説明

蒸練混捏機、並びにこの蒸練混捏機を用いた蒸練麺の生地の製造方法

【課題】コラーゲンや油脂を供給できる蒸練混捏機、並びに蒸練麺の特性を損なうことなくコラーゲンや油脂を混入できる蒸練麺の生地の製造方法を提供する。
【解決手段】ドラム本体2のドラム体21にコラーゲンや油脂の混合液の供給ノズル9aを取り付け、この供給ノズルより原料粉がアルファー化した後に混合液を供給する蒸練混捏機1とし、蒸練麺の生地の製造方法は、蒸練混捏機1を用いて原料粉を蒸練混捏してアルファー化させた後に液状化したコラーゲンや油脂等を供給させてさらに混練りさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小麦粉を主成分とする原料粉を蒸練混捏してコラーゲンや油脂等を含むところの主として生麺として用いられる蒸練麺の生地を製造する蒸練混捏機、並びにこの蒸練混捏機を用いて前記小麦粉を主成分とする原料粉からコラーゲンや油脂等を含む主として生麺として用いられる蒸練麺を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、うどん、そば、そうめんといった麺類にもさまざまな摂食効果や、風味や食感、食味を持ったものが求められており、美肌効果のあるコラーゲン入りの麺類や、味や食感、食味に違いの出る油脂入りの麺類などが商品化されている。一般に手作り麺はさまざまな摂食効果や、風味や食感、食味を持ったものを作りやすいが、製造に時間と手間がかかるという問題点がある。例えば、従来、麺生地の製造工程の途中においてに油脂を加える手法は、手作り麺の一種である手延べそうめん等において公知である。しかしながら製造に時間と手間がかかり、高価なものになってしまうという問題点がある。
【0003】
そこで、本発明者の一人は、下記特許文献1において蒸練混捏機を用いて短時間で手作り麺と同じような風味、食感、食味、及び保形性や粘弾性を持った蒸練麺を製造できる製造方法を提案した。しかしながら、一般的に小麦粉を主原料とする原料粉に最初からコラーゲンや油脂等を添加すると、これを蒸練混捏機を用いて蒸練混捏しても、ふわふわした豆腐状の麺生地となってしまうため、その時点では蒸練混捏機を用いてコラーゲンや油脂等の混合液を混入させた蒸練麺の製造には至っていない。
【0004】
また、下記特許文献2には、蒸練麺の品質改良方法の一つとして油脂を添加する事例が記載されているが、小麦粉等の原料粉に、最初から油脂が添加されている。この場合、増粘剤が加えなくてならない上に、これをうどんやそばのような最終製品としても、小麦粉本来の味が損なわれ、また、保形性に劣ることから、冷麺扱いの製品とならざるを得ないという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−6524号公報
【特許文献2】特開2001−57857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、小麦粉を主成分とする蒸練麺の生麺用の生地を製造するに当たり、蒸練混捏機及びこの蒸練混捏機を用いた蒸練麺の製造方法に工夫を凝らすことにより、コラーゲンや油脂等の混合液を混入しても従来のものと同じように蒸練麺の特性を維持でき、この生地をさらに圧延、成形、裁断して、調理した場合にも、手作り麺と同じように粘弾性と保形性を持ち、腰の強い食感と食味や風味を持った蒸練麺の生地を製造できる蒸練混捏機、並びにこの蒸練混捏機を用いた蒸練麺の生地を製造できる製造方法を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するため、本発明に係る蒸練混捏機は、小麦粉を主成分とする原料粉を用いて蒸練麺の生地を製造する蒸練混捏機であって、ドラム体にコラーゲンや油脂等の混合液を供給する供給ノズルを新たに取り付け、前記原料粉を前記ドラム体内で蒸練混捏してアルファー化させた後に前記供給ノズルを介して液状化したコラーゲンや油脂等の混合液を前記ドラム体内へ供給させてさらに混練りさせるように成したことを特徴とする。
【0008】
本発明はさらに、上記蒸練混捏機を、ドラム体を有するドラム本体と、前記ドラム体内で回転するところの撹拌混捏ロッドを具えた回転シャフトと、前記ドラム体内へ原料粉を投入する開閉蓋付きの原料投入口と、得られた生地を取り出す開閉蓋付きの生地取出口と、前記ドラム体内へ水を注入する給水ノズルと、前記ドラム本体内へ蒸気を吹き込む蒸気吹込みノズルと、前記ドラム体内へコラーゲンや油脂等を注入する供給ノズルとを有するものとすると共に、前記回転シャフトの駆動モータと、前記給水ノズルへの給水管の開閉電磁弁と、前記蒸気吹込みノズルへの蒸気供給管の開閉電磁弁と、前記コラーゲンや油脂等の混合液の供給ノズルへのコラーゲン等供給管の開閉電磁弁と、前記駆動モータ及び前記各開閉電磁弁の作動を統括制御するコンピュータプログラムを組み込んだ運転制御装置とを有するものとし、前記コンピュータプログラムを、前記運転制御装置に、少なくとも、前記原料粉の蒸練混捏操作の終了に引き続いて、前記コラーゲンや油脂等の混合液の供給ノズルの開閉電磁弁を開き、コラーゲンや油脂等の混合液を前記蒸練混捏操作後の生地に加えつつ前記回転シャフトに当該生地を混捏する操作を行わせるよう構成したことを特徴とする。
【0009】
本発明はさらに、小麦粉を主成分とする原料粉を蒸練混捏機用いて蒸練混捏させて蒸練麺の生地を製造するに当たり、前記蒸練混捏工程を、グルテン生地形成工程と、アルファー化工程と、緩和安定化工程と、油脂等の供給工程とを順次経由するものとしたことを特徴とする。
【0010】
本発明はさらに、前記液状化させたコラーゲンや油脂等の混合液は、断続的に複数回供給されることを特徴とする。
【0011】
その際に本発明は、前記液状化させたコラーゲンや油脂等の混合液を、断続的に複数回供給するにあたり、供給量を3段階に分けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記の如き本発明に係る蒸練混捏機やこの蒸練混捏機を用いた蒸練麺の生地の製造方法を採用することにより、生地の中にコラーゲンや油脂等の混合液が薄い層状に練り込まれ、この生地を圧延、成形、裁断して生麺のうどんやそばとして加熱調理した場合には、手作り麺に勝るとも劣らない、摂食効果と腰の強い食感と食味や風味を持ったうどんやそばを提供できることが可能となったものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る蒸練麺の生地の製造方法を実施するために用いる蒸練混捏機の一実施例を示す軸直角断面図(図2中のS−S線に沿った断面図)である。
【図2】図2に示した蒸練混捏機の平面図である。
【図3】図2に示した蒸練混捏機の正面図である。
【図4】図2に示した蒸練混捏機の回転シャフトの撹拌混捏ロッドの取付状態を示す正面図である。
【図5】図2に示した蒸練混捏機に設けられた運転制御装置等の一実施例の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明に係る蒸練麺の生地の製造方法において実行される蒸練工程の内容と時間配分の一実施例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る小麦粉を主成分とする主として生麺として用いられる蒸練麺の生地の蒸練混捏機、並びにこの蒸練混捏機を用いた小麦粉を主成分とする主として生麺として用いられる蒸練麺の生地の製造方法について、その好ましい実施形態を図面に基いて説明するが、本発明はこれらの実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で、利用状況等に応じてさまざまな変更を行うことが可能である。
【実施例1】
【0015】
図1乃至図5は本発明に係る蒸練混捏機を示し、図面によれば蒸練混捏機1は、ドラム本体2を支台12上に搭載して成り、そのドラム本体2は、ドラム体21の両端を端壁板22、23で塞ぎ、撹拌混捏ロッド6a〜6kを具えた回転シャフト5を端壁板22、23に回転自在に貫通し、その両端は支台12に設けた軸受13a、13bによって軸支されている。
【0016】
回転シャフト5の一端(図3及び図4において右端)は、これを回転させる駆動モータ101(図6参照)に、減速機等を介して連結される。尚、回転シャフト5に取り付けられる複数本の撹拌混捏ロッド6a〜6kは、図5に示すように、回転シャフト5の軸方向に等間隔に、かつ、回転シャフト5の軸中心に60度間隔で螺旋状に計11本が設けられ、これらの撹拌混捏ロッド6a〜6kにより、ドラム体21内に収容された小麦粉等の原料粉が撹拌、混捏されるようになっている。
【0017】
ドラム体21の上面には原料投入口3が設けられ、小麦粉等の原料粉をドラム本体2内へ投入できるようになっている。この原料投入口3は、その開口壁31の上端開口部にヒンジ33によって開閉自在に取り付けられた開閉蓋32を有し、蒸練混捏機1の稼働中はロックレバー34によって開閉蓋32はしっかりと閉鎖されるようになっている。
【0018】
ドラム本体2のドラム体21の周壁には、ドラム本体2の内部へ水を供給する給水ノズル7a〜7dと、蒸気を吹き込む蒸気吹込みノズル8a、8bと、コラーゲンや植物油のような油脂などの混合液(以下単にコラーゲン等の混合液という場合がある。)を注入するコラーゲンや油脂等の混合液の供給ノズル9a、9b等々が設けられる。7は給水ノズル7a〜7dへ分岐する給水管である。ドラム本体2のドラム体21の上面には、ドラム内の温度測定のための温度計10aと、圧力測定のための安全弁付き圧力計10bが設けられる。また、ドラム体21の下面には、蒸練混捏及びコラーゲン等の混合液の薄膜層形成後の完成生地を取り出すための生地取出口4が設けられ、その開閉蓋41は開閉駆動シリンダー11の伸縮ピストンロッド11aの伸縮動作により開閉されるようになっている。
【0019】
本発明の蒸練混捏機1の運転時には、時間の経過に従って、混捏回転速度を切り換えたり、蒸気の供給量や蒸気圧を変更したり、コラーゲン等の混合液を複数回に分けて投入したりする(図6参照)ので、それらの作動を自動的に行うようにすることが望ましい。
【0020】
図5には、蒸練混捏機の運転制御を自動的に行うための回路構成の一実施例が示されており、同図に示す小型コンピュータから成る運転制御装置109によって、前記蒸練混捏機1の動作が自動制御されるようになっている。
【0021】
即ち、前記回転シャフト5の駆動モータ101の始動、停止、回転数変更は、運転制御装置109からの制御信号によりモータ駆動回路102を介して実行され、これにより、蒸練混捏機1の前記回転シャフト5の始動、停止、回転数変更(図1に示す「混捏回転速度」の変更)が、運転制御装置109に組み込まれたコンピュータプログラムに従って自動的に実行される。
【0022】
また、前記給水管7を通じてのドラム本体2内の原料粉への給水の開始及び停止は、給水管7に設けた給水管の開閉電磁弁103の開閉動作を、運転制御装置109からの制御信号により電磁弁駆動回路104を介して制御し、これにより、ドラム本体2内の原料粉への処理開始時の給水の開始及び停止が、運転制御装置109に組み込まれたコンピュータプログラムに従って自動的に実行される。
【0023】
また、前記蒸気吹込みノズル8a、8bを通じてのドラム本体2内の蒸気の供給、停止は、蒸気供給管(図示せず)に設けた蒸気供給管の開閉電磁弁105の開閉動作を、運転制御装置109からの制御信号により電磁弁駆動回路106を介して制御し、これにより、ドラム本体2内への蒸気供給の開始及び停止(図1に示す「蒸気圧」の切換え、変更)が、運転制御装置109に組み込まれたコンピュータプログラムに従って自動的に実行される。
【0024】
更にまた、前記コラーゲン等の混合液の供給ノズル9a、9bを通じてのドラム本体2内の蒸練混捏された生地へのコラーゲン等の混合液の添加は、コラーゲン等供給管(図示せず)に設けたコラーゲン等供給管の開閉電磁弁107の開閉動作を、運転制御装置109からの制御信号により電磁弁駆動回路108を介して制御し、これにより、ドラム本体2内の蒸練混捏された生地へのコラーゲン等の混合液の供給ノズル9a、9bを介して複数回の添加(図1の「第4工程」に示す丸付き数字1、2、3の操作)及び混捏動作が、運転制御装置109に組み込まれたコンピュータプログラムに従って自動的に実行される。
【0025】
このように、コンピュータプログラムに従って作動する運転制御装置109により、蒸練混捏機1の駆動モータや各種開閉電磁弁の作動を統括制御することによって、本発明に係る蒸練麺の生地の製造方法における正確な時間管理下におけるそれらの作動の切換え制御を、適正に実行することができ、適正な時期に適正は量のコラーゲンや油脂等を供給し、適正な温度や蒸気圧及び適正な回転シャフトの回転速度によって蒸練麺に供給することが可能となったものである。
【実施例2】
【0026】
次に、上記の如き構成を有する蒸練混捏機1を用いて小麦粉を主成分とする蒸練麺の生地の製造方法を図6を用いて説明する。
即ち、図6は、本発明に係る蒸練麺の生地の製造方法において実行される各工程の内容と時間配分の一実施例を示すタイムチャートである。
【0027】
図6において、「グルテン生地形成工程」は「第1工程」、「アルファー化工程」は「第2工程」、「緩和安定化工程」は「第3工程」、「コラーゲン等供給工程」は「第4工程」として区分してある。また、図6に示した例は具体的実施例であるため、混練回転速度、蒸気圧等は一定の数値で示してある。尚、グルテン生地形成のための第1工程では、図1に示す如く、最初に16秒間程度、蒸気を僅かに吹き込みながら予備的な撹拌操作を行う場合もある。
【0028】
図6に示す実施例における第4工程(コラーゲン等供給工程)では、第3工程の終了後直ちに第1回目のコラーゲン等の混合液の添加(図中、丸付き数字1で示す。)を行い、混捏を継続しつつ、10秒後に第2回目のコラーゲン等の混合液の添加(図中、丸付き数字2で示す。)を行い、混捏を継続しつつ、更に10秒後に第3回目のコラーゲン等の混合液の添加(図中、丸付き数字3で示す。)を行い、10秒間混捏を続けた後、第4工程を終了する。
【0029】
尚、図6で示すように、第1工程においてグルテン生地の形成が充分行われた後、第2及び第3工程において直ちに蒸気を噴き付け、生地のアルファー化とゲル化を行うことにより、均質で、しかも粘弾性に富んだ蒸練混捏生地が生成された。
【0030】
尚、本発明は上記の実施例に限定されず、例えば、混捏回転速度や蒸気圧の値とその切換えの時間配分、コラーゲン等の混合液の添加量や回数、時間間隔、蒸練混捏機の撹拌混捏ロッドの数や形態、等々は使用条件に応じて適宜変更可能であり、従って、本発明は特許請求の範囲に記載した範囲内におけるすべての変更実施例を包摂するものである。
【実施例3】
【0031】
次に、上記蒸練混捏機1を用いて運転制御装置109により下記諸条件に設定して実際にコラーゲンを混入させた蒸練麺の生地を製造した。
【0032】
ドラム本体の容量・・・・内径680mm×幅1220mm
(第1工程)
小麦粉投入量・・・・・・50kg/バッチ
常温水 16l
食塩水 400g
蒸気圧・・・・・・・・・0.2kg/cm2
撹拌速度・・・・・・・・260r.p.m
攪拌時間・・・・・・・・16秒
続いて
蒸気圧・・・・・・・・・0kg/cm2
撹拌混捏速度・・・・・・260r.p.m〜200r.p.m
小麦粉攪拌混捏時間・・・1分

(第2工程)
蒸気圧・・・・・・・・・1.2kg/cm2
生地混捏時の混捏速度・・260〜200r.p.m(撹拌混捏ロッドの回転速度)
生地混捏時間・・・・・・合計1分

(第3工程)
蒸気圧・・・・・・・・・0.6kg/cm2
生地混捏時の混捏速度・・200〜168r.p.m(撹拌混捏ロッドの回転速度)
生地混捏時間・・・・・・合計1分

(第4工程)
蒸気圧・・・・・・・・・0.3kg/cm2
生地混捏時の混捏速度・・168r.p.m(撹拌混捏ロッドの回転速度)
コラーゲン等の混合液添加・・10秒毎に500gずつ3回、合計1,500gを添加
生地混捏時間・・・・・・30秒

全所要時間・・・・・・・3分46秒/バッチ
【0033】
即ち、蒸練混捏機1内に原料となる小麦粉50kg(中力粉70%と準強力粉30%)を400gの食塩を水に溶かした食塩水と共に投入して開閉蓋を閉じ、16lの常温水を加えつつ、最初に0.2kg/cm2 のもとで16秒間回転シャフト5を260r.p.mの回転速度で回転させて原料の小麦粉を攪拌させた後蒸気の供給を止め、蒸気圧を0kg/cm2にして、1分間回転シャフト5で回転速度260r.p.mの回転を維持しつつ撹拌混捏した(第1工程・グルテン生地形成工程)。次いで、このグルテン生地に蒸気を供給しながら1.2kg/cm2の蒸気圧力下で回転シャフト5を最初の16秒間は260r.p.mで回転を継続し、次いで回転シャフト5の回転速度を200r.p.mに下げて1分間運転し、合計で1分間蒸練混捏した(第2工程・アルファー化工程)。次いで、蒸気圧を0.6kg/cm2に下げ、運転開始から180秒までは回転シャフト5の回転を200r.p.mで継続し、続いて16秒は蒸気圧はそのままで回転シャフト5の回転数を168r.p.mにして若干下げ、蒸練混捏操作を1分間継続させた(第3工程・緩和安定化工程)。この第3工程・緩和安定化工程に引き続いて回転シャフトの回転数は、168r.p.mを維持させたままで、蒸気圧を0.3kg/cm2に下げつつ直ちに液状化した豚由来のコラーゲン200gと植物性油脂300gの混合液を供給ノズル9a、9bを介して供給して10秒間を経過した後に、さらにコラーゲン200gと植物性油脂300gの混合液を供給して10秒間混捏し、さらにコラーゲン200gと食用油脂を300gの混合液を供給して10秒間混捏し、合計で30秒間に1,500gを添加した(第4工程・コラーゲン等供給工程)。このようにして運転開始から3分46秒で蒸練混捏機の運転を停止させ、コラーゲンを含有する蒸練麺の生地を得た。
【0034】
上記の如く、本発明においては、アルファー化(均質ゲル化工程)した後の蒸練麺の生地に対する第3工程の緩和安定化工程の後に引き続いて当該生地に対して液状化したコラーゲンを加えて混捏することにより、当該蒸練混捏済みの生地内にコラーゲンの薄膜層を3段に渡って形成した蒸練麺の生地を3分46秒という短時間で製造することができたものである。これによって、蒸練混捏済みの生地は、コラーゲンの薄膜層を間に挟んだ多層構造の生地となり、これを生地厚み3ミリ、切れ歯幅3mmの中太うどん形状に圧延、裁断して茹で上げ、水切りすることなく調味液に入れ加温させて食したところ、保形性と粘弾性に優れた手作り麺と同じように腰の強い歯切れと、独特の食感と食味、及び風味を有するうどんが得られた。
【0035】
尚、上記の説明では、コラーゲンのみについて説明したが、油脂を添加する場合についてもそのまま応用でき、油膜がコラーゲンの場合と同じように、アルファー化された蒸練麺の中に薄膜状に形成されることになる。また、油脂としては、ナタネ油、オリーブ油、ベニバナ油、ゴマ油、綿実油などの植物油を用いることができ、バター等の食用油、又はそれらの混合油をも用いることができ、その量は100gから200gの間において任意に選択でき、油脂は200gから300gの間で任意に選択できる。また、コラーゲンには豚をはじめとする動物由来のコラーゲンと魚由来のフィッシュコラーゲンがあるが、本発明においてはその両者を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は以上の如く構成されるから、本発明によるときは、コラーゲンや油脂等を蒸練麺の生地の中に薄膜状に形成できる蒸練混捏機として、また、この蒸練混捏機を用いて、手作り麺に勝るとも劣らない腰の強さを持ち、独特な風味と食感と、或いは栄養素を有し、さらに最終製品への加工が容易な蒸練麺の生地の製造方法として好適に利用される物である。
【符号の説明】
【0037】
1 蒸練混捏機
2 ドラム本体
21 ドラム体
22,23 端壁板
3 原料投入口
31 開口壁
32 開閉蓋
33 ヒンジ
34 ロックレバー
4 生地取出口
41 開閉蓋
5 回転シャフト
6a〜6k 撹拌混捏ロッド
7 給水管
7a〜7d 給水ノズル
8a,8b 蒸気吹込みノズル
9a,9b 供給ノズル
10a 温度計
10b 安全弁付き圧力計
11 開閉駆動シリンダー
11a 伸縮ピストンロッド
12 支台
13a,13b 軸受
101 回転シャフト駆動モータ
102 モータ駆動回路
103 給水管の開閉電磁弁
104 電磁弁駆動回路
105 蒸気供給管の開閉電磁弁
106 電磁弁駆動回路
107 コラーゲン等供給管の開閉電磁弁
108 電磁弁駆動回路
109 運転制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉を主成分とする原料粉を用いて蒸練麺の生地を製造する蒸練混捏機であって、ドラム体にコラーゲンや油脂等を供給する供給ノズルを新たに取り付け、前記原料粉を前記ドラム体内で蒸練混捏してアルファー化させた後に前記供給ノズルを介してコラーゲンや油脂等の混合液を前記ドラム体内へ供給させてさらに混練りさせるように成したことを特徴とする、蒸練混捏機。
【請求項2】
上記蒸練混捏機を、ドラム体を有するドラム本体と、前記ドラム体内で回転するところの撹拌混捏ロッドを具えた回転シャフトと、前記ドラム体内へ原料粉を投入する開閉蓋付きの原料投入口と、得られた生地を取り出す開閉蓋付きの生地取出口と、前記ドラム体内へ水を注入する給水ノズルと、前記ドラム本体内へ蒸気を吹き込む蒸気吹込みノズルと、前記ドラム体内へコラーゲンや油脂等を注入する供給ノズルとを有するものとすると共に、
前記回転シャフトの駆動モータと、前記給水ノズルへの給水管の開閉電磁弁と、前記蒸気吹込みノズルへの蒸気供給管の開閉電磁弁と、前記コラーゲンや油脂等の供給ノズルへのコラーゲン等供給管の開閉電磁弁と、前記駆動モータ及び前記各開閉電磁弁の作動を統括制御するコンピュータプログラムを組み込んだ運転制御装置とを有するものとし、
前記コンピュータプログラムを、前記運転制御装置に、少なくとも、前記原料粉の蒸練混捏操作の終了に引き続いて、前記コラーゲンや油脂等の供給ノズルの開閉電磁弁を開き、コラーゲンや油脂等の混合液を前記蒸練混捏操作後の生地に加えつつ前記回転シャフトに当該生地を混捏する操作を行わせるよう構成したことを特徴とする、請求項1に記載の蒸練混捏機。
【請求項3】
小麦粉を主成分とする原料粉を蒸練混捏機用いて蒸練混捏させて蒸練麺の生地を製造するに当たり、前記原料粉を蒸練混捏してアルファー化させた後に液状化したコラーゲンや油脂等の混合液を供給させてさらに混練りさせることを特徴とする、蒸練麺の生地の製造方法。
【請求項4】
小麦粉を主成分とする原料粉を蒸練混捏機用いて蒸練混捏させて蒸練麺の生地を製造するに当たり、前記蒸練混捏工程を、グルテン生地形成工程と、アルファー化工程と、緩和安定化工程と、油脂等の供給工程とを順次経由するものとしたことを特徴とする、請求項3に記載の蒸練麺の生地の製造方法。
【請求項5】
前記液状化させたコラーゲンや油脂等の混合液は、断続的に複数回供給することを特徴とする、請求項3乃至4に各記載の蒸練麺の生地の製造方法。
【請求項6】
前記液状化させたコラーゲンや油脂等の混合液を、断続的に複数回供給するにあたり、供給量を3段階に分けることを特徴とする、請求項5に記載の蒸練麺の生地の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate