説明

蒸着装置

【課題】本発明は、簡易な方法でペレットがインゴット上を転がることを防止できる蒸着装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本願の発明に係る蒸着装置は、蒸着材料で形成されたインゴットと、該インゴットの上に供給され、該インゴットと同一材料で形成された複数のペレットと、該インゴットと同一材料で形成され、該複数のペレットが該インゴットの上を転がらないように該複数のペレットを囲う固定用ペレットと、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体装置の製造などに用いられる蒸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸着を繰り返すと蒸着装置の蒸着材料が減少する。そこで、所定の周期で蒸着装置に蒸着材料を追加する作業が行われる。特許文献1には、大きな蒸着材料であるインゴット上の所定位置に小型の蒸着材料であるペレットを追加する技術が開示されている。この技術は、インゴット上に追加されたペレットがインゴット上を転がらないように、治具でペレットを固定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−223117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では治具でペレットを固定した後に治具をペレットから取り外す。そのため、治具をペレットから外した後に、ペレットがインゴットの上を転がり所定位置の外に出ることがあった。また、治具をインゴットに対して上下動させる機構が必要になり蒸着材料(ペレット)を追加する作業が複雑になる。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、簡易な方法でペレットがインゴット上を転がることを防止できる蒸着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の発明に係る蒸着装置は、蒸着材料で形成されたインゴットと、該インゴットの上に供給され、該インゴットと同一材料で形成された複数のペレットと、該インゴットと同一材料で形成され、該複数のペレットが該インゴットの上を転がらないように該複数のペレットを囲う固定用ペレットと、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本願の発明に係る他の蒸着装置は、蒸着材料で形成されたインゴットと、該インゴットと同一材料で形成された多面体であって、最も大きい面積を有する面が該インゴットと接するように該インゴットの上に供給された多面体ペレットと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本願の発明に係る他の蒸着装置は、蒸着材料で形成されたインゴットと、該インゴットと同一材料で形成され、直径が高さよりも大きくなるように形成された円柱形状を有し、底面が該インゴットに接するように該インゴットの上に供給された円柱ペレットと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の蒸着装置によれば、簡易な方法でペレットがインゴット上を転がることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1に係る蒸着装置の概略図である。
【図2】図1の固定用ペレットとその周辺を拡大した図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る蒸着装置の変形例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1の固定用ペレットの変形例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る蒸着装置の一部を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る蒸着装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る蒸着装置の概略図である。蒸着装置10は、ハース11に収容されたインゴット12を備えている。インゴット12は例えばAlなどの蒸着材料で形成されている。インゴット12の上には複数のペレット14が供給されている。複数のペレット14は、蒸着装置10に蒸着材料を追加するために供給される。そのため、複数のペレット14はインゴット12と同一材料で形成されている。複数のペレット14のそれぞれは、底面がインゴット12に接する円柱形状である。
【0012】
インゴット12の上方には、固定用ペレット16が形成されている。固定用ペレット16は、複数のペレットがインゴットの上を転がるのを防止するものである。固定用ペレット16はインゴット12と同一材料で形成されている。図2は、図1の固定用ペレットとその周辺を拡大した図である。固定用ペレット16は、複数のペレット14がインゴット12の上を転がらないように複数のペレット14を囲っている。本発明の実施の形態1に係る固定用ペレット16は環状に形成され、当該環の中に複数のペレット14が立てられている。
【0013】
ところで、複数のペレット14はインゴット12の上の電子ビームやレーザなどの当たる場所(加熱位置という)に供給されなければならない。ところが、蒸着を繰り返すとインゴットの上面の形状は変化し曲面となるので、インゴットの上に供給した複数のペレットがインゴットの上を転がり加熱位置の外へ出る場合があった。加熱位置の外に出たペレットは加熱位置に戻さねばならず、ペレットの追加作業が複雑になっていた。
【0014】
しかしながら、本発明の実施の形態1に係る蒸着装置10によれば、ペレット14が加熱位置の外に出ることを防止できる。つまり、固定用ペレット16が複数のペレット14を囲むことで、複数のペレット14が加熱位置の外に転がることを防止できる。よって、簡易な方法でペレットがインゴット上を転がることを防止できる。しかも、固定用ペレット16はインゴット12と同一材料で形成されているので、固定用ペレット16が加熱されることで蒸着材料を追加できる。
【0015】
図3は、本発明の実施の形態1に係る蒸着装置の変形例を示す図である。環状の固定用ペレット16の中にはできるだけ多くのペレットがぎっしり配置されている。つまり、環状の固定用ペレット16の内側は複数のペレット14で満たされている。これにより、複数のペレット14は固定用ペレット16で固定され移動できず、複数のペレット14と固定用ペレット16が一体となっている。複数のペレット14と固定用ペレット16とが一体化した物(結合ペレット18という)を予め作成しておけば、結合ペレット18をインゴット12の上に置くだけでペレットの追加作業を終えるとこができる。
【0016】
図4は、本発明の実施の形態1の固定用ペレットの変形例を示す図である。固定用ペレットは、複数のペレットが加熱位置の外に出ないようにこれらを囲むことができる形状であれば特に限定されない。例えば図4Aに示すように、角柱を環状に加工した形状にしても良い。また、図4Bに示すように、切れ目のない円形となるように形成しても良い。
【0017】
蒸着材料はAlに限定されず、蒸着に用いられる金属などで形成されていれば特に限定されない。また、複数のペレットのそれぞれは円柱形状に限定されない。
【0018】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2に係る蒸着装置は、実施の形態1に係る蒸着装置との相違点を中心に説明する。図5は、本発明の実施の形態2に係る蒸着装置の一部を示す図である。インゴット12の上の加熱位置には多面体ペレット20が複数形成されている。多面体ペレット20は、インゴット12と同一材料で形成された多面体である。この多面体の最も大きい面積を有する面がインゴット12と接している。
【0019】
多面体ペレット20は、最も大きい面積を有する面がインゴット12と接するようにインゴット12上に供給されているので、多面体ペレット20が加熱位置の外に転がることはない。よって、簡易な方法でペレットがインゴット上を転がることを防止できる。多面体ペレット20は六面体としたが、多面体であれば特にこれに限定されない。
【0020】
図6は、本発明の実施の形態2に係る蒸着装置の変形例を示す図である。インゴット12の上の加熱位置には円柱ペレット22が複数形成されている。円柱ペレット22は、インゴット12と同一材料で形成された円柱である。この円柱ペレット22の直径は円柱ペレット22の高さよりも大きい。そして、円柱ペレット22の底面がインゴット12に接している。円柱ペレット22はインゴット12上を転がりづらい形状であるので、簡易な方法でペレットがインゴット上を転がることを防止できる。
【符号の説明】
【0021】
10 蒸着装置、 11 ハース、 12 インゴット、 14 複数のペレット、 16 固定用ペレット、 18 結合ペレット、 20 多面体ペレット、 22 円柱ペレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着材料で形成されたインゴットと、
前記インゴットの上に供給され、前記インゴットと同一材料で形成された複数のペレットと、
前記インゴットと同一材料で形成され、前記複数のペレットが前記インゴットの上を転がらないように前記複数のペレットを囲う固定用ペレットと、を備えたことを特徴とする蒸着装置。
【請求項2】
前記固定用ペレットは、環状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の蒸着装置。
【請求項3】
前記固定用ペレットと前記複数のペレットは、前記複数のペレットが前記固定用ペレットの内側を満たすことで一体化したことを特徴とする請求項2に記載の蒸着装置。
【請求項4】
前記複数のペレットのそれぞれは、底面が前記インゴットに接する円柱形状であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蒸着装置。
【請求項5】
蒸着材料で形成されたインゴットと、
前記インゴットと同一材料で形成された多面体であって、最も大きい面積を有する面が前記インゴットと接するように前記インゴットの上に供給された多面体ペレットと、を備えたことを特徴とする蒸着装置。
【請求項6】
蒸着材料で形成されたインゴットと、
前記インゴットと同一材料で形成され、直径が高さよりも大きくなるように形成された円柱形状を有し、底面が前記インゴットに接するように前記インゴットの上に供給された円柱ペレットと、を備えたことを特徴とする蒸着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−104106(P2013−104106A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249478(P2011−249478)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】