説明

蓄光板と透明カラー蛍光板を積層したカラー発光体

【課題】長時間視認することができ、多彩な色の表現が可能な標識・表示板・警告板などの表示パネルを提供する。
【解決手段】蓄光剤1を使用したプレート6と透明カラー蛍光プレート3を重ね合わせ、蓄光剤に対向する面に反射層2を設けた表示パネルであって、昼間においては自然光、照明光によりおもて側に設けられた透明カラー蛍光板の内部で励起されたそれぞれの蛍光発色により反射層として設けた文字・図柄等が染色され輝度、彩度を増加し或いは混色しよりはっきり視認でき、暗闇においては、昼間、透明カラー蛍光プレートを透過した自然光、照明光により励起され発光した残光を受光して透明カラー蛍光板の内部で励起されたそれぞれの蛍光発色により、すなわち赤色、オレンジ色等に反射層として設けた文字・図柄等が染色或いは混色されて長時間視認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、近年開発された夜間無電力で高輝度・長残光に発光するアルカリ土類金属のアルミン酸塩蓄光剤を塗布した蓄光板(図1、図2、図3符号6)とレッド、オレンジ、グリーン等の透明カラー蛍光板(図1、図2、図3符号3)を重ね合わせ、蓄光板に対向する蛍光板面に文字、図柄、ピクトグラム等で反射層をなす出射層(図1、図2、図3符号2)を設けた積層表示パネルであって昼夜カラー発光を行うカラー発光体の発明に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開平1−225986号公報
【特許文献2】特開平9−288462号公報
【特許文献3】特開2001−3046公報
【特許文献4】WO98/57316公報
【0003】
特許文献1によれば、明るい太陽光や薄暗い保安灯の下でも被表示文字や記号が目立ち、しかも構造が簡単な蛍光表示板の提供を目的とし、有機蛍光色素が混入された透明な樹脂からなる板を表示パネルとし、断面が30乃至70度のV字状をなしたV字溝を表示パネルの裏面に設け、V字溝で被表示文字や記号を形成し表示板を構成する。明るい太陽光や薄暗い保安灯の下でも被表示文字や記号が目立ちまた蛍光表示板の他の実施例に示す如く、
表示パネルの裏面に設けられ被表示文字や記号を形成するV字溝6部分に、表示パネルと異なる有機蛍光色素の混入された透明な樹脂からなる発色層が、V字溝を形成する際に注入成形する等の方法で形成されており、被表示文字や記号の色を背景色と変えることによって表示を鮮明にしたり、或いは同一蛍光表示板に形成される被表示文字や記号の多色化を可能にしている。
【0004】
特許文献3によれば請求項6と段落0010に蓄光性塗料との組み合わせの記述がある。
段落0018に蛍光集光板に対向する面に蓄光性塗料を塗布した蓄光反射板からは透明樹脂平板内の蛍光物質において生じた光の反射光とともに、透明樹脂平板内の蛍光物質において生じた光を受けて蓄光性反射板に蓄光された光が、蓄光反射板の全面方向に照射され、表示部から照射される光量を増加させる構造、効果に関するものであり、昼間における効果の記述である。
【0005】
特許文献3によれば実施例の誘導方向矢印板は、夜間において外側の蓄光板が周囲を青又は緑板に発光し、その内側中央の集光性蛍光板が赤、黄、オレンジ又はむらさきの色で矢印枠状に発光し、2色で夜間の緊急脱出等の誘導方向を発光で鮮やかに表示するものである。構造はプレートの縁から励起した散乱光を取り出し発色を視認する構造である。
【0006】
特許文献4によれば色調が制御された、少なくとも無機質材もしくは樹脂とを構成成分として含有する基材に、蓄光剤とともに蛍光材とが打ち込み又は嵌込みされて、平常時の色調と、蓄光剤による発光色と紫外線照射にともなう蛍光剤による発光色との3色相に変調が可能とされている内外設材を提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年開発されたアルカリ土類金属のアルミン酸塩蓄光剤は従来の硫化系蓄光剤に比べて耐候性、耐水性、耐熱性に優れ、高輝度・長残光・高耐候性と云う高機能を有する。しかるに蓄光剤の励起色がグリーン、ブルー、紫、ブルーグリーン等寒色系に限られていたため、表示板、サイン、表示パネル等の用途を考えた場合暗闇での発光視認は単調なものであった。また昼間にあっては乳白色であり、人間に刺激的な赤、オレンジ、イエローの発色を得ることが難しく混色などの組み合わせもできず、多彩な色の表現は不可能であった。
【0008】
特許文献1では 蛍光プレートに設けたV字溝からなる被表示物は太陽光、照明光により励起された発光蛍光による輝度、彩度向上が計られているが、効果の及ぶ範囲は薄暗い保安灯までであり、蓄光剤励起による暗闇での構成、効果の記述が無い。
【0009】
特許文献2では暗闇での効果である蓄光剤の発光による蛍光剤の励起・集光とその結果生じた濃密化された散乱光による反射板表示部が染色と混色をするという構造、効果の記述が無い。
【0010】
特許文献3では縁部での発色であり被表示部として設けた反射板の着色視認ではなく構造・効果が違う。
【0011】
特許文献4では蛍光プレートによる導光作用と濃縮、被表示部として設けた反射板による照射の構造、効果の記述が無い。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決するため、請求項1に於いては、昼間においては自然光、照明光、蓄光剤発光により、おもて側に設けられた透明カラー蛍光板(図1、図2、図3符号3)の内部で励起されたそれぞれのカラー蛍光が全反射を繰り返し端面出射面へ導かれ、一部端面出射面に於いて反射され、透明カラー蛍光板内部で濃縮濃密化され、出射層(図1、図2、図3符号2)としてペイント、ビニールテープ、紙の粘着により設けた文字、図柄、ピクトグラム等を染色し、輝度、彩度を増加ないし混色しおもて面よりはっきり視認でき、
【0013】
暗闇においては、昼間、透明カラー蛍光プレートを透過した自然光、照明光により励起された蓄光剤(図1、図2、図3符号1)が発光し、蓄光発光を受光してカラー透明蛍光板の内部で励起されたそれぞれのカラー蛍光発色により、出射層として設けた反射層をなす文字、図柄、ピクトグラム等が昼間に於けると同様のメカニズムにより染色ないし混色され、おもて面より鮮やかに色を視覚により認識でき、
【0014】
請求項2に於いては請求項1に端面反射層(図1、図2、図3符号4)を設け請求項1と同じメカニズムにより、輝度、彩度を増加ないし混色し昼間に於いては出射層がおもて面よりはっきり視認でき、
【0015】
請求項3に於いては請求項1、請求項2の出射層を彫刻により凹面となし、出射層にペイント塗布、ないしはビニールテープ、紙を粘着し出射層となし、その外縁部は段差による出射により鮮やかに染色され、おもて面より鮮やかにカラー発色を昼夜にわたり4時間を越える長時間視覚により認識できる構造を有するものでありカラー発光標識、表示板、警告板、サイン等として活用することができるカラー発光積層パネルの発明に関する。
【0016】
ここでその蓄光剤残光スペクトルはグリーン発光に於いては概略480nm〜610nm、ブルーグリーン発光に於いては450nm〜590nmであり、透明カラー蛍光板の励起光領域と450nm〜550nm近辺でクロスしている。
【0017】
またアルカリ土類金属のアルミン酸塩蓄光剤とは化学式MAl2 O4で表わされる化合物で、Mは、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)、イットリウム(Y)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)等があり、これらの中から選ばれた一種以上の元素が用いられている。
【0018】
また、蓄光性蛍光体の付活剤を構成する金属元素としては、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)等があり、これらの中から選ばれた一種以上の元素が用いらている。
【0019】
また次の化学式で表される蓄光性蛍光体Sr4Al14O25:Eu,Dyを使用する事もできる。
【0020】
ここで蓄光剤スラリーを塗布した板の代わりに蓄光剤を含有する蓄光シート、蓄光樹脂、蓄光紙、蓄光人造大理石、蓄光タイル、蓄光磁器、蓄光布等を使用できる。
また透明カラー蛍光板としては透明度(全光線透過率50パーセント以上が望ましい)が高く導光作用の高いアクリル系の蛍光板、集光板を使用することが望ましいが、透明度のやや落ちるポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、塩化ビニール、シリコン等の樹脂の使用も可能である。
【発明の効果】
【0021】
本願発明にあたり各種の組み合わせによる試験、測定を行った。試験材料と測定結果を以下に記す。
材料
1.透明ピンク蛍光プレート メーカー 住友化学 型番451 サイズ160×60×3ミリ 全光線透過率85%
2.透明オレンジ蛍光プレート メーカー カナセ工業 型番9089L サイズ160×60×3ミリ 全光線透過率78.7%
3.蓄光材サイズ 56×156×2ミリ ネモト・ルミマテリアル社製G−300L160
グリーン発光 ピーク粒子径150ミクロン
56×156×2ミリ イージーブライト社製EZCAB150
ブルーグリーン発光 ピーク粒子径150ミクロン
【0022】
上記1と3或いは2と3の組み合わせにより図1、図2、図3のごとく積層のパネルを作成し、反射層として、ラッカー塗料の白、黄色、赤を塗布、或いはビニールテープ白、赤、黄色を貼り付け分光光度計により色度を測定した。
【0023】
XYZ表色系色度座標は
1.の資料で発光直後鮮やかなピンク色 x 0.395 y 0.2448 を得た。 構成 反射層エナメルラッカー白、 塗りサイズ8×28ミリ。
2.の資料で発光直後鮮やかなオレンジ色 x 0.4174 y0.4423を得た。構成 反射層エナメルラッカー白、 塗りサイズ8×28ミリ。
2.の資料で発光直後鮮やかなイエロー色 x 0.4256 y 0.4727 を得た。構成 反射層エナメルラッカーイエロー、塗りサイズ8×28ミリ。
【0023】
また、カラー発色は暗箱中で約4時間という硫化系蓄光剤に比して大幅に長時間の発色を視認することができた。
【0024】
また、カラー発色はグリーン系、ブルーグリーン系ともにほぼ同じ励起色が測定でき、出射面以外の蓄光剤発光部分はカラー透明板のフィルター効果により、グリーン発光ではイエローグリーンに見え、ブルーグリーン系では紫の強い色として視認できた。
【0025】
ここで 被標示物となる反射層としては測定機の関係でやや幅広となり8×28ミリとした。反射層としては遮光性の高い塗料、エナメルラッカー白色、イエロー色、レッド色を用いた。ここで反射層にビニールテープ、絵の具等を密着或いは塗装することもできる。この場合、蓄光プレートの発光透過により彩度は落ち、輝度が上がるという相関関係にある。或いは蓄光剤発光色の影響を大きく受けて混色現象を起こす。
また透明蛍光プレートの外縁部にはエナメルラッカー白を塗布して反射層を設けた。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例1】
【0026】
図3に示すようにピーク粒子径150ミクロンの蓄光顔料とアクリルラッカーを体積比約1対3に混練してなしたスラリーを塗布した蓄光プレート符号1に透明カラー蛍光プレート符号3を積層し蓄光プレートに対向する面に反射層符号5として彫刻溝により文字、図柄、ピクトグラム等を設けペイントにより着色する。
【0027】
昼間に於いては、自然光、照明光、蓄光剤発光により透明カラー蛍光板中の蛍光剤が励起されその散乱光は全反射を繰り返し板端面へ導かれ反射層により全反射され透明カラー蛍光プレート中の全発光が集光・濃密化され、蓄光剤に対向する面に設けられた反射面を染色し出射する。文字、図柄、ピクトグラム等を染色して透明カラー蛍光プレート上面より鮮やかにカラーを視覚により認識できるカラー発光標識となる。
【0028】
夜間に於いては、昼間の自然光、照明光を受けて励起した蓄光剤発光により透明カラー蛍光板中の蛍光剤が励起され昼間時と同じメカニズムにより出射する。夜間に於いては文字、図柄面、ピクトグラム等を染色しない蓄光剤発光は透明カラー蛍光プレートがスペクトルフィルターの役割を果たすので、蓄光剤発光色との混色として、上面より視覚により認識され文字部とのコントラストが演出される。
【0029】
蓄光剤発光部符号1の残光輝度は蛍光剤を励起するに十分な残光輝度を長時間保持しなければならない。一般に蓄光剤顔料は粒度が大きい方が輝度、残光時間も長いと云われており市販の蓄光剤の内ピーク粒度150ミクロンのものを選択した。この蓄光剤顔料粉末とアクリルラッカーを体積比約1対3に混練してスラリーとなし塗布・乾燥して蓄光板とした。
【0030】
また輝度は蓄光層が厚い方が高いと言われており本願発明では蓄光剤層厚み2ミリを確保出来るよう縦56×横156×深さ2ミリの凹面を作成しスラリーを流しこんだ。スラリーは表面張力により、凹溝より僅かに盛り上がるよう塗布すると乾燥後の厚さが均一になり発光面も均一になる。公設機関による輝度測定ではイージーブライト社製BZCAB150は発光1分後950ミリカンデラ、60分後70ミリカンデラ、120分後30ミリカンデラ、180分後20ミリカンデラ、300分後12.2ミリカンデラ、420分後8.2ミリカンデラ、600分後5.4ミリカンデラであった。
ネモト・ルミマテリアル社製G−300L160は添付検査成績書測定結果によると10分後466mcd/m、20分後255mcd/m、60分後75mcd/mの残光輝度が記載されており、目視による4時間後、10時間後のBZCAB150との残光輝度比較に関して、彩度の違いが多少観察されるが、大きな差違は観察されなかった。
【0031】
また透明カラー蛍光プレートは大きい物の方が発色が鮮やかであると言われており、本願発明にあたり226×111×深さ2ミリの蓄光板を製作し透明カラー蛍光プレートを請求項3に基づいて積層したカラー発光体を製作し目視による比較を行ったが明らかな彩度向上が見られた。
【0032】
ここで蓄光剤顔料とクリアーラッカーの混合比はクリアーラッカー比が少ないと延びの良い良好なスラリーを得られず、細部へ行きわたらない、良好な平面が得られないと言う不具合がある。
混合比が大きいと蓄光剤の大きな比重約3.6のため乾燥固化する前に沈殿・分離を起こしてしまい、また乾燥までの時間も増え、施工上の手間が増える。
【0033】
透明カラー蛍光プレートとして
1.透明ピンク蛍光プレート メーカー 住友化学 型番451 サイズ160×60×3ミリ 全光線透過率85%
2.透明オレンジ蛍光プレート メーカー カナセ工業 型番9089L サイズ160×60×3ミリ 全光線透過率78.7%
3.透明グリーン蛍光プレート メーカー 三菱レイヨン 型番993 サイズ160×60×3ミリ 全光線透過率92%
を使用して実験を行った。
【0034】
披標示物となる反射層は幅15ミリを限度として設定した。これ以上大きい面積では、散乱光が十分行き渡らず中心部の明るさ、彩度が落ちてしまうためである。
蛍光板の厚さは3ミリより大きくするとこの様な不具合は解消されて行くが、透過率が落ち、蓄光が妨げられ、コストが上昇する。
【実施例2】
【0035】
実施例1の透明カラー蛍光プレートに設ける被表示部を凹面を設けず白のペイントで印刷或いは塗装したもの。透明カラー蛍光プレートの四隅には反射層を設けない。
【実施例3】
【0036】
実施例2の透明カラー蛍光プレートに設ける被表示部をレッド色、イエロー或いは混色しピンク、薄いイエロー、としたもの。
【実施例4】
【0037】
実施例1の透明カラー蛍光プレートに設ける被表示部をレッド色、イエロー或いは白色のビニールテープ、或いはそれらの各色の紙テープを密着させて設けたもの。
【産業上の利用可能性】
【0038】
倉庫、イベント会場、駐車場での消灯時の利用者方向指示などの便益、補助。
【0039】
「節電販売中」災害時この販売機内の飲料は無料開放されます」などの緊急時用表示。
【0040】
風力発電用羽根の先端に取り付け、自然界での回転物の航路軌跡の表示を行い、動物、鳥の衝突を防止するなどして機械の損傷や稼働効率を上げる。
【0041】
プラント類の目で見て直ぐ分かる配管分別に。配線工事の場合の工具添付により、天井裏での作業が容易になる。農機具、納屋内での早朝夜明前の準備作業補助になどの産業状の利用が見込める。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】被表示部にペイント塗装を施したカラー発光板断面図
【図2】図1のカラー発光板の周囲4隅の出射面をエナメルラッカー白の反射層で覆ったカラー発光板断面図
【図3】被表示部に彫刻を施し凹溝としてカラーペイント塗布、或いはカラービニールテープ、紙等を粘着して出射面としたカラー発光板断面図
【符号の説明】
【0043】
1.蓄光剤
2.出射層
3.カラー透明蛍光板
4.反射層
5.彫刻溝
6.蓄光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ土類金属のアルミン酸塩を基剤とした、蓄光剤を塗布したプレートと透明カラー蛍光プレートを重ね合わせ、蓄光剤に対向する透明カラー蛍光プレート面に、密着した出射層を設けおもて面より視覚によりカラー認識できる積層表示パネル。
【請求項2】
請求項1の透明カラー蛍光プレートの四隅外周部に反射層を設けた積層表示パネル。
【請求項3】
請求項1、請求項2の出射層を、彫刻溝で成形し溝部へ塗料をいれた積層表示パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−101339(P2013−101339A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−238344(P2012−238344)
【出願日】平成24年10月12日(2012.10.12)
【出願人】(599048650)合資会社谷貝鐵工所 (3)
【Fターム(参考)】