説明

蓄冷器、蓄冷式冷凍機、クライオポンプ、および冷凍装置

【課題】比較的良好な熱交換性を有するヘリウム冷却式の蓄冷器。
【解決手段】主流方向に流れる作動ガスの寒冷を蓄冷する、ヘリウム冷却式の蓄冷器であって、当該ヘリウム冷却式の蓄冷器は、内部に前記作動ガスが流通する複数の第1の中空管および複数の第2の中空管を有し、各中空管は、少なくとも一つの端部が開放されており、前記複数の第1の中空管および前記複数の第2の中空管は、前記主流方向に略平行な方向に配列され、前記複数の第1の中空管は、前記主流方向に対して垂直な断面が円または楕円の形状を有し、前記複数の第1の中空管の前記主流方向に対して垂直な断面の最大寸法は、前記複数の第2の中空管の前記主流方向に対して垂直な断面の最大寸法よりも大きく、前記複数の第2の中空管は、前記複数の第1の中空管の配列によって構成された隙間部分に配置されることを特徴とするヘリウム冷却式の蓄冷器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄冷器に関し、特に蓄冷式の冷凍機に使用され得る蓄冷器に関する。
【背景技術】
【0002】
ギフォード・マクマホン式(GM)冷凍機、パルスチューブ冷凍機、スターリング冷凍機、およびソルベー冷凍機等の蓄冷式冷凍機は、100K程度の低温から4K(ケルビン)の極低温までの範囲の寒冷を発生することができ、超電導磁石や検出器等の冷却、クライオポンプ等に用いることができる。
【0003】
例えば、GM冷凍機では、圧縮機で圧縮されたヘリウムガスのような作動ガスが蓄冷器に導かれ、蓄冷器内の蓄冷材で予冷される。さらに、作動ガスは、膨張室で膨張仕事に相当した寒冷を発生した後、再び蓄冷器を通過し、圧縮機に戻る。この際に、作動ガスは、次に誘導される作動ガスのため、蓄冷器内の蓄冷材を冷やしながら、蓄冷器を通過する。この行程を1サイクルとすることにより、周期的に寒冷が発生される。
【0004】
このような蓄冷式冷凍機において、温度が30K未満の極低温を発生させることが必要な場合、前述のような蓄冷器の蓄冷材として、HoCu等の磁性材料が使用される。
【0005】
また、最近では、ヘリウムガスを蓄冷器の蓄冷材として使用することが検討されている(このような蓄冷器は、ヘリウム冷却式の蓄冷器とも称される)。例えば、特許文献1には、内部にヘリウムガスが充填された多数の熱伝導性カプセルを蓄冷器の蓄冷材として使用することが示されている。
【0006】
図1には、各温度におけるヘリウムガスとHoCu磁性材料の比熱の変化を示す。この図から明らかなように、約10K前後の極低温域では、圧力が1.5MPa程度のヘリウムガスの比熱は、HoCu磁性材料の比熱を上回る。従って、このような温度域では、HoCu磁性材料の代わりにヘリウムガスを使用することにより、より効率的な熱交換を行うことが可能になる。
【0007】
しかしながら、実際には、特許文献1のようなカプセルを製作することは容易ではない。例えば、4Kにおいてカプセル内のヘリウムガスが1.5MPa程度の圧力を有するためには、室温において、おおよそ160MPa程度の圧力が必要となる。このような高圧のヘリウムが充填されたカプセルは、簡単に製作することはできない。また、このような高圧に耐え得るカプセルを形成しようとすると、カプセルの肉厚がどうしても厚くなってしまい、熱伝導性が低下してしまう。
【0008】
このため、蓄冷器の内部に、蓄冷器の温度勾配方向、すなわち高温端から低温端に沿って、細長い棒状の容器を配列することが提案されている(特許文献2)。これらの容器は、低温側の端部に孔を有する。従って、この穴を介して、装置の作動ガスとして使用されるヘリウムガスを容器内に流通させることにより、ヘリウム冷却式の蓄冷器を構成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−37582号公報
【特許文献2】特許第2650437号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2に記載のヘリウム冷却式の蓄冷器では、多数の細長い棒状の容器が、蓄冷器の温度勾配方向に沿って配列される。
【0011】
しかしながら、例えば、軸方向に垂直な断面の直径が比較的大きな棒状容器の配列で、このような蓄冷器を構成しようとすると、容器の周囲に、比較的大きな空間が生じてしまう。このような構成では、作動ガスと棒状容器の間の接触面積が少なくなり、蓄冷器の熱交換効率が悪くなる。一方、軸方向に垂直な断面の直径が比較的小さな棒状容器の配列で、このような蓄冷器を構成した場合、比較的緻密な状態で、棒状容器を配列させることができるため、容器の周囲に形成される空間は、比較的小さくなる。しかしながら、この場合、蓄冷材としてのヘリウムガスの収容空間が少なくなってしまい、蓄冷器において、十分な熱交換性能が得られなくなる。また、このような構成では、多数の棒状容器が必要となり、構成が煩雑となる上、コストが増大するという問題がある。
【0012】
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、本発明では、蓄冷材の収容容積の低下の問題を軽減することができ、さらに比較的良好な熱交換性を有するヘリウム冷却式の蓄冷器を提供することを目的とする。また、そのような蓄冷器を有する各種装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では、
主流方向に流れる作動ガスの寒冷を蓄冷する、ヘリウム冷却式の蓄冷器であって、
当該ヘリウム冷却式の蓄冷器は、内部に前記作動ガスが流通する複数の第1の中空管および複数の第2の中空管を有し、各中空管は、少なくとも一つの端部が開放されており、
前記複数の第1の中空管および前記複数の第2の中空管は、前記主流方向に略平行な方向に配列され、
前記複数の第1の中空管は、前記主流方向に対して垂直な断面が円または楕円の形状を有し、
前記複数の第1の中空管の前記主流方向に対して垂直な断面の最大寸法は、前記複数の第2の中空管の前記主流方向に対して垂直な断面の最大寸法よりも大きく、
前記複数の第2の中空管は、前記複数の第1の中空管の配列によって構成された隙間部分に配置されることを特徴とするヘリウム冷却式の蓄冷器が提供される。
【0014】
ここで、本発明による蓄冷器において、前記複数の第2の中空管は、前記複数の第1の中空管の配列によって構成された隙間部分に、稠密な状態で配置されていても良い。
【0015】
また、本発明による蓄冷器において、前記複数の第2の中空管は、前記主流方向に対して垂直な断面が円または楕円の形状を有しても良い。
【0016】
また、本発明による蓄冷器において、前記複数の第1の中空管の前記断面の最大寸法は、前記複数の第2の中空管の前記断面の最大寸法に対して、1.1倍〜10倍の範囲にあっても良い。
【0017】
また、本発明による蓄冷器において、前記複数の第1の中空管の各々の形状および寸法は、実質的に等しく、および/または
前記複数の第2の中空管の各々の形状および寸法は、実質的に等しくても良い。
【0018】
また、本発明による蓄冷器は、さらに、内部に前記作動ガスが流通する第3の中空管を有し、該第3の中空管は、少なくとも一つの端部が開放されており、
前記第3の中空管は、前記主流方向に略平行な方向に配列され、
前記第3の中空管の前記断面の最大寸法は、前記複数の第1および第2の中空管の前記断面の最大寸法よりも小さく、
前記第3の中空管は、前記複数の第1および第2の中空管の配列によって構成された隙間部分に配置されても良い。
【0019】
また、本発明による蓄冷器において、前記中空管の少なくとも一つは、両方の端部が開放されていても良い。
【0020】
また、本発明による蓄冷器において、前記中空管の少なくとも一つは、開放されている端部に、流路抵抗部を有しても良い。
【0021】
また、本発明による蓄冷器において、前記中空管の少なくとも一つは、端部以外の部分に、少なくとも一つの流路抵抗部を有しても良い。
【0022】
また、本発明では、前述のような特徴を有する蓄冷器を備える蓄冷式冷凍機であって、
当該蓄冷式冷凍機は、GM冷凍機、パルスチューブ冷凍機、スターリング冷凍機、およびソルベー冷凍機のいずれか一つであることを特徴とする蓄冷式冷凍機が提供される。
【0023】
また、本発明では、そのような蓄冷式冷凍機を備えるクライオポンプが提供される。
【0024】
また、本発明による蓄冷式冷凍機において、被被冷却対象は、超伝導マグネット、X線検出器、または赤外線検出器のいずれか一つであっても良い。
【0025】
また、本発明では、そのような蓄冷式冷凍機によって予冷される冷凍装置であって、
当該冷凍装置は、希釈冷凍機、磁気冷凍機、He3冷凍機、またはJT冷凍機を有することを特徴とする冷凍装置が提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、蓄冷材の収容容積の低下の問題を軽減することができ、さらに比較的良好な熱交換性を有するヘリウム冷却式の蓄冷器を提供することができる。また、そのような蓄冷器を有する各種装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】各温度におけるヘリウムガスとHoCu磁性材料の比熱の変化を示したグラフである。
【図2】一般的なGM冷凍機の構成を概略的に示した図である。
【図3】従来のヘリウム冷却式の蓄冷器の一例を概略的に示した図である。
【図4】本発明によるヘリウム冷却式の蓄冷器の一例を概略的に示した断面図である。
【図5】図4のヘリウム冷却式の蓄冷器の概略的な上面図である。
【図6】本発明によるヘリウム冷却式の蓄冷器を構成する中空管の一例を模式的に示した図である。
【図7】本発明によるヘリウム冷却式の蓄冷器を構成する中空管の別の一例を模式的に示した図である。
【図8】本発明によるヘリウム冷却式の蓄冷器を構成する中空管のさらに別の一例を模式的に示した図である。
【図9】本発明による蓄冷器を有するパルスチューブ冷凍機の一構成例を概略的に示した図である。
【図10】本発明による蓄冷器を有するスターリング冷凍機の一構成例を概略的に示した図である。
【図11】本発明による蓄冷器を有するソルベー冷凍機の一構成例を概略的に示した図である。
【図12】本発明による蓄冷器を有するクライオポンプの一構成例を概略的に示した図である。
【図13】本発明による蓄冷式冷凍機により冷却される超伝導磁石を有する超伝導マグネット装置の一構成例を概略的に示した図である。
【図14】本発明による蓄冷式冷凍機により冷却される放射線検出器を有する放射線検出装置の一構成例を概略的に示した図である。
【図15】本発明による蓄冷式冷凍機を有する希釈冷凍機の一構成例を概略的に示した図である。
【図16】本発明による蓄冷式冷凍機により予冷される磁気冷凍機の一構成例を概略的に示した図である。
【図17】本発明による蓄冷式冷凍機により予冷されるHe3冷凍機の一構成例を概略的に示した図である。
【図18】本発明による蓄冷式冷凍機により予冷されるJT冷凍機の一構成例を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明を説明する。
【0029】
まず、本発明をより良く理解するため、ヘリウム冷却式の蓄冷器を有する一般的な蓄冷式冷凍機の構成について簡単に説明する。
【0030】
図2には、蓄冷式冷凍機の一例として、GM(ギフォード・マクマホン)冷凍機の概略的な構成図を示す。
【0031】
GM冷凍機1は、ガス圧縮機3と、冷凍機として機能する2段式のコールドヘッド10とを有する。コールドヘッド10は、第1段冷却部15と、第2段冷却部50とを有し、これらの冷却部は、フランジ12に同軸となるように連結されている。
【0032】
第1段冷却部15は、中空状の第1段シリンダ20と、この第1段シリンダ20内に、軸方向に往復運動可能に設けられた第1段ディスプレーサ22と、第1段ディスプレーサ22内に充填された第1段蓄冷器30と、第1段シリンダ20の低温端23b側の内部に設けられ、第1段ディスプレーサ22の往復運動により容積が変化する第1段膨張室31と、第1段シリンダ20の低温端23b付近に設けられた第1段冷却ステージ35とを有する。第1段シリンダ20の内壁と第1段ディスプレーサ22の外壁との間には、第1段シール39が設けられている。
【0033】
第1段シリンダ20の高温端23aには、第1段蓄冷器30に対してヘリウムガスを流出入させるため、複数の第1段高温側流通路40−1が設けられている。また、第1段シリンダ20の低温端23bには、第1段蓄冷器30および第1段膨張室31にヘリウムガスを流出入させるため、複数の第1段低温側流通路40−2が設けられている。
【0034】
第2段冷却部50は、第1段冷却部15と略同様の構成を有し、中空状の第2段シリンダ51と、第2段シリンダ51内に軸方向に往復運動可能に設けられた第2段ディスプレーサ52と、第2段ディスプレーサ52内に充填された第2段蓄冷器60と、第2段シリンダ51の低温端53bの内部に設けられ、第2段ディスプレーサ52の往復運動により容積が変化する第2段膨張室55と、第2段シリンダ51の低温端53b付近に設けられた第2段冷却ステージ85とを有する。第2段シリンダ51の内壁と第2段ディスプレーサ52の外壁との間には、第2段シール59が設けられている。第2段シリンダ51の高温端53aには、第1段蓄冷器30に対してヘリウムガスを流出入させるため、第2段高温側流通路40−3が設けられている。また、第2段シリンダ51の低温端53bには、第2段膨張室55にヘリウムガスを流出入させるため、複数の第2段低温側流通路54−2が設けられている。
【0035】
GM冷凍機1において、ガス圧縮機3からの高圧のヘリウムガスは、バルブ5および配管7を介して、第1段冷却部15に供給され、また、低圧のヘリウムガスは、第1段冷却部15から配管7およびバルブ6を介して、ガス圧縮機3に排気される。第1段ディスプレーサ22および第2段ディスプレーサ52は、駆動モータ8により、往復運動される。また、これに連動して、バルブ5およびバルブ6の開閉が行われ、ヘリウムガスの吸排気のタイミングが制御される。
【0036】
第1段シリンダ20の高温端23aは、例えば室温に設定され、低温端23bは、例えば20K〜40Kに設定される。第2段シリンダ51の高温端53aは、例えば20K〜40Kに設定され、低温端53bは、例えば4Kに設定される。
【0037】
次に、このような構成のGM冷凍機1の動作について、簡単に説明する。
【0038】
まず、バルブ5が閉、バルブ6が閉の状態で、第1段ディスプレーサ22および第2段ディスプレーサ52が、それぞれ、第1段シリンダ20および第2段シリンダ51内の下死点にあるとする。
【0039】
ここで、バルブ5を開状態とし、排気バルブ6を閉状態とすると、ガス圧縮機3から、高圧のヘリウムガスが第1段冷却部15に流入する。高圧のヘリウムガスは、第1段高温側流通路40−1から第1段蓄冷器30に流入し、第1段蓄冷器30の蓄冷材によって所定の温度まで冷却される。冷却されたヘリウムガスは、第1段低温側流通路40−2から第1段膨張室31に流入する。
【0040】
第1段膨張室31へ流入した高圧のヘリウムガスの一部は、第2段高温側流通路40−3から第2段蓄冷器60に流入する。このヘリウムガスは、第2段蓄冷器60の蓄冷材によって、さらに低い所定の温度まで冷却され、第2段低温側流通路54−2から第2段膨張室55に流入する。これらの結果、第1段膨張室31および第2段膨張室55内は、高圧状態となる。
【0041】
次に、第1段ディスプレーサ22および第2段ディスプレーサ52が上死点に移動するとともに、バルブ5が閉じられる。また、バルブ6が開かれる。これにより、第1段膨張室31および第2段膨張室55内のヘリウムガスは、高圧の状態から低圧の状態となり、体積が膨張し、第1段膨張室31および第2段膨張室55に寒冷が発生する。また、これにより、第1段冷却ステージ35および第2段冷却ステ−ジ85がそれぞれ冷却される。
【0042】
次に、第1段ディスプレーサ22および第2段ディスプレーサ52は、下死点に向かって移動される。これに伴い、低圧のヘリウムガスは、上記の逆の順路を通り、第1段蓄冷器30および第2段蓄冷器60をそれぞれ冷却しつつ、バルブ6および配管7を介してガス圧縮機3に戻る。その後、バルブ6が閉じられる。
【0043】
以上の動作を1サイクルとし、上記動作を繰り返すことにより、第1段冷却ステージ35、第2段冷却ステージ85において、それぞれに熱接続された冷却対象物(図示されていない)から熱を吸収し、冷却することができる。
【0044】
ここで、第2段冷却ステージ85において、例えば、温度が30K未満の極低温を形成することが必要な場合、第2段蓄冷器60の蓄冷材として、HoCu等の磁性材料が使用される。
【0045】
また、最近では、ヘリウムガスを蓄冷器の蓄冷材として使用した、いわゆるヘリウム冷却式の蓄冷器を使用することも提案されている。
【0046】
図3には、図2に示したようなGM冷凍機1の第2段蓄冷器60として使用される、従来のヘリウム冷却式の蓄冷器60Aの構成を、その周囲の部材とともに示す。図3において、図2と同様の部材には、図2と同一の参照符号が付されている。
【0047】
図3に示すように、従来のヘリウム冷却式の蓄冷器60Aは、図2で示した第2段ディスプレーサ52内の第2段蓄冷器として使用される。
【0048】
ヘリウム冷却式の蓄冷器60Aは、多数の容器62を有し、これらの容器62は、それぞれが細長い棒状の形状を有し、蓄冷器60Aの縦方向に沿って(すなわち、第2段シリンダ51の高温端53aから低温端53bに沿って)延伸している。各容器62は、第2段シリンダ51の低温端側に孔65を有する。容器62内には、蓄冷材として機能するヘリウムガスが68が存在する。
【0049】
一般に、ヘリウムガスは、HoCu等の磁性材料に比べて、10K近傍での比熱が大きく、ヘリウムガスを蓄冷材として使用することにより、蓄冷器60A内に流通する作動ガス(ヘリウムガス)をより効率的に冷却させることができる。
【0050】
しかしながら、例えば、軸方向に垂直な断面の直径が比較的大きな棒状容器62の配列で、このような蓄冷器60Aを構成しようとすると、容器62の周囲に、比較的大きな空間が生じてしまう。このような構成では、作動ガスと棒状容器62の間の接触面積が少なくなり、蓄冷器60Aの熱交換効率が悪くなる。一方、軸方向に垂直な断面の直径が比較的小さな棒状容器62の配列で、このような蓄冷器60Aを構成した場合、比較的緻密な状態で、棒状容器62を配列させることができるため、容器62の周囲に形成される空間は、比較的小さくなる。しかしながら、この場合、蓄冷材としてのヘリウムガス68の収容空間が少なくなってしまい、蓄冷器60Aにおいて、十分な熱交換性能が得られなくなる。また、このような構成では、多数の棒状容器62が必要となり、構成が煩雑となる上、コストが増大するという問題がある。
【0051】
これに対して、本発明によるヘリウム冷却式の蓄冷器は、
内部に前記作動ガスが流通する複数の第1の中空管および複数の第2の中空管を有し、各中空管は、少なくとも一つの端部が開放されており、
前記複数の第1の中空管および前記複数の第2の中空管は、前記主流方向に略平行な方向に配列され、
前記複数の第1の中空管は、前記主流方向に対して垂直な断面が円または楕円の形状を有し、
前記複数の第1の中空管の前記主流方向に対して垂直な断面の最大寸法は、前記複数の第2の中空管の前記主流方向に対して垂直な断面の最大寸法よりも大きく、
前記複数の第2の中空管は、前記複数の第1の中空管の配列によって構成された隙間部分に配置されるという特徴を有する。
【0052】
このような構成の蓄冷器では、複数の第2の中空管が複数の第1の中空管の配列によって構成された隙間部に配置されるため、作動ガスと接する中空管の外表面の接触面積、すなわち熱交換面積を有意に高めることができる。また、複数の第2の中空管により、蓄冷材(ヘリウムガス)の容積の低下が最小限に抑制される。従って、本発明では、比較的良好な熱交換性能を有するヘリウム冷却式の蓄冷器を提供することが可能になる。
【0053】
特に、複数の第1の中空管の配列によって構成された隙間部に、複数の第2の中空管を稠密状態で配置した場合、より良好な熱交換性能を有するヘリウム冷却式の蓄冷器を提供することが可能になる。
【0054】
なお、本願において、「(中空管の)断面の最大寸法」とは、通常の意味に解される。例えば、「(中空管の)断面の最大寸法」は、中空管の断面形状が円の場合、直径を意味し、断面形状が楕円の場合は、最大直径を意味し、断面形状が三角形の場合は、その高さを表し、断面形状が矩形状の場合は、対角線の長さを表す。
【0055】
第1の中空管の断面の最大寸法は、第2の中空管の断面の最大寸法に対して、例えば1.1倍〜10倍の範囲であっても良い。
【0056】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0057】
図4には、本発明によるヘリウム冷却式の蓄冷器の一例を概略的に示す。また、図5には、図4に示した蓄冷器の上面図を概略的に示す。さらに、図6には、蓄冷器を構成する中空管の一例を模式的に示す。
【0058】
図4に示すように、本発明によるヘリウム冷却式の蓄冷器160は、一例として、前述のGM冷凍機1の第2段ディスプレーサ52内に設置されている。
【0059】
蓄冷器160には、第1の流路161および第2の流路162が設けられ、ヘリウムのような作動ガスは、例えば、第1の流路161から第2の流路162に向かって、あるいはその逆向きに、主流方向Pに沿って移動する。
【0060】
蓄冷器160は、複数の第1の中空管165Aと、複数の第2の中空管165Bと、これらの中空管165A、165Bの存在しない領域に相当する空間部175と、で構成される。第1の中空管165Aおよび第2の中空管165Bは、いずれも、主流方向Pと実質的に平行な方向(図のZ方向)に延在するようにして、第2段ディスプレーサ52内に配置されている。なお、図4では、第2の中空管165Bは、第1の中空管165Aの陰に隠れており、視認できない。
【0061】
図5に示すように、第1の中空管165Aは、主流方向Pに対して実質的に垂直な方向の断面が円形の形状を有する。同様に、第2の中空管165Bは、主流方向Pに対して実質的に垂直な方向の断面が円形の形状を有し、この円の直径は、第1の中空管165Aの断面の円の直径よりも小さい。
【0062】
蓄冷器160において、複数の第1の中空管165Aは、X方向およびY方向に沿って、相互に隣接するように配列されている。ただし、これは一例であって、第1の中空管165A同士は、X方向および/またはY方向において、必ずしも相互に隣接している必要はない。一方、第2の中空管165Bは、第1の中空管165A同士の間に形成された隙間に配列されている。なお、図5の例では、第2の中空管165Bは、前記隙間に稠密状態で配置されているが、これは必ずしも必要ではなく、第2の中空管165Bは、前記隙間に非稠密状態で配置されても良い。
【0063】
図6に示すように、第1および第2の中空管165A、165Bは、開放された両端部168a、168bと、内側部173とを有する。従って、中空管165A、165Bの内部の蓄冷材ガスは、両端部168a、168bを介して、空間部175と連通される。
【0064】
中空管165A、165Bの両端部168a、168bには、内側部173の最大直径部分に比べて寸法が狭小化された流路抵抗部170が形成されている。また、図6の例では、中空管165A、165Bは、内側部173にも、一つの流路抵抗部178を有する。
【0065】
ここで、「流路抵抗部」とは、作動ガスが中空管165A、165B内に流入し、または中空管165A、165B内から作動ガスが流出する際に、何らかの障壁となる機能を有する部分の総称である。例えば、中空管165A、165Bのある部分が、他の部分に比べて寸法が狭小化されている場合、そのような場所は、「流路抵抗部」となる。
【0066】
例えば、中空管165A、165Bの延伸軸に対して垂直な方向における流路抵抗部の最大寸法(直径)は、中空管165A、165Bのその他の部分の同方向における最大寸法(直径)に対して、1/2〜1/10程度であっても良い。例えば、図6に示す例では、両端部168a、168bの延伸軸に対して垂直な方向における流路抵抗部170の最大寸法(直径)は、中空管165A、165Bの内側部173の同方向における最大寸法(直径)に対して、1/4程度となっている。これは、内側部173に設けられた流路抵抗部178においても同様である。
【0067】
このような流路抵抗部は、作動ガスの中空管への流入、中空管からの流出に対する抵抗として機能する。従って、このような中空管で構成された蓄冷器では、作動ガスが簡単に中空管内に流入したり、あるいは中空管内のヘリウムガスが簡単に外部に流出したりすることが抑制される。また、これにより、ヘリウムガスの圧力変動、およびそれによる温度変動も抑制される。
【0068】
ただし、このような流路抵抗部170、178は、本発明において必ずしも必要ではない。例えば、図6の例では、中空管165A、165Bは、両方の端部に168a、168bに、流路抵抗部170を有するが、これは、一方の端部のみに形成されていても良く、あるいは、全く形成されていなくても良い。また、中空管165A、165Bは、内側部173に一つの流路抵抗部178を有するが、流路抵抗部178の数は特に限られず、流路抵抗部178の数は、2つ以上でも、あるいは全く形成されていなくても良い。
【0069】
図7には、第1および第2の中空管の別の構成例を示す。この例では、中空管165−2は、第2の流路162の側の端部168bのみが開放されており、第1の流路161の側の端部168aは、閉止端となっている。この場合、中空管165−2内の蓄冷材ガスは、端部168bを介して、空間部175と連通される。なお、この図の例では、中空管165−2の端部168bは、流路抵抗部170を有するが、前述のように、これは必ずしも必要ではない。また逆に、中空管165−2は、内側部173に、少なくとも一つの流路抵抗部を有しても良い。
【0070】
図8には、第1および第2の中空管のさらに別の構成例を示す。この例では、中空管165−3は、第1の流路161の側の端部168aのみが開放されており、第2の流路162の側の端部168bは、閉止端となっている。この場合、中空管165−3内の蓄冷材ガスは、端部168aを介して、空間部175と連通される。
【0071】
なお、図4〜図8において、第1の中空管は、水平方向の断面の形状が略円筒状の形状を有するが、第1の中空管は、水平方向の断面の形状が楕円状であっても良い。一方、第2の中空管においては、水平方向の断面の形状は、特に限られず、第2の中空管の水平方向の断面の形状は、円形状、楕円形状、四角形状、または多角形状等であっても良い。
【0072】
また、前述の記載では、複数の第1の中空管165Aの寸法および形状は、全てにおいて、実質的に同一であり、複数の第2の中空管165Bの寸法および形状は、全てにおいて、実質的に同一であると仮定して、本発明の構成を説明した。しかしながら、各第1の中空管165Aの寸法もしくは形状は、異なっていても良く、および/または各第1の中空管165Aの寸法もしくは形状は、異なっていても良い。この場合、複数の第1の中空管165Aにいて最も小さな最大寸法を有する中空管165Aの最大寸法は、複数の第2の中空管165Bにおいて最も大きな最大寸法を有する中空管165Bの最大寸法よりも大きくなっていれば良い。
【0073】
さらに、前述の記載では、蓄冷器160は、実質的に、複数の第1の中空管165A、および複数の第2の中空管165Bによって構成されると仮定して、本発明の構成を説明した。しかしながら、蓄冷器160は、さらに、第1の中空管165Aおよび第2の中空管165Bよりも最大寸法が小さな、第3の中空管165Cを有しても良い。第3の中空管165Cは、第1の中空管165Aおよび第2の中空管165Bと同様、少なくとも一つの開放端部を有し、第1の中空管165Aおよび第2の中空管165Bでは充填されなかった空間内に、主流方向Pに平行な方向に沿って配置される。
【0074】
第3の中空管165Cの水平方向の断面の形状は、特に限られず、第3の中空管の水平方向の断面の形状は、円形状、楕円形状、四角形状、または多角形状等であっても良い。また、第3の中空管165Cが複数存在する場合、その形状および/または寸法は、実質的に等しくてなっていても、異なっていても良い。
【0075】
なお、以上の説明では、蓄冷器内において、蓄冷材がヘリウムガスのみで構成される場合)を例に、本発明の構成およびその効果について説明した。しかしながら、本発明において、蓄冷器は、複数の蓄冷材で構成されても良い。例えば、一つの蓄冷器において、高温側では、HoCu磁性材料を使用し、中低温側では、ヘリウムを使用しても良い。さらに、より低温側に、第3の蓄冷材として、GdOのような磁性材料を使用しても良い。
【0076】
(本発明による蓄冷器を有する冷凍機)
本発明による蓄冷器160は、GM冷凍機1の他、パルスチューブ冷凍機、スターリング冷凍機、およびソルベー冷凍機など、各種蓄冷式冷凍機に適用することができる。以下、そのような蓄冷式冷凍機への適用例について、簡単に説明する。
【0077】
(パルスチューブ冷凍機)
図9には、本発明による蓄冷器を有するパルスチューブ冷凍機の一構成例を概略的に示す。
【0078】
図9に示すように、このパルスチューブ冷凍機200は、2段式のパルスチューブ冷凍機である。パルスチューブ冷凍機200は、ガス圧縮機211と、ハウジング部210と、該ハウジング部210にフランジ221を介して連結されたコールドヘッド部220とを備えている。
【0079】
ガス圧縮機211は、ハウジング部210さらにはコールドヘッド部220に、ヘリウムガスのような作動ガスを所定の周期で高圧流入させたり、低圧排気させたりする役割を有する。
【0080】
ハウジング部210は、ハウジング205を有し、このハウジング205内には、第1段リザーバ215A、第2段リザーバ215B、熱交換器218a、219a、バルブ212、バルブ213およびオリフィス217等が収容されている。バルブ212およびバルブ213は、ガス流路214を介して、ガス圧縮機211に接続されている。
【0081】
コールドヘッド部220は、フランジ221に固定された第1段蓄冷管231、第1段パルス管236、第1段冷却ステージ230、第2段蓄冷管241、第2段パルス管246および第2段冷却ステージ240を有する。
【0082】
第1段蓄冷管231は、例えばステンレス鋼の中空状のシリンダ232と、その内部に設置された蓄冷器233を有する。第1段パルス管236は、例えばステンレス鋼の中空状のシリンダ237で構成される。これらのシリンダ232、237の高温端232a、237aは、フランジ221に接触、固定され、これらのシリンダ232、237の低温端232b、237bは、第1段冷却ステージ230に接触、固定されている。第1段冷却ステージ230には、その内部にガス流通路238が形成されており、第1段パルス管236の低温端237bと第1段蓄冷管231の低温端232bとが熱交換器218bおよびガス流路238を介して接続されている。第1段冷却ステージ230は、図示しない被冷却対象に熱的および機械的に接続され、寒冷が被冷却対象に取り出される。
【0083】
また、第2段蓄冷管241は、例えばステンレス鋼の中空状のシリンダ242と、その内部に設置された蓄冷器260とを有する。第2段パルス管246は、例えばステンレス鋼の中空状のシリンダ247で構成される。第2段蓄冷管241のシリンダ242の高温端242aは、第1冷却ステージ230に接触、固定され、低温端242bは、第2段冷却ステージ240に接触、固定されている。第2段パルス管246のシリンダ247の高温端247aは、フランジ221に接触、固定され、低温端247bは、第2段冷却ステージ240に接触、固定されている。第2段冷却ステージ240には、その内部にガス流通路248が形成されており、第2段パルス管246の低温端247bと第2段蓄冷管241の低温端242bとが、熱交換器219bおよびガス流路248を介して接続されている。第2段冷却ステージ240は、図示しない被冷却対象に熱的および機械的に接続され、寒冷が被冷却対象に取り出される。
【0084】
パルスチューブ冷凍機200では、ガス圧縮機211から、高圧の作動ガスがバルブ212およびガス流路214を介して第1段蓄冷管231に供給され、また、第1段蓄冷管231から低圧の作動ガスがガス流路214およびバルブ213を介してガス圧縮機211に排気される。第1段パルス管236の高温端237aには、熱交換器218aおよびオリフィス217を介して、第1段リザーバ215Aが接続されている。また、第2段パルス管246の高温端247aには、熱交換器219aおよびオリフィス217を介して、第2段リザーバ215Bが接続されている。オリフィス217は、第1段パルス管236および第2段パルス管246において、周期的に変化する作動ガスの圧力変動と体積変化との位相差を調整する役割を果たす。
【0085】
次に、このように構成されるパルスチューブ冷凍機200の動作を説明する。まず、バルブ212が開状態、バルブ213が閉状態になると、高圧の作動ガスが、ガス圧縮機211から第1段蓄冷管231に流入する。第1段蓄冷管231内に流入した作動ガスは、蓄冷器233により冷却されて温度を下げながら、第1段蓄冷管231の低温端232bからガス流通路238を通り、第1段パルス管236の内部に流入する。この際に、第1段パルス管236の内部に予め存在していた低圧の作動ガスは、流入した高圧の作動ガスにより圧縮される。これにより、第1段パルス管236内の作動ガスの圧力は、第1段リザーバ215A内の圧力よりも高くなり、作動ガスは、オリフィス217およびガス流路216を通って、第1段リザーバ215Aに流入する。
【0086】
また、第1段蓄冷管231で冷却された高圧の作動ガスの一部は、第2段蓄冷管241にも流入する。この作動ガスは、蓄冷器260によりさらに冷却されて温度を下げながら、第2段蓄冷管241の低温端242bからガス流通路248を通り、第2段パルス管246の内部に流入する。この際に、第2段パルス管246の内部に予め存在していた低圧の作動ガスは、流入した高圧の作動ガスにより圧縮される。これにより、第2段パルス管246内の作動ガスの圧力は、第2段リザーバ215B内の圧力よりも高くなり、作動ガスは、オリフィス217およびガス流路216を通って、第2段リザーバ215Bに流入する。
【0087】
次に、バルブ212を閉じ、バルブ213を開くと、第1段パルス管236および第2段パルス管246内の作動ガスは、それぞれ、蓄冷器233および260を冷却しながら、第1段蓄冷管231および第2段蓄冷管241を通過する。また、第2段蓄冷管241を通過した作動ガスは、さらに第1段蓄冷管231を通過する。その後、作動ガスは、第1段蓄冷管231の高温端232aから排気バルブ213を通り、ガス圧縮機211に戻る。ここで、第1段パルス管236および第2段パルス管246は、それぞれ、オリフィス217を介して、第1段リザーバ215Aおよび第2段リザーバ215Bと接続されているため、作動ガスの圧力変動の位相と、作動ガスの体積変化の位相とは、一定の位相差で変化する。この位相差により、第1段パルス管236の低温端237bおよび第2段パルス管246の低温端247bにおいて、作動ガスの膨張による寒冷が発生する。パルスチューブ冷凍機200は、上記の動作が反復されることで冷凍機として機能する。
【0088】
ここで、パルスチューブ冷凍機200の第2段蓄冷管241内の蓄冷器260には、前述のような本発明による蓄冷器が使用されている。従って、このパルスチューブ冷凍機200においても、作動ガスと中空管との間の接触面積、すなわち熱交換面積を有意に高めることができる。また、複数の第2の中空管により、蓄冷材(ヘリウムガス)の容積の低下が最小限に抑制される。従って、比較的良好な熱交換性能を有するヘリウム冷却式の蓄冷器260を提供することが可能になる。
【0089】
(スターリング冷凍機)
図10には、本発明による蓄冷器を有するスターリング冷凍機の一構成例を概略的に示す。
【0090】
図10に示すように、このスターリング冷凍機300は、ガス圧縮機310と、ガス圧縮機310から作動ガスがキャピラリーチューブ301を介して吸排気され、冷凍機として機能するコールドヘッド320とを備える。
【0091】
ガス圧縮機310は、ヨーク311、保圧容器312、および圧縮ピストン313を有する。ヨーク311は、圧縮ピストン313のシリンダとなる円筒状の溝318と、圧縮ピストン313に固定された可動コイル315が挿入される環状の溝319と、溝319の外側内壁に埋め込まれた環状の永久磁石316とを有する。図には示さないが、可動コイル315には、外部電源が接続される。
【0092】
保圧容器312は、ヨーク311に固定されている。また、保圧容器312の内部には、圧縮ピストン313が収容され、ヘリウムガスが充填される保圧空間が形成される。圧縮ピストン313と保圧容器312とを連結するようにして、ピストン制御スプリング314が設けられ、これにより、圧縮ピストン313が保圧容器312の内壁に接触することが回避される。
【0093】
コールドヘッド320は、ハウジング部321と、このハウジング部321に連結されたシリンダ322と、冷却ステージ328とを有する。シリンダ322の内部には、蓄冷器360が充填されたディスプレーサ323が設けられ、シリンダ322の低温端322bには、膨張室325が設置される。また、コールドヘッド320には、ディスプレーサ323を中立点に保つためのディスプレーサ制御スプリング324が設置される。
【0094】
シリンダ322の高温端322aの温度は、10Kよりも高い温度に設定され、シリンダ322の低温端322bの温度は、10Kよりも低い温度に設定されることが好ましい。
【0095】
次に、このようなスターリング冷凍機300の動作を簡単に説明する。
【0096】
スターリング冷凍機300において、外部電源から交流電流を可動コイル315に供給すると、圧縮ピストン313が紙面の横方向に往復運動する。これにより、溝319の空間と、膨張室325の空間と、これらを接続するガスが流通する空間とからなる領域において、ヘリウムガスの等温圧縮、等容移送、等温膨張、および等容移送の4行程からなるサイクルが繰り返される。これにより、膨張室325に寒冷が発生する。この寒冷は、冷却ステージ328を介して被冷却対象に伝えられ、被冷却対象を冷却することができる。
【0097】
ここで、スターリング冷凍機300の蓄冷器360には、前述のような本発明による蓄冷器が使用されている。従って、このスターリング冷凍機300においても、作動ガスと中空管との間の接触面積、すなわち熱交換面積を有意に高めることができる。また、複数の第2の中空管により、蓄冷材(ヘリウムガス)の容積の低下が最小限に抑制される。従って、比較的良好な熱交換性能を有するヘリウム冷却式の蓄冷器360を提供することが可能になる。
【0098】
(ソルベー冷凍機)
図11には、本発明による蓄冷器を有するソルベー冷凍機の一構成例を概略的に示す。
【0099】
図11に示すように、このソルベー冷凍機400は、ガス圧縮機411と、蓄冷管431と、シリンダ436と、冷却ステージ430と、バッファタンク415とを備える。
【0100】
ガス圧縮機411には、ガス配管414を介して、バルブ412および413が設置される。ガス圧縮機411は、蓄冷管431に、ヘリウムガスのような作動ガスを所定の周期で高圧流入させたり、低圧排気させたりする役割を有する。
【0101】
蓄冷管431は、高温端432aおよび低温端432bを有し、蓄冷管431の内部には、蓄冷器460が設置されている。蓄冷管431の高温端432aは、ガス配管414を介して、ガス圧縮機411と接続される。蓄冷管431の低温端432bは、冷却ステージ430に接触、固定されている。
【0102】
シリンダ436は、高温端437aおよび低温端437bを有し、シリンダ436の内部には、ディスプレーサ452が設置されている。シリンダ436の高温端437aは、オリフィス417が設置された配管416を介して、バッファタンク415に接続されている。シリンダ436の低温端437bは、冷却ステージ430に接触、固定されている。シリンダ436は、冷却ステージ430内に設けられた流通路438を介して、蓄冷管431と接続されている。
【0103】
なお、ソルベー冷凍機400の基本的な動作は、前述のパルスチューブ冷凍機200と同様であるため、ここでは、その動作については説明しない。
【0104】
ソルベー冷凍機400の蓄冷器460には、前述のような本発明による蓄冷器が使用されている。従って、このソルベー冷凍機400においても、作動ガスと中空管との間の接触面積、すなわち熱交換面積を有意に高めることができる。また、複数の第2の中空管により、蓄冷材(ヘリウムガス)の容積の低下が最小限に抑制される。従って、比較的良好な熱交換性能を有するヘリウム冷却式の蓄冷器460を提供することが可能になる。
【0105】
(クライオポンプ)
前述のような本発明による蓄冷器を備える蓄冷式冷凍機は、クライオポンプとしても使用することができる。
【0106】
図12には、そのようなクライオポンプ500の一構成例を概略的に示す。
【0107】
クライオポンプ500は、排気対象の真空槽に吸気口を介して接続された本体部551、および冷凍機部560を有する。
【0108】
本体部551は、真空容器552を有し、その内部には、シールド部554、後述する冷凍機部560のコールド部、バッフル555、およびクライオパネル556等が配置される。なお、図には示していないが、真空容器552には、シールド部554、バッフル555、および/またはクライオパネル556等の温度を測定するため、温度計が設置される。また、真空容器552には、真空容器552の内圧が過度に上昇した際、ガスを真空容器552外に逃がすための安全弁等が設けられる。
【0109】
冷凍機部560は、前述のGM冷凍機1と同様の構成を有する。すなわち、冷凍機部560は、圧縮された作動ガスを生成する圧縮器561およびGM冷凍機563のコールド部を有する。コールド部は、第1段冷却部570および第2段冷却部580等を備える。
【0110】
第1段冷却部570は、シリンダ571を有する。図には示さないが、シリンダ571は、圧縮器561からガス流路562を介して供給される作動ガスを断熱膨張させるための第1の膨張室および第1の蓄冷器が設けられる。また、第2段冷却部580は、シリンダ581を有する。圧縮器561からガス流路562を介して供給される作動ガスを断熱膨張させるための第2の膨張室(図示されていない)および第2の蓄冷器590が設けられる。
【0111】
第1段冷却部570の先端には、80K以下に冷却可能な第1段冷却ステージ575が設けられている。第2段冷却部580の先端には、10K以下、例えば4Kに冷却可能な第2段冷却ステージ585が設けられている。
【0112】
シールド部554は、円筒状部554aおよびフランジ554bを有する。フランジ554bは、第1冷却ステージ575に固定される。これにより、フランジ554bが第1冷却ステージ575と熱的に接触し、フランジ554bおよび円筒状部554aは、第1冷却ステージ575と同等の温度まで冷却される。
【0113】
バッフル555は、シールド部554の吸気口側に配置される。バッフル555は、上
端および下端が開口されている。また、バッフル555は、中空の台錐形状部材で構成され、内径の異なる複数の台錐形状部材が組み合わされる。また、バッフル555は、図示されない梁材等によりシールド部554と熱接触するように組み合わされる。シールド部554は、第1冷却ステージ575と熱接触しているので、バッフル555に第1冷却ステージ575の寒冷が伝えられ、バッフル555は、例えば80K程度まで冷却される。バッフル555は、本体部551の内部に流れるガスの方向を調整するとともに、ガスを冷却する役割を有する。バッフル555は、ガスに含まれる水蒸気を凝縮し、クライオパネル556への熱輻射を低減する。
【0114】
クライオパネル556は、その頂上部が第2冷却ステージ585上に固定され、その頂上部自体、および頂上部から下方に延びる円筒状部には、笠状に形成された金属板が複数、互いに離隔して配設される。クライオパネル556は、頂上部が第2冷却ステージ585と熱接触しているので、第2冷却ステージ585と略同等の温度に保たれる。
【0115】
クライオパネル556の裏面には、吸着パネルが形成されている。吸着パネルには、熱伝導性の良好なエポキシ樹脂により、活性炭等の吸着剤が固着されている。クライオパネル556で凝縮しきれないような水素、ネオン、ヘリウム等を吸着する働きを有する。なお、吸着パネルが形成される箇所は、クライオパネル556の裏面に限定されない。
【0116】
クライオポンプ500において、第2段冷却部580の蓄冷器590には、前述のような本発明による蓄冷器が使用されている。従って、このクライオポンプ500においても、前述のような本発明の効果を得ることができる。
【0117】
ここで、本発明による蓄冷器を有する蓄冷式冷凍機は、各種被冷却対象を冷却することができる。そのような被冷却対象は、超伝導マグネット、X線または赤外線のような放射線検出装置であっても良い。また、そのような被冷却対象は、蓄冷式冷凍機によって予冷される希釈冷凍機、磁気冷凍機、He3冷凍機、またはJT冷凍機等であっても良い。以下、各構成について簡単に説明する。
【0118】
(超伝導マグネット装置)
図13には、蓄冷式冷凍機により冷却される超伝導磁石を有する超伝導マグネット装置600の一構成例を概略的に示す。
【0119】
超伝導マグネット装置600は、真空容器651と、蓄冷式冷凍機670と、強磁場空間661に磁場を印加する超電導磁石660とを有する。蓄冷式冷凍機670は、真空容器651内に設置された天板652に、コールドヘッドが垂下された状態で設置される。
【0120】
蓄冷式冷凍機670は、2段式のGM冷凍機であっても良く、図13の例では、蓄冷式冷凍機670は、図2に示したGM冷凍機1と同様の構成を有する。従って、蓄冷式冷凍機670の構成の詳細な説明は、省略する。
【0121】
蓄冷式冷凍機670の第1段冷却ステージ685は、熱シールド板653により、超電導磁石660の超電導コイル655に電流を供給する酸化物超電導電流リード658に、熱的機械的に接続されている。蓄冷式冷凍機670の第2段冷却ステージ695は、超電導コイル655のコイル冷却ステージ654に、熱的機械的に接続されている。コイル冷却ステージ654は、超電導コイル655に接触されており、第2段冷却ステージ695からの寒冷により、超電導コイル655は、超電導臨界温度以下に冷却される。
【0122】
なお、蓄冷式冷凍機670には、GM冷凍機の代わりに、パルスチューブ冷凍機、スターリング冷凍機、ソルベー冷凍機等を用いてもよい。
【0123】
(放射線検出装置)
図14には、蓄冷式冷凍機により冷却される放射線検出器を有する放射線検出装置の一構成例を概略的に示す。
【0124】
放射線検出装置700は、圧縮機710と、蓄冷式冷凍機750と、蓄冷式冷凍機750の冷却ステージ728に接触固定された放射線検出器780と、放射線検出器780からの信号を処理する信号処理部790とを有する。
【0125】
圧縮機710および蓄冷式冷凍機750は、図10に示したスターリング冷凍機300と同様の構成を有する。そのため蓄冷式冷凍機750の詳しい説明は、省略する。
【0126】
放射線検出器780は、各種半導体検出素子を有する。例えば、放射線検出器780がX線検出素子(例えばSi検出素子、Ge検出素子)を有する場合、そのような放射線検出装置700は、X線を検出するX線検出装置となる。また、放射線検出器780が赤外線検出素子(例えばInGaAs PINフォトダイオード)を有する場合、そのような放射線検出装置700は、赤外線を検出する赤外線検出装置となる。信号処理部790には、公知の信号処理回路を使用することができ、信号処理部790は、放射線検出器780の種類に応じて適宜選択される。
【0127】
放射線検出器780のそのような半導体検出素子を、冷凍機750により生じた寒冷により冷却することで、ノイズが少なくなり、信号対雑音比(SN比)が向上する。
【0128】
(希釈冷凍機装置)
図15には、蓄冷式冷凍機を有する希釈冷凍機装置の一構成例を概略的に示す。
【0129】
希釈冷凍機装置800は、ヘリウムガスを循環させるポンプ801と、蓄冷式冷凍機(GM冷凍機)822と、希釈冷凍機部分850とを有する。蓄冷式冷凍機(GM冷凍機)822は、本発明による蓄冷器を有する。
【0130】
ポンプ801は、トラップ821が接続された往路側流路802と、復路側流路803とに接続されている。従って、ポンプ801から送出された3Heガス(通常は室温)は、トラップ821を介して、往路側流路802を通り、復路側流路803を通って、ポンプ801に回収される。
【0131】
希釈冷凍機部分850は、第1伝熱部824a、分溜室806、第2伝熱部809、および混合室810を備える。
【0132】
分溜室806は、3Heと4Heとの飽和蒸気圧の差を利用して、3He−4Heの混合溶液中から3Heを選択的に取り出す役割を有する。分溜室806は、0.5K〜0.7Kに保持される。
【0133】
混合室810は、100%の3Heの濃縮相と、3Heが4Heに溶け込んだ4He−6.4%3Heの希薄相とを有する。2相は、相互に分離しており、密度の差により、上相が濃縮相(3He液)で、下相が希薄相(4He−6.4%3He液)となっている。
【0134】
GM冷凍機822のコールドヘッド822bは、冷却ヘッド822aに接続された伝熱板823により、希釈冷凍機部分850の第1伝熱部824aと熱的に接続されている。従って、GM冷凍機822で発生した4K程度の寒冷は、冷却ヘッド822a〜伝熱板823を介して、第1伝熱部824aに伝えられる。
【0135】
GM冷凍機822のコールドヘッド822bおよび希釈冷凍機部分850は、真空容器825内に収容される。
【0136】
往路側流路802は、ポンプ801〜トラップ821〜希釈冷凍機部分850の第1伝熱部824a内に設けられた第1熱交換器824〜コンデンサ804〜インピーダンス805〜分溜室806内に設けられた第2熱交換器807〜第2伝熱部809〜混合室810のラインで構成される。
【0137】
一方、復路側流路803は、混合室810〜第2伝熱部809〜分溜室806〜配管803a〜ポンプ801で構成される。配管803aは、往路側流路802内のコンデンサ804〜インピーダンス805の部分を収容している。
【0138】
次に、このように構成された希釈冷凍機装置800の動作について説明する。
【0139】
ポンプ801により送り出された3Heガスは、トラップ821を介して、往路側流路802に送り込まれる。前述のように、第1伝熱部824aは、GM冷凍機822によって、4K程度まで冷却されている。このため、3Heガスは、第1伝熱部824aを通過した際に、第1熱交換器824を介して予冷される。さらに、予冷された3Heガスは、コンデンサ804〜インピーダンス805を通り、凝縮/液化される。
【0140】
液化した3Heは、さらに、分溜室806に送られ、第2熱交換器807により、分溜室806に収容された液体と熱交換される。3Heは、0.5K〜0.7Kにまで冷却される。
【0141】
さらに、液体3Heは、第2伝熱部808を経て、100mK程度にまで冷却され、混合室810に送られる。
【0142】
前述のように混合室810には、100%の3Heの濃縮相(上側)と、3Heが4Heに溶け込んだ4He−6.4%3Heの希薄相(下側)とが収容されている。濃縮相側に3Heが導入されると、3Heが希薄相(下側相)に溶け込む際に、熱吸収が生じる。これにより、混合室810において、数十mKの超低温が発生する。
【0143】
なお、分溜室806では、希薄相中の3He濃度を維持するため、混合室810内の希薄相中から分溜室806に向かって、3Heの移動が生じる。これに伴い、混合室810では、100%3Heの濃縮相から希薄相への3Heの溶け込みが連続的に生じる。
【0144】
その後、3Heガスは、復路側流路803、すなわち分溜室806から配管803aを通り、最終的にポンプ801に回収される。その途中で、3Heガスは、第2伝熱部809、および配管803a部分において、往路側流路802を通る3Heと熱交換される。
【0145】
(磁気冷凍機)
図16には、蓄冷式冷凍機によって冷却される磁気冷凍機の一構成例を概略的に示す。
【0146】
磁気冷凍機900は、パルス励磁される超電導磁石901と、この超電導磁石901によって形成される磁場空間内に設置された作業物質902と、ヒートパイプ903を介して、作業物質902の設置空間に連通された液体ヘリウム槽904とを備える。
【0147】
また、磁気冷凍機900は、ガス注入弁906、ガス戻り弁907、およびバイパス弁908等で構成された弁機構を有し、この弁機構を介して、GM冷凍機のような予冷用冷凍機905と接続される。
【0148】
このような磁気冷凍機900において、超電導磁石901を励磁して、作業物質902に磁界を加えると、作業物質902の温度が上昇する。この際、バイパス弁908を閉じ、ガス注入弁906およびガス戻り弁907を開くと、予冷用冷凍機905から、高温廃熱部909に冷却ガスが流れ、作業物質902の熱が回収される。
【0149】
その後、ガス注入弁906およびガス戻り弁907を閉じ、バイパス弁908を開け、超電導磁石の励磁を停止する。これにより、作業物質902の温度が低下する。また、作業物質902の温度がヘリウムの液化点以下になると、作業物質902の表面でヘリウムが凝縮する。
【0150】
この凝縮により生じた液体ヘリウムは、ヒートパイプ903を通って、液体ヘリウム槽904に落下する。また、これにより、液体ヘリウム槽904のヘリウムガスが作業物質902の収納空間に送られる。
【0151】
磁気冷凍機900では、このような工程を繰り返すことにより、ヘリウムの液化、冷却を行うことができる。
【0152】
(He3冷凍機)
図17には、He3冷凍機装置の一構成例を概略的に示す。
【0153】
He3冷凍機装置1000は、蓄冷式冷凍機部分1006およびHe3冷凍機部分1010を備える。
【0154】
また、He3冷凍機装置1000は、液体He4収容容器1002を取り囲む第1の熱シールド1001を有する。容器1002には、超伝導マグネット1020が配置される。また、第1の熱シールド1001を取り囲むようにして、第2の熱シールド1004が配置される。これらのシールド1001、1004、および容器1002は、外側真空チャンバ1005内に収容され、中央孔1003の周囲に配置される。中央孔1003の内側にはサンプルが配置される。
【0155】
蓄冷式冷凍機部分1006は、例えばGM冷凍機のような蓄冷式冷凍機で構成される。
蓄冷式冷凍機部分1006は、外側真空チャンバ1005の第1のタレット1007に取付けられる。蓄冷式冷凍機部分1006は、第2の熱シールド1004に熱が伝わるように結合された第1の冷却ステージ1008と、第1の熱シールド1001に熱が伝わるように結合された第2の冷却ステージ1009と、を有する。
【0156】
蓄冷式冷凍機部分1006の第1の冷却ステージ1008は、第2のシールド1004を約50Kの温度に維持し、第2の冷却ステージ1009は、第1の熱シールド1001を約5Kに維持する。
【0157】
He3冷凍機部分1010は、外側真空チャンバ1005の第2のタレット1011に取付けられる。He3冷凍機部分1010は、容器1002の内側に配置された冷却ステージ1012を有する。He3冷凍機部分1010の第1の部分1013は、冷却ステージ1012よりも高温になっており、第1の熱シールド1001と熱的に結合される。第2の部分1014は、第1の部分1013よりも高温であり、第2の熱シールド1004と熱的に結合されている。
【0158】
He3冷凍機部分1010は、室温で作動するHe3コンプレッサ(図示せず)によって駆動される。
【0159】
第2の冷却ステージ1009は、He3冷凍機部分1010の第1の部分1013への熱伝達により、He3冷凍機部分1010を予備冷却するために用いられる。さらに、蓄冷式冷凍機部分1006の第1の冷却ステージ1008とHe3冷凍機部分1010の第2の部分1014の間の熱伝達により、予備冷却が行われても良い。
【0160】
このような構成により、He3冷凍機部分1010の冷却ステージ1012が冷却され、容器1002の内側において、約2.2Kのヘリウムが凝縮される。
【0161】
(JT冷凍機)
図18には、蓄冷式冷凍機およびJT冷凍機を有する冷凍装置の一構成例を概略的に示す。
【0162】
冷凍装置1100は、圧縮機ユニット1101と、冷凍機ユニット1102とを備えている。圧縮機ユニット1101には、低段側圧縮機1103および高段側圧縮機1104が設けられている。冷凍機ユニット1102には、第1ヒートステーション1113および第2ヒートステーション1114を有するGM冷凍機1112と、JT弁1116を有するJT冷凍機1111とが設けられている。
【0163】
圧縮機ユニット1101において、高段側圧縮機1104の吐出側には吐出配管1105が接続され、低段側圧縮機1103の吸入側には吸入配管1109が接続されている。吐出配管1105には、油分離器1106と吸着器1107とが設けられている。吐出配管1105は、2本の高圧配管1108、1110に分岐し、第1の高圧配管1108は、JT冷凍機1111に接続され、第2の高圧配管1110は、GM冷凍機1112に接続されている。第1高圧配管1108には、流量制御弁1135と、装置の運転停止時に常温の作動ガスが冷凍機ユニット1102に流入することを防止するための開閉弁1134とが設けられている。なお、吸入配管1109にも、装置の運転停止時に常温の作動ガスが冷凍機ユニット1102に流入することを防止するための逆止弁1126が設けられている。
【0164】
冷凍機ユニット1102におけるJT回路1115は、高圧ライン1117と低圧ライン1118とからなり、JT弁1116は、高圧ライン1117に設けられている。高圧ライン1117には、第1ヒートステーション1113に配置された第1予冷部1119と、第2ヒートステーション1114に配置された第2予冷部1120とが設けられている。また、JT回路1115には、高圧ライン1117を流れる高圧ヘリウムガスと低圧ライン1118を流れる低圧ヘリウムガスとを熱交換させる第1〜第3の熱回収用熱交換器1121〜1123が設けられている。
【0165】
第1高圧配管1108には、開閉弁1128が設けられ、吸入配管1109には、開閉弁1130が設けられている。
【0166】
冷却運転の際には、開閉弁1128および開閉弁1130が開放される。これにより、圧縮機1103、1104から吐出された高圧ヘリウムガスは、第1熱交換器1121→第1予冷部1119→第2熱交換器1122→第2予冷部1120→第3熱交換器1123の順に冷却された後、JT弁1116において膨張し、極低温レベルの液体ヘリウムとなって、ヘリウムタンク1136に流入する。ヘリウムタンク1136内で蒸発したヘリウムガスは、低圧ライン1118を通じて、圧縮機1103、1104の吸入配管1109に流れ込み、圧縮機1103、1104によって圧縮された後、再び上記循環動作を繰り返す。
【0167】
このような動作により、液体ヘリウムを冷却することができる。
【0168】
以上、本発明による蓄冷器の適用対象の一部について説明した。しかしながら、この他にも本発明による蓄冷器が様々な冷凍機に使用することができることは当業者には明らかであろう。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明は、GM冷凍機、パルスチューブ冷凍機、スターリング冷凍機、およびソルベー冷凍機などの蓄冷式冷凍機に適用することができる。また、本発明は、そのような蓄冷式冷凍機によって構成または予冷される冷凍装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0170】
1 GM冷凍機
3 ガス圧縮機
5、6 バルブ
7 配管
8 駆動モータ
10 コールドヘッド
12 フランジ
15 第1段冷却部
20 第1段シリンダ
22 第1段ディスプレーサ
23a 高温端
23b 低温端
30 第1段蓄冷器
31 第1段膨張室
35 第1段冷却ステージ
39 第1段シール
40−1 流通路
40−2 流通路
40−3 流通路
50 第2段冷却部
51 第2段シリンダ
52 第2段ディスプレーサ
53a 高温端
53b 低温端
54−2 流通路
55 第2段膨張室
59 第2段シール
60 第2段蓄冷器
60A 従来のヘリウム冷却式の蓄冷器
62 容器
65 孔
68 ヘリウムガス
85 第2段冷却ステージ
160 本発明によるヘリウム冷却式の蓄冷器
161 第1の流路
162 第2の流路
165A、165B 中空管
168a、168b 端部
170 流路抵抗部
173 内側部
175 空間部
178 流路抵抗部
200 パルスチューブ冷凍機
205 ハウジング
210 ハウジング部
211 ガス圧縮機
212、213 バルブ
214 ガス流路
215A 第1段リザーバ
215B 第2段リザーバ
217 オリフィス
220 コールドヘッド部
221 フランジ
230 第1段冷却ステージ
231 第1段蓄冷管
232 シリンダ
232a、237a 高温端
232b、237b 低温端
233 蓄冷器
236 第1段パルス管
237 シリンダ
238 ガス流通路
240 第2段冷却ステージ
241 第2段蓄冷管
242 シリンダ
242a、247a 高温端
242b、247b 低温端
246 第2段パルス管
248 ガス流通路
247 シリンダ
260 蓄冷器
300 スターリング冷凍機
301 キャピラリーチューブ
310 ガス圧縮機
311 ヨーク
312 保圧容器
313 圧縮ピストン
314 ピストン制御スプリング
315 可動コイル
316 永久磁石
318、319 溝
320 コールドヘッド
321 ハウジング部
322 シリンダ
322a 高温端
322b 低温端
323 ディスプレーサ
324 ディスプレーサ制御スプリング
325 膨張室
328 冷却ステージ
360 蓄冷器
400 ソルベー冷凍機
411 ガス圧縮機
412、413 バルブ
414 ガス配管
415 バッファタンク
416 配管
417 オリフィス
430 冷却ステージ
431 蓄冷管
432a 高温端
432b 低温端
436 シリンダ
437a 高温端
437b 低温端
438 流通路
452 ディスプレーサ
460 蓄冷器
500 クライオポンプ
551 本体部
552 真空容器
554 シールド部
554a 円筒状部
554b フランジ
555 バッフル
556 クライオパネル
560 冷凍機部
561 圧縮器
562 ガス流路
563 GM冷凍機
570 第1段冷却部
571 シリンダ
575 第1段冷却ステージ
580 第2段冷却部
581 シリンダ
585 第2段冷却ステージ
590 第2の蓄冷器
600 超伝導マグネット装置
651 真空容器
652 天板
653 熱シールド板
654 コイル冷却ステージ
655 超電導コイル
658 酸化物超電導電流リード
660 超電導磁石
661 強磁場空間
670 蓄冷式冷凍機
685 第1段冷却ステージ
695 第2段冷却ステージ
700 放射線検出装置
710 圧縮機
728 冷却ステージ
750 蓄冷式冷凍機
780 放射線検出器
790 信号処理部
800 希釈冷凍機装置
801 ポンプ
802 往路側流路
803 復路側流路
803a 配管
804 コンデンサ
805 インピーダンス
806 分溜室
807 第2熱交換器
809 第2伝熱部
810 混合室
821 トラップ
822 GM冷凍機
822a 冷却ヘッド
822b コールドヘッド
823 伝熱板
824 第1熱交換器
824a 第1伝熱部
825 真空容器
850 希釈冷凍機部分
900 磁気冷凍機
901 超電導磁石
902 作業物質
903 ヒートパイプ
904 液体ヘリウム槽
905 予冷用冷凍機
906 ガス注入弁
907 ガス戻り弁
908 バイパス弁
909 高温廃熱部
1000 He3冷凍機装置
1001 第1の熱シールド
1002 液体He4収容容器
1003 中央孔
1004 第2の熱シールド
1005 外側真空チャンバ
1006 蓄冷式冷凍機部分
1007 第1のタレット
1008 第1の冷却ステージ
1009 第2の冷却ステージ
1010 He3冷凍機部分
1011 第2のタレット
1012 冷却ステージ
1013 第1の部分
1014 第2の部分
1020 超伝導マグネット
1100 冷凍装置
1101 圧縮機ユニット
1102 冷凍機ユニット
1103 低段側圧縮機
1104 高段側圧縮機
1105 吐出配管
1106 油分離器
1107 吸着器
1108、1110 高圧配管
1109 吸入配管
1111 JT冷凍機
1112 GM冷凍機
1113 第1ヒートステーション
1114 第2ヒートステーション
1115 JT回路
1116 JT弁
1117 高圧ライン
1118 低圧ライン
1119 第1予冷部
1120 第2予冷部
1121〜1123 熱回収用熱交換器
1126 逆止弁
1128、1130、1134 開閉弁
1135 流量制御弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主流方向に流れる作動ガスの寒冷を蓄冷する、ヘリウム冷却式の蓄冷器であって、
当該ヘリウム冷却式の蓄冷器は、内部に前記作動ガスが流通する複数の第1の中空管および複数の第2の中空管を有し、各中空管は、少なくとも一つの端部が開放されており、
前記複数の第1の中空管および前記複数の第2の中空管は、前記主流方向に略平行な方向に配列され、
前記複数の第1の中空管は、前記主流方向に対して垂直な断面が円または楕円の形状を有し、
前記複数の第1の中空管の前記主流方向に対して垂直な断面の最大寸法は、前記複数の第2の中空管の前記主流方向に対して垂直な断面の最大寸法よりも大きく、
前記複数の第2の中空管は、前記複数の第1の中空管の配列によって構成された隙間部分に配置されることを特徴とするヘリウム冷却式の蓄冷器。
【請求項2】
前記複数の第2の中空管は、前記複数の第1の中空管の配列によって構成された隙間部分に、稠密な状態で配置されていることを特徴とする請求項1に記載のヘリウム冷却式の蓄冷器。
【請求項3】
前記複数の第2の中空管は、前記主流方向に対して垂直な断面が円または楕円の形状を有することを特徴とする請求項1または2に記載のヘリウム冷却式の蓄冷器。
【請求項4】
前記複数の第1の中空管の前記断面の最大寸法は、前記複数の第2の中空管の前記断面の最大寸法に対して、1.1倍〜10倍の範囲にあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のヘリウム冷却式の蓄冷器。
【請求項5】
前記複数の第1の中空管の各々の形状および寸法は、実質的に等しく、および/または
前記複数の第2の中空管の各々の形状および寸法は、実質的に等しいことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載のヘリウム冷却式の蓄冷器。
【請求項6】
さらに、内部に前記作動ガスが流通する第3の中空管を有し、該第3の中空管は、少なくとも一つの端部が開放されており、
前記第3の中空管は、前記主流方向に略平行な方向に配列され、
前記第3の中空管の前記断面の最大寸法は、前記複数の第1および第2の中空管の前記断面の最大寸法よりも小さく、
前記第3の中空管は、前記複数の第1および第2の中空管の配列によって構成された隙間部分に配置されることを特徴とする請求項5に記載のヘリウム冷却式の蓄冷器。
【請求項7】
前記中空管の少なくとも一つは、両方の端部が開放されていることを特徴とする請求項請求項1乃至6のいずれか一つ記載のヘリウム冷却式の蓄冷器。
【請求項8】
前記中空管の少なくとも一つは、開放されている端部に、流路抵抗部を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一つ記載のヘリウム冷却式の蓄冷器。
【請求項9】
前記中空管の少なくとも一つは、端部以外の部分に、少なくとも一つの流路抵抗部を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一つ記載のヘリウム冷却式の蓄冷器。
【請求項10】
前記請求項1乃至9のいずれか一つに記載の蓄冷器を備える蓄冷式冷凍機であって、
当該蓄冷式冷凍機は、GM冷凍機、パルスチューブ冷凍機、スターリング冷凍機、およびソルベー冷凍機のいずれか一つであることを特徴とする蓄冷式冷凍機。
【請求項11】
前記請求項10に記載の蓄冷式冷凍機を備えるクライオポンプ。
【請求項12】
被被冷却対象は、超伝導マグネット、X線検出器、または赤外線検出器のいずれか一つであることを特徴とする請求項10に記載の蓄冷式冷凍機。
【請求項13】
請求項10に記載の蓄冷式冷凍機によって予冷される冷凍装置であって、
当該冷凍装置は、希釈冷凍機、磁気冷凍機、He3冷凍機、またはJT冷凍機を有することを特徴とする冷凍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−190954(P2011−190954A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55881(P2010−55881)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)