説明

蓄冷機能付きエバポレータ

【課題】蓄冷性能および放冷性能が向上した蓄冷機能付きエバポレータを提供する。
【解決手段】蓄冷機能付きエバポレータは、複数の扁平状冷媒流通管12と、隣り合う冷媒流通管12どうしの間に形成された全通風間隙14のうち一部の通風間隙14に配置された蓄冷材容器15と、蓄冷材容器15内に配置されたインナーフィン18とを備えている。蓄冷材容器15の左右の各側壁15aに、インナーフィン18に接触する接触部分21と、インナーフィン18に接触しない非接触部分22とを設ける。蓄冷材容器15を左右いずれか一方から見た際の左右の各側壁15aと冷媒流通管12とが重なる重なり部分において、蓄冷材容器15の左右の各側壁15aにおける接触部分21の面積を非接触部分22の面積よりも大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両のカーエアコンに用いられる蓄冷機能付きエバポレータに関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、図1、図3および図8の上下、左右を左右というものとする。
【背景技術】
【0003】
近年、環境保護や自動車の燃費向上などを目的として、信号待ちなどの停車時にエンジンを自動的に停止させる自動車が提案されている。
【0004】
しかしながら、通常のカーエアコンにおいては、エンジンを停止させると、エンジンを駆動源とする圧縮機が停止するので、エバポレータに冷媒が供給されなくなり、冷房能力が急激に低下するという問題がある。
【0005】
そこで、このような問題を解決するために、エバポレータに蓄冷機能を付与し、エンジンが停止して圧縮機が停止した際に、エバポレータに蓄えられた冷熱を放冷して車室内を冷却することが考えられている。
【0006】
この種の蓄冷機能付きエバポレータとして、上下方向にのびるとともに幅方向が通風方向を向いた複数の扁平状冷媒流通管が、互いに間隔をおいて並列状に配置されており、隣り合う冷媒流通管どうしの間に通風間隙が形成され、全通風間隙のうち一部の通風間隙に蓄冷材が封入された蓄冷材容器が配置されるとともに、残りの通風間隙にアウターフィンが配置され、アウターフィンが、蓄冷材容器が配置された通風間隙の両隣の通風間隙に配置され、蓄冷材容器内にインナーフィンが配置され、蓄冷材容器の左右の各側壁に、外方に膨出した複数の凸部が点在するように形成されるとともに凸部の膨出頂壁が冷媒流通管に接触しており、各蓄冷材容器における一方の側壁の凸部と他方の側壁の凸部とが同一の形状および同一の大きさであるとともに、左右いずれか一方から見て同一位置に設けられ、インナーフィンが、蓄冷材容器の左右両側壁における凸部が形成されていない部分に接合され、左右いずれか一方から見て蓄冷材容器の左右の各側壁における凸部が形成されていない部分がインナーフィンに接触する接触部分であり、同じく凸部の膨出頂壁に対応する部分がインナーフィンに接触しない非接触部分である蓄冷機能付きエバポレータが提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータによれば、圧縮機が作動している通常の冷房時には、冷媒流通管内を流れる冷媒の有する冷熱が、蓄冷材容器の両側壁におけるインナーフィンへの非接触部分であって冷媒流通管と接触している凸部の膨出頂壁から直接蓄冷材容器内の蓄冷材に伝わるとともに、インナーフィンへの接触部分からインナーフィンを経て蓄冷材容器内の蓄冷材に伝わって蓄冷材に冷熱が蓄えられるようになっている。一方、圧縮機が停止した際には、蓄冷材容器内の蓄冷材に蓄えられた冷熱が、直接、またはインナーフィンからインナーフィンへの接触部分を経て蓄冷材容器の両側壁に伝えられ、ついで凸部の膨出頂壁を経て冷媒流通管に伝えられ、冷媒流通管を通って蓄冷材容器が配置された通風間隙の両隣の通風間隙に配置されたアウターフィンに伝えられ、アウターフィンから当該通風間隙を流れる空気に放冷されるようになっている。
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータにおいては、各蓄冷材容器における一方の側壁の凸部と他方の側壁の凸部とが同一の形状および同一の大きさであるとともに、左右いずれか一方から見て同一位置に設けられており、蓄冷材容器の左右の各側壁における凸部が形成されていない部分がインナーフィンに接触する接触部分であり、凸部の膨出頂壁がインナーフィンに接触しない非接触部分であるから、蓄冷材容器を左右いずれか一方から見た際の左右の各側壁と冷媒流通管とが重なる重なり部分において、蓄冷材容器の左右の各側壁におけるインナーフィンへの接触面積が非接触部分の接触面積よりも小さくなっている。したがって、蓄冷時および放冷時のいずれに場合においても、インナーフィンを利用した蓄冷材容器の左右両側壁と蓄冷材との間の熱伝達効率が十分ではなく、蓄冷性能および放冷性能が劣るという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−12947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明の目的は、上記問題を解決し、蓄冷性能および放冷性能が向上した蓄冷機能付きエバポレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0012】
1)上下方向にのびるとともに幅方向が通風方向を向いた複数の扁平状冷媒流通管が、互いに間隔をおいて並列状に配置されており、隣り合う冷媒流通管どうしの間に通風間隙が形成され、全通風間隙のうち一部の通風間隙に蓄冷材が封入された蓄冷材容器が配置され、蓄冷材容器内にインナーフィンが配置されている蓄冷機能付きエバポレータであって、
蓄冷材容器の左右の各側壁に、インナーフィンに接触する接触部分と、インナーフィンに接触しない非接触部分とが設けられており、蓄冷材容器を左右いずれか一方から見た際の左右の各側壁と冷媒流通管とが重なる重なり部分において、蓄冷材容器の左右の各側壁における前記接触部分の面積が前記非接触部分の面積よりも大きくなっている蓄冷機能付きエバポレータ。
【0013】
2)前記非接触部分が、蓄冷材容器の左右の各側壁に点在するように複数設けられており、蓄冷材容器の一方の側壁における前記非接触部分の少なくとも一部と、他方の側壁における前記非接触部分の少なくとも一部とが、左右いずれか一方から見てずれている上記1)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0014】
3)蓄冷材容器の左右の各側壁に、外方に膨出した複数の凸部が点在するように形成されるとともに凸部の膨出頂壁が冷媒流通管に接触しており、左右いずれか一方から見て蓄冷材容器の左右の各側壁における凸部が形成されていない部分がインナーフィンに接触する接触部分であり、同じく凸部の膨出頂壁に対応する部分がインナーフィンに接触しない非接触部分である上記1)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0015】
4)蓄冷材容器の一方の側壁における凸部の少なくとも一部と、他方の側壁における凸部の少なくとも一部とが、左右いずれか一方から見てずれている上記3)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0016】
5)蓄冷材容器の左右両側壁が冷媒流通管に接合されるとともに、蓄冷材容器の左右の各側壁における冷媒流通管に接合されている部分に貫通穴が形成されており、左右いずれか一方から見て蓄冷材容器の左右の各側壁における貫通穴が形成されていない部分がインナーフィンに接触する接触部分であり、同じく貫通穴が形成された部分がインナーフィンに接触しない非接触部分である上記1)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0017】
6)蓄冷材容器の一方の側壁における貫通穴の少なくとも一部と、他方の側壁における貫通穴の少なくとも一部とが、左右いずれか一方から見てずれている上記5)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0018】
7)インナーフィンがオフセット状であり、通風方向にのびる波頂部、通風方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部を有する波状帯板が、通風方向に複数並べられるとともに相互に一体に連結されることにより形成され、通風方向に隣り合う2つの帯板の波頂部どうしおよび波底部どうしが上下方向に位置ずれしている上記1)〜6)のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0019】
8)インナーフィンがコルゲート状であり、通風方向にのびる波頂部、通風方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部よりなる上記1)〜6)のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0020】
9)蓄冷材容器が配置された通風間隙の隣の通風間隙にアウターフィンが配置されている上記1)〜8)のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【発明の効果】
【0021】
上記1)〜9)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、蓄冷材容器の左右の各側壁に、インナーフィンに接触する接触部分と、インナーフィンに接触しない非接触部分とが設けられており、蓄冷材容器を左右いずれか一方から見た際の左右の各側壁と冷媒流通管とが重なる重なり部分において、蓄冷材容器の左右の各側壁における前記接触部分の面積が前記非接触部分の面積よりも大きくなっているので、特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータに比較して、蓄冷時および放冷時のいずれに場合においても、蓄冷材容器の左右両側壁と蓄冷材との間のインナーフィンを介しての熱伝達性能が優れたものになる。したがって、特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータに比較して、蓄冷性能および放冷性能が向上する。
【0022】
上記3)〜6)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、比較的簡単な構成で、蓄冷材容器の左右の各側壁に、インナーフィンに接触する接触部分と、インナーフィンに接触しない非接触部分とが設けるとともに、蓄冷材容器を左右いずれか一方から見た際の左右の各側壁と冷媒流通管とが重なる重なり部分において、蓄冷材容器の左右の各側壁におけるインナーフィンに接触する接触部分の面積を、インナーフィンに接触しない非接触部分の面積よりも大きくすることができる。
【0023】
上記3)および4)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、蓄冷材容器が配置されている通風間隙においても、凸部の存在により冷媒流通管と蓄冷材容器との間に隙間が形成され、当該隙間を通って風が流れる。したがって、通気抵抗の上昇を抑制することができる。また、冷媒流通管の外側面に発生する凝縮水を、凸部の存在により冷媒流通管と蓄冷材容器との間に形成される隙間を通して排水することができる。
【0024】
上記5)および6)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、冷媒流通管と蓄冷材容器とがろう付されている場合、両者のろう付面積が、貫通穴が形成されていない場合に比較して小さくなる。したがって、冷媒流通管の片面と蓄冷材容器の外面との間に、両者が全面にわたって完全にろう付されないことにより生じる隙間も、貫通穴が形成されていない場合に比較して小さくなり、当該隙間内に侵入する凝縮水の量も少なくなる。その結果、冷媒流通管と蓄冷材容器との間に多くの凝縮水が滞留すること、および当該凝縮水が凍結することが抑制され、蓄冷材容器全体の冷媒流通管からの剥がれを長期間にわたって防止することができる。さらに、蓄冷材容器の各側壁における貫通穴が形成されている部分においては、蓄冷材容器内の蓄冷材は、冷媒流通管の管壁のみを介して、冷媒流通管内を流れる冷媒により冷却されるので、蓄冷材容器内の蓄冷材の冷却効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の蓄冷機能付きエバポレータの全体構成を示す一部切り欠き斜視図である。
【図2】図1のA−A線拡大断面図である。
【図3】図2のB−B線断面図である。
【図4】図1の蓄冷機能付きエバポレータの蓄冷材容器の右側面図である。
【図5】図1の蓄冷機能付きエバポレータの蓄冷材容器の分解斜視図である。
【図6】蓄冷材容器の第1の変形例を示す図4相当の図である。
【図7】蓄冷材容器の第2の変形例を示す図2相当の図である。
【図8】図7の蓄冷材容器を示す図3相当の図である。
【図9】図7の蓄冷材容器を示す図4相当の図である。
【図10】インナーフィンの変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0027】
以下の説明において、通風方向下流側(図1、図2、図4、図6、図7および図9に矢印Xで示す方向)を前、これと反対側を後というものとする。
【0028】
さらに、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0029】
図1はこの発明による蓄冷機能付きエバポレータの全体構成を示し、図2〜図5はその要部の構成を示す。
【0030】
図1において、蓄冷機能付きエバポレータ(1)は、上下方向に間隔をおいて配置された左右方向にのびるアルミニウム製第1ヘッダタンク(2)およびアルミニウム製第2ヘッダタンク(3)と、両ヘッダタンク(2)(3)間に設けられた熱交換コア部(4)とを備えている。
【0031】
第1ヘッダタンク(2)は、前側(通風方向下流側)に位置する風下側上ヘッダ部(5)と、後側(通風方向上流側)に位置しかつ風下側上ヘッダ部(5)に一体化された風上側上ヘッダ部(6)とを備えている。風下側上ヘッダ部(5)の右端部に冷媒入口(7)が設けられ、風上側上ヘッダ部(6)の右端部に冷媒出口(8)が設けられている。第2ヘッダタンク(3)は、前側に位置する風下側下ヘッダ部(9)と、後側に位置しかつ風下側下ヘッダ部(9)に一体化された風上側下ヘッダ部(11)とを備えている。第2ヘッダタンク(3)の風下側下ヘッダ部(9)内と風上側下ヘッダ部(11)内とは、図示しない適当な手段により通じさせられている。
【0032】
図1および図2に示すように、熱交換コア部(4)には、長手方向が上下方向を向くとともに幅方向が通風方向(前後方向)を向いた複数のアルミニウム押出形材製扁平状冷媒流通管(12)が、左右方向に間隔をおいて並列状に配置されている。ここでは、前後方向に間隔をおいて配置された2つの冷媒流通管(12)からなる複数の組(13)が左右方向に間隔をおいて配置されており、前後の冷媒流通管(12)よりなる組(13)の隣り合うものどうしの間に通風間隙(14)が形成されている。前側の冷媒流通管(12)の上端部は風下側上ヘッダ部(5)に接続されるとともに、同下端部は風下側下ヘッダ部(9)に接続されている。また、後側の冷媒流通管(12)の上端部は風上側上ヘッダ部(6)に接続されるとともに、同下端部は風上側下ヘッダ部(11)に接続されている。
【0033】
熱交換コア部(4)における全通風間隙(14)のうち一部の複数の通風間隙(14)でかつ隣接していない通風間隙(14)において、蓄冷材(図示略)が封入されたアルミニウム製蓄冷材容器(15)が、前後両冷媒流通管(12)に跨るように配置されている。また、残りの通風間隙(14)に、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなり、かつ前後方向にのびる波頂部、前後方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部よりなるコルゲート状のアウターフィン(16)が、前後両冷媒流通管(12)に跨るように配置されて通風間隙(14)を形成する左右両側の組(13)を構成する前後両冷媒流通管(12)にろう付されている。すなわち、蓄冷材容器(15)が配置された通風間隙(14)の両側の通風間隙(14)にそれぞれアウターフィン(16)が配置されている。また、左右両端の冷媒流通管(12)の組(13)の外側にも両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなるアウターフィン(16)が配置されて前後両冷媒流通管(12)にろう付され、さらに左右両端のアウターフィン(16)の外側にアルミニウム製サイドプレート(17)が配置されてアウターフィン(16)にろう付されている。左右両端のアウターフィン(16)とサイドプレート(17)との間も通風間隙となっている。
【0034】
図2〜図5に示すように、蓄冷材容器(15)は長手方向を上下方向に向けるとともに幅方向を前後方向に向けた扁平状である。蓄冷材容器(15)内に、前後方向にのびる波頂部、前後方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部よりなるコルゲート状のアルミニウム製インナーフィン(18)が配置されており、波底部および波頂部が蓄冷材容器(15)の左右両側壁(15a)にろう付されている。蓄冷材容器(15)内へ充填される蓄冷材としては、凝固点が5〜10℃程度に調整されたパラフィン系潜熱蓄冷材が用いられる。具体的には、ペンタデカン、テトラデカンなどが用いられる。
【0035】
蓄冷材容器(15)の左右両側壁(15a)に、それぞれ外方に膨出した複数の凸部(19)が点在するように形成されるとともに、凸部(19)の平坦な膨出頂壁が冷媒流通管(12)に接触した状態でろう付されており、インナーフィン(18)は、左右両側壁(15a)の凸部(19)が形成されていない部分にろう付されている。凸部(19)の膨出頂壁は、冷媒流通管(12)に接触するが、インナーフィン(18)には接触しない。したがって、蓄冷材容器(15)の左右の各側壁(15a)に、インナーフィン(18)に接触する接触部分(21)と、インナーフィン(18)に接触しない非接触部分(22)とが設けられている。すなわち、左右いずれか一方から見て蓄冷材容器(15)の左右の各側壁(15a)における凸部(19)が形成されていない部分がインナーフィン(18)に接触する接触部分(21)であり、同じく凸部(19)の膨出頂壁に対応する部分がインナーフィン(18)に接触しない非接触部分(22)である。蓄冷材容器(15)の一方の側壁(15a)における凸部(19)の少なくとも一部と、他方の側壁(15a)における凸部(19)の少なくとも一部とは、左右いずれか一方から見てずれている。また、蓄冷材容器(15)を左右いずれか一方から見た際の左右の各側壁(15a)と冷媒流通管(12)とが重なる重なり部分において、蓄冷材容器(15)の左右の各側壁(15a)におけるインナーフィン(18)に接触する接触部分(21)の面積が、インナーフィン(18)に接触しない非接触部分(22)の面積よりも大きくなっている。
【0036】
凸部(19)は左右いずれか一方から見て上下方向に長い方形であり、上下方向に間隔をおいて形成された複数の凸部(19)からなる凸部列(19A)が前後方向に間隔をおいて複数列、ここでは5列設けられている。左右の各側壁(15a)において、前後に隣り合う凸部列(19A)における凸部(19)の高さ位置は、上下両端部の一部分が重複するが、ほぼ全体に上下方向にずれている。また、左側壁(15a)と右側壁(15a)における前後方向の同一位置の凸部列(19A)の凸部(19)の高さ位置は、上下両端部の一部分が重複するが、ほぼ全体に上下方向にずれている。また、前後の冷媒流通管(12)に、前側および後側の2列の凸部列(19A)の凸部(19)がろう付されており、1つの蓄冷材容器(15)の一方の側壁(15a)における各冷媒流通管(12)にろう付される2列の凸部列(19A)のうち前側凸部列(19A)の各凸部(19)の高さ位置は、他方の側壁(15a)における各冷媒流通管(12)にろう付される2列の凸部列(19A)のうち後側凸部列(19A)の各凸部(19)の高さ位置と同一であり、同じく一方の側壁(15a)における各冷媒流通管(12)にろう付される2列の凸部列(19A)のうち後側凸部列(19A)の各凸部(19)の高さ位置は、他方の側壁(15a)における各冷媒流通管(12)にろう付される2列の凸部列(19A)のうち前側凸部列(19A)の各凸部(19)の高さ位置と同一である。その結果、蓄冷材容器(15)の一方の側壁(15a)における凸部(19)の少なくとも一部と、他方の側壁(15a)における凸部(19)の少なくとも一部とが、左右いずれか一方から見てずれている。
【0037】
蓄冷材容器(15)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートにプレス加工が施されることにより形成され、かつ前後両側縁部どうしが全長にわたってろう付された左右両側板(23)と、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートにプレス加工が施されることにより形成され、かつ左右両側板(23)の上下両端にろう付された両端閉鎖板(24)とよりなる。左右両側板(23)の相互にろう付された前後両側縁部を除いた部分には、上下方向にのびるとともに左右方向外方に膨出した外方膨出部(23a)が形成されており、これにより左右両側板(23)間に上下方向にのびるとともに上下両端が開口した蓄冷材封入空間(25)が形成されている。蓄冷材封入空間(25)の両端開口が閉鎖板(24)により閉鎖されている。
【0038】
上述した蓄冷機能付きエバポレータ(1)は、車両のエンジンを駆動源とする圧縮機、圧縮機から吐出された冷媒を冷却するコンデンサ(冷媒冷却器)、コンデンサを通過した冷媒を減圧する膨張弁(減圧器)とともに冷凍サイクルを構成し、カーエアコンとして、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両、たとえば自動車に搭載される。そして、圧縮機が作動している場合には、圧縮機で圧縮されてコンデンサおよび膨張弁を通過した低圧の気液混相の2相冷媒が、冷媒入口(7)を通って蓄冷機能付きエバポレータ(1)の風下側上ヘッダ部(5)内に入り、全冷媒流通管(12)を通って風上側上ヘッダ部(6)の冷媒出口(8)から流出する。そして、冷媒が冷媒流通管(12)内を流れる間に、通風間隙(14)を通過する空気と熱交換をし、冷媒は気相となって流出する。
【0039】
このとき、冷媒流通管(12)内を流れる冷媒の有する冷熱が、蓄冷材容器(15)の両側壁(15a)における冷媒流通管(12)にろう付されている凸部(19)の膨出頂壁から直接蓄冷材容器(15)内の蓄冷材に伝わるとともに、凸部(19)の膨出頂壁から接触部分(21)およびインナーフィン(18)を経て蓄冷材容器(15)内の蓄冷材に伝わって蓄冷材に冷熱が蓄えられる。
【0040】
圧縮機が停止した場合には、蓄冷材容器(15)内の蓄冷材に蓄えられた冷熱が、蓄冷材容器(15)の両側壁(15a)における冷媒流通管(12)にろう付されている凸部(19)の膨出頂壁から直接冷媒流通管(12)に伝わるとともに、インナーフィン(18)、接触部分(21)および凸部(19)の膨出頂壁を経て冷媒流通管(12)に伝わり、さらに冷媒流通管(12)を通過して当該冷媒流通管(12)にろう付されているアウターフィン(16)に伝わる。そして、アウターフィン(16)を介して蓄冷材容器(15)が配置されている通風間隙(14)の両隣の通風間隙(14)を通過する空気に伝えられる。したがって、エバポレータ(1)を通過した風の温度が上昇したとしても、当該風は冷却されるので、冷房能力の急激な低下が防止される。
【0041】
図6〜図9は蓄冷材容器の変形例を示す。
【0042】
図6に示す蓄冷材容器(30)の場合、左右両側壁(30a)に、それぞれ外方に膨出しかつ膨出頂壁が平坦な複数の凸部(31)が上下方向に間隔をおいて形成されるとともに、凸部(31)の平坦な膨出頂壁が冷媒流通管(12)に接触した状態でろう付されており、インナーフィン(18)は、左右両側壁(30a)の凸部(31)が形成されていない部分にろう付されている。凸部(31)の膨出頂壁は、冷媒流通管(12)に接触するが、インナーフィン(18)には接触しない。したがって、蓄冷材容器(30)の左右の各側壁(30a)に、インナーフィン(18)に接触する接触部分(21)と、インナーフィン(18)に接触しない非接触部分(22)とが設けられている。すなわち、左右いずれか一方から見て蓄冷材容器(30)の左右の各側壁(30a)における凸部(31)が形成されていない部分がインナーフィン(18)に接触する接触部分(21)であり、同じく凸部(31)の膨出頂壁に対応する部分がインナーフィン(18)に接触しない非接触部分(22)である。蓄冷材容器(30)の一方の側壁(30a)における凸部(31)の少なくとも一部と、他方の側壁(30a)における凸部(31)の少なくとも一部とは、左右いずれか一方から見てずれている。また、蓄冷材容器(30)を左右いずれか一方から見た際の左右の各側壁(30a)と冷媒流通管(12)とが重なる重なり部分において、蓄冷材容器(30)の左右の各側壁(30a)におけるインナーフィン(18)に接触する接触部分(21)の面積が、インナーフィン(18)に接触しない非接触部分(22)の面積よりも大きくなっている。
【0043】
凸部(31)は左右いずれか一方から見て前後方向に長い方形であり、前側部分が前側冷媒流通管(12)にろう付されるとともに、後側部分が後側冷媒流通管(12)にろう付されている。蓄冷材容器(30)の左右両側壁(30a)における凸部(31)の高さ位置は、全体に上下方向にずれている。その結果、蓄冷材容器(15)の一方の側壁(30a)の凸部(31)の少なくとも一部と、他方の側壁(30a)の凸部(31)の少なくとも一部とが、左右いずれか一方から見てずれている。
【0044】
蓄冷材容器(30)のその他の構成は、上述した実施形態の蓄冷材容器(15)と同様である。
【0045】
図7〜図9に示す蓄冷材容器(40)の場合、蓄冷材容器(40)の両側壁(40a)の前側部分および後側部分がそれぞれ前後の冷媒流通管(12)にろう付されている。蓄冷材容器(40)の左右両側壁(40a)における冷媒流通管(12)にろう付されている部分に、それぞれ複数の貫通穴(41)が点在するように形成されており、インナーフィン(18)は、左右両側壁(40a)における貫通穴(41)が形成されていない部分にろう付されている。左右両側壁(40a)の貫通穴(41)が形成されていない部分は冷媒流通管(12)およびインナーフィン(18)のいずれにも接触する。また、左右両側壁(40a)の貫通穴(41)が形成されている部分は冷媒流通管(12)およびインナーフィン(18)のいずれにも接触しない。したがって、蓄冷材容器(40)の左右の各側壁(40a)に、インナーフィン(18)に接触する接触部分(21)と、インナーフィン(18)に接触しない非接触部分(22)とが設けられている。すなわち、左右いずれか一方から見て蓄冷材容器(40)の左右の各側壁(40a)における貫通穴(41)が形成されていない部分がインナーフィン(18)に接触する接触部分(21)であり、同じく貫通穴(41)に対応する部分がインナーフィン(18)に接触しない非接触部分(22)である。蓄冷材容器(40)の一方の側壁(40a)における貫通穴(41)の少なくとも一部と、他方の側壁(40a)における貫通穴(41)の少なくとも一部とは、左右いずれか一方から見てずれている。また、蓄冷材容器(40)を左右いずれか一方から見た際の左右の各側壁(40a)と冷媒流通管(12)とが重なる重なり部分において、蓄冷材容器(40)の左右の各側壁(40a)におけるインナーフィン(18)に接触する接触部分(21)の面積が、インナーフィン(18)に接触しない非接触部分(22)の面積よりも大きくなっている。
【0046】
貫通穴(41)は左右いずれか一方から見て上下方向に長い方形であり、上下方向に間隔をおいて形成された複数の貫通穴(41)からなる穴列(41A)が前後方向に間隔をおいて複数列、ここでは4列設けられている。左右の各側壁(40a)において、前後に隣り合う穴列(41A)における貫通穴(41)の高さ位置は、上下両端部の一部分が重複するが、ほぼ全体に上下方向にずれている。また、左側壁(40a)と右側壁(40a)における前後方向の同一位置の穴列(41A)の貫通穴(41)の高さ位置は、上下両端部の一部分が重複するが、ほぼ全体に上下方向にずれている。また、前後の冷媒流通管(12)に、蓄冷材容器(40)の左右両側壁(40a)における前側および後側の2列の穴列(41A)の貫通穴(41)が形成された部分がろう付されており、1つの蓄冷材容器(40)の一方の側壁(40a)における各冷媒流通管(12)にろう付される部分の2列の穴列(41A)のうち前側穴列(41A)の各貫通穴(41)の高さ位置は、他方の側壁(40a)における各冷媒流通管(12)にろう付される2列の穴列(41A)のうち後側穴列(41A)の各貫通穴(41)の高さ位置と同一であり、同じく一方の側壁(40a)における各冷媒流通管(12)にろう付される2列の穴列(41A)のうち後側穴列(41A)の各貫通穴(41)の高さ位置は、他方の側壁(40a)における各冷媒流通管(12)にろう付される2列の穴列(41A)のうち前側穴列(41A)の各貫通穴(41)の高さ位置と同一である。その結果、蓄冷材容器(40)の一方の側壁(40a)の貫通穴(41)の少なくとも一部と、他方の側壁(40a)の貫通穴(41)の少なくとも一部とが、左右いずれか一方から見てずれている。
【0047】
蓄冷材容器(40)のその他の構成は、上述した実施形態の蓄冷材容器(15)と同様である。
【0048】
図10はインナーフィンの変形例を示す。
【0049】
図10に示すインナーフィン(50)はアルミニウムからオフセット状に形成されたものである。インナーフィン(50)は、前後方向(通風方向)にのびる波頂部(51a)、前後方向にのびる波底部(51b)および波頂部(51a)と波底部(51b)とを連結する連結部(51c)を有する波状帯板(51)が、通風方向に複数並べられるとともに相互に一体に連結されることにより形成されたものであり、前後方向に隣り合う2つの帯板(51)の波頂部(51a)どうしおよび波底部(51b)どうしは、上下方向に位置ずれしている。そして、インナーフィン(50)の帯板(51)の波頂部(51a)および波底部(51b)が蓄冷材容器の左右両側壁にろう付されるようになっている。
【産業上の利用可能性】
【0050】
この発明による蓄冷機能付きエバポレータは、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両のカーエアコンを構成する冷凍サイクルに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0051】
(1):蓄冷機能付きエバポレータ
(12):冷媒流通管
(14):通風間隙
(15)(30)(40):蓄冷材容器
(15a)(30a)(40a):側壁
(16):アウターフィン
(18):インナーフィン
(19):凸部
(21):インナーフィンに接触する接触部分
(22):インナーフィンに接触しない非接触部分
(41):貫通穴
(50):インナーフィン
(51):波板
(51a):波頂部
(51b):波底部
(51c):連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向にのびるとともに幅方向が通風方向を向いた複数の扁平状冷媒流通管が、互いに間隔をおいて並列状に配置されており、隣り合う冷媒流通管どうしの間に通風間隙が形成され、全通風間隙のうち一部の通風間隙に蓄冷材が封入された蓄冷材容器が配置され、蓄冷材容器内にインナーフィンが配置されている蓄冷機能付きエバポレータであって、
蓄冷材容器の左右の各側壁に、インナーフィンに接触する接触部分と、インナーフィンに接触しない非接触部分とが設けられており、蓄冷材容器を左右いずれか一方から見た際の左右の各側壁と冷媒流通管とが重なる重なり部分において、蓄冷材容器の左右の各側壁における前記接触部分の面積が前記非接触部分の面積よりも大きくなっている蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項2】
前記非接触部分が、蓄冷材容器の左右の各側壁に点在するように複数設けられており、蓄冷材容器の一方の側壁における前記非接触部分の少なくとも一部と、他方の側壁における前記非接触部分の少なくとも一部とが、左右いずれか一方から見てずれている請求項1記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項3】
蓄冷材容器の左右の各側壁に、外方に膨出した複数の凸部が点在するように形成されるとともに凸部の膨出頂壁が冷媒流通管に接触しており、左右いずれか一方から見て蓄冷材容器の左右の各側壁における凸部が形成されていない部分がインナーフィンに接触する接触部分であり、同じく凸部の膨出頂壁に対応する部分がインナーフィンに接触しない非接触部分である請求項1記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項4】
蓄冷材容器の一方の側壁における凸部の少なくとも一部と、他方の側壁における凸部の少なくとも一部とが、左右いずれか一方から見てずれている請求項3記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項5】
蓄冷材容器の左右両側壁が冷媒流通管に接合されるとともに、蓄冷材容器の左右の各側壁における冷媒流通管に接合されている部分に貫通穴が形成されており、左右いずれか一方から見て蓄冷材容器の左右の各側壁における貫通穴が形成されていない部分がインナーフィンに接触する接触部分であり、同じく貫通穴が形成された部分がインナーフィンに接触しない非接触部分である請求項1記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項6】
蓄冷材容器の一方の側壁における貫通穴の少なくとも一部と、他方の側壁における貫通穴の少なくとも一部とが、左右いずれか一方から見てずれている請求項5記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項7】
インナーフィンがオフセット状であり、通風方向にのびる波頂部、通風方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部を有する波状帯板が、通風方向に複数並べられるとともに相互に一体に連結されることにより形成され、通風方向に隣り合う2つの帯板の波頂部どうしおよび波底部どうしが上下方向に位置ずれしている請求項1〜6のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項8】
インナーフィンがコルゲート状であり、通風方向にのびる波頂部、通風方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部よりなる請求項1〜6のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項9】
蓄冷材容器が配置された通風間隙の隣の通風間隙にアウターフィンが配置されている請求項1〜8のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate