説明

蓄圧式燃料噴射装置の制御装置及び制御方法並びに蓄圧式燃料噴射装置

【課題】アイドリングストップ制御時における、圧力制御弁の作動にかかるバッテリの消費電力を最小限に抑えることのできる、蓄圧式燃料噴射装置の制御装置及び制御方法並びに蓄圧式燃料噴射装置を提供する。
【解決手段】コモンレールと、ノーマルオープン型の構造を有する圧力制御弁と、コモンレールに接続され内燃機関の気筒内に前記燃料を噴射する燃料噴射弁と、を備えた蓄圧式燃料噴射装置を制御するための制御装置であって、内燃機関の自動停止及び再始動を行うアイドリングストップ制御手段と、自動停止中の前記コモンレール内の圧力低下量を基に、自動停止中における前記圧力制御弁の通電電流値を学習する圧力制御弁通電電流値学習手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄圧式燃料噴射装置の制御装置及び制御方法並びに蓄圧式燃料噴射装置に関する。特に、ノーマルオープン型の構造を有する圧力制御弁を備え、内燃機関のアイドリングストップ制御を実行可能な蓄圧式燃料噴射装置を制御するための制御装置及び制御方法、並びに蓄圧式燃料噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンをはじめとする内燃機関の気筒内に燃料を噴射する装置として、高圧ポンプによって加圧された燃料を蓄積するためのコモンレールを備えた蓄圧式燃料噴射装置が用いられている。このコモンレールには複数の燃料噴射弁が接続されており、高圧の燃料が各燃料噴射弁に供給された状態で各燃料噴射弁への通電制御が行われることにより、様々な噴射パターンで内燃機関の気筒内に燃料が噴射される。
【0003】
このような蓄圧式燃料噴射装置では、コモンレール内の圧力(以下「レール圧」と称する。)が燃料噴射特性に大きく影響する。このレール圧の制御方法として、レール圧の目標値(以下「目標レール圧」と称する。)に応じてコモンレールに接続された圧力制御弁の開度を調節し、コモンレールから低圧側に排出される燃料の流量を調節することによりレール圧を制御する方法がある。
【0004】
この圧力制御弁として、燃料の流路を開閉する弁部材がスプリングの付勢力により開弁方向に付勢されて、非通電状態で燃料の流路が開放されるノーマルオープン型の構造を有するものがある。一般に内燃機関の停止時にはレール圧が減少させられるが、ノーマルオープン型の構造を有する圧力制御弁が用いられていれば、内燃機関の停止時に通電制御を実施することなくレール圧を低下させることができる。
【0005】
ところで、近年、蓄圧式燃料噴射装置を備えた内燃機関の制御において、燃費の向上や、排気ガス量及び騒音の低減等を目的として、内燃機関が搭載された車両の一時停止中に内燃機関を自動停止させるアイドリングストップ制御が実用化され始めている。アイドリングストップ制御においては、所定のアイドリングストップ条件が成立すると内燃機関が自動停止する一方、所定の再始動条件が成立すると内燃機関が再始動する。
【0006】
この内燃機関のアイドリングストップ制御を実行可能な車両においては、自動停止状態からの再始動性が商品性に重要な影響を与える要素となっており、内燃機関の一時停止中に燃料噴射が可能な状態を維持して、アイドリングストップ制御時の内燃機関の再始動性を向上させることのできる制御装置が提案されている。具体的には、エンジンを自動的に停止しかつエンジンを自動的に再始動するエンジン自動停止・再始動装置を具備し、エンジン自動停止・再始動装置が作動されることなくエンジンが停止されるときにはレール圧を減少させ、エンジン自動停止・再始動装置が作動されることによってエンジンが停止されるときには、エンジン自動停止・再始動装置が作動されることなくエンジンが停止されるときのレール圧の減少量よりもレール圧の減少量を少なくする制御装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−41978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された制御装置は、コモンレールに接続されたノーマルクローズ型の減圧弁(圧力制御弁)を備えており、イグニションスイッチがオフにされて内燃機関が停止されるときには圧力制御弁を駆動しレール圧を低下させる一方、アイドリングストップ制御によって内燃機関が停止されるときには圧力制御弁を駆動しないで減圧弁が閉じられるように構成されている。
【0009】
これに対し、ノーマルオープン型の圧力制御弁を用いる場合、アイドリングストップ制御によって内燃機関が自動停止するときに圧力制御弁を閉弁させるためには、圧力制御弁に対して通電を行い、弁部材を開弁方向に付勢するスプリングの付勢力及びレール圧の和に抗して当該弁部材を閉弁方向に付勢するための電磁力を発生させなければならない。
【0010】
ここで、量産品の圧力制御弁は、通電電流値に対し発生する電磁力にある程度のばらつきがある。そのため、アイドリングストップ制御時における圧力制御弁の通電電流値は、発生する電磁力が一番小さい圧力制御弁(以下、下限品と称する)が使用される場合であっても閉弁させることが可能な値となっている。しかしその一方で、下限品以外の圧力制御弁が使用される際には、アイドリングストップ制御時に必要以上の電流を流すこととなり、バッテリの消費電力に無駄が生じていた。
【0011】
そこで、本発明の発明者は鋭意努力し、アイドリングストップ制御による内燃機関の自動停止中のレール圧低下量を測定しつつ、その測定値に応じて圧力制御弁の通電電流値を調節しながら通電電流の最適値を学習することにより、このような問題を解決できることを見出し、本発明を完成させたものである。すなわち本発明は、アイドリングストップ制御時における、圧力制御弁の作動にかかるバッテリの消費電力を最小限に抑えることのできる、蓄圧式燃料噴射装置の制御装置及び制御方法並びに蓄圧式燃料噴射装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、高圧ポンプによって圧送される燃料を蓄積するコモンレールと、コモンレール内の圧力を調節するための弁であって非通電状態で燃料通路を開放するノーマルオープン型の構造を有する圧力制御弁と、コモンレールに接続され内燃機関の気筒内に燃料を噴射する燃料噴射弁と、を備えた蓄圧式燃料噴射装置を制御するための制御装置であって、内燃機関の自動停止及び再始動を行うアイドリングストップ制御手段と、自動停止中のコモンレール内の圧力低下量を基に、自動停止中における圧力制御弁の通電電流値を学習する圧力制御弁通電電流値学習手段と、を備えたことを特徴とする蓄圧式燃料噴射装置の制御装置が提供される。
【0013】
また、本発明の蓄圧式燃料噴射装置の制御装置を構成するにあたり、圧力制御弁通電電流値学習手段は、圧力低下量が所定値未満の時、通電電流値を減少させる一方、圧力低下量が所定値以上の時、通電電流値を増加させることにより、圧力制御弁の通電電流値を学習することが好ましい。
【0014】
また、本発明の蓄圧式燃料噴射装置の制御装置を構成するにあたり、圧力制御弁通電電流値学習手段は、通電電流値を増加させる場合において、増加後の通電電流値が所定の制限値以上となる時、通電電流値を段階的に減少させ、減少後の圧力低下量が前回の圧力低下量を上回った時に、前回の通電電流値を学習値とすることが好ましい。
【0015】
また、本発明の別の態様は、上述したいずれかの制御装置を備えた蓄圧式燃料噴射装置である。
【0016】
また、本発明の別の態様は、高圧ポンプによって圧送される燃料を蓄積するコモンレールと、コモンレール内の圧力を調節するための弁であって非通電状態で燃料通路を開放するノーマルオープン型の構造を有する圧力制御弁と、コモンレールに接続され内燃機関の気筒内に燃料を噴射する燃料噴射弁と、を備えた蓄圧式燃料噴射装置を制御するための制御方法であって、内燃機関の自動停止及び再始動を行うアイドリングストップ制御時において、自動停止中のコモンレール内の圧力低下量を基に自動停止中における圧力制御弁の通電電流値を学習することを特徴とする蓄圧式燃料噴射装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の蓄圧式燃料噴射装置の制御装置及び制御方法並びに蓄圧式燃料噴射装置によれば、アイドリングストップ制御による内燃機関の自動停止中のコモンレール内の圧力低下量を基に、自動停止中における圧力制御弁の通電電流値を学習することにより、アイドリングストップ制御時における、圧力制御弁の作動にかかるバッテリの消費電力を最小限に抑えることができる。
【0018】
また、本発明の蓄圧式燃料噴射装置の制御装置によれば、圧力低下量が所定値未満の時、通電電流値を減少させる一方、前記圧力低下量が所定値以上の時、通電電流値を増加させることにより、圧力制御弁の通電電流値を学習することで、圧力制御弁を閉弁させるための電磁力が必要以上に大きい場合、あるいは不足している場合双方において、圧力制御弁通電電流の最適値を学習することができる。
【0019】
また、本発明の蓄圧式燃料噴射装置の制御装置によれば、通電電流値を増加させる場合において、増加後の通電電流値が所定の制限値以上となる時、通電電流値を段階的に減少させ、減少後の圧力低下量が前回の圧力低下量を上回った時に、前回の通電電流値を学習値とすることにより、所定値以上の圧力低下が圧力制御弁以外の要因による場合であっても、圧力制御弁通電電流の最適値を学習することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態における蓄圧式燃料噴射装置の構成例を示す全体図である。
【図2】本発明の実施の形態における蓄圧式燃料噴射装置の制御装置を説明するためのブロック図である。
【図3】圧力制御弁電流値学習の手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】電流減探索モードの手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】電流増探索モードの手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】妥協電流探索モードの手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、適宜図面を参照して、本発明の蓄圧式燃料噴射装置の制御装置及び制御方法並びに蓄圧式燃料噴射装置に関する実施の形態について具体的に説明する。ただし、この実施形態は本発明の一態様を示すものであって本発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更することが可能である。なお、それぞれの図中、同じ符号を付してあるものは同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。
【0022】
1.蓄圧式燃料噴射装置
図1は、本発明の実施の形態に係る蓄圧式燃料噴射装置10の全体構成を示している。この蓄圧式燃料噴射装置10は、車両に搭載された図示されない内燃機関の気筒内に燃料を噴射するための装置であって、燃料タンク1と、低圧ポンプ11と、高圧ポンプ13と、流量制御弁19と、コモンレール15と、圧力制御弁23と、燃料噴射弁17と、制御装置50(ECU)等を主たる要素として備えている。
【0023】
低圧ポンプ11と高圧ポンプ13の加圧室13aとは低圧燃料通路31で接続され、高圧ポンプ13の加圧室13aとコモンレール15、及びコモンレール15と燃料噴射弁17はそれぞれ高圧燃料通路33、35で接続されている。また、高圧ポンプ13、コモンレール15、燃料噴射弁17には、燃料噴射弁17から噴射されない余剰燃料を燃料タンク1に戻すためのリターン通路37、38、39が接続されている。
【0024】
高圧ポンプ13内の低圧燃料通路31の途中には、加圧室13aに送られる燃料の流量を調節するための流量制御弁19が備えられている。流量制御弁19は、例えば供給電流値によって弁部材のストローク量が可変とされ、燃料通過路の面積が調節可能な電磁比例式の流量制御弁が用いられる。本実施形態の流量制御弁19は、非通電状態で燃料の流路が全開となるノーマルオープンの流量制御弁として構成されている。ただし、非通電状態で燃料の流路が全閉となるノーマルクローズの流量制御弁であってもよい。
【0025】
高圧ポンプ13内の、流量制御弁19よりも上流側の低圧燃料通路31から分岐する燃料通路には、流量制御弁19と並列に配置された圧力調整弁21が備えられている。この圧力調整弁21は、燃料タンク1に通じるリターン通路37に接続されており、前後の差圧、すなわち、低圧燃料通路31内の圧力とリターン通路37内の圧力との差が所定値を越えたときに開弁されるオーバーフローバルブが用いられている。低圧ポンプ11によって燃料が圧送されている状態においては、低圧燃料通路31内の圧力が、リターン通路37内の圧力に対して所定の差圧分大きくなるように調整される。
【0026】
低圧ポンプ11は、燃料タンク1内の燃料を吸い上げて圧送し、低圧燃料通路31を介して高圧ポンプ13の加圧室13aに燃料を供給する。この低圧ポンプ11は燃料タンク1内に備えられたインタンクの電動ポンプであって、バッテリから供給される電流によって駆動させられる。ただし、低圧ポンプ11は、燃料タンク1の外部に設けられるものであってもよく、また、図示されない内燃機関動力によって駆動するギアポンプであってもよい。
【0027】
高圧ポンプ13は、低圧ポンプ11によって燃料吸入弁27を介して加圧室13aへ導入される燃料をプランジャ29によって加圧し、高圧状態の燃料を燃料吐出弁28及び高圧燃料通路33を介してコモンレール15に圧送する。燃料吐出弁28は、吐出側に位置するレール圧が高いほどシール性が高められる逆止弁構造となっている。
【0028】
高圧ポンプ13を駆動するカム14は、図示されない内燃機関のドライブシャフトにギアを介して連結されたカムシャフトに固定されている。図1に示す高圧ポンプ13は二本のプランジャ29を備えており、二本のプランジャ29がカム14によって押し上げられ、二つの加圧室13a内で燃料が加圧されてコモンレール15に対して高圧の燃料が圧送される。本実施形態の高圧ポンプ13は、二つのプランジャ29及び加圧室13aを備えて構成されているが、プランジャ数はこれに限定されない。
【0029】
図1に示す高圧ポンプ13には燃料温度センサ24が備えられている。燃料温度センサ24のセンサ信号Stは制御装置50に送られ、このセンサ信号Stに基づいて低圧燃料通路31内を流通する燃料温度Tfが検出される。ただし、燃料温度センサは、蓄圧式燃料噴射装置10内の燃料通路のいずれの場所に備えられていても構わない。
【0030】
コモンレール15は、高圧ポンプ13によって加圧された高圧状態の燃料を蓄積し、高圧燃料通路35を介して接続された燃料噴射弁17に燃料を供給する。このコモンレール15にはレール圧センサ25及び圧力制御弁23が取り付けられている。レール圧センサ25のセンサ信号Spは制御装置50に送られ、このセンサ信号Spに基づいてレール圧Prが検出される。
【0031】
圧力制御弁23は、コモンレール15から燃料タンク1へと戻す高圧の燃料の流量を調節するために用いられる。また圧力制御弁23は、燃料の通路を開閉するための弁部材のストローク量が供給電流値によって可変とされ、燃料通過路の面積が調節可能な電磁比例式の制御弁が用いられる。本実施形態の圧力制御弁23は、非通電状態で燃料の流路が全開となるノーマルオープン型の圧力制御弁として構成されている。ノーマルオープン型の圧力制御弁は、弁部材を開弁方向に付勢するスプリングの付勢力とレール圧の和が、弁部材を閉弁方向に付勢する力を上回っているときに開弁する。
【0032】
燃料噴射弁17は、噴射孔が設けられたノズルボディと、進退移動により噴射孔を開閉するノズルニードルとを備えている。燃料噴射弁17は、ノズルニードルの後端側に背圧を負荷することで噴射孔が閉じられる一方、負荷された背圧が逃されることで噴射孔が開かれる。レール圧が噴射可能圧力以上のときに、燃料噴射弁17による正常な燃料噴射が可能になっている。燃料噴射弁17としては、背圧制御手段としてピエゾ素子が備えられた電歪型のピエゾインジェクタや、背圧制御手段として電磁ソレノイドが備えられた電磁制御型のマグネットインジェクタが用いられる。
【0033】
なお、本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10に備えられた燃料噴射弁17は、動的リーク以外に、微細な隙間から漏れ出すリーク(静的リーク)が生じないか、あるいは極めて少量のリークしか生じない構造となっている。
【0034】
流量制御弁19及び圧力制御弁23は、制御装置50によって通電制御が行われるようになっており、通電量(操作量)に応じて燃料通過面積が比例的に変化し、通過する燃料の流量が調節されるようになっている。この蓄圧式燃料噴射装置10においては、流量制御弁19又は圧力制御弁23を用いて、あるいは両方の制御弁を併用して、圧力センサ25によって検出される実レール圧Prが目標レール圧Ptgtとなるように制御が行われるようになっている。レール圧の制御を、流量制御弁19を用いて行うか、圧力制御弁23を用いて行うか、あるいはこれらの制御弁を併用して行うかは、主として内燃機関の運転状態に応じて切り分けられている。
【0035】
2.制御装置(ECU)
図2は、本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置10を制御するための制御装置50のうち、アイドリングストップ制御及びアイドリングストップ時の圧力制御弁電流値学習制御に関連する部分を機能的なブロックで表した構成例を示している。この制御装置50は、アイドリングストップ制御手段61と、目標レール圧演算手段64と、レール圧検出手段65と、流量制御弁制御手段66と、圧力制御弁制御手段67と、燃料噴射弁制御手段68と、圧力制御弁電流値学習手段69等を備えている。制御装置50は、公知の構成からなるマイクロコンピュータを中心に構成されており、各手段はマイクロコンピュータによるプログラムの実行によって実現される。
【0036】
制御装置50は、レール圧センサ25や燃料温度センサ24、機関回転数Neを検出する回転数センサ、車両の車速Vを検出する車速センサ、アクセルペダルの操作量Accを検出するアクセルセンサ、ブレーキペダルの操作量Brを検出するブレーキセンサ等の各種センサ信号が読込み可能になっている。また、制御装置50には、各手段での演算結果や検出結果を記憶するための図示しないRAM(Random Access Momory)が備えられている。
【0037】
アイドリングストップ制御手段61は、所定のアイドリングストップ条件が成立したときに、燃料噴射弁制御手段68、流量制御弁制御手段66、圧力制御弁制御手段67、および圧力制御弁電流値学習手段69に対してアイドリングストップ条件成立信号を送信する。また、アイドリングストップ制御手段61は、図示されない内燃機関が自動停止状態にある間に所定の再始動条件が成立すると、燃料噴射弁制御手段68、流量制御弁制御手段66、圧力制御弁制御手段67、および圧力制御弁電流値学習手段69に対して再始動条件成立信号を送信する。
【0038】
アイドリングストップ条件は、例えばエンジンスイッチSwがオンの状態にあること、ギアセンサの検出位置Sg がニュートラルであること、ブレーキペダルセンサの検出位置Sbが踏まれた状態にあること、機関回転数Neが所定の閾値以下であること、車速Vが0である状態が所定時間以上継続したこと等のうちの少なくとも一つ以上の条件がそろうこととすることができるが、これに制限されるものではない。
【0039】
また、再始動条件は、図示されない内燃機関が自動停止状態にある間に、ギアセンサの検出位置Sgがニュートラル状態から解除されたこと、アクセルペダルAccが踏まれたこと等のうちのいくつかの条件がそろうこととすることができるが、これに制限されるものではない。
【0040】
目標レール圧演算手段64は、機関回転数Neやアクセル操作量Acc等に基づいて目標レール圧Ptgtを算出する。また、レール圧検出手段65は、レール圧センサ25のセンサ信号Spを継続的に読み込み、レール圧Prを算出する。
【0041】
燃料噴射弁制御手段68は、機関回転数Neやアクセル操作量Acc等に基づいて目標燃料噴射量Qtgtを算出するとともに、レール圧Prに応じて目標燃料噴射量Qtgtに見合う燃料噴射弁17の制御信号を生成し、燃料噴射弁17に対して制御信号を出力する。また、燃料噴射弁制御手段68は、アイドリングストップ条件成立信号を受け取ると燃料噴射を停止させる一方、再始動条件成立を示す信号を受け取ると燃料噴射を再開させる。本実施形態において、燃料噴射弁制御手段68は、レール圧Prが噴射可能圧力Pr_inj以上のときに燃料噴射弁17への制御信号の出力が許可されるようになっている。
【0042】
流量制御弁制御手段66及び圧力制御弁制御手段67は、基本的には、レール圧Prが目標レール圧Ptgtとなるように、それぞれ流量制御弁19あるいは圧力制御弁23の通電制御を実行する。具体的に、流量制御弁制御手段66は、流量制御弁19の開度を調節することで高圧ポンプ13の加圧室13aに供給される燃料の流量を制御し、高圧ポンプ13からコモンレール15に圧送される高圧の燃料の流量を変えることでレール圧Prを調節する。また、圧力制御弁制御手段67は、圧力制御弁23の開度を調節することでコモンレール15からリターン通路38に排出される燃料の流量を制御し、レール圧Prを調節する。
【0043】
また、流量制御弁制御手段66は、アイドリングストップ条件成立信号を受け取ると流量制御弁19に対する通電を遮断する。本実施形態の流量制御弁19はノーマルオープン型の構成となっているために、通電が遮断されると流量制御弁19は全開となる。
【0044】
また、圧力制御弁制御手段67は、アイドリングストップ条件成立信号を受け取ると、圧力制御弁23の通電電流値を、アイドリングストップ条件成立時の通電電流値Iaとする制御を行う。この通電電流値Iaは、後述するアイドリングストップ時の通電電流値の学習値である。
【0045】
圧力制御弁電流値学習手段69は、後述するように、アイドリングストップ時における圧力制御弁23の通電電流最適値を学習するための処理を行い、学習値を圧力制御弁23の通電電流学習値Iaとして圧力制御弁制御手段67へ出力する。
【0046】
3.圧力制御弁通電電流値学習方法
次に、上述した制御装置50によって実行される、アイドリングストップ制御時における圧力制御弁通電電流値の学習処理について、図3〜図6に示すフローチャートに基づいて具体的に説明する。尚、本処理は内燃機関の運転中に所定の周期で繰り返し実行されるものとなっている。
【0047】
制御装置50による処理が開始されると、最初にアイドリングストップ制御中であるか否か、すなわち、アイドリングストップ制御によるエンジン停止中であるか否かが判定される(図3のステップS102)。ステップS102において、アイドリングストップ制御中であると判定された場合(YESの場合)、ステップS104へ進む一方、アイドリングストップ制御中ではないと判定された場合(NOの場合)、図示されないメインルーチンへ一旦戻る。
【0048】
ステップS104においては、アイドリングストップ制御時における圧力制御弁通電電流値の学習を行うための所定の条件が成立しているか否かが判定され、所定の条件が成立していると判定された場合(YESの場合)、ステップS106へ進む一方、所定の条件が成立していないと判定された場合(NOの場合)には、図示されないメインルーチンへ一旦戻る。ここで、所定の条件とは、燃料温度、レール圧、エンジン冷却水温等を使用することができるが、これらの項目やその数値は、試験やシミュレーション等により定められるものである。
【0049】
ステップS106においては、現在の学習モードが後述する電流減探索モードであるか否かが判定され、電流減探索モードであると判定された場合(YESの場合)、後述するステップS202へ進む一方、電流減探索モードではないと判定された場合(NOの場合)、ステップS108へ進むこととなる。
【0050】
ステップS108においては、現在の学習モードが後述する電流増探索モードであるか否かが判定され、電流増探索モードであると判定された場合(YESの場合)、後述するステップS302へ進む一方、電流増探索モードではないと判定された場合(NOの場合)、ステップS110へ進むこととなる。
【0051】
ステップS110においては、現在の学習モードが後述する妥協電流探索モードであるか否かが判定され、妥協電流探索モードであると判定された場合(YESの場合)、後述するステップS402へ進む一方、妥協電流探索モードではないと判定された場合(NOの場合)、ステップS112へ進むこととなる。
【0052】
すなわち、電流減探索モード、電流増探索モード、妥協電流探索モードのいずれでもない場合(ステップS106〜S110でNOの場合)にステップS112へ進むこととなるが、いずれの学習モードが実行されているかは、フラグにより判別することができる。
【0053】
ステップS112においては、前回学習値があるか否か、すなわち、アイドリングストップ制御時における圧力制御弁23の通電電流の学習が過去に行われ、その学習値が適宜の記憶領域に保存されているか否かが判定される。前回学習値がない場合(NOの場合)、ステップ130へ進み、圧力制御弁23を閉弁させるための通電電流値をデフォルト値とする。尚、図3のステップS130及びS114におけるPCVとは、圧力制御弁23のことである。
【0054】
次いで、ステップS132へ進み、レール圧の低下量が計測され、さらにステップS134へ進み、レール圧の低下量が所定値以上か否かが判定される。ここで、レール圧低下量に対する所定値とは、アイドリングストップ制御時における圧力制御弁23閉弁後における、単位時間当たりのレール圧の低下量として定めることができる。また、これに限らず圧力制御弁23閉弁後ある一定時間後のレール圧の絶対値等、適宜定めることができる。
【0055】
ステップS134においてレール圧低下量が所定値以上と判定された場合(YESの場合)、圧力制御弁23を閉弁させるための電磁力が不足していることにより圧力制御弁23から燃料が漏れ出ている可能性があるとして、電流増探索モードへ移行し(図3のステップS136参照)、図示されないメインルーチンへ一旦戻る。
【0056】
一方、ステップS134においてレール圧低下量が所定値未満と判定された場合(NOの場合)、圧力制御弁23を閉弁させるための電磁力は十分であり、むしろ通電電流値を減少させることができる可能性があるとして、電流減探索モードへ移行し(図3のステップS138参照)、図示されないメインルーチンへ一旦戻る。
【0057】
また、ステップS112において、圧力制御弁23の通電電流値の前回学習値がある場合(YESの場合)、ステップS114へ進み、圧力制御弁23を閉弁させるための通電電流値を前回学習値とする。
【0058】
次いで、ステップS116へ進み、レール圧の低下量が計測され、さらにステップS118へ進み、レール圧の低下量が所定値以上か否かが判定される。
【0059】
ステップS118においてレール圧低下量が所定値以上と判定された場合(YESの場合)、ステップS134においてYESと判定された場合と同様、圧力制御弁23を閉弁させるための電磁力が不足していることにより圧力制御弁23から燃料が漏れ出ている可能性があるとして、電流増探索モードへ移行し(図3のステップS136参照)、図示されないメインルーチンへ一旦戻る。
【0060】
一方、ステップS118においてレール圧低下量が所定値未満と判定された場合(NOの場合)、ステップS120へ進み、前回の学習から所定期間経過しているか否かが判定される。ここで、前回の学習からの所定期間とは、例えば前回の学習が終了した後の内燃機関の運転時間とすることができる。あるいは、前回の学習が終了した後のアイドリングストップ制御の実行回数またはアイドリングストップ制御の実行時間等、適宜定めることができる。
【0061】
ステップS120において、前回の学習から所定期間が経過したと判定された場合(YESの場合)、ステップS134においてNOと判定された時と同様、圧力制御弁23を閉弁させるための電磁力は十分であり、むしろ通電電流値を減少させることができる可能性があるとして、電流減探索モードへ移行し(図3のステップS122参照)、図示されないメインルーチンへ一旦戻る。
【0062】
一方、ステップS120において、前回の学習から所定期間が経過していないと判定された場合(NOの場合)、このタイミングで再度の学習を行う必要はないとして、図示されないメインルーチンへ一旦戻る。
【0063】
また、ステップS106において、電流減探索モードであると判定された場合(YESの場合)、図4のステップS202へ進むこととなる。ステップS202以降の電流減探索モードの処理内容を、図4を参照しつつ以下に説明する。
【0064】
ステップS202において、圧力制御弁23を閉弁させるための通電電流値を、前回値よりもα1(mA)だけ減少させる。電流値の減少量α1は、試験やシミュレーション等により適宜定められるものである。
【0065】
次いで、ステップS204へ進み、レール圧の低下量が計測され、さらにステップS206へ進み、レール圧の低下量が所定値以上か否かが判定される。
【0066】
ステップS206においてレール圧低下量が所定値以上と判定された場合(YESの場合)、電流減探索モードへの移行前にはレール圧低下量が所定値未満であったにもかかわらず、今回ステップS202において圧力制御弁23の通電電流値をα1(mA)だけ減少させたことによりレール圧低下量が所定値以上となったこととなる。そのため、前回値、すなわち、今回α1(mA)だけ減少させる前の通電電流値を本電流減探索モードにおける学習値とし、適宜の記憶領域に保存する(図4のステップS210参照)。次いでステップS212において、電流減探索モード終了とし、図示されないメインルーチンへ一旦戻る。
【0067】
一方、ステップS206において、レール圧低下量が所定値未満と判定された場合(NOの場合)、圧力制御弁23の通電電流値をさらに減少させることができる可能性があるとして、電流減探索モードを継続することとし(図4のステップS208参照)、図示されないメインルーチンへ一旦戻る。
【0068】
以上説明した電流減探索モードにおける処理の結果、アイドリングストップ制御時における圧力制御弁23の通電電流値が必要以上に大きな値となることが防止され、バッテリの消費電力を最小限に抑えることができる。
【0069】
また、図3のステップS108において、電流増探索モードであると判定された場合(YESの場合)、図5のステップS302へ進むこととなる。ステップS302以降の電流増探索モードの処理内容を、図5を参照しつつ以下に説明する。
【0070】
ステップS302において、圧力制御弁23の通電電流値を、前回値よりもβ(mA)だけ増加させた場合、電流値が後述する所定の制限値以上となるか否かが判定される。制限値以上の場合(YESの場合)ステップS320へ進む一方、制限値未満の場合(NOの場合)ステップS304へ進む。
【0071】
ステップS304において、圧力制御弁23を閉弁させるための通電電流値を、前回値よりもβ(mA)だけ増加させる。電流値の増加量βは、試験やシミュレーション等により適宜定められるものである。
【0072】
次いで、ステップS306へ進み、レール圧の低下量が計測され、さらにステップS308へ進み、レール圧の低下量が所定値以上か否かが判定される。
【0073】
ステップS308においてレール圧低下量が所定値未満と判定された場合(NOの場合)、ステップS304において圧力制御弁23の通電電流値をβ(mA)だけ増加させたことによりレール圧低下量が所定値未満に抑えられたこととなるため、今回値、すなわち、今回β(mA)だけ増加させた通電電流値を本電流増探索モードにおける学習値とし、適宜の記憶領域に保存する(図5のステップS310参照)。次いでステップS312において、電流減探索モード終了とし、図示されないメインルーチンへ一旦戻る。
【0074】
一方、ステップS308において、レール圧低下量が所定値以上と判定された場合(YESの場合)、依然として圧力制御弁23を閉弁させるための電磁力が不足していることにより圧力制御弁23から燃料が漏れ出ている可能性があるとして、電流増探索モードを継続することとし(図5のステップS314参照)、図示されないメインルーチンへ一旦戻る。
【0075】
以上説明した電流増探索モードにおける処理の結果、アイドリングストップ制御時におけるレール圧の低下量を所定値未満とするための、圧力制御弁23の通電電流値の増加分を必要最小限とすることができ、バッテリの消費電力を最小限に抑えることができる。
【0076】
また、ステップS302において、電流値が所定の制限値以上となると判定された場合(YESの場合)ステップS320へ進み、後述する妥協電流学習値があるか否か、すなわち、後述する妥協電流学習モードにおける妥協電流学習が過去に行われ、その学習値が適宜の記憶領域に保存されているか否かが判定される(図5のステップS320参照)。
【0077】
ここで、妥協電流学習モードについて説明する。アイドリングストップ制御時のレール圧低下量が所定値以上であった場合(図3のステップS134およびステップS118においてYESであった場合)、圧力制御弁23を閉弁させるための電磁力が不足していることにより圧力制御弁23から燃料が漏れ出ている可能性があるとして、電流増探索モードへ移行することは上述の通りである。しかし、インジェクタ17や高圧ポンプ13にも微少量ながら燃料のリークがあり、アイドリングストップ制御時のレール圧低下量が所定値以上となる要因が、これら圧力制御弁23以外の箇所からのリークに起因するものであった場合、圧力制御弁23への通電電流値を増加させてもレール圧低下を抑えることはできず、むしろバッテリの消費電力の無駄となる。そこで、電流増探索モードにおいて増加させる通電電流値に所定の制限値を設け、通電電流値がその所定の制限値を超える場合、逆に通電電流値を段階的に減少させ、電磁力が低下することによりレール圧低下量が増すこととなる直前の通電電流値を妥協電流学習値とするものである。
【0078】
図5の説明に戻ると、ステップS320において、妥協電流学習値がない場合(NOの場合)、妥協電流探索モードへ移行することとし、図示されないメインルーチンへ一旦戻る。(図5のステップS324参照)。
【0079】
一方、ステップS320において、妥協電流学習値がある場合(YESの場合)、前回の妥協電流学習から所定期間経過しているか否かが判定される(図5のステップS322参照)。ここで、前回の妥協電流学習からの所定期間とは、例えば前回の妥協電流学習が終了した後の内燃機関の運転時間とすることができる。あるいは、前回の妥協電流学習が終了した後のアイドリングストップ制御の実行回数またはアイドリングストップ制御の実行時間等、適宜定めることができる。
【0080】
ステップS322において、前回の妥協電流学習から所定期間が経過したと判定された場合(YESの場合)、ステップS320でNOと判定された時と同様、妥協電流探索モードへ移行し(図5のステップS324参照)、図示されないメインルーチンへ一旦戻る。
【0081】
一方、ステップS322において、前回の妥協電流学習から所定期間が経過していないと判定された場合(NOの場合)、このタイミングで再度の妥協電流学習を行う必要はないとして、図示されないメインルーチンへ一旦戻る。
【0082】
次に妥協電流探索モードの処理内容を、図6を参照しつつ以下に説明する。図3のステップS110において、妥協電流探索モードであると判定された場合(YESの場合)、図6ステップS402以降へ進むこととなる。
【0083】
ステップS402において、圧力制御弁23を閉弁させるための通電電流値を、前回値よりもα2(mA)だけ減少させる。電流値の減少量α2は、試験やシミュレーション等により適宜定められるものである。
【0084】
次いで、ステップS404へ進み、レール圧の低下量が計測され、さらにステップS406へ進み、レール圧の低下量が前回を上回ったか否かが判定される。
【0085】
ステップS406においてレール圧低下量が前回を上回ったと判定された場合(YESの場合)、ステップS402において圧力制御弁23の通電電流値をα2(mA)だけ減少させたことによりレール圧低下量が前回を上回ったこととなるため、前回値、すなわち、今回α2(mA)だけ減少させる前の通電電流値を本妥協電流探索モードにおける学習値とし、適宜の記憶領域に保存する(図6のステップS408参照)。次いでステップS410において、妥協電流探索モード終了とし、図示されないメインルーチンへ一旦戻る。
【0086】
一方、ステップS406において、レール圧低下量が前回を上回っていないと判定された場合(NOの場合)、圧力制御弁23の通電電流値をさらに減少させることができる可能性があるとして、妥協電流探索モードを継続することとし(図6のステップS412参照)、図示されないメインルーチンへ一旦戻る。
【0087】
以上説明した妥協電流探索モードにおける処理の結果、アイドリングストップ制御時のレール圧低下量が所定値以上となる要因が、圧力制御弁23ではなく、インジェクタ17や高圧ポンプ13からの燃料リークに起因するものであった場合でも、アイドリングストップ制御時における圧力制御弁23の通電電流値を必要最小限とすることができ、バッテリの消費電力を最小限に抑えることができる。
【0088】
尚、レール圧の低下量が所定値以上か否かを判定するステップ(S118、S134、S206、S308)での所定値とは、単位時間当たりのレール圧の低下量、あるいは圧力制御弁23閉弁後ある一定時間後のレール圧の絶対値等、適宜定めることができることは上述の通りであるが、各ステップにおける所定値は、同一の値とすることもできるし、各ステップにおいてそれぞれ適切な値を定めることもできる。
【0089】
さらに、ステップS202及びステップS402における通電電流値の減少量であるα1及びα2、あるいはステップS302における通電電流値の増加量であるβの値は、試験はシミュレーションにより適宜定めることができることは上述の通りであるが、α1、α2、βの各値は同一とすることもできるし、それぞれ適切な値を定めることもできる。
【0090】
さらに、ステップS120及びステップS322における所定期間は、適宜定めることができることは上述の通りであるが、各ステップにおける所定期間は同一とすることもできるし、それぞれ適切な値を定めることもできる。
【0091】
以上の様に、本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置の制御装置及び制御方法並びに蓄圧式燃料噴射装置によれば、アイドリングストップ制御による内燃機関の自動停止中のコモンレール内の圧力低下量を基に、自動停止中における圧力制御弁の通電電流値を学習することにより、アイドリングストップ制御時における、圧力制御弁の作動にかかるバッテリの消費電力を最小限に抑えることができる。また、圧力制御弁の経時劣化等により圧力制御弁の電磁力が不足した場合であっても、通電電流値を増加させることができ、さらにその増加量を最小限に抑えることができる。さらに、圧力制御弁以外の要因により所定量以上の圧力低下が起きた場合であっても、圧力制御弁通電電流の最適値を学習することができる。
【0092】
また、本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置の制御装置及び制御方法並びに蓄圧式燃料噴射装置によれば、アイドリングストップ制御時において、圧力低下量が所定値未満の時、通電電流値を減少させる一方、圧力低下量が所定値以上の時、通電電流値を増加させることにより、圧力制御弁の通電電流値を学習するようにしているため、圧力制御弁を閉弁させるための電磁力が必要以上に大きい場合、あるいは不足している場合双方において、圧力制御弁通電電流の最適値を学習することができる。
【0093】
また、本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置の制御装置及び制御方法並びに蓄圧式燃料噴射装置によれば、圧力制御弁の通電電流値を増加させる場合において、増加後の通電電流値が所定の制限値以上となる時、通電電流値を段階的に減少させ、減少後の圧力低下量が前回の圧力低下量を上回った時に、前回の通電電流値を学習値とするようにしているため、所定値以上の圧力低下が圧力制御弁以外の要因による場合であっても、圧力制御弁通電電流の最適値を学習することができる。
【符号の説明】
【0094】
1:燃料タンク、10:蓄圧式燃料噴射装置、11:低圧ポンプ、13:高圧ポンプ、13a:加圧室、14:カム、15:コモンレール、17:燃料噴射弁、19:流量制御弁、23:圧力制御弁、24:燃料温度センサ、25:レール圧センサ、27:燃料吸入弁、28:燃料吐出弁、29:プランジャ、31:低圧燃料通路、33、35:高圧燃料通路、37、38、39:リターン通路、50:制御装置、61:アイドリングストップ制御手段、64:目標レール圧演算手段、65:レール圧検出手段、66:流量制御弁制御手段、67:圧力制御弁制御手段、68:燃料噴射弁制御手段、69:圧力制御弁電流値学習手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧ポンプによって圧送される燃料を蓄積するコモンレールと、
前記コモンレール内の圧力を調節するための弁であって非通電状態で燃料通路を開放するノーマルオープン型の構造を有する圧力制御弁と、
前記コモンレールに接続され内燃機関の気筒内に前記燃料を噴射する燃料噴射弁と、
を備えた蓄圧式燃料噴射装置を制御するための制御装置であって、
前記内燃機関の自動停止及び再始動を行うアイドリングストップ制御手段と、
前記自動停止中の前記コモンレール内の圧力低下量を基に、前記自動停止中における前記圧力制御弁の通電電流値を学習する圧力制御弁通電電流値学習手段と、
を備えたことを特徴とする蓄圧式燃料噴射装置の制御装置。
【請求項2】
前記圧力制御弁通電電流値学習手段は、
前記圧力低下量が所定値未満の時、前記通電電流値を減少させる一方、
前記圧力低下量が所定値以上の時、前記通電電流値を増加させることにより、
前記圧力制御弁の通電電流値を学習することを特徴とする請求項1に記載の蓄圧式燃料噴射装置の制御装置。
【請求項3】
前記圧力制御弁通電電流値学習手段は、
通電電流値を増加させる場合において、増加後の通電電流値が所定の制限値以上となる時、通電電流値を段階的に減少させ、減少後の圧力低下量が前回の圧力低下量を上回った時に、前回の通電電流値を学習値とすることを特徴とする請求項2に記載の蓄圧式燃料噴射装置の制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか一項に記載された制御装置を備えた蓄圧式燃料噴射装置。
【請求項5】
高圧ポンプによって圧送される燃料を蓄積するコモンレールと、
前記コモンレール内の圧力を調節するための弁であって非通電状態で燃料通路を開放するノーマルオープン型の構造を有する圧力制御弁と、
前記コモンレールに接続され内燃機関の気筒内に前記燃料を噴射する燃料噴射弁と、
を備えた蓄圧式燃料噴射装置を制御するための制御方法であって、
前記内燃機関の自動停止及び再始動を行うアイドリングストップ制御時において、
前記自動停止中の前記コモンレール内の圧力低下量を基に前記自動停止中における圧力制御弁の通電電流値を学習することを特徴とする蓄圧式燃料噴射装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−237224(P2012−237224A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106108(P2011−106108)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】