説明

蓄光式誘導シート

【課題】床用蓄光式避難誘導材料はタイル製や強化ガラス製であったので、大変高価であった。さらに、蓄光顔料色が明所で周りとマッチングしないため商業用ビルに普及していなかった。
【解決手段】かかる課題を解決するため本発明は、一面に粘着剤が付いているハードコート付きプラスチックシートを準備する工程と、別に、一面に粘着剤と剥離シートが付いているプラスチックシートを準備する工程と、その上にインクジェット印刷にて画像を形成する工程と、スクリーン印刷にて蓄光マークを形成する工程と、2つのシートを貼り合わせる工程と、からなる蓄光式誘導シートを提供する。 これにより、安価で、人通りの多い場所の床の上に設置しても長期間使用できる。 また、インクジェットの画像とともにマークが存在するため、目立たなく周りとマッチングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄光式誘導シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地下鉄駅構内や地下街、ビル等の屋敷施設において、非常口、非常階段等の位置を示す誘導灯や避難灯などが設置されている。 これらは停電時にも点灯するようになっているが、通常20分、長くても1時間である。 また、電気配線を必要とするため、設置が困難であり、高価格でもある。 さらに、天井付近に設置してあるため、これは一見表示を発見しやすいようだが、地震や火災等の災害時には煙が発生し、人々は下を向いて這うようにして歩くため実際は見難い、等の欠点がある。
【0003】
このことから、照明点灯時には蓄光し、停電時の消灯時には発光する蓄光剤を利用し、さらに手軽にいろいろな場所の設置することができる蓄光材料を利用した避難誘導表示体がある。
東京都も数年前、地下駅舎に蓄光材料を使用した避難誘導表示体の設置義務を条例で定めた。
今は、ほとんど設置完了済みである。しかし、床用では、タイル製または強化ガラス製であり、きわめて高価格である。 さらに、施工も困難で高価格であった。 塩ビシートおよびPETシートの蓄光式誘導標識もあるが、そのプラスチック自体が表面なので耐摩耗性が悪く床用には適さなかった。
【0004】
蓄光剤を利用した避難誘導表示体が一般ビルに使用が広まっていない。 その理由として、
1)高価格である、
2)標識の図、蓄光剤の色(淡黄色)が周りとマッチングしない、
3)シートは比較的安価であるが、床用として性能が満足されない、
4)義務化されていない、等が考えられる。
【0005】
このような問題を解決するために蓄光機能を有する表示部材およびその製造方法が特許文献1に記載されている。 特許文献1には透明シートの一面側が被着層で、この接着剤層に剥離シートを重ねた粘着シートを用意する工程と、 前記粘着シートの剥離シートに画像または文字を表す所定の領域に沿って切り込みを入れる工程と、前記切り込み部分の剥離シートを剥離して接着剤を露出させ、この露出した接着層に大粒蓄光剤粒子を層状に付着させる工程と、残りの剥離シートを剥離して接着層を露出し、この接着層を介してベースシートに貼り付ける工程からなることを特徴とする蓄光剤を有する表示部材の製造方法と、その表示部材が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、透明シート上に蓄光剤を混入したインクを塗布している発明の記載がある。
【0007】
さらに、特許文献3には、凹凸のある透明シートの裏面に、蓄光インクを用いたスクリーン印刷で裏面印刷を行ってマークを作成、さらに両面テープを貼り付ける発明の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】 特開2004−45823
【特許文献2】 特開2005−213433
【特許文献3】 特開2007−322585
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の発明のような方法では、画像等を表す領域を形成するための、剥離シートを剥がした切り込み部分に蓄光剤を付着する工程において、接着層へ蓄光剤をふりかけるか、接着層への蓄光剤の押しつけ等でしか画像を表する領域が形成できない。 そのため、生産性に限界を生じる欠点がある。
【0010】
特許文献2に記載の発明のような方法では、透明シート表面にインクで印刷を行っているが、その印刷が長期に使用される条件下では、経年変化や印刷層に対する摩擦などにより生じる印刷層の剥離や破損が起こりやすく、またそれを防ぐためコロナ放電を行っているが、コストアップになってしまう欠点がある。
【0011】
さらに、特許文献3に記載の発明のような方法では、表面の凹凸樹脂が特別仕様のため高価格であると供に、通常のプラスチック層が表面であるために、キズつきやすく、そのキズに泥がたまり、汚れが発生する欠点がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記を鑑み検討した結果、低価格で、床用に使用可能で、周りとのマッチング性に優れる材料の発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)表面側に透明ハードコート層、裏面側に粘着層付き透明プラスチックシートと、表面側に、インクジェット印刷で画像形成および蓄光インキを用いたスクリーン印刷でマーク形成、裏面側に粘着剤層および剥離シートが付いた白ベースプラスチックシートを貼り合わせたこと、からなる蓄光式誘導シート、
(2)表面に透明ハードコート層、裏面側に裏面印刷技法を用いて、インクジェット印刷で画像形成、および蓄光インキを用いたスクリーン印刷でマーク形成を行った透明プラスチックシートと、表面側に粘着層、裏面側に粘着層および剥離シートが付いた白ベース両面プラスチックシートを貼り合わせたこと、からなる蓄光式誘導シート、
(3)表面に透明ハードコート層、裏面側に裏面印刷技法を用いて、インクジェット印刷で画像形成、および蓄光インキを用いたスクリーン印刷でマーク形成を行った透明プラスチックシートに、さらに、被覆する防水性白ベース粘着層の形成を行い、さらに剥離シートを付けたこと、からなる蓄光式誘導シート、
(4)上記ハードコート層が、アクリル系、シラン系樹脂またはエチレンーフルオロエチレン系樹脂である蓄光式誘導シート、
(5)上記プラスチックシートが、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、オレフィン系または塩化ビニルである蓄光式誘導シート、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、透明PETシートの表面にハードコート層を設けることにより、従来品に比べてキズ付き特性が優れ、裏面にインクジェット印刷および蓄光性スクリーン印刷を併用することにより、従来品より周りとのマッチング性に優れ、さらにハードコート付きPETシートが大量に販売されていることから価格も安く、結果的に、従来品より安価で優れた特性を有する誘導シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】 本発明の実施形態1に示すシートの断面図
【図2】 本発明の実施形態2に示すシートの断面図
【図3】 本発明の実施形態3に示すシートの断面図
【図4】 (1)明所、(2)暗所での本発明実施形態1〜3に示す視認図
【発明を実地するための形態】
【0015】
本発明の蓄光式誘導シートは、ハードコート付きプラスチックシートを使用していることと、スクリーン印刷とインクジェット印刷を併用していることと、床用粘着シートを使用していることを特徴とする。
【0016】
(ハードコート層付きPETシート)
インクジェットで印刷されたハードコート付きPETシートは駅、道路や大型ビル、等で床用シートとして大量に使用されている。 材質的にはアクリル系樹脂、シラン系樹脂、アクリルシラン系樹脂などがある。 商品としては、


などがある。
本発明では、タカハラコーポレーション製ビバシートを使用しているが、この限りではない。
このシートの材質はUV硬化型ハードコート付きPETシートである。以下の特性を有す
キズ防止性 表面の鉛筆硬度、4H
耐汚染性 ハトのフンを2カ月放置、洗浄後残りなし
耐滑り性 CSR法でドライ状態:0.913、ウェット状態:0. 416
耐薬品性 酸、アルカリ、ケトン溶剤 等に付着後、変化なし
帯電防止性 摩擦帯電圧、綿:3000V
抗菌性 JIS Z 2801に準じて大腸菌の生菌数は10以下
これらは、ハードコート層の特徴であり、プラスチック層のみでは得られない。また、紫外線(UV−A)にたいする透過率も約85%あり、蓄光材にとっても適する。
【0017】
(蓄光材料)
蓄光材料とは、太陽光や蛍光灯などの光エネルギーを吸収蓄積して、遮光後、エネルギーを徐々に放出し、発光する性質を持った材料をいう。 材質として、硫化亜鉛(ZnS:Cu)とアルミン酸ストロンチウムを主成分に希土類の賦活剤を添加焼成したタイプがある。後材料が強発光で長残光である。 粒度については、大きいほど蓄光特性は優れるが、通常、20〜100μmくらいである。発光色には黄緑発光と青緑発光の2種類あり、黄緑発光は初輝度が強く、青緑発光は残光時間が長い特徴がある。 どの製品も励起ピークは365nmの紫外線であるため、太陽光や蛍光灯などの紫外線を発する光源が必要である。
【0018】
以下に、各発明の実施の形態を説明する。 なお、本発明はこれら実施の形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。
【0019】
なお、以下の実施形態と請求項および図との関係は次の通りである。 実施形態1は、主に請求項2および図1などについて説明する。 実施形態2は、主に請求項3および図2について説明する。 実施形態3は、主に請求項4および図3について説明する。
【実施形態1】
【0020】
図1に本実施形態における構成の断面を示す。図1に示すように、1はハードコート層、2はPET層、3は粘着層を示す。 1〜3でハードコート層付きPETシートとして販売されている。 屋内・外の床に使用されており、ひと通りの多い所でもかなりの長期間使用可能である。 ハードコート層は1μm〜50μmで、好ましくは5μmから10μmである。薄すぎると削れてしまって機能を示さなくなるし、厚すぎるとひび割れをおこす。PET層の厚さは、10μm〜200μmで、好ましくは50μ〜100μである。 蓄光インキを用いたスクリーン印刷で膜厚は50〜400μm、好ましくは100〜300μmである。薄すぎると残光輝度が弱くなるし、厚すぎるとシートの凹凸が大きくなってしまう。蓄光マークとは矢印、誘導標識図もしくは文字を意味する。6〜8は通常市販されている白ベースのPETシートである。 6はPET層で、厚さは10μm〜200μm、好ましくは50μm〜100μm。 7は粘着層で床用である。 8は剥離紙でプラスチックや附箋紙でもかまわない。 図4に本実施形態1で作製したシートの明所での視認性、そして突然暗所になった時の視認性を示す。 暗所では10の白インキ部分およびインクジェット印刷で画像形成部分は黒くなり、11の蓄光インキ部分のみが光り、避難誘導の方向がわかる。
【0021】
輝度測定を具体例で示す。
透明PETシート:50μm厚、白色PETシート:50μm厚、スクリーン印刷(100メッシュ)2回塗装:下層約100μm厚、 蓄光顔料:根本特殊化学製GCC−300Cを使用、上層約100μm厚、蓄光顔料:根本特殊化学製:GLL−300Mを使用。
方法はJIS Z 9107に基づく。


【実施形態2】
【0022】
図2に本実施形態における構成の断面を示す。図2に示すように、1はハードコート層、2はPET層を示す。 1〜2で粘着剤なしで、ハードコート層付きPETシートとして販売されている。 ハードコート層は1μm〜50μmで、好ましくは5μmから10μmである。 薄すぎると削れてしまって機能を示さなくなるし、厚すぎるとひび割れをおこす。PET層の厚さは、10μm〜200μmで、好ましくは50μ〜100μである。 薄すぎると耐久性が悪くなるし、厚すぎると曲げることができず、ロールにすることができない。このシートの裏印刷する工程で、4は、蓄光インキを用いたスクリーン印刷で膜厚は50〜400μm、好ましくは100〜300μmである。 薄すぎると残光輝度が弱くなるし、厚すぎるとシートの凹凸が大きくなってしまう。蓄光マークとは矢印、誘導標識図もしくは文字を意味する。5は、通常のPET上に適するインキを用いてインクジェット印刷を行う。画像は絵、写真、ロゴ、もしくは文字でも構わない。 3および6〜8は通常市販されている白ベースのPETの両面シートである。 3は粘着層、6はPET層で、厚さは10μm〜200μm、好ましくは50μm〜100μm。 7は粘着層で床用である。 8は剥離紙でプラスチックや附箋紙でもかまわない。 図4に本実施形態2で作製したシートの明所での視認性、そして突然暗所になった時の視認性を示す。暗所では10の白インキ部分およびインクジェット印刷で画像形成部分は黒くなり、11の蓄光インキ部分のみが光り、避難誘導の方向がわかる。
【0023】
輝度測定を具体例で示す。
透明PETシート:50μm厚、白色PET両面シート:50μm厚、スクリーン印刷(100メッシュ)2回塗装:下層約100μm厚、 蓄光顔料:根本特殊化学製GCC−300Cを使用、上層約100μm厚、蓄光顔料:根本特殊化学製:GLL−300Mを使用。
方法はJIS Z 9107に基づく。


【実施形態3】
【0024】
図3に本実施形態における構成の断面を示す。図3に示すように、1はハードコート層、2はPET層を示す。 1〜2で粘着剤なしで、ハードコート層付きPETシートとして販売されている。 ハードコート層は1μm〜50μmで、好ましくは5μmから10μmである。 薄すぎると削れてしまって機能を示さなくなるし、厚すぎるとひび割れをおこす。PET層の厚さは、10μm〜200μmで、好ましくは50μ〜100μである。 薄すぎると耐久性が悪くなるし、厚すぎると曲げることができず、ロールにすることができない。このシートの裏印刷する工程で、4は、蓄光インキを用いたスクリーン印刷で膜厚は50〜400μm、好ましくは100〜300μmである。 薄すぎると残光輝度が弱くなるし、厚すぎるとシートの凹凸が大きくなってしまう。蓄光マークとは矢印、誘導標識図や文字を意味する。 5は、通常のPET上に適するインキを用いてインクジェット印刷を行う。 画像は絵、写真、ロゴ、もしくは文字を意味する。9は、白色粘着層で、4および5の工程の後、粘着剤を全面印刷する。膜厚は蓄光印刷を覆いかぶるレベルであるので300〜500μmが好ましい。 床に適する粘着性を有すると同時に床からの水分吸収を防ぐ防水性が求められる。 PETシート用でそのような特性を有する粘着剤は市販で数多くある。 図4に本実施形態3で作製したシートの明所での視認性、そして突然暗所になった時の視認性を示す。暗所では10の白インキ部分およびインクジェット印刷で画像形成部分は黒くなり、11の蓄光インキ部分のみが光り、避難誘導の方向がわかる。
【0025】
輝度測定を具体例で示す。
透明PETシート:50μm厚、スクリーン印刷(100メッシュ)2回塗装:下層約100μm厚、 蓄光顔料:根本特殊化学製GCC−300Cを使用、上層約100μm厚、蓄光顔料:根本特殊化学製:GLL−300Mを使用。
方法はJIS Z 9107に基づく。


【符号の説明】
【0026】
1 透明ハードコート層
2 透明PET層
3 透明粘着層
4 蓄光層(マーク形成)
5 インクジェット層(画像形成)
6 白ベースPET層
7 粘着層
8 剥離シート
9 白ベース粘着剤
10 白インキ
11 蓄光インキ
12 インクジェット印刷で画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側に透明ハードコート層付き透明プラスチックシートと裏面側に白色プラスチックシートを貼り合わせる工程と、
その間に、蓄光インキを用いたスクリーン印刷でマーク形成およびインクジェット印刷で画像形成を有することを特徴とする蓄光式誘導シート。
【請求項2】
表面側に透明ハードコート層、裏面側に粘着層付き透明プラスチックシートと、
表面側に、インクジェット印刷で画像形成および蓄光インキを用いたスクリーン印刷でマーク形成、裏面側に粘着剤層および剥離シートが付いた白色プラスチックシートと、
そして、2つのシートを貼り合わせた工程と、
からなる請求項1の蓄光式誘導シート。
【請求項3】
表面に透明ハードコート層、裏面側に裏面印刷技法を用いて、インクジェット印刷で画像形成、および蓄光インキを用いたスクリーン印刷でマーク形成を行った透明プラスチックシートと、
表面側に粘着層、裏面側に粘着層および剥離シートが付いた白色両面プラスチックシートと、
そして、2つのシートを貼り合わせた工程と、
からなる請求項1の蓄光式誘導シート。
【請求項4】
表面に透明ハードコート層、裏面側に裏面印刷技法を用いて、インクジェット印刷で画像形成、および蓄光インキを用いたスクリーン印刷でマーク形成を行った透明プラスチックシートに、
さらに、被覆する防水性白ベース粘着層の形成を行う工程と、
さらに剥離シートを付けた工程と、
からなる蓄光式誘導シート。
【請求項5】
透明ハードコート層が、アクリル系、シラン系樹脂またはアクリルシラン系樹脂で、表面硬度が鉛筆硬度2H以上である請求項1〜4に記載の蓄光式誘導シート。
【請求項6】
透明プラスチックシートおよび白色プラスチックシートが、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、オレフィン系樹脂または塩化ビニルである請求項1〜4に記載の蓄光式誘導シート
【請求項7】
蓄光インキに用いられる蓄光材料が、青緑発光(490nm)もしくは黄緑発光(530nm)である請求項1〜4に記載の蓄光式誘導シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−164559(P2011−164559A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43254(P2010−43254)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(510054393)
【Fターム(参考)】