説明

蒸発器、及び該蒸発器を備えた冷凍システム

【課題】 被熱交換流体を効率的に冷却できる上に、完全にガス化した冷媒を排出することのできる蒸発器を提供する。
【解決手段】 伝熱プレートを境にして第一流路と第二流路とが交互に形成され、冷媒流入路及び冷媒流出路が第一流路の形成される領域を通るように一方向に間隔をあけて形成され、被熱交換流体流入路及び被熱交換流体流出路が第二流路の形成される領域を通るように一方向に間隔をあけて形成され、伝熱プレートの一方の面間に形成された仕切部を境に第二流路が形成されるとともに被熱交換流体よりも温度の高い加熱流体を流通させる第三流路が形成され、伝熱プレートの他方の面間に第一流路が形成され、第三流路に対して加熱流体を流出入させる加熱流体流入路及び加熱流体流出路が第三流路の形成される領域を通るように形成され、冷媒流出路が第三流路の形成される領域を通るように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一成分冷媒や、共沸混合冷媒、疑似共沸混合冷媒、非共沸混合冷媒等の冷媒と水等の被熱交換流体とを熱交換させるための蒸発器、及び該蒸発器を備えた冷凍システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、冷凍システム(冷凍サイクル)に採用される蒸発器には、種々タイプのものがあり、その一つとして、図10に示す如く、複数の伝熱プレート1’…,2’…が積層され、液体状態又は気液混合状態の冷媒CM’を流通させる第一流路R1’と被熱交換流体W’を流通させる第二流路R2’とが各伝熱プレート1’…,2’…を境にして交互に形成されたものが周知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる蒸発器A’は、いわゆるプレート式熱交換器と言われるもので、各伝熱プレート1’,2’の両端の形成された開口H1’,H2’,H3’,H4’が連なることで、第一流路R1’に対して冷媒CM’を流出入させる冷媒流入路31a’及び冷媒流出路31b’が伝熱プレート1’,2’の両端に形成されるとともに、第二流路R2’に被熱交換流体W’を流出入させる被熱交換流体流入路32a’及び被熱交換流体流出路32b’が伝熱プレート1’,2’の両端に形成されている。
【0004】
かかる蒸発器A’は、第一流路R1’で流通する冷媒CM’の流通方向と第二流路R2’で流通する被熱交換流体W’の流通方向が逆方向になる(対向流になる)ように、冷媒流入路31a’、冷媒流出路31b’、被熱交換流体流入路32a’及び被熱交換流体流出路32b’が配置される。
【0005】
このように、上記構成の蒸発器A’は、液体状態又は気液混合状態の冷媒CM’を第一流路R1’に流通させつつ被熱交換流体W’を第二流路R2’に流通させることで、冷媒CM’と被熱交換流体W’とが熱交換を行い、第一流路R1’内の冷媒CM’が蒸発しつつ第二流路R2’内の被熱交換流体W’が冷却されるようになっている。
【0006】
ところで、上記構成の蒸発器A’を備えた冷凍システムは、一般的に蒸発器A’の冷媒流出路31b’から排出された冷媒CM’を圧縮機で加圧した後に凝縮器で凝縮して再度蒸発器A’に供給するように構成されるが、蒸発器A’から排出された冷媒CM’(圧縮機に供給される冷媒CM’)に液体が含まれると圧縮機が破損してしまう虞があるとして、蒸発器A’で冷媒CM’と被熱交換流体W’とが熱交換する間(冷媒CM’が第一流路R1’を流通する間)に該冷媒CM’を完全に蒸発させ、蒸発器A’から完全にガス化した冷媒CM’を排出するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4554025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、第一流路R1’内で冷媒CM’を完全に蒸発させ、蒸発器A’から完全にガス化した冷媒CM’を排出するように構成すると、第一流路R1’の下流域で流通する冷媒(略完全にガス化した冷媒)CM’における被熱交換流体W’に対する冷却の効果が小さくなり、熱交換効率が低下するといった問題がある。
【0009】
具体的に説明すると、伝熱プレート1’,2’が冷媒CM’で濡れた状態になると、冷媒CM’の蒸発に伴う気化潜熱で伝熱プレート1’,2’及び被熱交換流体W’を効率的に冷却できるが、略完全にガス化した冷媒CM’は、気化潜熱が殆ど無いため、伝熱プレート1’,2’及び被熱交換流体W’を効率的に冷却できなくなってしまう。
【0010】
そのため、従来の冷凍システム(蒸発器A’)は、第一流路R1’内の下流域を流通する冷媒CM’が第二流路R2’内を流通する被熱交換流体W’の冷却に殆ど貢献せずに、熱交換効率が低下するといった問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、斯かる実情に鑑み、被熱交換流体を効率的に冷却できる上に、完全にガス化した冷媒を排出することのできる蒸発器、及び該蒸発器を備えた冷凍システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る蒸発器は、積層された複数の伝熱プレートのそれぞれを境にして冷媒を流通させる第一流路と被熱交換流体を流通させる第二流路とが交互に形成され、各第一流路に対して冷媒を流出入させる冷媒流入路及び冷媒流出路が第一流路の形成される領域を通るように一方向に間隔をあけて形成されるとともに、第二流路に対して被熱交換流体を流出入させる被熱交換流体流入路及び被熱交換流体流出路が第二流路の形成される領域を通るように前記一方向に間隔をあけて形成された蒸発器において、互いに対向する伝熱プレートの一方の面間に前記一方向と直交する他方向に延びる仕切部が設けられ、該仕切部を境にして伝熱プレートの一方の面間における前記一方向の一方側に前記第二流路が形成されるとともに伝熱プレートの一方の面間における前記一方向の他方側に被熱交換流体よりも温度の高い加熱流体を流通させる第三流路が形成される一方、互いに対向する伝熱プレートの他方の面間に第一流路が形成され、前記第三流路に対して加熱流体を流出入させる加熱流体流入路及び加熱流体流出路が該第三流路の形成される領域を通るように形成され、前記冷媒流入路が第二流路の形成される領域を通るように形成されるとともに冷媒流出路が第三流路の形成される領域を通るように形成されていることを特徴とする。
【0013】
上記構成の蒸発器によれば、冷媒流入路が第二流路の形成される領域を通るように形成(配置)されるとともに、冷媒流出路が第三流路の形成される領域を通るように形成(配置)されているため、伝熱プレートの他方の面間に形成される第一流路は、伝熱プレートを挟んで第二流路及び第三流路に対向して形成されることになる。
【0014】
従って、冷媒流入路から第一流路に流入した冷媒は、第二流路全域の被熱交換流体と熱交換した上で、第三流路で流通する加熱流体とも熱交換することになる。
【0015】
すなわち、上記構成の蒸発器は、第一流路における第二流路と対応する全領域に液体成分を十分に含む気液混合状態の冷媒を流通させることで、伝熱プレートの第二流路と対応する多くの領域が冷媒で濡れ状態になるため、第一流路内の冷媒と第二流路全域の被熱交換流体とが熱交換を行うことになる。すなわち、伝熱プレートの第二流路と対応する多くの領域に付着した冷媒の蒸発に伴う気化潜熱によって第二流路全域の被熱交換流体が冷却されることになる。従って、上記構成の蒸発器は、冷媒と被熱交換流体とが熱交換し難い領域が形成されることがなく、第二流路を流通する被熱交換流体全体を効率的に冷却することができる。
【0016】
そして、上述の如く、第一流路における第二流路と対応する全領域に液体成分を十分に含む気液混合状態の冷媒を流通させると、第一流路で流通する冷媒は、第二流路と対応する領域から第三流路と対応する領域に進入したときにも液体成分を含む気液混合状態であるが、第三流路に被熱交換流体よりも温度の高い加熱流体を流通させておくことで、第一流路を流通する冷媒と第三流路を流通する加熱流体とが熱交換を行って該第一流路内の冷媒が急速に蒸発して完全にガス化した状態で冷媒流出路から排出されることになる。従って、上記構成の蒸発器は、冷凍システムに採用したときに、被熱交換流体を効率的に冷却できる上に、後段に設けられる圧縮機の破損も防止することができる。
【0017】
本発明の一態様として、各伝熱プレートは、互いに対向する一方の面に前記一方向と直交する他方向に延びる仕切用凸条が形成され、前記仕切部は、互いに対向する伝熱プレートの仕切用凸条同士が面接触した状態で溶着されて形成されてもよい。このようにすれば、第二流路と第三流路との間に幅広な仕切部が形成されるため、第二流路内を流通する被熱交換流体が第三流路内で流通する温度の高い加熱流体の熱影響を受けることが防止される。
【0018】
本発明の他態様として、前記冷媒流入路、前記冷媒流出路、前記被熱交換流体流入路、及び被熱交換流体流出路は、伝熱プレートの前記他方向の中央部で前記一方向に整列して配置されてもよい。このようにすれば第一流路内の冷媒の流れ及び第二流路内の被熱交換流体の流れを均一にすることができる。
【0019】
本発明の別の態様として、第三流路側に配置された前記被熱交換流体流出路又は前記被熱交換流体流入路の何れか一方は、断面形状が前記一方向に長軸を有する楕円形状に形成されてもよい。このようにすれば、冷媒を第一流路内で円滑に流通させることができる。すなわち、第二流路内の被熱交換流体との熱交換で蒸発が進んだ冷媒が流通する領域に前記被熱交換流体流出路又は前記被熱交換流体流入路の何れか一方が存在すると該冷媒の流れを妨げて圧力損失を増大させる。しかしながら、第三流路側に配置された前記被熱交換流体流出路又は前記被熱交換流体流入路の何れか一方の断面形状を一方向(冷媒の長手方向)に長軸を有する楕円形状に形成すると、他方向に短軸が位置することになるため、冷媒の流通を妨げる範囲が狭くなる結果、圧力損失を大きくすることなく冷媒を円滑に流通させることができる。
【0020】
本発明に係る冷凍システムは、冷媒と被熱交換流体とを熱交換させる蒸発器と、該蒸発器から排出された冷媒を加圧する圧縮機と、該圧縮機で圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器とを備え、該凝縮器で凝縮された冷媒を前記蒸発器に供給するように構成された冷凍システムにおいて、前記蒸発器は、上記何れかの蒸発器で構成され、第一流路に冷媒を流通させた状態で、第二流路に被熱交換流体を流通させつつ第三流路に被熱交換流体よりも温度の高い加熱流体を流通させるように構成されたことを特徴とする。上記冷凍システムによれば、上記何れかの蒸発器を用いるため、上記蒸発器と同様の作用及び効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明の蒸発器によれば、被熱交換流体を効率的に冷却できる上に、完全にガス化した冷媒を排出することができるという優れた効果を奏し得る。
【0022】
また、本発明の冷凍システムによれば、上記蒸発器を備えているため、被熱交換流体を効率的に冷却できる上に、完全にガス化した冷媒を排出することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る蒸発器の概略斜視図であって、(a)は、蒸発器の正面側から見た概略斜視図をいい、(b)は、蒸発器の背面側から見た概略斜視図を示す。
【図2】同実施形態に係る蒸発器の中間位置にある伝熱プレートを省略した状態の概略分解斜視図を示す。
【図3】同実施形態に係る蒸発器に採用される一方の伝熱プレートの説明図であって、(a)は、伝熱部の一方の面側から見た正面図を示し、(b)は、伝熱部の他方の面側から見た背面図を示す。
【図4】同実施形態に係る蒸発器に採用される他方の伝熱プレートの説明図であって、(a)は、伝熱部の他方の面側から見た正面図を示し、(b)は、伝熱部の一方の面側から見た背面図を示す。
【図5】(a)は、同実施形態に係る蒸発器の仕切部近傍の部分拡大断面図を示し、(b)は、同実施形態に係る蒸発器を構成する伝熱プレート同士の接合部分の部分拡大図であって、開口(第一開口、第二開口、第三開口、第四開口、第五開口、第六開口)回りに設けられた環状凸部同士(第一環状凸部同士、第二環状凸部同士、第三環状凸部同士、第四環状凸部同士、第六環状凸部同士)を接合させた部分の概略図を示す。
【図6】同実施形態に係る蒸発器の縦断面図に冷媒、被熱交換流体、及び加熱流体の流れを付記した図であって、(a)は、第一パス領域及び第二パス領域における第一流路での断面図を示し、(b)は、第一パス領域における第二流路内での断面図を示し、(c)は、第二パス領域における第二流路内での断面図を示す。
【図7】同実施形態に係る蒸発器を採用した冷凍システム(空調機)の概略系統図を示す。
【図8】図7に示す冷凍システムに採用される凝縮器の全体斜視図を示す。
【図9】図8に示す凝縮器の縦断面図であって、(a)は、冷却水用流入路及び冷却水用流出路が冷却水用流路を介して連通した部分の縦断面図を示し、(b)は、冷媒用流入路及び冷媒用流出路が冷媒用流路を介して連通した部分の縦断面図を示す。
【図10】冷凍システムに採用される従来の蒸発器の概略分解斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0025】
本実施形態に係る蒸発器は、冷凍サイクルを実現するためのもので、空調機や冷凍機等に搭載される冷凍システムの一構成として採用される。
【0026】
かかる蒸発器は、いわゆるプレート式熱交換器であり、図1及び図2に示す如く、積層された複数の伝熱プレート1…,2…を備えている。各伝熱プレート1,2は、金属プレート(本実施形態においてはステンレス合金製のプレート)をプレス成形することで形成されたもので、図3及び図4に示す如く、平面視四角形状(本実施形態においては平面視長方形状)の伝熱部10,20と、該伝熱部10,20と面交差する方向に該伝熱部10,20の外周から延出した環状部11,21とを備えており、隣り合う伝熱プレート1,2の環状部11,21同士を嵌合させた状態で伝熱部10,20同士が対向するようになっている(図2参照)。
【0027】
本実施形態において、各伝熱プレート1,2は、図3(a)及び図4(b)に示す如く、伝熱部10,20を一方向で二つの領域に区画するように、該伝熱部10,20の一方の面上に一方向と直交する他方向に延びる仕切用凸条100,200が形成されている。なお、図3〜6において、伝熱部10,20から突出した部分(仕切用凸条100,200や後述する第一乃至第六環状凸部)にハッチングを付している。
【0028】
本実施形態おいて、各伝熱プレート1,2は、積層した状態で互いに対向する伝熱部10,20の一方の面上に該伝熱プレート1,2の長手方向と直交する方向(以下、短手方向という)に延びる仕切用凸条100,200が形成されている。なお、各伝熱プレート1,2は、上述の如く、金属プレートをプレス成形することで形成されているため、伝熱部10,20の他方の面(一方の面の裏面)には、仕切用凸条100,200と対応して短手方向に延びる凹条(溝)が形成されている(図3(b)及び図4(a)参照)。
【0029】
これにより、各伝熱プレート1,2の伝熱部10,20は、仕切用凸条100,200(及びその裏面側に形成された凹条)を境にして長手方向で二つの領域A1,A2に区画されている。
【0030】
本実施形態に係る仕切用凸条100,200は、図5(a)に示す如く、頂部が平面状に形成されており、隣り合う伝熱プレート1,2の仕切用凸条100,200の頂部(平面)同士が面接触するようになっている。該仕切用凸条100,200は、伝熱プレート1,2の一方の面間を温度の異なる流体を流通させる二つの流路(後述する第二流路R2及び第三流路R3)に区切る仕切部30を形成するためのものである。そのため、第二流路R2及び第三流路R3を流通する流体のそれぞれが相手方の熱影響を受けにくくなるように、仕切用凸条100,200の頂部(平面)の長手方向の長さ(幅)をできるだけ広く設定して幅広な仕切部30を形成することが好ましいが、例えば、伝熱プレート1,2をオーステナイト系のステンレス合金(熱伝導率16W/mk)で構成し、仕切用凸条100,200(平面状の頂部)同士を銅(熱伝導率370W/mk)でロウ付けする場合には、仕切用凸条100,200の頂部(平面)の幅(伝熱プレート1,2の長手方向の長さ)は、1mm以上あればよい。
【0031】
図3(a)及び図4(b)に戻り、前記仕切用凸条100,200は、伝熱プレート1,2(伝熱部10,20)の長手方向(一方向)における一端側に偏った位置に設けられている。すなわち、仕切用凸条100,200は、伝熱部10,20の長手方向の中央よりも一端側に設けられている。これにより、伝熱部10,20は、仕切用凸条100,200によって区画された二つの領域のうち、長手方向の一端側の領域(以下、第一領域という)A1よりも他端側の領域(以下、第二領域という)A2が広くなっている。第二領域A2の長手方向の長さは、水等の被熱交換流体Wを流通させるのに必要な流路長(冷媒CMと被熱交換流体Wを熱交換させるのに必要な流路長)以上に設定される。
【0032】
本実施形態に係る蒸発器Aは、上述の如く、各伝熱プレート1,2が伝熱部10,20と面交差する方向に該伝熱部10,20の外周から延出した環状部11,21を備えているため、互いに隣り合う伝熱プレート1,2のうち、一方の伝熱プレート1は、図3(a)に示す如く、仕切用凸条100が環状部11の延出側とは反対側に突出するように形成され、他方の伝熱プレート2は、図4(b)に示す如く、仕切用凸条200が環状部21と同方向に突出するように形成されている。すなわち、本実施形態に係る蒸発器Aは、図3及び図4に示す如く、仕切用凸条100,200及び後述する開口(第一開口H1、第二開口H2、第三開口H3、第四開口H4、第五開口H5、第六開口H6)回りの環状凸部(第一環状凸部101,201、第二環状凸部102,202、第三環状凸部103,203、第四環状凸部104,204、第五環状凸部105,205、第六環状凸部106,206)の突出方向を異にする二種類の伝熱プレート1,2を交互に積層することで形成されている(図2参照)。
【0033】
各伝熱プレート1,2は、伝熱部10,20に複数の開口が形成されている。より具体的に説明すると、各伝熱プレート1,2は、第一領域A1に大口径の開口が一つ設けられるとともに、該大口径の開口よりも小口径の開口が二つ設けられている。また、各伝熱プレート1,2は、第二領域A2に大口径の開口が伝熱部10,20の長手方向に間隔をあけて三つ設けられている。
【0034】
第一領域A1及び第二領域A2に設けられた大口径の開口は、伝熱プレート1,2(伝熱部10,20)の短手方向の中央部上で伝熱プレート1,2(伝熱部10,20)の長手方向で一列をなすように配置されている。なお、以下の説明において、伝熱プレート1,2の長手方向に一列で整列する四つの開口(第一領域A1及び第二領域A2に設けられた大口径の開口)を伝熱部10,20の一端側から他端側に向けて順に第一開口H1、第二開口H2、第三開口H3、第四開口H4といい、第一領域A1にある小口径の開口を第五開口H5及び第六開口H6ということとする。
【0035】
前記第一開口H1は、第一領域A1内の伝熱部10,20の長手方向の一端側に偏った位置に配置されている。第二領域A2にある第二開口H2、第三開口H3、第四開口H4のうち、第二開口H2は、第二領域A2内の伝熱部10,20の長手方向の一端側に配置され、第三開口H3及び第四開口H4は、第二領域A2内の伝熱部10,20の長手方向の他端側に配置されている。
【0036】
そして、第五開口H5及び第六開口H6は、第一領域A1で第一開口H1の両側に配置されている。本実施形態において、第五開口H5及び第六開口H6は、伝熱部10,20の短手方向に一列をなすように配置されている。
【0037】
そして、第一開口H1、第三開口H3、第四開口H4、第五開口H5、及び第六開口H6は、それぞれ略真円状に形成される一方、第二開口H2は、伝熱プレート1,2の長手方向に長軸が設定された楕円形状に形成されている。
【0038】
各伝熱プレート1,2の伝熱部10,20には、第一開口H1、第二開口H2、第三開口H3、第四開口H4、第五開口H5、第六開口H6のそれぞれを独立して包囲する環状凸部101,102,103,104,105,106,201,202,203,204,205,206が形成されている。なお、以下において、各環状凸部101,102,103,104,105,106,201,202,203,204,205,206を第一開口H1乃至第六開口H6のそれぞれに対応させて第一環状凸部101,201、第二環状凸部102,202、第三環状凸部103,203、第四環状凸部104,204、第五環状凸部105,205、第六環状凸部106,206ということとする。
【0039】
各伝熱プレート1,2は、図3(a)及び図4(b)に示す如く、第一環状凸部101,201及び第三環状凸部103,203が伝熱部10,20の一方の面(仕切用凸条100,200の形成された面)に凸設され、図3(b)及び図4(a)に示す如く、第二環状凸部102,202、第四環状凸部104,204、第五環状凸部105,205及び第六環状凸部106,206が伝熱部10,20の他方の面に凸設されている。
【0040】
図3及び図4に示す如く、本実施形態において、第一開口H1、第三開口H3、第四開口H4、第五開口H5、及び第六開口H6は、それぞれ略真円状に形成されているため、第一環状凸部101,201、第三環状凸部103,203、第四環状凸部104,204、第五環状凸部105,205、及び第六環状凸部106,206のそれぞれは、対応する開口H1,H2,H3,H4に即して円環状に形成されている。これに対し、第二環状凸部102,202は、第二開口H2が楕円形状に形成されているため、伝熱プレート1,2の長手方向に長軸が設定された楕円環状をなしている。
【0041】
そして、各伝熱プレート1,2は、図5(b)に示す如く、積層した状態で、隣り合う伝熱プレート1,2の互いに対向する一方の面側において、対応する環状凸部同士(第一環状凸部101,201同士、第三環状凸部103,203同士)がそれぞれ全周に亘って接触し、互いに対向する他方の面側においても対応する環状凸部同士(第二環状凸部102,202同士、第四環状凸部104,204同士、第五環状凸部105,205同士、第六環状凸部106,206同士)がそれぞれ全周に亘って接触するようになっている。これにより、各伝熱プレート1,2は、対応関係にある開口(第一開口H1…同士、第二開口H2…同士、第三開口H3…同士、第四開口H4…同士、第五開口H5…同士、第六開口H6…同士)が連なるようになっている。
【0042】
また、図3(a)及び図4(b)に示す如く、各伝熱プレート1,2の一方の面には、第二開口H2の外周の前記長手方向の他端側の一部に沿った案内用凸部107,207が形成されている。かかる案内用凸部107,207は、第二環状凸部102,202の外側で平面視円弧状に形成されており、第二開口H2の開口中心(第二環状凸部102,202の曲率中心)と両端とを結ぶ二本の仮想線のなす角度θが60°〜120°(好ましくは、80°〜90°)になる範囲で形成されている。
【0043】
そして、図3(b)及び図4(a)に示す如く、各伝熱プレート1,2の他方の面には、第三開口H3の少なくとも前記長手方向の一端側を部分的に包囲するガイド用凸部108,208が設けられている。本実施形態に係るガイド用凸部108,208は、第三開口H3の開口中心に対して長手方向の他端側に偏った位置に曲率中心が設定された円弧状に形成されており、周方向の両端が第四開口H4の周囲(第四環状凸部104,204)と間隔をあけて長手方向の他端側で開放するように形成されている。
【0044】
そして、本実施形態においては、前記ガイド用凸部108,208の両端から第四開口H4の両側に延出した一対のサイドガイド用凸部109,209が形成されている。該一対のサイドガイド用凸部109,209は、伝熱部10,20の長手方向の他端にまで到達しないように形成されており、長手方向の他端側に向かうにつれて互いの間隔が拡大するように形成されている。
【0045】
各伝熱プレート1,2は、伝熱部10,20の第一領域A1及び第二領域A2に複数の凹条と凸条(図示しない)とが交互に形成されている。各伝熱プレート1,2は、積層した状態で、隣り合う伝熱プレート1,2の伝熱部10,20の凸条同士が交差衝合し、積層された伝熱プレート1,2間に流体が流通可能な空間が形成されるようになっている。すなわち、蒸発器Aは、隣り合う伝熱プレート1,2の凸条同士が交差衝合して対向する凹条間に流体が流通可能な空間が形成されている。
【0046】
そして、本実施形態に係る蒸発器Aは、隣り合う伝熱プレート1,2同士がロウ付けによって永久接合される。すなわち、本実施形態に係る蒸発器Aは、図5に示す如く、隣り合う伝熱プレート1,2の接触部分(仕切用凸条100,200同士、環状部11,21同士、第一環状凸部101,201同士、第二環状凸部102,202同士、第三環状凸部103,203同士、第四環状凸部104,204同士、第五環状凸部105,205同士、第六環状凸部106,206同士、案内用凸部107,207同士、ガイド用凸部108,208同士、サイドガイド用凸部109,209同士、凸条が接触する接触点同士)がロウ付けされ、開口H1,H2,H3,H4,H5,H6回り及び伝熱部10,20の外周が封着されている。
【0047】
これにより、前記蒸発器Aは、図2及び図6に示す如く、各伝熱プレート1,2のそれぞれを境にして冷媒CMを流通させる第一流路R1と被熱交換流体Wを流通させる第二流路R2とが交互に形成されている。
【0048】
本実施形態に係る蒸発器Aは、隣り合う伝熱部10,20の一方の面上にある仕切用凸条100,200同士が接続(ロウ付け)されることで、伝熱部10,20の一方の面間を長手方向(一方向)で二つに区画する仕切部30が短手方向(一方向と直交する他方向)に延びるように形成される。そして、該蒸発器Aは、図6(a)に示す如く、伝熱部10,20の他方の面間に長手方向の全長に亘って(第一領域A1と第二領域A2と併せた全領域と対応する領域に)第一流路R1が形成され、図6(b)及び図6(c)に示す如く、前記仕切部30を境にして伝熱部10,20の一方の面間の長手方向の他端側(第二領域A2と対応する領域)に被熱交換流体Wを流通させる第二流路R2が形成されるとともに長手方向の一端側(第一領域A1と対応する領域)に被熱交換流体Wよりも温度の高い加熱流体WMを流通させる第三流路R3が形成されている。
【0049】
また、本実施形態に係る蒸発器Aは、図6に示す如く、各伝熱プレート1,2の第一開口H1が連なるとともに第三開口H3が連なることで、各第一流路R1に対して冷媒CMを流出入させる冷媒流入路31a及び冷媒流出路31bが形成され、各伝熱プレート1,2の第二開口H2が連なるとともに第四開口H4が連なることで、第二流路R2に対して被熱交換流体Wを流出入させる被熱交換流体流入路32a及び被熱交換流体流出路32bが形成されている。
【0050】
すなわち、本実施形態に係る蒸発器Aは、第一開口H1及び第三開口H3の配置に対応して、冷媒流入路31a及び冷媒流出路31bが第一流路R1の形成される領域を通るように伝熱部10,20の長手方向に間隔をあけて形成されるとともに、第二開口H2及び第三開口H3の配置に対応して、被熱交換流体流入路32a及び被熱交換流体流出路32bが第二流路R2の形成される領域を通るように伝熱部10,20の長手方向に所定間隔をあけて形成されている。
【0051】
第一開口H1、第二開口H2、第三開口H3、及び第四開口H4は、上述の如く、伝熱部10,20の短手方向の中央で長手方向に整列配置されているため、冷媒流入路31a、冷媒流出路31b、被熱交換流体流入路32a及び被熱交換流体流出路32bについても、伝熱部10,20の短手方向の中央で長手方向に一列で整列配置されている。
【0052】
本実施形態において、冷媒CMとして単一成分冷媒、共沸混合冷媒、又は疑似共沸混合冷媒が採用される。これに伴い、本実施形態に係る蒸発器Aは、第一流路R1内で流通する冷媒CMと第二流路R2で流通する被熱交換流体Wとの流れ方向が同方向になる(冷媒CMと被熱交換流体Wとが並行流になる)ように、第三開口H3が連なって冷媒流入路31aが形成されるとともに、第一開口H1が連なって冷媒流出路31bが形成されている。また、前記蒸発器Aは、各伝熱プレート1,2の第四開口H4が連なって被熱交換流体流入路32aが形成されるとともに、第二開口H2が連なって被熱交換流体流出路32bが形成されている。
【0053】
そして、本実施形態に係る蒸発器Aは、各伝熱プレート1,2の第五開口H5が連なるとともに第六開口H6が連なることで加熱流体流入路33a及び加熱流体流出路33bが形成されている。本実施形態において、第五開口H5及び第六開口H6は、伝熱部10,20の短手方向に一列をなすように設けられているため、前記加熱流体流入路33a及び加熱流体流出路33bについても伝熱部10,20の短手方向で一列をなして冷媒流出路31bの両側に配置されている。
【0054】
本実施形態に係る蒸発器Aは、図1及び図2に示す如く、積層された複数の伝熱プレート1,2が二枚のフレームプレート3,4で挟み込まれている。そして、一方のフレームプレート3には、図2に示す如く、冷媒流入路31a及び冷媒流出路31bと対応する第一開口H1及び第三開口H3が形成されるとともに一方の小口径の開口(加熱流体流出路33bになる開口)である第五開口H5が設けられ、他方のフレームプレート4には、被熱交換流体流入路32a及び被熱交換流体流出路32bと対応する第二開口H2及び第四開口H4が形成されるとともに一方の小口径の開口(加熱流体流入路33aになる開口)である第五開口H5が設けられている。これにより、本実施形態に係る蒸発器Aは、一方のフレームプレート3側から冷媒CMを流出入可能に構成されるとともに他方のフレームプレート4側から被熱交換流体Wを流出可能に構成されている。また、該蒸発器Aは、前記他方のフレームプレート4側から加熱流体WMを流入させて前記一方のフレームプレート3側から加熱流体WMを排出させるようになっている。
【0055】
本実施形態において、一方のフレームプレート3から所定位置(所定枚数になる位置)にある一枚の伝熱プレート2は、小口径の開口として第六開口H6のみが設けられており、加熱流体流入路33aと加熱流体流出路33bとが途中位置で逆転するようになっている。すなわち、本実施形態に係る蒸発器Aは、図2、図6(b)及び図6(c)に示す如く、一方のフレームプレート3と該一方のフレームプレート3から所定位置(所定枚数になる位置)にある伝熱プレート2との間(第一パス領域Pa1という)では、第六開口H6が連なって加熱流体流入路33aが形成されるとともに第五開口H5が連なって加熱流体流出路33bが形成され、他方のフレームプレート4と前記所定位置にある伝熱プレート2との間(第二パス領域Pa2とう)では、第五開口H5が連なって加熱流体流入路33aが形成されるとともに第六開口H6が連なって加熱流体流出路33bが形成されている。これにより、本実施形態に係る蒸発器Aは、所定位置にある伝熱プレート2の第六開口H6を介して第一パス領域Pa1の加熱流体流入路33aと第二パス領域Pa2の加熱流体流出路33bとが連続した状態になっている。
【0056】
本実施形態に係る蒸発器Aは、第二開口H2が長手方向に長軸が設定された楕円形状に形成されているため、第三流路R3側に配置された被熱交換流体流出路32bは、断面形状が伝熱プレート1,2の長手方向に長軸を有する楕円形状に形成されている。そして、第二開口H2を包囲する第二環状凸部102,202は、長手方向に長軸が設定された楕円環状をなしているため、第一流路R1内に存在する封止部分(第二環状凸部102,202同士を封着した部分)は、伝熱部10,20の長手方向よりも短手方向が幅狭に形成されている。
【0057】
本実施形態に係る蒸発器Aは、上述の如く、互いに対向する伝熱部10,20の案内用凸部107,207同士が接続されることで、図6(b)及び図6(c)に示す如く、伝熱プレート1,2の一方の面間には前記被熱交換流体流出路32bの周囲を長手方向の他端側で部分的の包囲する流体案内部34が形成されている。
【0058】
また、該蒸発器Aは、ガイド用凸部108,208同士が接続されることで、図6(a)に示す如く、伝熱プレート1,2の他方の面間には、冷媒流入路31aの少なくとも前記伝熱プレート1,2の長手方向の一端側を部分的に包囲するガイド部35が形成されている。
【0059】
本実施形態において、各伝熱プレート1,2の他方の面にガイド用凸部108,208の両端から延出した一対のサイドガイド用凸部109,209が設けられているため、互いに対向する伝熱部10,20の他方の面上にあるサイドガイド用凸部109,209同士が接続(ロウ付け)されることで、前記伝熱プレート1,2の他方の面間には、前記ガイド部35の両端から被熱交換流体流入路32aの両側に延出した一対のサイドガイド部36a,36bが形成されている。
【0060】
本実施形態に係る蒸発器Aは、以上の通りであり、図7に示す如く、空調機や冷凍機等に搭載される冷凍システムFSの一構成として採用される。なお、ここでは空調機に搭載される冷凍システムFSに採用した場合を一例に説明することとする。
【0061】
かかる冷凍システムFSは、前記蒸発器Aと、該蒸発器Aから排出された冷媒CMを加圧する圧縮機Bと、該圧縮機Bで圧縮された冷媒CMを凝縮させる凝縮器Cとを備えている。
【0062】
前記蒸発器Aは、冷媒流出路31bが圧縮機Bの一次側に配管Pを介して接続されている。そして、該蒸発器Aは、被熱交換流体流入路32a及び被熱交換流体流出路32bが別途室内に配置される室内機に対して配管Pを介して接続されている。
【0063】
すなわち、蒸発器Aは、被熱交換流体流入路32a及び被熱交換流体流出路32bのそれぞれが室内機に接続されており、第二流路R2、被熱交換流体流入路32a、被熱交換流体流出路32b、配管P、室内機で被熱交換流体W(本実施形態においては水)の循環流路が形成されている。これにより、本実施形態に係る空調機(冷凍システムFS)は、蒸発器Aで熱交換した水(冷水)Wを室内機に供給し、室内機で熱交換された水(温度上昇した水)Wを蒸発器Aに戻すようになっている。
【0064】
前記圧縮機Bには、レシプロ式やスクリュー式の一般的なものが採用され、二次側が凝縮器Cに配管Pを介して接続されている。
【0065】
前記凝縮器Cには、種々タイプの熱交換器を採用することができるが、本実施形態においては、プレート式熱交換器が採用される。
【0066】
本実施形態に係る冷凍システムFSの凝縮器Cは、蒸発器Aと異なり、一般的なプレート式熱交換器が採用されている。すなわち、本実施形態に係る凝縮器Cは、図8に示す如く、複数の伝熱プレート5,6が積層され、図9(a)及び図9(b)に示す如く、冷却水CWを流通させる冷却水用流路R4と、前記冷却水CWとの熱交換の対象とされる冷媒CM(圧縮機Bで加圧された冷媒CM)を流通させる冷媒用流路R5とが各伝熱プレート5,6を境にして交互に形成され、各伝熱プレート5,6の四隅に形成された開口が連なることで、伝熱プレート5,6の両端に冷却水用流路R4に対して冷却水CWを流出入させる冷却水用流入路50a及び冷却水用流出路50bが形成されるとともに、冷媒用流路R5に対して冷媒CMを流出入させる冷媒用流入路51a及び冷媒用流出路51bが形成されている。これにより、凝縮器Cは、冷却水用流路R4で流通する冷却水CWと冷媒用流路R5で流通する冷媒CMとが熱交換することで、冷媒CMを凝縮させるようになっている。
【0067】
図7に戻り、凝縮器Cは、冷却水用流入路50a及び冷却水用流出路50bのそれぞれが冷却装置(例えばクーリングタワー)に配管Pで接続されており、冷却水用流入路50a、冷却水用流出路50b、配管P、冷却装置で冷却水CWの循環流路が形成されている。これにより、本実施形態に係る冷凍システムFSは、冷却装置で冷却された冷却水CWが冷却水用流入路50aに供給され、該冷却水CWが冷却水用流路R4内で冷媒用流路R5内の冷媒CMとの熱交換に用いられた上で冷却水用流出路50bから冷却装置に向けて排出されるようになっている。また、前記凝縮器Cは、冷媒用流入路51aが前記圧縮機Bに配管Pを介して接続され、冷媒用流出路51bが蒸発器Aの冷媒流入路31aに直接的又間接的に配管Pを介して接続される。
【0068】
本実施形態に係る冷凍システムFSは、凝縮器Cの冷媒用流出路51bと蒸発器Aの加熱流体流入路33aとが配管Pで接続され、該蒸発器Aの加熱流体流出路33bと当該蒸発器Aの冷媒流入路31aとが途中位置に膨張弁Vの備えた配管Pで接続されている。
【0069】
なお、本実施形態に係る冷凍システムFSは、冷媒CMの流通経路上に四方弁を設けて冷媒CMの流れを逆向きにすることで、冷暖房兼用機とすることができる。このようにした場合、前記蒸発器Aと凝縮器Cとが入れ替わることになる。すなわち、冷房時において蒸発器Aとして機能したプレート式熱交換器は暖房時に凝縮器Cとして機能し、暖房時に凝縮器Cとして機能したプレート式熱交換器は冷房時に蒸発器Aとして機能する。従って、冷暖房兼用機にする場合、凝縮器Cに上記構成の蒸発器Aと同様のプレート式熱交換器を採用することが好ましいことは言うまでもない。
【0070】
本実施形態に係る冷凍システムFS(空調機)は、以上の通りであり、次に、上記構成の空調機(上記構成の蒸発器Aを備えた冷凍システムFS)の作動について説明する。
【0071】
まず、冷却装置(クリーングタワー)を駆動して冷却水CWを循環流路内で循環させる。これに併せて冷凍システムFSの圧縮機Bを作動させて冷媒CMを加圧して下流側(凝縮器C側)に送り出し、冷凍システムFS内の循環経路内で冷媒CMを循環させるとともに、室内機を作動させて被熱交換流体である水Wを循環経路内で循環させる。
【0072】
そうすると、蒸発器Aでは、第一流路R1で流通する冷媒CMと第二流路R2で流通する水Wとが熱交換を行い、第二流路R2を通過した水Wは冷却された状態で室内機(図示しない)に送られ、室内機で室内の空気と水Wとが熱交換されて温度の低下した空気が冷風として室内に送風される。そして、空気との熱交換に伴って温度上昇した水Wは、再度蒸発器Aに戻って第一流路R1で流通する冷媒CMと熱交換して冷却されることになる。
【0073】
このように水Wを冷却すると、第一流路R1内の冷媒CMは、第二流路R2内で流通する水Wとの熱交換により、下流側に流れるにつれて蒸発して気体成分を多く含む気液混合状態になる。本実施形態に係る冷凍システムFSは、蒸発器Aにおいて、冷媒CMが第一流路R1内の第二流路R2と対応する全領域を通過する状態で液体成分を十分に含む気液混合状態になるように冷媒CMを流通させるように設定されており、第二流路R2内で流通する水W全体を冷却できるようになっている。すなわち、冷媒CMが第一流路R1内の第二流路R2と対応する領域を通過する状態で液体成分を十分に含む気液混合状態であると、伝熱部10,20の第二流路R2と対応する領域が濡れ状態となるため、第一流路R1を流通する冷媒CMが第二流路R2の全域において被熱交換流体Wの熱を活発に奪い取ることになり、被熱交換流体Wが効率的に冷却されることになる。
【0074】
このように第一流路R1における第二流路R2と対応する領域で液体成分を十分に含む気液混合状態の冷媒CMを流通させると、第一流路R1で流通する冷媒CMは、第二流路R2と対応する領域から第三流路R3と対応する領域に進入したときにも気液混合状態であるが、第三流路R3に被熱交換流体Wよりも温度の高い加熱流体WMを流通させておくことで、第一流路R1を流通する冷媒CMと第三流路R3を流通する加熱流体WMとの間の熱移動で第一流路R1の最下流域にある冷媒CMが急速に蒸発する結果、完全にガス化した冷媒CMが冷媒流出路31bから排出されることになる(図6参照)。
【0075】
そして、冷媒流出路31bから排出された冷媒CMは、圧縮機Bで圧縮された上で凝縮器Cに供給されて凝縮され、蒸発器Aに戻ることになる。
【0076】
本実施形態に係る冷凍システムFSは、凝縮器Cから排出された温度の高い冷媒CMを加熱流体WMとして蒸発器Aの第三流路R3に流通させた上で、膨張弁Vで減圧して冷媒CMの温度を低下させた上で冷媒流入路31aに再度供給される。
【0077】
例えば、冷媒CMとして単一成分冷媒を採用し、図7に示す如く、5℃の冷媒CMを冷媒流入路31aに供給し、室内機から戻ってくる12℃の水Wを7℃にまで冷却して室内機に向けて送水すると仮定した場合、5℃で供給された冷媒CMは、水Wと交換しながら第一流路R1を流通する。そして、該冷媒CMは、第一流路R1での流通に伴って、流動抵抗によって圧力が降下し、温度低下しながら蒸発が進む。そして、該冷媒CMは、最終的に4℃で蒸発が完了し、8℃の過熱状態で冷媒流出路31bから圧縮機Bに供給される。そして、凝縮器Cに冷却装置から32℃の冷却水が供給されると、圧縮機Bで圧縮された冷媒CMは、冷却水CWとの熱交換によって凝縮されて40℃になった状態で蒸発器Aの第三流路R3に供給される。なお、凝縮器Cに供給された冷却水CWは、冷媒CMとの熱交換によって37℃にまで温度上昇した状態で排出される。
【0078】
そして、凝縮器Cからの冷媒CMは、蒸発器Aの冷媒流入路31aに供給されて第三流路R3を流通し、第一流路R1内の最下流で流通する冷媒CMと熱交換を行うことになる。そうすると、第一流路R1の最下流域にある冷媒CMは、4℃で蒸発が完了し、8℃の過熱状態で冷媒流出路31bから排出するのに対し、第三流路R3を通過した冷媒CMは30℃にまで温度低下した状態で加熱流体流出路33bから排出されることになる。そして、第三流路R3から排出された冷媒CMは、膨張弁Vを通過することによる減圧で5℃にまで温度低下した上で、再度冷媒流入路31aに供給されることになる。
【0079】
従って、本実施形態に係る空調機(冷凍システムFS)は、循環経路内で循環する冷媒CMのみで水Wが冷却されるとともに第一流路R1内の冷媒CMが完全に蒸発してガス化することになる。従って、該空調機(冷凍システムFS)は、圧縮機Bに到達する冷媒CMに液体が含まれないため、当該圧縮機Bを破損させることなく円滑に運転することになる。
【0080】
以上のように、本実施形態に係る蒸発器Aは、互いに対向する伝熱プレート1,2の一方の面間には、該伝熱プレート1,2の長手方向と直交する短手方向に延びる仕切部30が設けられ、前記仕切部30を境にして伝熱プレート1,2の一方の面間における伝熱プレート1,2の長手方向の一方側に前記第二流路R2が形成されるとともに伝熱プレート1,2の一方の面間における伝熱プレート1,2の長手方向の他方側に被熱交換流体Wよりも温度の高い加熱流体WMを流通させる第三流路R3が形成される一方、互いに対向する伝熱プレート1,2の他方の面間に第一流路R1が形成され、第三流路R3に対して加熱流体WMを流出入させる加熱流体流入路33a及び加熱流体流出路33bが該第三流路R3の形成される領域を通るように所定の間隔をあけて形成され、前記冷媒流入路31aが第二流路R2の形成される領域を通るように形成されるとともに冷媒流出路31bが第三流路R3の形成される領域を通るように形成されているため、被熱交換流体Wを効率的に冷却できる上に、完全にガス化した冷媒CMを排出することができるという優れた効果を奏し得る。従って、該蒸発器Aは、冷凍サシステムFSに採用した場合に、被熱交換流体Wを高効率で冷却できる上に、後段に設けられる圧縮機Bの破損を防止することができる。
【0081】
また、前記仕切部30は、互いに対向する伝熱プレート1,2が相手側に向けて吐出した仕切用凸条100,200同士が面接触した状態で溶着されて形成されているため、第二流路R2と第三流路R3との間に幅広な仕切部30が形成され、被熱交換流体Wが該被熱交換流体Wよりも温度の高い加熱流体WMの熱影響を受けることを防止することができる。
【0082】
さらに、前記冷媒流入路31a、前記冷媒流出路31b、前記被熱交換流体流入路32a、及び被熱交換流体流出路32bは、伝熱プレート1,2の前記他方向の中央部で伝熱プレート1,2の長手方向に整列して配置されているため、第一流路R1内の冷媒CMの流れ及び第二流路R2内の被熱交換流体Wの流れを均一にすることができる。
【0083】
特に、前記加熱流体流入路33a及び加熱流体流出路33bは、前記冷媒流出路31bに対して伝熱プレート1,2の短手方向の両側に配置されているため、加熱流体流入路33aから加熱流体流出路33bに向けて流通する加熱流体WMが冷媒流出路31bの周囲を通過することになり、第一流路R1から排出される冷媒CMを確実に蒸発させることができる。
【0084】
そして、第三流路R3側に配置された前記被熱交換流体流出路32bの断面形状が伝熱プレート1,2の長手方向(冷媒CMの流通方向)に長軸を有する楕円形状に形成されているため、冷媒CMを第一流路R1内で円滑に流通させることができる。すなわち、第二流路R2内の被熱交換流体Wとの熱交換で蒸発が進んだ冷媒CMが流通する領域に前記被熱交換流体流出路32bが存在すると該冷媒CMの流れを妨げて圧力損失を増大させるが、上述の如く、前記被熱交換流体流出路32bの断面形状を伝熱プレート1,2の長手方向(冷媒CMの長手方向)に長軸を有する楕円形状に形成すると、伝熱プレート1,2の短手方向に短軸が位置することになるため、冷媒CMの流通を妨げる範囲が狭くなる結果、圧力損失を大きくすることなく冷媒CMを円滑に流通させることができる。
【0085】
また、前記被熱交換流体流出路32bは、前記被熱交換流体流入路32aに対して第三流路R3側に配置され、伝熱プレート1,2の一方の面間には前記被熱交換流体流出路32bの周囲を伝熱プレート1,2の他端側(被熱交換流体Wの流通方向の上流側)で部分的の包囲する流体案内部34が設けられているため、被熱交換流体流入路32a側から流れてくる被熱交換流体Wは、流体案内部34に衝突して該流体案内部34の両側に分かれた上で被熱交換流体流出路32bに流入する。従って、第二流路R1内で被熱交換流体流入路32a側から流れてくる被熱交換流体Wが直接被熱交換流体流出路32bから流出することがないため、第一流路R1内の冷媒CMと第二流路R2内の被熱交換流体Wとが熱交換する機会を多くすることができ、被熱交換流体Wを効率的に冷却することができる。
【0086】
そして、前記伝熱プレート1,2の他方の面間には、冷媒流入路31aの少なくとも伝熱プレート1,2の長手方向の他端側(第一流路R1における冷媒CMの流通方向の下流側)を部分的に包囲するガイド部35が設けられているため、冷媒流入路31aから第一流路R1に流入した冷媒CMが直接冷媒流出路31bに向けて流れることがなく、被熱交換流体Wとの熱交換の機会を増やすことができる。すなわち、冷媒流入路31aから第一流路R1に流入した冷媒CMが一旦ガイド部35に沿って冷媒流出路31bとは反対側に向けて流れた上で冷媒流出路31b側に流れることになる。これにより、冷媒CMの流通経路を長くすることができるため、被熱交換流体Wとの熱交換の機会を増やすことができる。
【0087】
特に、本実施形態に係る蒸発器Aは、伝熱プレート1,2の他方の面間にガイド部35の両端から被熱交換流体流入路32aの両側に延出した一対のサイドガイド部36a,36bが設けられているため、冷媒流入路31aから第一流路R1に流入した冷媒CMがガイド部35及びサイドガイド部36a,36bに沿って冷媒流出路31bとは反対側に向けて流れた上で冷媒流出路31b側に流れることになる。従って、ガイド部35のみを設けた場合よりも冷媒CMの流通経路を長くすることができるため、被熱交換流体Wとの熱交換の機会をさらに増やすことができる。また、サイドガイド部36a,36bを設けることで、冷媒流入路31aから第一流路R1に流入した冷媒CMが被熱交換流体流入路32aの周囲を冷却することになり、より効率的な冷却が可能となる。
【0088】
そして、本実施形態に係る冷凍システムFSは、冷媒CMと被熱交換流体Wとを熱交換させる蒸発器と、該蒸発器から排出された冷媒CMを加圧する圧縮機Bと、該圧縮機Bで圧縮された冷媒CMを凝縮させる凝縮器Cとを備え、該凝縮器Cで凝縮された冷媒CMを前記蒸発器に供給するように構成された冷凍システムFSにおいて、前記蒸発器が上記構成の蒸発器Aで構成され、第一流路R1で冷媒CMさせた状態で、第二流路R2に被熱交換流体Wを流通させつつ第三流路R3に加熱流体WMを流通させるため、上記蒸発器Aと同様の作用及び効果を奏することができる。
【0089】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更し得ることは勿論のことである。
【0090】
例えば、上記実施形態において、圧力が一定の場合、蒸発の進行によっても殆ど温度上昇を伴わない冷媒CM(単一成分冷媒や、共沸混合冷媒、疑似共沸混合冷媒)を採用することを前提に、第二領域A2の長手方向の他端側にある第四開口H4で被熱交換流体流入路32aを構成する一方、第二領域A2の長手方向の一端側にある第二開口H2で被熱交換流体流出路32bを構成し、第一流路R1内で流通する冷媒CMと第二流路R2で流通する被熱交換流体W(水)とを同方向に流通させる(並行流にする)ようにしたが、これに限定されるものではなく、圧力が一定の場合でも、蒸発の進行により温度上昇する冷媒CM(非共沸混合冷媒)を採用する場合、第二領域A2の長手方向の他端側にある第四開口H4で被熱交換流体流出路32bを構成する一方、第二領域A2の長手方向の一端側にある第二開口H2で被熱交換流体流入路32aを構成し、第一流路R1内で流通する冷媒CMと第二流路R2で流通する被熱交換流体W(水)とを逆方向に流通させる(対向流にする)ようにしてもよい。
【0091】
上記実施形態において、加熱流体流入路33a及び加熱流体流出路33b(第五開口H5及び第六開口H6)を伝熱プレート1,2の短手方向で一列になるように配置したが、これに限定されるものではなく、例えば、加熱流体流入路33a及び加熱流体流出路33b(第五開口H5及び第六開口H6)を伝熱プレート1,2の長手方向で一列に整列した状態になるように配置したり、第一領域A1の対角位置に配置したりしてもよい。すなわち、第三流路R3内に被熱交換流体Wよりも高温な加熱流体WMを充満させることができれば、加熱流体流入路33a及び加熱流体流出路33bの配置は適宜変更可能である。
【0092】
上記実施形態において、冷媒流入路31a、冷媒流出路31b、被熱交換流体流入路32a、及び被熱交換流体流出路32bを伝熱プレート1,2の短手方向の中央部で長手方向に整列させたが、これに限定されるものではなく、これらの流路は適宜位置に配置してもよい。但し、冷媒CMや被熱交換流体Wの流れ等を考慮すれば、上記実施形態と同様にすることが好ましいことは言うまでもない。
【0093】
上記実施形態において、伝熱プレート1,2(伝熱部10,20)を平面視長方形状に形成し、冷媒CM及び被熱交換流体Wを長手方向に流通させるようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、伝熱プレート1,2(伝熱部10,20)を平面視長方形状に形成するとともに、伝熱プレート1,2の一方の面間を区画する仕切部30を長手方向に延びるように形成し、冷媒CM及び被熱交換流体Wを伝熱プレート1,2の短手方向に流通させるようにしてもよい。また、伝熱プレート1,2(伝熱部10,20)を平面視正方形状に形成しても勿論よい。このようにしても、第一流路R1が第二流路R2及び第三流路R3の両方に重なるように形成されるとともに、第三流路R3と対応する領域に冷媒流出路31bを設けることで、上記実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0094】
上記実施形態では言及しなかったが、例えば、冷媒流出路31bの周辺に冷媒流入路31a側から流れてくる冷媒CMを前記冷媒流出路31bに誘導するためのガイドを設けたり、被熱交換流体流出路32bの周辺に被熱交換流体流入路32a側から流れてくる被熱交換流体Wを前記被熱交換流体流出路32bに誘導するガイドを設けたり、加熱流体流出路33bの周囲に加熱流体流入路33a側から流れてくる加熱流体WMを前記加熱流体流出路33bに誘導するガイドを設けたりしてもよい。かかるガイドは、対象となる流体の流れ方向に沿った凸条で構成すればよい。このようにすれば、各流路内で流通する流体の流れを乱すことなく円滑に排出することができる。
【0095】
上記実施形態において、被熱交換流体Wを伝熱プレート1,2の長手方向の他端側から一端側に向けて流通させることを前提に、被熱交換流体流出路32bを部分的に包囲する流体案内部34を伝熱プレート1,2の長手方向の他端側に設けたが、これに限定されるものではなく、例えば、流体案内部34を設けることなく被熱交換流体流入路32a側から流れてくる被熱交換流体Wを直接被熱交換流体流出路32bから排出するようにしてもよい。
【0096】
また、上記実施形態において、冷媒流入路31a(第三開口H3)を長手方向の一端側から部分的に包囲するガイド部35を設け、冷媒流入路31aから流入した冷媒CMを伝熱プレート1,2の長手方向の他端側に誘導した上で該長手方向の一端側にある冷媒流出路31bに向けて流通させるようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、ガイド部35を設けることなく、冷媒流入路31aから流入した冷媒CMを直接冷媒流出路31bに向けて流通させるようにしてもよい。
【0097】
さらに、上記実施形態において、冷媒流入路31aを被熱交換流体流入路32aよりも長手方向の一端寄りに配置することを前提に、冷媒流入路31aを包囲するガイド部35の両端から延出する一対のサイドガイド部36a,36bを設けたが、これに限定されるものではなく、例えば、ガイド部35のみを設けるようにしてもよいし、ガイド部35及びサイドガイド部36a,36bを設けることなく冷媒流入路31aから第一流路R1に流入した冷媒CMを直接冷媒流出路31bに向けて流すようにしてもよい。但し、冷媒CMと被熱交換流体Wとの熱交換の多くするには、ガイド部35を設けることが好ましく、さらに、ガイド部35とともに一対のサイドガイド部36a,36bを設けることがより好ましいことは言うまでもない。
【0098】
上記実施形態において、被熱交換流体流出路32bの断面形状を長手方向(冷媒CMの流通方向)に長軸が設定された楕円形状に形成したが、これに限定されるものではなく、例えば、被熱交換流体流出路32bの断面形状を真円状に形成してもよい。また、冷媒流入路31a、冷媒流出路31b、被熱交換流体流入路32a、被熱交換流出路、加熱流体流入路33a、及び加熱流体流出路33bの断面形状は、円形のように丸みを帯びた形状に限定されるものではなく、例えば、これらの断面形状を非円形状に形成してもよい。但し、各流路内での流体の流れを考慮すれば、断面形状を丸みの帯びた形状に設定することが好ましく、特に、第一流路R1の途中位置を貫通する被熱交換流体流入路32a又は被熱交換流出路の断面形状は、冷媒CMの流通方向に長軸が設定された楕円形状にすることが好ましいことは言うまでもない。
【0099】
上記実施形態において、積層された複数の伝熱プレート1,2をロウ付けすることで、開口の周囲や伝熱部10,20の外周を封止するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、開口の周囲や伝熱部10,20の外周回りに環状のガスケットを配置して隣り合う伝熱プレート1,2でガスケットを挟み込むようにしてもよい。このようにしても伝熱プレート1,2間に第一流路R1、第二流路R2、及び第三流路R3は勿論のこと、冷媒流入路31aや冷媒流出路31b等を形成することができるため、上記実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。なお、この種の蒸発器Aは、冷媒CMの種類や性状によってガスケットが劣化する虞があるため、ガスケットの材質を適正に選択したり、適正なガスケットがない場合には上記実施形態と同様のものを採用したりする必要があることは言うまでもない。
【0100】
上記実施形態において、凝縮器Cを通過して温度の高い冷媒CMを加熱流体WMとして第三流路R3に流通させるようにしたが、蒸発器Aを通過する冷媒CMを第三流路R3に流通させる加熱流体WMに兼用させたものに限定されるものではなく、例えば、第三流路R3を別の経路と接続して温度の高い水や上記を加熱流体として第三流路R3に流通させるようにしても勿論よい。
【符号の説明】
【0101】
1,2…伝熱プレート、3,4…フレームプレート、10,20…伝熱部、11,21…環状部、30…仕切部、31a…冷媒流入路、31b…冷媒流出路、32a…被熱交換流体流入路、32b…被熱交換流体流出路、33a…加熱流体流入路、33b…加熱流体流出路、34…流体案内部、35…ガイド部、36a,36b…サイドガイド部、100,200…仕切用凸条、101,201…第一環状凸部、102,202…第二環状凸部、103,203…第三環状凸部、104,204…第四環状凸部、105,205…第五環状凸部、106,206…第六環状凸部、107,207…案内用凸部、108,208…ガイド用凸部、109,209…サイドガイド用凸部、A…蒸発器、A1…第一領域、A2…第二領域、B…圧縮機、C…凝縮器、CM…冷媒、FS…冷凍システム、H1…第一開口、H1-…第一開口、H2…第二開口、H3…第三開口、H4…第四開口、H5…第五開口、H6…第六開口、P…配管、Pa1…第一パス領域、Pa2…第二パス領域、R1…第一流路、R2…第二流路、R3…第三流路、V…膨張弁、W…被熱交換流体、WM…加熱流体、θ…角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の伝熱プレートのそれぞれを境にして冷媒を流通させる第一流路と被熱交換流体を流通させる第二流路とが交互に形成され、各第一流路に対して冷媒を流出入させる冷媒流入路及び冷媒流出路が第一流路の形成される領域を通るように一方向に間隔をあけて形成されるとともに、第二流路に対して被熱交換流体を流出入させる被熱交換流体流入路及び被熱交換流体流出路が第二流路の形成される領域を通るように前記一方向に間隔をあけて形成された蒸発器において、互いに対向する伝熱プレートの一方の面間に前記一方向と直交する他方向に延びる仕切部が設けられ、該仕切部を境にして伝熱プレートの一方の面間における前記一方向の一方側に前記第二流路が形成されるとともに伝熱プレートの一方の面間における前記一方向の他方側に被熱交換流体よりも温度の高い加熱流体を流通させる第三流路が形成される一方、互いに対向する伝熱プレートの他方の面間に第一流路が形成され、前記第三流路に対して加熱流体を流出入させる加熱流体流入路及び加熱流体流出路が該第三流路の形成される領域を通るように形成され、前記冷媒流入路が第二流路の形成される領域を通るように形成されるとともに冷媒流出路が第三流路の形成される領域を通るように形成されていることを特徴とする蒸発器。
【請求項2】
各伝熱プレートは、互いに対向する一方の面に前記一方向と直交する他方向に延びる仕切用凸条が形成され、前記仕切部は、互いに対向する伝熱プレートの仕切用凸条同士が面接触した状態で溶着されて形成されている請求項1に記載の蒸発器。
【請求項3】
前記冷媒流入路、前記冷媒流出路、前記被熱交換流体流入路、及び被熱交換流体流出路は、伝熱プレートの前記他方向の中央部で前記一方向に整列して配置されている請求項1又は2に記載の蒸発器。
【請求項4】
第三流路側に配置された前記被熱交換流体流出路又は前記被熱交換流体流入路の何れか一方は、断面形状が前記一方向に長軸を有する楕円形状に形成されている請求項1乃至3の何れか1項に記載の蒸発器。
【請求項5】
冷媒と被熱交換流体とを熱交換させる蒸発器と、該蒸発器から排出された冷媒を加圧する圧縮機と、該圧縮機で圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器とを備え、該凝縮器で凝縮された冷媒を前記蒸発器に供給するように構成された冷凍システムにおいて、前記蒸発器は、請求項1乃至4の何れか1項に記載の蒸発器で構成され、第一流路に冷媒を流通させた状態で、第二流路に被熱交換流体を流通させつつ第三流路に被熱交換流体よりも温度の高い加熱流体を流通させるように構成されたことを特徴とする冷凍システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−112591(P2012−112591A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262587(P2010−262587)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000152480)株式会社日阪製作所 (60)
【Fターム(参考)】