説明

蓄光性水変色体

【課題】 明所においては多孔質層に水を付着させることにより様相変化を視認でき、暗所にあっては、多孔質層が永続して発光する機能を有するため、水変色性及び蓄光性の各機能の効果を有効に発現させることができ、明所と暗所で永続して使用できる蓄光性水変色体を提供する。
【解決手段】 支持体2上に、低屈折率顔料及び蓄光顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、吸液状態と非吸液状態で透明性を異にする多孔質層3を積層してなり、前記蓄光顔料は、リン酸塩と混合またはリン酸塩溶液中で接触させた後、加熱処理した蓄光顔料である蓄光性水変色体1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄光性水変色体に関する。更に詳細には、水を吸液して乾燥状態とは異なる様相に変化し、乾燥すると再び元の状態に戻ると共に、暗所で視認可能な蓄光性水変色体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、支持体上に低屈折率顔料と蓄光顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた多孔質層を設けた変色性積層体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
前記積層体は明所では多孔質層に水を付着させることにより様相変化を付与でき、暗所では蓄光顔料を含む多孔質層が発光するため、明所と暗所で共に使用可能な積層体である。
しかしながら、前記積層体は、繰り返し多孔質層に水を適用すると、暗所において多孔質層の発光低下が見られ、暗所で永続的に使用し難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−43971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、明所では多孔質層に水を付着させることにより様相変化を付与できると共に、暗所では多孔質層による発光を視認でき、明所と暗所で永続して使用できる蓄光性水変色体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、支持体上に、低屈折率顔料及び蓄光顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、吸液状態と非吸液状態で透明性を異にする多孔質層を積層してなり、前記蓄光顔料は、リン酸塩と混合またはリン酸塩溶液中で接触させた後、加熱処理した蓄光顔料である蓄光性水変色体を要件とする。
更には、前記支持体と多孔質層の間に着色顔料を含む着色層を設けてなること、前記多孔質層が像を形成してなること等を要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、明所においては多孔質層に水を付着させることにより様相変化を視認でき、暗所にあっては、多孔質層が永続して発光する機能を有するため、水変色性及び蓄光性の各機能の効果を有効に発現させることができ、明所と暗所で永続して使用できる蓄光性水変色体を提供でき、色変化の妙味、特異性、装飾性、意匠効果等の要求される各種分野に応用展開が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明蓄光性水変色体の一実施例の縦断面説明図である。
【図2】本発明蓄光性水変色体の他の実施例の縦断面説明図である。
【図3】本発明蓄光性水変色体の他の実施例の縦断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
前記支持体は、材質や形態が特に限定されるものではないが、材質として紙、合成紙、編物、織物、不織布等の布帛、植毛或いは起毛布、合成皮革、レザー、プラスチック、金属、ガラス、陶磁器、木材、石材等が挙げられる。
前記支持体として布帛を用いる場合、多孔質層は水性インキを用いて印刷することが一般的である。その際、予め調製した水性インキ中で耐水処理した蓄光顔料は発光強度が低下することなく、よって、良好な蓄光性を有する多孔質層を形成することができる。
【0009】
前記支持体上には、低屈折率顔料と蓄光顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、吸液状態と非吸液状態で透明性を異にする多孔質層を設けてなる。
前記低屈折率顔料としては、珪酸及びその塩、バライト粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、タルク、アルミナホワイト、炭酸マグネシウム等が挙げられ、これらは屈折率が1.4〜1.8の範囲にあり、液体を吸液すると良好な透明性を示すものである。
なお、前記珪酸の塩としては、珪酸アルミニウム、珪酸アルミニウムカリウム、珪酸アルミニウムナトリウム、珪酸アルミニウムカルシウム、珪酸カリウム、珪酸カルシウム、珪酸カルシウムナトリウム、珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウムカリウム等が挙げられる。
前記低屈折率顔料の粒径は特に限定されるものではないが、0.03〜10.0μmのものが好適に用いられる。
又、前記低屈折率顔料は2種以上を併用することもできる。
尚、好適に用いられる低屈折率顔料としては珪酸が挙げられる。
前記珪酸は、乾式法により製造される珪酸(以下、乾式法珪酸と称する)であってもよいが、湿式法により製造される珪酸(以下、湿式法珪酸と称する)が好適である。
この点を以下に説明する。
珪酸は非晶質の無定形珪酸として製造され、その製造方法により、四塩化ケイ素等のハロゲン化ケイ素の熱分解等の気相反応を用いる乾式法によるものと、ケイ酸ナトリウム等の酸による分解等の液相反応を用いる湿式法によるものとに大別される。
乾式法珪酸と湿式法珪酸とでは構造が異なり、前記乾式法珪酸は珪酸が密に結合した構造であるのに対して、湿式法珪酸は、珪酸が縮合して長い分子配列を形成した構造部分を有している。
従って、湿式法珪酸は乾式法珪酸と比較して分子構造が粗になるため、湿式法珪酸を適用した場合、乾式法珪酸を用いた系と比較して乾燥状態における光の乱反射性に優れ、隠蔽性が大きくなるものと推察される。
又、多孔質層は水を吸液させるものであるから、湿式法珪酸は乾式法珪酸に比べて粒子表面にシラノール基として存在する水酸基が多く、親水性の度合いが大であり、好適に用いられる。
【0010】
前記蓄光顔料は、アルカリ土類金属酸化物に希土類酸化物をドープさせてなる蓄光顔料をリン酸塩と混合またはリン酸塩溶液中で接触させた後、加熱処理した蓄光顔料である。
前記蓄光顔料は、例えば特開平7−11250号公報に開示されているSrAl、SrAl1425、或いは、CaAlにユウロピウム、ジスプロシウム、サマリウム等を賦活剤として添加したもの、特開平10−168448号公報に開示されているSr(AlB);EuDy、Sr(AlB);EuDy、或いはSr(AlB);EuDyが挙げられる。
前記蓄光顔料は、水が付着するとアルカリ土類酸化物が水と反応して水和物となり、同時にアルカリ性を示すイオンが放出され、長期間発光する機能が低下し易い。
そこで、耐水性を有する蓄光顔料として、リン酸塩と混合またはリン酸塩溶液中で接触させた後、加熱処理した蓄光顔料を用いる。
前記リン酸塩と混合またはリン酸塩溶液中で接触させた後、加熱処理した蓄光顔料は、顔料表面のアルカリ土類金属とリンが反応して表面を水に不溶化或いは難溶化して耐水性を向上させるものであって、リン酸塩としては、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム二水和物、リン酸水素アンモニウムナトリウム四水和物、ヘキサメタリン酸ナトリウム等を例示でき、カリウム塩等も使用できる。
前記蓄光顔料とリン酸塩を混合またはリン酸塩溶液中で接触させ、150℃〜300℃、好ましくは200℃〜250℃の温度で加熱して耐水性を有する蓄光顔料が得られる。
従来の耐水性を有しない蓄光顔料(未処理の蓄光顔料)は水が付着すると、発光強度が低下する傾向にあり、繰り返しの使用を満足させ難いが、前記耐水性を有する蓄光顔料の適用は、水を付着させても発光強度が低下し難く、繰り返しの使用を満足させることができる。
【0011】
前記バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、ナイロン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリルポリオール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合樹脂、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合樹脂、ブタジエン樹脂、クロロプレン樹脂、メラミン樹脂、及び前記各樹脂エマルジョン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、フェノール樹脂等のバインダー樹脂が挙げられる。
前記低屈折率顔料とバインダー樹脂の混合比率は、低屈折率顔料の種類及び性状に左右されるが、好ましくは、低屈折率顔料1重量部に対してバインダー樹脂固形分0.5〜2重量部であり、より好ましくは、0.8〜1.5重量部である。低屈折率顔料1重量部に対してバインダー樹脂固形分が0.5重量部未満の場合には、形成される多孔質層の実用的な皮膜強度を得ることが困難であり、2重量部を越える場合には、前記多孔質層内部への水の浸透性が悪くなる。
前記多孔質層は、一般的な塗膜と比較して着色剤に対するバインダー樹脂の混合比率が小さいため、十分な皮膜強度が得られ難い。そこで、前記のバインダー樹脂のうち、ナイロン樹脂又はウレタン系樹脂を用いて耐擦過強度を高めることが好ましい。
前記ウレタン系樹脂としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂等があり、2種以上を併用することもできる。又、前記樹脂が水に乳化分散したウレタン系エマルジョン樹脂や、イオン性を有するウレタン樹脂(ウレタンアイオノマー)自体のイオン基により乳化剤を必要とすることなく自己乳化して、水中に溶解乃至分散したコロイド分散型(アイオノマー型)ウレタン樹脂を用いることもできる。
尚、前記ウレタン系樹脂は水性ウレタン系樹脂又は油性ウレタン系樹脂のいずれを用いることもできるが、水性ウレタン系樹脂、殊に、ウレタン系エマルジョン樹脂やコロイド分散型ウレタン系樹脂が好適に用いられる。
前記ウレタン系樹脂は単独で用いることもできるが、支持体の種類や皮膜に必要とされる性能に応じて、他のバインダー樹脂を併用することもできる。ウレタン系樹脂以外のバインダー樹脂を併用する場合、実用的な皮膜強度を得るためには、前記多孔質層のバインダー樹脂中にウレタン系樹脂を固形分比率で30重量%以上含有させることが好ましい。
前記バインダー樹脂において、架橋性のものは任意の架橋剤を添加して架橋させることにより、さらに皮膜強度を向上させることができる。
前記バインダー樹脂には、水との親和性に大小が存在するが、これらを組み合わせることにより、多孔質層中への浸透時間、浸透度合い、浸透後の乾燥の遅速を調整することができる。更には、適宜分散剤を添加して前記調整をコントロールすることができる。
前記多孔質層中には着色剤を含有させることもできる。
前記多孔質層が像(多孔質像)であることにより、暗所で使用する際、多孔質像を視認できるため、装飾性に優れる。
【0012】
前記多孔質層は、公知の手段、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等により形成できる。
なお、前記支持体と多孔質層の間に着色層を設けることもできる。
【実施例】
【0013】
以下に実施例を示す。実施例中の部は質量部である。
実施例1(図1参照)
支持体2として赤色の合成紙上に、湿式法微粒子シリカ〔商品名:ニップシールE−220、日本シリカ工業(株)製〕15部、発光色が黄緑色の蓄光顔料(平均粒子径:2〜60μm、発光最大波長520nm、)10部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランAP−10、大日本インキ化学工業(株)製、固形分30%〕45部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面ベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層3を形成し、蓄光性水変色体1を得た。
なお、前記蓄光顔料は、SrAl:Eu,Dyにリン酸塩(リン酸水素二アンモニウム)を添加、混合し、予め200℃に加温した乾燥機中で加熱する。次いで、乾燥機から取り出して放冷し、純水で不純物を除去、乾燥させて得られる。
【0014】
前記蓄光性水変色体は、明所において乾燥状態(非吸水状態)では白色の多孔質層が視認され、水を含浸させた筆を用いて水を付着させると吸液により多孔質層が透明化して支持体による赤色の像が視認され、乾燥により再び元の白色の多孔質層が視認される。前記様相変化は繰り返し行なうことができた。
また、前記蓄光性水変色体は多孔質層が黄緑色に発光するため、暗色でも使用することができた。
更に、前記蓄光性水変色体を25℃の水中に24時間浸漬させても、発光強度を損なうことなく、変色機能を維持していた。
【0015】
実施例2(図2参照)
支持体2として白色の合成紙上に、青色顔料2部、アクリル酸エステル樹脂エマルジョン(固形分:50%)100部、シリコーン系消泡剤0.5部、増粘剤5部、レベリング剤1.0部、架橋剤2.0部を均一に分散した青色インキを用いてベタ印刷し、70℃で30分間乾燥硬化させることにより着色層4を形成した。
前記着色層上に、湿式法微粒子シリカ〔商品名:ニップシールE−220、日本シリカ工業(株)製〕15部、発光色が黄緑色の蓄光性顔料(平均粒子径:2〜40μm、発光最大波長520nm)12部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランAP−10、大日本インキ化学工業(株)製、固形分30%〕45部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面ベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層3を形成し、蓄光性水変色体1を得た。
なお、前記蓄光顔料は、SrAl:Eu,Dyにリン酸塩(リン酸水素二アンモニウム)を添加、混合し、予め200℃に加温した乾燥機中で加熱する。次いで、乾燥機から取り出して放冷し、純水で不純物を除去、乾燥させて得られる。
【0016】
前記蓄光性水変色体は、明所において乾燥状態(非吸水状態)では白色の多孔質層が視認され、水を含浸させた筆を用いて水を付着させると吸液により多孔質層が透明化して着色層による青色の像が視認され、乾燥により再び元の白色の多孔質層が視認される。前記様相変化は繰り返し行なうことができた。
また、前記蓄光性水変色体は多孔質層が発光するため、暗色でも使用することができた。
更に、前記蓄光性水変色体を25℃の水中に24時間浸漬させても、発光強度を損なうことなく、変色機能を維持していた。
【0017】
実施例3(図3参照)
支持体2として白色のテトロン/コットンブロード生地(65/35、目付量:100g/m)上に、ピンク色蛍光顔料10部、アクリル酸エステル樹脂エマルジョン(固形分:45%)100部、シリコーン系消泡剤0.5部、増粘剤5部、レベリング剤1.0部、エポキシ系架橋剤5.0部を均一に分散したピンク色インキを用いてベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて着色層4を形成した。
前記着色層上に、湿式法微粒子シリカ〔商品名:ニップシールE−220、日本シリカ工業(株)製〕15部、発光色が黄緑色の蓄光性顔料(平均粒子径:2〜40μm、発光最大波長520nm)12部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランAP−10、大日本インキ化学工業(株)製、固形分30%〕45部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて星柄を印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質像31を形成し、蓄光性水変色体1を得た。
なお、前記蓄光顔料は、SrAl:Eu,Dyにリン酸塩(リン酸水素二アンモニウム)を添加、混合し、予め200℃に加温した乾燥機中で加熱する。次いで、乾燥機から取り出して放冷し、純水で不純物を除去、乾燥させて得られる。
【0018】
前記蓄光性水変色体は、明所において乾燥状態(非吸水状態)ではピンク色の生地上に白色の星柄からなる多孔質像が視認される。
多孔質像に水を付着させると吸液により多孔質像が透明化して像は消失し、全面がピンク色の変色体が視認されるが、乾燥すること再び多孔質像が視認される。前記様相変化は繰り返し行なうことができた。
また、前記蓄光性水変色体は多孔質像が発光するため、暗所では星柄の多孔質像が発光して視認される。
更に、前記蓄光性水変色体を25℃の水中に24時間浸漬させても、発光強度を損なうことなく、変色機能を維持していた。
【0019】
実施例4
支持体+多孔質層
支持体としてピンク色のテトロン/コットンブロード生地(65/35、目付量:100g/m)上に、湿式法微粒子シリカ〔商品名:ニップシールE−220、日本シリカ工業(株)製〕15部、発光色が黄緑色の蓄光性顔料(平均粒子径:2〜40μm、発光最大波長520nm)12部、青色顔料1部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランAP−10、大日本インキ化学工業(株)製、固形分30%〕45部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面ベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層を形成し、蓄光性水変色体を得た。
なお、前記蓄光顔料は、SrAl:Eu,Dyにリン酸塩(リン酸水素二アンモニウム)を添加、混合し、予め200℃に加温した乾燥機中で加熱する。次いで、乾燥機から取り出して放冷し、純水で不純物を除去、乾燥させて得られる。
【0020】
前記蓄光性水変色体は、明所において乾燥状態(非吸水状態)では淡青色の多孔質層が視認され、水を含浸させた筆を用いて水を付着させると吸液により多孔質層が透明化して着色層によるピンク色と多孔質層の青色が混色にとなった紫色が視認され、乾燥により再び元の淡青色の多孔質層が視認される。前記様相変化は繰り返し行なうことができた。
また、前記蓄光性水変色体は多孔質層が発光するため、暗色でも使用することができた。
更に、前記蓄光性水変色体を25℃の水中に24時間浸漬させても、発光強度を損なうことなく、変色機能を維持していた。
【0021】
実施例5
支持体として白色のポリエステルサテン生地(目付量:120g/m)上に、ピンク色蛍光顔料10部、アクリル酸エステル樹脂エマルジョン(固形分:45%)100部、シリコーン系消泡剤0.5部、増粘剤5部、レベリング剤1.0部、エポキシ系架橋剤5.0部を均一に分散したピンク色インキを用いてベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて着色層を形成した。
前記着色層上に、湿式法微粒子シリカ〔商品名:ニップシールE−220、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランAP−10、大日本インキ化学工業(株)製、固形分30%〕45部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、180メッシュのスクリーン版にて全面ベタを印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層(蓄光顔料を含有しない多孔質層)を形成した。
前記多孔質層上に、湿式法微粒子シリカ〔商品名:ニップシールE−220、日本シリカ工業(株)製〕15部、発光色が黄緑色の蓄光性顔料(平均粒子径:2〜40μm、発光最大波長520nm)12部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランAP−10、大日本インキ化学工業(株)製、固形分30%〕45部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて星柄を印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質像を形成し、蓄光性水変色体を得た。
なお、前記蓄光顔料は、SrAl:Eu,Dyにリン酸塩(リン酸水素二アンモニウム)を添加、混合し、予め200℃に加温した乾燥機中で加熱する。次いで、乾燥機から取り出して放冷し、純水で不純物を除去、乾燥させて得られる。
【0022】
前記蓄光性水変色体は、明所において乾燥状態(非吸水状態)では白色の多孔質層が視認され、水を含浸させた筆を用いて水を付着させると吸液により多孔質層が透明化して着色層によるピンク色の像が視認され、乾燥により再び元の白色の多孔質層が視認される。前記様相変化は繰り返し行なうことができた。
また、前記蓄光性水変色体を暗所に多孔質層が発光するため、暗色でも使用することができた。
また、前記蓄光性水変色体は多孔質像が発光するため、暗所では星柄の多孔質像が発光して視認される。
更に、前記蓄光性水変色体を25℃の水中に24時間浸漬させても、発光強度を損なうことなく、変色機能を維持していた。
【0023】
比較例1
支持体として赤色の合成紙上に、湿式法微粒子シリカ〔商品名:ニップシールE−220、日本シリカ工業(株)製〕15部、発光色が黄緑色の蓄光顔料(SrAl:Eu,Dy、平均粒子径:2〜60μm、発光最大波長520nm、)10部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランAP−10、大日本インキ化学工業(株)製、固形分30%〕45部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面ベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層を形成し、蓄光性水変色体を得た。
【0024】
前記蓄光性水変色体は、明所において乾燥状態(非吸水状態)では白色の多孔質層が視認され、水を含浸させた筆を用いて水を付着させると吸液により多孔質層が透明化して支持体による赤色の像が視認され、乾燥により再び元の白色の多孔質層が視認される。前記様相変化は繰り返し行なうことができた。
前記蓄光性水変色体は暗色で発光するものの、繰り返し水を付着させると蓄光顔料の発光強度が低下して暗色で発光し難くなり、実用性を満足させることができなかった。
【0025】
比較例2
支持体として白色の合成紙上に、青色顔料2部、アクリル酸エステル樹脂エマルジョン(固形分:50%)100部、シリコーン系消泡剤0.5部、増粘剤5部、レベリング剤1.0部、架橋剤2.0部を均一に分散した青色インキを用いてベタ印刷し、70℃で30分間乾燥硬化させることにより着色層を形成した。
前記着色層上に、湿式法微粒子シリカ〔商品名:ニップシールE−220、日本シリカ工業(株)製〕15部、発光色が黄緑色の蓄光性顔料(SrAl:Eu,Dy、平均粒子径:2〜40μm、発光最大波長520nm)12部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランAP−10、大日本インキ化学工業(株)製、固形分30%〕45部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面ベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層を形成し、蓄光性水変色体を得た。
【0026】
前記蓄光性水変色体は、明所において乾燥状態(非吸水状態)では白色の多孔質層が視認され、水を含浸させた筆を用いて水を付着させると吸液により多孔質層が透明化して着色層による青色の像が視認され、乾燥により再び元の白色の多孔質層が視認される。前記様相変化は繰り返し行なうことができた。
前記蓄光性水変色体は暗色で発光するものの、繰り返し水を付着させると蓄光顔料の発光強度が低下して暗色で発光し難くなり、実用性を満足させることができなかった。
【符号の説明】
【0027】
1 蓄光性水変色体
2 支持体
3 多孔質層
31 多孔質像
4 着色層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、低屈折率顔料及び蓄光顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、吸液状態と非吸液状態で透明性を異にする多孔質層を積層してなり、前記蓄光顔料は、リン酸塩と混合またはリン酸塩溶液中で接触させた後、加熱処理した蓄光顔料である蓄光性水変色体。
【請求項2】
前記支持体と多孔質層の間に着色顔料を含む着色層を設けてなる請求項1記載の蓄光性水変色体。
【請求項3】
前記多孔質層が像を形成してなる請求項1又は2記載の蓄光性水変色体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−56096(P2012−56096A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198516(P2010−198516)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】