説明

蒸着装置および蒸着方法

【課題】キャリアガスを被蒸着基板方向に放出するガス流路内にガスを加熱する複数の固体片からなるガス加熱体を設けることで、蒸着装置の外部にキャリアガスを加熱する専用の加熱装置を設けず、被蒸着基板近傍で、キャリアガスを有機原料の沸点もしくは昇華点以上の高温に加熱することを可能とする。
【解決手段】チャンバ内に蒸着源12と被蒸着基板とを対向して設けた蒸着装置であって、蒸着源12は、蒸着材料71を蒸発させるるつぼ13と、るつぼ13の外周側に沿って被蒸着基板方向にガス61を供給するガス流路14と、ガス流路14を通過するガス61を加熱するガス加熱体15とを備えたもので、ガス加熱体15はガス流路14内に配置した複数の固体片151からなる蒸着装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャンバ内に蒸着源と被蒸着基板とを対向して設けた蒸着装置およびその蒸着装置を用いた蒸着方法であって、蒸着材料を蒸発させるるつぼの外周側に沿って被蒸着基板方向にキャリアガスを供給する際に、キャリアガスの加熱を容易にした蒸着装置および蒸着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ等に用いられる低分子系有機発光素子用の有機膜は真空蒸着法で作製されている。従来から用いられている真空蒸着法は、蒸着原料の利用効率が低い。また、蒸着が行われるチャンバー内壁に蒸着物質が付着しやすく、チャンバー内が汚染されやすいという問題を有していた。そこで、ホットウォール法と呼ばれる蒸着方法が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。このホットウォール法を用いることによって、原料の利用効率の向上が可能となる。また、ホットウォール法では、チャンバー内に蒸着物質が堆積されることを最小限に抑えて、チャンバー内の汚染を防ぎ、真空の質を高く保持し、高い純度での蒸着が可能となる。このため、有機薄膜の形成方法に用いられている。しかしながら、従来の真空蒸着法と同様、多成分系薄膜の精密制御は困難である。
【0003】
また、近年、真空蒸着法とは異なり、OVPDと呼ばれる有機気相蒸着法が開発されている(例えば、特許文献2参照。)。このOVPD法は、減圧下において原料ガスをキャリアガスで被蒸着基板の成膜表面へ運び、基板表面でガスが凝縮して膜形成が行なわれる有機膜の形成方法である。この方法を用いると、著しく異なる蒸気圧をもつ有機材料を同時蒸着し、多成分系薄膜の各成分の精密な制御が可能になるものと期待されている。このOVPD法による成膜では、有機膜の結晶化さらには結晶粒成長を避けて良好な表面性を有する有機膜を形成するために、高温原料ガスの輸送に伴う基板温度上昇を極力抑制し、膜形成時には室温付近もしくは結晶化温度以下に基板温度を維持しなければならない。しかしながら、OVPD法は大気圧もしくは大気圧に近い減圧下で成膜が行われる。このように大気圧または大気圧に近い減圧下で成長する膜は粗くなり、気相核生成および拡散律速成長過程により、不均一な表面形態を有する膜となるという問題が挙げられる。
【0004】
そこで、減圧下において、キャリアガスを用いて低分子系有機原料ガスの輸送速度を制御して被蒸着基板の成膜表面に運び、滑らかな表面性を有する有機薄膜形成を行う成膜技術が提案され、その専用の蒸着容器も提案されている(例えば、特許文献3参照。)。この蒸着装置では、減圧下において、キャリアガスを用いて、基板と対向する位置にある蒸着源から蒸発された低分子系有機原料ガスの輸送速度を制御して基板に運び、滑らかな表面性を有する有機薄膜の形成を行う。このため、蒸着源の周囲から基板方向へ、キャリアガスを流す形状(ガスバリア型と称している)を有する蒸着容器となっている。
【0005】
上記蒸着装置では、蒸着源の周りを取り囲むようにキャリアガスの壁を設けることで、有機原料ガスが、キャリアガスから外へ飛び出し、チャンバー壁に付着することを防ぎ、原料の利用効率の向上を可能にすると共に、キャリアガス流量を調整することにより、膜厚分布の均一性、成膜速度の制御性の向上が可能になるものである。また、キャリアガスに、不活性ガスではなく、有機蒸着物質を含む有機ガスを用いることで、一つの蒸着容器で、共蒸着の効果を得ることが期待できる。また、このキャリアガス原料を有機気相物質と不活性ガスと交互に切り替えることにより、共蒸着と単膜蒸着の連続成膜も可能となる。また、ホットウォールを併用することで、更なる原料の利用効率の向上が期待できる。
【0006】
しかし、有機原料の沸点もしくは昇華点以上の高温のキャリアガスを導入するためには、蒸着容器を加熱する構造だけでなく、蒸着容器に入る直前まで、キャリアガスを加熱する構造を備えなければならず、大掛かりな加熱機構を備える必要がある。そのため、装置自体が大きくなり、大きなスペースと、多くの費用が必要となる。
【0007】
そこで、キャリアガス加熱機構を備えた有機膜形成用蒸着容器を用いることで、キャリアガス専用の加熱機構を備えなくても、高温なキャリアガスを有機蒸着物質の近傍で流せるようになる。この際、キャリアガスとして、有機蒸着物質を含む有機ガスを用いる際、純度の高い有機膜を、毎回成膜するには、有機蒸着物質により汚染される加熱機構部を、毎回成膜前に、清掃する必要があるが、省スペースで効率よく熱を与える機構にするほど、キャリアガスが通る通路を小さく、緻密な構造にする必要があるため、清掃が困難で、多くの時間と費用が必要になる。
【0008】
【特許文献1】特開2002-80961号公報
【特許文献2】特表2001-523768号公報
【特許文献3】特願2004-008847号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする問題点は、有機原料の沸点、もしくは昇華点以上の高温のキャリアガスを導入するためには、蒸着容器を加熱する構造だけでなく、蒸着容器に入る直前まで、キャリアガスを加熱する構造を備えなければならず、大掛かりな加熱装置を備える必要がある点であり、そのため、蒸着装置自体が大きくなり、装置の設置面積が大きくなり、多くの費用を必要とする点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の蒸着装置は、チャンバ内に蒸着源と被蒸着基板とを対向して設けた蒸着装置であって、前記蒸着源は、蒸着材料を蒸発させるるつぼと、前記るつぼの外周側に沿って前記被蒸着基板方向にガスを供給するガス流路と、前記ガス流路を通過するガスを加熱するガス加熱体とを備えたもので、前記ガス加熱体は前記ガス流路内に配置した複数の固体片からなることを最も主要な特徴とする。
【0011】
本発明の蒸着方法は、チャンバ内に蒸着源と被蒸着基板とを対向して設けた蒸着装置を用いて、前記蒸着源より蒸発させた蒸着材料を前記被蒸着基板に堆積させる蒸着方法であって、前記蒸着源は、蒸着材料を蒸発させるるつぼと、前記るつぼの外周側に沿って前記被蒸着基板方向にガスを供給するガス流路と、前記ガス流路を通過するガスを加熱するガス加熱体と、前記ガス加熱体を加熱する加熱源とを備えたもので、前記ガス加熱体は、前記流路内に配置した複数の固体片からなることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の蒸着装置は、蒸着装置のるつぼの外周側に沿って被蒸着基板方向にガスを供給するガス流路と、そのガス流路を通過するガスを加熱するもので複数の固体片からなるガス加熱体とを備えたため、被蒸着基板に放出される直前でガスが加熱されるので、所望の温度とした高温のガスを被蒸着基板方向に流すことができるという利点がある。また、たとえ加熱されていないガスが流路内に供給されても、ガス流路に加熱された複数の固体片からなるガス加熱体が備えられていることから、供給されたガスは複数の固体片からなるガス加熱体と十分に接触することができるので、ガスを流路内で十分に加熱することができる。このため、従来の蒸着装置のように蒸着装置の外部にガスを専用に加熱する装置等を設ける必要がないので、従来の加熱装置分だけ装置の設置面積、装置コストを低減することができる。
【0013】
したがって、本発明の蒸着装置では、例えば、従来の有機材料蒸着法に加え、有機ガス蒸着法であるOVPD法を融合させた有機膜形成を行う際、ガス(例えばキャリアガス)が加熱されるガス流路と複数の固体片からなるガス加熱体とを備えていることから、ガス加熱体により温度制御された所望の温度の高温なガス(例えばキャリアガス)を被蒸着基板方向に流すことができるので、膜厚分布が良好で、組成傾斜が可能な有機膜を形成することが可能になる。また、蒸着物質の利用効率、成膜速度の向上も可能となる。さらに、ガス流路から被蒸着基板方向に放出されるガスは、るつぼの側周より放出されるため、るつぼから蒸発された蒸着物質はガス流路から放出されたガスによって取り囲まれるようになる。このため、蒸着が行われるチャンバ内壁への蒸着物質の付着の防止ができ、チャンバ内部の汚染を抑制することで可能になる。よって、清浄度の高い真空状態を保持することが可能になるので、高い純度の蒸着膜を形成することができる。
【0014】
さらに、上記ガス加熱体が複数の固体片からなることから、複数の固体片をガス流路から取り出すことが容易であるので、複数の固体片の洗浄を容易に行うことができる。これによって、ガスを清浄な状態で加熱することができるので、例えばガスが成膜成分のガスである場合には、成膜される膜を高純度に形成することができるようになるという利点がある。
【0015】
本発明の蒸着方法は、蒸着装置のるつぼの外周側に沿って被蒸着基板方向にガスを供給するガス流路と、そのガス流路を通過するガスを加熱するもので複数の固体片からなるガス加熱体とを備えた蒸着装置を用いて蒸着を行うため、被蒸着基板に放出される直前でガスを加熱することができるので、所望の温度とした高温のガスを被蒸着基板方向に流すことができるという利点がある。また、たとえ加熱されていないガスが流路内に供給されても、ガス流路に加熱された複数の固体片からなるガス加熱体が備えられていることから、供給されたガスは複数の固体片からなるガス加熱体と十分に接触することができるので、ガスを流路内で十分に加熱することができる。
【0016】
したがって、本発明の蒸着方法では、例えば、従来の有機材料蒸着法に加え、有機ガス蒸着法であるOVPD法を融合させた有機膜形成を行う際、ガス(例えばキャリアガス)が加熱されるガス流路と複数の固体片からなるガス加熱体とを備えている蒸着装置を用いて蒸着を行うことから、ガス加熱体により温度制御された所望の温度の高温なガス(例えばキャリアガス)を被蒸着基板方向に流すことができるので、膜厚分布が良好で、組成傾斜が可能な有機膜を形成することができる。また、蒸着物質の利用効率、成膜速度の向上も可能となる。さらに、ガス流路から被蒸着基板方向に放出されるガスがるつぼの側周より放出されるため、るつぼから蒸発される蒸着物質はガス流路から放出されたガスによって取り囲まれるようになり、これによって、蒸着が行われるチャンバ内壁への蒸着物質の付着を防止され、チャンバ内部の汚染を抑制することが可能になる。したがって、清浄度の高い真空状態を保持することが可能になるので、高い純度の蒸着膜を形成することができる。
【0017】
さらに、上記ガス加熱体が複数の固体片からなることから、複数の固体片をガス流路から取り出すことが容易であるので、複数の固体片の洗浄を容易に行うことができる。これによって、本発明の蒸着方法では、ガスを清浄な状態で加熱することができるので、例えばガスが成膜成分のガスである場合には、成膜される膜を高純度に形成することができるようになるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
有機原料の沸点もしくは昇華点以上の高温のキャリアガスを導入するという目的を、蒸着装置のるつぼの外周側に沿って被蒸着基板方向にガスを供給するガス流路と、そのガス流路内を流れるガスを加熱する複数の固体片からなるガス加熱体とを備えることで、蒸着装置の外部にキャリアガスを加熱する専用の加熱装置を設けずに実現した。
【実施例1】
【0019】
本発明の蒸着装置および蒸着方法に係る第1実施例を、図1および図2によって説明する。図1は、(1)は蒸着装置の要部を示した概略構成断面図であり、(2)は(1)図のA部拡大断面図を示すものであり、図2は蒸着装置の概略を示した概略構成断面である。
【0020】
図1および図2に示すように、チャンバ11内に蒸着源12と被蒸着基板51とを対向して設けた蒸着装置1である。
【0021】
上記蒸着源12は、蒸着材料71を蒸発させるるつぼ13と、るつぼ13の外周側に沿って上記被蒸着基板51方向にガス61(例えばキャリアガス)を供給するガス流路14と、ガス流路14内に配置した複数の固体片151からなるガス加熱体15と、上記ガス流路14にガス61を供給するガス供給部16とを備えたものである。さらに、上記ガス供給部16の出口には、上記各固体片151が上記ガス供給部16側に流入するのを防ぐ網21が設置されている。この網21の網目は上記固体片151より小さく形成されている。なお、上記ガス供給部16は、複数設けることも可能である。この場合のガス供給部16は等間隔に配置されることが好ましい。また、図示はしていないが、上記蒸着源12は同一チャンバ11内に複数設けることも可能であり、また上記るつぼ13は一つの蒸着源12に複数設けることも可能である。
【0022】
上記ガス流路14は、上記るつぼ13の外側壁と、その外側壁の周囲に空間(ガス流路14)を介して形成された側壁17と、上記るつぼ13の外側壁と上記側壁17とに連続してガス流路14の下部側を閉塞する底部18とから構成されている。上記側壁17は、ガス流路内の熱が逃げないように断熱壁とすることが好ましい。上記ガス流路14を構成する部材は、耐食性に優れた材料で構成されることが好ましく、例えばステンレス等を用いることができ、また耐食性の低い材料が用いられる場合には、ガス61が触れる表面にガス61による腐食を防止するための防食膜として、例えば酸化膜、窒化膜、セラミックスもしくはホーロー等のコーティングを施すことが好ましい。
【0023】
上記ガス加熱体15の各固体片151は、熱伝導性に優れた材料で、ガス流路14を流れるガス61に腐食されない材料で構成することが好ましい。例えば、金属系材料もしくは炭素系材料を用いることができ、その形状は球状体、長円回転体、楕円回転体、多面体、柱状体等の種々の形状を採ることができる。
【0024】
上記ガス加熱体15の各固体片151には、具体的には、例えばステンレスを用いることができる。ステンレスは、耐食性に優れ、熱伝導性も良い材料であり、製造コストが安価であるという特徴を有する。または、各固体片151に炭素を用いることもできる。炭素は加熱した場合、ガス加熱体15自体に熱を吸収するため、ガス61への加熱効率が高くなるという特徴を有する。さらに、炭素は、水素と反応して塩化水素を離脱させる作用、炭酸ガスとの反応による一酸化炭素への変換作用等がある。または、各固体片151に合金材料を用いることができ、例えばパラジウム合金を用いることができる。パラジウム合金としては、例えばパラジウム銀合金、パラジウムニッケル合金、パラジウム金合金等が挙げられる。またパラジウム合金は、不純物を含んだ水素などのガスを純化させる触媒作用を有し、特にパラジウム銀合金はその触媒作用の速度を速める効果がある。
【0025】
また、熱伝導性に優れた金属材料を核として、その表面に耐食性材料の被膜を形成したものであっても好ましい。この耐食性材料としては、酸化膜、窒化膜、炭化膜、セラミックス、ホーロー等が挙げられる。上記金属材料としては、銅、アルミニウム等が挙げられる。
【0026】
上記ガス加熱体15の各固体片151の形状が球状体のものでは、ガス加熱体15の表面積は多面体等の固体片と比較してやや少ないが、ガス加熱体15の各固体片151同士の接触が点接触に近い接触状態となるためにガス加熱体15の各固体片151同士の接触面積が少なくなるので、結果的にガス61が接触する面積を多くすることができるという利点がある。上記長円回転体、楕円回転体も球状体と同様なる利点が得られる。なお、上記長円回転体、楕円回転体はあまり扁平なものは、流路の確保が不十分になるため、好ましくない。
【0027】
また、上記ガス加熱体15の各固体片151の形状が多面体のものでは、多面体の一面と熱源である壁面との接触、各固体片151(多面体の一面)同士の接触は多くの場合に面接触となるため、熱伝導効率がよくなり、各固体片151を効率良く加熱できる。またガス加熱体15の各固体片151の表面積も稼げるため、各固体片151に接触するガスを効率よく加熱することが可能になるという利点がある。ただし、立方体、直方体等の6面体構造のものは、ガス流路14内に集積した場合にガス加熱体15の各固体片151同士の隙間が少なくなり、ガス61の流路を十分に確保することは難しくなる場合があるので、例えば8面体以上の多面体が好ましい。
【0028】
また、上記ガス加熱体15の各固体片151の形状が柱状体のものでは、ガス加熱体15の多くの各固体片151の熱を均一かつ効率よくガス61に伝えることができるという利点がある。また、被蒸着基板51方向に向かって各固体片151の長手方向をそろえることにより、ガス加熱体15内を流れるガス61が乱流を発生させることなく被蒸着基板51方向に流出されるという効果も得られる。また、上記柱状体はガス流路が十分に確保できるように円柱状が好ましい。
【0029】
また、ガス加熱体15の各固体片151は、長期に使用した場合には表面に付着した不純物を除去する洗浄を行う必要が生じる。この場合、形状が単純な球状体、またはそれに近い長円回転体、楕円回転体が洗浄し易いという特徴を有している。
【0030】
上記説明したように、ガス加熱体15の各固体片151は、その隙間にガス61を通すことでガス61を加熱するため、各固体片151をガス流路14に入れた際に、各個体片151間にガスが流れる流路が確保される形状であれば、如何なる形状のものも用いることができる。また、各固体片151は、キャリアガスを効率よく加熱できるだけでなく、蒸着源12からの出し入れが容易であり、形状のシンプルであれば、各固体片151の洗浄が容易になる。また、各固定片151の材質、サイズはガス61の流量、種類にしたがって適宜選択されるものである。
【0031】
また図示はしていないが、上記るつぼ13およびガス加熱体15を加熱する加熱源として、熱線を放射する加熱装置もしくは抵抗発熱を利用した加熱装置が、例えば上記るつぼ13およびガス加熱体15の底部側に設けられている。この加熱源は、上記一例の他の加熱源であってもよく、すなわち、上記るつぼ13およびガス加熱体15を加熱する目的が達成できる加熱装置であればよい。
【0032】
また上記チャンバ11には、チャンバ11内の真空度を調節する真空装置(図示せず)が接続されている。
【0033】
本発明の蒸着装置1は、ガス流路14に複数の固体片151からなるガス加熱体15を備えたため、被蒸着基板51に放出される直前でガス61が加熱されるので、所望の温度とした高温のガス61を被蒸着基板51方向に流すことができるという利点がある。また、たとえ加熱されていないガスがガス流路14内に供給されても、ガス流路14内に複数の固体片151からなるガス加熱体15が存在することから、供給されたガス61がガス加熱体15の各固体片151と十分に接触することができるので、ガス61をガス流路14内で十分に加熱することができる。このため、従来の蒸着装置のように蒸着装置の外部にガスを専用に加熱する装置等を設ける必要がないので、従来の加熱装置分だけ装置の設置面積、装置コストを低減することができる。
【0034】
したがって、本発明の蒸着装置1では、例えば、従来の有機材料蒸着法に加え、有機ガス蒸着法であるOVPD法を融合させた有機膜形成を行う際、ガス加熱体15により温度制御された所望の温度の高温なガス(例えばキャリアガス)61を被蒸着基板51方向に流すことができるので、膜厚分布が良好で、組成傾斜が可能な有機膜を形成することが可能になる。また、蒸着材料の利用効率、成膜速度の向上も可能となる。さらに、ガス流路14から被蒸着基板51方向に放出されるガス61は、るつぼ13の側周より放出されるため、るつぼ13から蒸発された蒸着物質81はガス流路14から放出されたガス61によって取り囲まれるようになる。このため、蒸着が行われるチャンバ11内壁への蒸着物質81の付着の防止ができ、チャンバ11内部の汚染を抑制することで可能になる。よって、チャンバ11内部を清浄度の高い真空状態を保持することが可能になるので、被蒸着基板51に高い純度の蒸着膜を形成することができる。
【0035】
さらに、上記ガス加熱体15が複数の固体片151からなることから、各固体片151をガス流路14から取り出すことが容易であるので、各固体片151の洗浄を容易に行うことができる。これによって、ガス61を清浄な状態で加熱することができるので、例えばガス61が成膜成分のガスである場合には、成膜される膜を高純度に形成することができるようになるという利点がある。
【0036】
次に、上記蒸着装置1を用いた蒸着方法について説明する。
【0037】
前記図1および図2に示すように、チャンバ11内に被蒸着基板51を設置し、るつぼ13内に蒸着材料71を収納する。そしてチャンバ11内を真空引きし、所望の真空度に到達させる。そして、るつぼ13内の蒸着材料71を加熱して蒸発させ、蒸着物質81を生成するとともに、ガス供給部16よりガス(例えばキャリアガス)61をガス流路14内に導入し、ガス加熱体15によってガス流路14内を流れるガス61を加熱することで、ガス61を所望の温度にする。このように加熱されたガス61はガス流路14の最上部から被蒸着基板51方向に放出される。このとき、所望の温度に加熱されたガス61は、ガス化された蒸着物質81とともに、このガス化された蒸着物質81の側周を取り囲むようにして、被蒸着基板51方向に放出される。このとき、被蒸着基板51のるつぼ13側に設置されたシャッター(図示せず)を開放する。これにより、ガス化された蒸着物質81が被蒸着基板51の成膜面に付着、堆積し、被蒸着基板51表面に蒸着膜(図示せず)が形成される。
【0038】
例えば、上記蒸着材料71は、緑色発光層を成膜する場合のホスト材料にはAlq3[tris(8-quinolinolato)aluminium(III)]を用い、ゲスト材料にはクマリン(Coumarin)を用いる。また、青色発光層を成膜する場合のホスト材料にはバソクプロイン(Bathocuproine:2,9-dimethyl-4,7-diphenyl-1,10phenanthroline)を用い、ゲスト材料にはクマリン(Coumarin)を用いる。また、赤色発光層を成膜する場合のホスト材料にはBSB−BCN[2,5-bis{4-(N-methoxyphenyl-N-phenylamino)styryl}benzene-1,4-dicarbonitrile]を用い、ゲスト材料にはクマリン(Coumarin)を用いる。また正孔輸送層を成膜する場合のホスト材料にはα−ナフチルフェニルジアミン(α−NPD:例えばN,N'-Bis(1-naphtyl)-N,N'-diphenyl-1,1'-biphenyl-4,4'-diamine)を用い、ゲスト材料にはクマリン(Coumarin)を用いる。また、そのときのキャリアガス(上記ガス61)には、窒素もしくはアルゴンもしくは水素を用いる。具体的の成膜雰囲気の条件としては、成膜雰囲気の真空度を1×10-5〜1×102Pa、キャリアガスの流量を0.1cm3/min〜0.010m3/min、キャリアガスの温度を室温〜600℃、ホスト材料の加熱温度を220℃〜400℃、ゲスト材料の加熱温度を100度〜250℃とする。
【0039】
1×10-5Paの高真空下、ホスト材料、ゲスト材料が導入された本発明の蒸着装置1のるつぼ13を、それぞれ、300℃前後、150℃前後に加熱することで、各材料が気化する温度に制御する。その後、キャリアガス(ガス61)をホスト材料、ゲスト材料が入ったるつぼ13の側周のガス流路14に導入し、ホスト材料、ゲスト材料の成膜レートを、キャリアガスで制御しながら、ゲスト材料とホスト材料が所望の割合で混合された有機膜を成膜する。この際、キャリアガス流量と、キャリアガス温度で、ホスト材料の成膜レートを制御するため、るつぼ13の温度のみで制御するだけのものに比べ、成膜レート制御の応答性が速く、膜厚方向の組成の変調がかけやすくなる。
【0040】
そして、所望の膜厚に成膜が完了した後、上記シャッター(図示せず)を閉じ、蒸着物質81が被蒸着基板51方向に向かうのを阻止するとともに、蒸着材料71の加熱を停止し、ガス61の供給を停止し、さらにガス加熱体15による加熱を停止する。これによって、蒸着物質81の生成が停止される。
【0041】
その後、チャンバ11内を一旦真空状態にしてから、チャンバ11内を例えば不活性ガスで置換した後、チャンバ11内より蒸着が完了した被蒸着基板51を不活性ガスで満たした別の容器に移動すればよい。なお、蒸着膜を複数層に形成する場合にはるつぼ13ごと蒸着材料71を交換して、上記説明したのと同様なプロセスにより蒸着を行えばよい。
【0042】
本発明の蒸着方法は、蒸着装置1のるつぼ13の外周側に沿って被蒸着基板51方向にガス61を供給するガス流路14と、そのガス流路14を通過するガス61を加熱するガス加熱体15を備えた蒸着装置1を用いて蒸着を行うため、被蒸着基板51に放出される直前でガス61を加熱することができるので、所望の温度とした高温のガス61を被蒸着基板51方向に流すことができるという利点がある。また、たとえ加熱されていないガスがガス流路14内に供給されても、ガス流路14内に複数のガス加熱体15が存在していることから、供給されたガス61が複数の固体片151からなるガス加熱体15と十分に接触することができるので、ガス61をガス流路14内で十分に加熱することができる。
【0043】
したがって、本発明の蒸着方法では、例えば、従来の有機材料蒸着法に加え、有機ガス蒸着法であるOVPD法を融合させた有機膜形成を行う際、所望の温度に加熱したガス61および蒸着物質81によって成膜が行われるので、膜厚分布が良好で、組成傾斜が可能な有機膜を形成することができる。また、蒸着物質81の利用効率、成膜速度の向上も可能となる。さらに、ガス流路14から被蒸着基板51方向に放出されるガス61がるつぼ13の側周より放出されるため、るつぼ13から蒸発される蒸着物質81はガス流路14から放出されたガス61によって取り囲まれるようになり、これによって、蒸着が行われるチャンバ11内壁への蒸着物質81の付着を防止され、チャンバ11内部の汚染を抑制することが可能になる。したがって、清浄度の高い真空状態を保持することが可能になるので、被蒸着基板51の成膜面には高い純度の蒸着膜を形成することができる。
【0044】
さらに、上記ガス加熱体15が複数の固体片151からなることから、複数の固体片151をガス流路14から取り出すことが容易であるので、複数の固体片151の洗浄を容易に行うことができる。これによって、本発明の蒸着方法では、ガス61を清浄な状態で加熱することができるので、例えばガス61が成膜成分のガスである場合には、成膜される膜を高純度に形成することができるようになるという利点がある。
【実施例2】
【0045】
次に、本発明の蒸着装置および蒸着方法に係る第2実施例を、図3および図4によって説明する。図3は蒸着装置の要部を示した概略構成断面図であり、図4は蒸着装置の概略を示した概略構成断面である。第2実施例の蒸着装置2は、図3の蒸着装置の要部を示した概略構成断面図に示すように、ガス流路14を構成する側壁17内にガス加熱体15を加熱する加熱源23を備えたこと以外、前記実施例1の蒸着装置1と同様な構成を有する。以下、蒸着源12を中心に詳細を説明する。
【0046】
図3および図4に示すように、上記蒸着源12は、蒸着材料71を蒸発させるるつぼ13と、るつぼ13の外周側に沿って上記被蒸着基板51方向にガス61(例えばキャリアガス)を供給するガス流路14と、ガス流路14内に収納した複数の固体片151からなるガス加熱体15と、上記ガス流路14にガス61を供給するガス供給部16とを備えたものである。さらに、上記ガス供給部16の出口には、上記各固体片151が上記ガス供給部16側に流入するのを防ぐ網21が設置されている。この網21の網目は上記固体片151より小さく形成されている。なお、上記ガス供給部16は、複数設けることも可能である。この場合のガス供給部16は等間隔に配置されることが好ましい。また、図示はしていないが、上記蒸着源12は同一チャンバ11内に複数設けることも可能であり、また上記るつぼ13は一つの蒸着源12に複数設けることも可能である。
【0047】
上記ガス流路14は、上記るつぼ13の外側壁と、その外側壁の周囲に空間(ガス流路14)を介して形成された側壁17と、上記るつぼ13の外側壁と上記側壁17とに連続してガス流路14の下部側を閉塞する底部18とから構成されている。上記側壁17の外壁部は、ガス流路内の熱が逃げないように断熱壁とすることが好ましい。上記ガス流路14を構成する部材は、耐食性に優れた材料で構成されることが好ましく、例えばステンレス等を用いることができ、また耐食性の低い材料が用いられる場合には、ガス61が触れる表面にガス61による腐食を防止するための防食膜として、例えば酸化膜、窒化膜、セラミックスもしくはホーロー等のコーティングを施すことが好ましい。
【0048】
また、上記側壁17の内部には、上記ガス流路14内部に配置されるガス加熱体15を加熱するための加熱源23が配置されている。この加熱源23としては、例えば抵抗発熱を利用した加熱装置を用いることができ、抵抗発熱を利用したものとしては、例えば電熱線を用いることができる。
【0049】
上記ガス加熱体15の構成、上記チャンバ11の構成は、前記実施例1で説明したものと同様である。また上記チャンバ11には、チャンバ11内の真空度を調節する真空装置(図示せず)が接続されている。
【0050】
本発明の蒸着装置2は、上記蒸着装置1と同様なる作用、効果を得ることができるとともに、側壁17内に加熱源23を設置したことから、ガス流路14内に配置した複数の固体片151からなるガス加熱体15をより高精度に温度制御して加熱することが可能になる。また、るつぼ13と異なる温度でガス加熱体15の加熱、温度制御が容易になるので、膜厚分布が良好で、組成傾斜が可能な有機膜を形成することができる。
【0051】
次に、上記蒸着装置2を用いた蒸着方法について説明する。
【0052】
前記図3および図4に示すように、チャンバ11内に被蒸着基板51を設置し、るつぼ13内に蒸着材料71を収納する。そしてチャンバ11内を真空引きし、所望の真空度に到達させる。そして、るつぼ13内の蒸着材料71を加熱して蒸発させ、蒸着物質81を生成するとともに、ガス供給部16よりガス(例えばキャリアガス)61を、加熱源23によって所望の温度に加熱されているガス加熱体15が配置されたガス流路14内に導入し、ガス加熱体15によってガス61を加熱することで、ガス61を所望の温度にする。このように加熱されたガス61はガス流路14の最上部から被蒸着基板51方向に放出される。このとき、所望の温度に加熱されたガス61は、ガス化された蒸着物質81とともに、このガス化された蒸着物質81の側周を取り囲むようにして、被蒸着基板51方向に放出される。このとき、被蒸着基板51のるつぼ13側に設置されたシャッター(図示せず)を開放する。これにより、ガス化された蒸着物質81が被蒸着基板51の成膜面に付着、堆積し、被蒸着基板51表面に蒸着膜(図示せず)が形成される。
【0053】
具体的な蒸着例としては、前記実施例1で説明した蒸着材料を用いて成膜することができる。
【0054】
そして、所望の膜厚に成膜が完了した後、上記シャッター(図示せず)を閉じ、蒸着物質81が被蒸着基板51方向に向かうのを阻止するとともに、蒸着材料71の加熱を停止し、ガス61の供給を停止し、さらに加熱源23によるガス加熱体15の加熱を停止する。これによって、蒸着物質81の生成が停止される。
【0055】
その後、チャンバ11内を一旦真空状態にしてから、チャンバ11内を例えば不活性ガスで置換した後、チャンバ11内より蒸着が完了した被蒸着基板51を不活性ガスで満たした別の容器に移動すればよい。なお、蒸着膜を複数層に形成する場合にはるつぼ13ごと蒸着材料71を交換して、上記説明したのと同様なプロセスにより蒸着を行えばよい。
【0056】
本発明の蒸着方法は、蒸着装置2のるつぼ13の外周側に沿って被蒸着基板51方向にガス61を供給するガス流路14と、そのガス流路14を通過するガス61を加熱するガス加熱体15を備えた蒸着装置2を用いて蒸着を行うため、上記実施例1の蒸着方法と同様なる作用、効果を得ることができるとともに、ガス流路14を構成する側壁17に加熱源23を設けたことから、ガス流路14内のガス加熱体15をるつぼ13とは別個に所望の温度に加熱することができるので、より高精度にガス61の温度制御が可能になる。これにより、成膜膜厚の制御、成膜成分の制御が容易になり、高品質な成膜が可能になる。
【実施例3】
【0057】
次に、本発明の蒸着装置および蒸着方法に係る第3実施例を、図5および図6によって説明する。図5は蒸着装置の要部を示した概略構成断面図であり、図6は蒸着装置の概略を示した概略構成断面である。第3実施例の蒸着装置3は、図5の蒸着装置の要部を示した概略構成断面図に示すように、ガス流路14はるつぼ13の外周側に連続してるつぼ13の底部側にも設けられていること以外、前記実施例1の蒸着装置1と同様な構成を有する。
【0058】
図5および図6に示すように、上記蒸着源12は、蒸着材料71を蒸発させるるつぼ13と、るつぼ13の底部側から外周側に沿って上記被蒸着基板51方向にガス61(例えばキャリアガス)を供給するガス流路14と、ガス流路14内に収納した複数の固体片151からなるガス加熱体15と、上記ガス流路14の下部側にガス61を供給するガス供給部16とを備えたものである。さらに、上記ガス供給部16の出口には、上記各固体片151が上記ガス供給部16側に流入するのを防ぐ網21が設置されている。この網21の網目は上記固体片151より小さく形成されている。なお、上記ガス供給部16は、複数設けることも可能である。この場合のガス供給部16は等間隔に配置されることが好ましい。また、図示はしていないが、上記蒸着源12は同一チャンバ11内に複数設けることも可能であり、また上記るつぼ13は一つの蒸着源12に複数設けることも可能である。
【0059】
上記ガス流路14は、上記るつぼ13の底部を含む外壁と、その外壁の周囲に空間(ガス流路14)を介して形成された流路壁25とから構成されている。したがって、るつぼ13の底部側および側周にガス流路14が構成されている。上記流路壁25は、ガス流路内の熱が逃げないように断熱壁とすることが好ましい。上記ガス流路14を構成する部材は、耐食性に優れた材料で構成されることが好ましく、例えばステンレス等を用いることができ、また耐食性の低い材料が用いられる場合には、ガス61が触れる表面にガス61による腐食を防止するための防食膜として、例えば酸化膜、窒化膜、セラミックスもしくはホーロー等のコーティングを施すことが好ましい。
【0060】
なお、上記流路壁25の内部には、前記実施例2で説明したのと同様に、加熱源23が配置されていてもよい。
【0061】
上記ガス加熱体15の構成、上記チャンバ11の構成は、前記実施例1で説明したものと同様である。また上記チャンバ11には、チャンバ11内の真空度を調節する真空装置(図示せず)が接続されている。
【0062】
本発明の蒸着装置3は、前記蒸着装置1と同様なる作用、効果を得ることができるとともに、るつぼ13の下部側に、るつぼ13の底部側および側周にガス流路14が形成されていることから、ガス流路14内に配置した複数の固体片151からなるガス加熱体15をより、ガス61を高精度に温度制御して加熱することが可能になる。また、るつぼ13と異なる温度でガス加熱体15の加熱、温度制御が容易になるので、膜厚分布が良好で、組成傾斜が可能な有機膜を形成することができる。さらに、ガス流路14がるつぼ13の側周および底部側を囲むように形成されるため、るつぼ13を加熱もしくは保温する効果も得られる。
【0063】
次に、上記蒸着装置3を用いた蒸着方法について説明する。
【0064】
前記図5および図6に示すように、チャンバ11内に被蒸着基板51を設置し、るつぼ13内に蒸着材料71を収納する。そしてチャンバ11内を真空引きし、所望の真空度に到達させる。そして、るつぼ13内の蒸着材料71を加熱して蒸発させ、蒸着物質81を生成するとともに、ガス供給部16よりガス(例えばキャリアガス)61を、所望の温度に加熱されているガス加熱体15が配置されたガス流路14内に導入し、ガス加熱体15によってガス61を加熱することで、ガス61を所望の温度にする。このように加熱されたガス61はガス流路14の最上部から被蒸着基板51方向に放出される。このとき、所望の温度に加熱されたガス61は、ガス化された蒸着物質81とともに、このガス化された蒸着物質81の側周を取り囲むようにして、被蒸着基板51方向に放出される。このとき、被蒸着基板51のるつぼ13側に設置されたシャッター(図示せず)を開放する。これにより、ガス化された蒸着物質81が被蒸着基板51の成膜面に付着、堆積し、被蒸着基板51表面に蒸着膜(図示せず)が形成される。
【0065】
具体的な蒸着例としては、前記実施例1で説明した蒸着材料を用いて成膜することができる。
【0066】
そして、所望の膜厚に成膜が完了した後、上記シャッター(図示せず)を閉じ、蒸着物質81が被蒸着基板51方向に向かうのを阻止するとともに、蒸着材料71の加熱を停止し、ガス61の供給を停止し、さらにガス加熱体15の加熱を停止する。これによって、蒸着物質81の生成が停止される。
【0067】
その後、チャンバ11内を一旦真空状態にしてから、チャンバ11内を例えば不活性ガスで置換した後、チャンバ11内より蒸着が完了した被蒸着基板51を不活性ガスで満たした別の容器に移動すればよい。なお、蒸着膜を複数層に形成する場合にはるつぼ13ごと蒸着材料71を交換して、上記説明したのと同様なプロセスにより蒸着を行えばよい。
【0068】
本発明の蒸着方法は、蒸着装置3のるつぼ13の底部側および外周側に沿って被蒸着基板51方向にガス61を供給するガス流路14と、そのガス流路14を通過するガス61を加熱するガス加熱体15を備えた蒸着装置3を用いて蒸着を行うため、上記実施例1の蒸着方法と同様なる作用、効果を得ることができる。それとともに、ガス流路14がるつぼ13の下部側にも形成されたことから、ガス流路14の長さが長くなり、それにともなってガス流路14内のガス加熱体15にガス61が接触する道程が長くなるので、ガス61を十分に加熱することが可能になる。したがって、ガス61を所望の温度により確実に加熱することができるようになる。これにより、成膜膜厚の制御、成膜成分の制御が容易になり、高品質な成膜が可能になる。
【実施例4】
【0069】
次に、本発明の蒸着装置および蒸着方法に係る第4実施例を、図7および図8によって説明する。図7は蒸着装置の要部を示した概略構成断面図であり、図8は蒸着装置の概略を示した概略構成断面である。第4実施例の蒸着装置4は、図7の蒸着装置の要部を示した概略構成断面図に示すように、るつぼ13の底部側にガス流路14に連通するガス加熱室27が設けられ、このガス加熱室27内に複数の固体片151からなるガス加熱体15が配置されているものであり、これ以外の構成は、前記実施例1の蒸着装置1と同様な構成を有する。以下、蒸着源12を中心に詳細を説明する。
【0070】
図7および図8に示すように、上記蒸着源12は、蒸着材料71を蒸発させるるつぼ13と、るつぼ13の外周側に沿って上記被蒸着基板51方向にガス61(例えばキャリアガス)を供給するガス流路14と、るつぼ13の底部側に設けたものでガス流路14に連通するガス加熱室27と、このガス加熱室27に配置された複数の固体片151からなるガス加熱体15と、上記ガス加熱室27の下部側にガス61を供給するガス供給部16とを備えたものである。さらに、上記ガス供給部16の出口には、上記各固体片151が上記ガス供給部16側に流入するのを防ぐ網21が設置されている。この網21の網目は上記固体片151より小さく形成されている。なお、上記ガス供給部16は、複数設けることも可能である。この場合のガス供給部16は等間隔に配置されることが好ましい。また、図示はしていないが、上記蒸着源12は同一チャンバ11内に複数設けることも可能であり、また上記るつぼ13は一つの蒸着源12に複数設けることも可能である。
【0071】
また、上記ガス加熱室27には、ガス加熱室27内に配置された複数の固体片151からなるガス加熱体15を加熱する加熱源(図示せず)が設けられていてもよい。この加熱源としては、例えばガス加熱室27下部側より加熱するもので、抵抗加熱による加熱装置(例えば電熱線、ホットプレート等)もしくは熱線の照射による加熱装置(ランプ加熱装置、レーザ光加熱装置等)がある。また、ガス加熱室27を構成する壁内に、例えば抵抗加熱を利用して加熱する、例えば電熱線のような加熱手段を埋め込むこともできる。
【0072】
上記ガス加熱室27の上部にはガス流路14に連通する複数の孔28が形成されている。図面では等間隔に8個の孔28が形成されているものを示したが、孔28の個数は8個に限定されるものではなく、複数個であればよい。また、図9に示すように、放射状に複数の孔28を形成したものであってもよく、それらの孔28は内側から外側に向かって大きさを変えたものであってもよい。また、各孔28にはガス加熱体15の各固体片151がガス加熱室27より流出しないようにするための網29が設けられている。この網29は前記網21と同様のものを用いることができる。
【0073】
上記ガス流路14は、上記るつぼ13の外側壁と、その外側壁の周囲に空間(ガス流路14)を介して形成された側壁17とで構成され、上記ガス加熱室27の上部に設けられた各孔28によりガス加熱室27内部と連通している。上記側壁17および上記ガス加熱室27の外壁部は、ガス流路14内およびガス加熱室内の熱が逃げないように断熱壁とすることが好ましい。上記ガス流路14および上記ガス加熱室27を構成する部材は、耐食性に優れた材料で構成されることが好ましく、例えばステンレス等を用いることができ、また耐食性の低い材料が用いられる場合には、ガス61が触れる表面にガス61による腐食を防止するための防食膜として、例えば酸化膜、窒化膜、セラミックスもしくはホーロー等のコーティングを施すことが好ましい。
【0074】
なお、上記側壁17の内部には、前記実施例2で説明したのと同様に、加熱源23が配置されていてもよい。
【0075】
上記ガス加熱体15の構成、上記チャンバ11の構成は、前記実施例1で説明したものと同様である。また上記チャンバ11には、チャンバ11内の真空度を調節する真空装置(図示せず)が接続されている。
【0076】
本発明の蒸着装置4は、前記蒸着装置1と同様なる作用、効果を得ることができるとともに、るつぼ13の下部側に、るつぼ13の側周に形成されたガス流路14に連通するガス加熱室27が設けられていることから、ガス加熱室27内に配置した複数の固体片151からなるガス加熱体15をより、ガス61を高精度に温度制御して加熱することが可能になる。また、るつぼ13と異なる温度でガス加熱体15の加熱、温度制御が容易になるので、膜厚分布が良好で、組成傾斜が可能な有機膜を形成することができる。さらに、ガス流路14およびガス加熱室27がるつぼ13の側周および底部側を囲むように形成されるため、ガス流路14およびガス加熱室27によってるつぼ13を加熱もしくは保温する効果も得られる。
【0077】
次に、上記蒸着装置4を用いた蒸着方法について説明する。
【0078】
前記図7および図8に示すように、チャンバ11内に被蒸着基板51を設置し、るつぼ13内に蒸着材料71を収納する。そしてチャンバ11内を真空引きし、所望の真空度に到達させる。そして、るつぼ13内の蒸着材料71を加熱して蒸発させ、蒸着物質81を生成するとともに、ガス供給部16よりガス(例えばキャリアガス)61を、所望の温度に加熱されているガス加熱体15が配置されたガス加熱室27内に導入し、ガス加熱体15によってガス61を加熱することで、ガス61を所望の温度にする。そして、ガス加熱室27の孔28より加熱したガス61をガス流路14内に導入し、ガス流路14の最上部から被蒸着基板51方向に放出する。このとき、所望の温度に加熱されたガス61は、ガス化された蒸着物質81とともに、このガス化された蒸着物質81の側周を取り囲むようにして、被蒸着基板51方向に放出される。このとき、被蒸着基板51のるつぼ13側に設置されたシャッター(図示せず)を開放する。これにより、ガス化された蒸着物質81が被蒸着基板51の成膜面に付着、堆積し、被蒸着基板51表面に蒸着膜(図示せず)が形成される。
【0079】
具体的な蒸着例としては、前記実施例1で説明した蒸着材料を用いて成膜することができる。
【0080】
そして、所望の膜厚に成膜が完了した後、上記シャッター(図示せず)を閉じ、蒸着物質81が被蒸着基板51方向に向かうのを阻止するとともに、蒸着材料71の加熱を停止し、ガス61の供給を停止し、さらにガス加熱体15の加熱を停止する。これによって、蒸着物質81の生成が停止される。
【0081】
その後、チャンバ11内を一旦真空状態にしてから、チャンバ11内を例えば不活性ガスで置換した後、チャンバ11内より蒸着が完了した被蒸着基板51を不活性ガスで満たした別の容器に移動すればよい。なお、蒸着膜を複数層に形成する場合にはるつぼ13ごと蒸着材料71を交換して、上記説明したのと同様なプロセスにより蒸着を行えばよい。
【0082】
本発明の蒸着方法は、蒸着装置4のるつぼ13の底部側および外周側に沿って被蒸着基板51方向にガス61を供給するガス流路14と、そのガス流路14に所望の温度に加熱したガス61を導出するものでガス加熱体15を配置したガス加熱室27とを備えた蒸着装置4を用いて蒸着を行うため、上記実施例1の蒸着方法と同様なる作用、効果を得ることができる。それとともに、るつぼ13の下部側にガス流路14へ加熱したガス61を導くガス加熱室27が形成されていることから、ガス加熱室27でガス61を所望の温度に確実に加熱してからガス流路14へ加熱したガス61を送り出すことができるようになる。これにより、成膜膜厚の制御、成膜成分の制御が容易になり、高品質な成膜が可能になる。
【実施例5】
【0083】
次に、本発明の蒸着装置および蒸着方法に係る第5実施例を、図10および図11によって説明する。図10は蒸着装置の要部を示した概略構成断面図であり、図11は蒸着装置の概略を示した概略構成断面である。第5実施例の蒸着装置5は、図10の蒸着装置の要部を示した概略構成断面図に示すように、るつぼ13の底部側にガス流路14に連通するもので複数の室30を有するガス加熱室27が設けられ、このガス加熱室27内に複数の固体片151からなるガス加熱体15が配置されているものであり、これ以外の構成は、前記実施例1の蒸着装置1と同様な構成を有する。以下、蒸着源12を中心に詳細を説明する。
【0084】
図10および図11に示すように、上記蒸着源12は、蒸着材料71を蒸発させるるつぼ13と、るつぼ13の外周側に沿って上記被蒸着基板51方向にガス61(例えばキャリアガス)を供給するガス流路14と、るつぼ13の底部側に設けたものでガス流路14に連通するもので複数の室30からなるガス加熱室27と、このガス加熱室27内に配置された複数の固体片151からなるガス加熱体15と、上記ガス加熱室27の側部下部側にガス61を供給するガス供給部16とを備えたものである。
【0085】
上記ガス加熱室27は、複数(図面では一例として2つ)の室30−1、30−2に分割されている。室30−1、30−2は層状に積層された状態に形成されていて、下部側の室30−1に上記ガス供給部16が接続されている。また室30−1、30−2の間を仕切る壁31には室30−1、30−2を連通する孔32が形成されている。この孔32は、ガス供給部16から供給されたガス61の流れる経路が長くなるように、例えば下部側の室30−1の外側周にガス供給部16が接続されている場合には、図面(2)に示すように、上記壁31の室30−1上部中央に孔32を形成することで、ガス61の室30−1、30−2内を流れる経路を長くとるようにすることが好ましい。上記孔32の形成箇所は、一箇所であっても複数箇所であっても良く、好ましくは、上記壁31の室30−1上部中央に設けられていれば良い。
【0086】
さらに、上記ガス供給部16の出口には、上記各固体片151が上記ガス供給部16側に流入するのを防ぐ網21が設置されている。この網21の網目は上記固体片151より小さく形成されている。なお、上記ガス供給部16は、複数設けることも可能であり、図面では複数のガス供給部16を設けた一例を示した。なお、複数のガス供給部16は、ガス加熱室27内に均一にガス61を供給するために、例えば等間隔に配置されることが好ましい。また、図示はしていないが、上記蒸着源12は同一チャンバ11内に複数設けることも可能であり、また上記るつぼ13は一つの蒸着源12に複数設けることも可能である。
【0087】
上記ガス加熱室27の最上部にはガス流路14に連通する複数の孔28が形成されている。図面(3)には等間隔に8個の孔28が形成されているものを示したが、孔28の個数は8個に限定されるものではなく、複数個であればよい。また、前記図9に示したように、放射状に複数の孔28を形成したものであってもよく、それらの孔28は内側から外側に向かって大きさを変えたものであってもよい。また、各孔28にはガス加熱体15の各固体片151がガス加熱室27より流出しないようにするための網29が設けられている。この網29は前記網21と同様のものを用いることができる。
【0088】
上記ガス流路14は、上記るつぼ13の外側壁と、その外側壁の周囲に空間(ガス流路14)を介して形成された側壁17とで構成され、上記ガス加熱室27の上部に設けられた各孔28によりガス加熱室27内部と連通している。上記側壁17および上記ガス加熱室27は、ガス流路14内およびガス加熱室内の熱が逃げないように断熱壁とすることが好ましい。上記ガス流路14および上記ガス加熱室27を構成する部材は、耐食性に優れた材料で構成されることが好ましく、例えばステンレス等を用いることができ、また耐食性の低い材料が用いられる場合には、ガス61が触れる表面にガス61による腐食を防止するための防食膜として、例えば酸化膜、窒化膜、セラミックスもしくはホーロー等のコーティングを施すことが好ましい。
【0089】
なお、上記側壁17の内部には、前記実施例2で説明したのと同様に、加熱源23が配置されていてもよい。
【0090】
上記ガス加熱体15の構成、上記チャンバ11の構成は、前記実施例1で説明したものと同様である。また上記チャンバ11には、チャンバ11内の真空度を調節する真空装置(図示せず)が接続されている。
【0091】
本発明の蒸着装置5は、前記蒸着装置1と同様なる作用、効果を得ることができるとともに、るつぼ13の下部側に、それぞれが連通する複数の室30−1、30−2にからなるガス加熱室27が設けられていることから、ガス加熱室27内に配置した複数の固体片151からなるガス加熱体15をより、ガス61を高精度に温度制御して加熱することが可能になる。また、ガス61は、各室30−1、30−2を流れることによって、加熱道程が長くなり、より確実に所望の温度に加熱される。そして、ガス加熱室27上部に設けた孔28よりガス流路14に所望の温度に加熱されたガスが流入し、ガス61はガス流路14を上昇して被蒸着基板51方向に放出されるので、ガス流路14内で層流状態となり、乱流を起こすことなく被蒸着基板51方向に放出できる。また、るつぼ13と異なる温度でガス加熱体15の加熱、温度制御が容易になるので、膜厚分布が良好で、組成傾斜が可能な有機膜を形成することができる。さらに、るつぼ13の側周および底部側を囲むようにガス流路14およびガス加熱室27が形成されるため、るつぼ13を加熱もしくは保温する効果も得られる。
【0092】
次に、上記蒸着装置5を用いた蒸着方法について説明する。
【0093】
前記図10および図11に示すように、チャンバ11内に被蒸着基板51を設置し、るつぼ13内に蒸着材料71を収納する。そしてチャンバ11内を真空引きし、所望の真空度に到達させる。そして、るつぼ13内の蒸着材料71を加熱して蒸発させ、蒸着物質81を生成するとともに、ガス供給部16よりガス(例えばキャリアガス)61を、所望の温度に加熱されているガス加熱体15が配置されたガス加熱室27内に導入し、ガス加熱体15によってガス61を加熱することで、ガス61を所望の温度にする。その際、ガス61は、ガス加熱室27の室30−1に入り、孔32より矢印で模式的にガス流を示したように室30−2に入る。そして、ガス加熱室27の孔28より加熱したガス61をガス流路14内に導入し、ガス流路14の最上部から被蒸着基板51方向に放出する。このとき、所望の温度に加熱されたガス61は、ガス化された蒸着物質81とともに、このガス化された蒸着物質81の側周を取り囲むようにして、被蒸着基板51方向に放出される。その際、被蒸着基板51のるつぼ13側に設置されたシャッター(図示せず)を開放する。これにより、ガス化された蒸着物質81が被蒸着基板51の成膜面に付着、堆積し、被蒸着基板51表面に蒸着膜(図示せず)が形成される。
【0094】
具体的な蒸着例としては、前記実施例1で説明した蒸着材料を用いて成膜することができる。
【0095】
そして、所望の膜厚に成膜が完了した後、上記シャッター(図示せず)を閉じ、蒸着物質81が被蒸着基板51方向に向かうのを阻止するとともに、蒸着材料71の加熱を停止し、ガス61の供給を停止し、さらにガス加熱体15の加熱を停止する。これによって、蒸着物質81の生成が停止される。
【0096】
その後、チャンバ11内を一旦真空状態にしてから、チャンバ11内を例えば不活性ガスで置換した後、チャンバ11内より蒸着が完了した被蒸着基板51を不活性ガスで満たした別の容器に移動すればよい。なお、蒸着膜を複数層に形成する場合にはるつぼ13ごと蒸着材料71を交換して、上記説明したのと同様なプロセスにより蒸着を行えばよい。
【0097】
本発明の蒸着方法は、蒸着装置4のるつぼ13の底部側および外周側に沿って被蒸着基板51方向にガス61を供給するガス流路14と、そのガス流路14に所望の温度に加熱したガス61を導出するものでガス加熱体15を配置したガス加熱室27とを備えた蒸着装置4を用いて蒸着を行うため、上記実施例1の蒸着方法と同様なる作用、効果を得ることができる。それとともに、るつぼ13の下部側に、ガス流路14へ加熱したガス61を導くガス加熱室27が形成されていることから、ガス加熱室27でガス61を所望の温度に確実に加熱してからガス流路14へ加熱したガス61を送り出すことができるようになる。また、ガス加熱室27は、ガス61が流れる経路が長くなるように室30−1、30−2に仕切られていることから、ガス61はより確実に所望の温度に加熱される。これにより、成膜膜厚の制御、成膜成分の制御が容易になり、高品質な成膜が可能になる。
【0098】
上記各実施例において、図示はしないが、るつぼ13の下部にるつぼ13を加熱するるつぼ加熱源を設けてもよい。このるつぼ加熱源としては、例えば抵抗加熱を利用したホットプレートを用いることができる。
【0099】
また、上記実施例3、実施例4、実施例5においては、特にガス61の流量が少ない場合に有効である。つまり、ガス61の流量が少ない場合にはガス61自体の熱容量が小さいために熱伝導が少なくなり、ガス61の温度が上がらない。そこで、ガス61の通り道を長くすることによって、ガス61の流量が少ない場合であっても、確実にガス61を加熱することができるようになる。特に、ガス61の加熱領域(ガス加熱体15の領域)を流れる経路が長い実施例5の構成は、ガス61の流量が少ない場合に極めて有効となる。
【0100】
また、上記各蒸着装置1〜5では、るつぼ13の開口部の外周にガス流路14の開口部が位置しているため、その近傍で混合ガスの生成を行うことができる。もちろん、ガス流路14を通って被蒸着基板51方向に放出されるガス61をキャリアガスとして利用することもできる。
【0101】
また、上記各蒸着装置1〜5では、るつぼ13の側周壁、ガス流路14の外周壁等は円筒形状、角筒形状、多角形筒形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の蒸着装置および蒸着方法は、有機エレクトロルミネッセンス装置に用いる有機膜の蒸着の他に金属膜、無機膜等の蒸着という用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の蒸着装置および蒸着方法に係る第1実施例の要部を示した概略構成断面図である。
【図2】本発明の蒸着装置および蒸着方法に係る第1実施例の概略構成断面図である。
【図3】本発明の蒸着装置および蒸着方法に係る第2実施例の要部を示した概略構成断面図である。
【図4】本発明の蒸着装置および蒸着方法に係る第2実施例の概略構成断面図である。
【図5】本発明の蒸着装置および蒸着方法に係る第3実施例の要部を示した概略構成断面図である。
【図6】本発明の蒸着装置および蒸着方法に係る第3実施例の概略構成断面図である。
【図7】本発明の蒸着装置および蒸着方法に係る第4実施例の要部を示した概略構成断面図である。
【図8】本発明の蒸着装置および蒸着方法に係る第4実施例の概略構成断面図である。
【図9】本発明の蒸着装置に係るガス加熱室の一部を示した平面図である。
【図10】本発明の蒸着装置および蒸着方法に係る第5実施例の要部を示した概略構成断面図である。
【図11】本発明の蒸着装置および蒸着方法に係る第5実施例の概略構成断面図である。
【符号の説明】
【0104】
1…蒸着装置、11…チャンバ、12…蒸着源、13…るつぼ、14…ガス流路、15…ガス加熱体、151…固体片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ内に蒸着源と被蒸着基板とを対向して設けた蒸着装置であって、
前記蒸着源は、
蒸着材料を蒸発させるるつぼと、
前記るつぼの外周側に沿って前記被蒸着基板方向にガスを供給するガス流路と、
前記ガス流路を通過するガスを加熱するガス加熱体とを備えたもので、
前記ガス加熱体は前記ガス流路内に配置した複数の固体片からなる
ことを特徴とする蒸着装置。
【請求項2】
前記るつぼおよび前記ガス流路の下部側に前記るつぼおよび前記ガス加熱体を加熱する加熱源が設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の蒸着装置。
【請求項3】
前記ガス流路は前記るつぼと前記るつぼの外周側に設けられた側壁とによって形成され、
前記側壁に前記ガス流路内に配置される前記ガス加熱体を加熱する加熱源が設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の蒸着装置。
【請求項4】
前記ガス流路は前記るつぼの外周側に連続して前記るつぼの底部側に延長形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の蒸着装置。
【請求項5】
前記るつぼの底部側に前記ガス流路に連通するガス加熱室が設けられ、
前記ガス加熱室に前記ガス加熱体が配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の蒸着装置。
【請求項6】
前記ガス加熱室内に配置された前記ガス加熱体を加熱する加熱源を備え、
前記加熱源により加熱されたガス加熱体によって前記ガス流路内を流れるガスとともに前記るつぼも加熱する
ことを特徴とする請求項1記載の蒸着装置。
【請求項7】
前記るつぼの底部側に前記るつぼを加熱するるつぼ加熱源を設けた
ことを特徴とする請求項1記載の蒸着装置。
【請求項8】
前記ガス加熱室に複数のガス供給部を設けた
ことを特徴とする請求項7記載の蒸着装置。
【請求項9】
前記ガス加熱室は複数のそれぞれが連通する複数の室に分離されている
ことを特徴とする請求項1記載の蒸着装置。
【請求項10】
前記固体片は、金属系材料からなる
ことを特徴とする請求項1記載の蒸着装置。
【請求項11】
前記固体片は、炭素系材料からなる
ことを特徴とする請求項1記載の蒸着装置。
【請求項12】
前記固体片は、球体からなる
ことを特徴とする請求項1記載の蒸着装置。
【請求項13】
前記固体片は、多面体形状からなる
ことを特徴とする請求項1記載の蒸着装置。
【請求項14】
前記固体片は、柱状体からなる
ことを特徴とする請求項1記載の蒸着装置。
【請求項15】
チャンバ内に蒸着源と被蒸着基板とを対向して設けた蒸着装置を用いて、前記蒸着源より蒸発させた蒸着材料を前記被蒸着基板に堆積させる蒸着方法であって、
前記蒸着源は、
蒸着材料を蒸発させるるつぼと、
前記るつぼの外周側に沿って前記被蒸着基板方向にガスを供給するガス流路と、
前記ガス流路を通過するガスを加熱するガス加熱体と、
前記ガス加熱体を加熱する加熱源とを備えたもので、
前記ガス加熱体は、前記流路内に配置した複数の固体片からなる
ことを特徴とする蒸着方法。
【請求項16】
前記るつぼおよび前記ガス流路の下部側に前記るつぼおよび前記ガス加熱体を加熱する加熱源が設けられている
ことを特徴とする請求項15記載の蒸着方法。
【請求項17】
前記ガス流路は前記るつぼと前記るつぼの外周側に設けられた側壁とによって形成され、
前記側壁に前記ガス流路内に配置される前記ガス加熱体を加熱する加熱源が設けられている
ことを特徴とする請求項15記載の蒸着方法。
【請求項18】
前記ガス流路は前記るつぼの外周側に連続して前記るつぼの底部側にも設けられている
ことを特徴とする請求項15記載の蒸着方法。
【請求項19】
前記るつぼの底部側に前記ガス流路に連通するガス加熱室が設けられ、
前記ガス加熱室に前記ガス加熱体が配置されている
ことを特徴とする請求項15記載の蒸着方法。
【請求項20】
前記ガス加熱室内に配置された前記ガス加熱体を加熱する加熱源を備え、
前記加熱源により加熱されたガス加熱体によって前記ガス流路内を流れるガスとともに前記るつぼも加熱する
ことを特徴とする請求項15記載の蒸着方法。
【請求項21】
前記るつぼの底部側に前記るつぼを加熱するるつぼ加熱源を設けた
ことを特徴とする請求項15記載の蒸着方法。
【請求項22】
前記ガス加熱室に複数のガス供給部を設けた
ことを特徴とする請求項21記載の蒸着方法。
【請求項23】
前記ガス加熱室は複数のそれぞれが連通する室に分離されている
ことを特徴とする請求項15記載の蒸着方法。
【請求項24】
前記ガス流路を通過するガスが蒸発させた蒸着材料を被蒸着基板方向に誘導するキャリアガスである
ことを特徴とする請求項15記載の蒸着方法。
【請求項25】
前記蒸着材料が蒸着により成膜される有機薄膜の原料である
ことを特徴とする請求項15記載の蒸着方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−111920(P2006−111920A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−300057(P2004−300057)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】