説明

蒸着方法及び蒸着装置

【課題】基板を搬送しながら行う蒸着において、蒸着位置精度を向上して緻密なパターンの形成を可能にする。
【解決手段】蒸着マスク16R,16G,16Bによる蒸着位置の基板の搬送方向手前側の位置を撮像可能に設けられた撮像手段4により、蒸着マスク16Bに形成されたアライメントマークと有機EL表示用基板9表面に予め形成されたピクセルとを撮像し、該撮像画像に基づいてアライメントマークの基準位置とピクセルの基準位置との間の位置ずれ量を検出し、該位置ずれ量が所定値となるようにアライメント手段5により蒸着マスク16R,16G,16Bを上記基板面に平行な面内にて搬送方向と略直交する方向に移動して位置合わせしながら、搬送中の有機EL表示用基板9のピクセル上に所定のパターンを蒸着して形成するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を搬送しながら、該基板に対向して配置された蒸着マスクの開口部を通して基板表面に蒸着材料を蒸着して所定のパターンを形成する蒸着方法に関し、詳しくは、蒸着位置精度を向上して緻密なパターンの形成を可能にしようとする蒸着方法及び蒸着装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の蒸着方法は、基板の面積より面積が小さい蒸着マスクを使用し、基板を蒸着マスクに対して一方向に相対的に移動させながら、蒸着源から蒸発された蒸着材料を蒸着マスクの開口部を通して基板上に蒸着し、基板の全面に所望の蒸着パターンを形成するものとなっていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−297562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような従来の蒸着方法においては、相対的に移動中の基板に対して蒸着マスクを位置合わせしながら蒸着するものではなかったので、移動機構の機械精度に基づいて相対移動中の基板に発生する移動方向に略直交する方向の位置ずれを補正することができず、蒸着位置精度を向上することができなかった。したがって、基板を相対移動しながら、緻密なパターンを蒸着して形成することができず、例えば高精細な有機EL表示装置を製造することができなかった。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、蒸着位置精度を向上して緻密なパターンの形成を可能にしようとする蒸着方法及び蒸着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明による蒸着方法は、基板を搬送しながら、該基板に対向して配置された蒸着マスクの開口部を通して前記基板表面に蒸着材料を蒸着して所定のパターンを形成する蒸着方法であって、前記蒸着マスクによる蒸着位置の前記基板の搬送方向手前側の位置を撮像可能に設けられた撮像手段により、前記蒸着マスクに形成されたアライメントマークと前記基板表面に予め形成された基準パターンとを撮像し、前記撮像画像に基づいて前記アライメントマークの基準位置と前記基準パターンの基準位置との間の位置ずれ量を検出し、該位置ずれ量が所定値となるように前記蒸着マスクを前記基板面に平行な面内にて前記搬送方向と略直交する方向に移動して位置合わせしながら、前記基準パターン上に前記所定のパターンを蒸着形成するものである。
【0007】
また、前記基板は、有機EL表示用基板である。これにより、搬送中の有機EL表示用基板に対して蒸着マスクを位置合わせしながら、蒸着を実行する。
【0008】
また、本発明による蒸着装置は、基板を搬送しながら、該基板に対向して配置された蒸着マスクの開口部を通して前記基板表面に蒸着材料を蒸着して所定のパターンを形成する蒸着装置であって、真空チャンバ内部に、前記基板を搬送する搬送手段と、前記搬送手段の下方に設けられ、上端部を開口し前記基板の搬送方向に略直交する方向に長軸を有する箱体の内部に蒸着材料を加熱して溶融させるルツボを有し、さらに前記箱体の上端部に前記箱体の長軸方向に複数の開口部を所定間隔で並設した前記蒸着マスクを配設した蒸着源ユニットと、前記蒸着マスクによる蒸着位置の前記基板の搬送方向手前側の位置を撮像可能に設けられ、前記蒸着マスクに形成されたアライメントマークと前記基板表面に予め形成された基準パターンとを撮像する撮像手段と、前記撮像手段による撮像画像に基づいて検出された前記アライメントマークの基準位置と前記基準パターンの基準位置との間の位置ずれ量が所定値となるように前記蒸着マスクを前記基板面に平行な面内にて前記搬送方向と略直交する方向に移動して位置合わせするアライメント手段と、を備えたものである。
【0009】
このような構成により、真空チャンバ内部で、搬送手段により蒸着マスクに対向して基板を搬送しながら、搬送手段の下方に設けられた蒸着源ユニットの箱体の内部に有するルツボで蒸着材料を溶融させ、箱体の上端部に配設され箱体の長軸方向に複数の開口部を所定間隔で並設した蒸着マスクの上記開口部を通して基板表面に蒸着材料を蒸着して所定のパターンを形成する。その際、蒸着マスクによる蒸着位置の基板の搬送方向手前側の位置を撮像可能に設けられた撮像手段により蒸着マスクに形成されたアライメントマークと基板表面に予め形成された基準パターンとを撮像し、撮像手段による撮像画像に基づいて検出されたアライメントマークの基準位置と基準パターンの基準位置との間の位置ずれ量が所定値となるようにアライメント手段で蒸着マスクを基板面に平行な面内にて搬送方向と略直交する方向に移動して位置合わせする。
【0010】
さらに、前記蒸着源ユニットは、長軸方向の長さの短い複数の単位蒸着源ユニットを前記基板の搬送方向に略直交方向に一直線状に並べて所定長さに形成されたものである。これにより、長軸方向の長さの短い複数の単位蒸着源ユニットを基板の搬送方向に略直交方向に一直線状に並べて所定長さに形成された蒸着源ユニットで基板表面に蒸着材料を蒸着する。
【0011】
そして、前記蒸着源ユニットは、長軸方向の長さの短い複数の単位蒸着源ユニットを前記基板の搬送方向に略直交方向に互い違いに並べて所定長さに形成されたものである。これにより、長軸方向の長さの短い複数の単位蒸着源ユニットを基板の搬送方向に略直交方向に互い違いに並べて所定長さに形成された蒸着源ユニットで基板表面に蒸着材料を蒸着する。
【0012】
また、前記蒸着源ユニットは、前記基板の搬送方向に所定間隔で複数並設され、複数種の蒸着材料を同時に蒸着可能に形成されたものである。これにより、基板の搬送方向に所定間隔で並設された複数の蒸着源ユニットで複数種の蒸着材料を同時に蒸着する。
【0013】
さらに、前記蒸着マスクは、前記蒸着源ユニットの前記箱体の側面から前記基板の搬送方向手前側に突出させて片部を有し、該片部に前記アライメントマークを形成したものである。これにより、蒸着源ユニットの箱体の側面から基板の搬送方向手前側に突出した蒸着マスクの片部に形成されたアライメントマークにより、蒸着マスクの開口部と基板の基準パターンとの位置合わせをする。
【0014】
さらにまた、前記撮像手段は、走査型電子顕微鏡である。これにより、走査型電子顕微鏡で蒸着マスクのアライメントマークと基板の基準パターンを撮像する。
【0015】
そして、前記基板は、有機EL表示用基板である。これにより、搬送中の有機EL表示用基板に対して蒸着マスクを位置合わせしながら、蒸着を実行する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1又は3に係る発明によれば、搬送中の基板に対して蒸着マスクの位置合わせをしながら蒸着することができる。したがって、蒸着位置精度を向上して緻密なパターンを形成することができる。
【0017】
また、請求項2又は9に係る発明によれば、搬送中の有機EL表示用基板に対して蒸着マスクを位置合わせしながら蒸着をすることができる。したがって、大型の有機EL表示用基板に対する発光層の蒸着形成を能率よく且つ高精度に行なうことができ、高精細な有機EL表示装置の製造を容易にすることができる。
【0018】
さらに、請求項4又は5に係る発明によれば、蒸着マスクの長軸方向の長さを短くして熱膨張による開口部の位置ずれを抑制することができる。したがって、蒸着位置精度をより向上することができる。
【0019】
また、請求項6に係る発明によれば、複数種の蒸着材料を同時に蒸着することができる。したがって、蒸着工程のタクトを短縮することができる。
【0020】
さらに、請求項7に係る発明によれば、撮像手段によるアライメントマークの撮像が容易になると共に、蒸着マスクのアライメントマークと開口部とを同時に加工することができ、両者を所定の位置関係に高精度に形成することができる。したがって、蒸着位置精度をより一層向上することができる。
【0021】
そして、請求項8に係る発明によれば、焦点深度が深くなり、高さ位置の異なる蒸着マスクのアライメントマークと基板の基準パターンとを同時にフォーカスさせて撮像することができる。したがって、蒸着マスクと基板との位置合わせをより高精度に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による蒸着装置の実施形態の概略構成を示す正面図である。
【図2】上記実施形態に使用する有機EL表示用基板の平面図である。
【図3】上記有機EL表示用基板を保持する保持部材を示す図であり、(a)は平面図、(b)は要部拡大断面図である。
【図4】上記実施形態に使用する蒸着源ユニットを示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のO−O線断面図である。
【図5】有機EL表示用基板に形成された発光層のパターンを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明による蒸着装置の実施形態の概略構成を示す正面図である。この蒸着装置は、基板を搬送しながら、該基板に対向して配置された蒸着マスクの開口部を通して基板表面に蒸着材料を蒸着して所定のパターンを形成するもので、真空チャンバ1内に、搬送手段2と、蒸着源ユニット3R,3G,3Bと、撮像手段4と、アライメント手段5とを備えている。
【0024】
ここで使用する基板は、図2に示すように、複数のゲート信号線6とドレイン信号線7との交差部に有機EL駆動用TFT24を形成し、ゲート信号線6とドレイン信号線7に囲まれた領域を表示画素(ピクセル8)としてマトリクス状に有する有機EL表示用基板9であり、陽極電極上に発光層が未形成の基板である。
【0025】
上記搬送手段2は、基板保持部10に有機EL表示用基板9の複数のピクセル8(基準パターン)が形成された面を下側にして保持し、矢印A方向に一定速度で搬送するものであり、基板保持部10には、図3(a)に示すように有機EL表示用基板9を静電的に吸着して保持する複数の静電チャック11が分割して設けられている。また、この静電チャック11には、同図(b)に示すように、吸着面11aとは反対側の端面に例えば圧電素子12が設けられており、圧電素子12の高さを変位させて静電チャック11の突出量が同図に矢印で示すように制御できるようになっている。
【0026】
上記搬送手段2の下方には、三台の蒸着源ユニット3R,3G,3Bが基板の搬送方向に所定間隔で並設されている。これらの蒸着源ユニット3R,3G,3Bは、図4(b)に示すように、上端部を開口し、基板の搬送方向(矢印A方向)に略直交する方向に長軸を有する箱体13の内部に蒸着材料を加熱して溶融させるルツボ14を備え、同図(a)に示すように上記上端開口に対応して箱体13の長軸方向に複数の開口部15を所定間隔で並設した蒸着マスク16R,16G,16Bを撓みが生じないように長軸方向に引っ張った状態で箱体13に固定して配設したものであり、各蒸着源ユニット3のルツボ14内にそれぞれ赤(R)、緑(G)、青(B)の対応色の発光材料17R,17G,17B(蒸着材料)を収容し、蒸着マスク16R,16G,16Bに対して所定間隔(例えば、約50μm〜約100μmの間隔)で対向して搬送される有機EL表示用基板9にRGBの発光材料17R,17G,17Bを同時に蒸着することができるようになっている。この場合、蒸着マスク16R,16G,16B面と有機EL表示用基板9面との間隔は、公知の静電容量検出技術を適用して両面間の静電容量が所定値となるように制御するとよい。また、各蒸着源ユニット3R,3G,3Bの箱体13内に夫々複数のルツボ14を箱体13の長軸方向に所定間隔で並設すると共に、各ルツボ14に対応して蒸着マスク16R,16G,16B側に複数の水晶振動子を配置し、これらの水晶振動子により各ルツボ14の相対的な蒸着速度を検出しながら、蒸着源ユニット3R,3G,3Bの長軸方向の膜厚分布が均一になるように各ルツボ14の過熱温度を個別に制御するとよい。
【0027】
上記蒸着マスク16R,16G,16Bの具体的構成例は、図4(a)に示すように、長軸の長さが有機EL表示用基板9の搬送方向と略直交する方向の幅に略等しく、有機EL表示用基板9よりも形状の小さい短冊状の金属板からなり、その長軸方向に一直線状に並べて矩形状の複数の開口部15が形成されている。より具体的には、隣接する開口部15の間隔は、図2に示す矢印Aで示す搬送方向に略直交する方向のピクセル8の配列ピッチPの3倍のピッチに等しい間隔となるようにされ、また、開口部15の並び方向の幅wは、図2に示す矢印A方向と直交する方向のピクセル8の幅と略同じ幅に形成されている。さらに、矢印A方向に並設された三つの蒸着マスク16R,16G,16Bは、隣接する蒸着マスクの開口部15が矢印A方向と直交方向に、同方向のピクセル8の配列ピッチPの1ピッチ分だけずれて配置されている。さらにまた、矢印Aで示す基板搬送方向の最も手前側に位置する蒸着マスク16Bには、図4(b)に示すように蒸着源ユニット3Bの箱体13の側面から基板の搬送方向手前側に突出して片部18が形成され、該片部18に上記開口部15と所定の位置関係をなして有機EL表示用基板9との位置合わせ用のアライメントマーク19が形成されている。そして、蒸着マスク16R,16G,16Bの上面が同一平面を成すように蒸着源ユニット3R,3G,3Bの高さが調整されている。
【0028】
また、上記蒸着源ユニット3R,3G,3Bの箱体13と蒸着マスク16R,16G,16Bとの間には、蒸着マスク16の縁部に沿ってヒートパイプ20が設けられており、蒸着マスク16R,16G,16Bを冷却して蒸着マスク16R,16G,16Bの熱膨張による開口部15の位置ずれを抑制できるようにしている。さらに、蒸着源ユニット3R,3G,3Bには、上記ルツボ14と蒸着マスク16R,16G,16Bとの間にシャッタ21が開閉可能に設けられており、蒸着時には、シャッタ21を開いて発光材料17R,17G,17Bの蒸着を可能にし、蒸着時以外は、シャッタ21を閉じて発光材料17R,17G,17Bの蒸着を阻止するようになっている。なお、図4(b)において、蒸着源ユニット3Rは、シャッタ21が閉じた状態を示し、蒸着源ユニット3G,3Bはシャッタ21が開いた状態を示している。
【0029】
さらに、上記蒸着源ユニット3Bの箱体13の矢印Aで示す搬送方向手前側の側面には、その長軸方向に所定間隔で並べて複数のレーザ変位計22が設けられている。これらのレーザ変位計22は、搬送される有機EL表示用基板9表面の平坦度を計測するためのものであり、各計測結果を対応する上記複数の静電チャック11にフィードバックし、蒸着マスク16Bに対向した領域の複数の静電チャック11の圧電素子12を個別に駆動して各静電チャック11の突出量を制御し、蒸着マスク16R,16G,16Bに対向した領域の有機EL表示用基板9表面の平坦度を略均一にすることができるようになっている。
【0030】
上記蒸着マスク16R,16G,16Bによる蒸着位置の基板の搬送方向手前側の位置を撮像可能に撮像手段4が設けられている。この撮像手段4は、蒸着マスク16Bに形成されたアライメントマーク19と有機EL表示用基板9のピクセル8とを撮像するもので、搬送手段2の下側にて上記蒸着マスク16Bの二つの片部18に対応して二台設けられており、矢印A方向と略直交方向に電子ビームを走査する走査型電子顕微鏡である。
【0031】
上記蒸着マスク16R,16G,16Bを撮像手段4と一体的に有機EL表示用基板9面に平行な面内にて矢印Aで示す搬送方向と略直交する方向(図1において、手前から奥に向かう方向)に移動可能にアライメント手段5が設けられている。このアライメント手段5は、撮像手段4による撮像画像に基づいて検出された蒸着マスク16Bのアライメントマーク19の基準位置とピクセル8の基準位置との間の位置ずれ量が所定値となるように位置ずれ補正すると共に、蒸着マスク16R,16G,16Bと有機EL表示用基板9と間の隙間を所定値に維持するためのもので、有機EL表示用基板9がヨーイング及びピッチングしながら搬送されても有機EL表示用基板9の動きに追従して蒸着源ユニット3R,3G,3Bを移動して有機EL表示用基板9の所定位置に発光層のパターンを形成可能とするものである。
【0032】
具体的には、アライメント手段5は、蒸着源ユニット3R,3G,3Bを基板の搬送方向に対して前後及び左右に移動させると共に、真ん中の蒸着源ユニット3Gの中心を軸にして有機EL表示用基板9の面に平行な面内を所定角度だけ回転させ、さらには、上下動させて蒸着マスク16R,16G,16Bと有機EL表示用基板9との位置ずれ補正及び両者間の隙間を一定に保持することができるように構成されている。
【0033】
次に、このように構成された蒸着装置の動作及び該蒸着装置を使用して行う蒸着方法について説明する。
先ず、ピクセル8を形成した面とは反対面が搬送手段2の基板保持部10に設けられた複数の静電チャック11に吸着されて、有機EL表示用基板9が矢印A方向に一定速度で搬送される。
【0034】
基板の搬送方向先頭部が撮像手段4の上方位置に達すると、撮像手段4による基板表面と蒸着マスク16Bのアライメントマーク19との撮像が開始され、取得された撮像画像を図示省略の画像処理部において画像処理して、有機EL表示用基板9のピクセル8の基準位置(例えば、基板の搬送方向に平行な図2に示すドレイン信号線7の左側縁部)及び蒸着マスク16Bのアライメントマーク19の基準位置(例えば、基板の搬送方向に平行な左側縁部)が検出され、両者間の距離が計測される。
【0035】
この場合、先ず、有機EL表示用基板9が所定距離だけ搬送される間に、基板搬送方向に略直交する方向へずれるピクセル8の基準位置のずれ量を検出し、上記有機EL表示用基板9の移動距離と上記ピクセル8の基準位置のずれ量から有機EL表示用基板9の搬送方向に対する傾き角度を演算し、アライメント手段5を駆動して該角度だけ蒸着源ユニット3R,3G,3Bと撮像手段4とを一体的に回転する。こうして、有機EL表示用基板9の搬送方向の中心線に対して蒸着マスク16R,16G,16Bの同方向の中心線を平行に合わせる。
【0036】
次に、有機EL表示用基板9のピクセル8の基準位置と蒸着マスク16Bのアライメントマーク19の基準位置との間の距離が所定距離となるように、アライメント手段5により蒸着源ユニット3R,3G,3Bと撮像手段4とを一体的に基板搬送方向と略直交方向に移動する。これにより、三つの蒸着マスク16R,16G,16Bの各開口部15が有機EL表示用基板9の対応色のピクセル8と同位置に位置付けられる。
【0037】
さらに、有機EL表示用基板9が所定距離搬送されて基板の搬送方向先頭部が蒸着マスク16Bの上方に達すると蒸着マスク16Bと有機EL表示用基板9との間の静電容量を検出し、該静電容量が所定値となるようにアライメント手段5により蒸着源ユニット3を上下動して、蒸着マスク16Bと有機EL表示用基板9との隙間を約50μm〜約100μmに保つ動作が実行される。
【0038】
同時に、蒸着源ユニット3Bの箱体13の側面に設けた複数のレーザ変位計22により有機EL表示用基板9表面の平坦度を検出し、基板表面が平坦となるように基板裏面に設けられた各静電チャック11の突出量を制御する。これにより、蒸着マスク16B面とそれに対向した基板面との隙間が略全面に亘って均一になる。
【0039】
有機EL表示用基板9がさらに搬送されて基板の搬送方向先頭側の各ピクセル8が対応色の蒸着マスク16R,16G,16Bの開口部15の上方位置に達すると、各蒸着源ユニット3R,3G,3Bのシャッタ21を順次開いて蒸着を開始する。即ち、シャッタ21が開かれると、ルツボ14内で溶融した発光材料17R,17G,17Bが各蒸着マスク16R,16G,16Bの開口部15を通過可能となり、有機EL表示用基板9のピクセル8上に対応色の発光材料17R,17G,17Bが蒸着される。なお、基板の移動距離は、搬送手段2に備えた図示省略の位置センサーの出力に基づいて算出される。また、シャッタ21の開閉は、上記基板の移動距離とメモリに保存された設定値とを比較し、両者が一致したタイミングで行われる。
【0040】
以降、有機EL表示用基板9を搬送しながら、上述のようにして、アライメント手段5を駆動して蒸着源ユニット3R,3G,3Bを移動し、蒸着マスク16R,16G,16Bを有機EL表示用基板9のヨーイング及びピッチングに追従させて蒸着が実行される。これにより、各色の発光材料17R,17G,17Bが対応色のピクセル8上に精度良く蒸着され、図5に示すようにストライプ状のRGB発光層のパターン23R,23G,23Bが形成されることになる。
【0041】
なお、上記実施形態においては、有機EL表示用基板9の幅に略等しい長さの蒸着源ユニット3R,3G,3Bを夫々一つ配置した場合について説明したが、本発明はこれに限られず、蒸着源ユニットは、有機EL表示用基板9の搬送方向と直交方向の幅よりも長さの短い複数の単位蒸着源ユニットを基板の搬送方向に略直交方向に一直線状に並べて形成したものであってもよく、又は基板の搬送方向に略直交方向に互い違いに並べて形成したものであってもよい。
【0042】
また、上記実施形態においては、蒸着源ユニット3R,3G,3Bを三つ備えたものである場合について説明したが、本発明はこれに限られず、蒸着源ユニットは一つでもよく、個数は限定されない。
【0043】
さらに、上記実施形態においては、撮像手段4が走査型電子顕微鏡である場合について説明したが、本発明はこれに限られず、撮像手段4は、ラインカメラでもよい。この場合、ラインカメラは、複数の受光素子が基板搬送方向と略直交方向に一直線状に並ぶように配置するとよい。
【0044】
そして、以上の説明においては、基板が有機EL表示用基板9である場合について述べたが、本発明はこれに限られず、基板は、ストライプ状の蒸着パターンを形成しようとするものであれば如何なるものであってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…真空チャンバ
2…搬送手段
3R,3G,3B…蒸着源ユニット
4…撮像手段
5…アライメント手段
8…ピクセル(基準パターン)
9…有機EL表示用基板
13…箱体
14…ルツボ
15…開口部
16R,16G,16B…蒸着マスク
17R,17G,17B…発光材料(蒸着材料)
18…片部
19…アライメントマーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送しながら、該基板に対向して配置された蒸着マスクの開口部を通して前記基板表面に蒸着材料を蒸着して所定のパターンを形成する蒸着方法であって、
前記蒸着マスクによる蒸着位置の前記基板の搬送方向手前側の位置を撮像可能に設けられた撮像手段により、前記蒸着マスクに形成されたアライメントマークと前記基板表面に予め形成された基準パターンとを撮像し、
前記撮像画像に基づいて前記アライメントマークの基準位置と前記基準パターンの基準位置との間の位置ずれ量を検出し、該位置ずれ量が所定値となるように前記蒸着マスクを前記基板面に平行な面内にて前記搬送方向と略直交する方向に移動して位置合わせしながら、前記基準パターン上に前記所定のパターンを蒸着形成する、
ことを特徴とする蒸着方法。
【請求項2】
前記基板は、有機EL表示用基板であることを特徴とする請求項1記載の蒸着方法。
【請求項3】
基板を搬送しながら、該基板に対向して配置された蒸着マスクの開口部を通して前記基板表面に蒸着材料を蒸着して所定のパターンを形成する蒸着装置であって、
真空チャンバ内部に、
前記基板を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段の下方に設けられ、上端部を開口し前記基板の搬送方向に略直交する方向に長軸を有する箱体の内部に蒸着材料を加熱して溶融させるルツボを有し、さらに前記箱体の上端部に前記箱体の長軸方向に複数の開口部を所定間隔で並設した前記蒸着マスクを配設した蒸着源ユニットと、
前記蒸着マスクによる蒸着位置の前記基板の搬送方向手前側の位置を撮像可能に設けられ、前記蒸着マスクに形成されたアライメントマークと前記基板表面に予め形成された基準パターンとを撮像する撮像手段と、
前記撮像手段による撮像画像に基づいて検出された前記アライメントマークの基準位置と前記基準パターンの基準位置との間の位置ずれ量が所定値となるように前記蒸着マスクを前記基板面に平行な面内にて前記搬送方向と略直交する方向に移動して位置合わせするアライメント手段と、
を備えたことを特徴とする蒸着装置。
【請求項4】
前記蒸着源ユニットは、長軸方向の長さの短い複数の単位蒸着源ユニットを前記基板の搬送方向に略直交方向に一直線状に並べて所定長さに形成されたものであることを特徴とする請求項3記載の蒸着装置。
【請求項5】
前記蒸着源ユニットは、長軸方向の長さの短い複数の単位蒸着源ユニットを前記基板の搬送方向に略直交方向に互い違いに並べて所定長さに形成されたものであることを特徴とする請求項3記載の蒸着装置。
【請求項6】
前記蒸着源ユニットは、前記基板の搬送方向に所定間隔で複数並設され、複数種の蒸着材料を同時に蒸着可能に形成されたことを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の蒸着装置。
【請求項7】
前記蒸着マスクは、前記蒸着源ユニットの前記箱体の側面から前記基板の搬送方向手前側に突出させて片部を有し、該片部に前記アライメントマークを形成したことを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載の蒸着装置。
【請求項8】
前記撮像手段は、走査型電子顕微鏡であることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項に記載の蒸着装置。
【請求項9】
前記基板は、有機EL表示用基板であることを特徴とする請求項3〜8のいずれか1項に記載の蒸着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−261081(P2010−261081A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113519(P2009−113519)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(500171707)株式会社ブイ・テクノロジー (283)
【Fターム(参考)】