説明

蒸解缶用スクリーンプレート

【課題】チップによる詰まりや閉塞を防止することができる蒸解缶用スクリーンプレートを提供する。
【解決手段】セルロース材パルプ化槽に使用するスクリーンプレート50であって、該スクリーンプレートが、プレートを貫通して伸びるスロット52を含み、該スロットがスクリーンプレートの内側表面に隣接すると共に、パルプ化槽に取り付けられたとき、パルプ流れに面する面取りされた曲面状入口コーナー端64を有し、前記曲面状入口が、各スロットの下側に設けられ、かつスロットの下側が、プレートの内側表面から外側表面まで5°〜15°の角度ωで各々傾斜していることを特徴とするスクリーンプレート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、一般に、パルプ製造に関し、特に、パルプ蒸解缶に使用されるスクリーンプレートに関する。
【従来技術】
【0002】
木材チップや他のセルロース繊維材は、蒸解缶で処理され、チップや繊維材中の繊維は、例えば、リグニンを除去することによって化学的に分離される。蒸解缶は、木材チップを熱、液、および薬剤で処理し、木材チップをパルプに転化するための槽である。連続式蒸解缶の槽は、一般に、直立した円筒で、連続流れでチップを受容する上部入口を有する。チップは、高さ100〜300フィート(30〜100m)の蒸解缶の槽中を大略下向に徐々に流れる。
【0003】
チップが連続式蒸解缶中を移動するにつれて、チップ中に繊維を結合させていたリグニンから繊維が解き放たれ、チップはパルプに転化される。パルプは蒸解缶の底部出口から取り出される。チップは、連続蒸解缶に連続的に添加され、一方、蒸解缶の槽に既に存在しているチップは、処理され、パルプが槽の底部から排出される。回分式蒸解缶では、チップは最初に槽に装填され、装填されたチップが、一槽分として処理され、その後、処理されたチップが排出され、槽は空になる。回分式蒸解缶では、チップは槽中の実質的に同じ位置に留まる傾向がある。
【0004】
蒸解缶中の薬剤、例えば、蒸解液は、チップを処理して、リグニンと繊維との結合を解き放ち、チップをパルプに転化させる。前記薬剤は、回分式および連続式蒸解缶に連続的にポンプで送出入される蒸解液に含まれる。スクリーンプレートは、化学セルロースパルプ、例えば、クラフトパルプ製造用の、回分式および連続式の従来の蒸解缶に使用される。スクリーンプレートは、蒸解缶から液を抽出し得るようにするが、一方、繊維材の抽出は防止し得るフィルタの役目を果たす。スクリーンプレートは、一般に、蒸解缶の内周の周りに配置される。スクリーンプレートの内側の表面は、蒸解缶中のチップスラリーに曝露され、スクリーンプレートの外側の表面は、液抽出チャンバに対する壁を形成する。スクリーンプレートは、狭いスロットの多重の列を有し、液はこれらのスロットを通じてチップスラリーから抽出されるが、繊維は抽出されない。
【0005】
スクリーンプレートに開けられたスロットは、繊維で詰まったり、閉塞したりする傾向があり、パルプ処理の質が低下する原因となっていた。詰りや閉塞の傾向を減少させるために、種々のタイプのスロットの設計開発が行われてきた。例えば、スロットを蒸解缶の垂直軸と水平面に対して斜め向きに配列すると、スロットの詰まりや閉塞が減少することが見出されている。例えば、米国特許第6,165,323号明細書を参照されたい。しかし、斜め向きスロットでも詰まりや閉塞は依然として生じるので、スロットの詰まりや閉塞の傾向をさらに減少する装置に対する長年のニーズが引き続いて存在している。
【0006】
蒸解缶内のチップが蒸解缶スクリーンのスロットを詰まらせるという問題が生じている。スロットは狭い形状なので、チップが蒸解液とともに蒸解缶から抽出されてしまうことは防止されているが、狭い形状であると、チップがスロットに挟まってしまうリスクがある。このリスクは、チップがスロットと同じ方向に移動する連続式蒸解缶における垂直向きスロットの場合に比較的大きい。このリスクは斜め向きスロットでは減少される。この場合、チップは垂直方向に移動するが、スロットに対してはある斜め角度で移動するからである。しかしチップが斜めスロットを横切って移動するにつれて、チップがスロット上に掴まり、スロットを詰まらせる恐れもある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
チップによる詰まりや閉塞のリスクが減少したスロットスクリーンプレートのスロット、特に、斜め向きスロットに対する長年のニーズが存在している。このニーズは、チップがスロットに詰まってスクリーンを通って蒸解缶外に流出する蒸解液の流れを阻害するときに起こる困難さ故に生じる。このニーズは、連続式蒸解缶に関して最も大きいものであるが、回分式蒸解缶のスクリーンプレート、特に、斜め方向のスクリーンプレートに対しても、詰まりが生じないスロットに対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、新規なスクリーンプレートが提供される。この新規スクリーンプレートは、端部に掴まり始めるチップを最小限に抑えて、チップをパルプ流れに逸らす機能のある面取りされた曲面状の入口端を有するスロットを含む。曲面状のスロット入口端は、スクリーンプレートの内表面に隣接すると共にパルプ流れに面する。曲面状のスロット入口端は、丸い形状であることが好ましい。例えば、入口は、プレートの厚さの1/3〜2/3に等しい緩やかな曲率半径を有し得る。曲面状入口は、スロットの下側の表面上だけに設けてもよく、あるいは上側と下側の双方のスロット表面上に設けてもよい。下側の表面のみに設けられた曲面状入口は、パルプ流れが大略下向きで、かつチップがスロットの下側の入口端に衝突する傾向がある連続式蒸解缶に好適である。スロットの上側と下側の表面上に設けられた曲面状の入口は、連続式と回分式双方の蒸解缶に好適である。さらに、スロットの下側の表面は、断面がプレートの内表面から外表面の方向で上向きに傾斜している。そのような上向き傾斜の下側スロット表面は、チップをスロットの中から外の方向へ、そしてパルプ本流へと逸らす傾向がある。
【0009】
セルロース材パルプ化槽に使用されるスクリーンプレートにおいて、該スクリーンプレートは、スクリーンプレートの内表面に隣接すると共にパルプ流れに面する曲面状入口コーナー端を有するスロットを備えている。
【0010】
本発明のスクリーンプレートによれば、セルロース材をパルプ化する連続式蒸解缶に使用されるスクリーンプレートアセンブリを提供することができる。このアセンブリは、セルロース材パルプ化槽に使用される本発明に係る複数のスクリーンプレートを含み、各プレートはアーク形状の断面を有する。該スクリーンプレートは、蒸解缶の槽の内面に取り付けられた円環構造を形成するようにアセンブリされ、各スクリーンプレートが、スクリーンプレートの内表面に隣接すると共にパルプ流れに面する面取りされた曲面状の入口コーナー端を有するスロットを備えている。
【0011】
本発明のスクリーンプレートによれば、連続蒸解缶の槽から液を抽出する方法を提供することができる。この方法は、セルロース材が前記槽の排出口から排出されるまで槽の中を流れる間にセルロース材と液を処理するステップと、本発明に係るスクリーンプレートが蒸解缶の槽の内面に取り付けられた円環を形成するようにアセンブリされ、そして各スクリーンプレートがスクリーンプレートの内表面に隣接すると共にパルプ流れに面する面取りされた曲面状の入口コーナー端を有するスロットを備えているスクリーンアセンブリを通じて液の一部を抽出するステップと、槽中を流れるセルロース材を前記曲面状の入口コーナー端で逸らせることによって、セルロース材がスロット上に掴まるのを回避するステップとを含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】概略的に示される従来の連続式蒸解缶の前面図で、部分的に切断して示される図である。
【0013】
【図2】概略的に示される蒸解缶の従来の内部スクリーンアセンブリと壁の前面図である。
【0014】
【図3】幾つかのスクリーンプレートがアセンブリされた従来のスクリーンアセンブリの前面図である。
【0015】
【図4】従来のスクリーンプレートの部分の前面図である。
【0016】
【図5】従来のスクリーンプレートの部分の後面図である。
【0017】
【図6】図5のライン6−6に沿って切り取られた従来のスクリーンプレートの部分断面図である。
【0018】
【図7】曲面状の、例えば、丸い形状の端部を有する斜め方向スロットを備えるスクリーンプレートの第一態様の前面図である。
【0019】
【図8】スクリーンプレートの第一態様の側断面図であって、図7のライン8−8に沿って切り取られた図である。
【0020】
【図9】丸い形状の入口端部を有する斜め方向スロットを備えるスクリーンプレートの第二態様の前面図である。
【0021】
【図10】スクリーンプレートの第二態様の側断面図であって、図9のライン10−10に沿って切り取られた図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、セルロース繊維材、例えば、木材チップを繊維パルプに処理する連続式垂直蒸解缶10の側面図である。図1には垂直の連続式蒸解缶が示されているけれども、本明細書に記載のスクリーンプレートとスクリーンスロットは、他のタイプの円筒形の連続式蒸解缶と回分式蒸解缶にも適用可能である。本明細書に開示の新規なスクリーンプレートは、連続式蒸解缶に関して示されているけれども、本発明のスクリーンプレートは回分式蒸解缶にも適用可能である。
【0023】
細砕セルロース繊維材と蒸解薬剤とのスラリーが、蒸解缶の頂部12に導入され、完全に蒸解されたパルプと使用済み蒸解液とのスラリーが、底部14から排出される。蒸解缶10は、円筒形のシェル16を含み、一般に、例えば、高さ100フィート(30m)のカラムを形成している。円筒形のシェル16内には、幾つかの円筒形スクリーンアセンブリ18がある。
【0024】
図2は、複数種の高さの円筒形スクリーン部20を備えるスクリーンアセンブリ18の内部図である。スクリーンは、円筒形スクリーン部を形成するようにアセンブリされた複数のスクリーンプレート22を備えている。スクリーンプレートは、シェル16の内壁のフレーム24に取り付けられる。フレーム24は、例えば、金属バー、鉄のアングル材、または同様な構造エレメントから成り、蒸解缶の外側シェル16に直接取り付けられているが、フレーム24は、蒸解缶とは別個のもので、分離可能のものともし得る。各スクリーン部20は、一般に、蒸解缶10の円筒形シェル16の内壁周囲に円環状リングを形成している。
【0025】
図3は、スクリーンアセンブリ18を構成するスクリーン部20の部分の概要図である。スクリーンは、金属スクリーンプレート26のアレイを備えている。各スクリーンプレート26は、平行四辺形のスクリーンスロット領域34の列を備えている(図3に概略的に示されている)。これらのスロット領域は、図4と図5に示されるスロット列34のようなスクリーンスロットの列を規定する。スクリーンプレート上のスロット領域34,34の間に位置するのは、スロット領域に対して平行な陸(非スロット)領域38である。
【0026】
スロット領域34は、図3では水平の列として示され、図2では垂直の列として示されている。スロット領域の配列方向は、蒸解缶毎に変わり得るし、単一の蒸解缶ではスクリーンアセンブリ毎に変わり得るし、スクリーン部毎に変わり得るし、単一のスクリーン部またはスクリーンプレートではスロット領域毎に変わり得る。スロット領域34は、一般に、垂直方向または水平方向に配列されるが、蒸解缶に関して斜め方向にも配列し得る。
【0027】
スクリーンプレートは、狭いスロットまたは開口(包括的にスロットと称される)を備えている。スロットは、プレート26の厚さを貫通し、液が、プレートを通過し得るようにされているが、繊維は通過しない。スロットは、様々な配列方向に配置し得る。例えば、垂直でも、水平でも、斜めの角度、例えば、垂直線から45°の角度でも配列し得る。斜めスロットは、垂直スロットと水平スロットに較べて、繊維の詰まり/閉塞に対して抵抗力が大きいことが見い出された。
【0028】
液を集めるための円環状チャンバ28は、一般に、各スクリーンアセンブリ18の後側に設けられる。図2に示すように、液は、蒸解缶を大略下向きに移動するパルプスラリーの流れ(F)から各スクリーンを通して抜き出される。各円環状チャンバ28の下には、チャンバ28から液を集めるための一般により小さい円環状の空洞30、普通「内部ヘッダー」と称される空洞が設けられている。空洞30に集められた液は、液抜き出し導管32を通して排出される。これらのチャンバ28と空洞30は、シェル16の内部に位置しているように示されているけれども、シェル16の外部に位置させることもでき、すなわち、「外部ヘッダー」も使用し得る。
【0029】
スクリーンアセンブリ18は、スクリーンプレート26で形成された連続円筒形スクリーン表面を有するように示されており、スクリーンプレート26は、スクリーンスロットの部分、例えば、列を有する。しかし、スクリーン表面は連続でなくとも、あるいは円筒形でなくてもよい。例えば、スクリーン表面は、複数の個々の円形スクリーンを含み得るし、またはスクリーン表面は、スクリーン表面部分とブランクプレートを交互にする表面で、普通「チェッカー盤パターン」と称される表面を含み得る。そのようなスクリーンアセンブリ18の1個以上を同じ蒸解缶槽10に使用し得る。さらに、スクリーンアセンブリ18は、テーパー付とし、スクリーンアセンブリ18の底部の直径が頂部の直径よりも大きくもし得る。テーパー付スクリーンアセンブリは、蒸解缶の槽の直径が大きくなる領域をカバーするのに使用し得る。
【0030】
各スクリーンアセンブリ18は、複数種の高さのスクリーンプレート、例えば、3種の高さ、例えば、上部、中間部、下部の高さを有するスクリーン部を有するように示されている。アセンブリ18の各スクリーン部20におけるスクリーンプレート26の数は、単一の蒸解缶ではアセンブリ毎に変わり得るし、そして蒸解缶毎にも変わり得る。スクリーンプレートに設けられるスロットの幅は、例えば、3mm〜9mmの範囲とし得る。さらに、各スクリーン部20のスクリーンプレートのスロットの形状、サイズ、および配列方向も変わり得る。例えば、上部のスクリーン部のスロットの幅は、約3mm〜4mmとし得るが、それは、中間部のスクリーン部のスロットの幅、例えば、約4〜5mmより狭い。同様に、中間部のスクリーン部のスロットの幅は、下部のスクリーン部のスロットの幅、例えば、約5〜6mmより狭い。スクリーンアセンブリ18において下方スクリーンほど幅が広いスロットを使用することによって、スロットがパルプスラリーから流れてくる繊維で詰まる傾向が減少すると考えられる。さらに、スクリーンプレートのスロットの長さは、スクリーン部が異なっても均一とし得る。
【0031】
図4に示されるように、スクリーンプレート26に示されるスロット領域34は、斜めに向いており、水平に対して角度(α)を成している。スロットの配列方向は、蒸解缶毎に変わり得るし、単一の蒸解缶ではスクリーンアセンブリ毎に変わり得るし、スクリーン部毎に変わり得るし、また単一のスクリーンまたはスクリーンプレートではスロットの列毎に変わり得る。
【0032】
機械加工された個々のスロット40は、一般に、スロット領域34から成る水平の列を形成する。図4は、スクリーンプレート26の内側表面42を示し、その外側表面42は液チャンバ30に面している。図5は、スクリーンプレート26の内側表面44を示し、その内側表面44は蒸解缶の槽にあるチップスラリーに面している。スクリーンプレート26は、フレーム24にピン46で固定されており、ピン46は、プレートのピン孔48を貫通している。各スクリーンプレート26をフレーム24に固定するため、幾つかのピンとピン孔を使用し得る。
【0033】
概略的に示されているスロット40の各々は、斜め方向であり、蒸解缶の槽の垂直軸または水平面に対して角度アルファ(α)の向きとなっている。スロットは、パルプの流れ(F)方向に対して垂直にも、または水平にも配置し得るが、斜め方向のスロットにすれば、詰まり/閉塞の傾向が、より小さくなる。スロット角度α(図4)は30°〜60°とし得るが、好ましいのは約45°である。スロット角度は、槽の垂直軸に対してプレートに平行なスロットの軸で形成される角度である。
【0034】
スロット40の各々は、隣接スロットから約1インチ、例えば、0.75〜1.5インチの水平距離Dだけ離れた間隔で配置される。スロット領域34の各々は、隣接スロット40,40間の水平距離50の1.5〜3倍の距離となる垂直寸法52を有する。
【0035】
陸領域38は垂直寸法54を有し、その寸法はスロット40垂直寸法52、例えば、約2インチに略々等しい。好ましくは、各スロット領域(列)34が有するスロット垂直(または水平)寸法52と各陸領域38が有する垂直(または水平)寸法54は、どのような特定のスクリーンプレートにおいて実質的に同じであるが、幾つかの状況下では変わり得る。また、好ましくは、スロット角度αは、スクリーンプレートのスロット領域34の一つから次のスロット領域34に至るまで同じであるが、一つのスロット領域と他のスロット領域とで異なっていてもよい。また、好ましくは、所与のスクリーンプレート内のスロット領域34のすべては同じ配列方向のスロットを備えているが、スクリーンプレート26の一つから次に至るまで、垂直方向には、スロット40が相異なる方向に配列されてもよい(すなわち、スクリーンプレート26の一つに対して、スロット40が、頂部から底部に向けて左から右に傾斜し、一方、他のスロットは、頂部から底部に向けて右から左に傾斜していてもよい)。
【0036】
図6に示されるように、各スロット領域34にあるスロット40は、プレート36の内側表面44には狭い開口を備え、プレート36の外側表面42には広い開口を備える。スロットの幅(W)としては、スロットの長さ(L)(図4に示される)に対比して、スロットの狭い方の寸法を採用し得る。スロットの厚さ(T)は、プレート36の厚さである。スロットがその厚さ(T)方向にテーパー付の場合は、テーパーの角度はベータ(β)(図6)、例えば、30°である。特定の態様では、前記の幅(W)は、プレート36の外側表面42におけるように、スロットの最も狭い開口の箇所で測定し得る。一般に、スロット領域34の箇所にあるスロット40すべては(スクリーンプレートの箇所にあるのも)、均一な幅(W)と長さ(L)と厚さ(T)とテーパー角(β)を備えている。しかし、スロット幅(W)は、スロット領域毎に変わり得るし、スクリーンプレート毎に変わり得るし、および/または一個のスクリーンアセンブリ内ではスクリーン部毎に変わり得る。
【0037】
図7と図8は、丸い形状の入口端を有する斜め方向のスロットを備える第一態様のスクリーンプレート50の、それぞれ、前面図と側断面図である。図7と図8に示されるスクリーンプレートは、パルプスラリーがスロットを超えて下方に移動する連続式蒸解缶に最も好適なものである。プレート50は、また、回分式蒸解缶にも適用可能である。スロット52は、斜め方向であり、スロット領域54の箇所に列をなして配置されている。パルプスラリー中のチップ56は、連続式蒸解缶中を大略下方向(F)に流れるが、回分式蒸解缶中では一般に静止したままで存在する。プレートの内側表面58は、チップの流れ(F)に面し、外側表面60は液集めチャンバに面する。スロットの喉部の幅(X)が、スロットの中で最も狭い部分である。幅(X)は、例えば、2〜9mmとし得る。
【0038】
各スロットの下側62は、スロット長さに沿って延び、流れ方向(F)に対してスロットの下流側にある。下流側には、曲面状入口64が備えられており、この入口64は、例えば、丸形状とし得る。面取りされた曲面状入口64は、パルプ流れ(F)中にあるチップ56を掴まえる傾向が小さい。従来技術のスロットに見出される鋭い形状の入口端、特に、スロットの下部の端部は、チップを掴まえ易く、従って、チップがスロットを詰まらせる恐れがある。図7と図8に示されるスロットで、特に、スロットの下側で曲面状となっている入口64は、チップを外に逸らせて流れ(F)の中に押し戻し、スロットから追い出す傾向がある。
【0039】
スロット入口の曲面度は、曲率半径で規定し得る。例えば、この曲率半径は、例えば、プレートの厚さ(T)の1/3〜2/3とし得る。曲面状入口の観点では、スロットの最も狭い領域(X)は、入口64の中に少し入った箇所となり得る。入口をすぐ越えた箇所で、プレートの内側表面58と外側表面60の間の箇所にある喉部が、この最も狭い領域となり得る。
【0040】
各スロット52の下側表面64は、水平に対して5°〜15°の傾斜角度(ω)を形成する。この傾斜角度とすることにより、下側表面64の断面は、プレートの内側表面58に対して上向きに傾斜することになる。傾斜勾配を有する下側表面64は、スロットに引き込まれそうなチップを外に逸らせてパルプ流れの方向(F)に押し戻し、スロットから追い出す傾向がある。下側表面の勾配は、曲面状入口64のプレート上で内側に向けて付けられている。面取りされた曲面状入口と傾斜の下側とを組み合わせた構造により、スロット52がチップをパルプ流れの方向に逸らして詰まりを回避するという能力が大いに強化される。
【0041】
プレート50に設けられるスロット52は、開口角度(β)を有する末広がりの開口を有するが、この末広がり開口により、スロットとスクリーンプレートを通過する液移動(FL)が容易になる。下側表面62に勾配があることを考慮すると、(矢印FLの角度で示される)液上昇角度は、開口角度(β)の1/2とスロットの下側の傾斜角度(ω)との合計に等しい上昇傾斜となるようにオフセットされる。このオフセットされた液上昇角度により、スロットを通過する液流れ(FL)は、従来のスロットよりも大きな上昇角度となる。さらに、各スロットの上側66は、所望の開口角度(β)を提供するために選択された角度を有する。例えば、上側66の断面の45°の角度と下側62の断面の15°の角度(ω)が与えられたとすると、30°度の開口角度(β)と30°のオフセット角度が得られる。ここにオフセット角度は、スロットを通過する平均的な流れ(FL)の方向で示される。
【0042】
図9と図10は、丸形状の入口端74を有する斜め方向スロット72を備える第二態様のスクリーンプレート70の、それぞれ、前面図と側断面図である。プレート70は、パルプスラリーがプレートに対して比較的静止している回分式蒸解缶に対して好適であるけれども、連続式蒸解缶にも適用可能である。プレート70は、図8に示された曲面状入口端64と同様な曲面状入口端74を有する。プレート70は、スロットの上側側壁76と下側側壁78の両側に曲面状入口74を有する。対照的に、図8に示されたプレートでは曲面状入口は、下側のスロット側壁だけに設けられている。上側と下側のスロット側壁78に設けられた曲面状入口74は、例えば、丸形状とし得る。スロット入口74の曲面度は曲率半径で規定し得る。この曲率半径は、プレートの厚さ(T)の、例えば、1/3〜2/3とし得る。曲面状入口の観点では、スロット(X)の最も狭い領域は、入口の中に入った箇所とし得る。入口をすぐ越えた、プレートの内側表面75と外側表面60の間の箇所にある喉部が、この最も狭い領域となり得る。
【0043】
上側および下側のスロット側壁は、各々傾斜させ、30°の末広がりの開口角度(β)を形成し得る。図7〜図10に示されたスロットに対する開口角度は、変わり得るが、10°〜30°の範囲が好ましい。図9と図10に示す例においては、スロット72に対する開口角度は、オフセットされず、図8のスロット52に対する角度に等しい。図9と図10に示す例においては、説明の便宜上、スロット72に対する開口角度は、水平線の周りに対称である。
【0044】
以上、本発明は、現在最も実用的で、好ましい態様であると考えられるものについて記載されたけれども、本発明は、開示された態様に限定されることなく、特許請求の範囲に含まれる多岐にわたる修正や均等の構成をも包含するものである。
【符号の説明】
【0045】
10…連続式蒸解缶、12…頂部、14…底部、16…シェル、18…スクリーンアセンブリ、20…スクリーン部、22,26,36,50,70…スクリーンプレート、24…フレーム、28…液集めチャンバ、30…空洞、32…液抜き出し導管、34…スロット領域、38…陸(非スロット)領域、40,50,52,72…スロット、44,58,75…内側表面、42,60…外側表面、46…ピン、48…ピン孔、D…スロット間の水平距離、52…スロットの垂直寸法、54…陸領域の垂直寸法、56…チップ、62,78…スロット下側面、64,74…曲面状入口、65,77…曲率半径、66,76…スロット上側面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース材パルプ化槽に使用するスクリーンプレートであって、該スクリーンプレートが、
プレートを貫通して伸びるスロットを含み、
該スロットがスクリーンプレートの内側表面に隣接すると共に、パルプ化槽に取り付けられたとき、パルプ流れに面する面取りされた曲面状入口コーナー端を有し、
前記曲面状入口コーナー端が、各スロットの下側に設けられ、かつスロットの下側が、プレートの内側表面から外側表面まで5°〜15°の角度で各々傾斜している
ことを特徴とするスクリーンプレート。
【請求項2】
請求項1に記載のスクリーンプレートにおいて、前記曲面状コーナー入口スロット端が、丸形状を有することを特徴とするスクリーンプレート。
【請求項3】
請求項1に記載のスクリーンプレートにおいて、前記曲面状入口コーナー端が、プレートの厚さの1/3〜2/3の範囲の曲率半径を有することを特徴とするスクリーンプレート。
【請求項4】
請求項1に記載のスクリーンプレートにおいて、前記曲面状入口コーナー端が、スロットの上側と下側に設けられていることを特徴とするスクリーンプレート。
【請求項5】
請求項1に記載のスクリーンプレートにおいて、プレートに平行なスロットが、槽の垂直軸に対して鋭角を成していることを特徴とするスクリーンプレート。
【請求項6】
請求項1に記載のスクリーンプレートにおいて、前記スロットが、水平に対して15°〜30°の角度でプレートに直角なオフセット角度を有していることを特徴とするスクリーンプレート。
【請求項7】
請求項1に記載のスクリーンプレートにおいて、前記スロットが、スクリーンプレートの行の部分に配置され、前記部分が、スクリーンプレートの行と列に配置されていることを特徴とするスクリーンプレート。
【請求項8】
請求項1に記載のスクリーンプレートにおいて、前記スロットの各々が相対する端部の間にギャップを有し、該ギャップが、3mm〜9mmの幅を有していることを特徴とするスクリーンプレート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−32611(P2013−32611A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−219363(P2012−219363)
【出願日】平成24年10月1日(2012.10.1)
【分割の表示】特願2008−6861(P2008−6861)の分割
【原出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(502075342)アンドリッツ インコーポレーテッド (27)
【Fターム(参考)】