説明

蒸発強度調節可能な揮発性物質用電気蒸発器

本発明は、蒸発強度調整可能な揮発性物質用電気蒸発器に関する。加熱板(4)は、第二のチャンバから分離される第一のチャンバ(6)を画定し、発熱器(5)が第一のチャンバ(6)内に位置づけられる。第一のチャンバ(6)に配置された調整用開口部(13)により、加熱された空気の流れが第一のチャンバから排出され、第一のチャンバ(6)と加熱板(4)の両方の温度を調整し、その結果、蒸発速度の調整が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コンセントに接続され、加熱工程により香料または殺虫剤を放出するタイプの、蒸発強度の調節が可能な揮発性物質用電気蒸発器に関し、特に、液体製剤用蒸発器に関する。
【背景技術】
【0002】
屋内の電源ソケットに適応させることによって香水または殺虫剤を周辺大気中に蒸発させる電気蒸発器であって、揮発性物質の容器と、抵抗加熱素子と、動作的に関連付けられた電気回路を用いたマニュアルまたは自動操作による作動手段を備える電気蒸発器が知られている。
【0003】
揮発性物質の発散蒸気を通過させ、その液体は通過させないようにするのに適した平坦な壁または膜を備える、活性または揮発性物質、通常、液体物質用の閉鎖された容器を少なくとも有する特定のタイプの装置がある。
【0004】
容器が空になったとき、または使用者が液体を交換したいとき、容器を新品と交換しなければならない。
【0005】
液体調剤を用いる家庭用電気蒸発器の分野において、一般的に電気抵抗でなる加熱手段の、活性物質の溶液を収容する容器の膜の位置に関する相対的位置を調整することにより、活性物質の蒸発強度を調節できる蒸発器がすでに知られている。さらに、前記強度が、容器と周辺大気の間に位置づけられた開口部の面積を調整することによって手動で調節される蒸発器もすでに知られている。
【0006】
上記の装置の主な欠点は、調整手段の位置に関係なく、揮発性物質の消費速度が常に同じという点である。その一方で、上記の蒸発調節システムでは2つの位置、つまり最少流量または最大流量の調節しかできず、したがって、蒸発流量を最小値と最大値の間で連続的に精密に調節することが不可能である。最後に、上記の装置は、電源供給が突発的に増大した場合に安全上の問題があり、加熱手段が過熱されることによって膜が破け、容器内の液体が漏出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2673818号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/003724号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0140358号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、放出される活性物質の発散流を、最小値から最大値の間で連続的に調整するのを可能にし、電源の突発的な増大が発生したときに、液体が装置の外に漏出するのを回避し、それによって装置を保護することである。
【0009】
本発明の目的となる、蒸発強度調節可能な揮発性物質用電気蒸発器は、液体製剤の消費速度の調整によって発散強度の連続的な調節を可能にし、また、電源供給に関する突発的な状況による液体の漏出を防止する安全装置を設けることも目的としている。
【0010】
したがって、本発明の目的は、液体調剤を用いるタイプの、揮発性物質、つまり殺虫剤または香料用電気蒸発器であって、複雑な機構の使用を必要とせずに、蒸発させられる活性物質の流量を最小値から最大値の間で最適かつ連続的に調節することを可能にし、蒸発器の流量調節動作中に加熱装置の電気接続のはずれを防止する電気蒸発器を提供することである。
【0011】
本発明の主な目標は、空気中に供給される蒸気の強度の調整を可能にし、それによって、抵抗素子の温度を上昇させ、その結果、蒸発速度を高め、したがって、大気中への香料の蒸発を増大させるディスペンサを実現することである。
【0012】
また、安全手段として、膜に向かうエネルギー伝達を非常に低くすることも本発明の目標であり、電源供給が突発的に増大することによって生じる過剰なエネルギーは、熱を前記膜に伝達して揮発性物質の蒸発を可能にするのに適した加熱手段の過剰な温度に変換されるため、この過剰なエネルギーを減衰させる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的は、本発明によれば、揮発性物質を拡散させるための半透過性の膜、つまり平坦な壁を備える閉鎖された容器の中に収容された揮発性物質、好ましくは活性物質の液体製剤のための電気蒸発器によって実現される。この膜は、揮発性物質の発散蒸気を通過させるが、容器内に収容された液体に対しては透過性を持たないようにするのに適している。
【0014】
揮発性物質の収容された容器は、膜を通じて透過させるのに適しており、物質の揮発性は十分に低く、室温での蒸発が防止される。
【0015】
本発明により提案される電気蒸発器は加熱手段を備え、この加熱手段は2つの分離されたチャンバ、つまり第一のチャンバと第二のチャンバを画定する加熱板を有する。加熱手段に加え、発熱器も備え、これはたとえば電気抵抗等であり、電源に接続するための通常のプラグから電源供給される。発熱器は、容器を加熱し、揮発性物質を蒸発させるのに適しており、第一のチャンバの中の、加熱板と、コンセントに加熱手段を接続するのに適したプラグとの間にあり、このプラグはたとえば、ソケットに挿入するようになされた2本の接触ピンである。加熱板は、第一のチャンバに隣接する第二のチャンバ内にある容器の膜に熱を伝達し、揮発性物質の蒸気発散を生成する。
【0016】
第二のチャンバの中には、蒸発させられるべき揮発性物質の入った容器が格納されており、その膜はもう一方の連続するチャンバ、つまり第一のチャンバの中にある加熱手段によって加熱される。
【0017】
発熱器は、加熱チャンバとも呼ばれる第一のチャンバの中のいずれの端部または中間位置にも、つまり加熱板に近い位置からプラグに近い位置までのいずれにも設置できる。
【0018】
第一のチャンバは加熱板と第一のカバーによって画定され、第二のチャンバは前記加熱板と第二のカバーによって画定される。前記第一のカバーと第二のカバーの相互の連結は機械的係合によって結合され、これらが装置の外装ケースを形成し、蒸発器を構成する要素を格納し、保護するほか、容器と外装ケースの間に同様の係合手段を有する加熱手段に電力を供給する接続プラグを支持し、案内する。
【0019】
本発明によれば、加熱チャンバとも名付けられる第一のチャンバは、その中に加熱手段が配置されており、活性物質の消費を調整することによって、蒸気発散の強度を調整する強度調整手段を備える。上記の強度調整手段は、第一のカバーに配置された少なくとも1つの調整用開口部、つまり調整窓を有し、その面積は使用者が手で制御するのに適したシャッタによって調節され、加熱された気流の排出を可能にし、加熱板、つまり第一のチャンバ内の温度、つまり熱の量を調整するのに適しており、その結果、揮発性物質の消費速度を調整し、これは、前記揮発性物質の蒸気発散の強度を調整することを意味する。したがって、調整窓は、加熱チャンバを完全にまたは部分的に開閉し、加熱チャンバの中の熱と温度を変化させるのに適しており、これによって蒸発速度を調整する。
【0020】
強度調整手段は、シャッタに連結され、調整用開口部が完全に閉じる最大位置と調整用開口部が完全に開くオフ位置の間にあるすべての中間位置に沿ってシャッタを移動させるのに適した回転可能なピンを備える。
【0021】
使用者がピンを作動させてオフ位置にすると、装置はそのピンと、発熱器への電力供給を中断するのに適した内部スイッチとが接触することによって動作せず、調整用開口部は完全に開く。反対に、ピンが最大位置に位置づけられると、装置は動作し、調整用開口部が完全に閉じるため、周辺大気への熱の流れが中断され、第一のチャンバの中に蓄積される熱の量が最大となり、その冷却が抑制され、加熱板の温度は最大となり、したがって、揮発性物質の蒸発が最大となる。
【0022】
したがって、熱の流れと第一のチャンバの中に蓄積される熱の量を調整することにより、調整用開口部の開放率を制御するピンの状態によって、蒸発強度の調整が実現する。明らかに、ピンがいずれかの中間位置に位置づけられるとき、蒸発強度は調整用開口部の開放面積に正比例する。
【0023】
最新技術による調整手段とは異なり、本発明により提案される強度調整手段は、揮発性物質の容器(本発明の第二のチャンバに対応する)と周辺大気との間に配置された開口部の調整によって発散蒸気の気流を調整するのではない。そうではなく、本発明による装置は、揮発性物質の蒸発強度を調整するための強度調整手段を備え、これは、加熱板と外装ケースの第一のカバーによって形成される閉鎖された第一のチャンバ、つまり加熱チャンバにおける熱の流れを調整するのに適しており、前記加熱板は、隣接するチャンバ、つまり第二のチャンバの中に配置される物質容器の膜に必要な量の熱を伝達するのに適している。
【0024】
この装置により、閉鎖された加熱チャンバ内の熱の流れを調整することが可能となり、その結果、加熱板から揮発性物質の容器までの熱伝達調整、つまり熱伝達の増減が実現される。前記第一のチャンバ内で熱の流れが抑制されると、加熱板の温度は最大温度まで上昇し、活性物質の蒸発速度が高くなる。
【0025】
装置は、マニュアルモードと自動モードのどちらでも動作できる。自動動作モードは、電源が中断されないかぎり、無制限に動作する。いつでも、使用者はマニュアル動作モードで作動することも、蒸発装置の動作を停止することもできる。
【0026】
容器は、機械的強度を持たせ、また使用する際にそれを取り外す方法に関する使用者向けの必要な情報を表面に印刷することができる、プラスチック射出成形または熱成形等の既知の工程によって製造できる。
【0027】
明らかに、容器は、好ましくは取り外し可能であり、揮発性物質を収容する閉じた本体を備え、周辺大気に蒸気を放出し、これらは流体、好ましくは液体であるが粉末もしくは半流動体またはペーストやゲルでもよい揮発性物質から放出される。
【0028】
使用前に、初回使用時に取り除かれる非透過性保護フィルムが半透過性の壁、つまり膜に付着される。保護フィルムは、たとえば、揮発性物質が未使用時に放出されるのを防止するように、膜に剥離可能に接合してもよい。
【0029】
蒸気の流出は、上記の装置においては加熱手段を使って得られるが、他の方法、たとえば、拡散器の中またはその外に取り付けられた強制換気手段を使っても得られる。
【0030】
電気接続手段は、自動車のライターソケットに挿入するようになされた接触ピンでも、電池に接続されるようになされた2本の接触リードでもよい。
【0031】
本発明の別の特徴や利点は、添付の図面においてあくまでも非制限的な例として描かれた、本発明の好ましいが排他的ではない実施例に関する以下の詳細な説明からよりよくわかり、より明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明により提案される電気蒸発器の背面図である。
【図2】回転可能ピンがオフ位置にあるときの装置の上面図である。
【図3】装置の側面図である。
【図4】装置の正面図である。
【図5】回転可能ピンが図2に示されるオフ位置にある状態で、調整用開口部が完全に開いた位置にある、装置の斜視図である。
【図6】回転可能ピンが図5に示されるものと反対の最大位置にある状態で、調整用開口部が完全に閉じた位置にある、装置の背面図である。
【図7a】装置の構成要素の2つの展開斜視図である。
【図7b】装置の構成要素の2つの展開斜視図である。
【図8】加熱板と容器と第一および第二のチャンバがわかる、装置の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図面の中に示される各種の図から明らかにわかるように、本発明による蒸発器は、揮発性物質、好ましくは活性物質の液体製剤を収容するのに適した閉鎖された容器(1)を備え、容器(1)は、揮発性物質の発散蒸気を通過させるが、容器(1)内に収容された液体は通過させないようにするのに適した半透膜(2)を備え、物質の揮発性は十分に低く、室温での蒸発が防止されている。
【0034】
さらに、指摘すべき点として、蒸発器は加熱手段(3)を備え、加熱手段(3)は加熱板(4)を有し、これが第二のチャンバ(8)から分離された第一のチャンバ(6)を画定する。加熱手段(3)は、電気抵抗からなる発熱器(5)を備え、これには電源に接続するためのプラグ(7)を通じて電源供給される。発熱器(5)は第一のチャンバ(6)の中の、加熱板(4)とプラグ(7)の間に位置づけられる。加熱板(4)は、第一のチャンバ(6)に隣接する第二のチャンバ(8)の中に配置された容器(1)の膜(2)に熱を伝達するのに適している。
【0035】
図8からわかるように、第一のチャンバ(6)は加熱板(4)と第一のカバー(9)によって画定され、第二のチャンバ(8)は前記加熱板(4)と第二のカバー(10)によって画定される。第一のカバー(9)と第二のカバー(10)は機械的係合によって相互に結合され、装置の外装ケース(11)を構成する。
【0036】
本発明によれば、第一のチャンバ(6)はその中の加熱手段(3)とともに蒸気発散強度を調整するための強度調整手段(12)を構成し、これは第一のカバー(9)に配置された調整用開口部(13)を備え、その面積は、使用者が手で制御するのに適した回転ピン(14)に連結されたシャッタ(16)によって調節することができ、それによって加熱された空気の流れが排出され、第一のチャンバ(6)と加熱板(4)双方の温度を調整するのに適し、その結果、蒸発速度を調整することができる。
【0037】
ピン(14)は、シャッタを、図6に示されるように調整用開口部(13)が完全に閉じる最大位置と、図5に示されるように調整用開口部(13)が完全に開くオフ位置の間のすべての中間位置に沿って移動させるのに適している。
【0038】
ピン(14)がオフ位置にあると、装置は、前記ピン(14)と、発熱器(5)への電源供給を中断するのに適した内部スイッチ(15)との接触により、動作しない。これに対し、ピン(14)が最大位置に設定されると、装置は動作し、調整用開口部(13)が完全に閉じて、周辺大気中への熱の流れが妨げられ、第一のチャンバ(6)内に蓄積される熱の量が最大となり、その結果、揮発性物質の蒸発が最大となる。
【0039】
ピン(14)は、いずれの中間位置にも位置づけることができ、蒸発強度は調整用開口部(13)の開放面積に正比例する。
【0040】
本発明を、好ましい実施例に関連して説明したが、本発明の保護範囲はこれに限定されず、本発明を知った当業者の能力の範囲内のさまざまな変更または改変も、これが付属の特許請求範囲内にあるかぎり、包含するように拡張される。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、好ましくは行動圏内で、大気中に香水または殺虫剤を拡散させるための電気蒸発器の分野において有益に利用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 容器、2 膜、3 加熱手段、4 加熱板、5 発熱器、6 第一のチャンバ(加熱チャンバ)、7 プラグ、8 第二のチャンバ、9 第一のカバー、10 第二のカバー、11 外装ケース、12 強度調整手段、13 調整用開口部、14 回転可能ピン、15 内部スイッチ、16 シャッタ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発強度調節可能な揮発性物質用電気蒸発器であって、
半透膜を有する、揮発性物質を収容するのに適した容器(1)と、
第二のチャンバ(8)から分離された第一のチャンバ(6)を画定する加熱板(4)と、前記第一のチャンバ(6)内に位置づけられた発熱器(5)とを備える加熱手段(3)と、
前記第一のチャンバ内に位置づけられた少なくとも1つの調整用開口部(13)を有する強度調整手段(12)であって、前記少なくとも1つの調整用開口部(13)の面積がシャッタ(16)によって調節でき、加熱された気流の排出を可能にし、前記第一のチャンバ(6)と前記加熱板(4)の両方の温度を調整するのに適しており、その結果、蒸発速度の調整を可能にする強度調整手段(12)と、
を備える電気蒸発器。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記容器が前記第二のチャンバ内に配置される装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であって、
さらにケースを備え、前記加熱板は前記ケースの中に配置され、前記第一のチャンバは、前記加熱板の片側と前記ケースの一部分の間に画定され、前記第二のチャンバは、前記加熱板のもう一方の側と前記ケースの反対部分の間に画定される装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置であって、
前記加熱板は、前記第一のチャンバ内の熱の少なくとも一部を前記第二のチャンバに伝達するように構成されている装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−506577(P2010−506577A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532816(P2009−532816)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061205
【国際公開番号】WO2008/046908
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(506076732)ツォベーレ ホールディング ソシエタ ペル アチオニ (9)
【Fターム(参考)】