説明

蓄光電球

【課題】光束の平行性と光の認知性を高め、使用環境によらず高輝度、高効率且つ残光性を有する蓄光電球を提供する。
【解決手段】高輝度LEDとその発光の少なくとも一部を吸収し波長変換して発光する蓄光物質を有する蓄光電球であって、前記LEDの主発光ピークが360nm以下であると共に、前記蓄光物質が2価のユーロピウムで付活された中性蓄光物質でその発光波長をLEDのそれより100nm以上異なるようにすることで一層の発光効果を具備させた。また、該LED発光源先端から蓄光物質層への光の入射角が45度以下として、照射光の平行性を確保して発光層の劣化を防ぐようにした。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【産業上の利用分野】
【0001】
本発明は、バックライト光源、LED表示器、照光式スイッチ及び各種インジケータなどに利用される蓄光電球に係わり、特に発光素子であるLEDからの発光の少なくとも一部を変換して発光させる蓄光物質を有し使用環境によらず高輝度、高効率且つ残光性を有する蓄光電球に関する。
【従来技術】
【0002】
今日、トランシーバー、カメラ、ポケベル、ポータブルラジオ、ビデオデッキやノート型パソコンなどの携帯用電子機器の発達に伴い操作性や視認性向上のために種々の表示装置が設けられている。この表示の一つに液晶装置を利用したものがあり、暗所においても使用できるようバックライトが設けられてある。このようなバックライトは、携帯用電子機器用のバックライトはその消費電力を低下させればさせるほど使用時間などが増えるなどのメリットがあるため、特に低消費電力且つ高輝度に発光することが求められる。このような、バックライト光源の一つにLEDからの光源を面状などに発光させることによって高輝度に発光させるものがある。LEDは、小型で効率が良く鮮やかな色の発光をする。また、半導体素子であるため球切れなどの心配がない。初期駆動特性が優れ、振動やON/OFF点灯の繰り返しに強いという特徴を利用したバックライト光源などとすることができる。
【0003】
一方、消防法施行令と全国各都市の火災防止条例などで、劇場、旅館など人の多く集まる場所に誘導灯の設置が義務づけられている。地震、火災などの災害やその他の突発事故により、常用の電源が断たれた場合、自動的に予備電源に切り替わり20分以上の点灯が必要とされる。このような誘導灯にも高輝度低消費電力であるLEDの特性を生かした表示器とすることもできる。
【0004】
しかしながら、LEDを用いて形成させたバックライトなどは半導体発光素子であり、低消費電力とはいえ電池電力を消費する。そのため電池電源の蓄電量が少ない場合において、より長く駆動させるためには大きな負荷となる場合がある。また、災害時に表示器の予備電源が破壊され、あるいは給電回路が破線などすると消灯してしまう場合もある。したがって、電力が少ない場合や給電回路などが停止した場合においても、十分な明るさを表示できる表示器が求められている。
【発明が解決する課題】
【0005】
このような要請に沿う表示装置として、発光ダイオードとそれによって励起される蛍光物質とを有する表示装置や、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であるLEDチップとそこからの発光を吸収して発光する蛍光物質を有する発光装置、などが提案されている。
【0006】
しかしながら、LEDは半導体の組成や構造などによって種々の発光波長を有するものがあり、紫外線領域を発光する場合もあり発光強度を更に高め長期に渡って使用すると蛍光物質自体が劣化しやすい、などの問題がある。また、外部環境からの水分の進入などを完全に防ぐことや製造時に付着した水分を完全に除去することはできない。蛍光物質によっては、このような水分が発光素子からの高エネルギー光や熱によって蛍光物質の劣化を促進する場合もある。したがって、本願発明は上記課題を解決し、より高輝度、長時間の使用環境下においても発光光率の低下が極めて少なく残光性を有する蓄光電球を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、高輝度LEDとその発光の少なくとも一部を吸収し波長変換して発光する蓄光物質を有する蓄光電球であって、前記LEDの主発光ピークが360nm以下であると共に、前記蓄光物質が2価のユーロピウムで付活された中性蓄光物質でその発光波長をLEDのそれより100nm以上異なるようにすることで一層の発光効果を具備させた蓄光電球である。
【0008】
また、該LED発光源先端から蓄光物質層への光の入射角が45度以下として、照射光の平行性を確保して発光層の劣化を防ぐようにした蓄光電球である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本願発明者は、種々の実験の結果、光エネルギーが比較的高いLEDからの発光の少なくとも一部を蓄光物質によって波長変換させる蓄光電球において、特定の半導体及び蓄光物質を選択することにより高輝度、且つ長時間の使用時における光効率や残光性の低下を防止できることを見出し本発明を成すに至った。
【0010】
即ち、蓄光物質としては耐光性に優れ、温度特性が良好で、残光性が低下しないことなどの特徴を有することが必要である。
【0011】
これらの条件を満たすものとして、本発明は、発光層が360nm以下の高輝度LEDと同心円状に囲った反射鏡においてLEDからの光の入射角が45度以下で該LEDの光と100nm以上異なる光を発する蓄光物質を有する蓄光電球を見い出した。これにより発光素子から放出された可視光域における高エネルギー光を長時間近傍で高輝度に照射した場合であっても発光輝度や残光性の低下が極めて少ない蓄光電球とすることができるものである。
【0012】
具体的な蓄光電球の一例を図1に示す。
【0013】
本発明に利用される蓄光物質は、LEDと接する或いは近接して配置された場合においても十分な耐光性を有する。本発明に用いられる蓄光物質は、原料として例えばSrO、MgO、Al2O3、Eu2O3のような金属酸化物、或いはCaCO3、SrCO3、BaCO3のような高温で焼成することで容易に酸化物になるような化合物を選択することが好ましい。このような化合物として炭酸塩の他には硝酸塩、シュウ酸塩、水酸化物などがある。また、ホウ素化合物としてはホウ酸あるいはアルカリ土類のホウ酸塩が使用でき、特に、ホウ酸が好ましい。原料の純度は残光輝度に大きく影響し、99.9%以上であることが好ましく、99.99%以上であることがさらに好ましい。これらを混合した原料を、還元雰囲気下1200℃以上1600℃以下の温度範囲で焼成し、焼成品を粉砕、篩することで蛍光物質を得ることができる。尚、原料の混合比率は、目的の組成を得る為の理論量を混合することで決定できる。
【0014】
本発明に用いられる蓄光物質は基本的に付活剤の2価のEuによる強い発光を呈するが、2価のEuは可視光から紫外域の広範囲に吸収がある。従って、窒化ガリウム系化合物半導体を用いても十分に高効率発光が可能である。また、共付活剤として、Mn、Zr、Nb、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuからなる群より選ばれた少なくとも1種を蓄光物質の母体にドープさせることで残光現象が現れる。
【0015】
蓄光物質においてホウ素を含有させるとアルミネートの結晶性を良好にし、発光中心と捕獲中心を安定化させることで残光時間、残光輝度をさらに改善させることもできる。また、ホウ素は同時にフラックスとして働き蓄光物質の結晶成長を促進する効果をも有する。
【0016】
本発明の蓄光電球において効率よく発光及び残光させる場合は、蓄光物質との励起波長等を考慮して発光素子の発光波長は360nm以下が好ましい。また、蓄光物質層との異色性による視感率向上を考慮すると、LEDの発光波長と100nm以上の差が好ましい。
【0017】
図2は本発明の蓄光電球を利用した面状発光の概念例である。面状発光光の場合、蓄光物質層でのLED発光の反射角を45度以下とすることで、光束の平行性が保たれより効率的である。こうして形成された蓄光電球は、十分な明るさを得られる面状発光光源とすることができる。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0019】
図1は、本発明の1実施例を示す図である。図1において、1は発光ダイオード、2は発光ダイオードを保持する保持部材、3は発行ダイオードが放出する光を反射する反射部材、4は発光ダイオードが放出する光を蓄え自ら発光する機能を有する蓄光材を塗布した蓄光部材である。
【0020】
発光ダイオード1は、保持部材2に保持固定される。
【0021】
反射部材3は、保持部材2に結合され、発光ダイオードがある角度範囲に放出する光を反射して前方に光を送り出す。その機能・形状は、市販されている懐中電器に用いられているものと同じ作用をするもので、1例として図2のような形状がある。
【0022】
蓄光部材4は、蓄光顔料をコーティングしたものであり、反射部材3の形状に沿って実装され、反射部材3の一部を覆うように配置される。
【0023】
反射部材3のどの程度の領域を覆うについては、通電時に発光ダイオードが発光して得られる照度と、非通電時に蓄光材が発光して得られる照度を、それぞれいくらにするかによって決められる
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の蓄光電球の1実施例を示す図である。
【図2】図1に示す反射部材の形状を示す図である。
【符号の説明】
1 発光ダイオード
2 保持部材
3 反射部材
4 蓄光部材
【発明の効果】
【0025】
本発明により、長時間高輝度時の使用においても発光効率が高く、高輝度、長時間の使用においても発光光率や残光性の低下が極めて少ない蓄光電球とすることができる。また、点灯時と消灯時で発光色を任意に変化させることも可能な低電力蓄光電球として使用することもできる。
【0026】
また、本発明の請求項2の構成とすることにより高輝度、長時間の使用においても発光光率や残光性の低下が極めて少なくすることができることに加えて、LED自体の発光むらを蓄光物質により分散・区別化することができるためより視感性の高い発光を有する蓄光電球とすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光層が360nm以下の高輝度LEDと該LEDを同心円状に囲った反射鏡においてLEDからの発光の少なくとも一部を吸収し波長変換して発光する蓄光物質を有することを特徴とする蓄光電球。
【請求項2】
該LED発光源先端から蓄光物質層への光の入射角が45度以下であることを特徴とする請求項1記載の蓄光電球。
【請求項3】
該LEDと該蓄光層のそれぞれの最大発光波長が100nm以上異なることを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載の蓄光電球。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−280612(P2007−280612A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−232841(P2004−232841)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(599138733)株式会社メディア・コム・インターナショナル (2)
【Fターム(参考)】