説明

蓄光フィルム及び発光装置

【課題】耐候性、耐水性及び外観に優れ、かつ長時間発光が続き、発光輝度及び残光輝度が高い蓄光フィルム及びそれを用いた発光装置の提供。
【解決手段】平均粒子径が5〜30μmの青色蓄光性蛍光体を1〜30体積%含有し、かつ該蛍光体中で粒子径が50μm以上の該蛍光体が30体積%以下であることを特徴とする熱可塑性樹脂層を有する蓄光フィルム及び該蓄光フィルムとLEDとの組み合わせよりなる発光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の外装や通路の案内板等に使用される蓄光フイルム、例えば、建築物や通路に貼付して名称、住所、進行方向などを表示するフイルムであって、太陽光、LED光、照明器具などの光源より照射エネルギーを受けて、夜間及び暗所で発光する蓄光性を有する蓄光フイルム及びそれを用いてなる発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄光性を有する蓄光顔料を配合した樹脂組成物は従来から知られており、各種案内板や表示(標示)類、安全用品やレジャー用品等に使用されている。
【0003】
例えば特開平10−88031号公報(特許文献1)には、樹脂やゴムに平均粒子径が40〜400μmの蓄光性顔料を添加した道路表示板に関する技術が開示されている。
【0004】
しかしながら、平均粒子径が比較的大きい蓄光性顔料を添加した場合には、意外にも発光輝度が十分でなく、また、該蓄光顔料を含有する樹脂組成物を用いてフィルムを製造する際に成形性が劣り、得られたフィルムの外観も劣るという問題があった。
【0005】
また、従来より蓄光性蛍光体として、緑色や黄色のものを使用したフィルムが用いられていたが、より暗所で認識し易い蓄光フィルムが求められてきている。
【特許文献1】特開平10−88031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、耐候性、耐水性及び外観に優れ、かつ長時間発光が続き、発光輝度及び残光輝度が高い蓄光フィルム及びそれを用いた発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
しかして、本発明の要旨とするとことは、
(1)平均粒子径が5〜30μmの青色蓄光性蛍光体を1〜30体積%含有し、かつ該蛍光体中で粒子径が50μm以上の該蛍光体が30体積%以下であることを特徴とする熱可塑性樹脂層を有する蓄光フィルム、
(2)上記蛍光体が、Eu付活珪酸塩蓄光性蛍光体であって、組成式m(Sr1-a1 a )O・n(Mg1-b 2 b )O・2(Si1-c Gec )O2 :Eux Lny で表され、式中M1 はCa及びBaから選択された一種以上の元素、M2 はBe,Zn及びCdから選択された一種以上の元素、共付活剤LnはSc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,In,Bi及びSnから選択された一種以上の元素を示し、式中a,b,c,m,n,x及びyは下記の範囲にあり、かつ、前記蛍光体はF,Cl,Br及びIから選択された一種以上のハロゲン元素を、1×10-5〜1×10-1g・atm/母体1モルの範囲で含有する蓄光性蛍光体である、上記(1)に記載の蓄光フィルム、
0 ≦a≦ 0.8
0 ≦b≦ 0.2
0 ≦c≦ 0.2
1.5 <m≦ 3.5
0.5 ≦n≦ 1.5
1×10-5 ≦x≦ 1×10-1
1×10-5 ≦y≦ 1×10-1
(3)上記共付活剤LnがDy,Nd,Tm,Sn,In及びBiから選択された一種以上の元素である上記(2)に記載の蓄光フィルム、
(4)上記熱可塑性樹脂層が黄色蛍光体を含有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の蓄光フィルム、
(5)白色反射層を有する上記(1)〜(4)のいずれかに記載の蓄光フィルム、
(6)熱可塑性樹脂層の厚さが0.04〜1mmである上記(1)〜(5)のいずれかに記載の蓄光フイルム、
(7)青色LEDと、該LEDにより励起可能に配置された上記(1)〜(6)のいずれかに記載の蓄光フイルムとの組み合わせからなる発光装置、
(8)白色LEDと該LEDにより励起可能に配置された上記(4)に記載の蓄光フイルムとの組み合わせからなる発光装置に存する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の蓄光フィルムは、外観に優れ、かつ長時間発光が続き、発光輝度及び残光輝度が高いため、各種案内板や表示(標示)類、安全用品やレジャー用品等に好適に使用される。更に耐候性及び耐水性に優れるため、屋外での使用に好適である。また、該蓄光フィルムとその光源としてLEDを用いてなる発光装置は、その組み合わせにより、励起源であるLED等の発光を消しても、LED点灯中とほぼ同じ色で発光するため、広告等のもともとの意図する色を、消灯後も、そのまま維持することができる。
【0009】
また本発明の他の効果は、明細書中の記載により、より明らかにされる。
【発明の実施の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の蓄光フィルムは、平均粒子径が5〜30μmの青色蓄光性蛍光体を1〜30体積%含有し、かつ該蛍光体中で粒子径が50μm以上の該蛍光体が30体積%以下であることを特徴とする熱可塑性樹脂層を少なくとも有する蓄光フィルムである。
【0012】
青色蓄光性蛍光体とは、その発光ピークが、410〜495nmにある蓄光性蛍光体のことであり、視感度の点からより好ましくは、440〜480nmのものである。このような蛍光体としては、既知の各種の蓄光性蛍光体が使用できるが、より好ましいものとしては、Eu付活珪酸塩蓄光性蛍光体であって、組成式m(Sr1-a1 a )O・n(Mg1-b 2 b )O・2(Si1-c Gec )O2 :Eux Lny で表され、式中M1 はCa及びBaから選択された一種以上の元素、M2 はBe,Zn及びCdから選択された一種以上の元素、共付活剤LnはSc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,In,Bi及びSnから選択された一種以上の元素を示し、式中a,b,c,m,n,x及びyは下記の範囲にあり、かつ、前記蛍光体はF,Cl,Br及びIから選択された一種以上のハロゲン元素を、1×10-5〜1×10-1g・atm/母体1モルの範囲で含有する蛍光体であり、
0 ≦a≦ 0.8
0 ≦b≦ 0.2
0 ≦c≦ 0.2
1.5 <m≦ 3.5
0.5 ≦n≦ 1.5
1×10-5 ≦x≦ 1×10-1
1×10-5 ≦y≦ 1×10-1
更に好ましくは、上記共付活剤LnがDy,Nd,Tm,Sn,In及びBiから選択された一種以上の元素である蛍光体である。このような蛍光体の例としては、例えば特許3257947号に記載された蛍光体が使用でき、市販品としては化成オプトニクス社製蓄光性蛍光体P170(例えば発光座標x/y=0.144/0.136)などが挙げられる。
【0013】
該蓄光性蛍光体の粒径の制御は、特に限定されず、焼成後の蛍光体を、分級してもよいし、焼成時の温度、成長助剤(フラックス)の種類や量、あるいは粉砕により、粒径、粒度分布を制御することが可能である。
【0014】
該蓄光性蛍光体の平均粒子径は、コールターカウンターにより測定された、d50の値であり、この平均粒子径が5μm未満または30μmを超えると、フィルムの残光輝度が劣る。また、平均粒子径が、30μmを超えると、蓄光フィルムの耐候性が劣るものになりやすい。
【0015】
また、熱可塑性樹脂層中の、該蓄光性蛍光体の含有量が30体積%を超えると、熱可塑性樹脂層を成形する際の成形性が劣る。含有量が1体積%未満だと残光輝度が十分でない場合があり好ましくない。
【0016】
また該蓄光性蛍光体に占める粒子径が50μm以上の該蓄光性蛍光体の割合が30体積%を超えると、残光輝度が低下するため、30体積%以下が好ましく、より好ましくは25体積%以下である。
【0017】
本発明においては、その蓄光フィルムの特性として、体積%を使用するが、これは重量%よりも、体積%の方が、より光の取り出し効率等を考慮する際に本質的であるためである。重量%から、体積%への換算、あるいはその逆は、それぞれの構成成分の比重がわかれば、容易になしえることは明らかである。
【0018】
熱可塑性樹脂としては、軟質ポリ塩化ビニル、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、アクリル、ウレタン、PET等のポリエステル、ナイロン及びこれらの混合物、更にこれらにエラストマーを混合したもの等が挙げられる。中でも、耐候性や加工性及び他の添加剤が混合しやすい等の理由から、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂またはメタロセン系触媒を使用して製造されたポリエチレンを主成分とする樹脂が好ましい。
【0019】
本発明の蓄光フィルムは、熱可塑性樹脂中に青色蓄光性蛍光体を含有する層を必須成分として有するものである。該熱可塑性樹脂層中の熱可塑性樹脂の含有量は40〜95重量%程度である。
【0020】
本発明の好ましい態様の一つに、青色蓄光性蛍光体に加え、かかる青色蓄光性蛍光体の発光により励起される黄色蛍光体を蓄光フィルムを構成するいずれかの層に添加することにより、白色発光を有する蓄光フィルムを得ることができる。この場合、熱可塑性樹脂層に入れることがより好ましい。また、より好ましくは、蛍光体の粉体の時点で、青色蓄光性蛍光体と、黄色蛍光体とを混合して白色蓄光性蛍光体としておくことが、発光色の均一性などの点から好ましい。また、蛍光体を含む層を複数層有してもよく、各蛍光体含有層に含まれる蛍光体の、濃度、発光色を変えて積層してもよい。例えば、より高い耐候性を求められる最外層の蛍光体濃度を下げることも考えられる。
【0021】
かかる黄色蛍光体としては、その主たる発光ピークが560〜580nmにあるものであり、好ましくは、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(YAG蛍光体)が挙げられる。具体的には( YzGd1 - z3A l51 2:Ce(zは0 < z ≦ 1 を満たす数を表す。) 、または、(A1 - aSma3A’51 2 :Ce( AはY、Gd、LaおよびScからなる群から選ばれる少なくとも1種を表し、A’はAl、GaおよびInからなる群から選ばれる少なくとも1種を表し、aは0≦a<1 を満たす数を表す。)で表される蛍光体が好ましく、市販の蛍光体としては、例えば、化成オプトニクス社製蛍光体P46−Y3(例えば発光座標x/y=0.449/0.532)、KX−713A(例えば発光座標x/y=0.481/0.509)等が使用できる。青色蓄光性蛍光体と、この黄色蛍光体を適宜混合することにより、白色の光を発する蓄光性蛍光体(白色蓄光性蛍光体)が得られる。この配合比は、求める発光色により、任意に変更することができ、青白い白から、黄色みの強い白まで、適宜作成することができる。また、所望の色座標の発光色を出すために、緑や赤の蛍光体を、適宜添加しても良い。また、既に混合されている白色蓄光蛍光体(具体的には化成オプトニクス社製KX−712シリーズ)等の、青と黄色の蛍光体を混合した白色蓄光蛍光体を使用しても良い。
【0022】
これら、青色蓄光性蛍光体以外の蛍光体を熱可塑性樹脂層に使用した場合の、蛍光体の含有量は、青色蓄光性蛍光体とそれ以外の蛍光体の合計が、30体積%を超えないようにすることが成形性の点から望ましい。また、白色で光らせるためには、青色蓄光性蛍光体が、蛍光体全量に対し30体積%以上であることが好ましい。
【0023】
熱可塑性樹脂層を透過する光を反射させるための反射層を設けることにより、残光輝度を増幅することができる。なかでも、白色反射層が、反射率の点で好ましい。白色反射層は、例えば、上述した熱可塑性樹脂に酸化チタン等の白色顔料を配合して得られる。
【0024】
熱可塑性樹脂層および白色反射層には、必要に応じ、熱可塑性樹脂フィルムに配合される添加剤である、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、耐候助剤等を配合することができる。なお、紫外線吸収剤は熱可塑性樹脂層以外の層に配合するのがより好ましい。
【0025】
熱可塑性樹脂層の成形方法としては、熱可塑性樹脂、青色蓄光性蛍光体及び必要に応じ添加剤をバンバリーミキサー等にて混練し、次にミルロールにて混練圧延し、更にカレンダーロールにてフィルム状に圧延する方法が挙げられる。熱可塑性樹脂層の片面側に白色反射層を設けるには、熱可塑性樹脂層と同様の方法で白色反射フィルムを成形し、熱可塑性樹脂フィルムと白色反射フィルムを熱ラミネート等の方法により積層すればよい。また、熱可塑性樹脂フィルムを製造する過程において、あらかじめ成形しておいた白色反射フィルムを積層してもよい。
【0026】
本発明の発光装置は、少なくとも、青色(発光)LEDと、該LEDにより励起可能に配置された、平均粒子径が5〜30μmの青色蓄光性蛍光体を1〜30体積%含有し、かつ該蛍光体中で粒子径が50μm以上の該蛍光体が30体積%以下であることを特徴とする熱可塑性樹脂層を有する蓄光フィルムとの組み合わせからなる発光装置である。該発光装置は、蓄光フィルムをランプと、表示シート(図案が印刷されたシート等)の反対側に設置することにより、内照式表示物として用いることができる。また、この場合には、更に青色LEDと青蓄光性蛍光体含有蓄光フィルムとを組み合わせて使用することにより、青色発光する蓄光フィルムが得られ、また、青色LEDと黄色蛍光体を併用した白色LEDと青蓄光性蛍光体及び黄色蛍光体含有蓄光フィルムとを組み合わせて使用することにより、白色発光する蓄光フィルムが得られる。これらの組み合わせによる発光装置を使用すれば、励起源であるLEDを点灯している時も、消灯しているときも、蓄光フィルムがほぼ同様の発光をするため、表示される図案が、その色に関して、点灯時と消灯時に大きく変わることがないため、該発光装置を広告等に使用した場合、有利である。具体例を示せば、市販の青色LEDとして、例えば日亜社などから、色座標がx/y=0.11/0.10の様なものが販売されており、これに対し、前述の化成オプトニクス社製P170蓄光性蛍光体を用いた蓄光フィルムの色度点は、x/y=0.144/0.136とかなり近いため、視覚者に与えるイメージが大きく変化しないという利点が得られる。この様な態様の具体例としては、例えば地図の海の部分は本発明の青色の蓄光フィルムを用いることがあげられ、この場合より好ましくは、島の部分にのみ本発明の白色蓄光フィルムを重ねることにより、より好ましい表示を得ることが出来る。また、このような態様は地図に限られるものではなく、イメージカラーとして下地に青を用い、住所や文字情報の部分にのみ白色にすることなども考えられる。
【0027】
また、従来高輝度の蓄光性蛍光体として、緑色蓄光性蛍光体が使用されており、通常は、緑色蓄光性蛍光体のほうが、人間の視感度とのマッチングがよいため、明るく感じられるためである。しかしながら、本発明者らは、検討した結果、実際に停電等が生じた場合、人間の視覚はいわゆる暗所視での明るさに近いものがあり、この場合、必ずしも従来の緑色蓄光性蛍光体を使用したものが明るいわけではないことも見出した。このことは、実施例中においてより詳細に説明する。
【0028】
また、万一停電や災害が生じた場合には、従来の多く使用されている高輝度の緑色蓄光性蛍光体を使用した場合、赤色成分がないため、地図等の赤の記載が読めなく(正確には黒くなって色が識別できなく)なってしまうという問題があったが、本発明の熱可塑性樹脂層に青色蓄光性蛍光体と黄色蛍光体を含有する白色蓄光フィルムであれば、黄色成分があるため、赤の標示が赤であると認識することが可能である。
【0029】
また、本発明の蓄光フィルムは、従来の内照式の看板等に使用する場合には、拡散板の位置に、拡散板の代わりに入れることで、拡散板の役割をも果たすことができ、従来の内照式看板をそのまま本発明の発光装置に改造することが可能である。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を実施例を用いて詳述するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0031】
〔実施例1〜3、8、比較例1、3〕
1)蓄光フイルム(熱可塑性樹脂層)の作成
表−1に記載の組成よりなる組成物をバンバリーミキサーにて混練し、次にミルロールにて混練圧延し、更にカレンダーロールにて厚さ0.4mmのフィルム状に圧延し、冷却ロールを経て、巻取り機により巻き取って、蓄光フイルムを得た。
【0032】
〔実施例4〜7、9、比較例2〕
1)蓄光フィルム(熱可塑性樹脂層/反射層)の作成
表−1に記載の組成よりなる組成物をバンバリーミキサーにて混練し、次にミルロールにて混練圧延し、更にカレンダーロールにて厚さ0.4mmのフィルム状に圧延し、冷却ロールを経て、巻取り機により巻き取って、熱可塑性樹脂フィルムを得た。また、同様にして白色反射フィルムを得た。得られた熱可塑性樹脂フィルムと白色反射フィルムを熱ラミネートし、蓄光フィルム(熱可塑性樹脂層/反射層)を得た。
【0033】
〔蓄光フイルム等の評価〕
(1)蓄光性蛍光体の平均粒子径
コールターカウンターにより測定された、d50の値
【0034】
(2)残光輝度の測定方法:
JIS Z 9107「6.3.2 りん光材料のりん光輝度試験」に従い、励起後20分後の(残光)輝度を測定した。
【0035】
励起条件:常用光源蛍光ランプD65を使用し、200lxで20分間照射。
【0036】
(3)蓄光性蛍光体の発光スペクトルの測定
蓄光性蛍光体にUV(365nm)を照射しながら分光輝度計で発光スペクトルを測定し、ピーク波長を求めた。結果を表−1に示した。
【0037】
(4)耐候性
JIS Z 9107「6.2.2.2サンシャインカーボンアーク灯式促進耐候性試験」に従い試験した。
【0038】
<試験条件>
放射照度:255w/m、試験時間100(水噴霧時間12分、水噴霧停止時間48分を一サイクルとして100サイクル)、ブラックパネル温度:63℃
【0039】
(5)耐水性
JIS Z 9107「6.2.4 耐水性試験」に従い目視検査した。
【0040】
<試験条件>
蒸留水温度:40℃
常温:25℃
【0041】
(6)耐湿性
JIS Z 9107「6.2.6 耐湿性試験」に従い目視検査した。
【0042】
<試験条件>
相対湿度:96%
温度:40℃
【0043】
(7)明所視及び暗所視による残光輝度
実施例2及び比較例3で作成した蓄光フィルム(熱可塑性樹脂層)を用い、
明所視及び暗所視による残光輝度を測定した。結果を表−2に記す。
【0044】
なお、明所視残光輝度は、(株)トプコン製輝度計(BM5)にて、励起後、20分経過後のフィルムの残光輝度を測定した。また、暗所視残光輝度はInternationalLight TECHNOLOGIES社製IL1700,SEDO33/ZCIE/Rにて、励起後、20分経過後のフィルムの残光輝度を測定した。暗所視においては、本発明の蓄光フィルムの方が、従来からの緑色の蓄光フィルムよりはるかに明るくなることが表−2よりわかる。
【0045】
〔応用例〕
枠体の中に白色LED(青色LEDチップの表面に黄色蛍光体を塗布したもの)を設置し、その上に、透明アクリル板、本発明の蓄光フィルム(ポリ塩化ビニル系樹脂に青色蓄光性蛍光体と黄色蛍光体を配合した単層フィルム)、表面に日本地図をカラーで印刷してあるアクリルフィルムの順で載置し、白色LEDを点灯したところ、日本地図の図柄が赤色の部分も含め、色の点で消灯時と変わらない程度に視覚された。
【0046】
【表1】

P170:化成オプトニクス株式会社製 青色蓄光性蛍光体
P170S:化成オプトニクス株式会社製 青色蓄光性蛍光体
P1702S:化成オプトニクス株式会社製 青色蓄光性蛍光体
P1703S:化成オプトニクス株式会社製 青色蓄光性蛍光体
G300F:根本特殊化学株式会社製 緑色蓄光性蛍光体
MT1300:ジェイ・プラス株式会社製 塩化ビニル系樹脂(PVC)
DOP:ジェイ・プラス株式会社製 フタル酸エステル
M−6:株式会社ADEKA、大日本インキ化学工業株式会社 エポキシ大豆油
BZ−36M:勝田化工株式会社 Ba−Zt系熱安定剤
MES−3:勝田化工株式会社 St−Zn系安定剤
イルガノックス245:チバ・ジャパン株式会社 ヒンダードフェノール系酸化防止剤
アデカスタブLA−63P:株式会社ADEKA ヒンダードアミン系光安定剤
LBT1830:堺化学工業株式会社 リンと亜鉛の化合物、耐候助剤
R830:石原産業株式会社 酸化チタン、顔料
【0047】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が5〜30μmの青色蓄光性蛍光体を1〜30体積%含有し、かつ該蛍光体中で粒子径が50μm以上の該蛍光体が30体積%以下であることを特徴とする熱可塑性樹脂層を有する蓄光フィルム。
【請求項2】
上記蛍光体が、Eu付活珪酸塩蓄光性蛍光体であって、組成式m(Sr1-a1 a )O・n(Mg1-b 2 b )O・2(Si1-c Gec )O2 :Eux Lny で表され、式中M1 はCa及びBaから選択された一種以上の元素、M2 はBe,Zn及びCdから選択された一種以上の元素、共付活剤LnはSc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,In,Bi及びSnから選択された一種以上の元素を示し、式中a,b,c,m,n,x及びyは下記の範囲にあり、かつ、前記蛍光体はF,Cl,Br及びIから選択された一種以上のハロゲン元素を、1×10-5〜1×10-1g・atm/母体1モルの範囲で含有する蓄光性蛍光体である、請求項1に記載の蓄光フィルム。
0 ≦a≦ 0.8
0 ≦b≦ 0.2
0 ≦c≦ 0.2
1.5 <m≦ 3.5
0.5 ≦n≦ 1.5
1×10-5 ≦x≦ 1×10-1
1×10-5 ≦y≦ 1×10-1
【請求項3】
上記共付活剤LnがDy,Nd,Tm,Sn,In及びBiから選択された一種以上の元素である請求項2に記載の蓄光フィルム。
【請求項4】
上記熱可塑性樹脂層が黄色蛍光体を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の蓄光フィルム。
【請求項5】
白色反射層を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の蓄光フィルム。
【請求項6】
熱可塑性樹脂層の厚さが0.04〜1mmである請求項1〜5のいずれか一項に記載の蓄光フイルム。
【請求項7】
青色LEDと、該LEDにより励起可能に配置された請求項1〜6のいずれか一項に記載の蓄光フイルムとの組み合わせからなる発光装置。
【請求項8】
白色LEDと該LEDにより励起可能に配置された請求項4に記載の蓄光フイルムとの組み合わせからなる発光装置。

【公開番号】特開2010−116522(P2010−116522A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292485(P2008−292485)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】