説明

蒸気過熱装置および炊飯器

【課題】従来の蒸気発生装置においては、成形性の観点からアルミ鋳造のブロック形状であることが多く設置するためには専用のスペースを設ける必要があった。また、鋳込みヒータの温度を400℃以下にする必要があり、蒸気投入口から投入される過熱蒸気の温度は200℃を下回る。従って、設置性に難があり、過熱蒸気の温度が低く、十分な加熱調理を行うことができないという課題があった。
【解決手段】加熱手段に中心軸方向に螺旋状に螺旋バネを巻き付け熱交換手段を構成し、筐体との間に蒸気流路を設けた簡素な構成により、径方向へのサイズアップが極めて小さく抑えられる。よって、中心軸方向に屈曲した部分と直線部分を組み合わせた形状とすることができ、機器内部にあらかじめ配置されている部品を避けるようにして、自由自在に蒸気発生装置を配置することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過熱蒸気を生成する蒸気過熱装置、および蒸気過熱装置を用いた炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、家庭用の炊飯器において、ご飯をよりおいしく炊くためには、米の澱粉を十分に糊化させることが重要である。特に、追い炊き時に高温で米を加熱することで澱粉の糊化が進み、ご飯の甘み及び香りが増す。そこで、鍋加熱手段による加熱に加えて、鍋上方から高温の蒸気を鍋内に噴射し米飯及び水の加熱を行う炊飯器がある(特開2003−144308号公報)。しかしながら、さらに高い温度の過熱蒸気を投入することでご飯のおいしさを向上するためには前記炊飯器では蒸気加熱装置として性能に限界があった。
【0003】
さらに、高い温度の過熱蒸気を発生させる調理器として、特許文献2に開示されている加熱調理器がある。
【0004】
当該加熱調理器は、調理物を収納する加熱室の外壁に蒸気発生装置が取り付けられる。蒸気発生装置はアルミニウム等の金属製のダイカストから成るハウジングを有し、ハウジング内には空洞が形成され、上下の壁面にはヒータが鋳込まれている。さらにハウジングの内壁には多数のフィンが形成されている。
【0005】
ハウジングの一側面には給水口が形成され、給水口は給水タンクに接続され、給水口を介してハウジング内に水が供給される。ハウジングの上部には加熱室内に蒸気を投入する蒸気投入口が設けられる。給水口から蒸気発生装置内に給水されるとハウジングの底部に貯水され、ヒータの駆動によって蒸気が発生する。発生した蒸気はハウジング内を上昇し、高温のハウジングの壁面及びフィンと接触して高温に加熱される。以上により、過熱蒸気が生成され、蒸気投入口を介して加熱室内に過熱蒸気が投入される。そして、加熱室内に供給された過熱蒸気によって調理物が加熱調理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−144308号公報
【特許文献2】特開2006−349313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の蒸気発生装置においては、ハウジングはヒータを鋳込むために鋳造性がよく熱伝導率の高いアルミニウムやアルミニウム合金が用いられ、成形性の観点からブロック形状であることが多く設置するためには専用のスペースを設ける必要があった。また、ハウジングの融点が低く約400℃で軟化してしまうため、ハウジングに埋設されるヒータの温度を400℃以下にする必要があり、蒸気投入口から投入される過熱蒸気の温度は200℃を下回る。従って、設置性に難があり、過熱蒸気の温度が低く、十分な加熱調理を行うことができないという課題があった。
【0008】
本発明は、蒸気加熱装置の設置場所に制約があるようなコンパクトな機器内部においても、より高温の過熱蒸気を供給できる蒸気過熱装置、及びそれを用いて良好な炊飯を行うことのできる炊飯器を提供することを目的とする。
【0009】
よって、コンパクトな調理機器である炊飯器においても、鍋内のご飯全体に高温の過熱蒸気を行き渡らせることができ、十分な熱量によって糊化が促進したおいしいご飯を炊くことができる炊飯器を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、吸気口と、排気口と、加熱手段と、熱交換手段と、蒸気流路とを有し、前記加熱手段と、熱交換手段と、蒸気流路とを収納する筐体を備え、前記熱交換手段は略円筒形状の加熱手段に中心軸方向に螺旋状に巻き付けられた螺旋バネを配し、前記筐体は略円筒形状であり中心軸方向に屈曲した部分と直線部分を組み合わせた形状とし、かつ中心軸を対象にして上下から前記加熱手段と、熱交換手段と、蒸気流路とを挟み込むようにして組み合わされることで略円筒形状を形成するように構成し、前記吸気口から吸気された100℃前後の蒸気は、前記蒸気流路を通過しながら前記熱交換手段にて高温の過熱蒸気となり、前記排気口から排気されるようにした蒸気過熱装置とする。
【0011】
この構成によれば、炊飯器などのコンパクトな調理機器において高温の過熱蒸気を発生させたい場合においても、機器内部の少ない空きスペースに自由自在に蒸気過熱装置を設置できるものである。
【0012】
すなわち、加熱手段に中心軸方向に螺旋状に螺旋バネを巻き付け熱交換手段を構成し、筐体との間に蒸気流路を設けた簡素な構成により、径方向へのサイズアップが極めて小さく抑えられる。よって、中心軸方向に屈曲した部分と直線部分を組み合わせた形状とすることができ、機器内部にあらかじめ配置されている部品を避けるようにして、自由自在に蒸気発生装置を配置することが可能となる。
【0013】
しかも、十分な表面積を有する熱交換手段によって、必要とする温度の過熱水蒸気を容易に得ることができる。
【0014】
よって、コンパクトな調理機器である炊飯器においても、鍋内のご飯全体に高温の過熱蒸気を行き渡らせることができ、十分な熱量によって糊化が促進したおいしいご飯を炊くことができる炊飯器を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の蒸気過熱装置は設置場所に制約があるようなコンパクトな機器内部においても、より高温の過熱蒸気を供給できる蒸気過熱装置、及びそれを用いて良好な炊飯を行うことのできる炊飯器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1における蒸気過熱装置の断面図
【図2】本実施の形態1の蒸気過熱装置の断面図と蒸気の流れを示した図
【図3】蒸気過熱装置1の組み立て概略図
【図4】本発明の実施の形態1における蒸気過熱装置の断面図
【図5】実施の形態2における炊飯器の蓋部を示した図
【図6】実施の形態2の炊飯器の断面図と蒸気の流れを示した図
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の発明は、吸気口と、排気口と、加熱手段と、熱交換手段と、蒸気流路とを有し、前記加熱手段と、熱交換手段と、蒸気流路とを収納する筐体を備え、前記熱交換手段は略円筒形状の加熱手段に中心軸方向に螺旋状に巻き付けられた螺旋バネを配し、前記筐体は略円筒形状であり中心軸方向に屈曲した部分と直線部分を組み合わせた形状とし、かつ中
心軸を対象にして上下から前記加熱手段と、熱交換手段と、蒸気流路とを挟み込むようにして組み合わされることで略円筒形状を形成するように構成し、前記吸気口から吸気された100℃前後の蒸気は、前記蒸気流路を通過しながら前記熱交換手段にて高温の過熱蒸気となり、前記排気口から排気されるようにした蒸気過熱装置とすることで、炊飯器などのコンパクトな調理機器において高温の過熱蒸気を発生させたい場合においても、機器内部の少ない空きスペースに自由自在に蒸気過熱装置を設置できるものである。
【0018】
すなわち、加熱手段に中心軸方向に螺旋状に螺旋バネを巻き付け熱交換手段を構成し、筐体との間に蒸気流路を設けた簡素な構成により、径方向へのサイズアップが極めて小さく抑えられる。よって、中心軸方向に屈曲した部分と直線部分を組み合わせた形状とすることができ、機器内部にあらかじめ配置されている部品を避けるようにして、自由自在に配置することが可能となる。
【0019】
しかも、十分な表面積を有する熱交換手段によって、必要とする温度の過熱水蒸気を容易に得ることができる。
【0020】
よって、コンパクトな調理機器である炊飯器においても、鍋内のご飯全体に高温の過熱蒸気を行き渡らせることができ、十分な熱量によって糊化が促進したおいしいご飯を炊くことができる炊飯器を提供することができる。
【0021】
第2の発明は、特に第1の発明における加熱手段に前記螺旋バネを装着した後、屈曲した部分と直線部分を組み合わせた形状に成形するとともに、前記筐体は屈曲した部分と直線部分を組み合わせた中心軸を対象にして上下形状にそれぞれ成形し、中心軸を対象にして上下から前記加熱手段と前記螺旋バネとを挟み込むようにして略円筒形状を形成するようにした蒸気過熱装置とすることにより、効率よく高温の過熱蒸気を発生させたい場合においても、機器内部の少ない空きスペースに自由自在に蒸気過熱装置を設置できるものである。
【0022】
すなわち、加熱手段の大部分に螺旋バネを巻き付けることで熱交換面積を増加し、蒸気の加熱効率を向上させることができる。さらに、加熱手段に螺旋バネを装着した後、屈曲した部分と直線部分を組み合わせた形状に成形するため、成形性を良くすることができる。さらに、径方向へのサイズアップが極めて小さく抑えられ中心軸方向への形状成形自由度が高いため、機器内部の空きスペースに合わせて自由自在に設置することができるものである。
【0023】
第3の発明は、特に第1の発明における螺旋バネは前記筐体の直線部分に配置した蒸気過熱装置とすることにより、よりコンパクトな調理機器において高温の過熱蒸気を発生させたい場合においても、蒸気過熱装置を複雑な形状に成形することができるため機器内部に容易に配設することが可能である。
【0024】
すなわち、加熱手段の屈曲した部分の曲げ半径が非常に小さい場合には、蒸気流路を塞いでしまう恐れがあり屈曲した部分には螺旋バネを設けずに、直線部分にのみ螺旋バネを設けることで、狭所への設置性を損なうことなく高温の過熱蒸気を得ることができる。なお、屈曲した部分の曲げ半径は非常に小さいため螺旋バネが設けられていないことによる熱交換面積の低下は最小限に抑えられるものである。
【0025】
第4の発明は、特に第1〜3の発明における螺旋バネの外周に金属薄板を巻きつけた蒸気過熱装置とすることにより、金属薄板のパッキンとしての効果により螺旋バネ5のピッチ間の過熱蒸気のショートカットを防ぎ蒸気の加熱効率を上げることができるとともに、過熱蒸気がケースと直接接触することがなくなるため、筐体の高温酸化劣化を防ぐことが
できるものである。
【0026】
第5の発明は、特に第1〜4の発明における蒸気過熱装置と、炊飯器本体と、鍋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、前記鍋の開口部を覆う蓋と、蒸気を発生する蒸気発生手段とを備え、前記鍋の上面から過熱蒸気による加熱を行う炊飯器することにより、コンパクトな調理機器である炊飯器においても、鍋内のご飯全体に高温の過熱蒸気を行き渡らせることができ、十分な熱量によって糊化が促進したおいしいご飯を炊くことができる炊飯器を提供することができる。
【0027】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における蒸気過熱装置の断面図を示したものである。図2は、本実施の形態1の蒸気過熱装置の断面図と蒸気の流れを示したものである。
【0028】
蒸気過熱装置1は、吸気口2と排気口3と加熱手段であるヒータ4と、ヒータ4の中心軸方向に螺旋状に巻き付けられた螺旋バネ5からなる熱交換手段6と蒸気流路7と金属薄板8と、ヒータ4と熱交換手段6と蒸気流路7と金属薄板8を収納する筐体9からなる。吸気口2と排気口3は筐体9に蒸気漏れすることなく取り付けられている。金属薄板8は螺旋バネ5と筐体9との隙間に設けられている。蒸気流路7は、ヒータ4と螺旋バネ5と金属薄板8とで形成される。
【0029】
ヒータ4と螺旋バネ5と金属薄板8と筐体9は、耐熱性、耐食性、耐孔食性に優れたSUS316Lを用いた。
【0030】
蒸気過熱装置1の簡単な組み立て方法を、図3に示す。先ずヒータ4に螺旋バネ5を巻き付け、機器への設置スペースに応じて屈曲した部分と直線部分を組み合わせた任意の形状に加工する。金属薄板8は、必要に応じてヒータ4と螺旋バネ5を任意の形状に加工する前後に、螺旋バネの外側に巻き付ける。筐体9は中心軸を対象にして上下2つの部品から成るため、別々に成形する。すなわち、ヒータ4と螺旋バネ5の形状に合わせて板材を切り抜き、その後プレス成型することにより、中心軸を対象にして上下2つの部品が得られる。
【0031】
そして、中心軸を対象にして上下からヒータ4と熱交換手段6と蒸気流路7と金属薄板8を挟み込むようにして組み合わされ、接合部は蒸気漏れを防ぐように溶接される。
【0032】
プレス成型の際に、吸気口2と排気口3を同時に形成しておくことで、別工程で設ける必要がなく蒸気過熱装置のコストを抑制できる。
【0033】
筐体9の表面には、表面温度を検知する筐体温度検知手段10が取り付けられ、筐体9を覆うようにセラミックファイバーからなる断熱材11で断熱されている。吸気口2は蒸気が発生する部位に近い側に配設される。
【0034】
以上のように構成された本発明の実施の形態1の蒸気過熱装置の動作を説明する。
【0035】
ヒータ4は、蒸気流路7を筐体温度検知手段10から得られる値をもとに所定の温度に予熱する。本実施の形態1ではヒータ4は高温の過熱蒸気を生成するため、約500℃で発熱するようにした。これによって、吸気口2から導入された蒸気は蒸気流路7を通過する際に熱交換手段6と熱交換することにより温度が上昇し、排気口3から排気される蒸気の温度は100℃以上に上昇する。筐体9は断熱材11により覆われているため、放熱を抑制し蒸気の過熱効率を向上させることができる。
【0036】
すなわち、吸気口2から導入された蒸気は矢印に示すように蒸気流路7を通過し、流通する蒸気はヒータ4および螺旋バネ5および金属薄板8の輻射熱および強制対流熱伝達によって熱交換する。また、螺旋バネ5や金属薄板8の表面に熱交換用の突起などを設けてもよい。これにより、熱交換効率を向上することができる。
【0037】
以上のように、ヒータ4に中心軸方向に螺旋状に螺旋バネ5を巻き付け熱交換手段6を構成し、金属薄板8との間に蒸気流路7を設けた簡素な構成により、径方向へのサイズアップが極めて小さく抑えられる。よって、中心軸方向に屈曲した部分と直線部分を組み合わせた形状とすることができ、機器内部にあらかじめ配置されている部品を避けるようにして、自由自在に配置することが可能となる。
【0038】
しかも、十分な表面積を有する熱交換手段6によって、必要とする温度の過熱水蒸気を容易に得ることができる。
【0039】
なお、吸気口2から導入された蒸気が蒸気流路7を通過しながら加熱されると体積膨張する。蒸気流路7の断面積は、同等かもしくは排気口3に近づくにつれて狭くなる構成とすることにより、排気口3に近づくにつれて加熱蒸気の圧力は大気圧よりも高くなるとともに過熱蒸気の流速は速くなる。
【0040】
過熱蒸気の流速が排気口3に近づくにつれて速くなると、ヒータ4および螺旋バネ5および金属薄板8の輻射熱および強制対流熱伝達が大きくなり熱交換効率が大きくなることで効率的に過熱蒸気を生成させることができる。
【0041】
よって、最適な温度の過熱蒸気を生成しかつ圧力と流速を増大させることで、調理物全体に過熱蒸気を行き渡らせ加熱量を向上し、よりおいしく調理することができる。
【0042】
また、ヒータ4に螺旋バネ5を装着した後、屈曲した部分と直線部分を組み合わせた形状に成形するとともに、筐体9は屈曲した部分と直線部分を組み合わせた中心軸を対象にして上下形状にそれぞれ成形し、中心軸を対象にして上下からヒータ4と螺旋バネ5とを挟み込むようにして略円筒形状を形成することにより、効率よく高温の過熱蒸気を発生させたい場合においても、機器内部の少ない空きスペースに自由自在に蒸気過熱装置1を設置できるものである。
【0043】
すなわち、ヒータ4の大部分に螺旋バネを巻き付けることで熱交換面積を増加し、蒸気の加熱効率を向上させることができる。さらに、ヒータ4に螺旋バネ5を装着した後、屈曲した部分と直線部分を組み合わせた形状に成形するため、機器内部の空きスペースに合わせて自由自在に設置することができるものである。
【0044】
また、図4に示すように、螺旋バネ5は筐体9の直線部分に配置した蒸気過熱装置とすることにより、よりコンパクトな調理機器において高温の過熱蒸気を発生させたい場合においても、蒸気過熱装置1を複雑な形状に成形することができるため機器内部に容易に配設することが可能である。
【0045】
すなわち、ヒータ4の屈曲した部分の曲げ半径が非常に小さい場合には、蒸気流路7を塞いでしまう恐れがあり屈曲した部分には螺旋バネ5を設けずに、直線部分にのみ螺旋バネ5を設けることで、狭所への設置性を損なうことなく高温の過熱蒸気を得ることができる。なお、屈曲した部分の曲げ半径は非常に小さいため螺旋バネ5が設けられていないことによる熱交換面積の低下は最小限に抑えられるものである。
【0046】
また、螺旋バネ5の外周に金属薄板8を巻きつけた蒸気過熱装置1とすることにより、
金属薄板8のパッキンとしての効果により螺旋バネ5のピッチ間の過熱蒸気のショートカットを防ぎ蒸気の加熱効率を上げることができるとともに、過熱蒸気が筐体9と直接接触することがなくなるため、筐体9の高温酸化劣化を防ぐことができるものである。
【0047】
(実施の形態2)
図5は本発明の実施の形態2における炊飯器の蓋を上部から図示したものである。図6は、実施の形態2の炊飯器の断面図と蒸気の流れを示したものである。本実施の形態2の蒸気過熱装置は、実施の形態1に示す蒸気過熱装置1と同等であり共通の記号を用いる。
【0048】
実施の形態2の炊飯器は、大気圧でご飯を炊く炊飯器である。図6において、21は炊飯器の本体を示し、着脱自在の鍋22を内装する。本体21には、その上面を覆う蓋23が開閉自在に設置されている。
【0049】
本体21は、鍋22を誘導加熱する鍋加熱手段24(誘導加熱コイルである)、鍋22の温度を検知する鍋温度検知手段25、蒸気を発生する蒸気発生手段26及び制御手段27を有する。
【0050】
蓋23は、蓋カバー28、蒸気発生手段26が発生した蒸気を鍋22の内部に供給するための蒸気経路29、加熱板30、加熱板加熱手段31、加熱板温度検知手段32、蒸気筒33及び蒸気過熱手段34を有する。
【0051】
加熱板30は、蓋23の下面を構成する蓋カバー28に着脱可能に取り付けられる。蓋23を閉めた状態において、鍋22と加熱板30との隙間は、加熱板30に取り付けられたループ状のパッキン35(第1のパッキン)で封止される。加熱板加熱手段31は、蓋カバー28に取り付けられ、加熱板30を誘導加熱する誘導加熱コイルである。加熱板温度検知手段32は、加熱板30の温度を検知する。蒸気筒33は、鍋22内の不要な蒸気を排出する。
【0052】
蒸気発生手段26は、水タンク36と水タンク加熱手段37とを有する。水タンク加熱手段37は、水タンク36を誘導加熱する誘導加熱コイルである。水タンク36の外側に、水タンク36の温度を検知する水タンク温度検知手段38が圧接される。
【0053】
蓋23を閉めた状態において、発生した蒸気を鍋22に供給する蒸気経路29が水タンク36の上方に位置する。蒸気経路29と水タンク36との間の隙間は、蒸気経路29に取り付けられているループ状のパッキン39(第2のパッキン)で封止されている。蒸気経路29の途中の蓋23の内部には、蒸気過熱装置1を設けている。蒸気過熱装置1は、蓋23の内部部品を安全に配慮しながら避けるようにして、屈曲した部分と直線部分を組み合わせて内装されている。
【0054】
蓋を閉めた状態において水タンク36と鍋22とは蒸気経路29を通じてのみ連通する。水タンク36で発生した蒸気は、蒸気経路29を通って鍋22内に投入され、余分の蒸気は蒸気筒33を通じて外部に排出される。蒸気経路29を加熱する加熱手段(例えば誘導加熱コイル)を更に設けても良い。
【0055】
制御手段27は、回路基板(図示しない)に搭載されたマイクロコンピュータを有する。制御手段27(マイクロコンピュータ)はソフトウエアにより、ユーザが操作パネル(図示しない)を介して入力する操作指令、鍋温度検知手段25、水タンク温度検知手段38、加熱板温度検知手段32および筐体温度検知手段10から入力される信号に基づき、あらかじめマイクロコンピュータに記憶された炊飯プログラムにより、鍋22、加熱板30、水タンク36、蒸気流路7の加熱制御を行う。制御手段27は、鍋加熱手段24、水
タンク加熱手段37、加熱板加熱手段31、ヒータ4の加熱量を、各加熱手段の通電率及び/又は通電量によって制御する。
【0056】
以上のように構成された本発明の実施の形態2の炊飯器の炊飯工程における動作を、蒸気発生手段26と蒸気過熱装置1の動作に着目して説明する。
【0057】
ユーザが、炊飯を行う米とその米量に対応する水とを鍋22に入れ、本体21に内装する。更に、水タンク36に所定量の水を入れ、本体21に内装する。ユーザが炊飯開始スイッチ(図示しない)を操作すると炊飯工程が実施される。
【0058】
炊飯工程は、時間順に前炊き、炊き上げ、沸騰維持、蒸らしに大分される。前炊き工程において、鍋22の温度が米の吸水に適した温度になるように鍋加熱手段24を制御し、鍋内の米と水とを加熱する。次に、炊き上げ工程において、鍋22の温度が所定値(100℃)になるまで鍋加熱手段24によって鍋22を所定の熱量で加熱する。この時の温度上昇速度によって、炊飯量を判定する。沸騰維持工程において、鍋22の水が無くなり、鍋22の温度が100℃を超えた所定値になるまで、鍋加熱手段24及び加熱板加熱手段31に通電し、米と水を加熱する。最後に蒸らし工程において、一定時間の間に複数回、炊飯量に応じた鍋加熱手段24及び加熱板加熱手段31による加熱(追い炊き)と加熱の停止(休止)を繰り返す。蒸らし工程(追い炊き時と休止時)において、蒸気発生手段26から発生した蒸気を蒸気過熱手段34で過熱し鍋22内へ過熱蒸気を供給する。
【0059】
前炊き工程では、炊き上げ工程及び沸騰維持工程に比べ各加熱手段への通電量が少なく、炊飯器全体の消費電力が小さい。実施の形態2の炊飯器は、前炊き工程において水タンク加熱手段37に通電し、水タンク36内の水を予熱する。
【0060】
実施の形態2の炊飯器の、蒸らし工程における動作を説明する。
【0061】
沸騰維持工程終了後、鍋加熱手段24及び加熱板加熱手段31による加熱を停止し、水タンク加熱手段37に通電する。水タンク36内の水は予熱されているので、速やかに沸騰して蒸気経路29に蒸気が導入される。
【0062】
ヒータ4は、沸騰維持工程終了間際に通電され、蒸気流路7を筐体温度検知手段10から得られる値をもとに所定の温度に予熱する。これによって、吸気口2から導入された蒸気は蒸気流路7を通過する際に温度が上昇し、排気口3から排気される蒸気の温度は100℃以上に上昇する。吸気口2から導入された蒸気が蒸気流路7を通過しながら加熱されると体積膨張する。蒸気流路7の断面積は、同等かもしくは排気口3に近づくにつれて狭くなる構成であるため、排気口3に近づくにつれて加熱蒸気の圧力は大気圧よりも高くなるとともに過熱蒸気の流速は速くなる。
【0063】
過熱蒸気の流速が排気口3に近づくにつれて速くなると、ヒータ4および螺旋バネ5および金属薄板8の輻射熱および強制対流熱伝達が大きくなり熱交換効率が大きくなることで効率的に過熱蒸気を生成させることができる。
【0064】
以上のように、コンパクトな調理機器である炊飯器においても、ヒータ4に中心軸方向に螺旋状に螺旋バネ5を巻き付け熱交換手段6を構成し、金属薄板8との間に蒸気流路7を設けた簡素な蒸気過熱装置1の構成により、径方向へのサイズアップが極めて小さく抑えられる。よって、蓋23内部にあらかじめ配置されている部品を避けるようにして、自由自在に配置することが可能となる。図3に示す実施の形態2の炊飯器は従来の過熱蒸気を利用した炊飯器よりも高さが10%以上低下している。
【0065】
さらに、鍋22内のご飯全体に高温の過熱蒸気を行き渡らせることができ、十分な熱量によって糊化が促進したおいしいご飯を炊くことができる炊飯器を提供することができる。
【0066】
ユーザは、炊飯開始前に炊飯器の操作パネル(図示しない)を操作し、炊飯する米の銘柄を制御手段27に指定できる。制御手段27は指定された銘柄が、柔らかく炊ける性質の米(魚沼産コシヒカリ、宮城産ササニシキなど)か、標準的な性質の米(一般のコシヒカリ、ササニシキ、夏場の魚沼産コシヒカリ、新米のきらら397など)か、硬く炊ける性質の米(きらら397、夏場のコシヒカリ、ササニシキなど)かを判断し、蒸らし工程における高温蒸気の投入時間と温度とを制御する。高温蒸気の投入時間は、水タンク加熱手段37の通電率及び/又は通電量によって制御する。高温蒸気の温度は、ヒータ4の通電率及び/又は通電量によって制御する。
【0067】
制御手段27は蒸らし工程において、米が、柔らかく炊ける性質の米の場合180℃の高温蒸気を1分間鍋22に供給し、標準的な性質の米の場合200℃の高温蒸気を2分間鍋22に供給し、硬く炊ける性質の米の場合220℃の高温蒸気を3分間鍋22に供給する。実施の形態2の炊飯器は、米の性質に合わせて最適な炊飯を行うことができる。
【0068】
蒸らし工程において、過熱蒸気は水分子の状態で凝集することなく鍋22内の米の隙間を通り鍋22の下部まで行き渡り、米一粒一粒に伝熱する。従って、ご飯の温度が高温に保たれ糊化が進み、ご飯の甘み及び香りが増す。鍋内全体にわたってご飯の食味を向上させることができる。過熱蒸気を供給しながら、鍋加熱手段24及び加熱板加熱手段31による追い炊き加熱を行うので、ご飯の乾燥と焦げを抑えることができる。
【0069】
炊飯工程終了後は、保温工程に移行し、鍋内の温度を70℃に近づけるように鍋加熱手段24及び加熱板加熱手段31への通電を制御する。ユーザが再加熱スイッチ(図示しない)を操作すると、制御手段27は水タンク加熱手段37とヒータ4とを駆動し、蒸らし工程と同様に過熱蒸気を発生させる。そして、高温蒸気が鍋22内に供給される。炊飯工程終了後、再加熱スイッチが操作されるまではご飯は乾燥していくが、過熱蒸気による再加熱を行うことで、ご飯の水分量は炊飯工程終了時と同程度まで増加する。更に、保温中に発生する不快なにおいが過熱蒸気による加熱で低減する。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上のように、本発明の蒸気過熱装置は設置場所に制約があるようなコンパクトな機器内部においても、より高温の過熱蒸気を供給できる蒸気過熱装置、及びそれを用いて良好な炊飯を行うことのできる炊飯器を提供することができる。よって加熱調理機器への応用として有用である。
【符号の説明】
【0071】
1 蒸気過熱装置
2 吸気口
3 排気口
4 ヒータ
5 螺旋バネ
6 熱交換手段
7 蒸気流路
8 金属薄板
9 筐体
10 筐体温度検知手段
11 断熱材
21 本体
22 鍋
23 蓋
24 鍋加熱手段
25 鍋温度検知手段
26 蒸気発生手段
27 制御手段
28 蓋カバー
29 蒸気経路
30 加熱板
31 加熱板加熱手段
32 加熱板温度検知手段
33 蒸気筒
34 蒸気過熱手段
35 パッキン(第1のパッキン)
36 水タンク
37 水タンク加熱手段
38 水タンク温度検知手段
39 パッキン(第2のパッキン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口と、排気口と、加熱手段と、熱交換手段と、蒸気流路とを有し、前記加熱手段と、熱交換手段と、蒸気流路とを収納する筐体を備え、前記熱交換手段は略円筒形状の加熱手段に中心軸方向に螺旋状に巻き付けられた螺旋バネを配し、前記筐体は略円筒形状であり中心軸方向に屈曲した部分と直線部分を組み合わせた形状とし、かつ中心軸を対象にして上下から前記加熱手段と、熱交換手段と、蒸気流路とを挟み込むようにして組み合わされることで略円筒形状を形成するように構成し、前記吸気口から吸気された100℃前後の蒸気は、前記蒸気流路を通過しながら前記熱交換手段にて高温の過熱蒸気となり、前記排気口から排気されるようにした蒸気過熱装置。
【請求項2】
前記加熱手段に前記螺旋バネを装着した後、屈曲した部分と直線部分を組み合わせた形状に成形するとともに、前記筐体は屈曲した部分と直線部分を組み合わせた中心軸を対象にして上下形状にそれぞれ成形し、中心軸を対象にして上下から前記加熱手段と前記螺旋バネとを挟み込むようにして略円筒形状を形成するようにした請求項1に記載の蒸気過熱装置。
【請求項3】
前記螺旋バネは前記筐体の直線部分に配置した請求項1に記載の蒸気過熱装置。
【請求項4】
前記螺旋バネの外周に金属薄板を設けた請求項1〜3のいずれか1項に記載の蒸気過熱装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の蒸気過熱装置と、炊飯器本体と、鍋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、前記鍋の開口部を覆う蓋と、蒸気を発生する蒸気発生手段とを備え、前記鍋の上面から過熱蒸気による加熱を行う炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−241985(P2012−241985A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113146(P2011−113146)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】