説明

蒸発燃料パージの制御装置

【課題】排気系の温度およびエンジンの始動形態を考慮しながらキャニスタに蓄えられた蒸発燃料のパージを制御することで、キャニスタの小型化を実現しながら、排ガス性能の低下を防ぐことが出来るようにする。
【解決手段】キャニスタ33に蓄えられた蒸発燃料EGASをエンジン1へ放出させる蒸発燃料パージ制御手段56と、自動停止/自動再始動させる自動停止再始動手段41と、エンジンが自動停止中は排気系の温度に相関する排気系温度指標値CTを減算補正する温度指標値補正手段44とを備え、上記の蒸発燃料パージ制御手段56は、蒸発燃料パージ条件として、エンジンが自動再始動され且つ補正後の排気系温度指標値CTが下限閾値CTthを上回っているであることを設定し、燃料パージ条件が満たされない場合には、蒸発燃料パージ制御の実行を制限するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたキャニスタに蓄えられた蒸発燃料をエンジンへ放出させる蒸発燃料パージ制御を行なう、蒸発燃料パージの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に搭載されたエンジンのアイドリング期間を短くすることで、エンジンから排出される排ガス量を低減することを狙った技術、いわゆる、アイドルストップ制御に関する技術が知られている。
また、このようなアイドルストップ制御を考慮しながら、キャニスタ内に蓄えられた蒸発燃料をエンジンにパージさせる技術も開発されている(例えば、以下の特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−23779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1の技術によっても、蒸発燃料のパージをある程度は効率的に行なうことは可能であろうものの、さらなる改良が求められている。
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、排気系の温度およびエンジンの始動形態を考慮しながらキャニスタに蓄えられた蒸発燃料のパージを制御することで、キャニスタの小型化を実現しながら、排ガス性能の低下を防ぐことが出来る、蒸発燃料パージの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の蒸発燃料パージの制御装置(請求項1)は、車両に搭載されたエンジンに供給される燃料を蓄える燃料タンクと、該燃料タンク内で蒸発した蒸発燃料を蓄えるキャニスタと、所定のパージ条件が成立すると該キャニスタに蓄えられた該蒸発燃料を該エンジンへ放出させる蒸発燃料パージ制御を実行する蒸発燃料パージ制御手段と、自動停止条件が成立すると該エンジンを自動停止させ、該自動停止後に自動再始動条件が成立すると該エンジンを自動再始動させる自動停止再始動手段と、該エンジンの排気系の温度に相関する排気系温度指標値を推定する排気系温度指標値推定手段と、該自動停止再始動手段によって該エンジンが自動停止している間は該排気系温度指標値設定手段により設定された該排気系温度指標値を減算補正する温度指標値補正手段とを備え、該蒸発燃料パージ制御手段は、該蒸発燃料パージ条件として、該自動停止再始動手段により該エンジンが自動再始動され且つ該温度指標値補正手段により補正された該排気系温度指標値が閾値を上回っているであることを設定し、該燃料パージ条件が満たされない場合には、該蒸発燃料パージ制御の実行を制限することを特徴としている。
【0006】
また、請求項2記載の本発明の蒸発燃料パージの制御装置は、請求項1記載の内容において、該排気系は、該エンジンから排出された排ガスを浄化する排ガス浄化触媒を有し、該蒸発燃料パージ制御手段は、該排ガス浄化触媒の活性化温度を該閾値として設定することを特徴としている。
また、請求項3記載の本発明の蒸発燃料パージの制御装置は、請求項2記載の内容において、該エンジンから排出された排ガスの空燃比を検出する排ガス空燃比センサと、該排ガス空燃比センサにより検出された該排ガス空燃比に基づいて該エンジンの燃料噴射量を調整するフィードバック噴射制御を実行するフィードバック噴射制御実行手段とをさらに備え、該蒸発燃料パージ制御手段は、該排ガス空燃比センサの活性化温度を該閾値として設定することを特徴としている。
【0007】
また、請求項4記載の本発明の蒸発燃料パージの制御装置は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の内容において、該エンジンの吸気量を検出する吸気量検出手段をさらに備え、該排気系温度指標値推定手段は、該吸気量検出手段により検出された該エンジンの吸気量に応じて該排気系温度指標値を推定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の蒸発燃料パージの制御装置によれば、エンジンが自動停止している期間に応じて減算補正される排気系温度指標値が排気系温度閾値以下であって、且つ、エンジンが自動再始動された場合、即ち、パージ条件が満たされた場合には、キャニスタで蓄えられた蒸発燃料を速やかにエンジンへパージすることが可能となる。このように、排気系の温度およびエンジンの始動形態を考慮しながらキャニスタに蓄えられた蒸発燃料のパージを制御することで、キャニスタの小型化を実現しながら、排ガス性能の低下を防ぐことが出来る。(請求項1)
また、排ガス浄化触媒が活性化していることをパージ条件の成立要件の1つとすることで、蒸発燃料パージ制御を実行しても、大気へ放出される排ガスの性能が低下する事態を防ぐことが出来る。(請求項2)
また、排ガス空燃比センサが活性化していることをパージ条件の成立要件の1つとすることで、蒸発燃料パージ制御を実行しても、パージされた蒸発燃料を加味したエンジンの燃料噴射量の調整が可能となり、大気へ放出される排ガスの性能が低下する事態を防ぐことが出来る。(請求項3)
また、排気系の温度を示す値(即ち、排気系温度指標値)を、特殊なセンサや複雑な演算手法を用いずに、精度よく推定することが出来る。(請求項4)
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る蒸発燃料パージの制御装置の全体構成を示す模式的なブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る蒸発燃料パージの制御装置による、排気系温度カウンタ値の推定動作および補正動作を示す模式的なフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態に係る蒸発燃料パージの制御装置による、排気系温度カウンタ値に応じた噴射制御モードの切換制御を示すメインルーチンの模式的なフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係る蒸発燃料パージの制御装置による、排気系温度カウンタ値に応じた噴射制御モードの切換制御を示すAサブルーチンの模式的なフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係る蒸発燃料パージの制御装置による、排気系温度カウンタ値に応じた噴射制御モードの切換制御を示すBサブルーチンの模式的なフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態に係る蒸発燃料パージの制御装置による、蒸発燃料パージ制御を示す模式的なフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態に係る蒸発燃料パージの制御装置の動作の一例を示す模式的なタイムチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1に示すように、車両10に搭載されたエンジン1のシリンダヘッド2には点火プラグ11が設けられている。この点火プラグ11の先端はシリンダ3の燃焼室に突出している。また、この点火プラグ11には高電圧の電力を供給する点火コイル(図示略)が接続されている。また、この車両10には、エンジン1のクランキングを行なうスタータモータ(図示略)が搭載されている。
【0011】
また、シリンダヘッド2には、吸気ポート5が形成されている。また、この吸気ポート5には、吸気弁14が設けられている。
吸気弁14は、クランク軸7の回転に応じて回転する吸気カムシャフト(図示略)の吸気カム(図示略)の動作に応じて開閉し、燃焼室4に対して吸気ポート5を開閉するようになっている。
【0012】
また、シリンダヘッド2には、排気ポート6が形成されている。また、この排気ポート6には、排気弁24が設けられている。
排気弁24は、クランク軸7の回転に応じて回転する排気カムシャフト(図示略)の排気カム(図示略)の動作に応じて開閉し、燃焼室4に対して排気ポート6を開閉するようになっている。
【0013】
そして、このエンジン1には、吸気弁14および排気弁24の開弁期間,開閉タイミングおよびリフト量を連続的に変更可能な可変動弁機構(バルブ動作状態検出手段)30が設けられている。
また、このエンジン1には、エンジン1の内部に形成されたウォータジャケット(図示略)を流通する冷却水の温度WTを検出する冷却水温センサ12が設けられている。なお、この冷却水温センサ12による検出結果WTは、後述するECU(Electric Control Unit)40に読み込まれるようになっている。
【0014】
クランク軸7の回転数、即ち、エンジン回転数Neは、エンジン回転数センサ23によって検出されるようになっている。そして、このエンジン回転数センサ23の検出結果Neは、ECU40によって読み込まれるようになっている。
吸気ポート5には、吸気マニホールド15の下流端が接続されている。
吸気マニホールド15には、スロットルバルブ16が設けられるとともに、このスロットルバルブ16の開度(スロットルバルブ開度)θを検出するスロットルポジションセンサ17が設けられている。
【0015】
吸気マニホールド15には、吸気マニホールド圧センサ18が設けられている。この吸気マニホールド圧センサ18は、スロットルバルブ16よりも下流側における吸気マニホールド15内の気圧Pinを検出するものであって、検出結果はECU40によって読み込まれるようになっている。
さらに、吸気マニホールド15よりも上流側における吸気管(吸気通路)19には、エアフローセンサ(吸気量センサ)20が設けられている。このエアフローセンサ20は、吸気管19を通過して吸気マニホールド15に流れ込む吸気量Qinを検出するものであって、検出結果は後述するECU40によって読み込まれるようになっている。
【0016】
吸気マニホールド15には、電磁式の燃料噴射弁21が取り付けられている。この燃料噴射弁21には、燃料パイプ22を介し、図示しない燃料タンクから燃料が供給されるようになっている。
排気ポート6には、排気マニホールド(排気系)25の上流端が接続されている。
排気マニホールド25の下流端には、排気管(排気系)26が接続されている。また、この排気管26には、排ガス浄化触媒として三元触媒(排気系)27が介装されている。
【0017】
この三元触媒27は、エンジン1から排出された排ガスに含まれる一酸化炭素(CO),炭化水素(HC)および窒素化合物(NO)を、窒素(N),二酸化炭素(CO2)および水(H2O)へ化学変化させることで、排ガスを浄化するものである。
三元触媒27の上流側における排気管26には、上流O2センサ(排ガス空燃比検出手段,排ガス空燃比センサ,上流排ガス空燃比センサ)28が設けられている。また、三元触媒27の下流側における排気管26には、下流O2センサ(排ガス空燃比検出手段,排ガス空燃比センサ,下流排ガス空燃比センサ)29が設けられている。
【0018】
上流O2センサ28は、エンジン1から排出され、三元触媒27に流入する前の排ガス空燃比である上流側空燃比AF1を検出するものである。
下流O2センサ29は、三元触媒27から排出され、大気に放出される排ガス空燃比である下流側空燃比AF2を検出するものである。
また、これらの上流O2センサ28や下流O2センサ29は、いずれもセラミック製の検出素子を備えており、センサ活性化温度(第1活性化温度;例えば、300℃程度)に昇温されると活性化する特性を有している。
【0019】
また、上流O2センサ28には、上流O2センサ28の検出素子を昇温する上流ヒータ(昇温手段,上流センサ昇温手段)28Aが設けられている。
また、下流O2センサ29には、下流O2センサ29の検出素子を昇温する下流ヒータ(昇温手段,下流センサ昇温手段)29Aが設けられている。
これらの上流ヒータ28Aおよび下流ヒータ29Aは、いずれも、車両10に搭載されたバッテリ(電源;図示略)から供給される電力により電気的に発熱するものである。なお、上流ヒータ28Aは、バッテリと上流ヒータ28Aとの間で電気的に介装された第1スイッチ(図示略)によりオン/オフされるようになっている。同様に、下流ヒータ29Aは、バッテリと下流ヒータ29Aとの間で電気的に介装された第2スイッチ(図示略)によりオン/オフされるようになっている。
【0020】
また、上流O2センサ28による検出結果AF1および下流O2センサ29による検出結果AF2は、いずれも電圧値(例えば、0〜1[V])としてECU40に出力されるようになっている。本実施形態において、上流O2センサ28および下流O2センサ29は、排ガスのリーン化が強くなるにしたがって、出力電圧値が0[V]に近づく特性を有している。一方、上流O2センサ28および下流O2センサ29は、排ガスのリッチ化が強くなるにしたがって、出力電圧値が1[V]に近づく特性を有している。そして、上流O2センサ28および下流O2センサ29は、排ガスが理論空燃比である場合に、出力電圧値が0.5[V]となる特性を有している。
【0021】
また、この車両10のブレーキペダル(図示略)には、図示しないストップランプスイッチが設けられている。このストップランプスイッチは、ブレーキペダル(図示略)が踏込まれていない場合にはオフになり、ブレーキペダルが踏み込まれた場合にオンになる電気スイッチである。また、このストップランプスイッチは、車両10のブレーキランプ(図示略)に接続されている。したがって、このストップランプスイッチがオンになると車両10のブレーキランプが点灯し、オフになるとブレーキランプが消灯するようになっている。なお、このストップランプスイッチはECU40にも接続され、ストップランプスイッチがオンであるか否かをECU40が確認することが出来るようになっている。
【0022】
また、この車両10には遊星歯車機構を有するオートマチックトランスミッション(図示略)が搭載されている。また、この遊星歯車機構の変速比は、図示しないシフトレバーの位置に応じて変更されるようになっている。
また、この車両10の車輪(図示略)には、図示しない車輪速センサが設けられている。この車輪速センサは、車輪の回転速度を検出するものであって、検出結果はECU40によって読み込まれるようになっている。
【0023】
また、エンジン1はガソリンエンジンであって、車両10にはエンジン1の燃料として用いられる液体ガソリンLGASを蓄える燃料タンク31が搭載されている。また、この燃料タンク31は、蒸発ガソリン通路32を介して吸気マニホールド15と接続されている。また、この蒸発ガソリン通路32中にはキャニスタ33が設けられている。
このキャニスタ33は、燃料タンク31内で蒸発した蒸発ガソリン(蒸発燃料)EGASを蓄えるものである。また、このキャニスタ33は、図示しない電磁弁を有している。この電磁弁は、キャニスタ33の出口と蒸発ガソリン通路32とを開閉するものであって、ECU40により制御されるようになっている。
【0024】
また、車両10には、ECU40が設けられている。
このECU40は、いずれも図示しないメモリやCPU(Central Processing Unit)を有する電子制御ユニットである。また、このECU40のメモリには、いずれもソフトウェアとして、アイドル制御部(アイドル制御手段)41,排気系温度カウンタ値推定部(排気系温度指標値推定手段)42,燃料カット制御部(燃料カット制御手段)43およびカウンタ値補正部(温度指標値補正手段)44が記録されている。
【0025】
また、このECU40のメモリには、フィードバック噴射制御部(フィードバック噴射制御手段)47,オープンループ噴射制御部(オープンループ噴射制御手段)48,噴射制御モード切換部(噴射制御モード切換手段)49および蒸発燃料パージ制御部(蒸発燃料パージ制御部)56が記録されている。
さらに、図示はしないが、このECU40のメモリには、ソフトウェアとして、車速検出部も記録されている。
【0026】
これらのうち、アイドル制御部41は、自動停止条件が成立するとエンジン1を自動停止させ、エンジン1の自動停止後に自動再始動条件が成立するとスタータモータを作動させエンジン1を自動再始動させるものである。なお、アイドル制御部41の制御を受けて作動したスタータモータによるクランキングを、オートクランキングという。一方、車両10のドライバがシリンダキー(図示略)をイグニッションポジションまで回転させることで作動したスタータモータによるクランキングを、単にクランキングという。また、クランキングによるエンジン1の始動をマニュアル始動という。
【0027】
そして、アイドル制御部41は、以下の条件(1)〜(3)が満たされれば、自動停止条件が満たされたと判定するようになっている。
条件(1): ストップランプスイッチがオンである
条件(2): 車速Vsがゼロである
条件(3): シフトレバーがドライブ(D)ポジションにある
また、アイドル制御部41は、以下の条件(4)が満たされれば、自動再始動条件が満たされたと判定するようになっている。
【0028】
条件(4): ストップランプスイッチがオンからオフになる
なお、車速Vsは、車輪速センサにより検出された車輪の回転速度に基づいて車速検出部(図示略)が演算するようになっている。
排気系温度カウンタ値推定部42は、排気系温度カウンタ値CTを推定するものである。この排気系温度カウンタ値CTは、エンジン1の排気系(即ち、排気マニホールド25,排気管26および三元触媒27)の温度を示す指標である。そして、排気系温度カウンタ値推定部42は、エアフローセンサ20により検出されたエンジン1の吸気量Qinに応じて、この排気系温度カウンタ値CTを増大,低減あるいは維持することで、排気系温度カウンタ値CTを推定するようになっている。なお、本実施形態において、この排気系温度カウンタ値CTの下限値はゼロとして設定されている。したがって、排気系温度カウンタ値推定部42は、この排気系温度カウンタ値CTをゼロよりも小さい値として推定することはない。また、後述するカウンタ値補正部44も、排気系温度カウンタ値CTをゼロよりも小さい値に補正することはない。
【0029】
より具体的に、排気系温度カウンタ値推定部42は、吸気量Qinが比較的多い場合、所定周期T(例えば、T=2秒)毎に排気系温度カウンタ値CTを10加算するようになっている。
また、排気系温度カウンタ値推定部42は、吸気量Qinが比較的少ない場合、所定周期T毎に排気系温度カウンタ値CTを1減算するようになっている。
【0030】
また、排気系温度カウンタ値推定部42は、吸気量Qinが比較的多くもなく且つ少なくもない場合、所定周期T毎に排気系温度カウンタ値CTの加算も減算も行なわない、即ち、その時点における排気系温度カウンタ値CTを保持するようになっている。
燃料カット制御部43は、燃料カット条件が成立すると、燃料噴射弁21による燃料噴射を一時的に禁止する制御、即ち、燃料カット制御を実行するものである。
【0031】
なお、燃料カット制御部43は、以下の条件(5)および条件(6)の両方が満たされれば、減速時における燃料カット条件が満たされたと判定するようになっている。
条件(5)アクセルペダルの踏み込み量Accが実質的にゼロであること
条件(6)エンジン回転数Neが所定回転数Ne1以上であること
なお、ここで、所定回転数Ne1は、アイドル回転数Ne0よりも少し高い回転数として設定されたものである。
【0032】
また、アクセルペダル(図示略)の踏込み量Accは、図示しないアクセルペダルポジションセンサにより検出され、ECU40により読み込まれるようになっている。
カウンタ値補正部44は、排気系温度カウンタ値推定部42により推定された排気系温度カウンタ値CTを、エンジン1の運転状態に応じて補正するものである。
より具体的に、このカウンタ値補正部44は、アイドル制御部41によってエンジン1が自動停止されている間、排気系温度カウンタ値CTを第1度合R1(例えば、R1=2[2秒毎])で減算補正するようになっている。
【0033】
また、このカウンタ値補正部44は、燃料カット制御部43により燃料カット制御が実行されている間、排気系温度カウンタ値CTを第2度合R2(例えば、R2=10[2秒毎])で減算補正するようになっている。
さらに、このカウンタ値補正部44は、アイドル制御部41によってエンジン1が自動再始動している間(いわゆる、オートクランキング中)は、排気系温度カウンタ値CTを第3度合R3(例えば、R3=0[2秒毎])で補正するようになっている。
【0034】
つまり、これらの第1度合R1,第2度合R2および第3度合R3は、下式(A)の関係が成立するように設定されている。
R3 < R1 < R2 ・・・(A)
また、フィードバック噴射制御部47は、スロットルポジションセンサ17によって検出されたスロットルバルブ開度θと、エアフローセンサ20によって検出された吸気量Qinと、上流O2センサ28により検出された排ガス空燃比AF1とに基づいて、燃料噴射弁21による燃料噴射量Finjを調整するフィードバック噴射制御を実行するものである。
【0035】
オープンループ噴射制御部48は、スロットルポジションセンサ17によって検出されたスロットルバルブ開度θと、エアフローセンサ20によって検出された吸気量Qinには基づくものの、上流O2センサ28により検出された排ガス空燃比AF1に基づかずに、燃料噴射弁21による燃料噴射量Finjを調整するオープンループ噴射制御を実行するものである。
【0036】
噴射制御モード切換部49は、アイドル制御部41の作動状況と、カウンタ値補正部44により補正されたカウンタ値CTとに基づいて、フィードバック噴射制御部47およびオープンループ噴射制御部48を制御するものである。
より具体的に、この噴射制御モード切換部49は、以下の条件(A)および(B)が満たされたか否かを判定するようになっている。
【0037】
条件(A): アイドル制御部41によりエンジン1が自動再始動された
条件(B): カウンタ値補正部44によって補正された排気系温度カウンタ値CTが、下限閾値CTthを上回っている
なお、本実施形態において、この下限閾値CTthは0として設定されている。
これは、三元触媒27が触媒活性化温度以上に暖められないと、三元触媒27が本来の浄化性能を発揮出来ないことによるものであり、排気系温度カウンタ値CTが下限閾値CTth以下になったということは、三元触媒27が活性化温度に達していない可能性が極めて高いのである。換言すれば、この下限閾値CTthは、三元触媒27の触媒活性化温度に応じて設定されている。
【0038】
この噴射制御モード切換部49は、上記の条件(A)および(B)が満たされていると判定した場合には、オープンループ噴射制御部48によるオープンループ噴射制御を短期間(第2期間)T2bまたは極短期間(第2期間)T2aに亘って実行させた後、フィードバック噴射制御部46によるフィードバック噴射制御を実行させるようになっている。なお、本実施形態において、短期間T2bおよび極短期間T2aはともに5秒として設定されている。また、噴射制御モード切換部49が、オープンループ噴射制御の実行期間を短期間T2bとするのか極短期間T2aとするのかは以下の条件(C)および(D)の判定結果による。
【0039】
条件(C): 冷却水温センサ12により検出された冷却水温WTが水温閾値WTth1(例えば、WTth1=20℃)以下である
条件(D): エンジン1が始動してから所定期間ETth1が経過した時点で上流O2センサ28が作動していない
より具体的に、この条件(D)が満たされたか否かの判定は、噴射制御モード切換部49が、上流Oセンサ28の出力電圧が0.5[V]を上回ったか否かを判定することで行われるようになっている。
【0040】
このとき、この噴射制御モード切換部49は、条件(C)が満たされている場合、および、条件(C)が満たされておらず且つ条件(D)が満たされていない場合、オープンループ噴射制御部48によるオープンループ噴射制御を極短期間(第2期間)T2aに亘って実行させた後、フィードバック噴射制御部46によるフィードバック噴射制御を実行させるようになっている。
【0041】
他方、この噴射制御モード切換部49は、条件(C)が満たされており且つ条件(D)が満たされている場合、オープンループ噴射制御部48によるオープンループ噴射制御を短期間T2bに亘って実行させた後、フィードバック噴射制御部46によるフィードバック噴射制御を実行させるようになっている。
一方、この噴射制御モード切換部49は、上記の条件(A)が満たされていないと判定した場合、および、上記の条件(B)が満たされていないと判定した場合には、オープンループ噴射制御部48によるオープンループ噴射制御を長期間(第1b期間,第1期間)T1bまたは中期間(第1a期間,第1期間)T1bに亘って実行させた後、フィードバック噴射制御部46によるフィードバック噴射制御を実行させるようになっている。そして、オープンループ噴射制御の実行期間を、長期間T1bとするのか中期間T1aとするのかは上記の条件(C)および(D)の判定結果による。なお、本実施形態において、長期間T1bは例えば30秒として設定され、中期間T1aは例えば15秒として設定されている。
【0042】
このとき、この噴射制御モード切換部49は、条件(C)が満たされている場合、および、条件(C)が満たされておらず且つ条件(D)が満たされていない場合、オープンループ噴射制御部48によるオープンループ噴射制御を中期間T1aに亘って実行させた後、フィードバック噴射制御部46によるフィードバック噴射制御を実行させるようになっている。
【0043】
他方、この噴射制御モード切換部49は、条件(C)が満たされておらず且つ条件(D)が満たされている場合、オープンループ噴射制御部48によるオープンループ噴射制御を長期間T1bに亘って実行させた後、フィードバック噴射制御部46によるフィードバック噴射制御を実行させるようになっている。
つまり、上記の長期間T1b,中期間T1a,短期間T2bおよび極短期間T2aは、以下の式(1)の関係を満たすように設定されている。
【0044】
T1b > T1a >T2b ≧ T2a ・・・(1)
蒸発燃料パージ制御部56は、パージ条件が成立するとキャニスタ33に蓄えられた蒸発ガソリンEGASをエンジン1の吸気マニホールド15内へ放出させる蒸発燃料パージ制御を実行するものである。
より具体的に、この蒸発燃料パージ制御部56は、以下の条件(F1)および(F2)から成る、パージ条件を設定するようになっている。
【0045】
条件(F1): 排気系温度条件
条件(F2): 始動モード条件
ここで、条件(F1)の排気系温度条件は、カウンタ値補正部44によって補正された排気系温度カウンタ値CTが、下限閾値CTth(CTth=0)を上回っている(CT>CTth)という内容を条件とするものである。なお、この下限閾値CTthは、三元触媒27の活性化温度よりも高く、且つ、上流O2センサ28の活性化温度よりも高いことを示す値として設定されている。つまり、排気系温度カウンタ値CTが、この下限閾値CTthを上回るということは、三元触媒27が活性化し、且つ、上流O2センサ28が活性化していると推定することが出来ることを意味している。
【0046】
条件(F2)の始動モード条件は、エンジン1の始動が、アイドル制御部41による自動再始動であるというという内容を条件とするものである。換言すれば、エンジン1がマニュアル始動された場合、この始動モード条件は満たされないこととなる。
そして、上記のパージ条件が成立すると、蒸発燃料パージ制御部56は、さらに、冷却水温センサ12により検出された冷却水温WTがパージ制御用水温閾値WTth2(例えば、WTth2=60℃)以上であるか否かを判定するようになっている。
【0047】
ここで、冷却水温センサ12により検出された冷却水温WTがパージ制御用水温閾値WTth2以上であった場合、蒸発燃料パージ制御部56は、エンジン1の始動後、第1パージ制限期間PP1が(例えば、10[sec])経過すると、キャニスタ33の電磁弁を開放し、キャニスタ33に蓄えられた蒸発ガソリンEGASをエンジン1へ放出させる蒸発燃料パージ制御を実行するようになっている。
【0048】
一方、冷却水温センサ12により検出された冷却水温WTがパージ制御用水温閾値WTth2未満であった場合、蒸発燃料パージ制御部56は、エンジン1の始動後、第2パージ制限期間PP2が(例えば、4[min])経過すると、蒸発燃料パージ制御を実行するようになっている。
一方、上記のパージ条件が成立しない場合、即ち、上記の条件(F1)および(F2)の少なくともいずれか一方が満たされなかった場合、この蒸発燃料パージ制御部56は、さらに、冷却水温センサ12により検出された冷却水温WTがパージ制御用水温閾値WTth3(例えば、WTth3=60℃)以上であるか否かを判定するようになっている。
【0049】
なお、パージ制御用水温閾値WTth2およびWTth3のうち、前者のパージ制御用水温閾値WTth2を温態水温閾値WTth2といい、後者のパージ制御用水温閾値WTth3を冷態水温閾値WTth3という。
ここで、冷却水温センサ12により検出された冷却水温WTがパージ制御用水温閾値WTth2以上であった場合、蒸発燃料パージ制御部56は、エンジン1の始動後、第3パージ制限期間PP3が(例えば、1[min])経過すると、キャニスタ33の電磁弁を開放し、キャニスタ33に蓄えられた蒸発ガソリンEGASをエンジン1へ放出させる蒸発燃料パージ制御を実行するようになっている。
【0050】
一方、冷却水温センサ12により検出された冷却水温WTがパージ制御用水温閾値WTth2未満であった場合、蒸発燃料パージ制御部56は、エンジン1の始動後、第4パージ制限期間PP4が(例えば、4[min])経過すると、蒸発燃料パージ制御を実行するようになっている。
つまり、エンジン1の冷却水温WTがパージ制御用水温閾値WTth2およびWTth3以上である場合、第1パージ制限期間PP1と第3パージ制限期間PP3とは、以下の式(2)の関係が満たされるように設定されている。
【0051】
第1パージ制限期間PP1 < 第3パージ制限期間PP3 ・・・(2)
したがって、パージ条件が成立した場合に比べて、パージ条件が成立していない場合は、蒸発燃料パージ制御の実行が制限されるようになっている。換言すれば、パージ条件が成立した場合は、パージ条件が成立していない場合に比べて、エンジン1の始動後、速やかに蒸発燃料パージ制御が実行されるようになっているのである。
【0052】
本発明の一実施形態に係る蒸発燃料パージの制御装置は上述のように構成されているので、以下のような作用および効果を奏する。
図2のフローチャートに示すように、まず、エンジン1が運転中である場合、ECU40がエアフローセンサ20によって検出された吸気量Qinを読み込む(ステップS11)。
【0053】
そして、排気系温度カウンタ値推定部42が、読み込まれたエンジン1の吸気量Qinに応じて、排気系温度カウンタ値CTを増大,低減あるいは保持することで、排気系温度カウンタ値CTを推定する(ステップS12)。
その後、燃料カット制御部43が、上記の条件(5)および条件(6)の両方が満たされたか否か、即ち、燃料カット条件が満たされたか否か判定する(ステップS13)。
【0054】
ここで、燃料カット条件が満たされたと判定された場合は(ステップS13のYesルート)、燃料カット制御部43は、燃料噴射弁21による燃料噴射を一時的に禁止する制御、即ち、燃料カット制御を実行する(ステップS14)。
そして、燃料カット制御部43により燃料カット制御が実行されている間、カウンタ値補正部44が、排気系温度カウンタ値CTを第2度合R2(例えば、R2=10[2秒毎])で減算補正する(ステップS15)。
【0055】
また、アイドル制御部41は、上記の条件(1)〜(3)が満たされたか否か、即ち、自動停止条件が成立したか否かを判定する(ステップS16)。なお、燃料カット制御部43が、燃料カット条件は満たされなかったと判定した場合も(ステップS13のNoルート)、上記のステップS14およびステップS15をスキップして、このステップS16における判定が実行される。
【0056】
ここで、自動停止条件が成立した場合(ステップS16のYesルート)、アイドル制御部41は、エンジン1を自動停止させる(ステップS17)。
そして、カウンタ値補正部44は、アイドル制御部41によってエンジン1が自動停止されている間、排気系温度カウンタ値CTを第1度合R1(例えば、R1=2[2秒毎])で減算補正する(ステップS18)。
【0057】
なお、カウンタ値補正部44が、自動停止条件は満たされなかったと判定した場合は(ステップS16のNoルート)、後述するステップS19〜S21をスキップしてリターンする。
その後、アイドル制御部41は、上記の条件(4)が満たされたか否か、即ち、自動再始動条件が成立したか否かを判定する(ステップS19)。
【0058】
ここで、自動停止条件が成立した場合には(ステップS19のYesルート)、アイドル制御部41は、スタータモータを作動させることでオートクランキングを行ない、エンジン1を自動再始動させる(ステップS20)。
そして、カウンタ値補正部44は、アイドル制御部41によってエンジン1が自動停止されている間、排気系温度カウンタ値CTを第3度合R3で補正し(ステップS21)、その後、リターンする。なお、本実施形態においては、第3度合R3が0として設定されている。このため、カウンタ値補正部44は、ステップS12において、排気系温度カウンタ値推定部42により推定された排気系温度カウンタ値CTを保持することとなる。
【0059】
上述のように、この図2のフローチャートを繰り返し実行することで、排気系温度カウンタ値CTは、随時推定され、且つ、補正されている。
一方、排気系温度カウンタ値CTに応じた噴射制御モードの切換制御は、図3〜図5に示すフローチャートに示すように実行される。
図3に示すように、まず、噴射制御モード切換部49は、上記の条件(A)が満たされたか否か、即ち、アイドル制御部41によりエンジン1が自動再始動されたか否かを判定する(ステップS41)。
【0060】
ここで、アイドル制御部41によりエンジン1が自動再始動された場合(ステップS41のYesルート)、噴射制御モード切換部49は、上記の条件(B)が満たされたか否か、即ち、カウンタ値補正部44によって補正された排気系温度カウンタ値CTが、下限閾値CTthを上回っているか否かを判定する(ステップS42)。
アイドル制御部41によりエンジン1が自動再始動されたのではなく、車両10のドライバがシリンダキーをイグニッションポジションまで回転させることに起因してエンジン1が始動した場合、即ち、マニュアル始動が行われた場合(ステップS41のNoルート)、図5を用いて後述するBサブルーチンが実行される(ステップS44)。
【0061】
同様に、カウンタ値補正部44によって補正された排気系温度カウンタ値CTが、下限閾値CTth以下である場合も(ステップS42のNoルート)、Bサブルーチンが実行される(ステップS44)。
他方、カウンタ値補正部44によって補正された排気系温度カウンタ値CTが、下限閾値CTthを上回っている場合(ステップS42のYesルート)、Aサブルーチンが実行される(ステップS43)。
【0062】
図4に示すように、このAサブルーチンにおいて、噴射制御モード切換部49は、冷却水温センサ12により検出された冷却水温WTが水温閾値WTth1以下であるという条件(即ち、上記の条件(C))が満たされているか否かの判定を行なう(ステップS41a)。
ここで、噴射制御モード切換部49が、条件(C)が満たされていると判定した場合(ステップS41aのYesルート)、さらにこの噴射制御モード切換部49は、オープンループ噴射制御部48によるオープンループ噴射制御を極短期間(第2期間)T2aに亘って実行させた後(ステップS42aおよびS43aのYesルート)、フィードバック噴射制御部46によるフィードバック噴射制御を実行させる(図3のステップS45)。
【0063】
他方、噴射制御モード切換部49が、条件(C)が満たされていないと判定した場合(ステップS41aのNoルート)、さらにこの噴射制御モード切換部49は、エンジン1が始動してから所定期間ETth1が経過した時点で上流O2センサ28が作動していないという条件(即ち、条件(D))が満たされているか否かの判定を行なう(ステップS45a)。
【0064】
ここで、条件(D)が満たされていない場合(ステップS45aのNoルート)、この噴射制御モード切換部49は、上記の条件(C)が満たされた場合(ステップS41aのYesルート)と同様に、オープンループ噴射制御部48によるオープンループ噴射制御を極短期間T2aに亘って実行させた後(ステップS42aおよびS43aのYesルート)、フィードバック噴射制御部46によるフィードバック噴射制御を実行させる(図3のステップS45)。
【0065】
一方、条件(D)が満たされている場合(ステップS45aのYesルート)、この噴射制御モード切換部49は、オープンループ噴射制御部48によるオープンループ噴射制御を短期間T2bに亘って実行させた後(ステップS46aおよびS47aのYesルート)、フィードバック噴射制御部46によるフィードバック噴射制御を実行させる(図3のステップS45)。
【0066】
図5に示すように、Bサブルーチンにおいて、噴射制御モード切換部49は、冷却水温センサ12により検出された冷却水温WTが水温閾値WTth1以下であるという条件(即ち、上記の条件(C))が満たされているか否かの判定を行なう(ステップS41b)。
ここで、噴射制御モード切換部49が、条件(C)が満たされていると判定した場合(ステップS41bのYesルート)、この噴射制御モード切換部49は、オープンループ噴射制御部48によるオープンループ噴射制御を中期間(第1期間)T1aに亘って実行させた後(ステップS42bおよびS43bのYesルート)、フィードバック噴射制御部46によるフィードバック噴射制御を実行させる(図3のステップS45)。
【0067】
他方、噴射制御モード切換部49が、条件(C)が満たされていないと判定した場合(ステップS41bのNoルート)、この噴射制御モード切換部49は、エンジン1が始動してから所定期間ETth1が経過した時点で上流O2センサ28が作動していないという条件(即ち、条件(D))が満たされているか否かの判定を行なう(ステップS44bおよびS45b)。
【0068】
ここで、条件(D)が満たされていない場合(ステップS45bのNoルート)、この噴射制御モード切換部49は、上記の条件(C)が満たされた場合(ステップS41bのYesルート)と同様に、オープンループ噴射制御部48によるオープンループ噴射制御を中期間T1aに亘って実行させた後(ステップS42bおよびS43bのYesルート)、フィードバック噴射制御部46によるフィードバック噴射制御を実行させる(図3のステップS45)。
【0069】
一方、条件(D)が満たされている場合(ステップS45bのYesルート)、この噴射制御モード切換部49は、オープンループ噴射制御部48によるオープンループ噴射制御を長期間T1bに亘って実行させた後(ステップS46bおよびS47bのYesルート)、フィードバック噴射制御部46によるフィードバック噴射制御を実行させる(図3のステップS45)。
【0070】
また、蒸発燃料パージ制御部56による蒸発燃料パージ制御は、図6のフローチャートに示すように実行される。
まず、蒸発燃料パージ制御部56は、上記の条件(F1)が満たされたか否か、即ち、アイドル制御部41によりエンジン1が自動再始動されたか否かを判定する(ステップS81)。
【0071】
ここで、アイドル制御部41によりエンジン1が自動再始動された場合(ステップS81のYesルート)、蒸発燃料パージ制御部56は、上記の条件(F2)が満たされたか否か、即ち、カウンタ値補正部44によって補正された排気系温度カウンタ値CTが、下限閾値CTthを上回っているか否かを判定する(ステップS82)。
ここで、補正後の排気系温度カウンタ値CTが、下限閾値CTthを上回っている場合(ステップS82のYesルート)、蒸発燃料パージ制御部56は、冷却水温センサ12により検出された冷却水温WTがパージ制御用水温閾値WTth2(例えば、WTth2=60℃)以上であるか否かを判定する(ステップS83)。
【0072】
そして、冷却水温WTがパージ制御用水温閾値WTth2以上である場合(ステップS83のYesルート)、蒸発燃料パージ制御部56は、エンジン1の始動後、第1パージ制限期間PP1が(例えば、10[sec])経過してから、キャニスタ33の電磁弁を開放し、キャニスタ33に蓄えられた蒸発ガソリンEGASをエンジン1へ放出させる蒸発燃料パージ制御を実行する(ステップS84)。
【0073】
他方、冷却水温WTがパージ制御用水温閾値WTth2未満である場合(ステップS83のNoルート)、蒸発燃料パージ制御部56は、エンジン1の始動後、第2パージ制限期間PP2が(例えば、4[min])経過してから蒸発燃料パージ制御を実行する(ステップS85)。
なお、アイドル制御部41によりエンジン1が自動再始動されたのではなく、車両10のドライバがシリンダキーをイグニッションポジションまで回転させることに起因してエンジン1が始動した場合(ステップS81のNoルート)、即ち、条件(F1)が満たされなかった場合、蒸発燃料パージ制御部56は、冷却水温センサ12により検出された冷却水温WTがパージ制御用水温閾値WTth3以上であるか否かを判定する(ステップS86)。
【0074】
同様に、補正後の排気系温度カウンタ値CTが、下限閾値CTth以下である場合(ステップS82のNoルート)、即ち、条件(F2)が満たされなかった場合も、蒸発燃料パージ制御部56は、冷却水温センサ12により検出された冷却水温WTがパージ制御用水温閾値WTth3以上であるか否かを判定する(ステップS86)。
そして、冷却水温WTがパージ制御用水温閾値WTth3以上である場合(ステップS86のYesルート)、蒸発燃料パージ制御部56は、エンジン1の始動後、第3パージ制限期間PP3が(例えば、70[sec])経過してから、キャニスタ33の電磁弁を開放し、キャニスタ33に蓄えられた蒸発ガソリンEGASをエンジン1へ放出させる蒸発燃料パージ制御を実行する(ステップS87)。
【0075】
他方、冷却水温WTがパージ制御用水温閾値WTth3未満である場合(ステップS86のNoルート)、蒸発燃料パージ制御部56は、エンジン1の始動後、第4パージ制限期間PP4が(例えば、4[min])経過してから蒸発燃料パージ制御を実行する(ステップS88)。
以下、図7に示すタイムチャートを用い、本発明の一実施形態に係る車両の排気系の温度推定装置の作用を、具体的について説明しておく。
【0076】
まず、車両10のドライバがシリンダキーをイグニッションポジションまで回転させることで、スタータモータによるクランキングが開始された(周期T1)。
その後、エンジン回転数Neがクランキング回転数Ne1(例えば、Ne1=600[rpm])以上になり、クランキングが完了する(周期T2)。その後、周期T3までエンジン1がアイドル運転を行なった。
【0077】
つまり、周期T1から周期T3までの間、スロットルバルブ開度θはエンジン1がアイドル運転を行なうのに必要な開度(即ち、実質的に全閉)であり、吸気量Qinは極めて少ない。このため、排気系温度カウンタ値推定部42は、排気系温度カウンタ値CTを周期的に1ずつ減算する。もっとも、上述のように、排気系温度カウンタ値CTの下限値は0であるので、周期T1から周期T3までの間、排気系温度カウンタ値CTは0のまま維持される。
【0078】
その後、車両1を加速させるべく、ドライバがアクセルペダルを踏込み、アクセルペダル踏み込み量Accが増大した(周期T4)。このとき、スロットルバルブ開度θは30%以上になり、吸気量Qinが比較的多くなった。このため、排気系温度カウンタ値推定部42は、排気系温度カウンタ値CTを10加算する(周期T4)。
その後、ドライバがアクセルペダルを緩め、スロットルバルブ開度θが20%程度になり、吸気量Qinが比較的多くもなく且つ少なくもなくなった(周期T4〜T8)。このため、排気系温度カウンタ値推定部42は、周期T4から周期T8までの間、排気系温度カウンタ値CTの加算も減算も行なわず、周期T4における排気系温度カウンタ値CTを保持する。
【0079】
そして、周期T9から周期T12までの間、アイドル制御部41が、エンジン1の自動停止を行なった。このため、カウンタ値補正部44は、周期T9から周期T12までの間、排気系温度カウンタ値CTを第1度合R1(R1=2)ずつ減算補正した。
その後、アイドル制御部41が、エンジン1の自動再始動を行なった(周期T13)。このため、カウンタ値補正部44は、オートクランキングが行なわれている間、排気系温度カウンタ値CTを第3度合R3で補正する。もっとも、本実施形態において、第3度合R3は0であるので、カウンタ値補正部44は、排気系温度カウンタ値CTの補正を行なわない。
【0080】
そして、エンジン1の自動再始動後、周期T14において、車両1を加速させるべく、ドライバがアクセルペダルを踏込み、アクセルペダル踏み込み量Accが増大した。このとき、スロットルバルブ開度θは30%以上になり、吸気量Qinが比較的多くなった。このため、排気系温度カウンタ値推定部42は、排気系温度カウンタ値CTを10加算する(周期T14)。
【0081】
その後、車両10の走行路が下り坂となり、ドライバは、アクセルペダルの踏み込みをやめたが、エンジン1の回転数Neはクランキング回転数Ne1よりも高くなっている。つまり、このとき、燃料カット制御部43は、燃料カット条件として上述した条件(5)と条件(6)とが満たされと判定し、燃料カット制御を実行した(周期T16〜T17)。このため、カウンタ値補正部44は、周期T16から周期T17までの間、排気系温度カウンタ値CTを第2度合R2(R2=10)ずつ減算補正している。もっとも、上述のように、排気系温度カウンタ値CTの下限値は0であるので、周期T16から周期T17までの間、排気系温度カウンタ値CTは0のまま維持されている。
【0082】
その後、車両10の走行路が登り坂となり、ドライバは、車両1を加速させるべくアクセルペダルを踏込み、アクセルペダル踏み込み量Accが増大した。このとき、スロットルバルブ開度θは30%以上になり、吸気量Qinが比較的多くなった。このため、排気系温度カウンタ値推定部42は、排気系温度カウンタ値CTを10加算している(周期T18)。
【0083】
このように、本発明の一実施形態に係る蒸発燃料パージの制御装置によれば、
エンジン1が自動停止している期間に応じて減算補正される排気系温度カウンタ値CTが下限閾値CTth以下であって、且つ、エンジン1が自動再始動された場合、即ち、パージ条件が満たされた場合には、キャニスタ33で蓄えられた蒸発ガソリンEGASを速やかにエンジン1へパージすることが可能となる。
【0084】
つまり、エンジン1の始動が自動再始動ではなかった場合は、長期間に亘ってエンジン1が停止しており、排気系の温度が低くなっている可能性が高く、エンジン挙動は不安定であることが想定される。このような状態のエンジン1へ蒸発ガソリンを供給することで吸気空燃比をリッチ化した場合、エンジン挙動がより不安定になるおそれがある。
また、排気系温度カウンタ値CTが低い場合には、三元触媒27や上流O2センサ28および下流O2センサ29が活性化していない可能性が高くなる。このような状態の三元触媒27や上流O2センサ28および下流O2センサ29へリッチ化された排ガスが供給されると、排ガスの浄化が十分に行なわれず、また、排ガス空燃比に基づくエンジン1の燃料噴射量のフィードバック制御の精度が低下してしまうおそれがある。
【0085】
一方、エンジン1の始動が自動再始動であった場合は、エンジン1が短い期間しか停止しておらず、エンジン挙動が安定している可能性が高い。また、排気系温度カウンタ値CTが高い場合には、三元触媒27や上流O2センサ28および下流O2センサ29が活性化している可能性が高くなる。
このように、排気系の温度およびエンジン1の始動形態を考慮しながらキャニスタ33に蓄えられた蒸発ガソリンEGASのパージを制御することで、キャニスタ33の小型化を実現しながら、排ガス性能の向上を図ることが出来る。
【0086】
なお、アイドルストップ制御が行われる場合は、アイドルストップ制御を行なわない場合に比べ、蒸発燃料パージ制御を実行するチャンスが減ることが一般的である。つまり、アイドルストップ制御を行なわない場合は、エンジン1がアイドル運転する機会は頻繁に訪れるが、アイドルストップ制御が行われる場合、エンジン1はアイドル運転する代わりに自動停止してしまうのである。もちろん、これにより、エンジン1から排出される排ガス量を低減し、エンジン1の燃費を向上させるという優れたメリットが得られるのであるが、蒸発燃料パージ制御の観点からはデメリットもある。つまり、エンジン1がアイドル運転する機会が減ったことによって、キャニスタ33に蓄えられた蒸発ガソリンEGASをエンジン1へ放出させる機会が減ってしまうのである。
【0087】
これに対して、本実施形態に係る本発明によれば、エンジン1がマニュアル始動された場合に比べて、エンジン1が自動再始動した場合は、蒸発燃料パージ制御を素早く実行することで、キャニスタ33に蓄えられた蒸発ガソリンEGASを出来るだけ頻繁にエンジン1へパージできるようになっているのである。
そして、蒸発燃料パージ制御を頻繁に実行することで、キャニスタ33に求められる蒸発ガソリンEGASの蓄積容量を低減することが可能となり、キャニスタ33の小型化を実現し、車両10の限られたスペースを有効に活用することが出来る。
【0088】
また、単にエンジン1が自動再始動したことをもって蒸発燃料パージ制御の実行を早期化するのではなく、排気系温度カウンタ値CT、即ち、排気系の温度を考慮した上で、蒸発燃料パージ制御の実行を早期化するので、排ガス性能が低下することを防ぐことが出来る。
また、蒸発燃料パージ制御部56は、三元触媒27の活性化温度に相当する値を排気系温度カウンタ値CTの下限温度閾値CTthとして設定するようになっている。
【0089】
これにより、三元触媒27が活性化していることをパージ条件の成立要件の1つとすることが可能となり、蒸発燃料パージ制御を実行しても、大気へ放出される排ガスの性能が低下する事態を防ぐことが出来る。
また、該蒸発燃料パージ制御部56は、上流O2センサ28の活性化温度に相当する値を下限温度閾値CTthとして設定するようになっている。
【0090】
これにより、上流O2センサ28が活性化していることをパージ条件の成立要件の1つとすることが可能となり、蒸発燃料パージ制御を実行しても、パージされた蒸発ガソリンEGASを加味したエンジン1の燃料噴射量の調整が出来る。そして、大気へ放出される排ガスの性能が低下する事態を防ぐことが出来る。
さらに、活性化することで検出精度が向上した上流O2センサ28の検出結果に基づいた、フィードバック噴射制御部47によるフィードバック噴射制御を、速やかに実行することが可能となり、排ガス性能の向上に寄与することが出来る。
【0091】
また、排気系温度カウンタ値推定部42により、排気系の温度を示す値(即ち、排気系温度カウンタ値CT)を、特殊なセンサや複雑な演算手法を用いずに、精度よく推定することが出来るので、ECU40の演算負荷やコストの増大を抑制することも出来る。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが出来る。その例を以下に示す。
【0092】
上述の実施形態においては、エアフローセンサ20により吸気量Qinを検出する場合について説明したが、このような場合に限定するものではない。例えば、エアフローセンサ20の代わりに、吸気マニホールド圧センサ18によって検出された吸気マニホールド15内の気圧Pinに基づいて、吸気量Qinを推定しても良い。
また、上述の実施形態においては、燃料噴射弁21が吸気ポート5内に燃料を噴射する場合について説明したが、エンジン1がこのような燃料噴射方式、即ち、ポート噴射方式を採用したものに限定するものではない。例えば、エンジン1が、シリンダ3の燃焼室内に燃料を噴射する方式、即ち、直噴方式を採用したものであってもよい。
【0093】
また、上述の実施形態においては、エンジン1が自然吸気方式のものである場合について説明したが、これに限定するものではない。例えば、エンジン1がターボチャージャやスーパーチャージャといった過給機を備えたものであってもよい。
また、上述の実施形態においては、ストップランプスイッチ(図示略)によってブレーキペダル(図示略)が踏み込まれているか否かが検出される場合について説明したが、これに限定するものではない。例えば、ブレーキペダルの変位量(即ち、踏込量)を検出するブレーキペダルポジションセンサを用いても良い。
【0094】
また、上述の実施形態においては、車両10に遊星歯車機構のオートマチックトランスミッションが搭載されている場合を説明したが、これに限定するものではない。例えば、CVT(Continuously Variable Transmission)を有するオートマチックトランスミッションであってもよいし、オートマチックトランスミッションに換えてマニュアルトランスミッションを用いるようにしてもよい。なお、車両10にマニュアルトランスミッションを搭載した場合、上述した条件(1)〜(3)に換えて、以下の条件(1a)〜(3a)を自動停止条件の一部として設定すればよい。そして、アイドル制御部41が、以下の条件(1a)〜(3a)が満たされた場合に、自動停止条件が満たされたと判定するようにすればよい。
【0095】
条件(1a): シフトレバーがニュートラルポジションにある
条件(2a): クラッチペダルが解放されている
条件(3a): 車速Vsがゼロである
また、車両10にマニュアルトランスミッションを搭載した場合、上述した条件(4)に換えて、以下の条件(4a)を自動再始動条件として設定すればよい。そして、アイドル制御部41が、以下の条件(4a)が満たされた場合に、自動再始動条件が満たされたと判定するようにすればよい。
【0096】
条件(4a): クラッチペダルが踏み込まれた
また、上述の実施形態においては、アイドル制御部41が、上記の条件(1)〜(3)が満たされれば、自動停止条件が満たされたと判定するようになっている場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、以下の条件(9)および(10)が満たされると、自動停止条件が満たされたと判定されるようにしても良い。
【0097】
条件(9): 車速Vsがゼロである
条件(10): シフトレバーがパーキング(P)またはニュートラル(N)ポジションにある
また、上述の実施形態においては、アイドル制御部41が、上記の条件(4)が満たされれば、自動再始動条件が満たされたと判定するようになっている場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、上記の条件(9)および(10)が満たされたことにより、エンジン1が自動停止した場合には、以下の条件(11)および(12)が満たされると、自動再始動条件が満たされたと判定されるようにしても良い。
【0098】
条件(11): ストップランプスイッチがオン
条件(12): シフトレバーがドライブ(D),リバース(R),セカンド(2nd)またはファースト(1st)ポジションに変更された
また、上述の実施形態においては、上記の条件(5)および(6)の両方が満たされた場合に燃料カット制御部43が燃料カット制御を実行する場合について説明したが、これは、車両10が減速する場合に実行される燃料カット制御(いわゆる、減速時燃料カット)であって、これに限定するものではない。例えば、燃料カット制御として、エンジン1が過回転することを抑制するための燃料カット制御(いわゆる、オーバーレボカット)が実行されるようにしてもよい。
【0099】
また、上述の実施形態においては、第1度合R1,第2度合R2および第3度合R3が式(A)の関係を満たすように規定されている場合について説明したが、これに限定するものではない。例えば、第1度合R1と第3度合R3とを同じ値とする、即ち、R3=R1<R2という関係を満たすように第1度合R1,第2度合R2および第3度合R3を規定してもよい。
【0100】
また、上述の実施形態においては、触媒劣化推定部45が、条件(7)または条件(8)の双方が満たされれば、触媒推定実行条件が満たされたと判定するようになっている場合について説明したが、これに限定するものではなく、種々のカスタマイズが可能である。
また、上述の実施形態においては、車両10のドライバがシリンダキー(図示略)をイグニッションポジションまで回転させることで作動したスタータモータによるクランキングによるエンジン1の始動をマニュアル始動という場合を説明した。しかしながら、シリンダキーに代えて、エンジンスタートボタン(図示略)を車両10に設けるようにする場合もあり得る。この場合、エンジンスタートボタンが押下されたことによるクランキングでエンジン1が始動した場合もマニュアル始動に該当する。つまり、シリンダキーおよびエンジンスタートボタンは、エンジン1をマニュアル始動させる手段(マニュアル始動手段)に該当する。
【0101】
また、上述の実施形態においては、図2のフローチャートに示すように、燃料カット条件が成立したか否か(ステップS13)の判定を行なったあとで、自動停止条件が成立したか否か(ステップS16)の判定、および、自動再始動条件が成立したか否か(ステップS19)の判定を行なう場合について説明したが、このような順番に限定されるものではない。
【0102】
また、上述の実施形態の上流O2センサ28および下流O2センサ29に代えて、LAFS(Linear A/F Sensor)を用いるようにしてもよい。
また、上述の実施形態においては、排気系温度カウンタ値CTは、エンジン1の排気系の温度を模擬的に示す指標として用いた場合を説明したがこれに限定するものではない。例えば、排気系に設けられた触媒や、排気系に設けられた部品の温度を仮想的に示す指標としてこの排気系温度カウンタ値CTを用いても良い。
【0103】
また、上述の実施形態においては、排気系の温度が上昇するに連れて、排気系温度カウンタ値CTが大きくなる場合について説明したが、これとは逆に、排気系の温度が上昇するに連れて、排気系温度カウンタ値CTが小さくなるようにしてもよい。この場合、上述した劣化推定禁止部46が、排気系温度カウンタ値CTが排気系温度閾値CTth以上である場合、触媒劣化推定制御条件(即ち、上記の条件(7)および条件(8))が満たされていたとしても、触媒劣化推定部45による劣化推定制御の実行を禁止するようにすればよい。
【0104】
上述の実施形態においては、エンジン1が燃料タンク31に蓄えられたガソリンLGASを用いるガソリンエンジンである場合について説明したが、軽油を用いるディーゼルエンジンや、アルコールとガソリンとの混合燃料を用いるアルコール対応エンジンであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、車両の製造産業を中心に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0106】
1 エンジン
10 車両
20 エアフローセンサ(吸気量検出手段)
25 排気マニホールド(排気系)
26 排気管(排気系)
27 三元触媒(排気系)
28 上流Oセンサ(排ガス空燃比センサ)
29 下流Oセンサ(排ガス空燃比センサ)
31 燃料タンク
33 キャニスタ
41 アイドル制御部(自動停止再始動手段)
42 排気系温度カウンタ値推定部(排気系温度指標値推定手段)
44 カウンタ値補正部(温度指標値補正手段)
56 蒸発燃料パージ制御部(蒸発燃料パージ制御手段)
AF1 三元触媒の上流側の排ガス空燃比(排ガス空燃比)
AF2 三元触媒の下流側の排ガス空燃比(排ガス空燃比)
CT 排気系温度カウンタ値(排気系温度指標値)
CTth 下限閾値
GAS 蒸発ガソリン(蒸発燃料)
Finj エンジンの燃料噴射量
Qin エンジンの吸気量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたエンジンに供給される燃料を蓄える燃料タンクと、
該燃料タンク内で蒸発した蒸発燃料を蓄えるキャニスタと、
所定のパージ条件が成立すると該キャニスタに蓄えられた該蒸発燃料を該エンジンへ放出させる蒸発燃料パージ制御を実行する蒸発燃料パージ制御手段と、
自動停止条件が成立すると該エンジンを自動停止させ、該自動停止後に自動再始動条件が成立すると該エンジンを自動再始動させる自動停止再始動手段と、
該エンジンの排気系の温度に相関する排気系温度指標値を推定する排気系温度指標値推定手段と、
該自動停止再始動手段によって該エンジンが自動停止している間は該排気系温度指標値設定手段により設定された該排気系温度指標値を減算補正する温度指標値補正手段とを備え、
該蒸発燃料パージ制御手段は、
該蒸発燃料パージ条件として、該自動停止再始動手段により該エンジンが自動再始動され且つ該温度指標値補正手段により補正された該排気系温度指標値が閾値を上回っているであることを設定し、
該燃料パージ条件が満たされない場合には、該蒸発燃料パージ制御の実行を制限する
ことを特徴とする、蒸発燃料パージの制御装置。
【請求項2】
該排気系は、
該エンジンから排出された排ガスを浄化する排ガス浄化触媒を有し、
該蒸発燃料パージ制御手段は、
該排ガス浄化触媒の活性化温度を該閾値として設定する
ことを特徴とする、請求項1記載の蒸発燃料パージの制御装置。
【請求項3】
該エンジンから排出された排ガスの空燃比を検出する排ガス空燃比センサと、
該排ガス空燃比センサにより検出された該排ガス空燃比に基づいて該エンジンの燃料噴射量を調整するフィードバック噴射制御を実行するフィードバック噴射制御実行手段とをさらに備え、
該蒸発燃料パージ制御手段は、
該排ガス空燃比センサの活性化温度を該閾値として設定する
ことを特徴とする、請求項1または2記載の蒸発燃料パージの制御装置。
【請求項4】
該エンジンの吸気量を検出する吸気量検出手段をさらに備え、
該排気系温度指標値推定手段は、
該吸気量検出手段により検出された該エンジンの吸気量に応じて該排気系温度指標値を推定する
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の蒸発燃料パージの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−185387(P2010−185387A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30524(P2009−30524)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】