説明

蓄熱器

【課題】交換熱量を可変とする。
【解決手段】互いに対向するように並べられている蓄熱板51〜53のうち一方の端に位置する蓄熱板51に、駆動軸54を取り付ける。駆動軸54は、蓄熱板51〜53の対向方向に沿って移動可能である。また、互いに対向する蓄熱板51、52同士をストッパ55によって、蓄熱板52、53同士をストッパ56によって、それぞれ繋ぐ。蓄熱板51〜53は、駆動軸54の駆動により、所定の間隔を隔てて対向する離隔状態(図2(a))と、対向面同士が接触する接触状態(図2(b))とを取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温熱又は冷熱を蓄熱する蓄熱器に関する。
【背景技術】
【0002】
環境試験装置の一つとして、電気・電子部品等の試験対象物に急激な温度変化を加えることによって、試験対象物の熱衝撃に対する特性を試験する冷熱衝撃試験装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる試験装置は、試験室と、この試験室の上下にそれぞれ配設された高温室及び低温室とを有している。そして、試験対象物を試験室に収納した状態で、高温室と試験室との間のダンパを開放し、試験対象物を高温空気に所定時間さらす高温さらしと、低温室と試験室との間のダンパを開放し、試験対象物を低温空気に所定時間さらす低温さらしとが、交互に所定回数繰り返される。
【0003】
特許文献1の試験装置の高温室及び低温室には、蓄熱器がそれぞれ設けられている。高温室の蓄熱器は、低温さらしが行われている間に温熱を蓄熱し、高温さらしに切り換わると温熱を放熱する。一方、低温室の蓄熱器は、高温さらしが行われている間に冷熱を蓄熱し、低温さらしに切り換わると冷熱を放熱する。これにより、試験装置において高温さらしから低温さらし、又は低温さらしから高温さらしに切り換えた際の温度復帰時間を短くすることができる。
【特許文献1】特開2001−83058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような冷熱衝撃試験装置に設けられる蓄熱器は、温度復帰時間を短くするという観点から、交換熱量が大きい方が好ましい。一方、交換熱量が大きい蓄熱器は、温度復帰時以外は、高温室において高温空気を生成するヒータや、低温室において低温空気を生成する冷却器に対して過大な負荷を与えてしまう。
【0005】
そこで、本発明の一つ目的は、交換熱量を可変できる蓄熱器を提供することである。また、本発明の別の目的は、加熱器や冷却器に対して過大な負荷が加わるのを防ぐことができる環境試験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の蓄熱器は、温熱又は冷熱を蓄熱するものであって、互いに対向するように配置された複数の蓄熱板と、複数の前記蓄熱板のうち少なくとも1枚を、この蓄熱板に対向する前記蓄熱板に近づく方向及び遠ざかる方向に移動させる移動機構とを備えており、前記移動機構によって前記蓄熱板を移動させることによって、複数の前記蓄熱板が所定の間隔を隔てて互いに離隔している離隔状態と、複数の前記蓄熱板のうち少なくとも1枚とこれに対向する前記蓄熱板との間隔が前記所定の間隔よりも狭い近接状態とを採り得る。
【0007】
なお、本発明における「前記所定の間隔よりも狭い近接状態」とは、対向する蓄熱板同士が接触する場合も含む。
【0008】
上述の構成によると、蓄熱板間の間隔を狭くすることにより、蓄熱板間の空気の流れが阻害され、蓄熱器の熱交換能力が低下する。また、蓄熱板同士が接触する場合には、蓄熱板の外気に触れる面積である伝熱面積が減少する。したがって、伝熱面積に比例する交換熱量が減少する。よって、交換熱量を変更することが可能となる。
【0009】
本発明の蓄熱器は、互いに対向する2枚の前記蓄熱板同士を繋ぐ連結部材をさらに備えていることが好ましい。この構成によると、蓄熱板を対向する蓄熱板から遠ざかる方向に移動させる際に、連結部材がストッパとして機能する。また、移動機構によって端に位置する蓄熱板を移動させるだけで、複数の蓄熱板を対向する蓄熱板に対して移動させることができる。すなわち、複数の蓄熱板に移動機構を設ける必要がない。
【0010】
本発明の蓄熱器では、前記移動機構が、互いに対向する2枚の前記蓄熱板のなす角度が変化するように前記蓄熱板を移動させることが好ましい。この構成によると、蓄熱板同士を接触させる際に、これらが面同士で接触することがない。したがって、蓄熱板同士が凍りついて離れなくなるのを防ぐことができる。
【0011】
本発明の蓄熱器では、複数の前記蓄熱板が3枚以上であり、複数の前記蓄熱板のうち少なくとも1枚とこれに対向する前記蓄熱板との間に、ばね及び互いに反発力を生じる一対の磁石のいずれかが配置されていてもよい。この構成によると、例えば、各蓄熱板に同等の大きさの力を加えて蓄熱板間の間隔を狭くする場合、まずばねや磁石が配置されていない蓄熱板同士の間隔が狭くなり、その後、ばねや磁石が配置された蓄熱板同士の間隔が狭くなる。したがって、交換熱量を段階的に変更することができる。
【0012】
本発明の蓄熱器では、前記蓄熱板を前記移動機構による移動方向に案内するガイドをさらに備えていてもよい。この構成によると、蓄熱板をスムーズに移動させることができる。
【0013】
本発明の環境試験装置は、高温空気を生成する加熱器又は低温空気を生成する冷却器を有する環境試験装置であって、上述の蓄熱器がさらに配置されている。
【0014】
この構成によると、試験装置に配置される蓄熱器の交換熱量を変更することができる。したがって、試験装置内に配置される加熱器や冷却器に過大な負荷が加わるのを防ぐことができる。
【0015】
本発明の環境試験装置では、試験開始前に前記蓄熱器を所定の熱交換量に対応する近接状態とすることが好ましい。この構成によると、加熱器や冷却器に過大な負荷が加わるのを確実に防ぐことができる。
【0016】
本発明の環境試験装置では、試験開始時に前記蓄熱器を前記離隔状態とし、その後前記近接状態とすることが好ましい。温度変化前後の温度差に対して、蓄熱器の交換熱量が大きい場合には、オーバーシュートが発生する。上述の構成によると、オーバーシュートの発生を防ぐことができる。また、蓄熱器の交換熱量を小さくすることで、加熱器や冷却器に過大な負荷が加わるのを防ぐことができる。
【0017】
なお、本発明における「試験開始」とは、試験条件へ到達するまでの温度変化期間中であってもよいし、試験条件到達時であってもよい。
【0018】
別の観点によると、本発明の環境試験装置は、試験室と、前記試験室と連通可能な準備室であって、高温空気を生成する加熱器又は低温空気を生成する冷却器が配置された準備室を少なくとも1つ備えた環境試験装置であって、前記準備室の少なくともいずれか一つに上述の蓄熱器が配置されている。
【0019】
この構成によると、準備室に配置される蓄熱器の交換熱量を変更することができる。したがって、準備室内に配置される加熱器や冷却器に過大な負荷が加わるのを防ぐことができる。
【0020】
本発明の環境試験装置では、前記試験室と前記蓄熱器が配置された前記準備室とが連通していない際に、この前記準備室に配置された前記蓄熱器を所定の熱交換量に対応する近接状態とすることが好ましい。この構成によると、加熱器や冷却器に過大な負荷が加わるのを確実に防ぐことができる。
【0021】
本発明の環境試験装置では、前記試験室と前記蓄熱器が配置された前記準備室とを連通させて、前記試験室にこの前記準備室内の空気を供給するさらし時に、最初はこの前記準備室に配置された前記蓄熱器を前記離隔状態とし、その後前記近接状態とすることが好ましい。この構成によると、オーバーシュートの発生を防ぐことができる。また、蓄熱器の交換熱量を小さくすることで、加熱器や冷却器に過大な負荷が加わるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0022】
上述のように、本発明の蓄熱器は、蓄熱板を移動させることによって、蓄熱板の外気に触れる面積である伝熱面積や熱交換能力を増減させることができる。したがって、交換熱量を変更することが可能となる。また、本発明の環境試験装置は、準備室に配置される蓄熱器の交換熱量を変更することができる。したがって、準備室内に配置される加熱器や冷却器に過大な負荷が加わるのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態にかかる蓄熱器を備えた冷熱衝撃試験装置の全体的な構成を示す概略側面図である。図1に示すように、本実施の形態の冷熱衝撃試験装置1は、断熱性を有する筐体10を備えている。筐体10の内部は、試験対象物が収納される試験室2、試験室2の上方に位置しており高温空気が生成される高温室3、及び試験室2の下方に位置しており低温空気が生成される低温室4の3つの空間に区切られている。
【0025】
また、試験室2と高温室3とを区切る仕切り壁には、空気流通孔11、12が、試験室2と低温室4とを区切る壁には、空気流通孔13、14がそれぞれ形成されている。空気流通孔11〜14には、各空気流通孔11〜14を開放する状態と封止する状態とを切り換えるダンパ11a〜14aがそれぞれ設けられている。
【0026】
試験室2内に収納された試験対象物を高温空気にさらす高温さらしを行う際には、ダンパ11a、12aが開状態とされ、ダンパ13a、14aが閉状態とされる。このとき、空気流通孔11から高温室3内の高温空気が試験室2に送り出され、空気流通孔12から試験室2内の空気が高温室3に吸い込まれる。一方、試験室2内に収納された試験対象物を低温空気にさらす低温さらしを行う際には、ダンパ11a、12aが閉状態とされ、ダンパ13a、14aが開状態とされる。このとき、空気流通孔13から低温室4内の低温空気が試験室2に送り出され、空気流通孔14から試験室2内の空気が低温室4に吸い込まれる。
【0027】
高温室3には、高温空気を生成する加熱ヒータ31と、筐体10の外に設置されたモータによって回転駆動される攪拌ファン32とが設けられている。また、低温室4には、低温空気を生成する冷却器41と、筐体10の外に設置されたモータによって回転駆動される攪拌ファン42と、冷熱を蓄熱する蓄熱器50とが設けられている。
【0028】
ここで、図2を参照しつつ、蓄熱器50の構成について説明する。図2に示すように、蓄熱器50は、3枚の蓄熱板51〜53を主に備えている。蓄熱板51〜53は、この順番で互いに対向する蓄熱板同士が平行となるように並べられている。なお、以降の説明において、蓄熱板51〜53の対向方向(図2中右斜め上方から左斜め下方に向かう方向)を単に「対向方向」と称する。そして、蓄熱板51〜53のうち一方の端(図2中左方端)に位置する蓄熱板51には、対向方向に沿って移動可能な駆動軸54が取り付けられている。
【0029】
また、蓄熱板51〜53の下方には、対向方向に伸延していると共に、蓄熱板51、52を摺動可能に支持する一対のガイド57が敷設されている。したがって、蓄熱板51、52は、このガイド57に沿って対向方向に平行移動可能となっている。つまり、蓄熱板51、52は、互いに対向する蓄熱板同士が平行な状態を保って移動可能である。
【0030】
さらに、蓄熱板51、52の側面における同一高さの位置には、突起51a、52aが形成されている。これら突起51a、52aには、楕円形状の開口を有するストッパ55が嵌められている。同様に、蓄熱板52、53の側面における同一高さの位置には、突起52b、53aが形成されており、これら突起52b、53aにも、ストッパ56が嵌められている。なお、突起51a、52a、52b、53aの先端は太くなっており、嵌められたストッパ55、56が抜けないようになっている。すなわち、互いに対向する蓄熱板51、52同士はストッパ55によって、蓄熱板52、53同士はストッパ56によって、それぞれ繋がれている。
【0031】
上述のような構成により、蓄熱器50が有する3枚の蓄熱板51〜53は、図2(a)に示すように、所定の間隔を隔てて対向する離隔状態と、図2(b)に示すように、対向面同士が接触する接触状態とを採り得る。
【0032】
具体的には、蓄熱板51〜53が接触状態にあるとき、蓄熱板51に取り付けられている駆動軸54を対向方向に関して蓄熱板53とは反対側(図2中左斜め下側)に動かすと、蓄熱板51はガイド57に沿って蓄熱板53とは反対側に移動する。蓄熱板51と蓄熱板52との間の間隔がストッパ55の開口の長さと等しくなると、ストッパ55に引っ張られて、蓄熱板52もガイド57に沿って蓄熱板53とは反対側に移動する。そして、蓄熱板52と蓄熱板53との間の間隔がストッパ56の開口の長さと等しくなると、蓄熱板51、52の移動がストッパ55、56によって停止される。これにより、蓄熱板51〜53は離隔状態となる。
【0033】
また、蓄熱板51〜53が離隔状態にあるとき、蓄熱板51に取り付けられている駆動軸54を対向方向に関して蓄熱板53側(図2中右斜め上側)に動かすと、蓄熱板51はガイド57に沿って蓄熱板53側に移動する。蓄熱板51と蓄熱板52とが接触すると、蓄熱板51に押されて蓄熱板52もガイド57に沿って蓄熱板53側に移動する。蓄熱板51、52は、蓄熱板52が蓄熱板53に接触し、蓄熱板51〜53が接触状態となるまで移動する。
【0034】
蓄熱器50は、図2(a)に示すように、蓄熱板51〜53が離隔状態となっている場合には、蓄熱板51〜53の全表面と低温室4内の雰囲気との間で熱交換が行われる。すなわち、蓄熱板51〜53の全表面の面積が伝熱面積となる。また、図2(b)に示すように、蓄熱板51〜53が接触状態となっている場合には、蓄熱板51〜53の他の板と接触していない露出表面と低温室4内の雰囲気との間で熱交換が行われる。すなわち、蓄熱板51〜53の露出表面の面積が伝熱面積となる。ここで、蓄熱器50の交換熱量は、蓄熱板51〜53の伝熱面積に比例する。したがって、蓄熱器50では、蓄熱板51〜53が接触状態となっている際には、離隔状態となっている際に比べて交換熱量が小さくなる。
【0035】
なお、蓄熱板51〜53は接触しなくとも、これらのピッチが狭くなった場合には、板間の風の流れが悪くなるために、熱交換能力が低下する。したがって、図2(a)に示す離隔状態から、蓄熱板51〜53のピッチを狭くすることによって、熱交換能力を低下させることができる。この場合、蓄熱板51〜53が接触することにより凍りついて離れなくなるのを防ぐことができる。
【0036】
次に、図3をさらに参照しつつ、冷熱衝撃試験装置1において、実施される衝撃試験について説明する。図3は、衝撃試験実施時の試験室内の温度変化を示す図である。
【0037】
高温室3においては、高温さらし以外の間は、加熱ヒータ31によって高温室3内の温度を高温さらし温度よりも高い予熱温度とするための予熱運転が行われる。なお、かかる予熱運転は、高温さらしが開始される前に高温室3内の温度を所定の予熱温度まで高めることができるのであれば、高温さらし以外の間中切れ間無く行う必要はない。そして、高温さらし時には、加熱ヒータ31を運転すると共に攪拌ファン32を駆動し、ダンパ11a、12aを開状態とし、高温室3内の高温空気を試験室2に送り込む。このとき、図3に示すように、試験室2内の温度は徐々に上昇し、所定の高温さらし温度となる。
【0038】
低温室4においては、低温さらし以外の間は、冷却器41によって低温室4内の温度を低温さらし温度よりも低い予冷温度とするための予冷運転が行われる。なお、予熱運転と同様に、予冷運転は、低温さらし以外の間中切れ間無く行う必要はない。また、このとき、蓄熱器50の蓄熱板51〜53は、図2(b)に示す接触状態となっている。すなわち、蓄熱器50の交換熱量は比較的小さくなっている。したがって、蓄熱器50によって冷却器41に過大な負荷を与えてしまうのを防ぐことができる。
【0039】
そして、低温さらし時には、冷却器41を運転すると共に攪拌ファン42を駆動し、ダンパ13a、14aを開状態とし、低温室4内の低温空気を試験室2に送り込む。このとき、図3に示すように、試験室2内の温度は徐々に低下し、所定の低温さらし温度となる。なお、蓄熱器50の蓄熱板51〜53は、低温さらし開始時から試験室2内の温度が低温さらし温度まで低下するまでは、図2(a)に示す離隔状態となっている。すなわち、蓄熱器50の交換熱量は比較的大きくなっている。したがって、試験室2内の温度を急激に低下させることができる。また、試験室2内の温度が低温さらし温度となった後は、再度図2(b)に示す接触状態に戻される。すなわち、蓄熱器50の交換熱量は比較的小さくなる。これにより、冷却器41に加わる負荷を少なくできる。
【0040】
なお、高温さらし温度と低温さらし温度との差が比較的小さい場合には、低温さらし開始後、試験室2内の温度が低温さらし温度に達する前に、離隔状態となっている蓄熱器50を接触状態とすることが好ましい。これにより、オーバーシュートを防ぐことができる。また、オーバーシュートを防ぐという観点から、低温さらし温度に達する前に蓄熱板51〜53の間隔を段階的に狭くし、蓄熱能力が次第に低下するようにしてもよい。
【0041】
衝撃試験は、図3に示すように、上述の高温さらしと低温さらしとを交互に複数回繰り返すことによってなされる。なお、図3においては、低温さらしから高温さらしに切り換わった際に、試験室2内の温度が低温さらし温度から高温さらし温度まで上昇するのに要する時間である高温復帰時間をT1で示している。また、高温さらしから低温さらしに切り換わった際に、試験室2内の温度が高温さらし温度から低温さらし温度まで低下するのに要する時間である低温復帰時間をT2で示している。
【0042】
本実施の形態では、高温さらしから低温さらしに切り換わった際に、蓄熱器50の交換熱量を変更して大きくするので、低温復帰時間T2を短くすることができる。これにより、試験対象物に急激な温度変化を加えることができる。
【0043】
なお、本実施の形態において、蓄熱器50が低温室4にのみ設けられており、高温室3に蓄熱器50に相当するものが設けられていないのは、加熱ヒータ31による加熱力が十分大きいためである。加熱ヒータ31による加熱力が不十分である場合には、高温室3にも蓄熱器50に相当するものを設けるのが好ましい。
【0044】
以上のように、本実施の形態の蓄熱器50は、互いに対向するように並べられている蓄熱板51〜53を備えている。蓄熱板51〜53は、蓄熱板51に取り付けられており対向方向に移動可能な駆動軸54の駆動により、所定の間隔を隔てて対向する離隔状態(図2(a))と、対向面同士が接触する接触状態(図2(b))とを採り得る。したがって、蓄熱板51〜53を移動させることによって、蓄熱板51〜53の外気に触れる面積である伝熱面積を増減させることができる。よって、伝熱面積に比例する蓄熱器50の交換熱量を変更することが可能となる。
【0045】
また、本実施の形態の蓄熱器50では、互いに対向する蓄熱板51、52同士はストッパ55によって、蓄熱板52、53同士はストッパ56によって、それぞれ繋がれている。したがって、蓄熱板51、52を対向する蓄熱板から遠ざかる方向に移動させる際に、ストッパ55、56によって、所定の位置で蓄熱板51、52の移動を止めることができる。また、駆動軸54によって蓄熱板51〜53のうち一方の端に位置する蓄熱板51のみを移動させるだけで、蓄熱板51、52を対向方向に移動させることができる。すなわち、蓄熱板51、52にそれぞれ移動機構を設ける必要がない。
【0046】
さらに、本実施の形態の蓄熱器50では、蓄熱板51、52の下方に、対向方向に伸延していると共に、蓄熱板51、52を摺動可能に支持するガイド57が敷設されている。したがって、蓄熱板51、52をスムーズに移動させることができる。
【0047】
<第2の実施の形態>
次に、図4を参照しつつ、本発明の第2の実施の形態について説明する。図4は、本実施の形態にかかる蓄熱器を上方から見た図である。本実施の形態の蓄熱器150は、上述の第1の実施の形態の蓄熱器50と同様に、冷熱衝撃試験装置1の低温室4に備えられ、冷熱を蓄熱するものである。
【0048】
第1の実施の形態の蓄熱器50と本実施の形態の蓄熱器150との主な相違点は、蓄熱器50の蓄熱板51、52は、互いに対向する蓄熱板同士が平行な状態を保って平行移動するが、本実施の形態の蓄熱器150では、蓄熱板151〜153が、互いに対向する蓄熱板のなす角度が変化するように回転移動する点である。
【0049】
図4に示すように、本実施の形態の蓄熱器150は、4枚の蓄熱板151〜154を主に備えてなる。蓄熱板151〜154は、この順番で互いに対向するように並べられている。蓄熱板151〜153は、上下方向に延びる回転軸を中心に回転可能に構成されている。より詳細には、蓄熱板151、153は、図4における下方の端部近傍に位置する回転軸151a、153aを中心に回転可能である。一方、蓄熱板152は、図4における上方の端部近傍に位置する回転軸152aを中心に回転可能である。すなわち、蓄熱板151〜153は、互いに対向する2枚の蓄熱板のなす角度が変化するように移動可能となっている。また、蓄熱板151〜153の上面には、蓄熱板151〜153をその回転軸151a〜153aを中心に回転させる駆動軸155、156、157がそれぞれ取り付けられている。
【0050】
上述のような構成により、蓄熱器150が備える4枚の蓄熱板151〜154は、図4(a)に示すように、所定の間隔を隔てて対向する離隔状態と、図4(b)に示すように、離隔状態から蓄熱板151、153が回転軸151a、153aを中心に時計回りに、蓄熱板152が回転軸152aを中心に反時計回りに回転し、対向する蓄熱板同士が部分的に接触する接触状態とを採り得る。
【0051】
以上のように、本実施の形態においては、実質的に第1の実施の形態と同様に、蓄熱板151〜154の外気に触れる面積である伝熱面積を増減させることができる。よって、蓄熱器150の交換熱量を変更することが可能となる。
【0052】
また、本実施の形態では、蓄熱板151〜153が、互いに対向する蓄熱板のなす角度が変化するように移動する。したがって、接触状態において、蓄熱板151〜154は部分的に接触し、面同士で接触することがない。よって、蓄熱板同士が凍りついて離れなくなるのを防ぐことができる。
【0053】
<第3の実施の形態>
次に、図5を参照しつつ、本発明の第3の実施の形態について説明する。図5は、本実施の形態にかかる蓄熱器を上方から見た図である。本実施の形態の蓄熱器250は、上述の第1の実施の形態の蓄熱器50と同様に、冷熱衝撃試験装置1の低温室4に備えられ、冷熱を蓄熱するものである。
【0054】
本実施の形態の蓄熱器250は、蓄熱板251、252の間にばね260が配置されている点を除いて、第1の実施の形態の蓄熱器50とほぼ同様の構成を有する。以下の説明において、第1の実施の形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0055】
図5に示すように、互いに対向する蓄熱板251、252の間には、2つのばね260が配置されている。したがって、図5(a)に示すように、蓄熱板251〜253が離隔状態にあるとき、蓄熱板251に取り付けられている駆動軸54を対向方向に関して蓄熱板253側(図5中右側)に動かすと、蓄熱板251は蓄熱板253側に移動する。このとき、ばね260の付勢力により蓄熱板252も蓄熱板253側に押されて移動し、図5(b)に示すように、蓄熱板252と蓄熱板253とが接触する。これにより、離隔状態である時と比べて、蓄熱板251〜253の露出表面の面積が少なくなるので、蓄熱器250の交換熱量が減少する。
【0056】
その後、さらに駆動軸54を蓄熱板253側に動かすことによって、図5(c)に示すように、蓄熱板251と蓄熱板252とが接触し、蓄熱板251〜253が接触状態となる。このとき、蓄熱板251〜253の露出表面の面積がさらに少なくなるので、蓄熱器250の交換熱量もさらに減少する。
【0057】
以上のように、本実施の形態においては、第1の実施の形態と同様に、蓄熱板251〜253の外気に触れる面積である伝熱面積を増減させることができる。よって、蓄熱器250の交換熱量を変更することが可能となる。
【0058】
また、本実施の形態では、蓄熱板251、252の間にばね260が配置されている。したがって、蓄熱板251〜253を離隔状態から接触状態とする際には、まず蓄熱板252と蓄熱板253とが接触し、その後蓄熱板251と蓄熱板252とが接触する。よって、交換熱量を段階的に変更することができる。
【0059】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて、様々な設計変更を行うことが可能なものである。
【0060】
例えば、上述の第1及び第3の実施の形態では、互いに対向する蓄熱板同士がストッパ55、56によってそれぞれ繋がれている場合について説明したが、蓄熱板同士を繋ぐものはストッパ55、56には限定されない。すなわち、図6に示す蓄熱器350のように、互いに対向する蓄熱板51、52同士が鎖355によって、蓄熱板52、53同士が鎖356によって、それぞれ繋がれていてもよい。また、蓄熱板同士は繋がれていなくてもよい。
【0061】
さらに、上述の第3の実施の形態では、蓄熱器250の交換熱量を段階的に変更すべく、蓄熱板251、252の間にばね260を配置する場合について説明したが、蓄熱板251、252の間に互いに反発力を生じる一対の磁石を配置した場合も、同様の効果を得ることができる。
【0062】
また、上述の第1及び第3の実施の形態では、蓄熱板51〜53、251〜253を摺動可能に支持するガイド57が設けられている場合について説明したが、ガイド57は設けられていなくてもよい。
【0063】
加えて、上述の第1〜第3の実施の形態では、冷熱を蓄熱し、冷熱衝撃試験装置1の低温室4に備えられる蓄熱器50について説明したが、本発明は、温熱を蓄熱する蓄熱器に適用することもできる。
【0064】
また、上述の第1〜第3の実施の形態では、試験対象物に急激な温度変化を加えることができる冷熱衝撃試験装置に本発明を適用する場合について説明したが、これに限らず、冷熱衝撃試験装置以外の環境試験装置、すなわち例えば、温度試験を行う試験装置や温度に加えて湿度も変化させることができる試験装置に本発明を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる蓄熱器を備えた冷熱衝撃試験装置の全体的な構成を示す概略側面図である。
【図2】図1の蓄熱器を示す斜視図である。
【図3】図1に示す冷熱衝撃試験装置における衝撃試験実施時の試験室内の温度変化を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態にかかる蓄熱器を上方から見た図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態にかかる蓄熱器を上方から見た図である。
【図6】第1の実施の形態の変形例にかかる蓄熱器の斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
50、150、250、350 蓄熱器
51〜53、151〜154、251〜253 蓄熱板
54、155〜157 駆動軸(駆動機構)
55、56 ストッパ(連結部材)
57 ガイド
260 ばね
355、356 鎖(連結部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温熱又は冷熱を蓄熱するものであって、互いに対向するように配置された複数の蓄熱板と、
複数の前記蓄熱板のうち少なくとも1枚を、この蓄熱板に対向する前記蓄熱板に近づく方向及び遠ざかる方向に移動させる移動機構とを備えており、
前記移動機構によって前記蓄熱板を移動させることによって、複数の前記蓄熱板が所定の間隔を隔てて互いに離隔している離隔状態と、複数の前記蓄熱板のうち少なくとも1枚とこれに対向する前記蓄熱板との間隔が前記所定の間隔よりも狭い近接状態とを採り得ることを特徴とする蓄熱器。
【請求項2】
互いに対向する2枚の前記蓄熱板同士を繋ぐ連結部材をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱器。
【請求項3】
前記移動機構が、互いに対向する2枚の前記蓄熱板のなす角度が変化するように前記蓄熱板を移動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄熱器。
【請求項4】
複数の前記蓄熱板が3枚以上であり、
複数の前記蓄熱板のうち少なくとも1枚とこれに対向する前記蓄熱板との間に、ばね及び互いに反発力を生じる一対の磁石のいずれかが配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓄熱器。
【請求項5】
前記蓄熱板を前記移動機構による移動方向に案内するガイドをさらに備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄熱器。
【請求項6】
高温空気を生成する加熱器又は低温空気を生成する冷却器を有する環境試験装置であって、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の蓄熱器がさらに配置されていることを特徴とする環境試験装置。
【請求項7】
試験開始前に前記蓄熱器を所定の熱交換量に対応する近接状態とすることを特徴とする請求項6に記載の環境試験装置。
【請求項8】
試験開始時に前記蓄熱器を前記離隔状態とし、その後前記近接状態とすることを特徴とする請求項6に記載の環境試験装置。
【請求項9】
試験室と、前記試験室と連通可能な準備室であって、高温空気を生成する加熱器又は低温空気を生成する冷却器が配置された準備室を少なくとも1つ備えた環境試験装置であって、
前記準備室の少なくともいずれか一つに請求項1〜5のいずれか1項に記載の蓄熱器が配置されていることを特徴とする環境試験装置。
【請求項10】
前記試験室と前記蓄熱器が配置された前記準備室とが連通していない際に、この前記準備室に配置された前記蓄熱器を所定の熱交換量に対応する近接状態とすることを特徴とする請求項9に記載の環境試験装置。
【請求項11】
前記試験室と前記蓄熱器が配置された前記準備室とを連通させて、前記試験室にこの前記準備室内の空気を供給するさらし時に、最初はこの前記準備室に配置された前記蓄熱器を前記離隔状態とし、その後前記近接状態とすることを特徴とする請求項9に記載の環境試験装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate