説明

蒸着用ポリエステルフィルム

【課題】 高い反射率を有し、メタクリル樹脂との摩擦特性に優れ、巻取作業性も良好な主に液晶表示板の反射フィルム用途に用いられる蒸着用ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 380nmの紫外線透過率が20%以下であり、フィルムのヘーズが1.5%以下であり、下記式(1)で定義される摩擦係数の差Δμが0.15以下であることを特徴とする蒸着用ポリエステルフィルム。
Δμ=μsmax−μdmin
(上記式中、μsmaxは、非蒸着面側のフィルム表面とメタクリル樹脂板との静摩擦係数をJIS K6718に記載の方法で5回繰り返して測定したときの最大値であり、μdminは、非蒸着面側のフィルム表面とメタクリル樹脂板との動摩擦係数をJIS K6718に記載の方法で5回繰り返して測定したときの最小値である)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着タイプの光反射用フィルムに関し、特にエッジライトタイプの液晶ディスプレイに用いられる、フィルムの片面が蒸着された光反射フィルムとして用いることのできるフィルム基材に関する。
【背景技術】
【0002】
反射用フィルムは、主に白色顔料や微細気泡を含有する白色フィルムと、フィルム表面上にアルミニウムや銀を蒸着して蒸着面側を反射面としたフィルムとに分けることができる。前者は光の拡散性が優れ、指向性の小さい反射フィルムであり、液晶表示板等に広く使用されている。後者は銀蒸着した反射フィルムが、前者の白色フィルムと比較して可視光線の光反射率が高く、バックライトの消費電力を抑えることができるため、また高度な画面品質を達成するため、液晶表示板の反射体への使用が最近増えてきている。
【0003】
金属蒸着をしたポリエステルフィルム基材に関する検討は、過去にもなされている。例えば特許文献1によれば、ポリエステルに非相溶性樹脂や不活性粒子を含有しフィルムの表面粗さを限定したフィルムが提案されている。しかし、蒸着面の表面粗さが大きく、エッジライトタイプの液晶表示板に要求される高い反射率を達成できていない。また、特許文献2によれば、滑り性に優れ、透明性と光沢性の良好なフィルムが開示されているが、フィルムの巻取性は改良されているものの、反射フィルム用途に用いた場合には、透明性が不十分であり、メタクリル樹脂製の導光板やアクリル系塗布剤を表面に塗布した光拡散フィルム表面との摩擦係数が大きく、液晶ディスプレイ装置の組立に悪影響を与える問題がある。特許文献3によれば、化学反応しやすい銀蒸着層を保護する目的で、銀蒸着層の上に透明性が高くバリア性に優れた特殊な保護層を設けることが必要になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−135728号公報
【特許文献2】特開昭58−183245号公報
【特許文献3】特開平8−294987号公報
【特許文献4】特開平4−325532号公報
【特許文献5】特開昭62−225345号公報
【特許文献6】特開昭58−222519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、高い反射率を有し、メタクリル樹脂との摩擦特性に優れ、巻取作業性も良好な主に液晶表示板の反射フィルム用途に用いられる蒸着用ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、380nmの紫外線透過率が20%以下であり、フィルムのヘーズが1.5%以下であり、下記式(1)で定義される摩擦係数の差Δμが0.15以下であることを特徴とする蒸着用ポリエステルフィルムに存する。
Δμ=μsmax−μdmin
(上記式中、μsmaxは、非蒸着面側のフィルム表面とメタクリル樹脂板との静摩擦係数をJIS K6718に記載の方法で5回繰り返して測定したときの最大値であり、μdminは、非蒸着面側のフィルム表面とメタクリル樹脂板との動摩擦係数をJIS K6718に記載の方法で5回繰り返して測定したときの最小値である)
【発明の効果】
【0008】
透明性が高く高い反射率を示し、またメタクリル樹脂との摩擦特性に優れた、金属蒸着層を保護する効果のある反射体用基材ポリエステルフィルムを提供することができ、本発明の工業的価値は顕著である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明におけるポリエステルとは、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸等のような芳香族ジカルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のようなグリコールとのエステルを主たる成分とするポリエステルである。当該ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接重合させて得られるほか、芳香族ジカルボン酸ジアルキルエステルとグリコールとをエステル交換反応させた後、重縮合させる方法、あるいは芳香族ジカルボン酸のジグリコールエステルを重縮合させる等の方法によっても得られる。当該ポリエステルの代表的なものとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)、ボリブチレンテレフタレート等が例示される。かかるポリエステルは、共重合されないホモポリマーであってもよく、またジカルボン酸成分の20モル%以下が主成分以外のジカルボン酸成分であり、および/またはジオール成分の20モル%以下が主成分以外のジオール成分であるような共重合ポリエステルであってもよい。またそれらの混合物であってもよい。
【0011】
本発明のフィルムのヘーズは、1.5%以下であり、さらに好ましくは1.3%以下、特に好ましくは1.2%以下である。ヘーズが1.5%を超えると、蒸着面の反対面から入射し、フィルムの中を通過して蒸着面で反射し、再びフィルムの中を通り、蒸着面の反対面から出ていく過程での光のロスが発生し好ましくない。本発明が目的とする高い反射率の反射フィルム用途には不適当である。
【0012】
また、一方のフィルム表面の表面粗さ(Ra)は、好ましくは0.02μm以下であり、さらに好ましくは0.015μm以下、特に好ましくは0.010μm以下である。表面粗さRaが、0.02μmを超えるとヘーズが上昇し反射率が低下する傾向がある。通常、上記Raを満足する面の方に蒸着層を設ける。
【0013】
本発明のフィルムの一方の面とメタクリル樹脂との摩擦係数の差Δμが0.15以下であり、好ましくは0.10以下、さらに好ましくは0.05以下である。当該Δμを満足する面とは反対側の面(以下、蒸着面と呼ぶことがある)に通常は蒸着層を設けるが、Δμが0.15を超えると、メタクリル樹脂製の導光板やメタクリル樹脂を塗布した光学フィルムの表面でスティックスリップが発生しやすくなり、液晶表示板の組立加工時の作業性に悪影響を与える。
【0014】
フィルムの表面のΔμを下げるためには、当該表面に適切にコントロールされた微小突起を設けることが好ましい。適度にコントロールされた微小突起とは、表面粗さRaで好ましくは0.005〜0.050μmの範囲であり、さらに好ましくは0.007〜0.040μmの範囲である。また、微小突起の突起高さ分布は、小さいことが好ましく、突起分布係数で通常−7以下、好ましくは−10以下、さらに好ましくは−12以下である。突起高さ分布係数が−7を超えるとフィルム表面の突起高さが不均一となり、摩擦時に突起にかかる荷重が大きくなり、メタクリルコート面やメタクリル板にキズが入りやすくなる。
【0015】
本発明において、上記のような表面特性を有するフィルムを得るためには、例えば、平均粒径や粒径分布がコントロールされた不活性粒子をポリエステルに適量含有させればよい。用いる不活性粒子の平均粒径は0.3〜15μmが好ましく、さらに好ましくは0.5〜10μm、特に好ましくは0.7〜7μmである。平均粒径が0.3μm未満の不活性粒子では、良好な摩擦特性を得られないことがある。一方、平均粒径が15μmを超えると、粒子が脱落しやすくなる傾向がある。
【0016】
本発明で用いる不活性粒子の粒径分布は、下記で定義される粒度分布幅が好ましくは1.6以下であり、さらに好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.4以下である。粒度分布幅が1.6を超えると、突起高さ分布係数が大きくなり、フィルム表面の突起高さが不均一になる、さらにフィルム製造工程で粗大突起に由来の摩耗が発生しやすく、蒸着欠陥が発生してしまうことがある。
【0017】
定義:MICROTRAC HRA(Honeywell.Inc社製)を用いてポリエステル層中の不活性粒子の粒度分布幅を測定し、不活性粒子の全体積を100体積%として累積カーブを求め、累積カーブの粒径の大きな方から25体積%、75体積%となる点での不活性粒子の粒径をそれぞれd25、d75とし、これらd25とd75との比率(d25/d75)を粒度分布幅と定義した。
【0018】
また、不活性粒子の含有量は、不活性粒子の平均粒径にも依存し、平均粒径をDμmとすると、0.005×D〜0.5×D重量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.07×D〜0.3×D重量%の範囲である。不活性粒子の含有量が0.005×D重量%未満では、巻き取り作業性が悪化したり、メタクリル板との摩擦特性が悪化したりすることがある。一方、0.5×D重量%を超えると、ヘーズが上昇し反射率が低下する傾向がある。
【0019】
不活性粒子の種類は特に限定しないが、粒度分布がコントロールされた合成炭酸カルシウム、球状シリカ粒子、有機高分子粒子などが例として挙げられる。なかでも適度な弾性率を有する有機単分散粒子が好ましい。また2種類以上の不活性粒子を用いてもよい。
【0020】
本発明のフィルムの蒸着面に析出するオリゴマーの量は、6.0mg/m以下であることが好ましく、5.0mg/m以下、さらには4.0mg/m以下、特には3.0mg/m以下が好ましい。フィルム表面に析出するオリゴマー量が6.0mg/mを超えると、析出オリゴマーによる蒸着欠陥の発生が多くなる傾向がある。
【0021】
フィルム表面に析出するオリゴマー量を低減するには、原料のポリエステルレジンに含まれるオリゴマーの含有量を固相重合法などにより低減する方法がある。フィルムに含まれるエチレンテレフタレート環状三量体オリゴマーの含有量は、好ましくは0.8重量%以下、さらに好ましくは0.7重量%以下である。またオリゴマーのフィルム表面への析出を防止する目的の塗布層をフィルム表面に設ける方法もある。
【0022】
本発明のフィルムの層構成は、単層でも多層でもよい、多層の場合は、例えばA/Bの二層、A/B/AやA/B/Cの三層の構成をとることができる。多層の方が蒸着面を構成する層や反対面を構成する層の表面粗さをコントロールできること、また中間層に実質的に粒子を含有させなくて済み、透明性を上げることができるため、より好ましい。
【0023】
本発明のフィルムの最外層を形成する層の厚みは、当該層に用いる不活性粒子の平均粒径をDμmとすると、0.1×D〜4×Dμmの範囲であることがそれぞれ好ましく、さらに好ましくは0.15×D〜3×Dμm、特に好ましくは0.2×D〜2×Dの範囲である。最外層の厚みが0.1×Dμm未満では、不活性粒子の脱落が起こりやすい傾向があり、4×Dμmを超えると、突起高さの分布が大きくなる傾向がある。
【0024】
本発明のフィルム厚みは特に限定しないが、通常10〜500μmであり、好ましくは20〜400μmである。フィルム厚みが10μm未満では、フィルムの製膜性が悪くなる傾向がある。また、フィルム厚みが500μmを超えると、二軸延伸フィルムのフィルム生産性が低下する傾向がある。
【0025】
また、本発明のフィルムにおける380nmの紫外線光の透過率は、20%以下、好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。380nmの紫外線光の透過率が20%を超えると、ポリエステルフィルムの変色、または銀蒸着層の変色が発生することがあり、反射光に色が付いてしまうこともある。
【0026】
本発明において用いることのできる紫外線吸収剤としては、従来公知の紫外線吸収剤、例えば、サリチル酸系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、インドール系化合物、1,3,5−トリアジン化合物、環状イミノエステル系化合物などが挙げられる。これらの中では、ポリエステル樹脂への溶解性などの観点からベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、1,3,5−トリアジン系化合物、環状イミノエステル系化合物が好ましい。
【0027】
ベンゾトリアゾール系化合物の例としては、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α’−ジメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾールや、ヒンダードフェノール抗酸化剤を結合させた6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−t−ブチル−6’−t−ブチル−4’−2,2’−メチレンビスフェノール、ベンゾトリアゾール基をオルト位に置換したフェノールをメチレン基で2個接続した形の2,2’−メチレンビス〔4−(1,1,3,3テトラメチルブチル)−6−〔(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕〕、2,2’−メチレンビス〔4−(1,1−ジメチルベンジル)−6−〔(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕〕などや、イミド環を有した2−〔2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロキシフタルアミド−メチル)−5−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0028】
ベンゾフェノン系化合物の例としては、2−ヒドロキシ−4−アルコキシベンゾフェノンをメチレン基で2個接続したものが好ましく、具体的には、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−ブトキシフェニル)メタンなどが挙げられる。
【0029】
1,3,5−トリアジン系化合物の例としては、3つのベンゼン環のうち少なくとも1つはオルト位にフェノール性水酸基を置換基に有するトリフェニル−1,3,5−トリアジンが好ましく、具体的には、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−〔(ヘキシル)オキシ〕−フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−〔(オクチル)オキシ〕−フェノールなどが挙げられる。
【0030】
環状イミノエステル化合物の例としては、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)および2,2’−(2,6−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などが挙げられる。
【0031】
本発明のフィルムには、必要に応じて帯電防止剤、着色剤、酸化防止剤、消泡剤、蛍光増白剤等の添加剤を含有してもよい。また、表面粗さに大きな影響を与えない程度であれば、平均粒径が0.1μm以下の不活性粒子を含有していてもよい。また、必要に応じ、フィルムの表面に易滑性、易蒸着性、帯電防止、易接着性等を付与する目的のコーティング処理を行うこともできる。
【0032】
なお、本発明のフィルムは、通常非蒸着面側からフィルム中に入射した光を蒸着面で反射する形態で使用する、蒸着層のフィルム側とは反対側には、蒸着層を保護する目的の塗布層を設けたり、接着剤層などを設けたりして、支持体に貼り合わされて使用される。
次に本発明のフィルムの製造方法を具体的に説明するが、本発明の構成要件を満足する限り、以下の例示に特に限定されるものではない。
【0033】
本発明のフィルムを製造するときには、各層を形成する乾燥したポリエステルを押出機に供給し、ポリエステルの融点以上の温度に加熱して溶融させる。次いで、Tダイから溶融シートとして押出す。
【0034】
続いて、溶融シートを回転冷却ドラム上でガラス転位温度未満にまで急冷し、非晶質の未延伸フィルムを得る。このとき、未延伸フィルムの平面性を向上させるために、静電印加密着法や液体塗布密着法等によって、未延伸フィルムと回転冷却ドラムとの密着性を向上させてもよい。
【0035】
得られた未延伸フィルムを、ロール延伸機を用いて、その長手方向に延伸(縦延伸)することにより一軸延伸フィルムを得る。このときの延伸温度は、(原料レジンのガラス転移温度(Tg)−10)〜(Tg+40)℃の温度範囲とすることが好ましい。また、延伸倍率は好ましくは2.5〜7.0倍、さらに好ましくは3.0〜6.0倍である。縦延伸を一段階のみで行ってもよいし、二段階以上に分けて行ってもよい。
【0036】
次いで、テンター延伸機を用いて、一軸延伸フィルムをその幅方向に延伸(横延伸)することにより二軸延伸フィルムを得る。このときの延伸温度は、原料レジンのガラス転移温度(Tg)〜(Tg+50)℃の温度範囲で延伸する。また、延伸倍率は、好ましくは2.5〜7.0倍、さらに好ましくは3.5〜6.0倍である。さらに、横延伸を一段階のみで行ってもよいし、二段以上に分けて行ってもよい。また縦と横を同時に行う同時二軸延伸を行ってもよい。そして二軸延伸フィルムを熱処理することにより積層フィルムが製造される。このときの熱処理温度は、130〜250℃である。二軸延伸フィルムを熱処理するときには、二軸延伸フィルムに対して20%以内の弛緩を行ってもよい。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、本発明で用いた測定法および用語の定義は次のとおりである。
【0038】
(1)平均粒径
フィルム中の少なくとも100個の不活性粒子についてSEMを用いて観察して最大径と最小径とをそれぞれ求め、その相加平均を不活性粒子の平均粒径とした。
【0039】
(2)表面粗さRa
小坂研究所社製表面粗さ測定機(SE−3F)を用い、JIS−B−0601−1982に準じて測定した。なお測定長2.5mmとした。
【0040】
(3)突起高さ分布係数
直接位相検出干渉法(いわゆるマイケルソンの干渉を利用した2光束干渉法)を使用した非接触表面形状計測システム(マイクロマップ社製 Micromap512)により、突起高さと突起個数を測定した。本発明で言う突起高さX(μm)は、突起個数Yが最大になる面の高さを0レベルとして、このレベルからの高さをもって突起高さXとし、突起個数Yが300以上のデータについて各突起高さXにおけるLogYとの関係を最小二乗法で処理した。そして、logY=ax+bにおけるaを突起高さ分布係数とし、10視野について測定した値を平均した。
【0041】
(4)析出オリゴマー量
上部が開放され、底辺の面積が250cmとなるように、ポリエステルフィルムを折って、四角の箱を作成した。その際、測定する面が内側となるようにした。次いで、上記の方法で作成した箱の中に、DMF(ジメチルホルムアミド)10mlを入れ、3分間放置した後、DMFを回収した。回収したDMFを液体クロマトグラフィー(島津LC−7A)に供給して、DMF中のオリゴマー(エチレンテレフタレート環状三量体)量を求めた。次にこの値を、DMFを接触させたフィルム面積で割って、フィルム表面オリゴマー量(mg/m)とした。液体クロマトグラフの条件は下記のとおりである。
移動相A:アセトニトリル
移動相B:2%酢酸水溶液
カラム:三菱化学(株)製 MCI GEL ODS 1HU
カラム温度:40℃
流速:1ml/分
検出波長:254nm
【0042】
(5)反射率
フィルム表面に厚さ60nmのアルミニウムを蒸着し、蒸着した面の反対面から光を照射して反射した光の割合を求めた。測定装置は MPC−3100(島津製作所(株))で、測定光入射(反射)角5゜で波長400nmから700nmの反射光を測定し、平均値を反射率(%)とした。
【0043】
(6)ヘーズ
日本電色工業社製分球式濁度計NDH−300Aによりフィルムのヘーズ%を測定した。
【0044】
(7)メタクリル樹脂板との摩擦係数
JIS K6718に規定された厚み2mmのメタクリル樹脂板の表面をヘキサン、次いでエタノールで洗浄した。次にメタクリル樹脂板に、幅15mm、長さ150mmに切り出したフィルムを重ね、その上にゴム板を載せ、さらにその上に荷重を載せ、フィルムとメタクリル樹脂板の接圧を10メガPaとして20mm/分で滑らせて摩擦力を測定した。なお測定は、温度23℃±1℃、湿度50%±5%の雰囲気下で5回繰り返して行い、2秒後摩擦係数を静摩擦係数(μs)、15秒後の摩擦係数を動摩擦係数(μd)とした。
【0045】
(8)アクリル板とのスティックスリップ性
上記の測定で3分間滑らせて摩擦係数の変動の状況を測定し、スティックスリップ性を次の3ランクに分けた。
○:摩擦係数の変動の大きさは、0.1以下であり、ほとんど変動することなく滑らかに滑った
△:摩擦係数の変動の大きさは、0.1を超え0.3以下であった
×:摩擦係数の変動の大きさは、0.3を超え変動も頻繁に起こった
【0046】
(9)巻き取り作業性
製膜工程における巻取り作業性を評価し、次の3ランクに分けた。
○:スムースに巻き取ることができ、端面も揃っておりツブ跡やシワの発生もない
△:ほぼ問題なく巻取りができるが、端面がやや不揃いで時々ツブ跡シワが発生する
×:キズ、シワが入りやすく、また端面が不揃いになりやすい
【0047】
次に以下の例で用いた原料の調整について説明する。
・ポリエステルA
原料にテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールを用い、重縮合反応時に平均粒径0.7μm、粒度分布幅(d25/d75)1.5の合成炭酸カルシウムを分散させたエチレングリコールスラリーを添加して0.2重量%の合成炭酸カルシウムを含有する極限粘度0.65のポリエチレンテレフタレート樹脂を合成した。
【0048】
・ポリエステルB
重縮合反応時に平均粒径3.0μm、粒度分布幅(d25/d75)1.7の不定形シリカを分散させたエチレングリコールスラリーを添加して0.2重量%の不定形シリカを含有する極限粘度0.65のポリエチレンテレフタレート樹脂を合成した。
【0049】
・ポリエステルC−1
常法の重縮合で合成された極限粘度0.65、融点253℃のポリエチレンテレフタレート樹脂に、乳化重合で合成された平均粒径2.0μm、粒度分布幅(d25/d75)が1.3のアクリル系の単分散架橋高分子粒子を練り混み0.5重量%含有させた。
【0050】
・ポリエステルC−2
常法の重縮合で合成された極限粘度0.65、融点253℃のポリエチレンテレフタレート樹脂に、乳化重合で合成された平均粒径2.0μm、粒度分布幅(d25/d75)が1.3のアクリル系の単分散架橋高分子粒子を練り混み2.0重量%含有させた。
【0051】
・ポリエステルD
常法の重縮合で合成された極限粘度0.65、融点253℃のポリエチレンテレフタレート樹脂に環状イミノエステル系紫外線吸収剤を練り込み5重量%含有させた。
【0052】
・ポリエステルE
実質的に不活性粒子を含有しない常法の重縮合で合成された極限粘度0.65、融点
253℃のポリエチレンテレフタレート樹脂である。
【0053】
・ポリエステルF
常法の重縮合で合成されたポリエチレンテレフタレートに固相重合を行い、極限粘度0.70、融点250℃、エチレンテレフタレート環状三量体含有量が、0.65重量%の樹脂である。
【0054】
比較例1:
A層にポリエステルA、B層にポリエステルBを5重量部とポリエステルEが95重量部の混合物を用い、A層の原料チップはサブのベント付き二軸押出機に、B層の原料チップはメインのベント付き二軸押出機に供給して溶融温度280℃で溶融し、サブ押出機の溶融ポリマーを、ギヤポンプフィルターを介して、メイン押出機からの溶融ポリマーとフィードブロックで分流させ、ダイを通してキャスティングドラムに引き取り、未延伸フィルムとした。キャスティングの際、静電密着法を採用した。かくして得られた2種2層の積層未延伸フィルムを縦延伸ロールに送り込み、まずフィルム温度83℃(IRヒーター付与)で2.4倍延伸した後、さらに87℃(IRヒーター付与)で1.2倍延伸した後、テンターに導き100℃で横方向に3.9倍延伸して二軸配向フィルムを得た。次いで、得られた二軸配向フィルムを熱固定ゾーンに導き、200℃で5秒間幅方向に3%弛緩させながら熱固定した。なお、A層の厚みは、ギヤポンプの吐出量を調整することでコントロールした。
【0055】
実施例1:
A層にポリエステルC−1が40重量部とポリエステルEが60重量部の混合物を用いて、中間層のB層にポリエステルDを用いて、サブ押出機のA層の溶融ポリマーをフィルムの表裏2層に分岐した後、ギヤポンプフィルターを介して、メイン押出機からの溶融ポリマーとフィードブロックで分流させ、表1の積層厚み構成にしたほかは比較例1と同じ条件とした。
【0056】
実施例2:
A層にポリエステルC−1が8重量部とポリエステルFが92重量部の混合物を用いて、中間層のB層にポリエステルDを用いて、表1の層構成のフィルムを作成したほかは実施例1と同じ条件とした。
【0057】
比較例2:
ポリエステルBが5重量部とポリエステルEが95重量部の混合物をメイン押出機で溶融し、単層のダイに供給したほかは比較例1と同じ条件とした。
比較例3:
A層にポリエステルC−2を用いたほかは実施例1と同じ条件とした。
以上、得られた結果をまとめて下記表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
実施例1および2においては、メタクリル板とのスティックスリップも起こさず良好な摩擦特性を示した、またヘーズが小さいため反射率が大きかった。特に実施例3は蒸着表面のオリゴマーの量も少なく良好な表面状態を形成した。一方、比較例1は紫外線透過率が大きく、比較例2は、ヘーズは小さいが、メタクリル樹脂との摩擦特性や巻き取り作業性が劣った。比較例3は、ヘーズが1.5%を超えるため、反射率が低下した。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のフィルムは、例えば、光反射フィルム用途の基材として好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
380nmの紫外線透過率が20%以下であり、フィルムのヘーズが1.5%以下であり、下記式(1)で定義される摩擦係数の差Δμが0.15以下であることを特徴とする蒸着用ポリエステルフィルム。
Δμ=μsmax−μdmin
(上記式中、μsmaxは、非蒸着面側のフィルム表面とメタクリル樹脂板との静摩擦係数をJIS K6718に記載の方法で5回繰り返して測定したときの最大値であり、μdminは、非蒸着面側のフィルム表面とメタクリル樹脂板との動摩擦係数をJIS K6718に記載の方法で5回繰り返して測定したときの最小値である)

【公開番号】特開2010−65229(P2010−65229A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283516(P2009−283516)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【分割の表示】特願2003−394825(P2003−394825)の分割
【原出願日】平成15年11月26日(2003.11.26)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】