説明

蓄光材

【課題】可視光下で白色に見え、しかも暗闇で白色発光する蓄光材を提供する。
【解決手段】可視光下での外観色が白色で且つ暗闇での発光色が青紫色の蓄光材と、可視光下での外観色が白色で且つ暗闇での発光色が黄緑色の蓄光材とを混合することにより、可視光下での外観色が白色で且つ暗闇での発光色が白色である蓄光材を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄光材に関し、特に可視光下で白色に見え、しかも暗闇で白色発光する蓄光材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
白色発光を得るためには、光の三原色、即ち緑、青、赤の各発光色の混合が必要である。これに対し、色の三原色、即ち赤、黄、青を混合すると、黒色となる。つまり白色の発光を得ることと可視光下で白色に見えることとは、全く異なる原理原則に基ずくことであることが知られている。
【0003】
蓄光材によって暗闇で白色発光させるためには、光の三原色の混合原理に従って、緑色発光、青色発光、赤色発光に近似する発光色を有する蓄光材を混合することが考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、現存する赤色発光する蓄光材は、材料の色が可視光下で肌色であり、これを現存する緑色および青色に近似する発光色を有する蓄光材と混合すると、可視光下での外観が白色とはならず、くすんだ肌色となる。可視光下での外観を白色により近づけようとするには、発光性のない白色顔料を混合しなければならなくなるので、暗闇での発光性能を著しく低下させてしまう。また、赤色発光する蓄光材は硫化物系であり、化学的に不安定なために経時変色する上、水と接触すると、人体及び環境に悪影響を及ばす硫化水素を発生するという不都合がある。
【0005】
さらに、現在入手可能な赤色発光(発光ピーク波長が650nm)の蓄光材は、常用光源D65を用いて1000lxの照度で5分間照射し、10分経過後の残光輝度が約1.2mcd/mであり、60分後には測定不可となるなど、他の蓄光材と比して残光特性が極端に劣るという不都合もある。
【0006】
本発明は、このような従来技術の不都合を解消すべく案出されたものであり、その主な目的は、可視光下で外観色が白色を呈し、しかも太陽光や蛍光灯の光を照射した後に暗闇で長時間に渡って白色発光する高性能な蓄光材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために本発明者は鋭意研究の結果、赤色発光する高性能な蓄光材は得られないが、青色発光と赤色発光とを混合すると紫色発光となり、これに緑色発光を混合すれば白色発光が得られることに着目した。そして可視光下での外観色が白色で且つ暗闇での発光色が青紫の蓄光材、並びに可視光下での外観色が白色で且つ暗闇での発光色が黄緑色の蓄光材が現存するので、これらを混合することにより、可視光下での外観色が白色で且つ暗闇での発光色が白色の蓄光材を得た。
【発明の効果】
【0008】
このような本発明によれば、可視光下では白色に見えるので、そのまま白色顔料として壁面あるいは天井面の照明灯の反射面などに塗布して利用することができ、しかも暗闇では白色発光するので、高い視認性並びに適応性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0010】
混合する蓄光素材として、根本特殊化学(株)製蓄光顔料のN夜光から、ディスプロシウム、ユーロピウムで賦活したアルミン酸ストロンチウム(素材1:SW−300シリーズ)と、同じく根本特殊化学(株)製蓄光顔料のN夜光から、ネオジム、ユーロピウムで賦活したアルミン酸ストロンチウム(素材2:V−300シリーズ)を選択し、これらを混合するものとした。
【0011】
素材1.SW−300シリーズ(SW−300M、SW−300C)
可視光下での外観:白色粉体
化学名:ディスプロシウム、ユーロピウムで賦活したアルミン酸ストロンチウム
化学式:SrAl:Eu,Dy
粒度分布:平均粒径 2〜40μm
発光色:黄緑色(発光ピーク波長:520nm)
励起波長:200〜450nm
残光輝度1:常用光源D65を用い、照度200lxで4分間照射、5分経過後に約250mcd/m
残光輝度2:常用光源D65を用い、照度1000lxで5分間照射、10分経過後に約30mcd/m
【0012】
素材2.V−300シリーズ(V−300M、V−300C)
可視光下での外観:白色粉体
化学名:ネオジム、ユーロピウムで賦活したアルミン酸ストロンチウム
化学式:CaAl:Eu,Nd
粒度分布:平均粒径 20〜60μm
発光色:青紫色(発光ピーク波長:440nm)
励起波長:200〜410nm
残光輝度1:常用光源D65を用い、照度200lxで4分間照射、5分経過後に約35mcd/m
残光輝度2:常用光源D65を用い、照度1000lxで5分間照射、10分経過後に約20mcd/m
【0013】
これらの素材1(SW−300)並びに素材2(V−300)は、共に可視光下での外観色は白色であり、両者を混合しても可視光下での外観色は白色を呈する。従って、これらを顔料として透明な樹脂メディウムに混練すると、白色塗料が得られる。そしてこれらの重量比1:1の混合物から暗闇での白色発光を得るためには、素材1、2に共にピーク波長で発光させることができる波長の光源を照射することが好ましい。それには、380nm以下の波長の紫外線を多く含む光ほど好ましく、例えば、太陽光、ブラックライト蛍光灯、ブラックライトLED等が適している。
【0014】
しかし一般の家庭や事務所で用いられる可視光人工光源は400nm以上の波長が大半であって、紫外線領域の波長が少ないので、特に素材2の励起が劣り気味となり、そのピーク波長が低下する傾向がある。そしてこの場合、暗闇での発光色は、黄緑色が強くなる。
【0015】
その場合は、両者の混合比として、素材1(SW−300)を相対的に減少させ、素材2(V−300)を相対的に増加させることで白色発光に近づけることができる。このような観点から混合範囲を研究の結果、素材1の重量%を30とした時は、素材2の重量%を70とするなど、適宜に調整することで白発光を得られることが分かった。因みに、一般的な昼白色の蛍光灯の環境下では、素材1の重量%を40とし、素材2の重量%を60とする混合比が適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光下での外観色が白色で且つ暗闇での発光色が青紫色の蓄光材と、可視光下での外観色が白色で且つ暗闇での発光色が黄緑色の蓄光材とを混合してなり、可視光下での外観色が白色で且つ暗闇での発光色が白色であることを特徴とする蓄光材。

【公開番号】特開2008−101146(P2008−101146A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285719(P2006−285719)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(595083143)
【Fターム(参考)】