説明

蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムロールの製造方法およびその製造方法により得られる蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムロール

【課題】蒸着加工された長尺巻きのフィルムロールにおいて、蒸着加工前のフィルムロールの巻芯部まで、ガスバリアー性及び蒸着層との密着性に優れた蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】巻長さ50,000m以下の蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムロールの製造方法であって、縦延伸工程後、ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に易接着コート剤を塗布する工程、前記易接着コート剤の乾燥工程、横延伸工程、および熱処理工程をこの順に経たのち、得られたフィルムを巻取る工程を含む製造方法であり、前記乾燥工程において、乾燥時の雰囲気温度を50〜70℃とし、かつ乾燥時間を3秒以上とすることを特徴とする蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムロールの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着フィルムの基材として好適に用いることのできる二軸延伸ポリエステルフィルムロールの製造方法に関する。より詳しくは、優れた機械強度、寸法安定性を有し、かつ蒸着加工された長尺巻きのフィルムロールにおいて、蒸着加工前のフィルムロールの巻芯部まで、高度なガスバリアー性及び金属アルミニウム、酸化珪素などの蒸着皮膜との密着性を有する二軸延伸ポリエステルフィルムロールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表される二軸延伸ポリエステルフィルムは、その優れた機械的特性、電気的特性、耐薬品性、寸法安定性等の点から、情報記録材料、コンデンサー用、包装用、製版用、電絶用、写真フィルム用など、多くの分野で基材として用いられている。これらの用途の中でも包装用ポリエステルフィルムの具体的用途は広く、食品用、各種電気・電子部品、機械、薬品などさまざまな分野で使用されている。
【0003】
しかし、二軸延伸ポリエステルフィルム単独では、包装用材料にとって、極めて重要な性能の一つである酸素および水蒸気遮断性などのいわゆるガスバリアー性に欠ける。したがって、フィルム表面へのアルミニウムをはじめとする金属ないしは酸化ケイ素などの金属酸化物など蒸着被膜を形成することによりガスバリアー性を改善し、食品保存性をさらに高めている。
【0004】
二軸延伸ポリエステルフィルムは優れた特性を有するが、その表面が高度に配向結晶化し表面の凝集性が高く、一般に接着性は低く、二軸延伸ポリエステルフィルム表面に直接ガスバリアー層を蒸着した場合、蒸着被膜と基材フィルムとの密着性が弱く、また、ガスバリアー性能も充分ではない。
【0005】
そのため、密着性を改善する方法として、フィルム表面にコロナ放電処理やプラズマ処理などの物理的処理を施す方法や酸、アルカリなどの化学薬品を使用してフィルム表面を活性化させる化学的処理方法による表面改質が図る方法が知られている。しかし、このような物理的処理方法は、工程は簡便であるが、得られる密着性は不十分であり、化学的処理方法では、工程が複雑となり作業環境悪化などの問題がある。
【0006】
また、基材フィルムに密着性を有する下塗り剤として、作業性、安全性およびコスト面から水溶性または水分散性のポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などを塗布して、易接着コート層を積層する方法が知られている。易接着コート層には、硬化剤を配合することも提案されており、例えば、水溶性または水分散性樹脂に多価アルデヒド化合物からなる易接着層(特許文献1)や水溶性もしくは水分散性樹脂とトリアジン環を有するアミノ樹脂からなる易接着層(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−205533号
【特許文献2】特開2007−176054号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、易接着コート層を積層することで、密着性は向上するが、長尺巻きされたフィルムロールにおいて、その蒸着前のフィルムロールの巻芯近傍、たとえば巻き始めから500m以内程度において、蒸着後、十分なガスバリアー性が発現しないといった問題が生じることがある。
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決し、蒸着加工された長尺巻きのフィルムロールにおいて、蒸着加工前のフィルムロールの巻芯近傍にまで、高度なガスバリアー性及び金属アルミニウム、酸化珪素などの蒸着皮膜との密着性を有する蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムロールを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、逐次二軸延伸フィルム製造において易接着コート層を積層する際に、縦延伸工程後のポリエステルフィルムに易接着コート剤を塗布後、横延伸工程以前に、横延伸工程の予熱条件よりも低い温度を採用した特定条件の乾燥工程を設けることで、前記問題が解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は次の通りである。
(1)巻長さ50,000m以下の蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムロールの製造方法であって、縦延伸工程後、ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に易接着コート剤を塗布する工程、前記易接着コート剤の乾燥工程、横延伸工程、および熱処理工程をこの順に経たのち、得られたフィルムを巻取る工程を含む製造方法であり、前記乾燥工程において、乾燥時の雰囲気温度を50〜70℃とし、かつ乾燥時間を3秒以上とすることを特徴とする蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムロールの製造方法。
(2)巻長さが20,000m以上である請求項1記載の蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムロールの製造方法。
(3)易接着コート剤の溶媒が、水系溶媒であることを特徴とする(1)または(2)に記載の蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムロールの製造方法。
(4)易接着コート剤の樹脂成分が、水溶性または水分散性のポリエステル樹脂である(3)記載の蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムロールの製造方法。
(5)易接着コート剤の固形分におけるポリエステル樹脂成分が50質量%以上である(4)記載の蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムロールの製造方法。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法により製造される蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムロール。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ポリエステルフィルムの優れた機械強度、寸法安定性を損なうことなしに、蒸着加工された長尺巻きのフィルムロールにおいて、蒸着加工前のフィルムロールの巻芯近傍にまで、高度なガスバリアー性及び金属アルミニウム、酸化珪素などの蒸着皮膜との密着性を有する蒸着フィルムの基材として好適に用いることのできる蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムロールを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のポリエステルフィルムの原料となるポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリエチレン−2、6−ナフタレートなどが例示される。これらは、単独で使用してもよいし、また、二種以上の樹脂を混合しても良いし、2層以上に積層してもよい。本発明に用いられるポリエステルとしては、特に、PETが好ましい。
【0014】
また、本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、特に限定されないが、一般的には5〜250μmであり、蒸着フィルムの基材として好ましいのは、5〜38μmであり、長尺巻きにするという観点から、9〜16μmが特に好ましい。
【0015】
また、本発明のポリエステルフィルムには、本発明の効果を損ねない範囲で、必要に応じて、滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤等の各種添加剤を配合することができる。これらの添加剤は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0016】
本発明において、縦延伸工程後のポリエステルフィルムとは、通常の逐次二軸延伸ポリエステルフィルムの製造工程において、縦延伸工程を終了した時点で得られる一軸延伸ポリエステルフィルムである。
【0017】
本発明の「縦延伸工程後のポリエステルフィルム」の基本的な製造工程は、公知の方法が用いられる。例えば、まず、溶融したポリエステルをTダイを用いて押出し、室温以下に温度調節した冷却ドラム上に密着させて冷却し、所望の厚みの未延伸フィルムを得る。押出時の温度は270〜300℃の範囲とすることが適当である。次いで、得られたフィルムを縦延伸する。縦延伸倍率は2〜4倍程度が好ましく、必要であれば1〜1.2倍程度に予備延伸してもよい。
【0018】
本発明では、縦延伸工程後のポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に易接着コート剤を塗布する必要がある。易接着コート剤が塗布されていなければ、蒸着被膜との密着性が得られないからである。
【0019】
縦延伸工程前のポリエステルフィルム(未延伸フィルム)へ易接着コート剤を塗布すると、後述の乾燥工程で未延伸フィルムが結晶化しやすく、延伸が困難になる場合がある。また、易接着コート剤を乾燥しただけでは易接着コート剤と未延伸フィルムとの密着性が劣るため、縦延伸工程で縦延伸ロールに易接着コート剤が転写してしまうなど不具合が生じるため好ましくない。
【0020】
横延伸後の二軸延伸フィルムに易接着コート剤を塗布すると、熱処理工程でかかる熱を受けないため、易接着コート剤と二軸延伸フィルムとの密着性が劣る場合があり好ましくない。また、コート幅が広くなるため均一にコートすることが困難になったり、広幅の乾燥工程が必要となりコストが高くなる。
【0021】
本発明においては、易接着コート剤を塗布した縦延伸工程後のポリエステルフィルムは、横延伸工程に供するまでに乾燥工程にて易接着コート剤を乾燥させる必要がある。一般的に縦延伸工程後のポリエステルフィルムにコート剤を塗布する場合、エネルギー効率や工程簡略化の理由から、横延伸工程の最初のステップとして付随して行われる予熱工程において、フィルムの予熱と同時にコート剤の乾燥が行われている。しかしながら、本発明では、横延伸工程に付随する前記予熱工程を、本発明でいう易接着コート剤の乾燥工程と兼ねることはできず、独立したコート剤の乾燥工程を設定する必要がある。横延伸工程に付随する予熱工程は、一般にフィルムのガラス転移温度(Tg)以上、好ましくは80〜130℃の範囲で行われており、これに対して、本発明における易接着コート剤の乾燥工程は、前記予熱工程よりも低い温度である50〜70℃とする必要があるからである。易接着コート剤の乾燥を、横延伸工程に付随する予熱工程で行おうとすると、必然的に易接着コート剤を乾燥する温度が70℃を超えてしまい、結果として、蒸着後において十分にバリア性が発現しないからである。
【0022】
易接着コート剤の乾燥工程における乾燥方式は、熱風方式、赤外ヒータ方式など公知の方式の中から適宜選択できる。乾燥時の雰囲気温度は、たとえば、フィルム近傍の空気の温度を熱電対を用いて測定したとき、50〜70℃となるようにするのが好ましく、さらに好ましくは50〜60℃である。50℃未満の場合、乾燥時間が長くなるため乾燥工程設備が巨大となりコスト高となる。70℃を超える場合、フィルム温度が高くなるためフィルムが伸びてしまう。また、横延伸工程に付随する予熱工程と分けて本乾燥工程を設定することの利点が失われる。
【0023】
乾燥時間は3秒以上とすることが必要であり、好ましくは5秒〜60秒である。3秒未満の場合乾燥不足になりやすく、雰囲気温度が高くなりがちである。60秒を超える場合乾燥工程設備が巨大となりコスト高となる。
【0024】
コート剤を塗布後、乾燥されたフィルムは横延伸工程、熱処理工程を施される。これらの工程は通常テンター式横延伸機を用いて行われる。横延伸工程は、例えば、温度50〜150℃の条件下、延伸倍率2〜5倍とすることが好ましい。また、熱処理温度は220〜260℃とすることが好ましい。
【0025】
また、横熱処理工程後、横方向に1〜10%の弛緩処理を行ってもよい。
【0026】
本発明に用いる易接着コート剤は公知の蒸着適性を有するものの中から適宜選択すればよい。たとえば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などを主成分とする易接着コート剤が例示される。乾燥工程で防爆設備を必要としないことや、溶媒回収を必要としないことから水を溶媒とする易接着コート剤が好ましい。
【0027】
中でも水溶性または水分散性ポリエステル樹脂を含有する易接着コート剤が好ましく、さらに好ましくは、固形分中における水溶性または水分散性ポリエステル樹脂を50質量%以上含有する易接着コート剤である。
【0028】
本発明の易接着コート剤は、発明の効果を損ねない範囲で、滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、無機・有機系の粒子、界面活性剤等の各種添加剤を配合することも可能である。
【0029】
コート剤の固形分濃度は、コート剤の安定性や、塗布適性を損ねない範囲に調整する。2〜15質量%が好ましく、4〜10質量%がさらに好ましい。2質量%より低いと所望のコート膜厚を得るために塗布量を多くしなければならないため乾燥工程で多くのエネルギーが必要となり不経済である。15質量%より高いとコート剤の安定性が悪くなる場合が多く、コート液の粘度が上がり塗布適性も低くなることがある。
【0030】
易接着コート剤のコート方法は特に限定されず、ダイレクトグラビア方式、リバースグラビア方式、エアーナイフ方式、マイヤーバー方式、ダイコート方式、カーテンコート方式スプレーコート方式などの公知の方法の中から、易接着コート剤の性状、塗布量などを勘案し適宜選択すればよい。水溶性または水分散性ポリエステル樹脂を50質量%以上含有するコート剤を1〜10g/mコートするのであれば、リバースグラビア方式、またはマイヤーバー方式を選択するのが好ましい。
【0031】
乾燥後のコート層の固形分濃度は95%以上が好ましく、97%以上がさらに好ましく、99%以上がより好ましい。乾燥後のコート層の固形分濃度は95%より低いと、蒸着後のバリア性が劣るからである。また、乾燥工程から延伸工程までのガイドロールを汚染する恐れもある。
【0032】
上記のように製造されたポリエステルフィルムはロール状に巻き取られるが、その巻長さは50,000m以下であることが必要である。50,000mを超えると、フィルムロールの重量が大きくなり、ロールの取り扱いや輸送の問題が出てきたり、また、巻き締まりなどによって易接着コート層に問題が発生し、巻芯近傍のガスバリアー性が悪化するといった問題が生じる。また、蒸着加工の効率上、巻長さは20,000m以上とすることが好ましく、24,000m以上であるとより効率的であり、コスト上さらに好ましい。
【0033】
得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、易接着コート面、非易接着コート面ともにその表面にコロナ処理をはじめとする表面活性処理を施してもよい。
【実施例】
【0034】
本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0035】
なお、実施例及び比較例に用いた易接着コート剤及び評価方法は以下の通りである。
【0036】
1.易接着コート剤
【0037】
(1)易接着コート剤A:
水性ポリエステル樹脂としてのプラスコートRZ−142(互応化学工業社製:固形分濃度25質量%)100質量部に対して、メチロール化メラミン系の架橋剤アデカレジンEM−0103(アデカ社製:固形分濃度70質量%)を15質量部、及びポリエステル樹脂固形分100質量部あたりアセチレングリコール系界面活性剤オルフィンE1004(日信化学工業社製)を0.1質量部添加して、適宜水で希釈して得た、樹脂固形分5質量%、界面活性剤0.005質量%を含む水性塗剤。
【0038】
(2)易接着コート剤B:
水性ポリエステル樹脂としてのプラスコートZ−730(互応化学工業社製:固形分濃度25質量%)100質量部に対してイソシアネート系架橋剤AQ−100(日本ポリウレタン社製:固形分濃度100質量%)を15質量部、及びポリエステル樹脂固形分100質量部あたりアセチレングリコール系界面活性剤オルフィンE1004(日信化学工業社製)を0.1質量部添加して、適宜水で希釈して得た、樹脂固形分7質量%、界面活性剤0.005質量%を含む水性塗剤。
【0039】
(3)易接着コート剤C:
水性ポリエステル樹脂としてのプラスコートRZ−142(互応化学工業社製:固形分濃度25質量%)100質量部に対して、メチロール化メラミン系の架橋剤アデカレジンEM−0103(アデカ社製:固形分濃度70質量%)を5質量部、及びポリエステル樹脂固形分100質量部あたりアセチレングリコール系界面活性剤オルフィンE1004(日信化学工業社製)を0.1質量部添加して、適宜水で希釈して得た、樹脂固形分3質量%、界面活性剤0.005質量%を含む水性塗剤
【0040】
2.評価方法
【0041】
(1)酸素ガスバリアー性:
モコン社のOX−TRAN100Aを用いて、JIS K7167法に準じて、20℃×65%RH環境での酸素透過度(OTR)を測定した。
【0042】
(2)蒸着被膜の接着性(蒸着フィルムのラミネート強力測定):
得られた蒸着フィルムの蒸着面に、二液型ポリウレタン系接着剤(大日本インキ化学工業社製ディックドライ LX−401A/SP−60)を塗布量が3g/mとなるように塗布し、80℃で10秒間乾燥した。その接着剤塗布面と低密度ポリエチレンフィルム(東セロ社製L−LDPEフィルム TUX−FCS 厚み50μm)のコロナ面をニップロールにて貼り合わせた(ニップ温度50℃)。貼り合わせたフィルムを40℃の雰囲気下で48時間エージング処理を実施し、ラミネートフィルムを作製した。
【0043】
得られたラミネートフィルムを23℃×50%RH環境下において、MD100mm×TD15mmの短冊状に裁断し、蒸着フィルムと低密度ポリエチレンフィルムとの間をピンセットを用いてMDに30mm剥離し、ラミネート強力試験片を作成した。50N測定用のロードセルとサンプルチャックとを取り付けた引張試験機(島津製作所社製AS−1S)を用い、剥離したそれぞれの端部を固定した後、試験片のシーラントを180°曲げた状態に保ちながら、引張速度300mm/minにてMDに50mm剥離し、その際の強力の平均値を読み取った。測定は5点のサンプルについて行い、それらの平均値をラミネート強力とした。このとき、剥離した界面の状態を観察した。
【0044】
界面観察結果から、以下のように判定した。
○:蒸着フィルム側にのみ蒸着被膜がある。
△:蒸着フィルム側及び低密度ポリエチレンフィルム側に蒸着被膜がある。
×:低密度ポリエチレンフィルム側にのみ蒸着被膜がある。
【0045】
[実施例1]
平均粒1.0μmのシリカを0.1質量%含有するPET(相対粘度1.38)を押出機にて溶融したのち、280℃のTダイより押し出し、表面温度を20℃に温調した冷却ドラム上に静電印加法で密着させて急冷して厚さ200μmの未延伸フィルムを得た。続いて70℃に温調した予熱ロール群で予熱した後、90℃に温調した延伸ロールと40℃に温調した冷却ロール間で周速を変化させて4倍に縦延伸し、厚さ50μmの縦延伸フィルムを得た。縦延伸フィルムにマイヤーバー方式で、易接着コート剤Aを4g/mの塗布量で塗布し、熱風方式の乾燥ゾーンを通過させ易接着コート剤を乾燥した。熱電対を用いて測定したフィルム近傍の雰囲気温度は60℃、通過時間は5秒間であった。続いて縦延伸フィルムをテンター式延伸機に導き、予熱温度90℃、延伸温度120℃で4倍に横延伸し、続いて245℃で熱処理を行い、横方向に2%の弛緩処理も行った。巻長さ36,400mに巻取り、厚み12μmの蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムロールを得た。
【0046】
得られた巻長さ36,400m巻の二軸延伸ポリエステルフィルムロールについて、真空蒸着法により、易接着コート面に金属アルミニウムを厚み400Åとなるように蒸着加工を行った。このとき、蒸着加工開始直後と終了直前に、合わせて400mのフィルム加工ロスが発生した。こうして、蒸着加工時に発生する加工ロス分を除いて、巻長さ36,000m巻のアルミ蒸着ポリエステルフィルムロールを得た。このとき、蒸着加工後のフィルムロールにおいては、蒸着前のフィルムロールの表層位置のフィルムが、蒸着加工後のフィルムロールの巻芯側となるように巻き取られた。すなわち、全長36,000mの蒸着フィルムは、蒸着加工前後において、フィルムロールの表層側と巻芯側の方向が逆転した。以下の実施例、比較例のフィルムロールもすべて、蒸着前後において表層側と巻芯側が逆方向となるよう巻き取られた。
【0047】
アルミ蒸着ポリエステルフィルムについて、フィルムロールの表層側から100mの部位(以下、「表層部」という)および巻芯側から100mの部位(以下、「巻芯部」という)からそれぞれ評価用のサンプルを採取した。すなわち、アルミ蒸着フィルムの表層部から採取したサンプルは、蒸着前のフィルムロールでは巻芯に非常に近い部位に巻かれていたフィルムであり、アルミ蒸着フィルムの巻芯部から採取したサンプルは、蒸着前のフィルムロールでは表層に非常に近い部位に巻かれていたフィルムである。これらのアルミ蒸着フィルムの評価用サンプルについて、酸素ガスバリアー性及び蒸着被膜の密着性を評価した。なお、100mの部位とは、100m±10mの範囲内とする。評価結果を表1に示す。
【0048】
[実施例2]
熱風方式の乾燥ゾーンを通過させて、易接着コート剤を乾燥した時の、雰囲気温度を52℃、通過時間を12秒とした以外は、実施例1と同様にして、巻長さ36,400mの蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムロールを得た。得られたフィルムロールについて、実施例1同様にして、蒸着加工時に発生する加工ロス分を除いて、巻長さ36,000m巻のアルミ蒸着ポリエステルフィルムロールを得た。アルミ蒸着ポリエステルフィルムロールの表層部と巻芯部から採取したアルミ蒸着フィルムについて、酸素ガスバリアー性及び蒸着被膜の密着性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0049】
[実施例3]
巻長さを48,650m巻きにした以外は、実施例1と同様にして蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムロールを得た。得られたフィルムロールについて、実施例1と同様にして、蒸着加工時に発生する加工ロス分を除いて、巻長さ48,250m巻のアルミ蒸着ポリエステルフィルムロールを得た。アルミ蒸着ポリエステルフィルムロールの表層部と巻芯部から採取したアルミ蒸着フィルムについて、酸素ガスバリアー性及び蒸着被膜の密着性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0050】
[実施例4]
易接着コート剤Bを用いて、熱風方式の乾燥ゾーンを通過させた。易接着コート剤を乾燥した時の、雰囲気温度を65℃、通過時間を3秒とした以外は、実施例1と同様にして巻長さ24,400mの蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムロールを得た。得られたフィルムロールについて、実施例1と同様にして、蒸着加工時に発生する加工ロス分を除いて、巻長さ24,000m巻のアルミ蒸着ポリエステルフィルムロールを得た。アルミ蒸着ポリエステルフィルムロールの表層部と巻芯部から採取したアルミ蒸着フィルムについて、酸素ガスバリアー性及び蒸着被膜の密着性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0051】
[実施例5]
実施例1と同様にして、巻長さ20,200m巻の蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムロールを得た。得られたフィルムロールについて、実施例1と同様にして、蒸着加工時に発生する加工ロス分を除いて、巻長さ19,800m巻のアルミ蒸着ポリエステルフィルムロールを得た。アルミ蒸着ポリエステルフィルムロールの表層部と巻芯部から採取したアルミ蒸着フィルムについて、酸素ガスバリアー性及び蒸着被膜の密着性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0052】
[実施例6]
易接着コート剤Cを用いた以外は、実施例1と同様にして、巻長さ36,400mの蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムロールを得た。得られたフィルムロールについて、実施例1同様にして、蒸着加工時に発生する加工ロス分を除いて、巻長さ36,000m巻のアルミ蒸着ポリエステルフィルムロールを得た。アルミ蒸着ポリエステルフィルムロールの表層部と巻芯部から採取したアルミ蒸着フィルムについて、酸素ガスバリアー性及び蒸着被膜の密着性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0053】
[比較例1]
熱風方式の乾燥ゾーンを通過させて、易接着コート剤を乾燥したときの、雰囲気温度を40℃、通過時間5秒とした以外は、実施例と同様にして、巻長さ36,400m巻の蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムロールを得た。得られたフィルムロールについて、実施例1と同様にして、蒸着加工時に発生する加工ロス分を除いて、巻長さ36,000m巻のアルミ蒸着ポリエステルフィルムロールを得た。アルミ蒸着ポリエステルフィルムロールの表層部と巻芯部から採取したアルミ蒸着フィルムについて、酸素ガスバリアー性及び蒸着被膜の密着性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0054】
蒸着被膜の密着性は十分であるが、蒸着フィルムロールの巻芯部(蒸着前ロールの表層側)に比べ、蒸着フィルムロールの表層部(蒸着前ロールの巻芯側)の酸素ガスバリアー性が悪化していた。
【0055】
[比較例2]
熱風方式の乾燥ゾーンを通過させて、易接着コート剤を乾燥したときの、雰囲気温度が60℃、通過時間1.5秒とした以外は、実施例と同様にして、巻長さ36,400m巻の蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムロールを得た。得られたフィルムロールについて、実施例1と同様にして、蒸着加工時に発生する加工ロス分を除いて、巻長さ36,000m巻のアルミ蒸着ポリエステルフィルムロールを得た。アルミ蒸着ポリエステルフィルムロールの表層部と巻芯部から採取したアルミ蒸着フィルムについて、酸素ガスバリアー性及び蒸着被膜の密着性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0056】
蒸着被膜の密着性は十分であるが、蒸着フィルムロールの巻芯部(蒸着前ロールの表層側)に比べ、蒸着フィルムロールの表層部(蒸着前ロールの巻芯側)の酸素ガスバリアー性が悪化していた。
【0057】
[比較例3]
縦延伸後に易接着コート剤を塗布した後、熱風方式の乾燥ゾーンを通過させないで、フィルムをテンター式延伸機に導いた以外は、実施例1と同様にして、巻長さ36,400m巻の蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムロールを得た。得られたフィルムロールについて、実施例1と同様にして、蒸着加工時に発生する加工ロス分を除いて、巻長さ36,000m巻のアルミ蒸着ポリエステルフィルムロールを得た。アルミ蒸着ポリエステルフィルムロールの表層部と巻芯部から採取したアルミ蒸着フィルムについて、酸素ガスバリアー性及び蒸着被膜の密着性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0058】
蒸着被膜の密着性、及び酸素ガスバリアー性ともに不十分であり、特に蒸着フィルムロールの表層部(蒸着前ロールの巻芯側)の酸素ガスバリアー性は大きく悪化していた。
【0059】
[比較例4]
実施例1と同様にして、巻長さ52,850m巻の蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムロールを得た。得られたフィルムロールについて、実施例1と同様にして、蒸着加工時に発生する加工ロス分を除いて、巻長さ52,450m巻のアルミ蒸着ポリエステルフィルムロールを得た。アルミ蒸着ポリエステルフィルムロールの表層部と巻芯部から採取したアルミ蒸着フィルムについて、酸素ガスバリアー性及び蒸着被膜の密着性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0060】
蒸着被膜の密着性は十分であるが、蒸着フィルムロールの巻芯部(蒸着前ロールの表層側)に比べ、蒸着フィルムロールの表層部(蒸着前ロールの巻芯側)の酸素ガスバリアー性が悪化していた。
【0061】
【表1】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻長さ50,000m以下の蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムロールの製造方法であって、縦延伸工程後、ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に易接着コート剤を塗布する工程、前記易接着コート剤の乾燥工程、横延伸工程、および熱処理工程をこの順に経たのち、得られたフィルムを巻取る工程を含む製造方法であり、前記乾燥工程において、乾燥時の雰囲気温度を50〜70℃とし、かつ乾燥時間を3秒以上とすることを特徴とする蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムロールの製造方法。
【請求項2】
巻長さが20,000m以上である請求項1記載の蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムロールの製造方法。
【請求項3】
易接着コート剤の溶媒が、水系溶媒であることを特徴とする請求項1または2に記載の蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムロールの製造方法。
【請求項4】
易接着コート剤の樹脂成分が、水溶性または水分散性のポリエステル樹脂である請求項3記載の蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムロールの製造方法。
【請求項5】
易接着コート剤の固形分におけるポリエステル樹脂成分が50質量%以上である請求項4記載の蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムロールの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により製造される蒸着用二軸延伸ポリエステルフィルムロール。


【公開番号】特開2010−221643(P2010−221643A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74085(P2009−74085)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】