説明

蓄光シート及びその製造方法

【課題】本発明は、発光12時間(終夜発光)で10mcd/m(暗闇ではっきり見える輝度)であって、昼間、意匠を白色により視覚性を高める。
【解決手段】樹脂材に白色顔料を混合した第1の混合物を加熱しながら遠心成形することにより形成された白色反射層と、前記白色反射層上に、樹脂材に樹脂材よりも比重の大きい白色蓄光材と高輝度蓄光材とを混合させた第2の混合物を注入し、加熱しながら遠心成形することにより前記白色反射層側より、高輝度蓄光材層、白色蓄光材層、及び透明保護層が一体形成された構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内用の案内標識板、地下鉄や地下駐車場の安全標識板や安全誘導表示板等の蓄光シート及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、屋内用途の避難誘導標識は、一般に誘導灯が設置され、火災、地震などの停電時に内部バッテリーにより20分間点燈する方策が採られている。
しかし、大規模工場、大型店舗、地下街においては、20分間で全員が避難することは、困難な状況が想定される。
また、避難誘導標識は、常時点灯させておく必要があるため、1台当たり15Wの誘導灯であっても100台設置した場合(消防法により出入り口、廊下、階段、避難路などに設置義務がある)、約13万kw/年(15w/台×24時間365日×100台=13.14万kw/年)となる。
【0003】
このため、省エネルギー(低炭素化社会へ移行)の観点から、エネルギーを消費せず、暗闇で発光する蓄光式避難誘導標識が提案された。
確かに、蓄光式避難誘導標識は、室内灯及び太陽光の光エネルギーを蓄え、暗闇で発光するためエネルギーコストが不要でメンテナンスフリー(誘導灯のように蛍光灯、バッテリーの定期的交換不要)である等の利点がある。
そこで、従来の蓄光式避難誘導標識は、透明保護層、蓄光層、及び白色反射層からなり、透明保護層に意匠(意匠を印刷及び印刷シートを取付ける)を施し、白色反射層に粘着層(貼付け用)を形成する構成を備えている。(特許文献1,2,3)
【0004】
しかし、従来、蓄光式避難誘導標識に求められている高輝度、長発光で且つ白色の蓄光シートを製作することができていない。
これは、現在最も高輝度、長発光の蓄光材は、アルミン酸系であって、色が淡黄色〜黄色であり、蓄光材の粒径が100μ以上(100〜300μm)、蓄光材量が800gr/m以上(800〜4000gr/m)が最も高輝度、長発光となるが、上記従来技術(上記特許文献3件の)の方法によっては成形することが出来なかった。
すなわち、上記従来技術は、蓄光含有塗布材を樹脂シートに塗布若しくは積層する方法のため、蓄光材の粒径が100μ以上のもの、及び蓄光材塗布量を300gr/m以上とすることは困難であった為である。
【0005】
従来方法で、塗布を繰り返して積層を厚くする試みをすると、シートにムラや凹凸が発生し製品とならない問題を招来した。
また、白色の蓄光シートを製作する為には、白色蓄光材を使用しなければならないが、白色蓄光材はアルミン酸系蓄光材に白色顔料を混合して作られるため、淡黄色〜黄色の蓄光材と比較して輝度が低下し、従ってこの白色蓄光材を使用した蓄光シートは、蓄光式避難誘導標識の要求を満たすことが出来なかった。
【0006】
この種従来の蓄光式避難誘導標識においては、以下の点に更なる改良が望まれていた。
すなわち、高輝度蓄光式避難誘導標識においては、(1)発光10時間で9mcd/m(特許第4130939号)であるが、発光12時間(終夜発光)で10mcd/m(暗闇ではっきり見える輝度)であること、及び(2)蓄光式避難誘導標識に使用される蓄光材の色が黄色及び淡黄色であるため、意匠(ロゴ、非常口などの文字) が緑色のため、昼間の視認性が悪い点を改良する(白色化する)こと。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4130939号公報
【特許文献2】特開2000−256586号公報
【特許文献3】特開2001−249615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記したような事情に鑑みてなされたものであり、発光12時間(終夜発光)で10mcd/m(暗闇ではっきり見える輝度)であって、昼間、意匠を白色により視覚性を高めた蓄光シート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明に係る蓄光シートにあっては、樹脂材に白色顔料を混合した第1の混合物を加熱しながら遠心成形することにより形成された白色反射層と、前記白色反射層上に、樹脂材に樹脂材よりも比重の大きい白色蓄光材と高輝度蓄光材とを混合させた第2の混合物を注入し、加熱しながら遠心成形することにより前記白色反射層側より、高輝度蓄光材層、白色蓄光材層、及び透明保護層が一体形成されたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る蓄光シートの製造方法にあっては、遠心成形ドラムの内面に、樹脂材に白色顔料を混合した材料を流し込み、白色反射層を形成する第1の工程と、ついで樹脂材に白色蓄光材と高輝度蓄光材とを混合した材料を前記白色反射層の内周面に流し込み、加熱しながら遠心成形することにより、前記白色反射層側より、高輝度蓄光材層、白色蓄光材層、及び透明保護層とを一体成形する第2の工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以下に記載される効果を奏する。
請求項1記載の発明の蓄光シートによれば、発光12時間(終夜発光)で10mcd/m(暗闇ではっきり見える輝度)であって、昼間、意匠を白色により視覚性を高めことが可能である。
【0012】
請求項2記載の発明の蓄光シートによれば、高輝度を発揮しつつ、蓄光層の白色化が可能となる。
請求項3記載の発明の蓄光シートによれば、成形が容易で、良好な製品性能が得られる。
【0013】
請求項4記載の発明の蓄光シートによれば、高輝度を発揮しつつ、蓄光層の白色化が可能な製品を、遠心成形法により容易に成形することが出来る。
請求項5記載の発明の蓄光シートの製造方法によれば、平板の製品を容易に得ることが出来る。
【0014】
請求項6記載の発明の蓄光シートの製造方法によれば、遠心成形法により容易に白色蓄光材層と高輝度蓄光材層との2層に分離することが出来る。
請求項7記載の発明の蓄光シートの製造方法によれば、接着剤を用いることなく、白色反射層と蓄光材層とを強固に一体化出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例に係る蓄光シートを示す概略断面図である。
【図2】図1の蓄光材層及び透明保護層のみを拡大して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1、及び図2に基づき発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本発明の実施例に係る蓄光シートを示す概略断面図である。
図2は、図1の蓄光層及び透明保護層のみを拡大して示した図である。
【0017】
本発明の蓄光シートは、樹脂材に白色顔料を混合した第1の混合物を加熱しながら遠心成形することにより形成された白色反射層3と、この白色反射層3上に、樹脂材に樹脂材よりも比重の大きい白色蓄光材212と高輝度蓄光材222とを混合させた第2の混合物を注入し、加熱しながら遠心成形することにより白色反射層3側より、高輝度蓄光材層22、白色蓄光材層21、及び透明保護層1が一体形成された構成を備えている。
【0018】
図2に示す様に、この白色蓄光材層21には、熱硬化性無黄変透明ポリウレタン材中に粒径5〜100μmのアルミン酸系蓄光材からなる白色蓄光材212が分散して存在し、高輝度蓄光材層22には、熱硬化性無黄変透明ポリウレタン材中に粒径100〜300μmのアルミン酸系蓄光材からなる高輝度蓄光材222が分散して存在する態様である。
【0019】
更に、図には示していないが、透明保護層1上には、意匠を印刷又は印刷したフィルムを取付けると共に、白色反射層3の裏面には、本発明の蓄光シートを壁などに貼付けるための粘着層が設けられる。
白色蓄光材層21は、5〜100μmのアルミン酸系蓄光材からなる白色蓄光材212が分散して存在するため、図上真上から見た時に白色に見える。
そして、通常、意匠の色は緑色であるため、従来の蓄光式避難誘導標識と比較して昼間の視認性を良<することが可能である。
【0020】
また、高輝度蓄光材層22には、熱硬化性無黄変透明ポリウレタン材中に粒径100〜300μmのアルミン酸系蓄光材からなる高輝度蓄光材222が分散して存在する態様であるため、淡黄色〜黄色ではあるが、発光12時間(終夜)で10mcd/m以上の発光輝度を確保することが出来る。
これは、高輝度蓄光材222が、紫外線領域の光をエネルギーとして蓄え、暗闇で可視光を放出することを利用している。
すなわち、高輝度蓄光材222が、短い波長である紫外線をエネルギーとして蓄える特性を備えている為、透明保護層1側から侵入した光の内、紫外線は、白色蓄光材層21に妨げられることなく、容易に高輝度蓄光材222に到達し、高輝度蓄光材222のエネルギー源となる。
【0021】
一方、透明保護層1側から侵入した光の内、大部分の可視光は、白色蓄光材層21の白色蓄光材212により反射されるため、蓄光シート全体が白色に見える。
また、暗闇時、高輝度蓄光材222から450〜550nm(発光ピーク)の青色の可視光線が放出されるが、この可視光線は、可視光領域としては短波長領域であるため、白色蓄光材層21に妨げられることなく(障害物により隠蔽され難く)、良好な発光が可能である。
【0022】
また、発光時、白色反射層3により反射した光が更に光輝度を向上させることができる。
一般的に、高輝度蓄光材層22の高輝度蓄光材222から放出された光を反射光として放出させることにより、20〜40%の発光輝度を向上させることができる。
更にまた、本発明の蓄光シートは、白色反射層3と蓄光層2とが、一体成形で層を形成しているため層間で光が吸収されることはない。
【0023】
一般的に、層間の材質が異なる場合、当該層間で光が吸収され、光が熱エネルギーとなるため、光輝度が低下する。
ついで、本実施例に係る蓄光シートの製造方法について説明する。
【0024】
本実施例に係る蓄光シートの製造方法は、加熱かつ回転させる遠心成形法を用いるものであり、熱硬化性樹脂としてウレタン材を用いている。そして、ウレタン材よりも比重が大きい蓄光顔料をポリウレタンに混合し、遠心形成法により比重差を利用して蓄光顔料を含む蓄光層と、蓄光顔料殆ど含まない透明保護層とを成形する。
尚、この蓄光層及び透明保護層は、白色顔料を含むウレタン材との混合物の白色反射層が硬化し始めた時点から完全に硬化するまでの間に、注入し、遠心成形を行うものである。
【0025】
ここで、完全に硬化するまでの間とは、未反応の反応基が存在しなくなるまでの間を意味するものである。本実施例のウレタン材は、注型ウレタン材であり、プレポリマーと言われる反応基(−NCO)を持つ主材と硬化剤(アミン系)とが反応してポリウレタンになるものである。
【0026】
第1の混合物を構成するウレタン材においては、主材と硬化剤とが混合され、注入された後、硬化することとなるが、未反応の反応基が存在している間に第2の混合物が注入されることにより、第1混合物(成形物)の未反応の反応基と第2混合物とが反応する。
これにより、第1混合物から成形された成形物と第2混合物とが一体化した成形物が成形されることとなる。
【0027】
以下、発光製品の製造方法について具体的に説明する。
【0028】
(工程1)
熱硬化性無黄変透明ウレタンのプレポリマー100部にアミン系架橋剤40部、白色顔料として酸化チタン系顔料5部を添加し、型温度90〜110℃の遠心成形機に投入、800〜1500rpmに回転して白色反射層3を成形する。
【0029】
(工程2)
ついで、白色反射層3が半硬化状態(熱硬化性無黄変透明ウレタンの反応基が残っているが、次の材料を投入しても混合しない程度の硬化状態)で以下の材料を投入する。
熱硬化性無黄変透明ウレタンのプレポリマー100部にアミン系架橋剤40部、平均粒径30μm(5〜80μm)の白色蓄光材(アルミン酸系蓄光材で比重3.4〜3.6)5部、平均粒径150μm(100〜300μm)の高輝度蓄光材(アルミン酸系蓄光材で比重3.5〜3.7)100部及び反応促進剤(アミン系)0.01部(反応促進剤は、材料混合時の粘度により適時投入量を変更)混合した材料。
【0030】
この時の型温度は、90〜110℃、遠心成形機回転数は、50〜200rpmである。
また、材料粘度は、投入時100〜500mPa・sとなるように、反応促進剤の量を変更して、投入時当該粘度に調整する。
この結果、白色反射層3の厚みは、透明保護層1の厚みと等しいか厚くなる。
通常、白色反射層3の厚みは、0.2〜0.5mmで、透明保護層1の厚みは、0.1〜0.4mmである。
【0031】
当該成形品は、図上上方から見たときには白色を呈し、図上下方から強い光(10001x以上の強い光)を当て、図上上方から見た時、やや黄色の蓄光シートとなる。
遠心成形ドラムより取り出した成形品をカットした後、カット品を平坦な板に挟んで100℃で10時間熱処理を行う。
【0032】
ついで、透明保護層1上に印刷により意匠(ロゴ、文字など)を施す。
また、白色反射層3の面は、遠心成形機の型面となるため充分に脱脂を行い両面テープにて粘着層とした。
【0033】
尚、蓄光式避難誘導標識を壁にビス留めする場合は、特に粘着層を設けなくともよい。
更に、意匠側に、外面に光触媒を取付ける(防汚処理)ことにより、より機能を向上させた製品とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
上述の発明は、屋内用の案内標識板、地下鉄や地下駐車場の安全標識板や安全誘導表示板に用いられることはもとより、工場や大型店舗の誘導標識としても利用可能である。
また、屋外用途として誘導標識、案内標識などに使用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 透明保護層
2 蓄光層
3 白色反射層
21 白色蓄光材層
22 高輝度蓄光材層
212 白色蓄光材
222 高輝度蓄光材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材に白色顔料を混合した第1の混合物を加熱しながら遠心成形することにより形成された白色反射層(3)と、前記白色反射層(3)上に、樹脂材に樹脂材よりも比重の大きい白色蓄光材(212)と高輝度蓄光材(222)とを混合させた第2の混合物を注入し、加熱しながら遠心成形することにより前記白色反射層(3)側より、高輝度蓄光材層(22)、白色蓄光材層(21)、及び透明保護層(1)が一体形成されたことを特徴とする蓄光シート。
【請求項2】
前記白色蓄光材層(21)が、粒径5〜100μmのアルミン酸系蓄光材(212)を、前記高輝度蓄光材層(22)が、粒径100〜300μmのアルミン酸系蓄光材(222)をそれぞれ含むことを特徴とする請求項1記載の蓄光シート。
【請求項3】
前記樹脂材が熱硬化性無黄変透明ポリウレタンであることを特徴とする請求項1または2記載の蓄光シート。
【請求項4】
遠心成形ドラムの内面に、樹脂材に白色顔料を混合した材料を流し込み、白色反射層(3)を形成する第1の工程と、ついで樹脂材に白色蓄光材(212)と高輝度蓄光材(222)とを混合した材料を前記白色反射層(3)の内周面に流し込み、加熱しながら遠心成形することにより、前記白色反射層(3)側より、高輝度蓄光材層(22)、白色蓄光材層(21)、及び透明保護層(1)とを一体成形する第2の工程とを含むことを特徴とする蓄光シートの製造方法。
【請求項5】
前記遠心成形ドラムより取り出した成形品をカットした後、前記カット品を平坦な板に挟んで一定時間熱処理を施すことを特徴とする請求項4記載の蓄光シートの製造方法。
【請求項6】
前記高輝度蓄光材(222)は、前記白色蓄光材(212)に比べ比重が大きいことを特徴とする請求項4または5記載の蓄光シート。
【請求項7】
前記第2の工程は前記第1の工程で成形された白色反射層(3)に未反応の官能基が残存する未硬化の状態で開始することを特徴とする請求項4記載の蓄光シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−217607(P2010−217607A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65345(P2009−65345)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】