上部取付台71の上端面とはほぼ同一面になる位置まで上昇すると、制御装置94Aからの指令は、三方電磁弁19に対しては制御油88の油圧を解放するとの指令内容のままで、蒸気止め弁用操作機1の電動機11の駆動を解除するとの指令内容に改められる。この指令により、ブッシュ4などの移動が停止されることで、蒸気止め弁91は全閉状態であって、蒸気止め弁用操作機1はその各部がリセット状態にあり,しかも,ロック解除状態にある図3に示した状態に戻ったことになる。
【0024】
以上説明したように、この発明の実施の形態の一例による蒸気止め弁用操作機1では、蒸気止め弁91の全開操作は電動機11の駆動力によって行われ、蒸気止め弁91の全閉操作は全閉操作用ばね体14のばね力によって行われ、さらに、全閉操作用ばね体14の付勢は電動機11の駆動力によって行われので、蒸気止め弁用操作機1は、ばね単動型の電動操作機であることになる。ところで、蒸気止め弁用電動操作機のストロークタイムは油圧操作式のものと比較して遅いと一般に言われている。しかし、蒸気源として地熱蒸気を用いる地熱蒸気タービンプラントの主蒸気の蒸気圧は、蒸気源としてボイラーが使用される非地熱蒸気タービンプラントの場合の蒸気圧よりも低圧であり、地熱蒸気タービンで非地熱蒸気タービンの場合と同等のタービン出力を得るためには、主蒸気止め弁の口径の大型化が必要になる。そうして、発明者が検討したところによれば、大口径化されるにしたがって主蒸気止め弁の開閉操作に必要な操作力が増大するので、油圧式操作機の場合には給油量の増大が必要になってくるが、給油量を急激に増大させると油圧変動が発生してしまうので、この油圧変動を小さく抑えるために時間を掛けてゆっくり給油せざるを得ないということになる。
こうしたことから、地熱蒸気タービンなどの蒸気圧の比較的に低い蒸気を利用する蒸気タービンの始動時に限れば、蒸気止め弁用電動操作機のストロークタイムが油圧操作式のものと比較して遅いとうことは、欠点にはならないことになる。このことに着目してなされたのがこの発明による蒸気止め弁用操作機1である。そうして、蒸気止め弁用操作機1により開閉操作される主蒸気止め弁91を,少なくとも2系統備える図1にその概要を示した蒸気タービンプラントでは、蒸気止め弁用操作機1が前記した内容の機能・動作を行うものであることから、蒸気止め弁91の緊急停止を含む開閉操作が正常に行えることを蒸気タービン96の運転中にも確認できることは明白である。そうして、蒸気止め弁用操作機1の最も特徴的なことは、油の使用種類が制御油88の1種類のみであり、しかも、この制御油88がブッシュ4の保持機構掛止部44,44を掛止状態にするためにのみ用いられることで、その使用油量は従来例の制御油88の場合と同様に少量で済むことである。
【0025】
このことによって、蒸気止め弁91の全開操作および全閉操作を行う蒸気止め弁用操作機にこの発明による蒸気止め弁用操作機1を用いた蒸気タービンプラントでは、蒸気止め弁91の操作用に必要な油配管としては、制御油88用の1本の細い油配管87と、この制御油88が元になって生じたドレイン油88a用の1本の細いドレイン油配管87aの合計2本で済むと言って差し支えがない。そうして、このことを図8,図9に例示した従来例の蒸気タービンプラントの場合と対比すると、従来例の蒸気タービンプラントの場合に必要とした高圧で多量の駆動油89が不要になることで、駆動油89とそれから生じるドレイン油のために必要であった大口径の駆動油用配管が、蒸気止め弁用操作機1を用いた蒸気タービンプラントの場合には不要になる。この結果、蒸気止め弁用操作機1を用いた場合には、油配管を設置するためのスペースを、従来例の場合よりも縮小することができるとの特徴を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の実施の形態の一例による蒸気止め弁用操作機を搭載した主蒸気止め弁が適用されている蒸気タービンプラントを説明するその要部の概要を示す説明図である。
【図2】図1に示したこの発明の一例の蒸気止め弁用操作機を説明する主蒸気止め弁と共に示す説明図である。
【図3】この発明の一例の蒸気止め弁用操作機のリセット状態の図2における一部破断したP矢視図である。
【図4】この発明の一例の蒸気止め弁用操作機の全開状態保持機構にロックが施された状態とされた場合の図2における一部破断したP矢視図である。
【図5】図4におけるA−B断面図である。
【図6】図4におけるR部の図2におけるP矢視図である。
【図7】全開状態保持機構が持つカム軸の図5におけるC−C断面図である。
【図8】従来例の蒸気タービンプラントを説明するその要部の概要を示す説明図である。
【図9】図8に示した従来例の蒸気止め弁用操作機を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 蒸気止め弁用操作機
11 電動機
12 出力軸
14 全閉操作用ばね体
15 リンク機構
2 操作機構部
21 動作変換用機構
5 全開状態保持機構
6 油圧操作機構部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンに設置される蒸気止め弁の全開操作および全閉操作を行う蒸気止め弁用操作機において、
前記蒸気止め弁の全開操作を行う場合にはその出力軸がある方向の回転動作を行うと共に、蒸気止め弁の全閉状態においてリセットを行う場合にはその出力軸が蒸気止め弁の全開操作時とは逆方向となる方向の回転動作を行う可逆回転動作をする電動機と、この電動機の出力軸の可逆回転動作を蒸気止め弁の全開および前記リセットに必要な動作に変換する動作変換用機構と、蒸気止め弁が全開された状態においては前記電動機の駆動を行うことなしに蒸気止め弁の全開状態を保持する全開状態保持機構とを有する操作機構部と、前記動作変換用機構の蒸気止め弁の全開操作時の前記動作の際に付勢されて前記蒸気止め弁の全閉操作時の駆動源となる全閉操作用ばね体と、前記リセット状態における蒸気止め弁の全開操作開始前の全閉状態において油圧を印加することで前記全開状態保持機構をロック状態にすると共に、蒸気止め弁の全閉操作時に前記油圧を釈放することで前記全開状態保持機構をロック状態から解除する油圧動作機構部とを備えることを特徴とする蒸気止め弁用操作機。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸気止め弁用操作機において、前記油圧動作機構部に印加される油圧は、タービン保護のための非常停止装置に用いられている非常停止油による油圧であることを特徴とする蒸気止め弁用操作機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の蒸気止め弁用操作機において、前記動作変換用機構は、前記電動機の出力軸の前記可逆回転動作を可逆直進動作に変換する互いに嵌め合うことが可能な雄ねじと雌ねじとでなるねじ機構と;前記電動機の出力軸に組み合わせられる一方の端部の側で前記出力軸の回転動作には同体で回転可能で、かつ出力軸の軸長方向には移動可能であるように組み合わせられ、その他方の端部の側に前記ねじ機構の雄ねじを持つと共に、前記一方の端部と前記他方の端部との中間となる部位に前記雄ねじのねじ外径よりも大きな外形寸法の段差部を持つねじスピンドルと;前記ねじ機構の雌ねじを内面側に持つ筒状部を一方の端部の側に、前記主蒸気止め弁の弁体を回動自在に保持する弁軸を回動させるためのリンク機構を装着するリンク機構装着部を他方の端部に、前記全閉操作用ばね体である圧縮コイルばねを掛止するためのばね体掛止部を前記一方の端部と前記他方の端部との中間となる部位にそれぞれ持ち、前記電動機の出力軸の前記可逆回転動作に関連付けて前記リンク機構装着部に可逆直進動作を行わせる操作軸と;前記ねじスピンドルの一方の端部の外面部が回転可能に嵌め合わされる一方の内面部と、前記操作軸の一方の端部の外面部に軸長方向に移動可能に嵌め合わされて前記一方の内面部よりも大きな寸法を持つ他方の内面部と、これ等の一方の内面部と他方の内面部とが接続される部位にねじスピンドルの前記段差部に当接されるねじスピンドル掛止部が形成される内面を持ち、前記全開状態保持機構のロックを行う際に全開状態保持機構が掛止される保持機構掛止部を外面部に持つ円筒状のブッシュと;前記ねじ機構の一方の端部の側に前記ブッシュをその一方の内面部で嵌め合わせた状態で、これ等のねじ機構とブッシュとをねじ機構が回動可能であるようにして締結する締結体とを有するものであることを特徴とする蒸気止め弁用操作機。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れかの項に記載の蒸気止め弁用操作機において、前記全開状態保持機構は、前記ブッシュの外面にその中心軸線がほぼ接するように、しかもブッシュの中心軸線とほぼ直交する姿勢関係で回動可能に配設され、前記ロックが行われる際にブッシュの前記保持機構掛止部に掛止される部位がカム面をなしている円形軸状のカム軸を有するものであることを特徴とする蒸気止め弁用操作機。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れかの項に記載の蒸気止め弁用操作機において、前記油圧動作機構部は、油圧用のシリンダー部と、このシリンダー部に可逆直進動作可能に嵌め合わされると共に前記油圧の印加の有無に応じて可逆直進動作を行うピストン部と、このピストン部と一体の可逆直進動作を行うピストン軸とを有し、前記油圧の印加状態に応じてこのピストン軸により全開状態保持機構の前記カム軸を可逆回動駆動することで、油圧の印加時にこのカム軸を前記保持機構掛止部に掛止して全開状態保持機構をロック状態にすると共にこの油圧の釈放時に前記全開状態保持機構をロック状態から解除するものであることを特徴とする蒸気止め弁用操作機。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−19775(P2008−19775A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−191947(P2006−191947)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】