蒸着用プラスチック成形体の製造方法及びガスバリア性プラスチック成形体の製造方法

【課題】本発明の目的は、AlOxを含有するガスバリア薄膜を発熱体CVD法で形成するのに適した表面を有する蒸着用プラスチック成形体の製造方法を提供することである。
【解決手段】本発明に係る蒸着用プラスチック成形体80の製造方法は、構成元素としてアルミニウム及び酸素を含有するガスバリア薄膜を形成するための蒸着用プラスチック成形体の製造方法において、還元剤としてリチウムアルミニウムハイドライド、水素化ホウ素ナトリウム、リチウムハイドライド又はジメチルエチルアミンアランのうち少なくとも1種を含有する処理液を用いて、プラスチック成形体91の表面を還元処理し、プラスチック成形体91の表面上に還元層81を形成する還元処理工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着用プラスチック成形体の製造方法及びガスバリア性プラスチック成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは、透明性、軽量性、耐衝撃性、耐食性及び加工成形性に優れ、価格が安価で、多品種少量生産に対応できるという長所を有するため、食品、飲料、医薬品又は化粧品などを包装する包装材料として適している。しかし、プラスチックは、他の包装材料である金属又はガラスと比べて、ガスバリア性が低く、酸化を嫌う内容物又はビールなどのガスを含有する内容物の包装材料としては適さないという問題があった。そこで、プラスチック成形体の表面に金属酸化物を含有する薄膜を形成して、ガスバリア性を付与することが行われている。
【0003】
従来、基材上に薄膜を形成する技術に関し、基材と薄膜との密着性を向上させる技術が提案されている。例えば、セラミック、ガラス、合成樹脂または合成繊維など基材表面に化学結合によって、耐久性、透明性に優れた、帯電防止化学吸着単分子膜形成する技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの表面のうち、蒸着層を設ける側の表面に、リアクティブエッチング(RIE)を利用したプラズマ処理を施して、プラズマ前処理面を形成し、該プラズマ前処理面上に無機酸化物蒸着層を形成することで、無機酸化物蒸着層とポリエチレンテレフタレートフィルムとの密着性を向上でき、更に無機酸化物の緻密な薄膜を形成させることができることが開示されている(例えば、特許文献2を参照。)。支持体の表面上にオキシムエステル化合物を結合させて機能性支持体とし、該機能性支持体の表面上に重合性基を有する化合物をグラフト重合させて、グラフトポリマー層を形成することで、該グラフトポリマー層の上に密着性に優れた金属膜を形成する技術が開示されている(例えば、特許文献3を参照。)。基材と薄膜との間にアンカーコート層を設けて、基材と薄膜との密着性を向上させる技術が開示されている(例えば、特許文献4又は5を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−168920号公報
【特許文献2】特開2005−59265号公報
【特許文献3】特開2009−61766号公報
【特許文献4】特開2005−190932号公報
【特許文献5】特開2004−306281号公報
【特許文献6】特開2008−127053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プラズマCVD法によって薄膜を形成する方法は、薄膜形成時にプラズマが膜表面に損傷を与え、薄膜の緻密さが損なわれやすい。また、原料ガスを、マイクロ波を含む高周波によってプラズマ化して、プラスチック容器の表面にて反応させて薄膜を形成するため、必ず高周波電源及び高周波電力整合装置を必要とし、装置のコストが高額にならざるを得ないという問題を有する。
【0006】
発熱させた発熱体に原料ガスを接触させて分解し、生成した化学種を直接又は気相中で反応過程を経た後に、基材上に薄膜として堆積させる方法、すなわち、発熱体CVD法、Cat‐CVD法又はホットワイヤーCVD法と呼ばれるCVD法(以降、本明細書では、発熱体CVD法という。)は、前記したプラズマCVD法の問題点を解決して、緻密で高いガスバリア性を有する薄膜を、プラズマCVD成膜装置よりも単純、かつ、低コストの成膜装置で形成することができるため、次世代成膜方法として注目されている。
【0007】
アルミニウムの酸化物(AlOx)を含有する薄膜は、高いガスバリア性を有することが知られている。しかし、本発明者らが実験したところによると、発熱体CVD法によって、プラスチック成形体としてプラスチックボトルを用い、該プラスチックボトルの内壁面に、AlOxを含有する薄膜を形成し、該AlOxを含有する薄膜で内壁面を被覆したプラスチックボトル内に水を充填すると、1日で膜剥離に至った。
【0008】
これまで、AlOxを含有する薄膜を、発熱体CVD法を用いて形成する検討事例はあるものの、プラスチック成形体との高い密着性(特に、耐水性)を、発熱体CVD法を用いて確保できる成膜方法についての知見は開示されていない。
【0009】
本発明の目的は、AlOxを含有するガスバリア薄膜を発熱体CVD法で形成するのに適した表面を有する蒸着用プラスチック成形体の製造方法を提供することである。また、本発明の第二の目的は、蒸着用プラスチック成形体の表面に、発熱体CVD法を用いて、密着性(特に、耐水性)に優れたAlOxを含有するガスバリア薄膜を形成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、鋭意検討した結果、プラスチック成形体の表面を還元剤で還元処理することによって、AlOxを含有する薄膜の密着性が特異的に向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法は、構成元素としてアルミニウム及び酸素を含有するガスバリア薄膜を形成するための蒸着用プラスチック成形体の製造方法において、還元剤としてリチウムアルミニウムハイドライド、水素化ホウ素ナトリウム、リチウムハイドライド又はジメチルエチルアミンアランのうち少なくとも1種を含有する処理液を用いて、プラスチック成形体の表面を還元処理し、該プラスチック成形体の表面上に還元層を形成する還元処理工程を有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法では、前記還元処理が、前記還元剤としてリチウムアルミニウムハイドライドを用い、かつ、条件1を満たす処理であることが好ましい。構成元素としてアルミニウム及び酸素を含有するガスバリア薄膜との密着性をより高めることができる。
(条件1)前記還元層のアルミニウム含有量が、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)を用いた元素組成分析値で、0.03〜0.06cps/μAである。
【0013】
本発明に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法では、前記プラスチック成形体が、フィルム、シート又は容器である形態を包含する。
【0014】
本発明に係るガスバリア性プラスチック成形体の製造方法は、本発明に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法で得た蒸着用プラスチック成形体を真空チャンバ内に収容し、該真空チャンバの内部に、Al源原料ガスを供給して、該Al源原料ガスを発熱した発熱体に接触させ、前記Al源原料ガスを分解して化学種を生成させ、前記還元層の表面に前記化学種を到達させることによって、ガスバリア薄膜を形成する成膜工程を有することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る蒸着用プラスチック成形体は、本発明に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法で製造してなる。
【0016】
本発明に係るガスバリア性プラスチック成形体は、本発明に係るガスバリア性プラスチック成形体の製造方法で製造してなる。
【0017】
本発明に係る蒸着用プラスチック成形体は、構成元素としてアルミニウム及び酸素を含有するガスバリア薄膜を形成するための蒸着用プラスチック成形体において、プラスチック成形体と、該プラスチック成形体上に形成された還元層とを備え、該還元層は、飛行時間型二次イオン質量分析(ToF‐SIMS)によるマイナスイオン分析で、AlC又はAlCの少なくとも一つに由来するピークが観察されることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る蒸着用プラスチック成形体では、前記還元層のアルミニウム含有量が、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)を用いて元素組成分析値で、0.03〜0.06cps/μAであることが好ましい。構成元素としてアルミニウム及び酸素を含有するガスバリア薄膜との密着性をより高めることができる。
【0019】
本発明に係るガスバリア性プラスチック成形体は、プラスチック成形体とガスバリア薄膜との間にアルミニウム、ナトリウム、リチウム又はホウ素の少なくとも一つを含有する還元層を有することを特徴とする。
【0020】
本発明に係るガスバリア性プラスチック成形体では、室温で水に浸漬したときに、前記ガスバリア薄膜が、7日以上剥離しない形態を包含する。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、AlOxを含有するガスバリア薄膜を発熱体CVD法で形成するのに適した表面を有する蒸着用プラスチック成形体の製造方法を提供することができる。また、本発明は、蒸着用プラスチック成形体の表面に、発熱体CVD法を用いて、密着性(特に、耐水性)に優れたAlOxを含有するガスバリア薄膜を形成する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体の一例を示す断面図である。
【図2】成膜装置の一形態を示す概略図である。
【図3】本実施形態に係るガスバリア性プラスチック成形体の一例を示す断面図である。
【図4】実施例5Aの蒸着用プラスチック成形体について、還元層の表面状態を示すSEM画像及び同一領域の元素分布のマッピングイメージ(C,O及びAl)である。
【図5】実施例1A、実施例4A、実施例5A及び実施例6Aの蒸着用プラスチック成形体について、還元層の表面状態を示すSEM画像である。
【図6】実施例4Aの蒸着用プラスチック成形体について、還元層の表面のToF‐SIMSによるマイナスイオンピーク分析結果を示すスペクトルであり、(a1)〜(a4)はAlCに由来するピークを示し、(b1)〜(b4)はAlCに由来するピークを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0024】
図1は、本実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体の一例を示す断面図である。本実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体80の製造方法は、構成元素としてアルミニウム(Al)及び酸素(O)を含有するガスバリア薄膜を形成するための蒸着用プラスチック成形体の製造方法において、還元剤としてリチウムアルミニウムハイドライド(LiAlH、LAH)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、リチウムハイドライド(LiH)又はジメチルエチルアミンアラン(EtMeN:AlH)のうち少なくとも1種を含有する処理液を用いて、プラスチック成形体91の表面を還元処理し、プラスチック成形体91の表面上に還元層81を形成する還元処理工程を有する。
【0025】
プラスチック成形体91を構成する樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、シクロオレフィンコポリマー樹脂(COC、環状オレフィン共重合)、アイオノマー樹脂、ポリ‐4‐メチルペンテン‐1樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン‐ビニルアルコール共重合樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、又は、4弗化エチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン樹脂である。これらは、1種を単層で、又は2種以上を積層して用いることができるが、生産性の点で、単層であることが好ましい。また、樹脂の種類は、PETであることがより好ましい。
【0026】
本実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体80の製造方法では、プラスチック成形体91は、フィルム、シート又は容器である形態を包含する。プラスチック成形体91の厚さは、目的及び用途に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。プラスチック成形体91が、例えば、飲料用ボトルなどの容器である場合には、ボトルの肉厚は、50〜500μmであることが好ましく、より好ましくは、100〜350μmである。また、包装袋を構成するフィルムである場合には、フィルムの厚さは、3〜300μmであることが好ましく、より好ましくは、10〜100μmである。プラスチック成形体91が、電子ペーパー又は有機ELなどのフラットパネルディスプレイの基板である場合には、フィルムの厚さは、25〜200μmであることが好ましく、より好ましくは、50〜100μmである。また、容器を形成するためのシートである場合には、シートの厚さは、50〜500μmであることが好ましく、より好ましくは100〜350μmである。
【0027】
還元処理工程では、プラスチック成形体91の表面に、処理液を接触させる。すると、処理液に含まれる還元剤が、プラスチック成形体91を構成する樹脂が有する官能基を還元して、プラスチック成形体91の表面上に還元層81が形成される。プラスチック成形体91の表面を還元層81で被覆することで、ガスバリア薄膜の成膜に適した表面を得ることができる。還元層81を形成する表面は、プラスチック成形体91が容器である場合には、その内壁面若しくは外壁面のいずれか一方又は両方であり、プラスチック成形体91がフィルムである場合には、還元層81を形成する表面は、片面又は両面である。
【0028】
処理液は、還元剤の溶液である。還元剤は、リチウムアルミニウムハイドライド、水素化ホウ素ナトリウム、リチウムハイドライド又はジメチルエチルアミンアランのうち少なくとも1種である。この中で、リチウムアルミニウムハイドライドがより好ましい。処理液の溶媒は、特に限定されず、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、水、水酸化ナトリウム水溶液、メタノール、アセトン、トルエン、ジエチルエーテルである。処理液の濃度は、0.01〜5.00mol/lであることが好ましく、より好ましくは、0.03〜2.00mol/lである。
【0029】
処理液をプラスチック成形体91の表面に接触させる還元処理の方法は、特に限定されず、例えば、プラスチック成形体91の表面に処理液を塗布する方法、プラスチック成形体91を処理液に浸漬する方法である。プラスチック成形体91が容器であり、その内壁面に還元層81を形成する場合には、処理液を容器内に注入する方法が、簡便、かつ、安定して容器の内壁面に処理液を接触させることができる点でより好ましい。また、プラスチック成形体91が容器であり、その外壁面に還元層81を形成する場合には、容器を処理液中に浸漬する方法がより好ましい。
【0030】
処理液をプラスチック成形体91の表面に接触させる時間は、プラスチック成形体の材質、還元剤の種類及び処理液の濃度に応じて、適宜設定すればよいが、例えば、5〜180秒であることが好ましい。
【0031】
還元処理後、プラスチック成形体91の表面から処理液をあらかた取り除いた後、還元層81の表面を洗浄することが好ましい。処理液の溶媒、未反応の還元剤及び反応による副生成物を除去することができる。洗浄方法は、例えば、水、エタノール、ヘキサンなどの洗浄液を用いる方法である。また、洗浄後には、乾燥を行うことが好ましい。
【0032】
本実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体80の製造方法では、還元処理が、還元剤としてリチウムアルミニウムハイドライドを用い、かつ、条件1を満たす処理であることが好ましい。
(条件1)還元層81のアルミニウム含有量が、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)を用いた元素組成分析値で、0.03〜0.06cps/μAである。
【0033】
還元剤としてのリチウムアルミニウムハイドライドは、プラスチック成形体91を構成する樹脂が有する官能基を還元して、分子構造を切断する。そして、その切断したところへ、アルミニウムが結合して、還元層81として、アルミニウムを含有する層を形成する。例えば、プラスチック成形体91を構成する樹脂が、PETである場合には、リチウムアルミニウムハイドライドは、PET分子中のエステル結合を還元して、ヒドロキシ基を生成する。このヒドロキシ基とリチウムアルミニウムハイドライド由来のアルミニウムとが反応して、酸素とアルミニウムとが結合する。このようにして、プラスチック成形体91の表面に、還元層81として、アルミニウム及び酸素を含有する層が形成される。この還元層81が、構成元素としてアルミニウム及び酸素を含有するガスバリア薄膜との密着性を高める効果を奏する。
【0034】
還元層81のアルミニウム含有量が0.03cps/μA未満では、ガスバリア薄膜の密着性向上効果が得られない場合がある。また、還元層81のアルミニウム含有量が0.06cps/μAを超えると、AlOxが局所的に粒状に堆積し、還元層81の表面の平滑性が損なわれて、ガスバリア薄膜を良好に成膜ができない場合がある。なお、還元層81のアルミニウム含有量は、例えば、処理液の濃度又はプラスチック成形体91と処理液とを接触させる時間を調整することで、制御することができる。
【0035】
本実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体80は、本実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体80の製造方法で製造してなる。本実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体80は、図1に示すように、プラスチック成形体91と、プラスチック成形体91上に形成された還元層81とを備える。
【0036】
本実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体80では、還元層81は、飛行時間型二次イオン質量分析(ToF‐SIMS)によるマイナスイオン分析で、AlC又はAlCの少なくとも一つに由来するピークが観察される。このピークのカウントは、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF. SIMS5、ION−TOF社製)を用いて、一次イオンBi3++、一次イオン加速電圧25kV、電流0.2pA(10kHz)、サイクルタイム180μs、走査領500μmの条件で測定したとき、100以上であることが好ましい。これらのピークは、プラスチック成形体91の成分と還元剤由来のアルミニウムとが化学的に結合していることを示唆している。また、還元層81を飛行時間型二次イオン質量分析(ToF‐SIMS)によるマイナスイオン分析したとき、前記したピーク以外に、例えば、AlCO、AlCO又はAlCに由来するピークが、更に観察されてもよい。
【0037】
本実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体80では、還元層81のアルミニウム含有量が、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)を用いて元素組成分析値で、0.03〜0.06cps/μAであることが好ましい。より好ましくは、0.03〜0.04cps/μAである。
【0038】
次に、本実施形態に係るガスバリア性プラスチック成形体の製造方法を説明する前に、使用する成膜装置について、図2を参照しながら説明する。図2は、成膜装置の一形態を示す概略図である。図2に示す成膜装置は、プラスチック成形体が容器である場合であって、該容器の内壁面に薄膜を成膜できる装置である。
【0039】
図2に示した成膜装置100は、プラスチック容器11を収容する真空チャンバ6と、真空チャンバ6を真空引きする排気ポンプ(不図示)と、プラスチック容器11の内部に挿脱可能に配置され、プラスチック容器11の内部へ原料ガスを供給する、絶縁、かつ、耐熱の材料で形成された原料ガス供給管23と、原料ガス供給管23に支持された発熱体18と、発熱体18に通電して発熱させるヒータ電源20と、を有する。
【0040】
真空チャンバ6は、その内部にプラスチック容器11を収容する空間が形成されており、その空間は薄膜形成のための反応室12となる。真空チャンバ6は、下部チャンバ13と、この下部チャンバ13の上部に着脱自在に取り付けられて下部チャンバ13の内部をOリング14で密閉するようになっている上部チャンバ15とから構成されている。上部チャンバ15には図示していない上下の駆動機構があり、プラスチック容器11の搬入・搬出に伴い上下する。下部チャンバ13の内部空間は、そこに収容されるプラスチック容器11の外形よりも僅かに大きくなるように形成されている。
【0041】
真空チャンバ6の内側、特に下部チャンバ13の内側は、発熱体18の発熱に伴って放射される光の反射を防ぐために、内面28が黒色内壁となっているか、又は内面が表面粗さ(Rmax)0.5μm以上の凹凸を有していることが好ましい。表面粗さ(Rmax)は、例えば表面粗さ測定器(アルバックテクノ社製、DEKTAX3)を用いて測定する。内面28を黒色内壁とするためには、黒ニッケルメッキ・黒クロームメッキなどのメッキ処理、レイデント・黒染などの化成皮膜処理、又は、黒色塗料を塗布して着色する方法がある。さらに、冷却水が流される冷却管などの冷却手段29を真空チャンバ6の内部又は外部に設けて、下部チャンバ13の温度上昇を防止することが好ましい。真空チャンバ6のうち、特に下部チャンバ13を対象とするのは発熱体18がプラスチック容器11に挿入されているときに、ちょうど下部チャンバ13の内部空間に収容された状態となるからである。光の反射の防止及び真空チャンバ6の冷却を行うことで、プラスチック容器11の温度上昇と、それに伴う熱変形を抑制できる。さらに、通電された発熱体18から発生した放射光が通過できる透明体からなるチャンバ30、例えばガラス製チャンバを下部チャンバ13の内側に配置すると、プラスチック容器11に接するガラス製チャンバの温度が上昇しにくいため、プラスチック容器11に与える熱的影響をさらに軽減させることができる。
【0042】
原料ガス供給管23は、上部チャンバ15の内側天井面の中央において下方に垂下するように支持されている。原料ガス供給管23には、流量調整器24a又は24bとバルブ25a又は25bを介してAl源原料ガス33及び必要に応じてキャリアガスが流入される。Al源原料ガス33の供給は、Al源原料ガス33として用いる物質が液体である場合には、バブリング法によって供給することができる。すなわち、原料タンク40a内に収容された出発原料41aに、流量調整器24aで流量制御しながらボンベ42aからバブリングガスを供給し、出発原料41aの蒸気を発生させてAl源原料ガス33として供給する。必要に応じて用いられるキャリアガスは、ボンベ42bに収容されて、流量調整器24bで流量制御しながら供給される。なお、図2に示す成膜装置において、バルブ25aを介して供給するAl源原料ガス33として用いる物質が気体である場合には、原料タンク40aを設けずに、Al源原料ガス33をボンベ42aに充填して流量調整器24aで流量制御しながら供給する形態に変形をすればよい。また、液体状のAl源原料ガス33をボンベ42a内で気化させて、ボンベ42a内のヘッドスペースに充満したAl源原料ガス33を、バルブ25aを開放することで、供給する方法を採用してもよい。
【0043】
原料ガス供給管23は、冷却管を有し、一体に形成されていることが好ましい。このような原料ガス供給管23の構造としては、例えば二重管構造がある。原料ガス供給管23において、二重管の内側管路は原料ガス流路17となっており、その一端は上部チャンバ15に設けられたガス供給口16に接続されていて、その他端はガス吹き出し孔17xとなっている。これによって、Al源原料ガス33は、ガス供給口16に接続された原料ガス流路17の先端のガス吹き出し孔17xから吹き出されるようになっている。一方、二重管の外側管路は、原料ガス供給管23を冷却するための冷却水流路27であり、冷却管として役割をなしている。そして、発熱体18が、例えば、通電によって発熱すると、原料ガス流路17の温度が上昇する。これを防止するため、冷却水流路27に冷却水が循環している。すなわち、冷却水流路27の一端では、上部チャンバ15に接続された不図示の冷却水供給手段から冷却水の供給がなされ、同時に冷却水供給手段に冷却を終えた冷却水が戻される。一方、冷却水流路27の他端は、ガス吹き出し孔17x付近において封止されていて、ここで冷却水が折り返して戻される。冷却水流路27によって、原料ガス供給管23全体が冷却される。冷却することでプラスチック容器11に与える熱的影響を低減させることができる。したがって、原料ガス供給管23の材質は絶縁体で熱伝導率が大きいものが好ましい。例えば、窒化アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素若しくは酸化アルミニウムを主成分とする材料で形成されたセラミック管であるか、又は、窒化アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素若しくは酸化アルミニウムを主成分とする材料で表面が被覆された金属管であることが好ましい。発熱体18に安定して通電することができ、耐久性があり、かつ、発熱体で発生した熱を熱伝導によって効率よく排熱させることができる。
【0044】
原料ガス供給管23について、不図示の他形態として、次のようにしてもよい。すなわち、原料ガス供給管を二重管とし、その外側管を原料ガス流路として外側管の側壁に孔、好ましくは複数の孔を開ける。一方、原料ガス供給管の二重管の内側管は、緻密な管で形成し、冷却水流路として冷却水を流す。発熱体は原料ガス供給管の側壁に沿って配線されるが、側壁に沿った部分の発熱体に、外側管の側壁に設けた孔を通ったAl源原料ガス33が接触し、効率よく化学種34を生成させることができる。
【0045】
ガス吹き出し孔17xは、プラスチック容器11の底と離れすぎていると、プラスチック容器11の内部に薄膜を形成することが難しい。本実施形態では、原料ガス供給管23の長さは、ガス吹き出し孔17xからプラスチック容器11の底までの距離L1が5〜50mmとなるように形成することが好ましい。膜厚の均一性が向上する。5〜50mmの距離で均一な薄膜をプラスチック容器11の内壁面に成膜することができる。距離が50mmより大きいとプラスチック容器11の底に薄膜が形成しにくくなる場合がある。また、距離が5mmより小さいとAl源原料ガス33の吹き出しができにくくなる場合、又は膜厚分布が不均一になる場合がある。この事実は、理論的にも把握することができる。500mlの容器の場合、容器の胴径が6.4cm、常温の空気の平均自由工程λ=0.68/Pa[cm]から、分子流は圧力<0.106Pa、粘性流は圧力>10.6Pa、中間流は0.106Pa<圧力<10.6Paとなる。成膜時のガス圧5〜100Paでは、ガスの流れは中間流から粘性流となり、ガス吹き出し孔17xとプラスチック容器11の底の距離に最適条件があることになる。
【0046】
発熱体18は、発熱体CVD法において、Al源原料ガス33の分解を促進する。発熱体18の材質は、特に限定されないが、C,W,Ta,Ti,Hf,V,Cr,Mo,Mn,Tc,Re,Fe,Ru,Os,Co,Rh,Ir,Ni,Pd,Ptの群の中から選ばれる一つ又は二つ以上の金属元素を含む材料で構成されることが好ましい。導電性を有することで、通電によって、それ自体を発熱させることが可能となる。発熱体18は配線形状に形成され、原料ガス供給管23の上部チャンバ15における固定箇所の下方に設けた、配線19と発熱体18との接続箇所となる接続部26aに、発熱体18の一端が接続される。そして先端部分であるガス吹き出し孔17xに設けた絶縁セラミックス部材35で支持される。さらに、折り返して、接続部26bに発熱体18の他端が接続される。このように、発熱体18は原料ガス供給管23の側面に沿って支持されているため、下部チャンバ13の内部空間のほぼ主軸上に位置するように配置されることとなる。図2では、発熱体18は、原料ガス供給管23の軸と平行となるように原料ガス供給管23の周囲に沿って配置した場合を示したが、接続部26aを起点として原料ガス供給管23の側面に螺旋状に巻きつけ、ガス吹き出し孔17x付近に固定された絶縁セラミックス部材35で支持したあと、接続部26bに向けて折り返して戻してもよい。ここで発熱体18は、絶縁セラミックス部材35に引っ掛けることで原料ガス供給管23に固定されている。図2では、発熱体18は、原料ガス供給管23のガス吹き出し孔17x付近において、ガス吹き出し孔17xの出口側に配置されている場合を示した。これによって、ガス吹き出し孔17xから吹き出たAl源原料ガス33が発熱体18と接触しやすくなるため、Al源原料ガス33を効率よく活性化させることができる。ここで、発熱体18は、原料ガス供給管23の側面から僅かに離して配置することが好ましい。原料ガス供給管23の急激な温度上昇を防止するためである。また、ガス吹き出し孔17xから吹き出たAl源原料ガス33及び反応室12にあるAl源原料ガス33との接触機会を増やすことができる。この発熱体18を含む原料ガス供給管23の外径は、プラスチック容器の口部21の内径よりも小さいことが必要である。発熱体18を含む原料ガス供給管23をプラスチック容器の口部21から挿入するためである。したがって、必要以上に発熱体18を原料ガス供給管23の表面から離すと、原料ガス供給管23をプラスチック容器の口部21から挿入するときに接触しやすくなってしまう。発熱体18の横幅は、プラスチック容器の口部21から挿入する時の位置ズレを考慮すると、10mm以上、(口部21の内径−6)mm以下が適当である。例えば、口部21の内径はおおよそ21.7〜39.8mmである。
【0047】
発熱体18は、例えば、通電することで発熱させることができる。図2に示す装置では、発熱体18には、接続部26a,26b及び配線19を介して、ヒータ電源20が接続されている。ヒータ電源20によって発熱体18に電気を流すことで、発熱体18が発熱する。なお、本発明は、発熱体18の発熱方法に限定されない。
【0048】
また、プラスチック容器の口部21から容器の肩にかけてはプラスチック容器11の成形時の延伸倍率が小さいため、高温に発熱する発熱体18が近くに配置されると、熱による変形を起こしやすい。実験によれば、配線19と発熱体18との接続箇所である接続部26a,26bの位置が、プラスチック容器の口部21の下端から10mm以上離さないとプラスチック容器11の肩の部分が熱変形を起こし、50mmを超えると、プラスチック容器11の肩の部分に薄膜が形成しにくくなった。そこで発熱体18は、その上端がプラスチック容器の口部21の下端から10〜50mm下方に位置するように配置されることがよい。すなわち、接続部26a,26bと口部21の下端との距離L2が10〜50mmとなるようにすることが好ましい。容器の肩部の熱変形を抑制できる。
【0049】
また上部チャンバ15の内部空間には、排気管22が真空バルブ8を介して連通されており、図示しない排気ポンプによって真空チャンバ6の内部の反応室12の空気が排気されるようになっている。
【0050】
図2に示す成膜装置は、高周波電源が不要であり、プラズマCVD装置よりも装置が安価となる。ガスバリア薄膜をプラスチック容器の内壁面に形成する装置について説明してきたが、ガスバリア薄膜をプラスチック容器の外壁面に形成するには、例えば、特許文献6の図4に示す成膜装置を用いて行うことができる。ガスバリア薄膜をプラスチック容器の内壁面及び外壁面に形成するには、図2に示す成膜装置と特許文献6の図4に示す成膜装置とを用いて行うことができる。また、成膜装置は、図2に示す装置に限定されず、例えば、特許文献6に示すように種々の変形をすることができる。
【0051】
次に、本実施形態に係るガスバリア性プラスチック成形体の製造方法を説明する。図2の成膜装置を用いれば、ガスバリア薄膜をプラスチック成形体としての容器の内壁面に被覆することが可能であり、一方、特許文献6の図4に示す成膜装置を用いれば、ガスバリア薄膜をプラスチック成形体としての容器の外壁面に被覆することが可能である。これら2つの成膜方法は、工程が共通しているため、代表例として図2の成膜装置100を用いて、ガスバリア薄膜を容器の内壁面に被覆する成膜方法を説明する。
【0052】
図3は、本実施形態に係るガスバリア性プラスチック成形体の一例を示す断面図である。本実施形態に係るガスバリア性プラスチック成形体90の製造方法は、本実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法で、その内壁面に還元層81を形成した蒸着用プラスチック成形体80(図2では、プラスチック容器11)を真空チャンバ6内に収容し、真空チャンバ6の内部に、Al源原料ガス33を供給して、Al源原料ガス33を発熱した発熱体18に接触させ、Al源原料ガス33を分解して化学種34を生成させ、還元層81の表面に化学種34を到達させることによって、ガスバリア薄膜92を形成する成膜工程を有する。
【0053】
ガスバリア性プラスチック成形体の製造方法は、成膜工程の前に、成膜装置へ蒸着用プラスチック成形体80を装着する工程と反応室の圧力を調整する工程とを有し、順次説明する。
【0054】
<成膜装置への蒸着用プラスチック成形体の装着工程>
まず、ベント(不図示)を開いて真空チャンバ6内を大気開放する。反応室12には、上部チャンバ15を外した状態で、下部チャンバ13の上部開口部からプラスチック容器11(蒸着用プラスチック成形体80)が差し込まれて、収容される。この後、位置決めされた上部チャンバ15が降下し、上部チャンバ15につけられた原料ガス供給管23とそれに固定された発熱体18がプラスチック容器の口部21からプラスチック容器11内に挿入される。そして、上部チャンバ15が下部チャンバ13にOリング14を介して当接することで、反応室12が密閉空間とされる。このとき、下部チャンバ13の内壁面とプラスチック容器11の外壁面との間隔は、ほぼ均一に保たれており、かつ、プラスチック容器11の内壁面と発熱体18との間の間隔も、ほぼ均一に保たれている。
【0055】
プラスチック成形体91が、容器である場合の装着方法は、前述のとおりである。プラスチック成形体がフィルム又はシートである場合の装着方法は、例えば、反応室12を円筒状としてその内壁にフィルム又はシートを沿わせて固定する方法である。また、真空チャンバ6内にロール状のフィルム又はシートを繰り出すロールと薄膜が形成されたフィルム又はシートを巻き取るロールとからなる巻取装置を設ける変形をしてもよい。
【0056】
<圧力調整工程>
次いで、ベント(不図示)を閉じたのち、排気ポンプ(不図示)を作動させ、真空バルブ8を開とすることにより、反応室12内の空気が排気される。このとき、プラスチック容器11の内部空間のみならずプラスチック容器11の外壁面と下部チャンバ13の内壁面との間の空間も排気されて、真空にされる。すなわち、反応室12全体が排気される。真空チャンバ6内の圧力は、例えば1.0〜100Paに到達するまで減圧することが好ましい。より好ましくは、1.4〜50Paである。大気圧からこの範囲になるように減圧すると、適度な真空圧とともに、大気、装置及び容器に由来する適度な残留水蒸気圧を得ることができ、簡易にガスバリア薄膜92を形成できる。1.0Pa未満では、排気に時間がかかる場合がある。また、100Paを超えると、プラスチック容器11内に不純物が多くなり、高いバリア性を付与することができない場合がある。
【0057】
<発熱体への通電>
次に発熱体18を、例えば通電することで発熱させる。発熱体18の発熱温度は、500℃以上であることが好ましい。より好ましくは、900℃以上であり、更に好ましくは1100℃以上である。また、発熱温度の上限温度は、その発熱体の軟化温度よりも低温とすることが好ましい。軟化温度以上では、発熱体18が変形して制御ができない場合がある。また、蒸着用プラスチック成形体80への熱によるダメージが懸念される。上限温度は、発熱体18の材料によって異なるが、例えば、モリブデンであれば、2300℃が好ましい。より好ましくは、2100℃である。
【0058】
<成膜工程>
(原料ガスの供給)
発熱体18の温度を成膜に適する温度に調整後、Al源原料ガス33を流量調整器24aで所定の流量に制御して供給する。Al源原料ガス33は、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、塩化アルミニウム、臭化アルミニウムなどのハロゲン化アルミニウム、トリターシャリーブトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリセカンダリーブトキシアルミニウム、トリスアセチルアセトネートアルミニウム、トリスジピヴァロイルメタネートアルミニウム、ジメチルアルミイソプロポキシド(DMAIP)、トリキス(トリメチルシロキシ)アルミニウムなどの金属アルミニウムアルコキシドである。この中で、材料コスト及び非自然発火性(安全性)の観点から、金属アルミニウムアルコキシドがより好ましく、DMAIPが特に好ましい。
【0059】
Al源原料ガス33として用いる物質が、液体である場合には、バブリング法で供給することができる。バブリング法に用いるバブリングガスは、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスであり、窒素ガスがより好ましい。すなわち、原料タンク40a内の出発原料41aを、ボンベ42aに充填されたバブリングガスを用いて流量調整器24aで流量制御しながらバブリングすると、出発原料41aが気化してバブル中に取り込まれる。こうして、Al源原料ガス33は、バブリングガスと混合した状態で供給される。また、液体状のAl源原料ガス33をボンベ42a内で気化させて、ボンベ42a内のヘッドスペースに充満したAl源原料ガス33を、バルブ25aを開放することで、供給する方法を採用してもよい。
【0060】
必要に応じてキャリアガスを流量調整器24bで流量制御しながら、バルブ25cの手前でAl源原料ガス33に混合してもよい。キャリアガスは、例えば、アルゴン、ヘリウム、窒素などの不活性ガスである。すると、Al源原料ガス33は、流量調整器24aで流量制御された状態で、又はキャリアガスによって流量が制御された状態で、所定の圧力に減圧されたプラスチック容器11内において、原料ガス供給管23のガス吹き出し孔17xから発熱体18に向けて吹き出される。また、Al源原料ガス33には、酸素、オゾン、過酸化水素、水蒸気、亜硝酸ガス、炭酸ガスなどの酸化ガスを混合してもよい。
【0061】
(成膜)
Al源原料ガス33が発熱体18と接触するとAlを含有する化学種34が生成される。この化学種34が、プラスチック容器11の還元層81上に到達することで、構成元素の1つがAlであるガスバリア薄膜92を堆積することになる。ガスバリア薄膜92の成膜において発熱体18を発熱させてAl源原料ガス33を供給する時間(Al源原料ガス33を発熱体18に吹き付ける時間)は、0.5〜20秒であることが好ましい。より好ましくは、5〜15秒である。
【0062】
発熱体CVD法では、プラスチック成形体91と形成されるガスバリア薄膜92との間に一定の密着性が得られるものの、本実施形態では、プラスチック成形体91とガスバリア薄膜92との間に、還元層81を設けるため、包装容器に必要な密着性を確保することができる。
【0063】
(成膜の終了)
薄膜が所定の厚さに達したところで、Al源原料ガス33の供給を止める。そして、発熱体18への通電を終了する。次いで、反応室12内を再度排気した後、図示していないリークガスを導入して、反応室12を大気圧にする。この後、上部チャンバ15を開けてプラスチック容器11を取り出す。本実施形態に係るガスバリア性プラスチック成形体の製造方法では、ガスバリア薄膜92の膜厚は、ガスバリア性の向上効果とプラスチック成形体91との密着性との両立を図るため、5〜100nmとなるようにするのが好ましい。より好ましくは、10〜85nmであり、特に好ましくは、15〜50nmである。
【0064】
発熱体CVD法は、プラズマCVDなど他の化学蒸着法又は真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理蒸着(PVD)法と比べて、装置が単純で、装置自体のコストを抑えることができる。また、発熱体CVD法では、化学種の堆積によってガスバリア薄膜が形成されるため、湿式法と比較して、かさ密度の高い緻密な膜が得られる。
【0065】
本実施形態に係るガスバリア性プラスチック成形体90は、本実施形態に係るガスバリア性プラスチック成形体の製造方法で製造してなる。本実施形態に係るガスバリア性プラスチック成形体90は、図3に示すように、プラスチック成形体91と、プラスチック成形体91上に形成された還元層81と、還元層81上に形成されたガスバリア薄膜92とを備える。ガスバリア薄膜92は、構成元素としてAl及びOを含有する。ガスバリア薄膜92は、Al及びOを構成元素として含む限り、酸化物の結晶型及び酸化度に制限されるものではない。ガスバリア薄膜は、Al及びO以外に、Mo(モリブデン)などの発熱体由来の金属元素、C(炭素)、H(水素)、N(窒素)、Si(珪素)、Ti(チタン)などのその他の元素を含んでもよい。ただし、ガスバリア薄膜92をXPS分析によって測定したAl及びO以外のその他の元素の含有量は、20at.%(原子%)以下であることが好ましい。より好ましくは、10at.%以下である。
【0066】
本実施形態に係るガスバリア性プラスチック成形体90では、プラスチック成形体91とガスバリア薄膜92との間にアルミニウム、ナトリウム、リチウム又はホウ素の少なくとも一つを含有する還元層81を有する。還元剤由来の成分が、プラスチック成形体91の表面に存在することで、成膜に適した表面とすることができる。結果として、構成元素としてアルミニウム及び酸素を含有するガスバリア薄膜92の密着性を向上することができ、水溶液中の物理化学的安定性を有する。例えば、本実施形態に係るガスバリア性プラスチック成形体90は、室温で水に浸漬したときに、ガスバリア薄膜92が、7日以上剥離しない。このように、本実施形態に係るガスバリア性プラスチック成形体90は、食品又は飲料用の包装用途として好適である。なお、プラスチック成形体91とガスバリア薄膜92との間の還元層81に存在する元素は、例えば、X線光電子分光分析(XPS分析)によって測定することができる。
【0067】
還元層81が、アルミニウムを含有することが特に好ましく、これによって、構成元素としてアルミニウム及び酸素を含有するガスバリア薄膜92との親和性をより高めることができる。この還元層81としてアルミニウムを含有する層が、プラスチック成形体91とガスバリア薄膜との間に存在することによって、プラスチック成形体91とガスバリア薄膜92との境界が不明確となり、プラスチック成形体91とガスバリア薄膜92との密着性を向上することができる。
【実施例】
【0068】
次に、実施例を示しながら本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定して解釈されない。
【0069】
(処理液1の調製)
窒素パージしたグローブボックス中で、還元剤としてリチウムアルミニウムハイドライド(LiAlH)を1.18g秤量し、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)1Lに、グローブボックス中で投入し、攪拌して溶解し、0.03mol/LのLiAlH/THF溶液を調製し、処理液1とした。なお、THFは、事前にモルキュラーシーブスで乾燥処理をして用いた。
【0070】
(処理液2の調製)
水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)と水との反応を抑えるために、予め、純水に水酸化ナトリウム4gを添加して、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液(NaOHaq)を溶媒として調製した。この溶媒に、大気中で秤量したNaBH7.56gを還元剤として溶解し、0.1mol/LのNaBH/NaOHaq溶液を調製し、処理液2とした。
【0071】
(処理液3の調製)
処理液2の調整において、NaBHを75.6gとし、これを水酸化ナトリウム水溶液1Lに溶解し、2.0mol/LのNaBH/NaOHaq溶液を調製し、処理液3とした。
【0072】
(処理液4の調製)
窒素パージしたグローブボックス中で、還元剤として水素化リチウム(LiH)を0.24g秤量し、溶媒としてTHF1Lに、グローブボックス中で投入し、攪拌して溶解し、0.03mol/LのLiH/THF溶液を調製し、処理液4とした。なお、THFは、事前にモルキュラーシーブスで乾燥処理をして用いた。
【0073】
(処理液5の調製)
窒素パージしたグローブボックス中で、還元剤としてジメチルエチルアミンアラン(EtMeN:AlH)を6.18g秤量し、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)250mLに、グローブボックス中で投入し、攪拌して溶解し、0.06mol/LのEtMeN:AlH/THF溶液を調製し、処理液5とした。なお、THFは、事前にモルキュラーシーブスで乾燥処理をして用いた。
【0074】
(実施例1)
(還元処理工程)
プラスチック成形体として、500mlの炭酸用ペットボトル(高さ205mm、胴外径66mm、口部外径27.43mm、口部内径21.74mm、肉厚300μm及び樹脂量29g、以降、該ペットボトルを本実施例において共通して用いた。)を用い、該ペットボトルに処理液1を注入して、常温で、5秒間放置した後、溶液を取り出し、エタノールで3回、ヘキサンで3回洗浄し、乾燥させて、ペットボトルの内壁面に還元層を設け、蒸着用プラスチック成形体を得た(実施例1A)。
【0075】
(成膜工程)
得られた蒸着用プラスチック成形体の還元層上に、図2に示す成膜装置を用いてガスバリア薄膜を形成した。発熱体18として、φ0.5mm、長さ40cmのモリブデンワイヤーを2本用いた。流量調整器24a及び24bからガス供給口16の配管は、すべてステンレス製の1/4インチ配管で構成した。蒸着用プラスチック成形体としてのペットボトルを真空チャンバ6内に収容し、1.4Paに到達するまで減圧した。次いで、発熱体18を1500℃に発熱させた。Al源原料ガス33としてDMAIPを用い、還元層上に薄膜を堆積させて、ガスバリア性プラスチック成形体を得た(実施例1B)。成膜工程においてAl源原料ガスを供給する時間は、5秒間とした。
【0076】
(実施例2)
実施例1の還元処理工程において、ペットボトルに処理液1を注入して放置する時間を、15秒間とした以外は、実施例1と同様にして蒸着用プラスチック成形体を得た(実施例2A)。そして、この蒸着用プラスチック成形体を用いて、実施例1の成膜工程を行った以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性プラスチック成形体を得た(実施例2B)。
【0077】
(実施例3)
実施例1の還元処理工程において、ペットボトルに処理液1を注入して放置する時間を、30秒間とした以外は、実施例1と同様にして蒸着用プラスチック成形体を得た(実施例3A)。そして、この蒸着用プラスチック成形体を用いて、実施例1の成膜工程を行った以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性プラスチック成形体を得た(実施例3B)。
【0078】
(実施例4)
実施例1の還元処理工程において、ペットボトルに処理液1を注入して放置する時間を、60秒間とした以外は、実施例1と同様にして蒸着用プラスチック成形体を得た(実施例4A)。そして、この蒸着用プラスチック成形体を用いて、実施例1の成膜工程を行った以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性プラスチック成形体を得た(実施例4B)。
【0079】
(実施例5)
実施例1の還元処理工程において、ペットボトルに処理液1を注入して放置する時間を、90秒間とした以外は、実施例1と同様にして蒸着用プラスチック成形体を得た(実施例5A)。そして、この蒸着用プラスチック成形体を用いて、実施例1の成膜工程を行った以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性プラスチック成形体を得た(実施例5B)。
【0080】
(実施例6)
実施例1の還元処理工程において、ペットボトルに処理液1を注入して放置する時間を、120秒間とした以外は、実施例1と同様にして蒸着用プラスチック成形体を得た(実施例6A)。そして、この蒸着用プラスチック成形体を用いて、実施例1の成膜工程を行った以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性プラスチック成形体を得た(実施例6B)。
【0081】
(実施例7)
プラスチック成形体として、500mlの炭酸用ペットボトルを用い、該ペットボトルに処理液2を注入して、常温で、90秒間放置した後、溶液を取り出し、純水で3回、エタノールで3回洗浄し、乾燥させて、ペットボトルの内壁面に還元層を設け、蒸着用プラスチック成形体を得た(実施例7A)。そして、この蒸着用プラスチック成形体を用いて、実施例1の成膜工程を行った以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性プラスチック成形体を得た(実施例7B)。
【0082】
(実施例8)
実施例7の還元処理工程において、ペットボトルに処理液2を注入して放置する時間を、180秒間とした以外は、実施例7と同様にして蒸着用プラスチック成形体を得た(実施例8A)。そして、この蒸着用プラスチック成形体を用いて、実施例1の成膜工程を行った以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性プラスチック成形体を得た(実施例8B)。
【0083】
(実施例9)
実施例7の還元処理工程において、処理液2に替えて処理液3とし、ペットボトルに処理液3を注入して放置する時間を、180秒間とした以外は、実施例7と同様にして蒸着用プラスチック成形体を得た(実施例9A)。そして、この蒸着用プラスチック成形体を用いて、実施例1の成膜工程を行った以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性プラスチック成形体を得た(実施例9B)。
【0084】
(実施例10)
プラスチック成形体として、500mlの炭酸用ペットボトルを用い、該ペットボトルに処理液4を注入して、常温で、60秒間放置した後、溶液を取り出し、エタノールで3回、ヘキサンで3回洗浄し、乾燥させて、ペットボトルの内壁面に還元層を設け、蒸着用プラスチック成形体を得た(実施例10A)。そして、この蒸着用プラスチック成形体を用いて、実施例1の成膜工程を行った以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性プラスチック成形体を得た(実施例10B)。
【0085】
(実施例11)
プラスチック成形体として、500mlの炭酸用ペットボトルを用い、該ペットボトルに処理液5を注入して、常温で、180秒間放置した後、溶液を取り出し、エタノールで3回、ヘキサンで3回洗浄し、乾燥させて、ペットボトルの内壁面に還元層を設け、蒸着用プラスチック成形体を得た(実施例11A)。そして、この蒸着用プラスチック成形体を用いて、実施例1の成膜工程を行った以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性プラスチック成形体を得た(実施例11B)。
【0086】
(比較例1)
実施例1の還元処理工程を行わず、成膜工程において、実施例1の蒸着用プラスチック成形体に替えて、還元処理をしていない500mlの炭酸用ペットボトル(比較例1A)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性プラスチック成形体を得た(比較例1B)。
【0087】
(接触角)
実施例1A〜実施例11Aのペットボトルの胴部を10mm×10mmで切り出し、接触角計(CA‐D、協和界面科学社製)を用いて、水との接触角を測定した。結果を表1に示す。
【0088】
(表面粗さ(Ra))
実施例1A〜実施例11Aのペットボトルの胴部を10mm×10mmで切り出し、走査プローブ顕微鏡(SPM‐9600、島津製作所社製)を用いて、視野30μm角における平均表面粗さ(Ra)を測定した。結果を表1に示す。
【0089】
(アルミニウムの含有量)
実施例1A〜実施例6A及び実施例11Aのペットボトル(蒸着用プラスチック成形体)の内壁面を、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX‐800HS、島津製作所社製)を用いて元素組成分析し、還元層中のアルミニウムの含有量を測定した。結果を表1に示す。
【0090】
(ガスバリア性‐BIF)
実施例3B、実施例4B及び比較例1Bのペットボトル(ガスバリア性プラスチック成形体)について、ガスバリア性をBIFで評価した。BIFは、数1において、実施例3B、実施例4B及び比較例1Bで得たガスバリア薄膜を形成したペットボトルの酸素透過度の値を「ガスバリア性プラスチック成形体の酸素透過度」とし、比較例1Aのペットボトル(還元層及び薄膜を形成していないペットボトル)の酸素透過度を「薄膜未形成のプラスチック成形体の酸素透過度」として算出した。酸素透過度は、酸素透過度測定装置(Oxtran 2/20、Modern Control社製)を用いて、23℃、90%RHの条件にて測定し、測定開始から24時間コンディショニングし、測定開始から72時間経過後の値とした。なお、薄膜未形成のペットボトルの酸素透過度は、0.0350cc/容器/日であった。結果を表2に示す。
【0091】
(密着性‐耐水性)
実施例1B〜11B及び比較例1Bのペットボトル(ガスバリア性プラスチック成形体)に蒸留水を500ml充填し、常温(25℃)で保管した。膜の剥離の有無は、ペットボトルを目視で観察し、内壁面の親水性の有無で判定した。すなわち、蒸留水が内壁面の全体に濡れていて、親水性があるときは、剥離なしと判定し、内壁面で蒸留水が濡れていない撥水性の部分があるときは、剥離ありと判定した。充填後、剥離ありの判定となるまでの日数を表1に示す。7日以上を実用レベルとし、7日未満を実用不適レベルとした。結果を表2に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
実施例1B〜実施例11Bのガスバリア性プラスチック成形体は、密着性評価において、ガスバリア薄膜が7日以上剥離せず、ガスバリア薄膜の密着性(耐水性)に優れていることが確認できた。一方、比較例1Bのサンプルは、密着性評価において、ガスバリア薄膜が1日以内に剥離に至り、ガスバリア薄膜の密着性に乏しかった。還元層によるガスバリア薄膜の密着性向上効果が確認できた。このように、実施例1A〜実施例11Aの蒸着用プラスチック成形体は、AlOxを含有するガスバリア薄膜を発熱体CVD法で形成するのに適した表面を有することが確認できた。さらに、実施例1A〜実施例6Aは、還元剤としてLiAlHを用いたため、短時間での還元処理で、ガスバリア薄膜を形成するのに適した還元層を形成することができた。また、実施例3B及び実施例4Bについて、ガスバリア性を評価したところ、BIFが10であり、還元処理を行わなかった比較例1Bと同等の高いガスバリア性を有していた。還元処理が、ガスバリア性に悪影響を及ぼさないことが確認できた。
【0095】
図4は、実施例5Aの蒸着用プラスチック成形体について、還元層の表面状態を示すSEM画像及び同一領域の元素分布のマッピングイメージ(C,O及びAl)である。SEM画像は、走査型電子顕微鏡(SEM、SU1510、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて観察した。元素分布のマッピングイメージは、SEM観察時に、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX‐800HS、堀場製作所社製)を用いて行った。図4に示すとおり、還元層を形成した側の表面では、C,O及びAlのすべてが分布しており、還元層として、AlOxを含有する層が形成されていることが確認できた。実施例1A〜実施例4A及び実施例6Aについても、同様に、還元層を形成した側の表面では、C,O及びAlのすべてが分布していた。
【0096】
図5は、実施例1A、実施例4A、実施例5A及び実施例6Aの蒸着用プラスチック成形体について、還元層の表面状態を示すSEM画像である。図5に示すSEM画像において、白く見える部分は、EDXを用いた分析結果から、黒く見える部分よりもAlOxが厚く堆積した部分(以降、AlOx片(図5では、アルミナ片と表記した。)という。)である。図5に示すとおり、処理液との接触時間が長くなるにしたがって、PET表面を覆うAlOx片が増え、実施例5A及び実施例6Aでは、AlOx片がPET表面のほぼ全域を覆い、かつ、局所的に粒状に堆積して部分があるのが確認できた。このAlOx片が、粒状に堆積した部分(図5では、粒状のアルミナ片と表記した。)があることによって、還元層の表面の平滑性が損なわれ、ガスバリア薄膜を良好に成膜ができなかったため、実施例5B及び実施例6Bは、実施例3B又は実施例4Bと比べて、処理液との接触時間を長いにもかかわらず、密着性評価の結果が、実施例3B又は実施例4Bよりも劣ったと考えられる。
【0097】
実施例3B及び実施例4Bは、密着性評価において、90日経過してもなおガスバリア薄膜の剥離が見られず、特に高い密着性(耐水性)を有していた。そこで、実施例4Aを例にとって、ペットボトル(蒸着用プラスチック成形体)の内壁面について、飛行時間型二次イオン質量分析(ToF‐SIMS)を用いて、プラスチック成形体と還元層との化学結合状態を確認した。図6は、実施例4Aの蒸着用プラスチック成形体について、還元層の表面のToF‐SIMSによるマイナスイオンピーク分析結果を示すスペクトルであり、(a1)〜(a4)はAlCに由来するピークを示し、(b1)〜(b4)はAlCに由来するピークを示す。なお、図6において、(a1)〜(a4)又は(b1)〜(b4)は、一つのサンプルについて、任意に選択した4箇所をそれぞれ測定した結果である。なお、ToF‐SIMSによるマイナスイオンピーク分析は、財団法人材料科学技術振興財団への分析依頼によって実施し、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF. SIMS5、ION−TOF社製)を用いて、一次イオンBi3++、一次イオン加速電圧25kV、電流0.2pA(10kHz)、サイクルタイム180μs、走査領500μmの条件で測定した。すると、図6に示すように、任意の4箇所のすべてについて、AlC及びAlCに由来するピーク(カウント100以上)が観察された。このことは、ペットボトルを構成するPET分子と還元剤由来のアルミニウムとが化学的に結合して、化1に示す結合状態が形成されていることを示唆している。プラスチック成形体とガスバリア薄膜との間に、還元層として、PETと化学的に結合したAlOx含有層を介することで、プラスチック成形体とガスバリア薄膜との境界が不明確となり、特に高い密着性が得られたと考えられる。なお、AlC及びAlCに由来するピーク以外に、カウント100以上のピークとして、例えば、AlCO、AlCO、AlCO、AlC10O、AlC、AlC、AlC、AlC、AlC、AlC、AlC、Al又はAlに由来するピークが観察された。
【0098】
【化1】

【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明に係る蒸着用プラスチック成形体は、AlOxを含有するガスバリア薄膜を発熱体CVD法で形成するのに適した表面を有する。本発明に係るガスバリア性プラスチック成形体は、本発明に係る蒸着用プラスチック成形体の還元層上にガスバリア薄膜を設けるため、ガスバリア薄膜の密着性が高く、水溶液中の物理化学的安定性を有する。したがって、食品又は飲料用の包装用途として好適である。
【符号の説明】
【0100】
6 真空チャンバ
8 真空バルブ
11 プラスチック容器
12 反応室
13 下部チャンバ
14 Oリング
15 上部チャンバ
16 ガス供給口
17 原料ガス流路
17x ガス吹き出し孔
18 発熱体
19 配線
20 ヒータ電源
21 口部
22 排気管
23 原料ガス供給管
24a,24b 流量調整器
25a,25b,25c バルブ
26a,26b 接続部
27 冷却水流路
28 内面
29 冷却手段
33 Al源原料ガス
34 化学種
35 絶縁セラミックス部材
40a 原料タンク
41a 出発原料
42a,42b ボンベ
80 蒸着用プラスチック成形体
81 還元層
90 ガスバリア性プラスチック成形体
91 プラスチック成形体
92 ガスバリア薄膜
100 成膜装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成元素としてアルミニウム及び酸素を含有するガスバリア薄膜を形成するための蒸着用プラスチック成形体の製造方法において、
還元剤としてリチウムアルミニウムハイドライド、水素化ホウ素ナトリウム、リチウムハイドライド又はジメチルエチルアミンアランのうち少なくとも1種を含有する処理液を用いて、プラスチック成形体の表面を還元処理し、該プラスチック成形体の表面上に還元層を形成する還元処理工程を有することを特徴とする蒸着用プラスチック成形体の製造方法。
【請求項2】
前記還元処理が、前記還元剤としてリチウムアルミニウムハイドライドを用い、かつ、条件1を満たす処理であることを特徴とする請求項1に記載の蒸着用プラスチック成形体の製造方法。
(条件1)前記還元層のアルミニウム含有量が、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)を用いた元素組成分析値で、0.03〜0.06cps/μAである。
【請求項3】
前記プラスチック成形体が、フィルム、シート又は容器であることを特徴とする請求項1又は2に記載の蒸着用プラスチック成形体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の製造方法で得た蒸着用プラスチック成形体を真空チャンバ内に収容し、該真空チャンバの内部に、Al源原料ガスを供給して、該Al源原料ガスを発熱した発熱体に接触させ、前記Al源原料ガスを分解して化学種を生成させ、前記還元層の表面に前記化学種を到達させることによって、ガスバリア薄膜を形成する成膜工程を有することを特徴とするガスバリア性プラスチック成形体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の製造方法で製造してなる蒸着用プラスチック成形体。
【請求項6】
請求項4に記載の製造方法で製造してなるガスバリア性プラスチック成形体。
【請求項7】
構成元素としてアルミニウム及び酸素を含有するガスバリア薄膜を形成するための蒸着用プラスチック成形体において、
プラスチック成形体と、該プラスチック成形体上に形成された還元層とを備え、
該還元層は、飛行時間型二次イオン質量分析(ToF‐SIMS)によるマイナスイオン分析で、AlC又はAlCの少なくとも一つに由来するピークが観察されることを特徴とする蒸着用プラスチック成形体。
【請求項8】
前記還元層のアルミニウム含有量が、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)を用いて元素組成分析値で、0.03〜0.06cps/μAであることを特徴とする請求項7に記載の蒸着用プラスチック成形体。
【請求項9】
プラスチック成形体とガスバリア薄膜との間にアルミニウム、ナトリウム、リチウム又はホウ素の少なくとも一つを含有する還元層を有することを特徴とするガスバリア性プラスチック成形体。
【請求項10】
室温で水に浸漬したときに、前記ガスバリア薄膜が、7日以上剥離しないことを特徴とする請求項9に記載のガスバリア性プラスチック成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−219290(P2012−219290A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83914(P2011−83914)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】