説明

蒸着源並びに有機ELデバイス製造装置及び有機ELデバイス製造装置の運転方法

【課題】
本発明は、真空蒸着チャンバを開くときの待ち時間を短縮できる蒸着源又は前記蒸着源を用い稼働率の高い有機ELデバイス製造装置及び有機ELデバイス製造装置の運転方法を提供することである。
【解決手段】
内部に蒸着材料を内在する坩堝と、前記蒸着材料を加熱し蒸発・昇華させる加熱手段と、前記蒸発・昇華した前記蒸着材料を噴射する蒸着物噴射口とを有する蒸着源において、前記坩堝の外面のうち蒸着物噴射口ない外面と前記蒸発源の筐体との間に存在する部材の一部を除去可能な除去可能部を有することを第1の特徴とする。また、本発明は、前記除去可能部が移動した前記蒸発源の開口部に挿入可能であって内部に冷却材が供給され、前記冷却材を排出する坩堝冷却体と、前記坩堝冷却体を前記開口部に挿入する坩堝冷却体挿入手段とを有することを第2の特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着源並びに有機エレクトロルミネッセンス(以下有機ELという)デバイス製造装置及び有機ELデバイス装置の運転方法に係り、特に蒸着材料の損失の少ない蒸着源並びに有機ELデバイス製造装置及び有機ELデバイス装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELの共通電極層や有機発光層は、たとえば真空蒸着によって形成する。真空蒸着装置は、真空蒸着チャンバ内に設けた蒸着源の坩堝に貯留された蒸着材料をヒータで加熱し、坩堝の蒸着ノズルや開口部から噴射し、被処理基板に蒸着する。このような真空蒸着装置の例が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−281808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、真空蒸着装置は定期的なメインテナンス時又はトラブル発生時に真空蒸着チャンバを開く必要がある。その場合、蒸着源内の蒸着材料が真空中でヒータの加熱により高温にされているため、直ぐに開くとヒータが酸化する。そのために、直ぐに開くことができず約数時間程度待つ必要があり、非常に能率が悪い。
【0005】
従って、本発明の第1の目的は、真空蒸着チャンバを開くときの待ち時間を短縮できる蒸着源を提供することである。
また、本発明の第2の目的は、第1の目的を達成できる蒸着源を用い真空蒸着チャンバを開くときの待ち時間を短縮し、稼働率の高い有機ELデバイス製造装置及び有機ELデバイス製造装置の運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、少なくとも下記の特徴を有する。
本発明は、内部に蒸着材料を内在する坩堝と、前記蒸着材料を加熱し蒸発・昇華させる加熱手段と、前記蒸発・昇華した前記蒸着材料を噴射する蒸着物噴射口とを有する蒸着源において、前記坩堝の外面のうち蒸着物噴射口のない外面と前記蒸発源の筐体との間に存在する部材の一部を除去可能な除去可能部を有することを第1の特徴とする。
【0007】
また、本発明は、前記除去可能部を移動させる除去可動部移動手段を有することを第2の特徴とする。
さらに、本発明は、前記除去可能部が移動した前記蒸発源の開口部に挿入可能であって内部に冷却材が供給され、前記冷却材を排出する坩堝冷却体と、前記坩堝冷却体を前記開口部に挿入する坩堝冷却体挿入手段とを有することを第3の特徴とする。
【0008】
また、前記坩堝冷却体は、前記除去可能部が移動した前記蒸発源の開口部の形状又は前記開口部の形状と前記蒸着物噴射口のない外面との空間で形成される形状とを有することを第4の特徴とする。
さらに、本発明は、前記坩堝を長手方向に複数持つ形状に設けたことを第5の特徴とする。
【0009】
また、本発明は、蒸着材料を基板に蒸着する基板保持部を具備する真空蒸着チャンバと、前記基板を前記基板保持部に搬送する搬送手段とを有する有機ELデバイス製造装置において、第5の特徴に記載する蒸着源を保持する保持部を備え前記基板に沿って移動させる蒸着源走査手段を有することを第6の特徴とする。
さらに、本発明は、前記除去可動部移動手段を前記保持部に設けたことを第7の特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記坩堝冷却体は前記真空蒸着チャンバ内に存在し、一端が前記坩堝冷却体に接続され、前記真空蒸着チャンバの外から前記坩堝冷却体に冷却材を供給し、真空蒸着チャンバの外へ前記冷却材を排出する給排配管系と、前記給排配管系の他端が前記真空蒸着チャンバの外に設けた冷却材を供給し排出する給排設備とを有することを第8の特徴とする。
【0011】
さらに、本発明は、前記坩堝冷却体挿入手段は前記保持部に設けられたことを第9の特徴とする。
また、本発明は、前記坩堝冷却体挿入手段は前記真空蒸着チャンバ外に駆動部を設け、真空シールを介して前記坩堝冷却体との接続部を直線移動させて前記開口部に挿入させることを第10の特徴とする。
【0012】
さらに、本発明は、蒸着源内の坩堝に存在する蒸着材料を加熱し、蒸発・昇華するステップと、真空蒸着チャンバ内を開くステップとを有する有機ELデバイス製造装置の運転方法において、前記開くステップは、前記加熱を停止するステップと、坩堝の周囲を囲む部材の一部を除去するステップと、前記除去された開口部に冷却材が流れる坩堝冷却体を挿入するステップと、前記坩堝の温度が前記蒸発・昇華する温度以下なったときに前記坩堝冷却体に前記冷却材を流すステップと、を有することを第11の特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、真空蒸着チャンバを開くときの待ち時間を短縮できる蒸着源を提供できる。
【0014】
また、本発明によれば、第1の目的を達成できる蒸着源を用い真空蒸着チャンバを開くときの待ち時間を短縮し、稼働率の高い有機ELデバイス製造装置及び有機ELデバイス製造装置の運転方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態であるアライメントと蒸着を同一の真空蒸着チャンバ1で実現する有機ELデバイス製造装置を示す図である。
【図2】図1における真空搬送室と真空蒸着チャンバの構成の模式図と動作説明図である。
【図3】本発明の蒸着源7の実施形態の外観を示す模式図である。
【図4】各図は図3におけるA−A´断面からの矢視図を示す。また、各図は本実施形態の特徴を有する蒸着源の構成と、その蒸着源を冷却する手段である蒸着源冷却装置の基本構成とその動作とを示す図である。
【図5】本実施形態における蒸着源冷却装置の効果と直接冷却するタイミングを示す図である。
【図6】本実施形態における蒸着源冷却装置の第1の実施例を示す図である。
【図7】真空蒸着チャンバを開く時の処理フローを示す図である。
【図8】本実施形態における蒸着源冷却装置の第2の実施例を示す図である。
【図9】本実施形態における蒸着源冷却装置の第3の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
図1は、本発明の実施形態であるアライメントと蒸着を同一の真空蒸着チャンバ1で実現する有機ELデバイス製造装置100を示す。有機ELデバイス製造装置100は中心部に真空搬送ロボット5を持った多角形の真空搬送室2と、その周辺部に放射状に基板ストッカ室3や成膜室である真空蒸着チャンバ1を配置したクラスタ型の有機ELデバイス製造装置の構成を有している。各真空蒸着チャンバ1は基板6を保持する基板保持部9とマスク8とを有する。また、真空蒸着チャンバ1及び基板ストッカ室3と真空搬送室2との間には互いの真空を隔離するゲート弁10が設けられている。
【0017】
図2は、図1における真空搬送室2と真空蒸着チャンバ1の構成の模式図と動作説明図である。図2における真空搬送ロボット5は、全体を上下に移動可能(図示せず)で、左右に旋回可能な2リンク構造のアーム57を有し、その先端には基板搬送用の櫛歯状ハンド58を有する。
【0018】
一方、真空蒸着チャンバ1は、真空搬送ロボット5から搬入された基板6を保持する基板保持部9と、発光層を形成する蒸着材料を蒸発または昇華させ基板6に成膜させる蒸着源7と、蒸着源を上下方向移動させる蒸着源走査手段43、基板6への蒸着パターンを規定するマスク8とを有する。基板保持部9は、櫛歯状ハンド91と基板保持部9を旋回させて直立しているマスク8に正対させる基板旋回手段93とを有する。また真空蒸着チャンバ1は、マスク8の上部にマスク8と基板6とにそれぞれ存在するアライメントマーク85、84(引出図参照)を撮像するアライメントカメラ86と、その撮像結果に基づいてマスク8移動させるアライメント駆動部(図示せず)とを有する。
【0019】
このような構成によって、真空搬送ロボット5は基板ストッカ室3から基板を取出し、所定に真空蒸着チャンバ1の基板保持部9に搬入する。そして、真空蒸着チャンバ1では、搬入された基板6を基板旋回手段93でマスク8に正対させ、アライメントし、蒸着源7を上下させ基板6に蒸着する。蒸着後、基板6を水平状態に戻す。その後、真空搬送ロボット2により基板6を真空蒸着チャンバ1から搬出し、他の真空蒸着チャンバ1に搬入又は基板ストッカ室3に戻す。このような処理における基板6の搬出入おいて、各真空蒸着チャンバ1の処理に影響を与えないように関連するゲート弁10が制御される。
図3は本発明の蒸着源7の実施形態の外観を示す模式図である。図4の各図は、図3におけるA−A´断面からの矢視図を示す。また、図4の各図は、本実施形態の特徴を有する蒸着源7の構成と、その蒸着源7を冷却する手段である蒸着源冷却装置20の基本構成とその動作とを示す。なお、図3ではノズル(又は坩堝)が2個の例を示したが、ノズル(又は坩堝)は1個でも3個以上でもよい。
【0020】
図4(a)は真空蒸着チャンバ1が運転中で蒸着源7が基板に蒸着しているときの蒸着源7の状態を示す。図4(b)、図4(c)は、真空蒸着チャンバ1を開くときの蒸着源7の状態を示し、蒸着源の坩堝を冷却する蒸着源冷却装置20の動作を示す。
【0021】
まず、蒸着源7の構成、動作を説明する。蒸着源7は、その本体が図3に示すように4角柱(長方体)の形状を有し、その内部には坩堝71を長手方向に複数有する。各坩堝71の上下にはヒータ73を配置し、坩堝71に設けられた蒸着材料72を蒸着に適した所定の温度に加熱する。また、坩堝71の周囲には断熱機構74が取り囲むように設けられ、蒸着源7内の熱を外部に逃さず内側にこもるようにしている。さらに、断熱機構74の外周には遮熱のための蒸発源筐体75があり、断熱機構74から漏れた熱が外部に影響を与えないようになっている。
【0022】
また、蒸着源7は、坩堝71の外面のうち蒸着物噴射口である蒸着ノズルのない外面と蒸発源筐体75の間に存在する部材、本実施例では断熱機構74及び蒸発源筐体75の一部を除去可能な除去可能部76を有する。本実施形態では、蒸着ノズル78がある面を表面とすれば、除去可能部76を裏面に設けたが、坩堝71の下部に設けてもよい。なお、79は吸着ノズル78から噴射した蒸着材料72が蒸発源筐体75と断熱機構74との間及び断熱機構74と坩堝71との間に流入しないようにする防着板である。
【0023】
さらに、本実施形態では略4角柱の形状を有している蒸着源7を示したが、蒸着源にはその他の部材を周囲に設けることもあり、その概観が必ずしも4角柱などの角柱形状を有するとは限らない。
【0024】
このような構成によって、蒸着源7は、ヒータ73により蒸着材料を加熱して蒸発・昇華し、その蒸着ノズル78を4角柱の長手方向にライン状に複数並ぶ蒸着物噴射口部から噴射し、表示基板などの基板に蒸着させる。
【0025】
次に、真空蒸着チャンバ1を開くときの蒸着源7の状態と、蒸着源冷却装置20の基本構成とその動作を説明する。図4(b)に示すように、蒸着源冷却装置20は除去可能部76を、例えば矢印Gの方向に移動させる除去可動部移動手段22(図6参照)と、坩堝71を冷却する坩堝冷却体21iを備える坩堝冷却部21(図6参照)と、除去された除去可能部76の跡に形成された開口部77に坩堝冷却体21iを、例えば図4(c)に示す矢印Hのように回転させて開口部77に挿入する坩堝冷却体挿入手段23(図6参照)とを有する。本実施形態の蒸着源7は坩堝71と断熱機構74の間に隙間(空間)があるので、坩堝冷却体21iは、直接坩堝71を冷却するためにその分だけ凸状の形状を有する。
このような構成によって、真空蒸着チャンバ1を開くときに、直接坩堝71を冷却し、真空蒸着チャンバ1を開くことが可能な所定の温度まで短時間で冷却できる。図5は、その効果と直接冷却するタイミングを示す図である。一点鎖線は従来の直接冷却しないときの、実線は本実施形態の坩堝を直接冷却した本実施形態の、坩堝71(蒸着材料72)の温度変化の一例を示した図である。冷却を開始するタイミングは、蒸着材料72の蒸発(昇華)する温度(Tj)以下になったときである。蒸発(昇華)する温度以下になる前に冷却すると、蒸発(昇華)した蒸着材料72が蒸着ノズル78に付着し、蒸着ノズルに目詰まりが発生しその処置が困難になるからである。本実施形態では、従来では例えば真空蒸着チャンバ1を開くのに必要な温度Tkに達するまで数時間(tj)程度必要あった冷却時間をその半分の時間(th)程度に短縮できる。
【0026】
次に、本実施形態における蒸着源冷却装置20の第1の実施例20Aを説明する。図6は第1の実施例を示す図である。図6(a)は、図2において、蒸着源7、蒸着源冷却装置20A及び蒸着源走査手段43を矢印Jの方向から見た図で、蒸着時における状態を示す図である。図6(b)、図6(c)は図6(a)のA−A’断面図からの矢視図を示す図で、図6(b)は蒸着時における状態を、図6(c)は蒸着チャンバ1を開くときに状態を示す。なお、図6(b)、図6(c)は図6(a)に比べて拡大して示している。
【0027】
まず、蒸着源を上下方向に基板に沿って移動させる蒸着源走査手段43を説明する。蒸着源7は蒸着源走査手段43によって上下する蒸着源7を保持する保持部である蒸着源固定台42に支持部44を介して固定されている。蒸着源走査手段43はボールネジ43bを駆動モータ43mで駆動し、ナット43nにより蒸着源固定台42を上下に移動させる。また、駆動モータ43mは真空シール43sを介して真空蒸着チャンバ1の外に設けられている。この結果、ボールネジ駆動モータ43mの発熱による余分な熱を真空蒸着チャンバ1内に入らないようしている。
【0028】
次に、本実施形態の特徴である蒸着源冷却装置20Aを説明する。蒸着源冷却装置20Aは坩堝冷却部21Aと、除去可動部移動手段22Aと、坩堝冷却体挿入手段23Aとを有する
除去可動部移動手段22Aは、図6(b)に示すように、蒸着源固定台42に固定された駆動モータ22mと、駆動モータ22mより回転駆動されるボールネジ22bと、ボールネジ22b上を移動するナット22nと、ナット22nと除去可能部76とを連結し固定するL字状連結部22rと、ナット22nの回転を防止し、L字状連結部22rが回転せず上下に移動できるようにする回転防止棒22kとを有する。この機構によって、除去可能部76を上下に移動させて開口部77から除去または挿入させることができる。
【0029】
除去可動部挿入手段23Aは、図6(a)に示すように、坩堝冷却体21iを回転させる駆動モータ23mと、駆動モータ23mの回転を坩堝冷却部21iに伝える駆動軸23jと、駆動軸23jを内蔵する二重配管23hと、駆動モータ23mを内蔵し、駆動軸23jや二重配管23hと真空蒸着チャンバ1との間の真空シール(図示せず)とを有する駆動モータケース23kと、駆動モータ23mを蒸着源固定台42に固定するモータ固定部23fと、駆動モータ23mの反対側にあって駆動モータによる回転を支持する支持部23aとを有する。この機構によって、坩堝冷却体21iを開口部77に挿入し又は元の位置に戻すことができ、坩堝71を冷却することができる。
【0030】
坩堝冷却部21Aは、内部に冷却水を流す冷却配管部21a(図6(b)参照)を有する坩堝冷却体21iと、坩堝冷却体21iと真空蒸着チャンバ1外とを結び冷却材である冷却水を給水及び排水する給排水(給排)配管系21wと、給排水(給排)配管系21wを真空蒸着チャンバ1外に導く真空シール21sと、給排水配管系21wに冷却水を供給する給排水(給排)設備21eとを有する。本実施例の給排水配管系21wは、二重配管23h及び駆動モータケース23kに設けられた破線で示す除去可動部移動手段内配管21j、蒸着源走査手段43の蒸着源固定台42及びナット43nに設けられた破線で示す蒸着源固定台部配管21kと、蒸着源走査手段43に固定された破線で示す蒸着源走査手段内配管21hと、蒸着源固定台部配管21k固定配管系21kとを結ぶ一点鎖線で示すフレキシブル管21fとを有する。この結果、真空蒸着チャンバ1の真空部と分離して真空蒸着チャンバ1の外部から坩堝冷却体21iに冷却水を給水又は排水することができ、坩堝を確実に冷却できる。なお、本実施例では、真空蒸着チャンバ1外への冷却配管がやや複雑になるので、坩堝冷却体21iと蒸着源固定台42との間をフレキシブル配管で接続してもよい。
【0031】
給排水配管系21wと同様に、蒸着源7のヒータ73の駆動線、温度センサ4(図4参照)の信号線を例えば、支持部44、蒸着源固定台42、ナット43n等を介して真空蒸着チャンバ1の真空部と分離して真空蒸着チャンバ1の外部に配線することができる。
また、これらの給排水配管系及び配線の方法により、真空蒸着チャンバ1内への漏水又は配線による不要なガスの発生を防ぐことができ、安定稼動できる真空蒸着チャンバ1を提供できる。
【0032】
次に、真空蒸着チャンバ1を開く時の処理フローを図7示す。まず、蒸着源7のヒータ73による加熱を停止する(Step1)。次に、図6(a)の状態から、除去可動部移動手段22Aにより除去可能部76を除去する(Step2)。さらに、坩堝冷却体挿入手段23Aにより開口部77に坩堝冷却体21iを挿入する(Step3)。その後、坩堝71内の温度が蒸着材料72の蒸発・昇華温度まで低下するのを待つ。(Step4)。低下したら、冷却配管21aに冷却水を流し坩堝71(蒸着材料72)を冷却する(Step5)。その後、真空蒸着チャンバを開く可能温度まで冷却し(Step6)、その後、真空蒸着チャンバを開く。なお、Step3は、Step4の後に実施してもよいし、Step1の後にStep4を実施し、その後Step2とStep3とを実施してもよい。
【0033】
以上説明した実施例1によれば、蒸着源を上下に移動させる蒸着源固定台に、除去可能部を上下に移動させる除去可動部移動手段と開口部に坩堝冷却部21iを回転させて挿入する坩堝冷却体挿入手段とを設けることで、真空蒸着チャンバを開くときの待ち時間を短縮し、稼働率の高い有機ELデバイス製造装置及び有機ELデバイス製造装置の運転方法を提供できる。
【0034】
次に、本実施形態における蒸着源冷却装置20の第2の実施例22Bを説明する。図8は第2の実施例を示す図で、図8(a)は、図6(a)に対応する図で、図6に示す蒸着源走査手段43を除いた第2の実施例の構成を示す図である。図8(b)、図8(c)は、それぞれ図6(b)、図6(c)に対応する図で、図8(a)において、B−B’断面図からの矢視図を示す。図8(b)は蒸着時における状態を、図8(c)は真空蒸着チャンバ1を開くときに状態を示す。なお、図8(b)、図8(c)は図8(a)に比べて拡大して示している。
【0035】
実施例2は除去可動部移動手段22B、坩堝冷却体挿入手段23B及び坩堝冷却部21Bを蒸着源固定台42上に設けている点は同じであるが、それぞれ次の点が異なる。
【0036】
除去可動部移動手段については、実施例1では除去可動部76を上下移動させていたのに対し、実施例2では実施例1の坩堝冷却体挿入手段で用いた回転させる手段を用いている。実施例2の除去可動部移動手段22Bは、図8(a)に示すように、除去可動部76の下部両側に設けられた接続部22zを介して除去可動部76を回転させる旋回軸22jをモータ固定部22fに固定された駆動モータ22mで回転させることで蒸着源7の開口部77から除去可動部76を除去している。なお、駆動モータ22mの反対側にある接続部22zは支持部22aに支持され従動的に回転する。この機構によって、除去可能部76を回転させて開口部77から除去または挿入することができる。
【0037】
坩堝冷却体挿入手段については、実施例1では坩堝冷却部21iを回転させて開口部77に挿入していたのに対し、坩堝冷却体21iを直線的に移動させて開口部77に挿入する。実施例2の坩堝冷却体挿入手段23Bは、図8(b)に示すように、モータ23mと、モータ23mを蒸着源固定台42に固定するモータ固定部23fと、駆動モータ23mより回転駆動されるボールネジ23bと、ボールネジ23b上を移動するナット23nと、ナット23nの回転を防止し、坩堝冷却部21(ナット23n)の移動をガイドするガイドレール23gと、ガイドレール23g上を移動しナット23nと坩堝冷却部21とを連結するする連結部23rとを有する。この機構によって、坩堝冷却体21iを開口部77に挿入し又は元の位置に戻すことができ、坩堝71を冷却することができる。
【0038】
坩堝冷却部については、坩堝冷却体21iと蒸着源固定台42との冷却配管の接続を、実施例1では坩堝冷却体挿入手段22の二重配管23hや駆動モータケース23kとを介して行なっていたが、実施例2の坩堝冷却部21Bでは、図8(c)に示すように、坩堝冷却部21iの坩堝71の接触面との対面である背面に接続された内部にフレキシブル配管21fを有する多段円筒21dと、一端を多段円筒21dに、他端を蒸着源固定台42に接続された二重円筒管21uとで行なう。なお、実施例2においても、実施例1と同様に、坩堝冷却体21iと蒸着源固定台42との間をフレキシブル配管で直接接続してもよい。
実施例2の坩堝冷却部21Bにおいても、上述した機構によって、真空蒸着チャンバ1内への漏水を防ぐことができ、安定して稼動できる真空蒸着チャンバ1を提供できる。
【0039】
以上説明した実施例2によれば、蒸着源を上下に移動させる蒸着源固定台に、除去可能部を回転させて開口部から除去させる除去可動部移動手段と、開口部に坩堝冷却体21iを直線的に移動させて挿入する坩堝冷却体挿入手段とを設けることで、真空蒸着チャンバを開くときの待ち時間を短縮し、稼働率の高い有機ELデバイス製造装置及び有機ELデバイス製造装置の運転方法を提供できる。
【0040】
次に、本実施形態における蒸着源冷却装置20の第3の実施例20Cを説明する。図9は第3の実施例を示す図で、図9(a)は、図6(a)に対応する図で、図6に示す蒸着源走査手段43を除いた第3の実施例の構成を示す図である。図9(b)、図9(c)は、それぞれ図6(b)、図6(c)に対応する図で、図9(a)のC−C’断面図からの矢視図を示す。図9(b)は蒸着時における状態を、図9(c)は真空蒸着チャンバ1を開くとき状態を示す。
【0041】
実施例3は、実施例2と同じ構成を備える除去可動部移動手段22Cを同様に蒸着源固定台42上に設けている点は同じであるが、真空蒸着チャンバ1の外部に基本構造部が設けられた坩堝冷却体挿入手段23Cによって坩堝冷却体21iを直線的に移動させて開口部77に挿入させる点が異なる。坩堝冷却体挿入手段23Cの構成において坩堝冷却体挿入手段23Bと同じ機能を有するものについては同一符号を付している。
【0042】
実施例3の坩堝冷却体挿入手段23Cは、図9(b)、図9(c)に示すように、モータ23mと、モータ23mを真空蒸着チャンバ1の壁面からの支持部23cに固定するモータ固定部23fと、駆動モータ23mより伝達歯車23dを介して回転駆動される外周も歯車状のナット23nと、ナット23nの回転及び駆動モータ23m上に固定された支持ナット23nhとによって直線的に移動するボールネジ23bと、ボールネジ23bの先端を坩堝冷却体21iに連結する連結部23rとを有する。ボールネジ23bは真空シール23sを介して真空蒸着チャンバ1内に挿入される。なお、図9(a)に示すように、冷却配管21hとボールネジ23bの紙面水平方向に異なる位置に接続している。
【0043】
上述した実施例3の坩堝冷却体挿入手段23Cによれば、ボールネジ23bを駆動する駆動モータ23m等を真空蒸着チャンバ1の外部に設けることで、坩堝冷却体21iを開口部77に挿入し又は元の位置に戻すことができ、坩堝71を冷却することができる。
また、上述した実施例3の坩堝冷却体挿入手段23Cによれば、ボールネジ23bを駆動する駆動モータ23m等を真空蒸着チャンバ1の外部に設けることで、保守性の優れた坩堝冷却体挿入手段23を提供できる。
【0044】
実施例3の坩堝冷却部21Cは、真空シール21sを連通し一端を坩堝冷却体21iに接続され、他端を真空蒸着チャンバ1外に設けられたフレキシブル配管21fに接続された接続配管21hを有する。フレキシブル配管21fはフレキシブル配管収納部21gを介して冷却水給排水部(図示せず)に接続されている。勿論、実施例3においても、実施例2で示したように坩堝冷却体21iと壁面との間に多段円筒を設けて、漏水に対する対処をしてもよい。
【0045】
以上説明した実施例3では、冷却配管21hとボールネジ23bの紙面水平方向に異なる位置に接続したが、ボールネジ23bの接続位置を接続配管21hと同じ高さにして連結部23rをなくして、ボールネジ23bの先端を直接坩堝冷却体21iに接続してもよい。
また、冷却部坩堝冷却部21Bと坩堝冷却体挿入手段23Cとを別々に設けるのではなく、ボールネジ23bの内部に冷却水を流し、接続配管21hを無くしてもよい。
【0046】
実施例3の坩堝冷却部21Cにおいても、上述した機構によって、坩堝冷却体21iに冷却水を安定して供給することができる。
【0047】
以上説明した実施例3によれば、駆動モータを真空蒸着チャンバ1の外に設け、開口部に坩堝冷却体21iを直線的に移動させて挿入する坩堝冷却体挿入手段と、坩堝冷却体21iに冷却水を供給できる坩堝冷却部とを設けることで、真空蒸着チャンバを開くときの待ち時間を短縮し、稼働率の高い有機ELデバイス製造装置及び有機ELデバイス製造装置の運転方法を提供できる。
【0048】
なお、図7示した真空蒸着チャンバ1を開く時の処理フローは基本的には実施例2及び実施例3に適用できる。
また、実施例1乃至3に示した方法は、蒸着源7を図6に示す蒸着源走査手段43で上下方向に移動させて蒸着する真空蒸着チャンバの例を説明した。基本的には図6(a)に示す蒸着源走査手段43及び実施例1乃至4に示した蒸着源冷却装置を90度旋回させた構成とすることで、蒸着源7を図6(a)の紙面左右方向移動させる真空蒸着チャンバにも適用できる。
【0049】
さらに、本実施形態では、冷媒として水を用いたが、その他の液体や空気、窒素等の気体を使用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1:真空蒸着チャンバ 2:真空搬送室
3:基板ストッカ室 4:温度センサ
5:真空搬送ロボット 6:基板
7:蒸着源 8:マスク
9:基板保持部 10:ゲート弁
20、20A、20B:蒸着源冷却装置
21、21A、21B:坩堝冷却部 21a:冷却配管部
21i:坩堝冷却体 21w:給排水配管系
21e:給排水設備 21s:真空シール
22、22A、22B:除去可動部移動手段
23、23A、23B:坩堝冷却体挿入手段
42:蒸着源固定台 43:蒸着源走査手段
71:坩堝 72:蒸発材料
73:ヒータ 74:断熱機構
75:蒸発源筐体 76:除去可能部
77:蒸着源の開口部 78:蒸着ノズル
79:棒着板 93:基板旋回駆動手段
100:有機ELデバイス製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に蒸着材料を内在する坩堝と、前記蒸着材料を加熱し蒸発・昇華させる加熱手段と、前記蒸発・昇華した前記蒸着材料を噴射する蒸着物噴射口とを有する蒸着源において、
前記坩堝の外面のうち蒸着物噴射口のない外面と前記蒸発源の筐体との間に存在する部材の一部を除去可能な除去可能部を有することを特徴とする蒸着源。
【請求項2】
前記除去可能部を移動させる除去可動部移動手段を有することを特徴とする請求項1に記載の蒸着源。
【請求項3】
前記除去可能部が移動した前記蒸発源の開口部に挿入可能であって内部に冷却材が供給され、前記冷却材を排出する坩堝冷却体と、前記坩堝冷却体を前記開口部に挿入する坩堝冷却体挿入手段とを有することを特徴とする請求項2に記載の蒸着源。
【請求項4】
前記坩堝冷却体は、前記除去可能部が移動した前記蒸発源の開口部の形状又は前記開口部の形状と前記蒸着物噴射口のない外面との空間で形成される形状とを有することを特徴とする請求項3に記載の蒸着源。
【請求項5】
前記坩堝を長手方向に複数持つ形状に設けたことを特徴とする請求項3又は4に記載の蒸着源。
【請求項6】
蒸着材料を基板に蒸着する基板保持部を具備する真空蒸着チャンバと、前記基板を前記基板保持部に搬送する搬送手段とを有する有機ELデバイス製造装置において、
請求項5に記載の蒸着源を保持する保持部を備え前記基板に沿って移動させる蒸着源走査手段を有することを特徴とする有機ELデバイス製造装置。
【請求項7】
前記除去可動部移動手段を前記保持部に設けたことを特徴とする請求項6に記載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項8】
前記坩堝冷却体は前記真空蒸着チャンバ内に存在し、一端が前記坩堝冷却体に接続され、前記真空蒸着チャンバの外から前記坩堝冷却体に冷却材を供給し、真空蒸着チャンバの外へ前記冷却材を排出する給排配管系と、前記給排配管系の他端が前記真空蒸着チャンバの外に設けた冷却材を供給し排出する給排設備とを有することを特徴とする請求項7に記載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項9】
前記坩堝冷却体挿入手段は前記保持部に設けられたことを特徴とする請求項7に記載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項10】
前記坩堝冷却体挿入手段は前記真空蒸着チャンバ外に駆動部を設け、真空シールを介して前記坩堝冷却体との接続部を直線移動させて前記開口部に挿入させることを特徴とする請求項8に記載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項11】
前記除去可動部移動手段は、前記除去可能部を前記基板に平行に移動又は前記筐体から離れるように回転動作させて前記開口部から移動させることを特徴とする請求項7に記載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項12】
前記坩堝冷却体挿入手段は前記坩堝冷却体を回転又は直線移動させて前記開口部に挿入させることを特徴とする請求項8に記載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項13】
蒸着源内の坩堝に存在する蒸着材料を加熱し、蒸発・昇華するステップと、真空蒸着チャンバ内を開くステップとを有する有機ELデバイス製造装置の運転方法において、
前記開くステップは、前記加熱を停止するステップと、坩堝の周囲を囲む部材の一部を除去するステップと、前記除去された開口部に冷却材が流れる坩堝冷却体を挿入するステップと、前記坩堝の温度が前記蒸発・昇華する温度以下なったときに前記坩堝冷却体に前記冷却材を流すステップとを有することを特徴とする有機ELデバイス製造装置の運転方法。
【請求項14】
前記坩堝が所定の温度に達したときに前記真空蒸着チャンバを開くステップを有することを特徴とする請求項13に記載の有機ELデバイス製造装置の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−233240(P2012−233240A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103760(P2011−103760)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】