説明

蓄冷型冷凍機の低温発生ユニット

【課題】 圧縮ユニットの消費電力を低減できる蓄冷型冷凍機の低温発生ユニットを提供することを目的とすること。
【解決手段】GM冷凍機1の低温発生ユニット3は、大径の第1シリンダ21と小径の第2シリンダ22とにより形成した内面が二段凸型形状のシリンダ20と、各シリンダ21、22にそれぞれ往復動可能に挿設した第1ピストン31と第2ピストン34とにより形成される二段凸型形状のディスプレーサ30と、各ピストン31、32にそれぞれ内蔵される第1蓄冷器41と、第2蓄冷器44と、ディスプレーサ30を往復動させる駆動部10とを備え、第2蓄冷器44の軸に直交する断面積は第2シリンダ22の穴の軸に直交する断面積の45%〜62%に設定され、第1蓄冷器41の軸に直交する断面積は第1シリンダ21の穴の軸に直交する断面積の30%〜58%に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クライオポンプなどに使用される蓄冷型冷凍機に関し、詳しくは蓄冷型冷凍機の圧縮機(圧縮ユニット)の消費電力を低減可能な蓄冷型冷凍機の低温発生ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の蓄冷型冷凍機の低温発生ユニットとして、圧縮機ユニットと、温度の異なる第1段目膨張空間と第2段目膨張空間を備えた2段膨張方式の膨張ユニット(低温発生ユニット)を備えた蓄冷型極低温冷凍機が開示されている。この膨張ユニットは、階段状に先端部ほど細くなる2段に形成されたシリンダと、このシリンダ内に挿入され段状に先端部ほど細くなる2段に形成されたディスプレーサと、ディスプレーサの各段に内蔵された1段目蓄冷器と、2段目蓄冷器とを備える。そして2段目ディスプレーサの根元側にピストンリングが少なくとも二つ取付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、蓄冷型の極低温冷凍機の蓄冷器において、蓄冷器の容器内に充填した金網のうち、容器内における低温端面側の領域に積層する金網(例えば、400メッシュ、線径30μm)は空間率が小さく、かつ線径の細いものとし、高温端面側の領域に積層する金網は低温側に積層する金網の空間率よりも空間率を大きく、かつ線径も太いもの(例えば、325メッシュ、線径35μm)を選定した極低温冷凍機が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−199855号公報
【特許文献2】特開2003−148822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1によれば、2段目ディスプレーサにピストンリングを二つ以上取付けることにより、ピストンリングを介して第1段目膨張空間から第2段目膨張空間へ流入するヘリウム量は減少する。しかし、2段目蓄冷器を流動するヘリウムは低温で粘度が低いので、2段目蓄冷器の圧力損失は小さい。このため、2段目ディスプレーサにピストンリングを二つ以上取付けても、第1段目膨張空間から第2段目膨張空間へ流入するヘリウムの減少量は僅かである。従って、第2段目膨張空間での冷凍能力の向上は僅かであり、また第1段目膨張空間の冷凍能力の向上は殆どないので、要求冷凍能力に対して圧縮機の消費電力の低減量効果は僅かであるといった問題がある。
【0006】
また、特許文献2によれば、圧力損失と蓄冷器の非効率損失の両方を改善するため、低温端面側の領域に例えば400メッシュ、線径30μmの金網を積層し、高温端面側の領域に例えば325メッシュ、線径35μmの金網を積層している。しかし、高温端面側の領域では蓄冷器の効率向上より蓄冷器の圧力損失低減を図り、低温端面側の領域では蓄冷器の圧力損失低減よりも蓄冷器の効率向上を図っている。結果、圧力損失と非効率損失の両方が僅かに改善されるだけであるので、特許文献1と同じ問題がある。
【0007】
近年、CO削減の電力削減のため、半導体製造装置などに使用されるクライオポンプは、消費電力の低減が要求されている。このため、作動ガスを供給する圧縮ユニット(圧縮機)を小型なものを使用する方法(以下、方法1)と、1台の圧縮ユニットで複数台の蓄冷型冷凍機を運転させる方法(以下、方法2)が考えられる。しかし、従来技術の蓄冷型冷凍機、例えばギフォードマクマホン冷凍機(以下、GM冷凍機)は多量のガス流量を必要とする。このため、要求される冷凍量を得るには、従来技術の蓄冷型冷凍機を使用して、方法1あるいは方法2を実施しても、消費電力の低減は難しい問題がある。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、圧縮ユニットの消費電力を低減できる蓄冷型冷凍機の低温発生ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、第1シリンダと該第1シリンダより小さな内径の第2シリンダとにより形成される内面が二段凸型形状のシリンダと、第1シリンダに往復動可能に挿設される第1ピストンと第2シリンダに往復動可能に挿設される第2ピストンとにより形成され、作動ガスを膨張させる二段凸型形状のディスプレーサと、第1ピストンに内蔵される第1蓄冷器と、第2ピストンに内蔵される第2蓄冷器と、
第1ピストンの高温端側に連結したロッドを介してディスプレーサを往復動させる駆動部と、を備え、 ロッドが貫通され第1シリンダの高温側に配設される隔壁と、第1シリンダと、第1ピストンと、ロッドと、で包囲され、作動ガスが流出入する背面室が形成され、
第1蓄冷器の高温端は背面室に導通され、第1蓄冷器の低温端は第1シリンダと、第1ピストンと、第2ピストンと、で包囲して形成された第1膨張室に導通され、第2蓄冷器の低温端は第2シリンダと第2ピストンと、で包囲して形成された第2膨張室に導通され、第2蓄冷器の高温端は第1膨張室と第1蓄冷器の低温端との少なくともいずれか一方に導通され、第2蓄冷器の軸に直交する断面積は、第2シリンダの穴の軸に直交する断面積の45%〜62%に設定され、第1蓄冷器の軸に直交する断面積は、第1シリンダの穴の軸に直交する断面積の30%〜58%に設定される。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、駆動部には、圧縮ユニットの吐出口により吐出される作動ガスを供給配管を介して背面室へ導く高圧側切換弁と、背面室から圧縮ユニットの吸入口に戻る作動ガスを戻り配管を介して該吸入口へ導く低圧側切換弁とを備え、
高圧側切換弁が開状態では低圧側切換弁が閉状態であり、低圧側切換弁が開状態では高圧側切換弁が閉状態である。
【発明の効果】
【0011】
また、請求項1に記載の発明では、第2蓄冷器の軸に直交する断面積が第2シリンダの穴の軸に直交する断面積の45%〜62%に設定され、第1蓄冷器の軸に直交する断面積は、第1シリンダの穴の軸方向に直交する断面積の30%〜58%に設定される。これにより、作動ガス供給時、1サイクルにおいて第1蓄冷器と第2蓄冷器とに貯め込まれる作動ガス量は制限される。結果、圧縮ユニットから低温発生ユニットへ供給する作動ガスの流量が低減され、蓄冷型冷凍機の低温発生ユニットは、圧縮ユニットの消費電力を低減できる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明では、低温発生ユニットの駆動部には、圧縮ユニットからの作動ガスを供給配管を介して背面室へ導く高圧側切換弁と、背面室から戻り配管を介して圧縮ユニットへ作動ガスを導く低圧側切換弁とを備えている。高圧側切換弁より供給配管は常時、高圧が保持され、低圧側切換弁により戻り配管は常時、低圧に保持される。これにより、供給配管と戻り配管の各容積が増減しても、圧縮ユニットの吐出流量は増減せず、一定の吐出流量が保持される。結果、供給配管と戻り配管の各本数を増加し、各容積が増大しても、各膨張室で発生される冷凍能力の低下は阻止される。従って、1台の圧縮ユニットと、複数台(例えば、2台)の低温発生ユニットとを複数本(例えば、2本)の戻り配管と、複数本(例えば、2本)の供給配管とでそれぞれ並列接続することにより、複数(例えば、2台)の第1膨張室の冷凍量の合計と、複数(例えば、2台)の第2膨張室の冷凍量の合計は共に増大する。結果、蓄冷型冷凍機の低温発生ユニットは、要求される冷凍能力に対して、圧縮ユニットの消費電力が低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係るGM冷凍機の説明図である。
【図2】図1の低温発生ユニットの第1蓄冷器と第1シリンダとの断面積比に対する第2膨張室の冷凍能力を示す図である。
【図3】第1実施形態の圧縮ユニット(1台)と低温発生ユニット(2台)とで構成したGM冷凍機をクライオポンプに適応した説明図である。
【図4】第1実施形態のGM冷凍機(2台)をクライオポンプに適応した説明図である。
【図5】図3と図4に示すクライオポンプ用のGM冷凍機の第1膨張室の冷凍能力を示す図である。
【図6】図3と図4に示すクライオポンプ用のGM冷凍機の第2膨張室の冷凍能力を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るスプリット型スターリング冷凍機の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係るGM冷凍機の説明図である。図1に示すようにGM冷凍機(蓄冷型冷凍機)1は、圧縮ユニット2と低温発生ユニット3とを戻り配管4および供給配管5を介して接続したもので、ヘリウムなどの作動ガスが充填される。
【0016】
圧縮ユニット2は、圧縮機(図示せず)と放熱器(図示せず)を備え、低温発生ユニット3の低圧ポート11から戻り配管4を介し、圧縮ユニット2の吸入口2aに戻ってきた低圧(例えば、0.9MPa)を圧縮機で昇圧(例えば、2.1MPa)する。そして、放熱器で圧縮熱を外部へ放熱する。放熱器された作動ガスは、圧縮ユニット2の吐出口2bから供給配管5を介して低温発生ユニット3の高圧ポート12へ供給される。
【0017】
低温発生ユニット3は、駆動部10と、内面が二段凸型形状のシリンダ20と、シリンダ20に往復動可能に挿入された二段凸型形状のディスプレーサ30と、第1蓄冷器41と、第2蓄冷器44と、ディスプレーサ30の高温端に固定したロッド31bと、を備える。
【0018】
駆動部10は、ディスプレーサ30を往復駆動するスコッチヨークなどの駆動機構(図示せず)と、駆動機構を駆動するモータ13と、低圧側切換弁18と、高圧側切換弁19とを備えている。低圧側切換弁18と高圧側切換弁19は、それぞれ駆動機構に連動したカム14、15により開閉される。そして1サイクルにおいて、低圧側切換弁18が開状態では高圧側切換弁19は閉状態であり、高圧側切換弁19が開状態では低圧側切換弁18は閉状態である。
【0019】
低圧側切換弁18は、開状態において、低圧の作動ガスを背面室26から順次、流路16、低圧側切換弁18、駆動室10d、およびモータ室(図示せず)を介して低圧ポート11へ導く。高圧側切換弁19は、開状態において、供給配管5から高圧ポート12へ流入した高圧の作動ガスを順次、流路12a(一部のみ図示)、高圧側切換弁19、および流路17を介して後述する背面室26へ導入する。
【0020】
シリンダ20は、大径の第1シリンダ21と、小径の第2シリンダ22と、第1シリンダ21の低温端側に固定した第1コールドヘッド23と、第2シリンダ22の低温端側に固定した第2コールドヘッド24とを備える。そして、第1シリンダ21の高温側のフランジ部21aが、Oリング25を介在して駆動部10のフランジ部10aに複数のボルトで気密に固定される。
【0021】
ディスプレーサ30は、大径の第1ピストン31と小径の第2ピストン34とが継手37を介して連結され、第1ピストン31は第1蓄冷器41を内蔵し、第2ピストン34は第2蓄冷器44を内蔵する。
【0022】
第1ピストン31は、高温側が有底の壁32dを有すると共に、低温端から開口された穴32aを有するピストン本体32と、穴32aの低温端に設けたキャップ33とを備える。そして、キャップ33と壁32dとに挟まれた穴32a部分により、第1蓄冷器41の容器42が形成される。第1蓄冷器41には、容器42に複数枚の金網(例えば、200メッシュ、線径0.05mm、材質りん青銅)などの蓄冷材43が充填される。
【0023】
壁32dには、一端が第1蓄冷器41の高温端へ導通し、他端が背面室26へ導通する複数本の流路32bが設けられる。そしてピストン本体32の低温端側の外周面には、一端が第1蓄冷器41の低温端へ導通し、他端が第1膨張室27へ導通する複数本の流路32cが設けられる。
【0024】
第2ピストン34は、ピストン本体35とキャップ36を備える。ピストン本体35は、低温端から蓄冷材46が充填される穴35aが開口され、高温端には継手37が挿入される孔35bが開口され、孔35bは穴35aより小径である。そして、キャップ36と継手37とに挟まれた穴35a部分により、第2蓄冷器44の容器45が形成される。
【0025】
第2蓄冷器44は、容器45に微小(例えば、直径0.2mm)な鉛球などの蓄冷材46が充填され、蓄冷材46の流出を阻止するため複数枚の金網47が容器45の両端に積層される。そして穴35aに挿入したキャップ36と、ピストン本体35とにピン39aが密嵌され、キャップ36がピストン本体35に固定される。
【0026】
第2ピストン34の外周面の高温端側と低温端側には、それぞれ複数本の流路35cと複数本の流路35dが設けられる。流路35cの一端は第1膨張室27へ、他端は第2蓄冷器44の高温端へ導通される。流路35dの一端はキャップ36に設けた複数の放射溝からなる流路36aを介して第2蓄冷器44の低温端へ導通され、他端は第2膨張室28へ導通される。
【0027】
上述したようにディスプレーサ30は、第1ピストン31と第2ピストン34とが継手37を介在して連結される。詳しく述べると、第1ピストン31のキャップ33の図1における上面側には、第2ピストン34の外径より僅かに大きい座グリ33aと、継手37の外径より僅かに大きい有底の穴33bとが削孔される。座グリ33aと、穴33bとには、それぞれ第2ピストン34の高温端側と、継手37とが遊嵌される。そして第1ピストン31と、キャップ33と、継手37と、にピン38を挿入して、第1ピストン31と継手37とが連結される。ピン38は、第1ピストン31とキャップ33には密嵌され、継手37には遊嵌される。また、第2ピストン34と継手37とにピン39bが挿入され、第2ピストン34と継手37が連結される。ピン39bは、第2ピストン34に密嵌され、継手37には遊嵌される。
【0028】
また、第1ピストン31の高温側と第2ピストン34の高温側には、それぞれピストンリング31aとピストンリング34aとが各ピストン31、34に設けた溝に装着される。そして、第1ピストン31は第1シリンダ21に、第2ピストン34は第2シリンダ22に往復動可能に挿設される。
【0029】
背面室26は、第1シリンダ21と、第1ピストン31と、ロッド31bと、駆動部10の隔壁10bとに包囲されて第1シリンダ21の高温側に形成される。そして、隔壁10bに設けたロッドシール10cにより、背面室26と駆動室10dとの間のガス漏れが阻止される。
【0030】
第1膨張室27は、第1シリンダ21と、第1ピストン31と、第2ピストン34とに包囲されて第1シリンダ21の低温側に形成される。そしてピストンリング31aにより、背面室26と第1膨張室27との間のガス漏れが阻止される。
【0031】
第2膨張室28は、第2シリンダ22と第2ピストン34とに包囲されて第2シリンダ22の低温側に形成され、ピストンリング34aにより第2膨張室28と第1膨張室27との間のガス漏れが阻止される。
【0032】
低温発生ユニット3の作動回路は、順次、流路16、17と、背面室26と、流路32bと、第1蓄冷器41と、流路32cと、第1膨張室27と、流路35cと、第2蓄冷器44と、流路36aと、流路35dと、第2膨張室28とを連通して形成される。
【0033】
次に、本発明の第1実施形態に係るGM冷凍機1の作動と効果について説明する。
【0034】
ディスプレーサ30が、下死点の僅か手前の位置から中立点と上死点の間の位置の区間において、高圧側切換弁19が開状態であり、低圧側切換弁18は閉状態である。この区間に圧縮ユニット2からの高圧の作動ガスが、高圧ポート12を通過して低温発生ユニット3へ供給される。ディスプレーサ30が上死点の僅か手前の位置から中立点と下死点の間の位置の区間において、低圧側切換弁18は開で、高圧側切換弁19が閉である。この区間において低圧ポート11を通過して低温発生ユニット3から低圧の作動ガスが圧縮ユニット2へ戻される。そして、ディスプレーサ30の1サイクルの往復動により、第1膨張室27と第2膨張室28とにおいて、作動ガスはそれぞれ膨張仕事(PV仕事)W1、W2をなす。これにより、例えば第1膨張室27で略120Kの冷凍、第2膨張室28で略20Kの冷凍が発生される。
【0035】
第2膨張室28の膨張仕事W2は第2蓄冷器44の軸Yに直交する断面のガス素片のPV仕事W2として第2蓄冷器44の低温端から高温端へ伝達され、第1蓄冷器41の低温端に流入する。そして、第1蓄冷器41の低温端に流入したPV仕事W2と、第1膨張室27のPV仕事W1とは、第1蓄冷器41の低温端で足し合わされ、第1蓄冷器41の軸Yに直交する断面のガス素片のPV仕事として第1蓄冷器41の低温端から高温端へ伝達され、低圧側切換弁18において消費される。
【0036】
ところで、高圧側切換弁19が開状態、低圧側切換弁18が閉状態において、圧縮ユニット2から高圧ポート12を介して低温発生ユニット3へ供給される高圧の1サイクルの作動ガス量Mは、低温発生ユニット3の作動回路に貯め込まれる高圧の作動ガス量Mになる。低温発生ユニット3から圧縮ユニット2に戻される低圧の1サイクルの作動ガス量Mは、作動ガス量Mと同じ値である。
【0037】
以下において、説明を解り易くするため、作動回路の流路16、17と、流路32bと、流路32cと、流路35cと、流路36aと、流路35dに貯め込まれる高圧の作動ガス量は、微小量であるので省略する。従って、高圧の作動ガス量M(=M=M)は背面室26と、第1蓄冷器41と、第1膨張室27と、第2蓄冷器44と、第2膨張室28とに貯め込まれる1サイクルにおけるそれぞれの高圧の作動ガス量Mと、MR1と、ME1と、MR2と、ME2の合計になる。
【0038】
作動ガス量Mと、MR1と、ME1と、MR2と、ME2は気体の状態方程式M=ΔPV/(RT)により求められる。ここで、Rは気体定数、Tは各部位のガス温度、Vは各部位の作動ガスが占める容積、ΔPは高圧側切換弁19の開状態における低温発生ユニット3の作動回路のガス圧Pと低圧側切換弁18の開状態における作動回路のガス圧Pとの差圧(P−P)である。尚、前記の温度Tは、各蓄冷器41、44では高温端と低温端の平均ガス温度TR1、TR2であり、他の部位ではその部位内のガス温度である。
【0039】
低温発生ユニット3において、第1蓄冷器41の容器42の内径のみ減少させる。そして、第1シリンダ21と、第2シリンダ22の内径と、第1蓄冷器41の容器42の長さと、第2蓄冷器44の容器45の内径および長さと、ディスプレーサ30のストロークおよび各段の外径は一定寸法を維持する。これにより、第1蓄冷器41の作動ガスが占める容積VR1は減少するが、背面室26、第1膨張室27、第2蓄冷器44、第2膨張室28の作動ガスが占める各容積V、VE1、VR2、VE2は変化しない。
【0040】
従って、圧縮ユニット2から作動回路へ供給される高圧の作動ガス量Mは、第1蓄冷器41に貯め込まれる作動ガス量MR1(=ΔPVR1/(RTR1))の減少量と同じ量、減少するので、圧縮ユニット2の吐出流量は低減される。この場合、第1蓄冷器41の容器42の軸Y(図1)に直交する断面積(以下、第1蓄冷器41の断面積)AR1と第1シリンダ21の穴の断面積AC1(以下、第1シリンダ21の断面積)との断面積比α(=AR1/AC1)は、減少している。
【0041】
ところで、第1蓄冷器41の蓄冷材43の充填量は、多過ぎると容器42の容積が増大して、圧縮ユニット2の吐出流量が増大し、消費電力も増大する。一方、少な過ぎると第1蓄冷器41を往復流動する作動ガスと蓄冷材43との熱交換時における温度差が増大して、第1蓄冷器41の熱損失が増大する。その結果、第1膨張室27の冷凍能力Q1と、第2膨張室28の冷凍能力Q2が低下する。従って、第1蓄冷器41は適正量の蓄冷材43を確保するため、第1蓄冷器41の大きさ(断面積AR1)を適正にする。これにより、以下の作用に基づき、冷凍能力Q1、Q2を確保しつつ、圧縮ユニット2の消費電力が低減される。
【0042】
即ち、低温発生ユニット3の前述の差圧(P−P)を一定に保ち、第1蓄冷器41の断面積AR1のみ適正に減少させる。断面積AR1の減少前後において、作動ガスの差圧(P−P)は変化しないので、第1膨張部41と第2膨張部42の膨張仕事W1、W2は、断面積AR1を変える前後では変化せず一定値が保持される。これにより、第1膨張部41と第2膨張部42の冷凍能力Q1、Q2も変化せず維持される。一方、第1蓄冷器41の断面積AR1のみ適正に減少したので、1サイクルにおける第1蓄冷器41に貯め込まれるガス量のみ減少する。結果、圧縮ユニット2から低温発生ユニット3へ供給されるガス流量が低減され、圧縮ユニット2の消費電力が低減される。
【0043】
また、圧縮ユニット2から低温発生ユニット3への供給流量を一定に保ち、第1蓄冷器41の断面積AR1のみ大きさを適正に減少させる。この場合、ガス供給時において、低温発生ユニット3の作動回路に貯め込まれる1サイクルにおけるガス量は、断面積AR1を変えた前後では変化せず一定量である。従って、第1蓄冷器41の断面積AR1のみ減少したので、低温発生ユニット3の差圧(P−P)が増大する。結果、第1膨張部41と第2膨張部42の膨張仕事W1、W2が増大し、各膨張部41、42の冷凍能力Q1、Q2が増大する。この場合、圧縮ユニット2の吐出圧Poutと吸入圧力Pinとの圧力差(Pout−Pin)は、第1蓄冷器41大きさを変えた前後で殆ど変化しないので、圧縮ユニット2の消費電力も殆ど変化せず、ほぼ一定である。しかし、冷凍能力Q1、Q2が増大するので、GM冷凍機1の効率が増大し、第1膨張部41と第2膨張部42の要求される各冷凍量に対して、圧縮ユニット2の消費電力が低減される。
【0044】
また、低温発生ユニット3は、圧縮ユニット2からの作動ガスを供給配管5を介して背面室26へ導く高圧側切換弁19と、背面室26から戻り配管4を介して圧縮ユニット2へ作動ガスを導く低圧側切換弁18とを備えている。高圧側切換弁19により供給配管5は常時、高圧が保持され、低圧側切換弁18により戻り配管4は常時、低圧に保持される。これにより、供給配管5と戻り配管4の各容積が増減しても、圧縮ユニット2の吐出流量は増減せず、一定の吐出流量が保持される。結果、供給配管5と戻り配管4の各本数を増加し、各容積が増大しても、各膨張室27、28で発生される冷凍能力の低下は阻止される。従って、1台の圧縮ユニット2と、複数台(例えば、2台)の低温発生ユニット3とを複数本(例えば、2本)の戻り配管4と、複数本(例えば、2本)の供給配管5とでそれぞれ並列接続することにより、複数の第1膨張室27の冷凍能力の合計ΣQ1と、複数の第2膨張室28の冷凍能力の合計ΣQ2は共に増大する。結果、要求される冷凍量に対して、圧縮ユニット2の消費電力が低減できる。
【0045】
以下、試験例および適応例の各試験結果に基づき、第1蓄冷器41の適正な断面積AR1と効果ついて説明する。
【0046】
(試験例)
第1実施形態のGM冷凍機1の試験結果の比較について説明する。
【0047】
図2は、サイズの異なる2機種(大型と小型)の低温発生ユニット3の断面積比α(=AR1/AC1)に対する第2膨張室28の20Kにおける冷凍能力Q2の試験結果を示した図である。図中、○印はサイズの大きな低温発生ユニット3(以下、大型機)の試験結果を示し、□印はサイズの小さな低温発生ユニット3(以下、小型機)の試験結果を示す。大型機では、断面積比αは41.3%と、73.5%の2つの試験結果を示す。この場合、作動ガスの供給流量は一定である。小型機では、断面積比αは33.8%と、66.9%の2つの試験結果を示し、この場合も作動ガスの供給流量は一定である。また、第2蓄冷器44の容器45の軸Yに直交する断面積AR2(以後、第2蓄冷器44の断面積AR2)と第2シリンダ22の穴の軸Yに直交する断面積AC2(以後、第2シリンダ22の断面積AC2)との断面積比β(=AR2/AC2)は、大型機が49.0%、小型機が47.9%に設定されている。
【0048】
そして、図2の太実線は大型機の冷凍能力を示す冷凍能力曲線であり、図2の太破線は小型機の冷凍能力を示す冷凍能力曲線である。各冷凍能力曲線は、それぞれの冷凍能力Q2の試験結果と、断面積比α=0%における冷凍能力0の点とを曲線で結んでいる。
【0049】
図2の試験結果によれば、大型機の第2膨張室28の冷凍能力Q2は、断面積比α=73.5%で6.25Wに対して、断面積比α=41.3%では7.80Wである。従って、断面積比α=41.3%の場合の冷凍能力Q2は、断面積比α=73.5%に比べて1.248倍増大している。この場合、低温発生ユニット3への供給流量はα=41.3%とα=73.5%とで同じであるので、断面積比α=41.3%と断面積比α=73.5%の圧縮ユニット2の消費電力は同じである。
【0050】
大型機において、第1膨張室27の断面積比α=41.3%と断面積比α=73.5%の場合の各冷凍能力Q2を同一にする。即ち、各断面積比αの冷凍能力Q2を20Kで6.25Wに揃える。この条件下では、断面積比α=41.3%の圧縮ユニット2の消費電力は、断面積比α=73.5%の消費電力の略80%(=6.25W/7.80=80.1%)になり、略20%低減される。
【0051】
一方、小型機の第2膨張室28の冷凍能力Q2は、断面積比α=33.8%で7.80Wに対して、断面積比α=66.9%では5.40Wである。従って、断面積比α=33.8%の場合の冷凍能力Q2は、断面積比α=66.9%に比べて1.44倍増大している。この場合、α=33.8%とα=66.9%とでは低温発生ユニット3への供給流量が同じであるので、断面積比α=33.8%と断面積比α=66.9%の圧縮ユニット2の消費電力は同じである。
【0052】
小型機において、第1膨張室27の断面積比α=33.8%と断面積比α=66.9%の場合の各冷凍能力Q2を同一にする。即ち、各断面積比αの冷凍能力Q2を20Kで5.40Wに揃える。この条件下では、断面積比α=33.8%の圧縮ユニット2の消費電力は、断面積比α=66.9%の消費電力の略69%(=5.40W/7.80W=69.2%)になり、略31%低減される。
【0053】
図2に示すように、大型機と小型機とでは、断面積比αがそれぞれ略48%と略39%で冷凍能力Q2が最大になり、最大冷凍能力になる断面積比αは異なる。そして、断面積比αが図2の2本の一点差線で示す30%〜58%の範囲では、低温発生ユニット3のサイズの大小に係わらず冷凍能力Q2は高くなる。また、断面積比αが30%〜58%の範囲で、第1膨張室27の冷凍能力Q1も、第2膨張室28の冷凍能力Q2の増加率と略同じように増大する。
【0054】
以上により、第1膨張部27と、第2膨張部28において所定の冷凍量を得る際、断面積比αを30%〜58%に設定する。これにより、大型機、小型機のサイズの異なる機種によらず、圧縮ユニット2の消費電力が低減された効率の高い低温発生ユニット3が提供できる。
【0055】
上述の説明では、第2蓄冷器44の断面積AR2と第2シリンダ22の断面積AC2との断面積比βは、大型機で49.0%、小型機で47.9%であったが、以下の理由により断面積比βは45%〜62%に設定される。
【0056】
即ち、第2蓄冷器44は、第1蓄冷器41に比べて低い温度領域(例えば、略120K〜略20K)で作用する。ヘリウムなどの作動ガスは、温度が低くなると密度が大きくなり、また比熱も略10Kまでは大きくなる。一方、鉛などの蓄冷材は、温度が低くなるほど比熱が低下する。従って、第2膨張室28において所定の温度、所定の冷凍量を得るためには、蓄冷材46は、第2蓄冷器44内の作動ガス量を少なく確保しつつ、第2蓄冷器44を往復流動する作動ガスと僅かな温度差で熱交換できる適正量の蓄冷材46が必要になる。このため、第2蓄冷器44の断面積AR2(第2蓄冷器44の死容積)を適正値にしなければならない。
【0057】
第2蓄冷器44の断面積AR2の適正値を確保するにあたり、第2ピストン34の機械的強度も確保しなければならない。第2ピストン34は、ピストンリング34a用のリング溝と、第2蓄冷器44用の穴35aとが設けられている。このため、リング溝付近の機械的強度を確保しなければならず、穴35aの径寸法はリング溝深さにより制約を受ける。
【0058】
例えば小型機の試験結果では、第2膨張室28の20Kにおける冷凍能力Q2は、断面積比βが37.8%で7.45Wで、47.9%で8.15Wのであり、47.9%を超えても冷凍能力Q2は増加傾向にある。そして、第2シリンダ22の内径が小さくなるほど、ピストンリング溝深さの制約の影響が大きくなり、断面積比βの適正値は小さくなる。第2シリンダ22の内径が大きくなるほど、ピストンリング溝深さの制約の影響が少なくなり、断面積比βの適正値は大きくなる。
【0059】
蓄冷材46の適性量確保と、第2ピストン34の機械的強度確保とを考慮して、第2ピストン34に内蔵される内蔵型の第2蓄冷器44では、第2蓄冷器44の断面積AR2と第2シリンダ22の断面積AC2との断面積比β(=AR2/AC2)は、45%〜62%に設定される。
【0060】
(適応例)
図3は、本発明の低温発生ユニット3(図1)をクライオポンプに適応した説明図であり、低温発生ユニット3(試験例の大型機)の断面積比αは41.3%、断面積比βは49.0%に設定されている。ここで、断面積比α=41.3%、断面積比β=49.0%の低温発生ユニット3を低温発生ユニット3aとする。
【0061】
図3に示すように、クライオポンプ6a用のGM冷凍機(蓄冷型冷凍機)7は、2台の低温発生ユニット3a、3aに1台の圧縮ユニット2を戻り配管4a、4bと、供給配管5a、5bとを介して接続される。
【0062】
図3の圧縮ユニット2は、図1の圧縮ユニット2と同じ物である。尚、図3のGM冷凍機7は、低温発生ユニット3a、戻り配管4a、4bと、供給配管5a、5bを除き、図1のGM冷凍機1と同じ符番を付す。
【0063】
クライオポンプ6aは、GM冷凍機7と、真空容器51と、輻射シールド52と、バッフル53と、クライオパネル54と、架台55とにより構成される。
【0064】
真空容器51は、低温発生ユニット3a、3aのフランジ部21a、21aに気密に固定される。輻射シールド52は、真空容器51内に配置され、低温発生ユニット3a、3aの第1コールドヘッド23、23に固定される。輻射シールド52の開口部52a側には、バッフル53が固定される。輻射シールド52とバッフル53とは、第1膨張室27、27で発生される例えば略120Kの冷凍により第1膨張室27の温度近くに冷却される。
【0065】
輻射シールド52とバッフル53に包囲された空間には、低温発生ユニット3a、3aの第2コールドヘッド24、24に固定されたクライオパネル54が配備される。そしてクライオパネル54は、第2膨張室28、28で発生された例えば略20Kの冷凍により第2膨張室28の温度近くに冷却される。
【0066】
図4は、低温発生ユニット3(図1)を適応した他のクライオポンプの説明図であり、低温発生ユニット3(試験例の大型機)の断面積比αは73.5%、断面積比βは49.0%に設定されている。ここで、断面積比α=73.5%、断面積比β=49.0%の低温発生ユニット3を低温発生ユニット3bとする。
【0067】
図4に示すように、クライオポンプ6b用のGM冷凍機8は、2台のGM冷凍機1(図1)により構成される。即ち、クライオポンプ6bは、2台の低温発生ユニット3b、3bにそれぞれ1台の圧縮ユニット2を戻り配管4、4と、供給配管5、5とを介して接続される。クライオポンプ6bの他の構成は、図3のクライオポンプ6aと同じであり、図4の低温発生ユニット3bと図3の低温発生ユニット3aとは、断面積比αのみ異なり、他の諸元は同一である。また、図3の圧縮ユニット2と図4の圧縮ユニット2とは、同じ物である。
【0068】
図5は、本発明によるクライオポンプ6a用のGM冷凍機7の第1膨張室27、27と、クライオポンプ6b用のGM冷凍機8の第1膨張室27、27の各冷凍機7、8の冷凍能力を示す図である。図5の冷凍能力は、2つの第1膨張室27、27の各冷凍量を足し合せた値ΣQ1である。また図6は、本発明によるクライオポンプ6a用のGM冷凍機7の第2膨張室28、28の冷凍量を足し合せた冷凍能力ΣQ2と、クライオポンプ6b用のGM冷凍機8の第8膨張室28と、28の冷凍量を足し合せた冷凍能力ΣQ2を示す図である。図5および図6中、○印はGM冷凍機7の試験結果を、□印はGM冷凍機8の試験結果を示す。
【0069】
図5に示すように、GM冷凍機8の120Kでの冷凍能力ΣQ1は131.0Wであり、GM冷凍機7の冷凍能力ΣQ1は120Kで114.2Wで、GM冷凍機8の冷凍能力ΣQ1の87.2%である。GM冷凍機8は2台の低温発生ユニット3aに対して各々1台の圧縮ユニット2より作動ガスを供給し、2台の圧縮ユニット2を足し合せた消費電力は8.4kWである。一方、GM冷凍機7は2台の低温発生ユニット3aに1台の圧縮ユニット2から作動ガスを供給し、圧縮ユニット2の消費電力は4.20kWであり、GM冷凍機7の消費電力は、GM冷凍機8の消費電力の1/2になる。そしてGM冷凍機8の冷凍量が、GM冷凍機7と同じ冷凍量、即ち120Kで114.2Wの場合では、圧縮ユニット2の消費電力は、8.40kW×(114.2W/131W)=7.32kWになる。従って、GM冷凍機7はGM冷凍機8より消費電力が3.12kW低減される。
【0070】
図6に示すように、GM冷凍機8の冷凍能力ΣQ2は20K、19.80Wであり、GM冷凍機7の冷凍能力ΣQ2は、20K、14.35Wで、GM冷凍機8の冷凍能力ΣQ2の72.5%になっている。しかし、GM冷凍機7は2台の低温発生ユニット3a、3aに1台の圧縮ユニット2より作動ガスを供給し、消費電力4.20kWである。一方、GM冷凍機8は2台の低温発生ユニット3b、3bに対して各々1台の圧縮ユニット2より作動ガスを供給しているので、消費電力8.40kWになる。従って、GM冷凍機7の消費電力は、GM冷凍機8の消費電力の1/2になる。これにより、GM冷凍機8の冷凍量が、GM冷凍機7と同じ冷凍量、即ち20Kで14.35Wの場合では、圧縮ユニット2の消費電力は、8.4kW×(14.35W/19.80W)=6.09kWになる。結果、GM冷凍機7は、GM冷凍機8より消費電力が1.89kW(=6.09kW−4.20kW)低減され、GM冷凍機7は、GM冷凍機8に比べて圧縮ユニット2の消費電力が大幅に低減されることが実証された。
【0071】
以上により、低温発生ユニット3aの駆動部10には、圧縮ユニット2の吐出口2bより吐出される作動ガスを背面室26へ導く高圧側切換弁19と、背面室26から圧縮ユニット2に戻る作動ガスを圧縮ユニット2の吸入口2aへ導く低圧側切換弁18とを備えている。これにより、1台の圧縮ユニット2から作動ガスを複数台の低温発生ユニット3aへ並列に供給できるので、GM冷凍機7の効率が高くなり、圧縮ユニット2の消費電力が低減される。
【0072】
尚、図5の一点鎖線の曲線は太破線で示されたGM冷凍機8(断面積比α=73.5%)の冷凍能力ΣQ1の1/2を示している。この曲線は、第1膨張室27の温度が59KでGM冷凍機7の冷凍能力曲線に交わり、温度が59Kより高くなると、GM冷凍機7の冷凍能力曲線の下側にあり、59Kより低くなると上側にある。これにより、低温発生ユニット3aの第1膨張室27が59Kより低くなると、GM冷凍機7の効率(COP=冷凍能力/消費電力)は、GM冷凍機8の効率より低くなる。低温発生ユニット3aの第1膨張室27が59Kより高くなると、GM冷凍機7の効率は、GM冷凍機8の効率より高くなる。従って、同じ冷凍能力では、第1膨張室27が59Kより高いと、GM冷凍機7はGM冷凍機8より消費電力が低くなる。
【0073】
第2実施形態
図7は、本発明の第2実施形態に係るスプリット型スターリング冷凍機の説明図である。図7に示すように、スプリット型スターリング冷凍機(蓄冷型冷凍機)9は、圧縮ユニット60と、低温発生ユニット3cとを配管67を介在して接続される。尚、低温発生ユニット3cは、駆動部70を除き、図1の低温発生ユニット3の符番と同じ符番を付す。
【0074】
圧縮ユニット60は、圧縮部61と、駆動部65と、放熱部66とを備える。圧縮部61は、圧縮シリンダ62と、ピストン本体63aにピストンリング63bと保持器63cとを備えた圧縮ピストン63とにより構成される。そして保持器63cは、駆動部65に設けた例えばリニアモータ等の駆動機構(図示せず)に連結される。
【0075】
放熱部66は、圧縮シリンダ62の図7における右端に接続され、そして圧縮シリンダ62と、圧縮ピストン63と、放熱部66とに包囲されて圧縮室64が形成される。圧縮室64の作動ガスは、圧縮ピストン63の上死点へ向かう移動により圧縮され、圧縮時の圧縮熱は放熱部66により外部に放熱される。
【0076】
低温発生ユニット3cは、図1の低温発生ユニット3の駆動部10に代わり、駆動部70が第1シリンダ21のフランジ部21aに複数本のボルトで固定され、他の構成は低温発生ユニット3(図1)と同じである。
【0077】
駆動部70には、例えば板バネなどの駆動手段(図示せず)が配設され、隔壁71を貫通したロッド31bが駆動手段に連結される。そして、隔壁71に設けたロッドシール72と、ピストンリング31aとにより背面室26の気密が確保される。また、隔壁71には流路73が設けられ、流路73の一端は背面室26へ導通し、他端は配管67を介して放熱部66に接続される。
【0078】
圧縮ピストン63が往復動すると、ディスプレーサ30は圧縮ピストン63に対して例えば略80°位相が進むように往復動する。そして圧縮室64および背面室26で作動ガスが圧縮され、圧縮熱は放熱部66で外部へ放熱され、さらに第1蓄冷器41と第2蓄冷器44で冷却される。そして第1膨張室27と第2膨張室28で作動ガスが膨張し、第1膨張室27では例えば略120Kの冷凍が発生され、第2膨張室28では例えば略20Kの冷凍が発生される。
【0079】
第1実施形態の低温発生ユニット3(図1)と同様に、低温発生ユニット3cの第1蓄冷器41の断面積AR1と第1シリンダ21の穴の断面積AC1との断面積比α(=AR1/AC1)は、30%〜58%に設定される。また、第2蓄冷器44の断面積AR2と第2シリンダ22の穴の断面積AC2との断面積比β(=AR2/AC2)は、45%〜62%に設定される。従って、低温発生ユニット3の低圧側切換弁18と高圧側切換弁19による効果を除き、低温発生ユニット3cは第1実施形態の低温発生ユニット3と同じ理由により、同じ効果を生じる。
【0080】
尚、スプリット型スターリング冷凍機9は、圧縮ユニット60と、低温発生ユニット3cとを配管67で接続しているが、配管67を使用せず、放熱部66を第1シリンダ21のフランジ部21aに接続したインテグレート型スターリング冷凍機でも良い。この場合、ロッド31bは放熱部66を貫通して圧縮ユニット60の駆動部65に設けた板バネなどの駆動手段に連結される。そして、配管67が取除かれるので圧縮比が高くなり、冷凍能力Q1、Q2はスプリット型スターリング冷凍機9より増大する。
【0081】
また、スプリット型スターリング冷凍機9は、第1蓄冷器41と第2蓄冷器44がディスプレーサ30に内蔵されているが、シリンダ20の外部に第1蓄冷器と第2蓄冷器を設けても良い。そして、外部に設けた第1蓄冷器の断面積AR1と、第1シリンダの断面積AC1との断面積比α(=AR1/AC1)を30%〜58%に設定する。同様に、外部に設けた第2蓄冷器の断面積AR2と、第2シリンダの断面積AC2との断面積比β(=AR2/AC2)は45%〜62%に設定する。これにより、第1実施形態の低温発生ユニット3と同じ理由で、スターリング冷凍機の消費電力が低減できる。
【0082】
尚、二段凸型形状のシリンダ20に挿入される二段凸型形状のピストンは、ディスプレーサでも膨張ピストンでも良い。膨張ピストンの場合には、膨張ピストンのロッドが連結される側のピストン端面に、例えば駆動部の略一定の圧力が作用する。この場合、ロッドは駆動部に設けたクランク機構などの駆動手段に連結される。
【0083】
また、第1蓄冷器41と第2蓄冷器44をディスプレーサ30から取外してシリンダ20の外部に設けると共に、第1シリンダ21と第2シリンダ22とより形成された1本の二段凸型形状のシリンダ20を、各々別体の第1シリンダと第2シリンダにしても良い。この場合は、第1シリンダの断面積AC1は第2シリンダの断面積AC2が除かれている。従って、第1蓄冷器の断面積AR1と、第1シリンダの断面積AC1と第2シリンダの断面積AC2とを足し合せた断面積(AC1+AC2)との断面積比γ=(AR1/(AC1+AC2))が45%〜58%に設定される。一方、第2蓄冷器の断面積AR2と第2シリンダの断面積AC2との断面積比β(=AR2/AC2)は45%〜62%に設定される。これにより、第1実施形態の低温発生ユニット3と同じ理由で、スターリング冷凍機の消費電力が低減できる。
【符号の説明】
【0084】
1、7 GM冷凍機(蓄冷型冷凍機)
2、60 圧縮ユニット
2a 吸入口
2b 吐出口
3、3a、3c 低温発生ユニット
4、4a、4b 戻り配管
5、5a、5b 供給配管
9 スプリット型スターリング冷凍機(蓄冷型冷凍機)
10、70 駆動部
10b、71 隔壁
18 低圧側切換弁
19 高圧側切換弁
20 シリンダ
21 第1シリンダ
22 第2シリンダ
26 背面室
27 第1膨張室
28 第2膨張室
30 ディスプレーサ
31 第1ピストン
31b ロッド
34 第2ピストン
41 第1蓄冷器
44 第2蓄冷器
Y 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1シリンダと該第1シリンダより小さな内径の第2シリンダとにより形成される内面が二段凸型形状のシリンダと、
前記第1シリンダに往復動可能に挿設される第1ピストンと前記第2シリンダに往復動可能に挿設される第2ピストンとにより形成され、作動ガスを膨張させる二段凸型形状のディスプレーサと、
前記第1ピストンに内蔵される第1蓄冷器と、
前記第2ピストンに内蔵される第2蓄冷器と、
前記第1ピストンの高温端側に連結したロッドを介して前記ディスプレーサを往復動させる駆動部と、を備え、
前記ロッドが貫通され前記第1シリンダの高温側に配設される隔壁と、前記第1シリンダと、前記第1ピストンと、前記ロッドと、で包囲され、作動ガスが流出入する背面室が形成され、
前記第1蓄冷器の高温端は前記背面室に導通され、前記第1蓄冷器の低温端は前記第1シリンダと、前記第1ピストンと、前記第2ピストンと、で包囲して形成された第1膨張室に導通され、
前記第2蓄冷器の低温端は前記第2シリンダと前記第2ピストンと、で包囲して形成された第2膨張室に導通され、
前記第2蓄冷器の高温端は前記第1膨張室と前記第1蓄冷器の低温端との少なくともいずれか一方に導通され、
前記第2蓄冷器の軸に直交する断面積は、前記第2シリンダの穴の軸に直交する断面積の45%〜62%に設定され、
前記第1蓄冷器の軸に直交する断面積は、前記第1シリンダの穴の軸に直交する断面積の30%〜58%に設定される、ことを特徴とする蓄冷型冷凍機の低温発生ユニット。
【請求項2】
前記駆動部には、圧縮ユニットの吐出口により吐出される作動ガスを供給配管を介して前記背面室へ導く高圧側切換弁と、前記背面室から前記圧縮ユニットの吸入口に戻る作動ガスを戻り配管を介して該吸入口へ導く低圧側切換弁とを備え、
前記高圧側切換弁が開状態では前記低圧側切換弁が閉状態であり、前記低圧側切換弁が開状態では前記高圧側切換弁が閉状態である、ことを特徴とする請求項1に記載の蓄冷型冷凍機の低温発生ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−47368(P2012−47368A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188159(P2010−188159)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)