説明

蒸気発生設備、及びそのタービン・ポンプ駆動制御装置

【課題】電源が絶たれても蒸気タービンを起動させることができると共に、蒸気タービンの駆動を維持できるようにする。
【解決手段】蒸気発生設備は、蒸気発生源10と、蒸気発生源からの蒸気で駆動する蒸気タービン20と、蒸気タービンの駆動で駆動して蒸気発生源に水を供給する給水ポンプ30とを備えている。タービン・ポンプ駆動制御装置Cは、蒸気発生源から蒸気タービンに流入する蒸気の流量を調節する常開調節弁としての蒸気加減弁50と、蒸気タービンのタービンロータ21と機械的に連結され、タービンロータの回転で移動する駆動端75を有する過速度制限ガバナー60と、タービンロータの回転数が増加している際の駆動端の移動を蒸気加減弁50の閉方向への動作に変換するリンク機構95と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気発生源と、この蒸気発生源からの蒸気で駆動する蒸気タービンと、この蒸気タービンの駆動で駆動して蒸気発生源に水を供給する給水ポンプと、を備えている蒸気発生設備、及びそのタービン・ポンプ駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンは、ここに流れ込む蒸気の流量を蒸気加減弁で調節されることで駆動制御される。
【0003】
以下の特許文献1には、この蒸気加減弁を含む駆動制御装置が開示されている。この駆動制御装置は、常閉調節弁である蒸気加減弁と、蒸気タービンの起動時において油圧駆動で動作する起動速度制御ピストンと、起動速度制御ピストンの駆動端に連結されているリンロッドを有し、起動時における駆動端の移動で閉状態の蒸気加減弁を開方向へ動作させるリンク機構と、リンクロッドを押して蒸気加減弁の開方向への動作を調節する調節器と、リンクロッドを押して蒸気加減弁の開方向への動作を制限する制限器と、を備えている。
【0004】
調節器及び制限器は、いずれも、蒸気タービンのタービンロータと機械的に連結され、タービンロータの回転で移動する駆動端を有している。調節器及び制限器の各駆動端は、いずれも、タービンロータの回転数の増加に対して、リンク機構により蒸気加減弁を閉方向に動作させる方向に移動する。
【0005】
蒸気タービンを起動させる際には、油圧回路を駆動して、起動速度制御ピストンの駆動端を移動させることで、リンク機構により、閉状態になっている蒸気加減弁を開方向へ動作させる。蒸気加減弁が開くと、蒸気タービン内に蒸気が流入し、タービンロータが回転し始める。タービンロータが回転し始めると、調節器及び制限器による蒸気加減弁の開度制御が開始される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4648211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の駆動制御装置では、設備の電源が絶たれ、油圧回路の油圧モータが停止すると、蒸気加減弁の開状態を起動速度制御ピストンで維持できなくなるため、蒸気加減弁が閉状態なり、蒸気タービンが停止してしまうという問題点がある。また、設備の電源が絶たれると、起動速度制御ピストンを動作させることができないため、蒸気タービンを起動せることができないという問題点もある。
【0008】
仮に、蒸気タービンにより駆動する給水ポンプで、蒸気発生源に水を供給する設備では、蒸気タービンが駆動しなくなると、蒸気発生源に水が供給されなくなり、蒸気発生源が空焚き状態になることがある。このため、このような設備では、電源が絶たれても蒸気タービンの駆動を維持できることが特に望まれる。
【0009】
そこで、本発明は、電源が絶たれても蒸気タービンを起動させることができると共に、蒸気タービンの駆動を維持することができる蒸気発生設備、及びその駆動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するための発明に係る蒸気発生設備のタービン・ポンプ駆動制御装置は、
蒸気発生源と、該蒸気発生源からの蒸気で駆動する蒸気タービンと、該蒸気タービンの駆動で駆動して該蒸気発生源に水を供給する給水ポンプと、を備えている蒸気発生設備のタービン・ポンプ駆動制御装置において、前記蒸気発生源から前記蒸気タービンに流入する前記蒸気の流量を調節する常開調節弁と、前記蒸気タービンのタービンロータと機械的に連結され、該タービンロータの回転で移動する駆動端を有する制限器と、前記制動器の前記駆動端に押されるリンクロッドを有し、前記タービンロータの回転数が増加している際の前記駆動端の移動を前記常開調節弁の閉方向への動作に変換するリンク機構と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
なお、常開調節弁とは、弁体が付勢手段により開方向に付勢されており、外部から弁体に対する駆動力を加えない限り、開状態になっている調節弁のことである。
【0012】
当該タービン・ポンプ駆動制御装置では、蒸気発生源から蒸気タービンに流入する蒸気流量を調節する調節弁が常開調節弁であるため、蒸気タービン及び給水ポンプを起動したいときに、蒸気発生源からの蒸気を確保できれば、電源が絶たれていても、蒸気タービンに蒸気を供給することができ、蒸気タービン及び給水ポンプを起動させることができる。しかも、これらが起動すれば、タービンロータの回転で駆動する制限器が機能し、タービンロータの回転数増加に対して常開調節弁を閉方向に動作させるため、蒸気タービン及び給水ポンプの回転数の異常上昇を抑えることができる。
【0013】
また、当該タービン・ポンプ駆動制御装置では、蒸気タービン及び給水ポンプの駆動中に電源が絶たれても、蒸気発生源からの蒸気を確保できれば、蒸気タービン及び給水ポンプの起動時と同様、これらの駆動状態を維持できる。さらに、当該蒸気発電設備では、この駆動状態においても、タービンロータの回転で駆動する制限器が機能し、タービンロータの回転数増加に対して常開調節弁を閉方向に動作させるため、蒸気タービン及び給水ポンプの回転数の異常上昇を抑えることができる。
【0014】
さらに、当該タービン・ポンプ駆動制御装置では、制限器が蒸気タービンのタービンロータと機械的に連結され、制限器の駆動端と常開調節弁ともリンク機構で機械的に連結されているため、蒸気タービン及び給水ポンプの回転数増加に対して、実質的なタイムラグが無く極めて敏感に常開調節弁を閉方向に動作させることができる。
【0015】
よって、当該タービン・ポンプ駆動制御装置によれば、電源が絶たれても、蒸気タービン及び給水ポンプを起動させることができると共に、これらの駆動を安定維持することができる。この結果、電源が絶たれても、蒸気発生源の空焚きを防ぐことができる。
【0016】
さらに、当該タービン・ポンプ駆動制御装置では、特許文献1に記載の駆動制御装置における起動速度制御ピストンに相当するのも省略することができ、装置の簡略化を図ることができる。特許文献1に記載の駆動制御装置では、蒸気加減弁が常閉調節弁であり、調節器及び制限器はいずれも蒸気加減弁を閉方向に動作させるものであるため、蒸気加減弁を開方向に動作させる起動速度制御ピストンが必須となる。一方、当該タービン・ポンプ駆動制御装置では、蒸気発生源から蒸気タービンに流入する蒸気流量を調節する調節弁が常開調節弁であり、制限器は常開調節弁を閉方向に動作させるものであるため、常開調節弁を開方向又は閉方向に動作させる起動速度制御ピストンに相当するものが無くても、常開調節弁の弁開度を制御することができる。よって、当該タービン・ポンプ駆動制御装置では、前述したように、特許文献1に記載の駆動制御装置における起動速度制御ピストンに相当するのも省略することができる。
【0017】
ここで、前記タービン・ポンプ駆動制御装置において、前記給水ポンプから吐出された前記水の圧力を受けて移動する受圧部と、該受圧部の移動で移動して、前記リンクロッドを押す駆動端を有し、該水の圧力が増加している際の該駆動端の移動が前記リンク機構によって前記常開調節弁を閉方向に動作させることになる調節器を備えている。
【0018】
当該タービン・ポンプ駆動制御装置では、蒸気タービン及び給水ポンプの駆動中に電源が絶たれても、又、蒸気タービン及び給水ポンプを起動したいときに電源が絶たれていても、前述したように、蒸気タービン及び給水ポンプの駆動状態を維持、又はこれらを起動させることができる。しかも、これらが駆動していれば、又は起動すれば、給水ポンプからの水圧が調節器の受圧部にかかり、この調節器が機能し、水の圧力増加に対して常開調節弁を閉方向に動作させるため、蒸気タービン及び給水ポンプの回転数の調節することができる。
【0019】
また、前記タービン・ポンプ駆動制御装置において、前記リンク機構の前記リンクロッドは、鉛直方向における、前記蒸気タービンが設けられている設置面と前記常開調節弁との間に配置されていることが好ましい。
【0020】
当該タービン・ポンプ駆動制御装置では、リンクロッドが比較的に低い位置に配置されることから、このリンクロッドを含むリンク機構、このリンクロッドを押す制限器や調節器も比較的低い位置に配置されることになる。よって、当該タービン・ポンプ駆動制御装置によれば、地震が起きたときでも、これらの地震による揺れの影響を少なくすることができ、耐震性能を高めることができる。
【0021】
上記問題点を解決するための発明に係る蒸気発生設備は、
前記タービン・ポンプ駆動制御装置と、前記蒸気発生源と、前記蒸気タービンと、前記給水ポンプと、を備えていることを特徴とする。
【0022】
当該蒸気発生設備は、前記タービン・ポンプ駆動制御装置を備えているため、当該蒸気発生設備で電源が絶たれても、蒸気タービン及び給水ポンプを起動させることができると共に、これらの駆動を安定維持することができる。この結果、電源が絶たれても、蒸気発生源の空焚きを防ぐことができる。
【0023】
ここで、前記蒸気発生設備において、前記蒸気タービンの回転軸を回転可能に支持する軸受装置、及び前記給水ポンプの回転軸を回転可能に支持する軸受装置は、いずれも、転がり軸受と、該転がり軸受の複数のコロのうちの少なくとも一部のコロに潤滑オイルを常時接触させることができる量の該潤滑オイルを溜めておくオイルバスと、を有することが好ましい。
【0024】
当該蒸気発生設備では、電源が絶たれ、外部から軸受装置への潤滑オイル供給が絶たれても、オイルバス内に潤滑オイルが満たされていれば、この潤滑オイルに転がり軸受のコロが接するので、蒸気タービンの回転軸及び給水ポンプの回転軸をスムーズに回転させることができる。
【0025】
また、前記蒸気発生設備において、前記蒸気発生源は、原子力エネルギーで前記水を加熱して前記蒸気を発生させるものであってもよい。
【0026】
当該蒸気発生設備では、電源が絶たれた場合でも蒸気発生源の空焚きを防ぐことができるので、継続的に原子炉を冷却することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、設備の電源が絶たれても、蒸気タービン及び給水ポンプを起動させることができると共に、これらの駆動を安定維持することができる。この結果、本発明によれば、電源が絶たれても、蒸気発生源の空焚きを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る一実施形態における蒸気発生設備の系統図である。
【図2】本発明に係る一実施形態におけるタービン・ポンプ駆動制御装置の蒸気が流れていないときの状態を示す説明図である。
【図3】本発明に係る一実施形態におけるタービン・ポンプ駆動制御装置の蒸気が流れているときの状態を示す説明図である。
【図4】本発明に係る一実施形態における過速度制限ガバナーの断面図である。
【図5】本発明に係る一実施形態における吐出圧制御ピストンの断面図である。
【図6】本発明に係る一実施形態における軸受装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る蒸気発生設備の一実施形態について説明する。
【0030】
本実施形態の蒸気発生設備は、図1に示すように、蒸気発生源10と、この蒸気発生源10からの蒸気で駆動する蒸気タービン20と、この蒸気タービン20の駆動で駆動して蒸気発生源10に水を供給する給水ポンプ30と、蒸気タービン20及び給水ポンプ30を駆動制御するタービン・ポンプ駆動制御装置Cと、を備えている。
【0031】
蒸気発生源10は、例えば、加圧水型原子炉の蒸気発生器、又は沸騰水型原子炉の原子炉格納容器であり、原子力エネルギーにより蒸気を発生させるものである。
【0032】
蒸気タービン20は、タービンロータ21と、これを覆うケーシング25と、タービンロータ21を回転可能に支持する軸受装置29と、を備えている。タービンロータ21は、回転軸22と、この回転軸22に設けられている複数の動翼23とを有している。また、ケーシング25には、蒸気入口26と蒸気出口27とが形成されている。この蒸気入口26は、蒸気発生源10の蒸気出口17と蒸気ライン1で接続されている。この蒸気ライン1は、例えば、途中で分岐して、発電機に連結されている他の蒸気タービンと接続されている。
【0033】
本実施形態の給水ポンプ30は、蒸気発生源10に水を補助的に供給する補助給水ポンプである。このため、本実施形態では、蒸気発生源10に水を供給する主給水ポンプが別途設けられている。この給水ポンプ30は、回転軸32と、この回転軸32に設けられている羽根車33と、これらを覆うケーシング35と、回転軸32を回転可能に支持する軸受装置38,39と、を備えている。このケーシング35の吸込口36は、例えば、水が蓄えられているタンク又はプールや、蒸気タービンから排出された蒸気を水に戻す復水器と水供給ライン2aで接続され、ケーシング35の吐出口37は、蒸気発生源10の水入口16と水供給ライン2bで接続されている。
【0034】
蒸気タービン20の回転軸22と給水ポンプ30の回転軸32とは、一体物でロータ軸31を成し、ほぼ水平方向に延びている。このように、蒸気タービン20の回転軸22と給水ポンプ30の回転軸32とは一体物であるため、蒸気タービン20の回転軸22が回転すると、給水ポンプ30の回転軸32及び羽根車33も、これと一体回転する。なお、ここでは、蒸気タービン20の回転軸22と給水ポンプ30の回転軸32とが一体物であるが、互いに別体で、各回転軸22,32の端部相互がフランジ等で連結されていてもよい。
【0035】
蒸気タービン20の軸受装置29は、動翼23を基準にして給水ポンプ30側に設けられている。また、給水ポンプ30の軸受装置38,39は、羽根車33を基準にして、蒸気タービン20側とその反対側とに設けられている。
【0036】
各軸受装置29,38,39は、図6に示すように、転がり軸受40と、この転がり軸受40を覆う軸受箱44と、を有している。転がり軸受40は、ロータ軸31に固定されている内輪41と、この内輪41の外周側に配置され軸受箱44に固定されている外輪42と、内輪41の外周側と外輪42の内周側との間に配置されている複数のコロ43とを有している。軸受箱44は、ロータ軸31を基準として転がり軸受40の上側を覆う上カバー45と、転がり軸受40の下側を覆う下カバー47と、を有している。
【0037】
上カバー45には、外部から軸受箱44内の転がり軸受40に潤滑オイルを供給するためのオイル供給路46が形成されている。また、下カバー47には、下に向って凹んだ凹部が形成されており、この凹部が外部から供給された潤滑オイルを一時的に溜めるオイルバス48を成している。オイルバス48を成す凹部の側壁は、ロータ軸31の近くまで形成されている。また、この側壁には、オイルバス48の内側から外側に向って貫通するオイル流出路49が形成されている。オイル流出路49の下縁は、転がり軸受40の複数のコロ43のうち、少なくとも最下位置に存在するコロ43の下縁よりも上側に位置している。このため、外部から潤滑オイルが軸受箱44内に供給され、潤滑オイルがオイルバス48内に満たされると、潤滑オイルは、オイル流出路49から流れ出る、つまりオイルバス48からオーバーフローする。また、オイルバス48内に潤滑オイルが満たされている際には、転がり軸受40の複数のコロ43のうち、少なくとも最下位置に存在するコロ43の下縁が潤滑オイルに浸っている。
【0038】
再び、図1を用いて説明する。タービン・ポンプ駆動制御装置Cは、蒸気ライン1を流れる蒸気、つまり蒸気タービン20に流入する蒸気の流量を調節する蒸気加減弁(常開調節弁)50と、蒸気タービン20のタービンロータ21の回転で移動する駆動端75を有する過速度制限ガバナー(制限器)60と、給水ポンプ30から吐出された水の圧力に応じて移動する駆動端91を有する吐出圧制御ピストン(調節器)80と、過速度制限ガバナー60の駆動端75及び吐出圧制御ピストン80の駆動端91の移動に応じて、蒸気加減弁50を閉方向に動作させるリンク機構95と、リンク機構95の急激な動作を抑制する油圧ダンパー99と、を備えている。
【0039】
蒸気加減弁50は、図2及び図3に示すように、蒸気が通る流路が形成されている弁箱51と、弁箱51内の流路を塞ぐ弁体55と、両端部56a,56bが弁箱51を貫通し、中央部に弁体55が固定されている弁棒56と、開方向に弁体55を付勢するバネ58と、を有している。この蒸気加減弁50は、弁棒56が鉛直方向に延びるよう配置されている。弁棒56の上端部56aにはバネ受け座57が固定されており、このバネ受け座57と弁箱51の上端との間に、弁棒56及び弁体55を上方に、つまり弁体55を開方向に付勢するバネ58が配置されている。
【0040】
弁箱51には、蒸気入口51a及び蒸気出口51bが形成されている。弁箱51に形成されている流路で、蒸気入口51a側の流路52は、蒸気入口51aから延び、途中で上下に2つの流路52a,52bに分岐している。また、蒸気出口51b側の流路53は、蒸気入口51a側の2つに分岐している流路52a,52bの間から蒸気入口51aまで延びている。蒸気入口51a側の2つに分岐している流路52a,52bと、蒸気出口51b側の流路53との各境界部分には、それぞれ弁座53a,53bが設けられている。弁体55には、2つの弁座53a,53bのそれぞれに同時に接触し得るシール部55a,55bが形成されている。
【0041】
リンク機構95は、過速度制限ガバナー60及び吐出圧制御ピストン80の駆動端75,91が接触するリンクロッド96と、一方の端部がリンクロッド96の一方の端部96aにピン結合され他方の端部が蒸気加減弁50の弁棒56の下端部56bにピン結合されている連結リンク97と、リンクロッド96の両端部96a,96bの間の位置をピン支持するロッド支点98と、を有している。リンクロッド96は、鉛直方向において、蒸気タービン20及び給水ポンプ30の設置面と蒸気加減弁50との間に、ほぼ水平方向に延びるように配置されている。このリンクロッド96の他方の端部96bには、油圧ダンパー99の駆動端99aがピン結合されている。
【0042】
リンクロッド96の上側であって、ロッド支点98よりも蒸気加減弁50側には、吐出圧制御ピストン80及び過速度制限ガバナー60が配置されている。
【0043】
過速度制限ガバナー60は、図1に示すように、蒸気タービン20及び給水ポンプ30のロータ軸31と機械的に連結されている。具体的には、このロータ軸31には、歯車78が設けられている。また、過速度制限ガバナー60はガバナー回転軸61を有しており、このガバナー回転軸61にも歯車79が設けられている。ロータ軸31の歯車78とガバナー回転軸61の歯車79とは噛み合っており、ロータ軸31が回転するとガバナー回転軸61が回転するようになっている。
【0044】
この過速度制限ガバナー60は、図4に示すように、鉛直方向に延びる前述のガバナー回転軸61と、ガバナー回転軸61に対して揺動可能に配置されている複数の錘64と、ガバナー回転軸61に対して鉛直方向に相対移動可能に設けられている錘座67と、ガバナー回転軸61の軸線上であってガバナー回転軸61の下方に配置されている前述の駆動端75と、駆動端75をガバナー回転軸61に近づく方向である上側に付勢するバネ72と、駆動端75が固定されていると共にバネ72を覆うバネ箱71と、バネ箱71をガバナー回転軸61に対して相対回転可能に取り付ける軸受68と、を有している。
【0045】
ガバナー回転軸61は、鉛直方向に延び、上端部に歯車78(図1に示す)が固定されている回転軸本体62と、鉛直方向に延び、この回転軸本体62の下端に固定され回転軸本体62と同軸のバネ受け軸63と、を有している。
【0046】
複数の錘64は、回転軸本体62の下側であって、バネ受け軸63の周りに配置されている。各錘64は、棒状の錘本体65と、錘本体65の揺動端65aとは反対側の基端65bに固定されている支持体66と、を有している。支持体66は、回転軸本体62に接している揺動支点66aと、この揺動支点66aを支点として錘本体65と共に揺動して錘座67を押し下げる押下揺動部66bと、を有している。
【0047】
錘座67は、円板状を成し、各錘64の押下揺動部66bの下側に配置され、その中央部をガバナー回転軸61のバネ受け軸63が貫通している。軸受68は、このバネ受け軸63中の錘座67の下方に取り付けられている。
【0048】
軸受68の下側には、バネ受け軸63を中心として中空筒状を成すバネ箱71が配置されている。このバネ箱71内であって、バネ受け軸63の下端には、第一バネ受け座73が固定されている。また、バネ箱71内の上端には、バネ受け軸63が貫通し、バネ受け軸63に対して相対回転及び鉛直方向への相対移動可能な第二バネ受け座74が配置されている。第一バネ受け座73と第二バネ受け座74との間には、前述のバネ72が配置されている。このバネ72により、第二バネ受け座74、バネ箱71、軸受68及び錘座67、複数の錘64の押下揺動部66bは、回転軸本体62側、つまり上側に付勢されている。バネ箱71の下端には、そこから下方に延びる駆動端75が設けられている。
【0049】
ガバナー回転軸61が回転していないときには、棒状の錘本体65は、鉛直下方に延びている。ガバナー回転軸61が回転すると、錘本体65に遠心力が作用し、錘本体65の揺動端65aは、揺動支点66aを支点として、バネ受け軸63から遠ざかる側且つ上側に揺動する。この結果、錘本体65の基端65bに固定されている支持体66の押下揺動部66bは、揺動支点66aを支点として、下側に揺動する。
【0050】
この押下揺動部66bの揺動により、バネ72により上方に付勢されている錘座67、軸受68、バネ箱71及び第二バネ受け座74、さらにバネ箱71の下端に設けられている駆動端75は、バネ受け軸63に対して相対的に鉛直下方に移動する。すなわち、駆動端75は、ガバナー回転軸61の回転数、言い換えると、ロータ軸31の回転数が高まると、バネ72による付勢力に抗して鉛直下方へ移動する。
【0051】
駆動端75は、ロータ軸31の回転数が予め定められた回転数(例えば、定格回転数の102%の回転数)になると、リンク機構95のリンクロッド96に接触し得る位置に、予め調整されている。このため、蒸気タービン20及び給水ポンプ30の回転数が予め定められた回転数以上になると、図3に示すように、鉛直下方に移動した駆動端75がリンクロッド96の一方の端部側に接して、これを下方に押す。リンクロッド96の一方の端部側が下方に下がると、このリンクロッド96の一方の端部96aに連結されている連結リンク97が下方に下がる結果、蒸気加減弁50の弁棒56及び弁体55も下方に下がり、蒸気加減弁50は閉方向に動作する。
【0052】
吐出圧制御ピストン80は、図5に示すように、内部に鉛直方向に延びる中空筒状の空間84が形成されているシリンダ81と、この空間84内を鉛直方向に往復移動可能に配されているピストン(受圧部)86と、ピストン86に固定されここから下方に延びているピストンロッド87と、ピストンロッド87の下方に配置されているコロ88と、このコロ88の下方に配置され水平方向に広がる駆動端91と、駆動端91をピストンロッド87に近づく向き、つまり上向きに付勢する引っ張りバネ89と、を有している。
【0053】
シリンダ81は、ほぼ円筒状のシリンダ本体82と、シリンダ本体82の上部開口を塞ぐシリンダカバー83と、を有している。シリンダカバー83は、水平方向に張出したフランジ部83aを有している。このフランジ部83aには、引っ張りバネ89の一方の端部が掛けられ、駆動端91の水平方向の端部91bには、この引っ張りバネ89の他方の端部が掛けられている。この駆動端91の水平方向の中央部、つまりコロ88の真下は、リンクロッド96に接触する接触部91aが形成されている。シリンダカバー83には、水をシリンダ81の内部空間84内に導く水圧供給路85が形成されている。
【0054】
図1に示すように、給水ポンプ30と蒸気発生源10とを接続する水供給ライン2bは、途中で分岐しており、水圧供給ライン3として、吐出圧制御ピストン80の水圧供給路85と接続されている。このため、図5に示すように、給水ポンプ30の吐出圧が高まって、吐出圧制御ピストン80のシリンダ81内のピストン(受圧部)86がこの水圧を受けて、このピストン86が引っ張りバネ89の付勢力に抗して鉛直下方に移動すると、駆動端91も鉛直下方に移動する。すなわち、吐出圧制御ピストン80の駆動端91は、給水ポンプ30の吐出圧が高まると、言い換えると、給水ポンプ30の回転数が高まると、これに比例して鉛直下方に移動し、リンクロッド96の一方の端部側を下方に押す。リンクロッド96の一方の端部側が下方に下がると、このリンクロッド96の一方の端部96aに連結されている連結リンク97が下方に下がる結果、蒸気加減弁50の弁棒56及び弁体55も下方に下がり、蒸気加減弁50は閉方向に動作する。
【0055】
次に、本実施形態の蒸気発生設備の動作について説明する。
【0056】
蒸気発生源10で蒸気が発生していない際には、図2に示すように、弁体55がバネ58で開方向に付勢されている蒸気加減弁50は、完全開状態である。また、過速度制限ガバナー60の駆動端75及び吐出圧制御ピストン80の駆動端91は、いずれの最上位置に位置しており、リンク機構95のリンクロッド96には接触していない。
【0057】
蒸気発生源10で蒸気が発生している際には、蒸気発生源10からの蒸気は、蒸気加減弁50を経て、蒸気タービン20のケーシング25内に流れ込み、タービンロータ21を回転させた後、ケーシング25外へ排気される。タービンロータ21の回転軸22は、給水ポンプ30の回転軸32と一体物でロータ軸31を成しているため、タービンロータ21が回転すると、給水ポンプ30の回転軸32に設けられている羽根車33も回転する。この結果、給水ポンプ30は、外部から水を吸い込んで、水供給ライン2bを介して、蒸気発生源10に水を供給する。
【0058】
水供給ライン2bに水が流れると、この水供給ライン2bから分岐している水圧供給ライン3を介して、この水圧供給ライン3に接続されている吐出圧制御ピストン80のシリンダ81内に水が入り込む。シリンダ81内のピストン86は、この水の圧力を受け、引っ張りバネ89の付勢力に抗して鉛直下方に移動する。このピストン86の鉛直下方への移動に伴って、駆動端91が鉛直下方に移動し、リンクロッド96の一方の端部側を下方に押す。リンクロッド96の一方の端部側が下方に下がると、前述したように、このリンクロッド96の一方の端部に連結されている連結リンク97が下方に下がる結果、蒸気加減弁50の弁棒56及び弁体55も下方に下がり、蒸気加減弁50は閉方向に動作する。
【0059】
このピストン86の下降量は、前述したように、ピストン86にかかる水圧、つまり給水ポンプ30の吐出圧に比例する。このため、給水ポンプ30の吐出圧が高まると、それに比例して、ピストン86が下降し、蒸気加減弁50は、閉方向に動作する。蒸気加減弁50が閉方向に動作すると、蒸気タービン20に流入する蒸気流量が少なくなるため、蒸気タービン20及び給水ポンプ30の回転数が低下して、給水ポンプ30の吐出圧が低下する。
【0060】
本実施形態では、以上のように、吐出圧制御ピストン80の動作により、蒸気加減弁50の弁開度が調節され、給水ポンプ30の吐出圧、さらには蒸気タービン20及び給水ポンプ30の回転数が制御される。
【0061】
吐出圧制御ピストン80により蒸気タービン20及び給水ポンプ30の回転数が制御されていても、何らかの都合により、蒸気タービン20及び給水ポンプ30の回転数が定格回転数よりも高くなる場合がある。蒸気タービン20及び給水ポンプ30の回転数が定格回転数よりも高い予め定められた回転数以上になると、前述したように、過速度制限ガバナー60の駆動端75がリンクロッド96の一方の端部側に接して、これを下方に押す。リンクロッド96の一方の端部側が下方に下がると、このリンクロッド96の一方の端部96aに連結されている連結リンク97が下方に下がる結果、蒸気加減弁50の弁棒56及び弁体55も下方に下がり、蒸気加減弁50は閉方向に動作する。
【0062】
このように、蒸気タービン20及び給水ポンプ30の回転数が定格回転数よりも高い予め定められた回転数以上になると、過速度制限ガバナー60の駆動端75がリンクロッド96を下方に押し、蒸気加減弁50を閉方向に動作させるため、蒸気タービン20及び給水ポンプ30の回転数の異常上昇を制限することができる。特に、本実施形態では、蒸気タービン20及び給水ポンプ30のロータ軸31と過速度制限ガバナー60とが機械的に連結されている上に、過速度制限ガバナー60の駆動端75と蒸気加減弁50の弁体55とも機械的に連結されているため、蒸気タービン20及び給水ポンプ30の回転数が定格回転数よりも高い予め定められた回転数以上になったとき、実質的なタイムラグが無く極めて敏感に蒸気加減弁50を閉方向に動作させることができる。
【0063】
ところで、本実施形態の蒸気加減弁50は、弁体55がバネ58で開方向に付勢されている常開調節弁であるため、蒸気タービン20及び給水ポンプ30を起動したいときに、蒸気発生源10からの蒸気を確保できれば、電源が絶たれていても、蒸気タービン20に蒸気を供給することができ、蒸気タービン20及び給水ポンプ30を起動させることができる。しかも、これらが起動すれば、給水ポンプ30の吐出圧、さらには蒸気タービン20及び給水ポンプ30の回転数を吐出圧制御ピストン80で制御することができる上に、蒸気タービン20及び給水ポンプ30の回転数の異常上昇を過速度制限ガバナー60で抑制することができる。
【0064】
また、本実施形態では、蒸気タービン20及び給水ポンプ30の駆動中に電源が絶たれても、蒸気発生源10からの蒸気を確保できれば、蒸気タービン20及び給水ポンプ30の起動時と同様、これらの駆動状態を維持できる。さらに、本実施形態では、この駆動状態において、給水ポンプ30の吐出圧、さらには蒸気タービン20及び給水ポンプ30の回転数を吐出圧制御ピストン80で制御することができる上に、蒸気タービン20及び給水ポンプ30の回転数の異常上昇を過速度制限ガバナー60で抑制することができる。
【0065】
さらに、本実施形態では、蒸気タービン20及び給水ポンプ30の各軸受装置29,38,39の転がり軸受40のコロ43の一部は、オイルバス48内の潤滑オイルに浸されているため、仮に、電源が絶たれ、外部から軸受装置29,38,39の軸受箱44内への潤滑オイル供給が絶たれても、オイルバス48内の潤滑オイルに転がり軸受40のコロ43が接するので、転がり軸受40の内輪41が外輪42に対してスムーズに回転することができる。よって、蒸気タービン20及び給水ポンプ30を起動したいときに、又は、これらが駆動しているときに、電源が絶たれ、外部から軸受装置29,38,39の軸受箱44内への潤滑オイル供給が絶たれても、本実施形態では、蒸気タービン20の回転軸22及び給水ポンプ30の回転軸32をスムーズに回転させることができる。
【0066】
以上のように、本実施形態では、電源が絶たれても、蒸気タービン20及び給水ポンプ30を起動させることができると共に、これらの駆動を安定維持することができる。このため、本実施形態では、電源が絶たれた場合でも蒸気発生源10の空焚きを防ぐことができるので、継続的に原子炉を冷却することができる。
【0067】
しかも、本実施形態では、特許文献1に記載の駆動制御装置における起動速度制御ピストンに相当するのも省略することができ、装置の簡略化を図ることができる。特許文献1に記載の駆動制御装置では、蒸気加減弁が常閉調節弁であり、調節器及び制限器はいずれも蒸気加減弁を閉方向に動作させるものであるため、蒸気加減弁を開方向に動作させる起動速度制御ピストンが必須となる。一方、本実施形態では、蒸気加減弁50が常開調節弁であり、調節器である吐出圧制御ピストン80及び制限器である過速度制限ガバナー60はいずれも蒸気加減弁50を閉方向に動作させるものであるため、蒸気加減弁50を開方向又は閉方向に動作させる起動速度制御ピストンに相当するものが無くても、蒸気加減弁50の弁開度を制御することができる。よって、本実施形態では、前述したように、特許文献1に記載の駆動制御装置における起動速度制御ピストンに相当するのも省略することができる。
【0068】
さらに、本実施形態のリンク機構95のリンクロッド96は、鉛直方向において、蒸気タービン20及び給水ポンプ30の設置面と蒸気加減弁50との間に配置されており、リンク機構95及びリンクロッド96に接する過速度制限ガバナー60や吐出圧制御ピストン80が比較的低い位置に配置されているため、地震が起きたときでも、これらの地震による揺れの影響を少なくすることができ、耐震性能を高めることができる。
【符号の説明】
【0069】
1:蒸気ライン、2a,2b:水供給ライン、3:水圧供給ライン、10:蒸気発生源、20:蒸気タービン、21:タービンロータ、22:(蒸気タービンの)回転軸、23:動翼、30:給水ポンプ、31:ロータ軸、32:(給水ポンプの)回転軸、33:羽根車、29,38,39:軸受装置、40:転がり軸受、43:コロ、48:オイルバス、50:蒸気加減弁(常開調節弁)、51:弁箱、55:弁体、56:弁棒、60:過速度制限ガバナー(制限器)、61:ガバナー回転軸、64:錘、75:(過速度制限ガバナーの)駆動端、80:吐出圧制御ピストン(調節器)、81:シリンダ、86:ピストン(受圧部)、91:(吐出圧制御ピストンの)駆動端、95:リンク機構、96:リンクロッド、97:連結リンク、98:ロッド支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生源と、該蒸気発生源からの蒸気で駆動する蒸気タービンと、該蒸気タービンの駆動で駆動して該蒸気発生源に水を供給する給水ポンプと、を備えている蒸気発生設備のタービン・ポンプ駆動制御装置において、
前記蒸気発生源から前記蒸気タービンに流入する前記蒸気の流量を調節する常開調節弁と、
前記蒸気タービンのタービンロータと機械的に連結され、該タービンロータの回転で移動する駆動端を有する制限器と、
前記制動器の前記駆動端に押されるリンクロッドを有し、前記タービンロータの回転数が増加している際の前記駆動端の移動を前記常開調節弁の閉方向への動作に変換するリンク機構と、
を備えていることを特徴とするタービン・ポンプ駆動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のタービン・ポンプ駆動制御装置において、
前記給水ポンプから吐出された前記水の圧力を受けて移動する受圧部と、該受圧部の移動で移動して、前記リンクロッドを押す駆動端を有し、該水の圧力が増加している際の該駆動端の移動が前記リンク機構によって前記常開調節弁を閉方向に動作させることになる調節器を備えている、
ことを特徴とするタービン・ポンプ駆動制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のタービン・ポンプ駆動制御装置において、
前記リンク機構の前記リンクロッドは、鉛直方向における、前記蒸気タービンが設けられている設置面と前記常開調節弁との間に配置されている、
ことを特徴とするタービン・ポンプ駆動制御装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のタービン・ポンプ駆動制御装置と、
前記蒸気発生源と、
前記蒸気タービンと、
前記給水ポンプと、
を備えていることを特徴とする蒸気発生設備。
【請求項5】
請求項4に記載の蒸気発生設備において、
前記蒸気タービンの回転軸を回転可能に支持する軸受装置、及び前記給水ポンプの回転軸を回転可能に支持する軸受装置は、いずれも、転がり軸受と、該転がり軸受の複数のコロのうちの少なくとも一部のコロに潤滑オイルを常時接触させることができる量の該潤滑オイルを溜めておくオイルバスと、を有する、
ことを特徴とする蒸気発生設備。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の蒸気発生設備において、
前記蒸気発生源は、原子力エネルギーで前記水を加熱して前記蒸気を発生させるものである、
ことを特徴とする蒸気発生設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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