説明

蓄熱式バーナ加熱炉及びその操業方法

【課題】蓄熱式バーナ加熱炉の各蓄熱式バーナの蓄熱体出側の排ガス流量のバランス調節を人手、時間をかけずに自動的に行うこと。
【解決手段】蓄熱体を内蔵し、交互に燃焼させる蓄熱式バーナ1を一対以上設けた蓄熱式バーナ加熱炉において、各蓄熱式バーナ1の蓄熱体出側に接続された排ガス配管13に排ガス温度を調整するくせ取り用自動調節弁14とくせ取り用自動調節弁14の蓄熱式バーナ1側に排ガス配管内の排ガス温度を検出する温度検出器15とが設置され、温度検出器15で検出した排ガス温度を取り込んで各蓄熱式バーナ1の排ガス温度が均一になるように各蓄熱式バーナ1の蓄熱体出側の排ガス温度の目標値を演算し、演算結果に基づいてくせ取り用自動調節弁14の弁開度指令信号18を出力する温度制御装置16を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材等を加熱する蓄熱式バーナ加熱炉において、蓄熱式バーナの蓄熱体出側の排ガスの流量を調整して各蓄熱式バーナの排ガス温度を均一化する蓄熱式バーナ加熱炉及びその操業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スラブ、ビレット、ブルーム等の鋼材の加熱に、蓄熱体を備えた蓄熱式バーナが対で1組、または複数組配置された燃焼ゾーンで構成された蓄熱式バーナ加熱炉が利用されている。蓄熱式バーナの運転は、対になっている蓄熱式バーナを燃焼と蓄熱に交互に切り替えて行われるもので、一方の蓄熱式バーナが燃焼の時、対となる燃焼していない他方の蓄熱式バーナから燃焼排ガスを吸引して蓄熱体に顕熱を蓄え、一定時間経過後に蓄熱から燃焼へ切り替えることにより蓄熱体に蓄えた顕熱を燃焼空気の予熱として回収するものである(特許文献1参照)。
【0003】
図3は前記特許文献1に記載されている従来の蓄熱式バーナ加熱炉の一例を示す概略図である。
【0004】
図3において、蓄熱式バーナ加熱炉には、蓄熱体2を備えた蓄熱式バーナ1が対で複数組配置されている。蓄熱式バーナ1には燃料を供給する燃料配管19が接続され、蓄熱体2には燃焼空気を供給する燃焼空気配管20と排ガスを排出する排ガス配管21が接続されている。各配管に設けられている燃料切替弁3、排ガス切替弁4、燃焼空気切替弁5を切り替えて蓄熱式バーナの燃焼あるいは蓄熱を交互に切り替え、一方の蓄熱式バーナが燃焼の時、他方の蓄熱式バーナは排ガスを吸引して前記蓄熱体2で蓄熱する。吸引する排ガス量の調節は蓄熱体出側の排ガス配管の排ガス流量調節弁6の弁開度を制御して行う。燃焼空気の流量は燃焼空気配管20の燃焼空気流調弁7により調節する。なお、図3において、燃料、燃焼空気、排ガスの流れの方向を示す矢印は、図3の左側の蓄熱式バーナが燃焼状態にあり、右側の蓄熱式バーナの蓄熱体2が蓄熱状態にある場合の例である。
【0005】
図2は排ガス流量調節、燃焼空気流量調節をするための手動弁(通称「くせ取り弁」)が蓄熱式バーナの燃焼空気配管及び排ガス配管に設置されている例を示す図である。
【0006】
図2において、図3に示す蓄熱式バーナ加熱炉と同様に、加熱炉には蓄熱式バーナ1が対で複数組配置され、蓄熱式バーナには、図示していない燃料配管が接続され、図示していない蓄熱体には燃焼空気配管20と排ガス配管21が接続されている。排ガス配管21には排ガス切替弁4、燃焼空気配管20には燃焼空気切替弁5が設けられている。蓄熱状態にある蓄熱式バーナで吸引する排ガス量は排ガス配管21の排ガス流量調節弁6の弁開度を調節して行う。燃焼空気の流量は燃焼空気配管20の燃焼空気流調弁7により調節する。
【0007】
図2においては、燃焼空気切替弁5が開で且つ排ガス切替弁4が閉になっている蓄熱式バーナ(炎が図示されているバーナ)は、燃焼空気の供給により燃焼状態にあり、逆に燃焼空気切替弁5が閉で且つ排ガス切替弁4が開になっている蓄熱式バーナ(炎が図示されていないバーナ)では、燃焼空気の供給がなく燃焼せずに排ガスの吸引により蓄熱状態にある。
【0008】
燃焼空気配管20には燃焼空気切替弁5と蓄熱式バーナ1の間に手動式のくせ取り弁8が設けられ、排ガス配管21にも排ガス切替弁4と蓄熱式バーナ1の間に手動式のくせ取り弁9が設けられている。
【0009】
くせ取り弁8の弁開度調節は、蓄熱式バーナ加熱炉の立ち上げ時(あるいは試運転時)に、各蓄熱式バーナの蓄熱体に接続されている燃焼空気配管20のすべての圧力取り出し口10に図示していない微差圧計を接続し、燃焼空気を流した時の圧力をみながら、くせ取り弁8の弁開度を微調節し、各バーナの燃焼空気の圧力を均一化することにより各バーナに流れる燃焼空気流量が同じになるようにバランス調節を行っている。
【0010】
同様に各蓄熱式バーナの蓄熱体に接続されている排ガス配管21のすべての圧力取出口11に図示していない微差圧計を接続し、排ガスを流した時の圧力をみながら、くせ取り弁9の弁開度を微調整し、各バーナの排ガスの圧力を均一化することで、各バーナに流れる排ガス流量が同じになるようにバランス調整を行っている。燃焼空気用くせ取り弁8と排ガス用くせ取り弁9の弁開度を調節することにより、各蓄熱式バーナ間の蓄熱体を通過する燃焼空気量と高温の排ガス流量のバランスがとれ、蓄熱式バーナ単体において最適な排熱回収効率で運転できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−302044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
蓄熱式バーナ加熱炉は、立ち上げた後、操業を続けるうちに蓄熱体(セラミックボール)の汚れ、損耗等の経年劣化により系の圧損が変わって各蓄熱式バーナ間で蓄熱体を通過する燃焼空気流量及び排ガス流量のバランスが崩れる。その結果、蓄熱式バーナ単体でみると、蓄熱体を通過する燃焼空気と排ガスの相対的な流量バランスが崩れ、蓄熱体を介した排ガスによる燃焼空気への熱交換のバランスが崩れ、排熱回収効率の悪い蓄熱式バーナが存在することになる。
【0013】
また、前述の蓄熱体の汚れ、損耗等の経年劣化に起因する各蓄熱式バーナ間での燃焼空気及び排ガス流量のバランス崩れ、その結果として蓄熱式バーナ単体における蓄熱体を通過する燃焼空気と排ガスの相対的な流量バランスの崩れにより各蓄熱式バーナ間でバーナ排ガス温度のばらつきが起こる。前記特許文献1に開示されているようなPB率(プルバック率)による制御では、燃焼ゾーン内の蓄熱式バーナのバーナ排ガス温度のなかで一番高い排ガス温度を抽出し、その温度が燃焼ゾーンの蓄熱式バーナの蓄熱体で所定の熱交換が行われた場合のバーナ排ガス温度(バーナ排ガス目標温度)となるように必要な排ガス流量が決定されるため、各蓄熱式バーナ間での排ガス温度のばらつきが大きくなると、所定の熱交換に必要な排ガス流量が得られず、排熱回収効率の悪い蓄熱式バーナが存在することになる。
【0014】
上記の理由より排熱回収効率の悪い蓄熱式バーナが存在することになる結果として、蓄熱式バーナ加熱炉全体の排熱回収効率が低下し、燃料原単位の悪化につながる。
【0015】
これらを回避するためには、定期的なくせ取り弁の弁開度調節の実施が必要となる。しかしながら、くせ取り弁の弁開度調節は、全て手作業で行われるために人手、時問を要している。
【0016】
そこで、本発明は、蓄熱式バーナ加熱炉において、各蓄熱式バーナの蓄熱体出側の排ガス流量の調節を人手、時間をかけずに自動的に行うことができる蓄熱式バーナ加熱炉の操業方法及び蓄熱式バーナ加熱炉を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の蓄熱式バーナ加熱炉の操業方法は、蓄熱体を内蔵し、交互に燃焼させる蓄熱式バーナを一対以上設けた蓄熱式バーナ加熱炉の操業方法において、各蓄熱式バーナの蓄熱体出側に接続された排ガス配管内の排ガス温度を検出し、検出された温度に基づいて各蓄熱式バーナの前記排ガス温度が均一になるように各蓄熱式バーナの蓄熱体出側の排ガス温度の目標値を演算し、演算結果に基づいて排ガス配管に設けられた自動温度調節弁の弁開度の調節を行うことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の蓄熱式バーナ加熱炉は、蓄熱体を内蔵し、交互に燃焼させる蓄熱式バーナを一対以上設けた蓄熱式バーナ加熱炉において、各蓄熱式バーナの蓄熱体出側に接続された排ガス配管に排ガス温度を調整する自動温度調節弁と該自動温度調節弁の蓄熱式バーナ側に排ガス配管内の排ガス温度を検出する温度検出器とが設置され、前記温度検出器で検出した排ガス温度を取り込んで各蓄熱式バーナの排ガス温度を均一になるように各蓄熱式バーナの蓄熱体出側の排ガス温度の目標値を演算し、演算結果に基づいて自動温度調節弁の弁開度調節信号を出力する温度制御装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、各蓄熱式バーナの蓄熱体出側の排ガス温度が均一となるように排ガス温度の目標値を演算して自動温度調節弁の弁開度が自動的に調節されるので、手間、時間をかけずに各蓄熱式バーナ間の排ガス温度が調節可能となって排ガス温度が均一化でき、その結果、燃料原単位悪化を抑制することが可能となる。
【0020】
燃料原単位の向上によりランニングコストの削減が可能となる。また、これまで手動で行ってきたくせ取り弁の開度調整を自動化することによりメンテナンス作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明における蓄熱式バーナの蓄熱体出側の排ガス配管を示す図である。
【図2】従来の排ガス流量調節、燃焼空気流量調節をするための手動弁(くせ取り弁)の設置を示す図である。
【図3】従来の蓄熱式バーナ加熱炉の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は本発明における蓄熱式バーナの蓄熱体出側の排ガス配管を示す図である。
【0024】
図1において、蓄熱式バーナ加熱炉の蓄熱式バーナ1に接続されている排ガス配管13に、温度制御装置16の弁開度調節信号により自動的に弁開度が調節されるくせ取り用自動調節弁14が配置され、このくせ取り用自動調節弁14の下流側に排ガス切替弁4が配置されている。
【0025】
排ガス配管13には、くせ取り用自動調節弁14の上流側(蓄熱式バーナ側)に排ガス温度を検出する温度検出器15が設置されている。温度検出器15の測定信号17は温度制御装置16へ入力される。くせ取り用自動調節弁14は、温度制御装置16から出力される弁開度指令信号18により弁開度が調節される。
【0026】
次に、くせ取り用自動調節弁14の制御について説明する。
温度制御装置16には、温度検出器15で測定された各蓄熱式バーナの排ガス配管13を通過する排ガスの温度測定信号17が入力される。
【0027】
温度制御装置16では、以下のステップにて、排ガス温度均一化の目標値を決定し、くせ取り用自動調節弁14の開度を調整する。
【0028】
ステップ1:各蓄熱式バーナの排ガス温度でバーナの燃焼/蓄熱(バーナによっては蓄熱/燃焼)の1サイクル中の最大温度Tn(max)(nは、燃焼ヅーン内の蓄熱式バーナの本数)を抽出する。
【0029】
ステップ2:ステップ1で求めた各蓄熱式バーナの排ガス温度の最大温度Tn(max)の平均値Tsvを演算する。
【0030】
ステップ3:平均値Tsvを次サイクルの各蓄熱式バーナの排ガス最大温度Tn(max)の目標値として、開度指令信号18をくせ取り用自動調節弁14へ送り、弁開度を調節する。
【0031】
このくせ取り用自動調節弁14の開度調整は、蓄熱式バーナの燃焼/蓄熱(バーナによっては蓄熱/燃焼)の1サイクル時間単位で行われる。
【0032】
以下、本発明を適用した時の一例を示す。
被加熱材は、厚み250mm×巾1,500mm×長さ2,300mmの鋼片で、炉温は、約1200°Cである。
【0033】
加熱炉は、燃焼ゾーンが予熱帯上部および下部、第一加熱帯上部および下部、第二加熱帯上部および下部、均熱帯上部および下部の合計8ゾーンからなり、各燃焼ゾーンとも被加熱材進行方向の両側(炉壁)に蓄熱式バーナを対向して4対ずつ設置されている。
【0034】
表1に、設備立ち上げ時及び本発明を適用しない場合と適用した場合のプルバック率(平均)、熱効率、燃料原単位悪化率の一例を示す。
【0035】
【表1】

【0036】
ここで、プルバック率(平均)とは、各燃焼ゾーンにて発生した排ガス量のうち、蓄熱式バーナで吸引する排ガス量の割合の全燃焼ゾーンの平均値である。
【0037】
これは、蓄熱体の汚れ、経年劣化によって、各バーナ間の排ガス流量のバランスが崩れた場合、燃焼ゾーンに存在するバーナの中に排ガス温度の極端に高いバーナが存在し、そのバーナの排ガス温度が燃焼ゾーンの蓄熱式バーナの蓄熱体で所定の熱交換が行われた場合のバーナ排ガス温度(バーナ排ガス目標温度)となるように排ガス流量、すなわち、プルバック率を決定するため、徐々にその率が下がり、各燃焼ゾーンの蓄熱式バーナで吸引される排ガス流量が少なくなる。
【0038】
そのため、蓄熱式バーナの蓄熱体における熱交換効率(排ガスと燃焼空気間の熱交換の効率)が低下、すなわち加熱炉全体の熱効率{(燃料熱量−炉からの排出熱量)/燃料熱量}が下がり、その分だけ、燃料原単位が悪化する。(表1の(B)欄を参照)本発明を適用した場合、前述の各バーナ間のガス流量のアンバランスが小さくなり、各バーナの排ガス温度も平均化されるため、プルバック率が極端に低下することがなく、熱効率の低下、および燃料原単位悪化を最小化できた(表1の(C)欄を参照)。
【符号の説明】
【0039】
1:蓄熱式バーナ
2:蓄熱体
3:燃料切替弁
4:排ガス切替弁
5:燃焼空気切替弁
6:排ガス流量調節弁
7:燃焼空気流調弁
8:くせ取り弁(燃焼空気用)
9:くせ取り弁(排ガス用)
10:圧力取り出し口(燃焼空気用)
11:圧力取り出し口(排ガス用)
13:排ガス配管
14:くせ取り用自動調節弁
15:温度検出器
16:温度制御装置
17:排ガス温度測定信号
18:弁開度指令信号
19:燃料配管
20:燃焼空気配管
21:排ガス配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱体を内蔵し、交互に燃焼させる蓄熱式バーナを一対以上設けた蓄熱式バーナ加熱炉の操業方法において、各蓄熱式バーナの蓄熱体出側に接続された排ガス配管内の排ガス温度を検出し、検出された温度に基づいて各蓄熱式バーナの前記排ガス温度が均一になるように各蓄熱式バーナの蓄熱体出側の排ガス温度の目標値を演算し、演算結果に基づいて排ガス配管に設けられた自動温度調節弁の弁開度の調節を行うことを特徴とする蓄熱式バーナ加熱炉の操業方法。
【請求項2】
蓄熱体を内蔵し、交互に燃焼させる蓄熱式バーナを一対以上設けた蓄熱式バーナ加熱炉において、各蓄熱式バーナの蓄熱体出側に接続された排ガス配管に排ガス温度を調整する自動温度調節弁と該自動温度調節弁の蓄熱式バーナ側に排ガス配管内の排ガス温度を検出する温度検出器とが設置され、前記温度検出器で検出した排ガス温度を取り込んで各蓄熱式バーナの排ガス温度が均一になるように各蓄熱式バーナの蓄熱体出側の排ガス温度の目標値を演算し、演算結果に基づいて自動温度調節弁の弁開度調節信号を出力する温度制御装置を備えたことを特徴とする蓄熱式バーナ加熱炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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