説明

蒸着膜の形成方法、光学部材の製造方法及び光学部材

【課題】1回の工程で2種以上の蒸着材料を対象物に蒸着させることができ、蒸着対象物側と表面側とで蒸着材料の濃度の傾斜特性を有する蒸着膜を形成することができる蒸発源の形成方法、光学部材の製造方法及び光学部材を提供する。
【解決手段】異なる2種以上の蒸着材料を積層してなる蒸発源の一方の側から加熱し、対象物に蒸着させ蒸着膜を形成する蒸着膜の形成方法、前記対象物が光学部材であり、該光学部材上に前記方法により蒸着膜を形成する光学部材の製造方法、この方法によって製造されてなる光学部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸発源の形成方法、光学部材の製造方法及び光学部材に関し、特に、1回の工程で2種以上の蒸着材料を対象物に蒸着させることができ、蒸着対象物側と表面側とで蒸着材料の濃度の傾斜特性を有する蒸着膜を形成することができる蒸発源の形成方法、光学部材の製造方法及び光学部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズ等の光学部材に蒸着材料を蒸着して膜を形成する場合、蒸着材料を保持させた蒸発源を加熱して蒸着する方法が知られている。
例えば、特性文献1及び2には、熱伝導物質に有機化合物を混合、硬化した蒸発源を用い、熱伝導物質を熱伝導媒体として利用して、有機化合物を対象物に蒸着させる技術が開示されている。
また、特許文献3には、2種以上のシラン化合物により防汚層を眼鏡レンズに形成する方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1〜3に記載の方法は、一種又は単なる混合物からなる蒸着膜が得られるだけであって、蒸着膜の基板側や表面側とで、蒸着材料の濃度に濃淡を有する蒸着膜を形成することはできなかった。
【特許文献1】特開2001−288560
【特許文献2】特開2001−335920
【特許文献3】特開2005−3817
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、1回の工程で2種以上の蒸着材料を対象物に蒸着させることができ、蒸着対象物側と表面側とで蒸着材料の濃度の傾斜特性を有する蒸着膜を形成することができる蒸発源の形成方法、光学部材の製造方法及び光学部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、2種以上の蒸着材料を積層させた蒸発源を用い、一方側から加熱することにより前記の目的を達成できることを見出し本発明を完成したものである。
すなわち、本発明は、異なる2種以上の蒸着材料を積層してなる蒸発源の一方の側から加熱し、対象物に蒸着させ蒸着膜を形成する蒸着膜の形成方法、前記対象物が光学部材であり、該光学部材上に前記方法により蒸着膜を形成する光学部材の製造方法、この方法によって製造されてなる光学部材を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の蒸発源の形成方法により光学部材を製造すると、1回の工程で2種以上の蒸着材料を対象物に蒸着させることができ、蒸着対象物側と表面側とで蒸着材料の濃度の傾斜特性を有する蒸着膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の蒸着膜の形成方法は、異なる2種以上の蒸着材料を積層してなる蒸発源の一方の側から加熱し、対象物に蒸着させ蒸着膜を形成する。
例えば、蒸発源が、異なる2種の蒸着材料を積層した2層である場合には、図1に示すように、蒸発源6を第1蒸着材料フィルター5の側からヒーター7等で加熱すると、蒸着対象物1(図1では、レンズ基板+反射防止膜)に形成される蒸着膜2が、対象物1側が第2蒸着材料より第1蒸着材料の濃度が高く(2a)、蒸着膜の表面側に向かって第1蒸着材料より第2蒸着材料の濃度が高い(2b)、第1蒸着材料と第2蒸着材料の混合膜である。このように、得られた蒸着膜2は、ヒーター7等の加熱源に近い第2蒸着材料フィルター4から揮発した第2蒸着材料と、加熱源から離れた第1蒸着材料フィルター5から揮発した第1蒸着材料が時間差で揮発していくため、その結果境界が曖昧な混合膜となり、蒸着材料の濃度の傾斜特性を有する蒸着膜を形成することができる。
【0007】
このような2層の蒸発源としては、各蒸着材料をしみ込ませ、加熱して揮発分を取り除いたフィルターを別々に用意し、対象物に対し、最外部に形成したい蒸着材料フィルターをもう一方のフィルターの上に重ねてセットする。また、蒸着材料1種をフィルターにしみ込ませ、加熱固化させた後、別のフィルターをその上に載せてから別の蒸着材料を注入、加熱固化させても良い。更に蒸着材料1種をフィルターに染み込ませ、加熱固化させた後、別のフィルターをその上に載せてから別の蒸着材料を注入し、自然乾燥程度にとどめておいても良い。
具体的には、SUS(ステンレス)製トレー上にシリカフィルターを入れ、第1の溶液状態の蒸着材料を注入し、(必要に応じて添加されるハイドロフルオロエーテル、溶媒やケイ素非含有のパーフルオロポリエ−テルを混合した溶液の形態で用いられても良い)その後、乾燥工程により、第1の蒸着材料を固化する。その後、第2の蒸着材料として、固化した第1の蒸着材料の上部に、前記シリカフィルターをのせ、第2の溶液状態の蒸着材料を注入し、乾燥工程をへて真空蒸着により基材上に成膜される。(必要であれば、第2の蒸着材料と同様の工程により第3の蒸着材料を具備しても良い。)
また、第2蒸着材料の蒸発を、さらに遅らせる必要がある場合には第1蒸着材料と第2蒸着材料との間に、例えば前記シリカフィルターと厚みの異なる(同じであっても良い)同材質フィルターのような、蒸着速度を調整するための緩衝層を設けても良い。
また、2種以上の蒸着材料を積層した蒸発源は、例えば、2層の場合、第1蒸着材料を含むフィルターと第2蒸着材料を含むフィルターは同形状で無くても良く、例えば、一方のフィルターに穴を開けた形状としたり(図2参照)、一方を他方より小さくする(図3参考例)、同型のフィルターの片方を任意の大きさに切る(図4参照)などして、蒸着速度や形成される蒸着膜の濃度傾斜を調整することができる。
【0008】
本発明においては、蒸発源を形成する少なくとも一種の蒸着材料が、酸化ケイ素含有繊維から構成される不織布に保持され、前記不織布の熱伝導率が0.01〜1.0Wm-1-1であると好ましい。前記不織布の熱伝導率が0.01〜0.8Wm-1-1であるとさらに好ましい。
このような不織布は、高い蓄熱効果を有し、蒸着材料の蒸発により熱を奪われた場合であっても、蒸発源自体の温度変化は抑制される。その結果、容易な熱管理で安定して蒸着することができ、局所的加熱が生じにくいため、沸点の異なる蒸着材料が混在していても、蒸着材料に蒸着差が生じて形成される蒸着膜の厚さや蒸着材料の分散度にムラが生じることを抑制することができる。
また、熱伝導率の低い不織布を用いたことにより、加熱初期の段階で急激な温度上昇が生じにくい。このため、蒸着時の加熱で固体の蒸着材料を加熱しても、蒸発材料の変質を抑制することができる。例えば、加熱初期に蒸着材料に急激な変化が生じないため、不測の反応や焦げ付きも生じにくくなる。
【0009】
以上のような不織布の材質である酸化ケイ素含有繊維としては、熱伝導率が0.1〜20Wm-1-1のものが好ましく、特に0.3〜10Wm-1-1のものが好ましい。例えば、シリカ繊維(熱伝導率8Wm-1-1)、ガラス繊維(熱伝導率1Wm-1-1)、シリカ及び酸化アルミ混合繊維等が挙げられ、シリカ繊維、ガラス繊維が好ましい。
また、シリカやガラス繊維で構成された蒸発源は安価である。このため蒸発源に除去できない残渣が定着しても、気軽に廃棄して、交換することができるので、蒸着に係るコストを削減することができる。
また、酸化ケイ素含有繊維の径としては、通常0.1〜200μmであり、1〜20μmであると好ましい。
前記不織布の空隙率は、通常70〜99%であり、80〜96%であると好ましい。このように、本発明の蒸発源は、不織布の空隙率を高めることにより、熱伝導率を低下させ、蓄熱効果を高めることができる。
【0010】
前記不織布の厚さとしては、通常100〜2000μmであり、200〜1200μmであると好ましい。
本発明において、蒸着材料を不織布に対して保持させるとは、含浸、吸着、塗布、被覆等の状態が挙げられ、中でも、前記不織布を構成する酸化ケイ素含有繊維の表面に、前記蒸着材料が被膜を形成していると好ましい。蒸発源の繊維の表面に蒸着材料が被膜を形成していると、蒸着成分は、蒸着末期まで継続して繊維の表面から蒸発する。このため、蒸着の初期から末期にかけて蒸着速度の変動が生じづらく、均質な成膜を実現することができる。
【0011】
本発明に用いる具体的な不織布としては、硼珪酸ガラス繊維のみからなる濾紙であるGA−55、GA−100、GA−200、GB−100R、GB−140、GC−50、GD−120、GF−75等、硼珪酸ガラス繊維にバインダー樹脂を加えて強度を高めた濾紙であるGS−25、GC−90、DP−70、PG−60等、シリカ繊維からなるQR−100、QR−200等(以上、全てアドバンテック東洋(株)製:商品名)、ファインフレックス(商品名)、SiO2系ファイバー、SiO2+Al2O3系ファイバー(以上、ニチアス(株)製)等が挙げられる。
【0012】
本発明においては、前記蒸着膜を、減圧下、加熱蒸着、(ハロゲンヒーター、抵抗過熱、電子銃等を使用)によって光学部材に蒸着材料を蒸着する。さらに、前記不織布を用い、ハロゲンヒーター、ボート等により下方より加熱することで、例えば、SUS製フィルターに注入した場合と比較して、温度上昇率が穏やかであるため、成膜時の膜厚コントロール性に優れ、また、蒸着物質が分解することを防ぐことができる。その結果、膜厚精度が良く、蒸着物質が本来持つ性能を有した薄膜を成製することができる。
本発明において、蒸着する際の真空蒸着装置内の真空度は、特に限定されないが、均質の蒸着膜を得るために、通常1.33×10-1〜1.33×10-6Pa(10-3〜10-8Torr)であり、6.66×10-1〜8.00×10-4Pa(5.0×10-3〜6.0×10-6Torr)であると好ましい。
【0013】
本発明において、蒸着材料を加熱する際の具体的温度は、蒸着材料の種類、蒸着する真空条件により異なるが、所望の真空度における蒸着材料の蒸着開始温度以上から分解温度を超えない範囲で行うことが好ましい。ここで蒸着開始温度とは前記蒸着材料を含む溶液の蒸気圧が真空度と等しくなったときの温度をいい、また、前記蒸着材料の分解温度とは1分間に、窒素雰囲気下、該化合物と反応性のある物質が存在しない条件で、前記蒸着材料の50質量%が分解する温度をいう。
また、前述のような熱伝導率の不織布を用いることで、ヒーター温度の上昇による蒸発源の過熱現象が抑制されるため、蒸着材料を分解温度以下で成膜することが可能となる。
【0014】
このような蒸着膜の形成方法は、蒸着膜の形成を必要とする種々の技術分野に適用できる。例えば、光学分野、エレクトロニクス分野、医療分野、装飾品、機械工具、自動車部品、電化製品等の成膜に関する分野に適用できるが、特に、光学部材に蒸着膜を形成する際に有用であり、本発明の光学部材の製造方法は、本発明の蒸着膜の形成方法により光学部材に蒸着膜を形成するものである。
また、本発明により形成される蒸着膜は、特に限定されないが、例えば、撥水膜、反射防止膜、防曇膜等が挙げられる。
【0015】
本発明で用いる蒸着材料の種類は限定されないが、有機系蒸着材料であると好ましい。
有機系蒸着材料としては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(I)で示されるフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物、下記一般式(II)で示されるシラン化合物、一般式(III)で示される含フッ素有機ケイ素化合物、その他、パーフルオロポリエーテルとポリシロキサンに由来する構造を含むシラン化合物等が挙げられる。
以下、それらの化合物について説明する。
【0016】
一般式(I)のフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物
【化1】

【0017】
一般式(I)において、Rf基は、式:−(Ck2kO)−(式中、kは1〜6、好ましくは1〜4の整数であり、該一般式中の(Ck2kO)の配列はランダムである。)で表わされる単位を含み、分岐を有しない直鎖状のパーフルオロポリアルキレンエーテル構造を有する二価の基、または式:−(Ck2k)−(式中、kは1〜6、好ましくは1〜4の整数であり、該一般式中の(Ck2k)の配列はランダムである。)で表わされる単位を含み、分岐を有しない直鎖状のパーフルオロアルキル構造を有する二価の基の単独又は混合した構造を有する。なお、前記一般式(I)中のn及びn’がいずれも0である場合、前記一般式(I)中の酸素原子(O)に結合する前記Rf基の末端は、酸素原子ではない。
【0018】
一般式(I)において、Xは加水分解性基又はハロゲン原子である。上記Xが加水分解性基である場合としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基等のアルコキシアルコキシ基;アリロキシ基、イソプロペノキシ等のアルケニルオキシ基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシロキシ基;ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基、シクロペンタノキシム基、シクロヘキサノキシム基等のケトオキシム基;N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−プロピルアミノ基、N−ブチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N−シクロヘキシルアミノ基等のアミノ基;N−メチルアセトアミド基、N−エチルアセトアミド基、N−メチルベンズアミド基等のアミド基;N,N−ジメチルアミノオキシ基、N,N−ジエチルアミノオキシ基等のアミノオキシ基等を挙げることができる。
また、上記Xがハロゲン原子である場合としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
これらの中で、メトキシ基、エトキシ基及び塩素原子が好適である。
【0019】
一般式(I)において、Rは炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、Rが複数存在する場合には、Rは互いに同一でも異なってもよい。Rの具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基等が挙げられる。これらの中でも炭素原子数1〜3の一価炭化水素基が好ましく、特にメチル基が好適である。
【0020】
一般式(I)において、n及びn’はそれぞれ0〜2の整数であり、好ましくは1である。nとn’は互いに同一であっても異なっていてもよい。また、m及びm’はそれぞれ1〜5の整数であり、3であることが好ましい。mとm’は互いに同一であっても異なっていてもよい。
次に、a及びbは各々2又は3であり、加水分解及び縮合反応性、及び被膜の密着性の観点から、3であることが好ましい。
一般式(I)で表されるフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物の分子量は、特に制限されないが、安定性、取扱い易さ等の点から、数平均分子量で500〜20,000、好ましくは1000〜10,000のものが適当である。
【0021】
一般式(I)で表されるフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物の具体例としては、例えば、下記構造式で示されるものが挙げられる。但し、下記例示に限定されるものではない。
(CH3O)3SiCH2CH2CH2OCH2CF2CF2O(CF2CF2CF2O)lCF2CF2CH2OCH2CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)2CH3SiCH2CH2CH2OCH2CF2CF2O(CF2CF2CF2O)lCF2CF2CH2OCH2CH2CH2SiCH3(OCH32
(CH3O)3SiCH2CH2CH2OCH2CF2(OC24p(OCF2qOCF2CH2OCH2CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)2CH3SiCH2CH2CH2OCH2CF2(OC24p(OCF2qOCF2CH2OCH2CH2CH2SiCH3(OCH32
(CH3O)3SiCH2CH2CH2OCH2CH2CF2(OC24p(OCF2qOCF2CH2CH2OCH2CH2CH2Si(OCH33
(C25O)3SiCH2CH2CH2OCH2CF2(OC24p(OCF2qOCF2CH2OCH2CH2CH2Si(OC253
一般式(I)の化合物は、1種単独でも2種以上を組合せても使用することができる。また、場合により、上記フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物とその部分加水分解縮合物とを組み合わせて使用することができる。
【0022】
一般式(I)で表されるフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物は、溶媒で希釈されたものを用いるとよい。使用できる溶媒としては、例えば、フッ素変性脂肪族炭化水素系溶剤(パーフルオロヘプタン、パーフルオロオクタン等)、フッ素変性芳香族炭化水素系溶剤(1,3−ジ(トリフルオロメチル)ベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン等)、のフッ素変性エーテル系溶剤(メチルパーフルオロブチルエーテル、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)等)、フッ素変性アルキルアミン系溶剤(パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリペンチルアミン等)、炭化水素系溶剤(石油ベンジン、ミネラルスピリッツ、トルエン、キシレン等)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、アルコール溶剤(メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等)等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせてもよい。これらのなかでも、変性シランの溶解性、濡れ性等の点で、フッ素変性された溶剤が好ましく、特に、1,3−ジ(トリフルオロメチル)ベンゼン、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、及びパーフルオロトリブチルアミンが好ましい。
【0023】
一般式(II)のシラン化合物
R'−Si(OR’’)3及び/又はSi(OR’’)4 (II)
一般式(II)において、R'は有機基であり、炭素数1〜50(好ましくは1〜10)のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基等)、エポキシエチル基、グリシジル基、アミノ基等が挙げられ、これらは置換されていても良い。
一般式(II)において、R’’は炭素数1〜48のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基等)であり、メチル基又はエチル基が好ましい。
一般式(II)で表されるシラン化合物の具体例としては、例えば、構造式、(C25O)3SiC36NH2、(CH3O)3SiC36NH2、(C25O)4Si、(C25O)3Si-O-Si(OC253、等が挙げられる。但し、上記例示に限定されるものではない。
一般式(II)の化合物は、1種単独でも2種以上を組合せても使用することができる。
一般式(II)の化合物は、R'−Si(OR’’)3を単独あるいは他の成分より多く用いることがより好ましい。
【0024】
一般式(III)の含フッ素有機ケイ素化合物
AαZ1Q−Rf1−(Q−Z2−Q−Rf1x−QZ1Aα (III)
一般式(III)において、Rf1はパーフルオロオキシアルキレン基、Z1は単結合又はケイ素原子1〜15個を含む2〜9価の有機基、Z2はケイ素原子2〜100個を含む2価のポリオルガノシロキシレン基、Qは酸素原子及び/又は窒素原子を含んでいてよい炭素数2〜12の、2〜9価の基であり、互いに異なっていてもよく、αは1〜8の整数、xは0〜5の整数であり、Aは下記一般式(IV)で示される基である。
−Cd2dSiR13-c1c (IV)
一般式(IV)において、R1は炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基である。X1は加水分解性基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの炭素数1〜10のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基などの炭素数2〜10のオキシアルコキシ基、アセトキシ基などの炭素数1〜10のアシロキシ基、イソプロペノキシ基などの炭素数2〜10のアルケニルオキシ基、クロル基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基などが挙げられる。中でもメトキシ基、エトキシ基、イソプロペノキシ基、クロル基が好ましい。cは2又は3、dは0〜6の整数である。
【0025】
一般式(IV)で表される含フッ素有機ケイ素化合物としては、例えば、下記(1)及び(2)の構造を有し、各PFPEの部分は(3)のPFPE1又は(4)のPFPE2の構造を適宜選択可能とする化合物等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【化2】

【0026】
その他、パーフルオロポリエーテルとポリシロキサンに由来する構造を含むシラン化合物、フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物、ケイ素非含有のパーフルオロポリエーテル等といったフッ素含有物を1種単独でも2種以上を組合せても使用することができる。
【0027】
本発明で用いる前記蒸着材料においては、必要に応じ溶媒で希釈しても良く、動粘度が低く揮発性の高く、他の成分と実質的反応しないフッ素系溶媒を用いて希釈することが好ましい。このようにすると、蒸着材料の粘度を下げることができるので、多孔性材料への注入性の改善ができ、また蒸着材料の固化も容易になる。
【0028】
本発明における光学部材としては、例えば、眼鏡レンズ、カメラレンズ、ワードプロセッサーのディスプレー等に付設する光学フィルター、自動車の窓ガラス等が挙げられ、特にプラスチックレンズ、中でも眼鏡用プラスチックレンズに適している。
本発明に用いる光学部材の材質としては、メチルメタクリレート単独重合体、メチルメタクリレートと1種以上の他のモノマーとをモノマー成分とする共重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート単独重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと1種以上の他のモノマーとをモノマー成分とする共重合体、イオウ含有共重合体、ハロゲン含有共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタンなどのプラスチック製光学基板、あるいは無機ガラス製光学基板などが挙げられる。なお、上記基板は基板上にハードコート層を有するものであってもよい。ハードコート層としては、有機ケイ素化合物、アクリル化合物等を含んだ硬化膜を例示できる。
【0029】
本発明においては、光学部材上に反射防止膜が形成されており、該反射防止膜上に蒸着膜を形成しても良い。
反射防止膜とは、例えば、レンズ等の光学基板表面の反射を減少させるために設けられた ZrO2、SiO2、TiO2、Ta25、Y23、MgF2、Al23などから形成される単層または多層膜(但し、最外層にSiO2膜を有することが好ましい)又はCrO2などの着色膜(但し、最外層にSiO2膜を有することが好ましい)を言う。本発明においては、反射防止膜の最外層に二酸化ケイ素を主成分とする層が用いられることが好ましい。ここで二酸化ケイ素を主成分とするとは、実質的に二酸化ケイ素からなる層、又は二酸化ケイ素、酸化アルミニウム及び有機化合物からなるハイブリッド層をいう。なお、反射防止膜は真空蒸着法によって作成されることが好ましい。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、本実施例及び比較例で得られたプラスチックレンズは以下に示す評価方法により諸物性を評価した。
(1)水に対する静止接触角
接触角計CA−D(商品名:協和界面科学(株)製)を使用し、25℃において直径2mmの水滴を針先に作り、これをレンズの凸面の最上部に触れさせて、液滴を作った。この時に生ずる液滴と面との角度を測定し静止接触角とした。静止接触角θは水滴の半径(水滴がレンズ表面に接触している部分の半径)をrとし、水滴の高さをhとしたときに、以下の式で求められる。
θ=2×tan‐1(h/r)
なお、静止接触角の測定は水の蒸発による測定誤差を最小限にするために水滴をレンズに触れさせた後10秒以内に行った。
(2)外観
目視にて干渉色の色ムラ及び干渉色変化があるかどうかを調べ、眼鏡レンズとして使用できる外観かどうか評価した。
(3)耐久性
レンズクリーニング布(商品名:HOYA Clearcloth)で500gの荷重をかけて撥水膜を有するプラスチックレンズ表面を3600回、前後に擦り(25℃、相対湿度50〜60%)、その後(1)に記載した方法で水に対する静止接触角を測定した。
(4)耐摩耗性
新東科学(株)製往復摩擦磨耗試験機にて、撥水膜を有するプラスチックレンズ表面に、荷重4kg、砂消しゴム50往復摩耗テストを実施し、ヘーズメーターMH−150(商品名:(株)村上色彩技術研究所製)にてヘーズ値を測定、ヘーズ値の変化を測定した。
(使用砂消しゴム、ライオン(株)製 ギャザ半砂)
(5)動摩擦係数
連続加重式表面性測定機TYPE:22H(商品名:新東科学(株)製)を使用し、移動距離20mmの平均動摩擦係数を各々3回測定し、平均値を出した。
(6)スチールウール耐摩耗性
新東科学(株)製往復摩擦磨耗試験機にて、撥水膜を有するプラスチックレンズ表面に、1kg、2kg、3kgの荷重で、スチールウール(ボンスター販売(株)製 #0000)20往復の摩耗テストを実施し、傷の発生状態を確認した。
その評価は、暗室、蛍光灯下、反射光にて目視により反射防止膜上の傷の有無を確認し、傷無し○、傷有×とし、プラスチックレンズ上、各荷重3箇所でテストを実施し、3箇所○であれば、その荷重を、スチールウール耐荷重とした。
【0031】
製造例1(蒸着材料1の製造)
以下のようにして、蒸着材料1を製造した。
容器は、ガラススクリュー瓶(アズワン(株)製)30ccを使用。スターラーの攪拌速度は500rpmに設定。
【0032】
【表1】

【0033】
(工程1)シラン化合物とシリコーンオイルとの反応溶液の製造
シラン化合物としてKBE403(商品名:信越化学工業(株)製、分子量278.4,屈折率(25℃)1.425)1gと、シリコーンオイルとしてKF857(商品名:信越化学工業(株)製、動粘度65mm2/s(25℃)、屈折率(25℃)1.411、官能基当量790g/mol)4gを24時間、混合攪拌した。
前記シラン化合物はエポキシ基を有しており、前記シリコーンオイルは、メトキシ基と、アミノ基を有している。これにより、アミノ基とグリシジル基が反応し、メトキシ基を主鎖として、側鎖に2及び3級アミンを有したジメチルシロキサン含有混合物を得る。この反応には約24時間を要す。
(工程2)シリコーンオイルの反応溶液と、シランカップリング剤との混合
工程1生成物質5gと、シラン化合物としてKBE903(商品名:信越化学工業(株)製、分子量221.4,屈折率(25℃)1.420)5gとを24時間混合攪拌して工程2生成物質を得た。
(工程3)一般式(I)のフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物として、以下の構造を有する有機ケイ素化合物(化合物(1))5gに、工程2で製造した溶液1g、IPA(イソプロパノール)1gを投入し、10分攪拌する。
化合物(1)
(CH3O)3SiCH2CH2CH2OCH2CF2(OC24p(OCF2qOCF2CH2
OCH2CH2CH2Si(OCH33
(式中、p=22、q=22、繰り返し単位(OC24)及び(OCF2)の配列はランダムである。)
(工程4)注入性改善及び乾燥性改善のためのハイドロフルオロエーテルの混合過程
工程3で調製した混合溶液7gに、ハイドロフルオロエーテルとしてHFE7200(商品名:住友スリーエム(株)製、C49OC25、粘度5.7×10-4Pa・s、動粘度0.40mm2/s、屈折率(25℃)1.28)3g投入し、1時間、攪拌を行った。
以上の工程にて蒸着材料1を得た。
【0034】
製造例2(蒸着材料2の製造)
以下のようにして、蒸着材料2を製造した。
容器は、ガラススクリュー瓶(アズワン(株)製)30ccを使用。スターラーの攪拌速度は500rpmに設定。
【0035】
【表2】

【0036】
(工程1)フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物として化合物(1) 5gにIPA 1gを投入し、10分攪拌する。
(工程2)注入性改善及び乾燥性改善のためのハイドロフルオロエーテルの混合過程
工程1で調製した混合溶液6gに、ハイドロフルオロエーテルとしてHFE7200を5g投入し、1時間、攪拌を行った。
以上の工程にて蒸着材料2を得た。
【0037】
製造例3(蒸着材料3の製造)
一般式(I)のフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物を10gに対し、KBE04(商品名:信越化学工業(株)製、分子量208.3,屈折率(25℃)1.3811)を3g投入し、10分攪拌を行ない蒸着材料3とした。
【0038】
【化3】

【0039】
製造例4(蒸着材料4の製造)
フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物として下記化合物(3)5gに、ハイドロフルオロエーテルとしてHFE7200を5g投入し、1時間、攪拌を行い蒸着材料4とした。
【0040】
【化4】

【0041】
実施例1
SUS製のトレー(内径21mm、厚み1mm、深さ3mm)に、シリカフィルターQR−100(商品名:アドバンテック東洋(株)製,径21mm、厚さ0.5mm、繊維径1〜10μm、空隙率平均92%(85〜92%))を1枚挿入する。
そこに、第1蒸着材料として製造例1で得られた蒸着材料1を0.3cc注入し、80℃で2時間ドライオーブン加熱を行い、第1蒸着材料を固化する。
次に、固化した第1蒸着材料含有フィルター上に、新しいシリカフィルターQR−100を挿入し、第2蒸着材料として製造例2で得られた蒸着材料2を0.3cc注入し、80℃で2時間ドライオーブン加熱を行い固化し、蒸発源を製造した。
この、蒸発源を、真空蒸着装置内にセットし、第1蒸着材料側からハロゲンヒーターにて700℃まで240秒で上昇させ、さらに700℃から850℃まで240秒で上昇させ、反射防止膜付プラスチックレンズに上に撥水膜を形成した。このレンズの視感反射率は0.4%であった。
また、上記(1)〜(6)の評価結果を表3に示す。スチールウール耐荷重は3kgまで問題なく、耐摩耗性(ヘーズ値変化量)+1.5、水接触角108℃であった。
【0042】
また、下記の測定条件にて、形成された撥水膜のESCA分析(X線光電子分光分析装置 PHI製 ESCA5400MC)を行った、その結果を図5に示す。図5は、Sputtering time(蒸着時間)に対する、Relative Atomic Concentration(相対原子濃度)を示す。
測定条件
X線源:Mg−Kα(1253.6eV)
X線出力:300W(15kV−20mA)
分析面積:1.0mmφ
測定元素:C、O、F、Si、Ti(図5には、C、F、Siのみ表記)
分析分解能:Pass Energy(71.55eV)、Step(0.1eV)
イオン銃条件
イオン種:Ar+
加速電圧:3kV
ラスター:3mm×3mm
Zalar回転:無し
なお、図5において、Sputtering timeの0が最も表面、100が最も内側(レンズ側)である。同図より、形成された撥水膜に濃度傾斜があることを確認できる。
【0043】
実施例2
製造例1において、シラン化合物KBE403をKBE402(商品名:信越化学工業(株)製、分子量248.4,屈折率(25℃)1.431)に変更した以外は同様にして製造した蒸着材料を第1蒸着材料として用い、それ以外は実施例1と同様の方法にて、反射防止膜付プラスチックレンズに上に撥水膜を形成した。このレンズの視感反射率は0.4%であった。
また、上記(1)〜(6)の評価結果を表3に示す。スチールウール耐荷重は3kgまで問題なく、耐摩耗性(ヘーズ値変化量)+1.5、水接触角108℃であった。得られた撥水膜には実施例1同様に濃度傾斜が確認できた。
【0044】
実施例3
SUS製のトレー(内径21mm、厚み1mm、深さ3mm)に、シリカフィルターQR−100(商品名:アドバンテック東洋株式会社製,径21mm、厚さ0.5mm、繊維径1〜10μm、空隙率平均92%(85〜92%))を1枚挿入する。
そこに、第1蒸着材料として製造例3で用いた化合物(2)を0.2cc注入し、50℃で1時間ドライオーブン加熱を行い、第1蒸着材料を固化する。
次に、固化した第1蒸着材料含有フィルター上に、新しいシリカフィルターQR−100を挿入し、第2蒸着材料として製造例4で得られた蒸着材料4を0.3cc注入し、50℃で1時間ドライオーブン加熱を行い固化し、蒸発源を製造した。
この、蒸発源を、真空蒸着装置内にセットし、第1蒸着材料側からハロゲンヒーターにて700℃まで240秒で上昇させ、さらに700℃から850℃まで240秒で上昇させ、反射防止膜付プラスチックレンズに上に撥水膜を形成した。
【0045】
実施例4
SUS製のトレー(内径21mm、厚み1mm、深さ3mm)に、シリカフィルターQR−100(商品名:アドバンテック東洋株式会社製,径21mm、厚さ0.5mm、繊維径1〜10μm、空隙率平均92%(85〜92%))を1枚挿入する。
そこに、第1蒸着材料として製造例3で得られた蒸着材料3を0.2cc注入し、50℃で1時間ドライオーブン加熱を行い、第1蒸着材料を固化する。
次に、固化した第1蒸着材料含有フィルター上に、新しいシリカフィルターQR−100を挿入し、第2蒸着材料として製造例4で得られた蒸着材料4を0.3cc注入し、50℃で1時間ドライオーブン加熱を行い固化し、蒸発源を製造した。
この、蒸発源を、真空蒸着装置内にセットし、第1蒸着材料側からハロゲンヒーターにて700℃まで240秒で上昇させ、さらに700℃から850℃まで240秒で上昇させ、反射防止膜付プラスチックレンズに上に撥水膜を形成した。
【0046】
比較例1
撥水処理剤(化合物(1))を0.30mlしみ込ませたSUS製チップを50℃で1時間ドライオーブン加熱し、その後、真空蒸着装置内にセットした。ハロゲンヒーターにて700℃まで240秒で上昇させ、さらに700℃から850℃まで240秒で上昇させ、反射防止膜付プラスチックレンズに撥水膜を形成した。このレンズの視感反射率は0.4%であった。
また、上記(1)〜(6)の評価結果を表3に示す。スチールウール耐荷重は2kgまでは問題なく、耐摩耗性(ヘーズ値変化量)+3.5、水接触角108℃であった。得られた撥水膜には濃度傾斜は無かった。
【0047】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0048】
以上詳細に説明したように、本発明の蒸発源の形成方法により光学部材を製造すると、1回の工程で2種以上の蒸着材料を対象物に蒸着させることができ、蒸着対象物側と表面側とで蒸着材料の濃度の傾斜特性を有する蒸着膜を形成することができる。特に、光学部材として眼鏡用プラスチックレンズに適している。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の蒸着膜の形成方法において、蒸着膜が形成される蒸着状態を示す図である。
【図2】本発明で用いる蒸発源を示す図である。
【図3】本発明で用いる別の形状の蒸発源を示す図である。
【図4】本発明で用いる更に別の形状の蒸発源を示す図である。
【図5】実施例1で形成した撥水膜のESCA分析の測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1.蒸着対象物(レンズ基材+反射防止膜)
2.蒸着膜
2a.第1蒸着材料リッチ部分
2b.第2蒸着材料リッチ部分
3.揮発中の第1蒸着材料+第2蒸着材料
4.第2蒸着材料フィルター
5.第1蒸着材料フィルター
6.蒸着源
7.ヒーター
8.空洞
9. 第2蒸着材料フィルター
10. 第1蒸着材料フィルター
11. 第2蒸着材料フィルター
12. 第1蒸着材料フィルター
13.第2蒸着材料フィルター
14.第1蒸着材料フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる2種以上の蒸着材料を積層してなる蒸発源の一方の側から加熱し、対象物に蒸着させ蒸着膜を形成する蒸着膜の形成方法。
【請求項2】
前記蒸発源が、異なる2種の第1蒸着材料と第2蒸着材料を積層した2層であり、第1蒸着材料の側から加熱し、前記対象物に形成する蒸着膜が、該対象物側が第2蒸着材料より第1蒸着材料の濃度が高く、蒸着膜の表面側が第1蒸着材料より第2蒸着材料の濃度が高い、第1蒸着材料と第2蒸着材料の混合膜である請求項1に記載の蒸着膜の形成方法。
【請求項3】
第1蒸着材料と第2蒸着材料との間に緩衝層が設けられている請求項2に記載の蒸着膜の形成方法。
【請求項4】
前記蒸発源を形成する少なくとも一種の蒸着材料が、酸化ケイ素含有繊維から構成される不織布に保持され、前記不織布の熱伝導率が0.01〜1.0Wm-1-1である請求項1〜3のいずれかに記載の蒸着膜の形成方法。
【請求項5】
前記対象物が光学部材であり、該光学部材上に請求項1〜4のいずれかに記載の方法により蒸着膜を形成する光学部材の製造方法。
【請求項6】
前記光学部材上に反射防止膜が形成されており、該反射防止膜上に蒸着膜を形成する請求項5に記載の光学部材の製造方法。
【請求項7】
前記蒸着膜が撥水膜である請求項5に記載の光学部材の製造方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかに記載の方法によって製造されてなる光学部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−149975(P2009−149975A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290620(P2008−290620)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】